(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884411
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20210531BHJP
G01N 30/08 20060101ALI20210531BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20210531BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20210531BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
G01N30/60 D
G01N30/08 L
G01N30/26 L
G01N30/26 M
G01N30/32 C
G01N30/32 A
G01N37/00 101
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-500926(P2018-500926)
(86)(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公表番号】特表2018-520356(P2018-520356A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016066461
(87)【国際公開番号】WO2017009304
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年6月21日
(31)【優先権主張番号】2015/5441
(32)【優先日】2015年7月12日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】515213788
【氏名又は名称】ファルマフルイディクス・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】PharmaFluidics NV
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】イェフ・オプ・デ・ベーク
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ウィム・デ・マルセ
【審査官】
高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−257459(JP,A)
【文献】
特開2007−132686(JP,A)
【文献】
特開2008−209334(JP,A)
【文献】
特表2015−515383(JP,A)
【文献】
米国特許第05720798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 −30/96
B01J 20/281−20/292
G01N 35/00 −37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の相を分離するためのマイクロ流体デバイス(100)であって、前記マイクロ流体デバイスは、対象相を獲得するための捕捉エリア(110)を備え、前記捕捉エリアは、2つの側で、共に前記マイクロ流体デバイスに統合された第1のダクト(120)及び第2のダクト(130)にそれぞれ接続され、前記マイクロ流体デバイス(100)は、さらに、
−前記検体を前記捕捉エリア(110)に取り込んで前記対象相を分離するための、前記第1のダクト(120)に接続された第1の統合入力部(I1)を備え、
−前記検体の残りが前記捕捉エリア(110)を通って流動したらそれを排出するための、前記第2のダクト(130)に接続された第1の統合出力部(U1)を備え、
−分離された相を第2の統合出力部(U2)を介して前記デバイスから溶出するための、前記第1のダクト(120)または前記第2のダクト(130)から選択される選択されたダクトに接続された第2の統合出力部(U2)を有し、
−前記分離された相を前記デバイスから送出することができるようにポンプに接続するための、前記選択されたダクトではない第1のダクト(120)または第2のダクト(130)に接続された第2の統合入力部(I2)を有し、
−前記選択されたダクト上の前記第2の統合出力部(U2)の接続部と前記マイクロ流体捕捉エリア(110)との間に位置する接続部を介して、前記選択されたダクトに同じく接続され、それにより前記相の分離及び前記相の溶出中の液体流が制御され得る、第3の統合入力部(I3)を有し、
