特許第6884382号(P6884382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884382
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】管内走行装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/10 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   B61B13/10
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-124864(P2017-124864)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-6290(P2019-6290A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)集会での発表 ・集会名 ロボティクス・メカトロニクス講演会2017 ・開催日 平成29年5月12日 (2)刊行物などへの発表 ・発行者 一般社団法人 日本機械学会 ・刊行物名 No.17−2 ロボティクス・メカトロニクス講演会2017 講演論文集,2A2−A10 ・発行日 平成29年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
(72)【発明者】
【氏名】岡 義倫
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−7520(JP,A)
【文献】 特開2015−24748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0123517(US,A1)
【文献】 特開平9−11891(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0375276(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/076806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って連結される二つの、または、互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って側面視でジグザグ状に連結される三つ以上のリンクと、
最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部および互いに隣接する前記リンク同士の連結部に回転可能に保持される車輪とを備える管内走行装置であって、
前記リンクが二つの場合、互いに隣接する前記リンク同士は、互いに隣接する前記リンクにて規定される平面に沿って揺動可能に連結され、互いに近接するよう付勢手段により付勢され、
前記リンクが三つ以上の場合、互いに隣接する前記リンク同士は、三つ以上の前記リンクにて規定される平面に沿って揺動可能に連結され、山側および/または谷側の互いに隣接する前記リンク同士は、互いに近接するよう付勢手段により付勢されており、
前記各リンクは、その軸線まわりに回転可能とされ、
前記各リンクの後端部に配置される前記車輪は、前記各リンクの回転に伴って、前記各リンクの軸線まわりに旋回可能とされており、
前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の回転と、前記各リンクの回転とは、共通の駆動手段によりなされ、
前記駆動手段により前記各リンクの前端部に配置される前記車輪を回転させる場合から、前記駆動手段により前記各リンクとその前端部に配置される前記車輪とを回転させる場合に切り替えられる
ことを特徴とする管内走行装置。
【請求項2】
前記各リンクの前端部に配置される前記車輪は、車軸と一体回転可能とされており、
前記駆動手段は、筒状の前記各リンク内に、駆動軸が前記リンクの前端部に配置される前記車輪の前記車軸と互いの軸線が直交するよう収容され、
前記各駆動手段は、それを収容する前記リンクと一体回転可能とされており、
前記各駆動手段の前記駆動軸と前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の前記車軸とが一対の傘歯車を介して連結される
ことを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の内、一部の前記車輪の回転数と残りの前記車輪の回転数とに差を生じさせることで、前記駆動手段の前記切り替えがなされる
