特許第6884329号(P6884329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884329
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】オーバーヘッドシャワー装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   A47K3/28
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-34587(P2017-34587)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-139698(P2018-139698A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】芝田 稔
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一文
(72)【発明者】
【氏名】入江 恭亮
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262780(JP,A)
【文献】 特開2008−086345(JP,A)
【文献】 特開2002−167819(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0098987(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02−4/00
E03C 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定され上方から水を吐水するオーバーヘッドシャワー装置であって、
複数の散水孔が形成された吐水ヘッドと、
上記吐水ヘッドを上記壁面に固定支持するとともに、給水源から供給された水を上記吐水ヘッドに流入させる通水路を内部に有する支持部と、
上記吐水ヘッドを上記支持部に固定する固定部材と、
上記吐水ヘッドまたは上記支持部の一方に設けられた挿入バー、及び上記吐水ヘッドまたは上記支持部の他方に設けられたバー受け部から構成された脱落防止機構と、
を備え、
上記挿入バーは上記バー受け部に側方から挿入され、上記固定部材は、上記挿入バーが上記バー受け部に挿入された状態で上記吐水ヘッドを上記支持部に固定するものであり、上記固定部材が外れた場合において、上記挿入バーが上記バー受け部と係合することにより、上記吐水ヘッドの上記支持部からの脱落が防止され
上記脱落防止機構は、上記吐水ヘッドを上方に移動させることによって上記挿入バーと上記バー受け部の係合が解除されるように構成されており、これにより上記吐水ヘッドの上記支持部からの取り外しが可能になることを特徴とするオーバーヘッドシャワー装置。
【請求項2】
さらに、上記吐水ヘッドの内部に形成された通水路と上記支持部の内部に形成された通水路との間を水密に接続する接続部を備え、上記挿入バー又は上記バー受け部は上記挿入バーの上記バー受け部からの抜けを阻止するように係合する係合部を備え、上記固定部材によって上記吐水ヘッドが上記支持部に固定された状態においては、上記係合部は係合しておらず、上記固定部材が外れ、上記挿入バーが上記バー受け部から抜け始めた場合において、上記係合部が係合するよりも前に、上記接続部による接続が外れ、水密が破れることを特徴とする請求項1記載のオーバーヘッドシャワー装置。
【請求項3】
吐水時において、上記吐水ヘッドまたは上記支持部の内部に設けられた通水路に作用する水圧は、上記挿入バーを上記バー受け部から引き抜く方向に作用し、上記挿入バーを上記バー受け部から引き抜く方向は、上記接続部による接続が外れる方向と略一致するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のオーバーヘッドシャワー装置。
【請求項4】
上記固定部材が外れ、上記脱落防止機構により上記吐水ヘッドの脱落が阻止されている状態においては、上記脱落防止機構は、上記吐水ヘッドが上記支持部に対して実質的に傾斜しないように上記吐水ヘッドを保持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオーバーヘッドシャワー装置。
【請求項5】
上記挿入バーは、上記吐水ヘッドまたは上記支持部の内部に挿入されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のオーバーヘッドシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッドシャワー装置に関し、特に、壁面に固定され上方から水を吐水するオーバーヘッドシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的にオーバーヘッドシャワー装置は大型であり重量もあるため、取り付け時の施工性などの観点から、複数の散水孔が形成されている吐水ヘッドと、吐水ヘッドを壁面に固定支持するための支持部と、が分解可能に構成されている。