前記第3の統合入力部(I3)は、前記マイクロ流体デバイスが動作している時、及び前記対象相の溶出中、回路において、前記第3の統合入力部(I3)が前記第1のダクトにある場合は前記第1の統合入力部(I1)に、または前記第3の統合入力部(I3)が前記第2のダクト(130)にある場合は前記第1の統合出力部(U1)に接続され、したがって、溶出中に前記第1の統合入力部(I1)または前記第1の統合出力部(U1)それぞれによる検体の損失を防止することを特徴とする、マイクロ流体デバイス(100)。
【請求項2】
前記第3の統合入力部(I3)は、前記マイクロ流体デバイスが動作している時、及び前記対象相の分離中、前記選択されたダクトにおいて反対圧力を生成するように構成され、前記第2の統合出力部(U2)には流動が不可能である、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項3】
前記第2の統合出力部(U2)は、前記第1のダクト(120)に接続され、前記マイクロ流体デバイス(100)は、動作している時、分離及び注入中の流動方向が反対であるように構成される、請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項4】
前記第2の統合出力部(U2)は、前記第2のダクト(130)に接続され、前記マイクロ流体デバイス(100)は、動作している時、分離及び溶出中に流動方向が同じであるように構成される、請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項5】
選択されていないダクトに第4の統合入力部(I4)を接続している、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項6】
前記第2の統合出力部(U2)は、前記分離された相をこの出力部を介して検出器または分析カラムに溶出するように構成され、前記第2の統合入力部(I2)は、前記分離された相を前記検出器または前記分析カラムに送出することができるようにポンプに接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項7】
少なくとも前記第1及び前記第2の統合入力部(I1、I2)は、ポンプシステムに接続するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項8】
前記ポンプシステムにより、線流速(S1、S2)が制御可能である、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項9】
少なくとも2つの6方向弁、または7方向以上の弁により、外部入力部及び出力部が実装される、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項10】
前記入力部及び出力部への外部接続は、少なくとも1つの10方向弁を使用して実装される、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項11】
前記相を獲得するように構成されるピラー構造、一体型相、充填材料が提供された、請求項1から10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項12】
前記第1の統合入力部(I1)を介して前記検体を投入するためのポンプを備え、前記第1の統合出力部(U1)を介して排出された検体の残りを収集するための廃棄物収集部と、前記第2の統合出力部(U2)上の前記分析カラムへの連結部と、前記第2の統合入力部(I2)を介して前記相を前記分析カラムに送出するための分析ポンプとを備える、請求項6に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項13】
分析カラムが、前記捕捉エリアと同じマイクロ流体基板に統合される、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)を備えるクロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
クロマトグラフィー手順における固定相としての、請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)の使用。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、検体中の相を分離するためのマイクロ流体デバイス(100)を操作するための方法であって、
−前記第1の統合入力部(I1)を介した入力及び前記第1の統合出力部(U1)を介した出力により、前記マイクロ流体捕捉エリア(110)において相を捕捉することであって、前記検体の溶出を防止するために、前記第2の統合出力部(U2)が連結されるチャネルに反対圧力が提供される、捕捉することと、