ことを特徴とする請求項2に記載の管内走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を走行する管内走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インフラ設備の耐用年数超過が問題視され始めており、中でも流体の輸送に使用される配管設備の老朽化が深刻化している。未然に漏洩事故を防ぐためには定期的な配管検査が必要になるが、人間は小さな配管内に入ることができないため、埋設された配管を掘り起こしたり、配管そのものを分解する必要がある。しかし、人手によるこれらの作業は時間や労力が掛かり、危険も伴う。そのため、近年は、カメラや肉厚測定センサを管内走行装置に搭載した配管検査ロボットによる検査が注目されており、様々な配管検査ロボットが開発されている。
【0003】
このような配管検査ロボットとしては、例えば、移動速度の速い自走式の管内走行装置を用いたものが多く提案されている。本件発明者は、先に、下記特許文献1に開示されるような自走式の管内走行装置を提案している。この管内走行装置は、オムニホイールを配管の軸方向へ能動的に回転させるための駆動力を発生させる第1駆動手段と、車輪をリンク部の軸方向周りに能動的にロール回転させるための駆動力を発生させる第2駆動手段とを有している。従って、下記特許文献1に記載の管内走行装置は、配管内を直進走行させる際には第1駆動手段のみが駆動され、配管内を螺旋状に走行させる際には第1駆動手段および第2駆動手段を駆動させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−007520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の管内走行装置では、直進走行のための駆動手段と、螺旋状に走行させるための駆動手段とが必要であることから、搭載される駆動手段の数が多くなり、装置の小型化および軽量化という点で改善の余地がある。また、従来の管内走行装置は、前述したように異なる駆動手段が必要であるので、直進走行のための駆動手段の搭載できる数が限定されてしまう。従って、従来の管内走行装置では、良好な走行を確保するために、直進走行のための駆動手段の駆動力を大きくすることになる。この場合、駆動手段の大型化をまねくので、装置の小型化および軽量化の観点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、直進および螺旋状の走行が良好に維持されるという点を満足しつつ、小型化および軽量化を図ることができる管内走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る管内走行装置は、互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って連結される二つの、または、互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って側面視でジグザグ状に連結される三つ以上のリンクと、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部および互いに隣接する前記リンク同士の連結部に回転可能に保持される車輪とを備える管内走行装置であって、前記リンクが二つの場合、互いに隣接する前記リンク同士は、互いに隣接する前記リンクにて規定される平面に沿って揺動可能に連結され、互いに近接するよう付勢手段により付勢され、前記リンクが三つ以上の場合、互いに隣接する前記リンク同士は、三つ以上の前記リンクにて規定される平面に沿って揺動可能に連結され、山側および/または谷側の互いに隣接する前記リンク同士は、互いに近接するよう付勢手段により付勢されており、前記各リンクは、その軸線まわりに回転可能とされ、前記各リンクの後端部に配置される前記車輪は、前記各リンクの回転に伴って、前記各リンクの軸線まわりに旋回可能とされており、前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の回転と、前記各リンクの回転とは、共通の駆動手段によりなされ、前記駆動手段により前記各リンクの前端部に配置される前記車輪を回転させる場合から、前記駆動手段により前記各リンクとその前端部に配置される前記車輪とを回転させる場合に切り替えられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る管内走行装置は、前記各リンクの前端部に配置される前記車輪は、車軸と一体回転可能とされており、前記駆動手段は、筒状の前記各リンク内に、駆動軸が前記リンクの前端部に配置される前記車輪の前記車軸と互いの軸線が直交するよう収容され、前記各駆動手段は、それを収容する前記リンクと一体回転可能とされており、前記各駆動手段の前記駆動軸と前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の前記車軸とが一対の傘歯車を介して連結されることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る管内走行装置は、前記各リンクの前端部に配置される前記車輪の内、一部の前記車輪の回転数と残りの前記車輪の回転数とに差を生じさせることで、前記駆動手段の前記切り替えがなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る管内走行装置の場合、駆動手段によりリンクの前端部に配置される車輪のみを回転させる場合から、駆動手段によりリンクおよびその前端部に配置される車輪を回転させる場合に切り替えられる。