【0003】
このようなオーバーヘッドシャワー装置は、使用者の上方に固定支持された状態で使用されるため、吐水ヘッドと支持部との施工時の不完全な取り付けや、経年劣化による接続部品の破損などにより、吐水ヘッドが落下するとシャワー室の床面などを傷つけてしまうおそれがあった。そこで、吐水ヘッドの落下を防止し、安全に使用できるオーバーヘッドシャワー装置が求められている。
【0004】
特開2004−113699(特許文献1)記載のオーバーヘッドシャワー装置において、吐水ヘッドの落下防止のために、吐水ヘッドと支持部とを固定部材で接続した後に、接続が緩まないように止めねじによる補助固定部材が備えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−113699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、補助固定部材がきちんと固定されていない場合や、経年変化などにより止めねじが緩み、補助固定部材が落下防止のための機能を果たさなくなってしまうおそれがあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、固定部材が外れた場合であっても、吐水ヘッドの落下を防止し、安全に使用することができるオーバーヘッドシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、壁面に固定され上方から水を吐水するオーバーヘッドシャワー装置であって、複数の散水孔が形成された吐水ヘッドと、吐水ヘッドを壁面に固定支持するとともに、給水源から供給された水を吐水ヘッドに流入させる通水路を内部に有する支持部と、吐水ヘッドを支持部に固定する固定部材と、吐水ヘッドまたは支持部の一方に設けられた挿入バー、及び吐水ヘッドまたは支持部の他方に設けられたバー受け部から構成された脱落防止機構と、を備え、挿入バーはバー受け部に側方から挿入され、固定部材は、挿入バーがバー受け部に挿入された状態で吐水ヘッドを支持部に固定するものであり、固定部材が外れた場合において、挿入バーがバー受け部と係合することにより、吐水ヘッドの支持部からの脱落が防止され、脱落防止機構は、吐水ヘッドを上方に移動させることによって挿入バーとバー受け部の係合が解除されるように構成されており、これにより吐水ヘッドの支持部からの取り外しが可能になることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、挿入バーはバー受け部に側方から挿入され、固定部材は、挿入バーがバー受け部に挿入された状態で吐水ヘッドを支持部に固定するものであり、固定部材が外れた場合において、挿入バーがバー受け部と係合することにより、吐水ヘッドが支持部から脱落することが防止されるため、万が一固定部材が、経年変化などにより外れてしまった場合でも、脱落防止機構により、吐水ヘッドが支持部から脱落しない。
また、脱落防止機構は係合することで脱落を防止するため、ボルトやねじなど締め付けによる固定と異なり、経年変化による緩み等が発生せず、固定部材が外れた際は確実に脱落を防止することができる。
さらに、このように構成された本発明によれば、吐水ヘッドを上方に移動させることで、係合が解除されるため、吐水ヘッドは一般的に大型で重く、下方へ自重が作用しているので、万が一衝撃が吐水ヘッドに加わったとしても、該衝撃により吐水ヘッドが支持部から外れることを防げ、より安全性を高めることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、吐水ヘッドの内部に形成された通水路と支持部の内部に形成された通水路との間を水密に接続する接続部を備え、挿入バー又はバー受け部は挿入バーのバー受け部からの抜けを阻止するように係合する係合部を備え、固定部材によって吐水ヘッドが支持部に固定された状態においては、係合部は係合しておらず、固定部材が外れ、挿入バーがバー受け部から抜け始めた場合において、係合部が係合するよりも前に、接続部による接続が外れ、水密が破れることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、固定部材が外れた場合、脱落防止機構の係合部が係合して吐水ヘッドの脱落を防止するまでの間に、通水路の接続部が外れ水密が破れるため、水がオーバーヘッドシャワー装置の外部に漏れ出すことで、早期に固定部材が外れていることを使用者に報知することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、吐水時において、吐水ヘッドまたは支持部の内部に設けられた通水路に作用する水圧は、挿入バーをバー受け部から引き抜く方向に作用し、挿入バーをバー受け部から引き抜く方向は、接続部による接続が外れる方向と略一致するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、固定部材が外れた状態では、吐水時に通水路を流れる水の水圧により、接続部が外れる方向に移動し水密が破れるため