−前記第2の統合入力部(I2)を介した前記第2の統合出力部(U2)への送出により、前記分離された相を溶出することであって、前記第1の統合入力部(I1)または前記第1の統合出力部(U1)による前記分離された相の損失は、回路において、前記第3の統合入力部(I3)を使用して前記第1の統合入力部(I1)または前記第1の統合出力部(U1)を閉鎖することにより防止され、一方で、前記第3の統合入力部(I3)は、回路において、前記第3の統合入力部(I3)が前記第1のダクトにある場合は前記第1の統合入力部(I1)に、または前記第3の統合入力部(I3)が前記第2のダクト(130)にある場合は前記第1の統合出力部(U1)に接続され、したがって、溶出中に前記第1の統合入力部(I1)または前記第1の統合出力部(U1)それぞれによる検体の損失を防止する、溶出することと
を含む方法。
【請求項17】
動作モードにおいて前記デバイス(100)を通して双方向に流動するように、少なくとも2つの入力部に接続されたポンプシステムを制御することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
様々な線流速(S1、S2)を独立して制御することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相分離の分野に関する。より具体的には、本発明は、例えばクロマトグラフィーに使用される、液相を分離するための特定の構成を有するマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体伝播を使用する化学反応器システムは、化学成分の生成、ナノ粒子の合成、成分の分離及び/または抽出等を含む多くの用途を有する。
【0003】
液体伝播に基づく分離技術において、様々な物質と移動相及び固定相との親和性の差、ならびに/または成分の分配のための分配係数の差が典型的に使用される。物質はそれぞれ、固定相に対する独自の「結合力」を有するため、それらは移動相と共により速く、またはより遅く移動し、したがってある特定の物質が他の物質から分離され得る。原則的に、これは任意の組成物に適用することができ、材料の蒸発が不要で、温度のみの変動は効果が無視できるという利点を有する。
【0004】
混合物を分離するための分離技術の具体例は、例えばこれらを正確に分析可能とするためのクロマトグラフィーである。ガスクロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等、多種多様なクロマトグラフィーが存在する。
【0005】
液体クロマトグラフィー中、典型的には分析の対象となる相がまず混合物から獲得され、次いでそれが検出器に送られるか、または分析カラムに注入され得る。対象相の獲得は、典型的には捕捉カラム内で生じ、様々な物質と移動相及び固定相との親和性の差、ならびに/またはその構成要素内での混合物の分配のための分配係数の差が使用される。
【0006】
多くの場合、少量の検体に対して分析が行われる必要があるため、検体がデバイスを通って流動する時に、検体の全ての有用な部分が可能な限り効率的に、及び損失なく取り扱われることが重要である。従来のデバイスにおいて、システムにおける様々な構成要素、例えば捕捉カラム及び分析カラム等は、典型的には、コネクタ及び弁を使用して互いに連結される。次いで、これらの弁の切り替えにより、様々な動作、例えば検体の投入、検体の液相の分離、及び分離された対象相の検出器または分析カラムへの注入等の間、液体流を制御することができる。しかしながら、最新技術のデバイスの特定構成におけるその位置に起因して、これらの弁及びコネクタは、多くの場合、検体の一部が、弁の、または弁により導入される死容積内に留まるという欠点も有する。これは、利用可能な検体の量に対する悪影響を有し得るだけでなく、様々な分離された相の汚染をもたらし、分離がより効率的に行われなくなる可能性がある。さらに、従来の配置において、これらの死容積は、注入ステップ中のプラグ(plug)の著しい広がりを導入し、分析分離に悪影響を及ぼす。使用または作業容積が小さいほど、影響は大きい。
【0007】
つまり、改善の余地が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、液相を分離するための良好なマイクロ流体システム及び方法を提供することである。
【0009】
本発明の実施形態の利点は、様々なコネクタがマイクロ流体レベルで統合されたマイクロ流体デバイスが提供されることである。
【0010】
本発明の実施形態の利点は、デバイスを使用する際の様々な動作(検体の投入、相の分離、対象相の注入)に対して液体流を制御するために使用される弁が、研究されている検体に対して最小限の死容積を生成するように、またはさらに死容積を生成しないように、構成内で位置付けられ得ることである。
【0011】
本発明の実施形態の利点は、動作中、接続部及び弁の容積により影響されないように弁回路に接続され得るマイクロ流体デバイスが提供されることである。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、小粒子、凝集体または巨大分子の蓄積に起因する接続回路内の閉塞の可能性が低減され得る、またはさらに防止され得ることである。