ここで、車輪のみが回転している場合は、管内走行装置が直進走行する状態を示している。また、リンクおよび車輪が回転している場合は、リンクと共にその後端部に配置される車輪が旋回するため、装置本体がねじれた状態となり、管内走行装置が螺旋状に走行する状態を示している。このように、本発明に係る管内走行装置によれば、直進走行させる際に駆動される駆動手段と、螺旋状に走行させる際に駆動される駆動手段とが共通であるので、装置の小型化および軽量化を図ることができる。また、本発明に係る管内走行装置によれば、搭載される全ての駆動手段を直進走行時に用いることができるので、駆動手段の小型化および軽量化を図ることができ、ひいては装置の小型化および軽量化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、駆動手段の駆動軸と車輪の車軸とが一対の傘歯車を介して連結されるので、簡易な構成で駆動手段の共通化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る管内走行装置によれば、各車輪の回転数を制御することで、車輪のみを回転させる場合から、リンクおよび車輪を回転させる場合への切り替えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の管内走行装置の一実施例を示す概略斜視図であり、斜め後方から見た状態を示している。
図2図1の管内走行装置の上方から見た概略図である。
図3図1の管内走行装置の使用状態を示す概略右側面図であり、一部を断面にして示している。
図4図2における概略A−A断面図である。
図5図3における概略B−B断面図であり、一部を省略して示している。
図6図1の管内走行装置の使用状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の管内走行装置の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1から図6は、本発明の管内走行装置の一実施例を示す概略図であり、図1は斜め後方から見た概略斜視図、図2は上方から見た概略図、図3は使用状態の一部を断面にした概略右側面図、図4図2における概略A−A断面図、図5図3における一部を省略した概略B−B断面図、図6は使用状態を示す概略斜視図である。本実施例の管内走行装置1は、筒状の配管2内を走行させつつ配管2内の状況を観察するものであり、山部3および谷部4が連続するジグザグ状に連結される四つのリンク5と、複数の一対の車輪6,6とを備える。図示しないが、本実施例の管内走行装置1には、配管2内を撮影するカメラや、配管2の肉厚を測定するセンサなどが搭載される。
【0016】
各リンク5は、筒状に形成されており、二割可能に構成されている。具体的には、各リンク5は、後端部が略四角筒状に形成され、それよりも前側が円筒状に形成されている。このような四つのリンク5は、以下に示すようにして、互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って側面視でジグザグ状に連結される。
【0017】
ここでは、前方から一番目のリンク5aと二番目のリンク5bとの連結について説明する。前後方向に互いに隣接するリンク5a,5b同士は、関節材7を介して、互いに揺動可能に連結される。関節材7は、円筒状に形成されており、軸線が左右方向へ沿うように配置される。関節材7の外周壁には、貫通穴8が形成されている。この貫通穴8と対応するよう関節材7に固定されるジョイント部9を介して、前後方向に互いに隣接するリンク5a,5bの内、後側に配置されるリンク5bは、関節材7に設けられる。
【0018】
ジョイント部9は、略四角筒状の第一ジョイント片10と、略円筒状の第二ジョイント片11とを有している。第一ジョイント片10の軸方向一端面は、関節材7の外周壁に沿うように、内方へ凹んで曲面状に形成されている。第一ジョイント片10の軸方向他端面には、軸方向外側へ延出して円筒状のボス片12が一体形成されている。ボス片12の外周面には、ネジが切られている。第二ジョイント片11は、軸方向一端面が開口した円筒状とされ、内穴がボス片12にねじ込まれるネジ穴に形成されている。第二ジョイント片11の軸方向他端面には、貫通穴13が形成されている。この貫通穴13の直径は、ボス片12の内穴の直径よりも小さく形成されている。また、第二ジョイント片11の軸方向他端面に形成された円環状の溝14には、Oリング15が設けられる。
【0019】
