特許第6884327号(P6884327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6884327-便器洗浄装置及びそれを備える便器装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884327
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】便器洗浄装置及びそれを備える便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 3/06 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   E03D3/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-11957(P2017-11957)
(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公開番号】特開2018-119328(P2018-119328A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
【審査官】 広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−048253(JP,A)
【文献】 特開2004−019845(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0026642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置であって、
一次側流路を形成する入水部と、この入水部に交差して二次側流路を形成する出水部と、前記入水部の前記出水部と接続される内壁面から前記入水部内に突出し、前記入水部内と前記出水部内とを連通する連通部と、この連通部の入口である連通口を開閉するパイロット式ダイヤフラム弁と、を備え、
前記ダイヤフラム弁は、弁本体と、この弁本体を挟んで前記連通口と逆側に圧力室を形成する圧力室部と、前記弁本体に形成され前記入水部と前記圧力室部とを連通する連通流路と、前記圧力室部と前記出水部とを連通するパイロット流路と、このパイロット流路を開閉する制御弁と、を有し、
前記入水部は前記連通部が形成される内壁面と対向する位置に前記ダイヤフラム弁が設けられる接続口が開口され、
前記連通部は前記接続口の内側端より外側にまで突出し、
前記連通部は、前記連通口に向かって縮径するよう構成されている洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記連通部を取り囲む、前記連通部が形成される前記入水部の内壁面の前記連通口に対する高さ位置は一定である請求項1に記載の洗浄水供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記洗浄水供給装置を備える便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置、及び、それを備える便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水供給装置として、制御弁にて一次側流路と二次側流路とを連通するパイロット流路を開閉することで、一次側流路と二次側流路との間の連通口を開閉するパイロット式ダイヤフラム弁を備えるものが知られている。通常、ダイヤフラム弁の弁本体はコンボリューション部と呼ばれる薄肉の折り返し部分を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の洗浄水供給装置においては、例えば、高流量の洗浄水を供給しようとすると、弁本体の開閉時に、連通口の流れ方向の中心軸に対して弁本体が傾きやすい。特に、例えば、制御弁が弁本体に形成された流路を開閉しないタイプであり、いわゆる主弁分離型のダイヤフラム弁である場合は、弁本体に形成された流路を流れる洗浄水により弁本体が連通口の中心軸に沿ってガイドされにくく、弁本体の開閉時に、連通口の中心軸に対して弁本体がより傾きやすい。弁本体が連通口の中心軸に対して傾く場合、傾くことでコンボリューション部が繰り返し屈曲し、破損につながる可能性がある。また、コンボリューション部が屈曲に耐えられるように、洗浄水の流量に合わせて、弁本体のサイズを大きくすることが考えられるが、弁本体が大型化することで洗浄水供給装置が大型化してしまう懸念がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、弁本体を傾きにくくすることが可能な洗浄水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置であって、一次側流路を形成する入水部と、入水部に交差して二次側流路を形成する出水部と、入水部の出水部と接続される内壁面から入水部内に突出し、入水部内と前記出水部内とを連通する連通部と、連通部の入口である連通口を開閉するパイロット式ダイヤフラム弁と、を備え、ダイヤフラム弁は、弁本体と、弁本体を挟んで連通口と逆側に圧力室を形成する圧力室部と、弁本体に形成され入水部と圧力室部とを連通する連通流路と、圧力室部と出水部とを連通するパイロット流路と、パイロット流路を開閉する制御弁と、を有し、入水部は連通部が形成される内壁面と対向する位置にダイヤフラム弁が設けられる接続口が開口され、連通部は接続口の内側端より外側にまで突出し、連通部は、連通口に向かって縮径するよう構成されている洗浄水供給装置である。


【0007】
このように構成された本発明においては、入水部は連通部が形成される内壁面と対向する位置にダイヤフラム弁が設けられる接続口が開口され、連通部は接続口の内側端より外側にまで突出するため、外側にまで突出していない場合に比べて、連通部周りを経て弁本体へと向かう洗浄水による水圧が弁本体に対して均一になりやすく、弁本体にかかる圧力が不均一になることを抑制することができる。そのため、弁本体を大型化せずとも弁本体を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。