【0013】
本発明の実施形態の利点は、固定相の漏出のリスクなしにマイクロ流体デバイスを通した双方向の流動が可能であることである。
【0014】
本発明の実施形態の利点は、マイクロ流体デバイスを通した双方向の流動が可能であり、流速は、マイクロリットル毎分の範囲内、及びナノリットル毎分の範囲内であることである。
【0015】
本発明の実施形態の利点は、固定相で充填されたマイクロ流体デバイスを通して、少なくとも2回の入力による流動が可能であることである。
【0016】
上記の目的は、本発明によるデバイスによって達成され得る。
【0017】
本発明は、一態様において、検体中の相を分離するためのマイクロ流体デバイスに関し、マイクロ流体デバイスは、対象相を獲得するためのマイクロ流体捕捉エリアを備え、マイクロ流体捕捉エリアは、2つの側で、共にマイクロ流体デバイスに統合された第1のダクト及び第2のダクトにそれぞれ接続され、マイクロ流体デバイスは、さらに、
検体を捕捉エリアに取り込んで前記対象相を分離するための、第1のダクトに接続された第1の統合入力部を有し、
検体の残りが捕捉エリアを通って流動したらそれを排出するための、第2のダクトに接続された第1の統合出力部を有し、
分離された相を第2の統合出力部を介してデバイスから溶出するための、第1のダクトまたは第2のダクトから選択される選択されたダクトに接続された第2の統合出力部を有し、
分離された相をデバイスから送出することができるようにポンプに接続するための、選択されたダクトではない第1のダクトまたは第2のダクトに接続された第2の統合入力部を有し、
選択されたダクト上の第2の統合出力部の接続部とマイクロ流体捕捉エリアとの間に位置する接続部を介して、選択されたダクトに同じく接続され、それにより相の分離及び相の溶出中の液体流が制御され得る、第3の統合入力部を有する。
【0018】
利点は、相が、検出器または分析カラムに溶出される時に、もはや弁を通過する必要がないことである。本発明の利点は、デバイス内での小粒子(すなわち相)の蓄積に起因する閉塞が回避されることである。本発明の利点は、弁を使用する場合に生じる死容積が回避されることである。これは、小容積の場合に確実に関連する。
【0019】
第3の統合入力部は、マイクロ流体デバイスが動作している時、及び対象相の分離中、第2の統合入力部への流動が不可能であるように、選択されたダクトにおいて反対圧力を生成するように構成される。
【0020】
本発明の実施形態の利点は、投入及び分離中の分析カラムへの検体の漏出が防止され得ることである。
【0021】
第3の統合入力部は、マイクロ流体デバイスが動作している時、及び対象相の溶出中、回路において、第3の統合入力部が第1のダクトにある場合は第1の統合入力部に、または第3の統合入力部が第2のダクトにある場合は第1の統合出力部に接続され、したがって、溶出中に第1の統合入力部または第1の統合出力部それぞれによる試料の損失を防止し得る。
【0022】
第2の統合出力部は、第1のダクトに接続されてもよく、マイクロ流体デバイスは、動作中、分離及び注入中の流動方向が反対であるように構成されてもよい。本発明の利点は、マイクロ流体デバイスにより、双方向の流動方向が可能となることである。
【0023】
第2の統合出力部は、第2のダクトに接続されてもよく、マイクロ流体デバイスは、動作中、分離及び溶出中の流動方向が同じであるように構成されてもよい。
【0024】
マイクロ流体デバイスは、選択されていないダクトに接続された第4の統合入力部を有してもよい。さらに、システムは、追加の入力部及び/または出力部を有してもよく、追加の入力部及び/または出力部における流動を制御するためにさらなる入力部が提供されてもよい。
【0025】
第2の統合出力部は、分離された相をこの出力部を介して検出器または分析カラムに溶出するように構成されてもよく、第2の統合入力部は、分離された相を検出器または分析カラムに送出することができるように分析ポンプに接続されてもよい。
【0026】
少なくとも第1及び第2の統合入力部は、ポンプシステムに接続するように構成され得る。
【0027】
線流速(S1、S2)は、ポンプシステムにより制御可能であってもよい。
【0028】
線流速(S1、S2)は、ポンプシステムにより、及びデバイスの固有流体特性を考慮することにより制御可能であってもよい。
【0029】
入力及び出力に対する外部接続は、少なくとも2つの6方向弁、または7方向以上の弁により実装されてもよい。
【0030】
入力及び出力に対する外部接続は、少なくとも1つの10方向弁を用いて実装されてもよい。
【0031】
デバイスには、相を獲得するように構成されるピラー構造、一体型相、または充填材料が提供されてもよい。
【0032】