このような構成のジョイント部9を介して、互いに隣接するリンク5a,5bの後側に配置されるリンク5bは、関節材7に固定される。具体的には、まず、車輪6の駆動手段(たとえばモータ)16がリンク5b内に収容される。駆動手段16は、筒状のカバー17内に、駆動軸18がカバー17から突出した状態で収容される。カバー17から突出した駆動軸18には、それにはめ込まれる筒状のスペーサ19を介して、傘歯車20が一体回転可能に設けられる。また、カバー17の軸方向一端部には、軸方向に離隔して軸受21,21が設けられる。各軸受21は、略円筒形状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されている。本実施例では、軸受21として、深溝玉軸受が好適に用いられる。そして、駆動手段16は、カバー17に設けられた軸受21が第一ジョイント片10およびボス片12の内周面に設けられた状態でボス片12に第二ジョイント片11がねじ込まれると共に、二割可能なリンク5bがカバー17に装着されることで、リンク5b内に収容される。
【0020】
この際、駆動手段16が収容されたカバー17とリンク5bとは、キーを介して、互いに接続される。本実施例では、リンク5bの内周面にキーが形成される一方、カバー17の外周面にキー溝が形成されており、リンク5b装着時にキー溝にキーがはめ込まれる。また、リンク5bは、その軸方向一端面が第二ジョイント片11に設けられたOリング15に接触される。なお、リンク5bおよび駆動手段16は、カバー17の軸方向に離隔して配置される軸受21,21の内、軸方向他端側に配置される軸受21が第二ジョイント片11に接触することにより、軸方向他端側への移動が防止されている。このようにして内部に駆動手段16が設けられたリンク5bは、第一ジョイント片10の軸方向一端面が関節材7の外周壁に当接した状態で、第一ジョイント片10が関節材7にネジなどで固定されることで、関節材7に固定される。この際、第一ジョイント片10の内穴と関節材7の貫通穴8とが互いに対応して配置され、傘歯車20の先端部が関節材7内に配置される。
【0021】
一方、前後方向に互いに隣接するリンク5a,5bの内、前側に配置されるリンク5aは、関節材7に対して、揺動可能に設けられる。このリンク5aは、左右一対の板状の接続材22,22により、関節材7に接続される。左右の接続材22,22は、板面を前後に向けて配置されると共に、左右に離隔して配置される。左右の接続材22,22の板面には、内方へ延出して円筒状のボス部23が形成されている。このボス部23の内穴と、接続材22の板面に前後に貫通して形成された孔とにより、前後に開口する貫通孔24が形成されている。
【0022】
左右の接続材22,22は、関節材7にその軸線まわりに揺動可能に設けられる。具体的には、左側に配置される接続材22は、ボス部23が関節材7の左側の開口部に差し込まれた状態で、ボス部23が軸受25を介して関節材7の内周面に接続される。一方、右側に配置される接続材22は、ボス部23が関節材7の右側の開口部に差し込まれた状態で、ボス部23が軸受25を介して関節材7の内周面に接続される。各軸受25は、略円筒形状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されており、本実施例では、深溝玉軸受とされる。
【0023】
また、左右の接続材22,22はそれぞれ、リンク5aに固定される。具体的には、左側に配置される接続材22は、リンク5aの略四角筒状の部分の左面にネジなどで固定される。一方、右側に配置される接続材22は、リンク5aの略四角筒状の部分の右面にネジなどで固定される。これにより、前後方向に互いに隣接するリンク5a,5bの内、前側に配置されるリンク5aは、左右一対の接続材22,22を介して、関節材7に揺動可能に設けられる。
【0024】
ところで、前側に配置されるリンク5aには、後側に配置されるリンク5bと同様にして、駆動手段16が収容される。すなわち、駆動手段16は、カバー17に設けられた軸受21が第一ジョイント片10およびボス片12の内周面に設けられた状態でボス片12に第二ジョイント片11がねじ込まれると共に、二割可能なリンク5aがカバー17に装着されることで、リンク5a内に収容される。この際、駆動手段16が収容されたカバー17とリンク5aとは、キーを介して、互いに接続される。
【0025】
複数の一対の車輪6,6は、前後方向に互いに隣接するリンク5,5同士の連結部、最も前方に配置されるリンク5の前端部および最も後方に配置されるリンク5の後端部に回転可能に保持される。ここでは、前後方向に互いに隣接するリンク5a,5b同士の連結部に回転可能に保持される左右一対の車輪6,6について説明する。
【0026】