【0008】
本発明は、好ましくは、連通部を取り囲む、連通部が形成される入水部の内壁面の連通口に対する高さ位置は一定である。
【0009】
このように構成された本発明においては、連通部を取り囲む、連通部が形成される入水部の内壁面の連通口に対する高さ位置は一定であるため、一定でない場合に比べて、連通部周りを経て弁本体へと向かう洗浄水による水圧が弁本体に対してより均一になりやすく、弁本体にかかる圧力が不均一になることをさらに抑制することができる。そのため、弁本体を大型化せずとも弁本体を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。
【0010】
本発明は、また、洗浄水供給装置を備える便器装置である。
【0011】
このように構成された本発明においては、連通部は入水部の内壁面よりも外側にまで突出するため、連通部周りを経て弁本体へと向かう洗浄水による水圧が弁本体に対して均一になりやすく、弁本体にかかる圧力が不均一になることを抑制することができる。そのため、弁本体を大型化せずとも弁本体を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。従って、洗浄水供給装置の大型化を抑制することができ、便器装置における洗浄水供給装置のレイアウトの自由度を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄水供給装置によれば、弁本体を傾きにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る便器装置を示す構成図。
図2】本発明の一実施形態に係るバルブユニットにおける給水弁を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る便器装置について説明する。
まず、図1により本発明の一実施形態に係る便器装置の構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る便器装置を示す構成図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る便器装置100は、たとえばトイレ室の床面に載置される陶器製の便器200と、便器200の後方に配置され、便器200に対して洗浄水を供給する洗浄水供給装置1とを備える。
【0016】
便器200は、汚物を受けるボウル部210と、このボウル部210の底部から後方へ延びる排水トラップ管路220とを有する。ボウル部210にはリム吐水を行うリム吐水口212及びゼット吐水を行うゼット吐水口214が形成されている。リム吐水口212は、ボウル部210の上部後方に形成され、ボウル部210の上縁に沿って洗浄水を吐出する。ゼット吐水口214は、ボウル部210の底部に形成され、排水トラップ管路220に向けて洗浄水を吐出する。排水トラップ管路220は、封水を形成するとともに、下水配管(図示せず)と連通している。
【0017】
洗浄水供給装置1は、図示しない制御部によって制御されるバルブユニット600と、バルブユニット600の下流に設けられ洗浄水を貯留するタンク800と、タンク800内の下流に設けられ洗浄水を加圧する加圧ポンプ900とを備える。
【0018】
バルブユニット600の上流側には、図示しない給水源からの洗浄水を供給する一次側流路である給水路320が接続される。また、バルブユニット600の下流側には、リム吐水口212に洗浄水を供給するためのリム側給水路340とタンク800に洗浄水を供給するためのタンク側給水路360とが接続される。
【0019】
バルブユニット600は、定流量弁620と、定流量弁620の下流に設けられるパイロット式ダイヤフラム弁である給水弁640と、給水弁640の下流に設けられるバキュームブレーカ680と、バキュームブレーカ680の下流に設けられる切替弁660とを備える。このように、本実施形態に係る洗浄水供給装置1では、バキュームブレーカ680が、切替弁660の上流側に設けられる。
【0020】
定流量弁620は、給水路320から定流量弁620に流れ込んで下流側へ向かう洗浄水の流量を一定にする。給水弁640は、その開閉により、リム吐水口212及びゼット吐水口214における洗浄水の吐水と止水とを切替える。
【0021】
バキュームブレーカ680は、洗浄水の逆流を防止する。切替弁660は、リム側給水路340またはタンク側給水路360へ向けて洗浄水を供給する。なお、バキュームブレーカ680から溢れ出た洗浄水は、水受け部684によって捕集された後、水受け部684の底面に接続された排水路390によってタンク800に排出される。
【0022】
タンク800の下部には、ポンプ側給水路370が接続されており、このポンプ側給水路370の下流端には加圧ポンプ900が接続されている。加圧ポンプ900は、ゼット側給水路380によりゼット吐水口214と接続されており、タンク800に貯水された洗浄水を加圧してゼット側給水路380経由でゼット吐水口214へ供給する。
【0023】
次に、図2により本発明の一実施形態に係るバルブユニットについて詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態に係るバルブユニットにおける給水弁を示す部分断面図である。なお、図2は給水弁により連通口が閉止された状態を示す。
【0024】
図2に示すように、バルブユニット600は、図示しない給水源からの洗浄水を供給する一次側流路である給水路320が接続される入水部610と、入水部610に交差して二次側流路を形成する出水部630と、入水部610の出水部630と接続される内壁面612から入水部610内に突出し、入水部610内と出水部630内とを連通する連通部650とを有する。