デバイスは、第1の統合入力部を介して検体を投入するためのポンプを備えてもよく、第1の統合出力部を介して排出された検体の残りを収集するための廃棄物収集部を備えてもよく、第2の統合入力部を介して相を分析カラムに送出するための、分析カラムへの連結部を備えてもよい。
【0033】
本発明はまた、上述のようなマイクロ流体デバイスを備えるクロマトグラフィーシステムに関する。
【0034】
本発明はまた、クロマトグラフィー手順における固定相としての、上述のようなマイクロ流体デバイスの使用に関する。
【0035】
また、本発明はさらに、上述のような検体中の相を分離するためのマイクロ流体デバイスを操作するための方法に関し、方法は、
第1の統合入力部を介した入力及び第1の統合出力部を介した出力により、マイクロ流体捕捉エリアにおいて相を捕捉することであって、検体の溶出を防止するために、第2の統合出力部が連結されるチャネルに反対圧力が提供される、捕捉することと、
第2の統合入力部を介した第2の統合出力部への送出により、分離された相を溶出することであって、第1の統合入力部または第1の統合出力部による分離された相の損失は、回路において、第3の統合入力部を使用して第1の統合入力部または第1の統合出力部を閉鎖することにより防止される、溶出することとを含む。
【0036】
本発明の実施形態の利点は、分離段階から溶出段階に切り替える際に、過渡圧力に緩和が生じることである。これによって、分離相の損失またはシステム障害のリスクが低減され得ることが利点である。
【0037】
方法は、動作モードにおいてデバイスを通して双方向に流動するように、少なくとも2つの入力部に接続されたポンプシステムを制御することを含んでもよい。
【0038】
方法は、様々な流動方向の速度(S1、S2)を独立して制御することを含んでもよい。
【0039】
本発明の特定の好ましい態様は、添付の独立及び従属請求項に含まれている。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴、例えば請求項において示された特徴、及び明示的に提示されたものだけではない特徴と組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1B】
図1A及び
図1Bは、それぞれ、本発明の一実施形態による1方向または双方向流を有するマイクロ流体デバイスの概略図である。
【
図1C】本発明の一実施形態による、追加の統合入力部が提供されたマイクロ流体デバイスの概略図である。
【
図2C】
図2A〜2Cは、本発明の一実施形態による、複数ポート弁を使用したマイクロ流体デバイスの第1の具体例の概略図であり、
図2Aは、検体の投入中の弁の位置を示し、
図2Bは、段階の分離中の弁の位置を示し、
図2Cは、検出器または分析カラムへの注入時の弁の位置を示す。
【
図3C】
図3A〜3Cは、本発明の一実施形態による、複数ポート弁を使用したマイクロ流体デバイスの第2の具体例の概略図であり、
図3Aは、検体の投入中の弁の位置を示し、
図3Bは、段階の分離中の弁の位置を示し、
図3Cは、検出器または分析カラムへの注入時の弁の位置を示す。
【
図4C】
図4A〜4Cは、本発明の一実施形態による、複数ポート弁を使用したマイクロ流体デバイスの第3の具体例の概略図であり、
図4Aは、検体の投入中の弁の位置を示し、
図4Bは、段階の分離中の弁の位置を示し、
図4Cは、検出器または分析カラムへの注入時の弁の位置を示す。
【0041】
図は、単に概略を示し、制限的ではない。いくつかの構成要素の寸法は誇張されている場合があり、例示を目的として図中では縮尺通りに示されていない。特許請求の範囲において使用されている参照番号は、保護の範囲を制限するように解釈され得ない。様々な図において、同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
特定の実施形態に関して、及びある特定の図面を参照しながら本発明を説明するが、本発明はそれらに制限されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0043】
本明細書全体において、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体における様々な場所での「一実施形態において」または「実施形態において」という表現の記載は、必ずしも、全て常に同じ実施形態を示すとは限らないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたはいくつかの実施形態において、本公開に基づき、当業者に明らかであるような任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0044】