左右一対の車輪6,6は、隣接するリンク5a,5b同士の連結部に左右方向へ沿って配置される車軸26に一体回転可能に設けられる。車軸26は、その左右両端部がそれぞれ、接続材22とボス部23とに形成された貫通孔24に取り付けられる軸受27にはめ込まれる。ここで、各軸受27は、略円筒状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されており、本実施例では、玉軸受とされる。接続材22に取り付けられた状態では、車軸26は、軸受27および接続材22を貫通しており、その貫通部にそれぞれ車輪6が設けられる。この際、各車輪6は、車軸26にネジ28で固定されており、車軸26と一体回転可能とされている。また、車軸26には、傘歯車29が一体回転可能に設けられる。
【0027】
関節材7に車輪6が設けられると共に、隣接するリンク5a,5b同士が連結された状態では、駆動手段16は、筒状のリンク5b内に、駆動軸18が車軸26と互いの軸線が直交するよう収容されている。前述したように駆動軸18には傘歯車20が一体回転可能に設けられており、この傘歯車20と車軸26に一体回転可能に設けられた傘歯車29とが互いに噛み合わされる。すなわち、駆動手段16の駆動軸18と車輪6の車軸26とが一対の傘歯車20,29を介して連結される。
【0028】
このようにして、隣接するリンク5a,5b同士は、互いに揺動可能に連結される。この際、隣接するリンク5a,5b同士は、互いに近接するように、付勢手段30により付勢されている。本実施例では、付勢手段30は、トーションコイルばねとされる。トーションコイルばね30は、内部を車軸26が貫通した状態で、一端部が関節材7に接触すると共に、他端部が一方の接続材22に接触して配置される。これにより、図3において、前後方向に互いに隣接するリンク5a,5b同士の内、前側に配置されるリンク5aは、反時計方向へ揺動するよう付勢され、後側に配置されるリンク5bは、時計方向へ揺動するよう付勢される。
【0029】
なお、前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5との連結、および前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5との連結は、前方から一番目のリンク5と二番目のリンク5との連結と同様にしてなされる。また、前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5との連結部、および前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5との連結部には、前方から一番目のリンク5と二番目のリンク5との連結部に設けられる一対の車輪6,6と同様にして、一対の車輪6,6が回転可能に設けられる。
【0030】
前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5とは、互いに近接するように付勢されている。また、前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5とは、互いに近接するように付勢されている。これらの付勢は、前方から一番目のリンク5と二番目のリンク5との場合と同様にして、付勢手段30によりなされている。但し、前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5とは、上方へ凸形状に屈曲して連結するよう付勢される前方から一番目のリンク5と二番目のリンク5および前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5の場合とは異なり、下方へ凸形状に屈曲して連結した状態において付勢される。
【0031】
すなわち、前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5との場合、図3において、前方から二番目のリンク5が時計方向へ揺動するよう付勢され、前方から三番目のリンク5が反時計方向へ揺動するよう付勢される。前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5との場合、図3において、前方から三番目のリンク5が反時計方向へ揺動するよう付勢され、前方から四番目のリンク5が時計方向へ揺動するよう付勢される。このようにして付勢手段30により付勢されることで、四つのリンク5をジグザグ状に連結することができる。
【0032】
前述したように、最も前方に配置されるリンク5の前端部には、一対の車輪6,6が回転可能に保持される。これは、基本的には、隣接するリンク5,5同士の連結部に設けられる一対の車輪6,6と同様にしてなされる。なお、最も前方に配置されるリンク5は、前述したように内部に駆動手段16が収容されており、第一ジョイント片10が円筒状の関節材7にネジなどで固定されることで、関節材7に固定される。この際、第一ジョイント片10の内穴と関節材7の貫通穴8とが互いに対応して配置され、傘歯車20の先端部が関節材7内に配置される。
【0033】