入水部610内には定流量弁620が設けられる。また、出水部630により形成される二次側流路はバキュームブレーカ680及びバキュームブレーカ680の下流に設けられる切替弁660を経て、リム側給水路340及びタンク側給水路360へ接続する(図1参照)。また、入水部610は、連通部650が形成される内壁面612a、612bと対向する位置に給水弁640が設けられる接続口614が開口されている。
【0025】
図2に示すように、連通部650の入口である連通口652は給水弁640により開閉される。
給水弁640は、弁本体641と、弁本体641を挟んで連通口652と逆側に圧力室を形成する圧力室部642と、圧力室部642内と出水部630とを連通するパイロット流路644と、パイロット流路644を開閉する制御弁646とを有する。なお、給水弁640は、制御弁646が弁本体641に形成された流路を開閉しないタイプであり、いわゆる主弁分離型のパイロット式ダイヤフラム弁である。
【0026】
弁本体641は、ゴム製で薄肉の折り返し部分であるコンボリューション部を有するダイヤフラム641aと、ダイヤフラム641aを保持する保持部材641bからなる。また、弁本体641には、入水部610内と圧力室部642内とを連通する貫通したブリード孔641c(連通流路)が設けられている。
【0027】
ブリード孔641cにはゴミ詰まりを防止するクリーニングピン647が挿入されており、このクリーニングピン647は、圧力室部642に固定されている。そのため、弁本体641が移動する毎にブリード孔641cの内周面とクリーニングピン647が接触し、ブリード孔641cの内周面の異物付着による弁本体641の動作不良を抑制している。また、クリーニングピン647は弁本体641の開閉動作をガイドするガイド手段としても機能する。
【0028】
また、図2に示すように連通部650は接続口614の内側端614aより外側にまで突出している。即ち、連通部650は、入水部610の下流側(定流量弁620より下流側)の内壁面612において出水部630と接続する側の内壁面612a、612bから、連通部650が形成される側とは逆側の内壁面612cを越える位置まで突出している。
【0029】
連通部650を取り囲む、連通部650が形成される入水部610の内壁面612a、612bの連通口652に対する高さ位置は一定である。即ち、連通部650の内壁面612からの突出量は、連通部650の流れ方向に延びる中心軸周りの連通部650の全周において同一である。なお、「連通部を取り囲む」とは、弁本体へと向かう洗浄水による水圧が弁本体に対してより均一になる範囲までを取り囲めばよく、例えば、接続口614を出水部630側へと投影した領域である。
【0030】
上述した本発明の一実施形態による洗浄水供給装置1においては、制御弁646を開弁すると圧力室部642内の圧力が出水部630内とほぼ同じ圧力まで低下し、弁本体641に加わる力の釣り合いが崩れ、弁本体641が連通部650から離れ給水弁640が開弁する。
また、制御弁646を閉弁すると、パイロット流路644が閉じ、水は入水部610内からブリード孔641cを通り、圧力室部642内に流れ込み圧力室部642内の圧力が入水部610の圧力とほぼ同じとなり、弁本体641が連通部650に密着し連通口652が塞がれる。なお、弁本体641が連通口652を塞ぐ方向に動く際、入水部610内の定流量弁620を経て、連通部650周りに流れ込む洗浄水により、弁本体641へと水圧がかかる。
【0031】
上述した本発明の一実施形態による便器装置100の洗浄水供給装置1によれば、入水部610は連通部650が形成される内壁面612b、612cと対向する位置に給水弁640が設けられる接続口614が開口され、連通部650は接続口614の内側端614aより外側にまで突出するため、外側にまで突出していない場合に比べて、連通部650周りを経て弁本体641へと向かう洗浄水による水圧が弁本体641に対して均一になりやすく、弁本体641にかかる圧力が不均一になることを抑制することができる。そのため、弁本体641を大型化せずとも弁本体641を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。
【0032】
さらに、上述した本発明の一実施形態による便器装置100の洗浄水供給装置1によれば、連通部650を取り囲む、連通部650が形成される入水部610の内壁面612a、612bの連通口652に対する高さ位置は一定であるため、一定でない場合に比べて、連通部650周りを経て弁本体641へと向かう洗浄水による水圧が弁本体641に対してより均一になりやすく、弁本体641にかかる圧力が不均一になることをさらに抑制することができる。そのため、弁本体641を大型化せずとも弁本体641を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。
【0033】
さらに、上述した本発明の一実施形態による便器装置100によれば、弁本体641を大型化せずとも弁本体641を傾きにくくし、破損の発生を抑えることができる。従って、洗浄水供給装置1の大型化を抑制することができ、便器装置100における洗浄水供給装置1のレイアウトの自由度を確保することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 洗浄水供給装置
100 便器装置
200 便器
210 ボウル部
212 リム吐水口
214 ゼット吐水口
220 排水トラップ管路
320 給水路
340 リム側給水路
360 タンク側給水路
370 ポンプ側給水路
380 ゼット側給水路
390 排水路
600 バルブユニット
610 入水部
614 接続口
620 定流量弁
630 出水部
640 給水弁(パイロット式ダイヤフラム弁)
641 弁本体
641a ダイヤフラム
641b 保持部
641c ブリード孔(連通流路)
642 圧力室部
644 パイロット流路
646 制御弁
647 クリーニングピン
650 連通部
652 連通口
680 バキュームブレーカ
684 水受け部
660 切替弁
800 タンク
900 加圧ポンプ
図1
図2