、使用者がオーバーヘッドシャワーを使用する際には、水漏れが発生し、固定部材が外れていることを確実に使用者に報知することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、固定部材が外れ、脱落防止機構により吐水ヘッドの脱落が阻止されている状態においては、脱落防止機構は、吐水ヘッドが支持部に対して実質的に傾斜しないように吐水ヘッドを保持することを特徴としている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、脱落防止機構によって保持されている状態において、支持部に対して吐水ヘッドが傾斜しないため、吐水ヘッドが傾くことにより吐水ヘッドの設置高さが低くなることで使用者へ衝突することを抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、挿入バーは、吐水ヘッドまたは支持部の内部に挿入されるように構成されていることを特徴としている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、挿入バーが、オーバーヘッドシャワー装置の内部に隠蔽されているため、意匠性を損なうことがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、脱落防止機構により、万が一固定部材が、経年変化などにより外れてしまった場合でも、吐水ヘッドが支持部から脱落しない。
また、脱落防止機構は係合することで脱落を防止するため、ボルトやねじなど締め付けによる固定と異なり、経年変化による緩み等が発生せず、固定部材が外れた際は確実に脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置を備えたシャワー室を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置を図1中のII−II線に沿って切断した部分断面図である。
図3】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置の吐水部及び支持部を示した分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置を図1中のIV−IV線に沿って切断した部分断面図である。
図5】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置において挿入バーが挿入バー受け部に挿入されている状態を示す断面図であって、(a)固定ねじによりシャワーヘッドが支持部に固定されている場合、(b)固定ねじが外れた場合を示す図である。
図6図5(b)の状態での挿入バーと挿入バー受け部との関係を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置において支持部から吐水ヘッドを取り外す際の動作を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
はじめに、図1及び図2にて本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置1の全体構成について以下に説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置を備えたシャワー室を示した説明図である。図2は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置を図1中のII−II線に沿って切断した部分断面図である。
【0024】
オーバーヘッドシャワー装置1は使用者に対して上方から吐水を行うオーバーヘッドシャワーであり、シャワー室の壁面W(以下、シャワー室の壁面を「壁面」と称する。)に固定されている。
【0025】
オーバーヘッドシャワー装置1は、使用者に対して上方から吐水を行うシャワーヘッド2と、シャワーヘッド2を壁面Wに固定支持している支持部4と、を備えている。本実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1においては、使用者が壁面Wに設けられた操作ハンドル13を操作することにより、シャワーヘッド2の下面に設けられたシャワー吐水孔12(図2)からのシャワー吐水を行うことができる。なお、本実施形態において、水とは湯、湯と水を混合した適温水などを含む。
【0026】
図1に示すようにシャワーヘッド2は、円盤状である円盤部6と、円盤部6上面の中心部から上方に延びる円柱状の円柱部8と、を有している。
円盤部6の下面には、中心に整流吐水を行うための整流吐水孔10が形成され、その周囲にシャワー吐水を行うための複数の散水孔であるシャワー吐水孔12が形成されている(図2)。
【0027】
図2に示すように、シャワーヘッド2の円柱部8の内部には概ね円柱形の金属製の通水路形成部材14が内蔵されている。この通水路形成部材14の内部には、支持部4を介して供給された水を整流吐水孔10へ導くための整流用通水路14a、及び各シャワー吐水孔12へ導くためのシャワー用通水路14bが夫々形成されている。また、支持部4の内側には整流用配管及びシャワー用配管(整流用配管17のみ図示)が挿通されており、通水路形成部材14の側面には、これらの配管を夫々接続するための通水接続部14cが設けられている。