最も前方のリンク5の前端部に配置される一対の車輪6,6は、左右方向へ沿って配置される車軸26に一体回転可能に設けられる。車軸26は、その左右両端部が円筒状の関節材7に支持される。前述した場合では、車軸26は、その両端部が関節材7の左右両端部に設けられた接続材22,22に支持されたが、ここでは、車軸26は、その両端部が関節材7の左右の開口部を閉塞する蓋部材に支持される。
【0034】
各蓋部材には、左右方向に貫通して孔が形成されており、この孔に軸受27が取り付けられる。車軸26は、その両端部がそれぞれ、蓋部材に設けられた軸受27にはめ込まれる。ここで、各軸受27は、略円筒状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されており、本実施例では、玉軸受とされる。蓋部材に取り付けられた状態では、車軸26は、軸受27および蓋部材を貫通しており、その貫通部にそれぞれ車輪6が設けられる。この際、各車輪6は、車軸26にネジ28で固定されており、車軸26と一体回転可能とされている。また、車軸26には、傘歯車29が一体回転可能に設けられる。
【0035】
関節材7に車輪6および最も前方のリンク5が設けられた状態では、駆動手段16は、最も前方の筒状のリンク5内に、駆動軸18が車軸26と互いの軸線が直交するよう収容されている。前述したように駆動軸18には傘歯車20が一体回転可能に設けられており、この傘歯車20と車軸26に一体回転可能に設けられた傘歯車29とが互いに噛み合わされる。すなわち、最も前方に配置されるリンク5内の駆動手段16の駆動軸18と車輪6の車軸26とが一対の傘歯車20,29を介して連結される。
【0036】
このようにして、最も前方のリンク5の前端部に配置される車輪6は、車軸26と一体回転可能とされる。前述したように、前後に隣接するリンク5,5同士の連結部に配置される車輪は、車軸26と一体回転可能とされる。すなわち、各リンク5の前端部に配置される車輪6は、それが設けられる車軸26と一体回転可能とされる。また、このようにして、最も前方のリンク5内の駆動手段16の駆動軸18と、最も前方のリンク5の前端部に配置される車輪6の車軸26とは、互いに軸線が直交するよう配置される。前述したように、前後に隣接するリンク5,5同士の内、後側に配置されるリンク5内の駆動手段16の駆動軸18と、前後に隣接するリンク5,5同士の連結部に配置される車輪6の車軸26とは、互いに軸線が直交するよう配置される。すなわち、駆動手段16は、筒状の各リンク5内に、駆動軸18がリンク5の前端部に配置される車輪6の車軸26と互いの軸線が直交するように収容される。ここで、駆動手段16の駆動軸18に設けられた傘歯車20と車輪6の車軸26に設けられた傘歯車29とは互いに噛み合わされている。従って、各駆動手段16の駆動軸18と各リンク5の前端部に配置される車輪6の車軸26とは、一対の傘歯車20,29を介して連結されている。なお、本実施例では、一対の傘歯車20,29は、一対のマイタ歯車とされる。
【0037】
前述したように、最も後方に配置されるリンク5の後端部には、一対の車輪6,6が回転可能に保持される。これは、基本的には、隣接するリンク5,5同士の連結部に設けられる一対の車輪6,6と同様にしてなされる。なお、最も後方のリンク5は、前述した場合と同様にして、左右一対の接続材22,22を介して関節材7に接続される。すなわち、左右一対の接続材22,22はそれぞれ、ボス部23が円筒状の関節材7の左右の開口部にそれぞれ差し込まれた状態で、ボス部23が軸受25を介して関節材7の内周面に接続される。各軸受25は、略円筒形状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されており、本実施例では、深溝玉軸受とされる。また、左右の接続材22,22はそれぞれ、リンク5の略四角筒状の部分の左面および右面にそれぞれネジなどで固定される。これにより、最も後方に配置されるリンク5は、左右一対の接続材22,22を介して、関節材7に揺動可能に設けられる。
【0038】
最も後方のリンク5の後端部に配置される一対の車輪6,6は、左右方向へ沿って配置される車軸26に一体回転可能に設けられる。車軸26は、その左右両端部が関節材7に支持される。この関節材7には、前述したように、最も後方のリンク5を関節材7に接続する左右一対の接続材22,22が設けられる。この左右一対の接続材22,22は、最も前方のリンク5に固定される左右一対の接続材22,22と同様の構成であり、貫通孔24に軸受27が取り付けられる。各軸受27は、略円筒状の外輪と内輪とが転動体を介して回転自在に構成されており、本実施例では、玉軸受とされる。車軸26は、その両端部がそれぞれ軸受27にはめ込まれる。接続材22に取り付けられた状態では、車軸26は、軸受27および接続材22を貫通しており、その貫通部にそれぞれ車輪6が設けられる。この際、各車輪6は、車軸26にネジ28で固定されており、車軸26と一体回転可能とされている。
【0039】