同様に、本発明の見本となる実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、1つの単一の実施形態において互いにグループ化され、その図または説明は、公開を簡素化し、様々な本発明の態様の1つまたはいくつかの理解を助けることを意図する。したがって、この公開方法は、本発明が、各請求項において明示的に言及されたものより多くの特徴を必要とすることの意図の反映として解釈されるべきではない。むしろ、後続の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、1つの単一の以前に開示された実施形態の全ての特徴より少ない特徴にある。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に含まれ、独立請求項は全て本発明の別個の実施形態である。
【0045】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの(但し他のではない)特徴を含有するが、様々な実施形態からの特徴の組み合わせは、当業者により理解されるように、本発明の範囲内であることが意図され、これらの様々な実施形態を構成する。例えば、後続の特許請求の範囲において、説明される実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0046】
さらに、説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、類似の要素を区別するために使用されており、必ずしも、時間的、または空間的、または順位上、または任意の他の様式での順番を説明するために使用されるとは限らない。このようにして使用される用語は、適切な状況において交換可能であること、また説明される本発明の実施形態は、本明細書において説明または示された順番とは異なる順番で作用するために好適であることが理解されるべきである。
【0047】
さらに、説明及び特許請求の範囲において使用される頂部、底部、上、正面等の用語は、説明を目的として使用され、必ずしも相対的位置を説明しているとは限らない。そのように使用される用語は、所与の状況において交換可能であること、また本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書において説明または示された方位とは異なる方位に従って機能するためにも好適であることが理解されるべきである。
【0048】
「備える」という用語は、特許請求の範囲において使用される場合、それ以降に記載される項目に制限されるものとして解釈されるべきではなく、この用語は、任意の他の要素またはステップを除外しないことが留意されるべきである。これは、言及されている示された特徴、値、ステップまたは構成要素の存在を指定するものとして解釈され得るが、1つまたはいくつかの他の特徴、値、ステップもしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を除外しない。したがって、「項目A及びBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなるデバイスに制限されるべきではない。これは、本発明に関連して、A及びBはデバイスの単なる関連構成要素であることを意味する。
【0049】
本明細書において提供される説明において、特定の詳細が多数開示される。したがって、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしに具現化され得ることが理解され得る。換言すれば、本説明の明確性を維持するために、周知の方法、構造及び技術は詳細には示されていない。
【0050】
本発明において、「統合ダクト」、「統合入力部」または「統合出力部」への言及がなされている場合、デバイスが提供される一体型マイクロ流体キャリア、例えばチップにおける、異成分からなる内蔵式ダクト、内蔵式入力部または内蔵式出力部が言及される。本発明において、ポンプへの言及がなされている場合、流体圧ポンプが言及されるだけでなく、代替として、ポンプのアレイ、例えば圧力駆動ポンプ、蠕動ポンプ、電気浸透ポンプ、圧電ポンプ、噴射ポンプ等が使用されてもよい。
【0051】
本発明において、相の分離への言及がなされている場合、相の獲得、または相の精製、または検体の2つ以上の相への分割もまた言及され得る。
【0052】
本発明において、相の溶離への言及がなされている場合、通常はそれをデバイスから除去するための相の移動もまた言及され得る。
【0053】
本発明は、液相を分離するためのマイクロ流体デバイスに関する。また、そのようなマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体捕捉カラムとしても言及される。相の分離は、液体クロマトグラフィーのフレームワーク内で極めて有利に使用され得るが、本発明はこれにより制限されない。本発明の実施形態によれば、対象相を獲得するためのマイクロ流体捕捉エリアを備えるマイクロ流体デバイスが説明される。これによって、弁がチップレベルで導入される必要がない解決策が提供されるが、システム内の死容積によりもたらされる有害な効果が生じない分離段階のための小型デバイスを提供するために、単純な解決策が提供されることが、実施形態の利点である。さらに、この単純な解決策により、相の分離及びその後の溶出のための全ての機能性が依然として得られる。