【0028】
シャワーヘッド2の円盤部6の内部には、薄いドーナツ板状の通水路形成板18及び薄い円板状のシリコン製の散水ノズル形成部材19が内蔵されている。
整流用通水路14aによって導かれた水は、通水路形成板18中央の開口を貫通して延びる通路を通って、円盤部6下面中央の整流吐水孔10へ導かれる。
【0029】
散水ノズル形成部材19は、円板状のシリコン製の部材であり、その下面には切頭円錐型状に形成された複数の散水ノズル21が下方に向けて突出するように形成されている。各散水ノズル21先端の開口がシャワー吐水孔12として機能する。散水ノズル形成部材19は、円盤部6の中に、通水路形成板18と平行に延びるように配置されている。シャワー用通水路を介して導かれた水は、散水ノズル形成部材19と通水路形成板18の間の空間に流入し、散水ノズル形成部材19に設けられた各散水ノズル21のシャワー吐水孔12から吐水される。
【0030】
図2に示すように、支持部4は、長方形断面の筒状の部材であり(図1)、給水源から供給されてきた水をシャワーヘッド2へ向けて通水させるための通水路である整流用配管17及びシャワー用配管(図示せず)が内部に配置されている。
【0031】
支持部4の先端は、シャワーヘッド2の円柱部8の側面に挿入されており、シャワーヘッド2と支持部4とは、固定ねじ16(図3参照)によって結合されている。
支持部4の基端は、壁面Wの内部まで延びており、給水源である建物内の配管(図示せず)にねじ(図示せず)によって結合されている。
【0032】
また、支持部4の中に配置されている整流用配管17及びシャワー用配管(図示せず)の先端には、接続部である円筒状の接続部材38がろう付けにより夫々取り付けられている。これらの接続部材38は、整流用配管17及びシャワー用配管と水密性を保持するように接合されていると共に、先端がテーパ状となっており、外周に溝が形成されており、この溝にОリングが嵌め込まれている。
【0033】
これらの接続部材38が取り付けられた整流用配管17及びシャワー用配管をそれぞれ通水路形成部材14に形成され外部に開口している整流用通水路14a及びシャワー用通水路14b(図3)に挿入することで、接続部材38に嵌め込まれたOリングによるシールがされ両者の間の水密性が確保される。
なお、本実施形態においては接続部材38と整流用配管17及びシャワー用配管を別部材としているが、整流用配管17及びシャワー用配管又は通水路形成部材14に溝を形成しОリングを挿入することで、整流用配管17及びシャワー用配管に通水の機能と接続の機能を併用させても良い。
【0034】
次に、シャワーヘッド2と支持部4との詳細な取り付け構造について図3及び図4にて説明する。
図3は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置の吐水部及び支持部を示した分解斜視図である。図4は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置を図1中のIV−IV線に沿って切断した部分断面図である。
【0035】
図3に示すように、シャワーヘッド2には、円柱部8の側面に長方形状に開口している開口部22が設けられており、この開口部22から開口部22に対して直交するように通水路形成部材14に設けられている通水接続部14cが外部に延出している。
この通水接続部14cは、延出した先端において、外部に向けて整流用通水路14a及びシャワー用通水路14bが開口している。
【0036】
支持部4には、支持部4先端の下方の両側面からさらに前方に向かって延びる延出部26と、この延出部26の先端において上方に延びる係合部である鉤状の爪部28と、を有する挿入バー30、が設けられている。
【0037】
通水接続部14cの横幅は、円柱部8の開口部22の横幅の寸法より小さく、開口部22の左右端と通水接続部14cの左右端との間にそれぞれ、支持部4に設けられた挿入バー30を挿入するための隙間が設けられている。一方、通水路形成部材14の両側の側面には、挿入バー30を挿入するための溝である挿入バー受け部34(図4参照)が夫々設けられている。各挿入バー30は、円柱部8の開口部22に挿入されると、挿入バー受け部34の中に受け入れられる。
【0038】
また、図3に示すように、通水接続部14cの上面には雌ねじ穴32が設けられ、支持部4の上面にはねじ穴4aが設けられている。支持部4に設けられている挿入バー30がシャワーヘッド2の内部に設けられている挿入バー受け部34に挿入された状態において、ねじ穴4aを通して固定ねじ16を雌ねじ穴32にねじ込むことにより、支持部4にシャワーヘッド2が固定される。この際、通水接続部14cは、支持部4の内部に設けられた整流用配管17及びシャワー用配管と接続されると共に、挿入バー30は挿入バー受け部34に対し、水平状態を維持した状態で固定される。