以上のように、本実施例の管内走行装置1は、前後に互いに隣接するリンク5,5同士が、関節材7を介して、互いに揺動可能に連結される。すなわち、前後に互いに隣接するリンク5,5同士は、四つのリンク5にて規定される平面に沿って揺動可能に連結される。また、本実施例の管内走行装置1は、山側の互いに隣接するリンク5,5同士(前方から一番目のリンク5と二番目のリンク5、前方から三番目のリンク5と四番目のリンク5)および谷側の互いに隣接するリンク5,5同士(前方から二番目のリンク5と三番目のリンク5)が、付勢手段30により互いに近接するよう付勢される。従って、管内走行装置1では、四つのリンク5をジグザグ状に連結することができる。
【0040】
また、本実施例の管内走行装置1は、駆動手段16がはめ込まれて収容されたカバー17が軸受21を介してジョイント部9に接続されると共に、カバー17とリンク5とがキーを介して接続される。従って、リンク5は、その軸線まわりに回転可能とされる。この際、駆動手段16は、カバー17と一体回転可能にカバー17内に収容されており、駆動手段16とそれを収容するリンク5とは、一体回転可能とされる。すなわち、駆動手段16の軸線まわりの回転により、それを収容するリンク5もその軸線まわりに回転可能とされる。さらに、本実施例の管内走行装置1は、リンク5とその後端部に配置される車輪6とが、接続材22を介して接続される。従って、リンク5の後端部に配置される車輪6は、その前方のリンク5の回転に伴って、リンク5の軸線まわりに旋回可能とされる。
【0041】
次に、本実施例の管内走行装置1の使用について説明する。管内走行装置1は、隣接するリンク5,5同士が、四つのリンク5にて規定される平面に沿って揺動可能でかつ互いに近接するよう付勢されているので、配管2内にその軸方向へ沿って配置することができる。具体的には、図3に示されるように、管内走行装置1は、山側に配置される車輪6が配管2の直径方向一方の内周面に接触されると共に、谷側に配置される車輪6および装置1の前後に配置される車輪6が配管2の直径方向他方の内周面に接触されて、配管2内に配置される。この際、各車輪6は、付勢手段30により隣接するリンク5,5同士が互いに近接するよう付勢されているので、配管2の内周面に押し付けられる。
【0042】
この状態から、管内走行装置1は、次に示すようにして配管2内を走行することができる。図3に示されるように、管内走行装置1は、配管2内を直進して走行する場合には、各リンク5内に収容された駆動手段16を駆動すればよい。これにより、駆動手段16の駆動軸18と一対の傘歯車20,29を介して連結された車軸26が回転し、その車軸26に固定された車輪6が一体回転することで、管内走行装置1が配管2内を前方または後方へ直進して走行することができる。
【0043】
このようにして駆動手段16により各リンク5の前端部に配置される車輪6を回転させる場合から、駆動手段16により各リンク5とその前端部に配置される車輪6とを回転させる場合に切り替えられる。駆動手段16のこの切り替えは、各リンク5の前端部に配置される車輪6の内、一部の車輪6の回転数と残りの車輪6の回転数とに差を生じさせることでなされる。ここで、一部の車輪6とは、各リンク5の前端部に配置される車輪6の内、一または複数の車輪6を示している。本実施例では、たとえば、各リンク5内の駆動手段16を制御手段で制御して、前方から一番目のリンク5内の駆動手段16の回転数および前方から二番目のリンク5内の駆動手段16の回転数が、前方から三番目のリンク5内の駆動手段16の回転数および前方から四番目のリンク5内の駆動手段16の回転数よりも低くされる。すなわち、前方から一番目のリンク5の前端部に配置される車輪6の回転数および前方から二番目のリンク5の前端部に配置される車輪6の回転数が、前方から三番目のリンク5の前端部に配置される車輪6の回転数および前方から四番目のリンク5の前端部に配置される車輪6の回転数よりも低くされる。
【0044】
これにより、車輪6に負荷がかかることになり、前方から三番目のリンク5の前端部に配置される車輪6および前方から四番目のリンク5の前端部に配置される車輪6が速く進みたいのに、前方から一番目のリンク5の前端部に配置される車輪6および前方から二番目のリンク5の前端部に配置される車輪6が遅いために余計な力が発生する。この余計な力は、前方から三番目のリンク5および前方から四番目のリンク5をそれぞれその軸線まわりに回転させる。
【0045】
前方から三番目のリンク5が回転することで、前方から三番目のリンク5の後端部に配置される車輪6は、前方から三番目のリンク5の回転に伴い、前方から三番目のリンク5の軸線まわりに旋回される。また、前方から四番目のリンク5が回転することで、前方から四番目のリンク5の後端部に配置される車輪6は、前方から四番目のリンク5の回転に伴い、前方から四番目のリンク5の軸線まわりに旋回される。すなわち、装置1の後部が装置1の前部を後から押すことにより、装置1の後部の余った出力がリンク5の軸線まわりの回転へ逃げるので、装置1の後部がねじれる。