【0039】
図4に示すように、シャワーヘッド2の内部に設けられている挿入バー受け部34は、挿入バー30を受け入れ可能な大きさに形成されており、挿入バー受け部34を形成する溝の上側の壁面には、下方に延びるリブ36が開口部22付近に設けられている。
挿入バー30が挿入バー受け部34に側方から挿入され、固定ねじ16により固定された状態では、爪部28とリブ36とは離間している。
【0040】
次に、図5及び図6にて、挿入バー30が挿入バー受け部34に挿入されている状態で、固定ねじ16が外れた場合における動作を説明する。
図5は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置において、挿入バーが挿入バー受け部に挿入されている状態を示す模式的断面図であり、(a)は固定ねじによりシャワーヘッドが支持部に固定されている場合を示し、(b)は固定ねじが外れた場合を示している。図6は、図5(b)の状態での挿入バーと挿入バー受け部との関係を示す模式的断面図である。
【0041】
図5(a)に示すように、支持部4内の整流用配管17及びシャワー用配管(図示せず)の先端には接続部材38が取り付けられており、この接続部材38に嵌め込まれたОリングにより通水路形成部材14と整流用配管17及びシャワー用配管の間が水密に接続されている。
【0042】
吐水時において、建物内の配管から供給された水は支持部4内部の整流用配管17及び/又はシャワー用配管を経由し、シャワーヘッド2内部の通水路形成部材14へ流入する。ここで、整流用配管17及び/又はシャワー用配管の内部を前方方向へ直進してきた水の水圧により、通水路形成部材14には前方方向へ向かう力が作用する。つまり、整流用配管17やシャワー用配管の内部を通過する水の水圧が、シャワーヘッド2を支持部4から引き抜く方向に作用する。
【0043】
固定ねじ16が外れた状態においては、この引き抜く力に抵抗する力が弱くなるため、結果として、シャワーヘッド2が支持部4に対して移動され、これに伴い整流用配管17及びシャワー用配管の先端にろう付けされている接続部材38が、整流用通水路14a及びシャワー用通水路14bから引き抜かれる。これにより、整流用配管17及びシャワー用配管と整流用通水路14a及びシャワー用通水路14bとの間の水密が破れ、供給された水がシャワーヘッド2と支持部4の接続部から漏れるようになる。
【0044】
図6は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置において固定ねじが外れた際の動作を示す断面図である。
【0045】
図6に示すように、固定ねじ16が外れた場合は、水圧によりシャワーヘッド2は支持部4から引き抜かれる方向に移動する(図5(b)参照)。
その際、挿入バー受け部34に挿入されている挿入バー30が、挿入バー受け部34から引き抜かれ、挿入バー30の先端に設けられている爪部28が、挿入バー受け部34のリブ36に徐々に接近していく。この接近の過程で、接続部材38が整流用通水路14a及びシャワー用通水路14bより抜けて水密が破れる。
【0046】
やがて、爪部28とリブ36とが当接し係合すると、シャワーヘッド2の支持部4からの抜けが阻止される。このように、爪部28が設けられた挿入バー30及びリブ36が設けられた挿入バー受け部34は、脱落防止機構として機能し、この脱落防止機構が挿入バー受け部34を挿入バー30から引き抜く方向の移動を規制し、支持部4からのシャワーヘッド2の脱落を防止している。
【0047】
また、支持部4に対してシャワーヘッド2が移動して、支持部4から抜け始めている状態であっても、図6に示すように、挿入バー30先端の爪部28の先が挿入バー受け部34を形成する溝の上側の壁面に当接するとともに、支持部4に挿入されている通水接続部14cの先端が支持部4の内壁面に当接している(図3)。
そのため、挿入バー受け部34から挿入バー30が引き抜かれ、シャワーヘッド2の重心が支持部4から離れて行ったとしても、シャワーヘッド2の内部に設けられた挿入バー受け部34と挿入バー30との当接及び支持部4と通水接続部14cとの当接により、シャワーヘッド2は支持部4に対し実質的に重力により傾斜しないようになっている。
【0048】
さらに、脱落防止機構が挿入バー30と挿入バー受け部34から構成されていることにより、万が一固定ねじ16が、経年変化などにより外れてしまった場合でも、シャワーヘッド2の支持部4からの脱落を防止することができる。
また、脱落防止機構は挿入バー30と挿入バー受け部34の係合により脱落を防止するため、ボルトやねじなど締め付けによる固定と異なり、経年変化による緩み等が発生せず、固定ねじ16が外れた際は確実に脱落を防止することができる。
【0049】
次に、支持部4からシャワーヘッド2を取り外す際の動作について説明する。
図7は、本発明の実施形態におけるオーバーヘッドシャワー装置において支持部からシャワーヘッドを取り外す際の動作を示した断面図である
【0050】