【0046】
装置1の後部がねじれることで、装置1の後部の速度が遅くなり、前方から一番目のリンク5の前端部に配置される車輪6および前方から二番目のリンク5の前端部に配置される車輪6に負荷がかかる。これにより、前方から一番目のリンク5および前方から二番目のリンク5がそれぞれその軸線まわりに回転される。
【0047】
前方から一番目のリンク5が回転することで、前方から一番目のリンク5の後端部に配置される車輪6は、前方から一番目のリンク5の回転に伴い、前方から一番目のリンク5の軸線まわりに旋回される。また、前方から二番目のリンク5が回転することで、前方から二番目のリンク5の後端部に配置される車輪6は、前方から二番目のリンク5の回転に伴い、前方から二番目のリンク5の軸線まわりに旋回される。従って、装置1の後部がねじれることで装置1の前部がねじれ、各リンク5が互いにねじれることになり、装置1全体がねじれる。この際、各リンク5はそれぞれ同一方向に回転される。このようにして各車輪6の速度バランスを崩すことで装置1全体がねじれ、その状態において駆動手段16により車輪6を回転させることができるので、図6に示されるように、本実施例の管内走行装置1は、配管2内を螺旋状に走行することができる。
【0048】
本実施例の管内走行装置1の場合、各リンク5の前端部に配置される車輪6の回転と、各リンク5のその軸線まわりの回転とは、共通の駆動手段16によってなされる。従って、本実施例の管内走行装置1によれば、配管2内の直進走行および螺旋走行を共通の駆動手段16の駆動によりなすことができ、車輪6の回転の駆動手段とリンク5の回転の駆動手段とが別個の場合と比較して、装置1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0049】
また、本実施例の管内走行装置1の場合、各リンク5内に収容される駆動手段16が直進走行時に用いられる。従って、本実施例の管内走行装置1によれば、各駆動手段16を小型化および軽量化した場合において、装置1を走行させるのに十分な駆動力を得ることができる。すなわち、本実施例の管内走行装置1によれば、駆動手段16の小型化および軽量化により、装置1全体の小型化および軽量化を図ることができる。
【0050】
また、本実施例の管内走行装置1によれば、各駆動手段16の駆動軸18と各リンク5の前端部に配置される車輪6の車軸26とが一対の傘歯車20,29を介して連結されるので、簡易な構成で駆動手段16を共通化することができる。さらに、本実施例の管内走行装置1によれば、各駆動手段16を制御することで、車輪6のみが回転している場合から、リンク5が周方向途中まで回転すると共に車輪6が回転している場合に容易に切り替えることができる。
【0051】
本発明の管内走行装置は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、四つのリンク5がジグザグ状に連結されたが、これに限定されるものではなく、三つのリンク5または五つ以上のリンク5をジグザグ状に連結してもよいし、二つのリンク5,5を互いに屈曲しつつ前後方向へ沿って連結してもよい。
【0052】
リンク5が二つの場合、前後方向に互いに隣接するリンク5,5同士は、その互いに隣接するリンク5にて規定される平面に沿って揺動可能に連結され、屈曲した状態を保持できるように互いに近接するよう付勢手段30により付勢される。ここで、前後に互いに隣接するリンク5,5同士の連結は、前記実施例のリンク5,5同士の連結と同様になされる。また、最も前方に配置されるリンクである前側のリンク5の前端部に配置される車輪6、最も後方に配置されるリンクである後側のリンク5の後端部に配置される車輪6、リンク5,5同士の連結部に配置される車輪6は、前記実施例と同様にして、それぞれのリンク5に設けられる。また、前記実施例では、山側の互いに隣接するリンク5,5同士および谷側の互いに隣接するリンク5,5同士が付勢手段30により付勢されたが、これに限定されるものではなく、山側の互いに隣接するリンク5,5同士または谷側の互いに隣接するリンク5,5同士を付勢手段30により付勢してもよい。さらに、前記実施例では、駆動手段16の切り替えは、各リンク5の前端部に配置される車輪6の内、一部の車輪6の回転数を残りの車輪6の回転数よりも低くすることでなされたが、これとは逆に、一部の車輪6の回転数を残りの車輪6の回転数よりも高くすることで行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、配管内を走行する管内走行装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 管内走行装置
5 リンク
6 車輪
16 駆動手段
18 駆動軸
20 傘歯車
26 車軸
29 傘歯車
30 付勢手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6