図7に示したように、挿入バー30に設けられている爪部28は上方に延びている。一方、爪部28と係合するリブ36は、挿入バー受け部34を形成する溝の上側の壁面から下方に延びるように、シャワーヘッド2の開口部22付近に設けられている。このため、シャワーヘッド2を支持部4から取り外す場合には、シャワーヘッド2を支持部4から引き抜くようにスライドさせた後、シャワーヘッド2を上方に持ち上げながら引き抜くように移動させることにより、支持部4から取り外すことができる。
【0051】
本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、脱落防止機構により、万が一固定ねじ16が、経年変化などにより外れてしまった場合でも、シャワーヘッド2を支持部4から脱落しないようにすることができる。
また、脱落防止機構は挿入バー30と挿入バー受け部34が係合することで脱落を防止するため(図6)、ボルトやねじなど締め付けによる固定とは異なり、経年変化による緩み等が発生せず、固定ねじ16が外れた場合にも確実に脱落を防止することができる。
【0052】
また、本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、固定ねじ16が外れた場合、挿入バー30の爪部28と挿入バー受け部34のリブ36が係合してシャワーヘッド2の脱落を防止するまでの間に、接続部材38が通水接続部14cから外れ水密が破れるため(図5図6)、水がオーバーヘッドシャワー装置1の外部に漏れ出すことで、早期に固定ねじ16が外れていることを使用者に報知することができる。
【0053】
さらに、本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、固定ねじ16が外れた状態では、吐水時に通水路形成部材14内部の通水路を流れる水の水圧により、接続部材38が通水接続部14cから外れる方向に移動し水密が破れるため(図5)、使用者がオーバーヘッドシャワー装置1を使用する際には、水漏れが発生し、固定ねじ16が外れていることを確実に使用者に報知することができる。
【0054】
また、本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、固定ねじ16が外れ、挿入バー30が挿入バー受け部34と係合することによってシャワーヘッド2が支持部4上に保持されている状態においても、支持部4に対してシャワーヘッド2が傾斜しないため(図6)、シャワーヘッド2が傾くことによりシャワーヘッド2の設置高さが低くなることで使用者へ衝突することを抑制することができる。
【0055】
さらに、本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、挿入バー30がシャワーヘッド2の内部に収容されて(図4)、隠蔽されているため、意匠性を損なうことがない。
【0056】
また、本発明の実施形態のオーバーヘッドシャワー装置1によれば、挿入バー30に爪部28が形成され、挿入バー受け部34にリブ36が形成されており、シャワーヘッド2を上方に移動させることで、爪部28とリブ36の係合が解除される(図7)。シャワーヘッド2は、一般的に大型で重く、下方へ自重が作用しているので、万が一衝撃がシャワーヘッド2に加わったとしても、該衝撃によりシャワーヘッド2が支持部4から外れることを防げるため、より安全性を高めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。本発明においては、固定ねじ16が外れた際に水密が破れ、水漏れにより使用者に報知することができるように構成されていることが好ましく、例えば、挿入バー受け部34から挿入バー30を引き抜く力は、シャワーヘッド2自身の自重やシャワーヘッド2に触れた人の力、またシャワーヘッド2を支持部から引き離すように作用させたバネの力などであっても良い。
【0058】
また、上述した本発明の実施形態においては、支持部4に挿入バー30が設けられ、シャワーヘッド2に挿入バー受け部34が設けられていたが、シャワーヘッド2に挿入バー30を設け、支持部4に挿入バー受け部34を設けることもできる。
さらに、上述した本発明の実施形態においては、整流用配管17は接続部材38を介して通水接続部14cに接続されていたが、整流用配管の先端を接続部として、通水接続部に直接接続することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 オーバーヘッドシャワー装置
2 シャワーヘッド(吐水ヘッド)
4 支持部
6 円盤部
8 円柱部
10 整流吐水孔
12 シャワー吐水孔
13 操作ハンドル
14 通水路形成部材
14a 整流用通水路
14b シャワー用通水路
14c 通水接続部
16 固定ねじ(固定部材)
17 整流用配管
18 通水路形成板
19 散水ノズル形成部材
21 散水ノズル
22 開口部
26 延出部
28 爪部(係合部)
30 挿入バー
32 ねじ穴
34 挿入バー受け部
36 リブ
38 接続部材(接続部)
W 壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7