【0054】
本発明の実施形態において、マイクロ流体捕捉エリアは、共にマイクロ流体デバイスに統合された第1のダクト及び第2のダクトにそれぞれ接続された2つの側、例えば互いに反対の側に存在する。マイクロ流体デバイスは、さらに、検体を対象相が分離される捕捉エリアに取り込むための、第1のダクトに接続された第1の統合入力部を備える。マイクロ流体デバイスはまた、検体の残りがマイクロ流体捕捉エリアを通過し、対象相が固定化された後に、検体の残りを排出するための、第2のダクトに接続された第1の統合出力部を備える。
【0055】
マイクロ流体デバイスはまた、分離された相を第2の統合出力部を介してデバイスから溶出するための、第1のダクトまたは第2のダクトから選択される選択されたダクトに接続された第2の統合出力部と、分離された相をデバイスから送出することができるようにポンプに接続するための、選択されたダクトではない第1のダクトまたは第2のダクトに接続された第2の統合入力部とを備える。
【0056】
さらに、マイクロ流体デバイスはまた、選択されたダクト上の第2の統合出力部の接続部とマイクロ流体捕捉エリアとの間に位置する接続部を介して、選択されたダクトに同じく接続され、それにより相の分離及び相の溶出中の液体流が制御され得る、第3の統合入力部を備える。
【0057】
示されるように、分離及び溶出用のカラムは、一方向の流動方向または双方向の流動方向、すなわち相の分離及び分離された相の溶出時に異なる(反対の)流動方向が使用される様式に基づいてもよい。
【0058】
本発明の実施形態のさらなる特性及び利点を、図を参照しながら説明する。ここで、本発明は、これらの図に示される、または実施例において説明される特定の実施形態に制限されず、特許請求の範囲によってのみ限定されることが留意されるべきである。
【0059】
図1Aは、検体中の相を分離するための、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス100の概略図を示す。マイクロ流体デバイスは、対象相を獲得するためのマイクロ流体捕捉エリア110を備える。このマイクロ流体捕捉エリア110は、例えば、
図1Aに示されるような対象相を獲得するように構成されるピラー構造、一体型相または充填材料を備えてもよいが、本発明はこれに限定されない。捕捉エリア110は、典型的には、長さ1mmから50mm、幅0.1mmから50mm、及び深さ1μmから2mmの範囲内の寸法を有し得る。マイクロ流体捕捉エリア110は、デバイスまたはその大部分を備えるマイクロ流体チップに統合される。マイクロ流体デバイス100は、2つの側で、共にマイクロ流体デバイス100に統合された第1のダクト120及び第2のダクト130にそれぞれ接続される。第1のダクト及び/または第2のダクトの典型的な直径は、10μmから500μmの範囲内にあり、または、四角い交差部分の場合、10μmから500μmの幅及び0.5μmから5000μm(5mm)の深さである。
図1Aに示されるマイクロ流体デバイス100は、さらに、第1のダクト120に接続された第1の統合入力部I1、及び第2のダクトに接続された第1の統合出力部U1を有する。この入力部及び出力部を介して、対象相を分離するために検体が捕捉エリアに導入され得る。対象相は捕捉エリア110内に固定されるが、検体の残りは排出される。これは、例えば残余容器に向けたものであってもよいが、検体のこの部分のさらなる取扱い、加工または処理が依然として可能である。さらに、マイクロ流体デバイス100は、分離された相を第2の統合出力部U2を介して溶出するために、第2のダクト130に接続された第2の統合出力部U2をさらに備えてもよい。この溶出は、分離された相の検出器への運搬、分離された相の分析カラムへの注入等(図示せず)を含んでもよい。
図1Aからのマイクロ流体デバイス100は、さらに、典型的には、溶出される相が送出され得る、第1のダクト120に接続された第2の統合入力部I2を備える。第2の統合入力部I2は、分離された相を第2の統合出力部U2を介してデバイスから送出することができるように、ポンプに接続されてもよく、またはポンプに接続される(図示せず)。この溶出は、例えば、検出器または分析カラムにおいて行われてもよい。
図1Aに示されるようなデバイスの流動方向は、分離と溶出とで同じであってもよく、したがって一方向流動を有するデバイスと呼ぶことができる。
【0060】
さらに、
図1Aからのマイクロ流体デバイス100は、統合出力部U2に加えて、同じく第2のダクト130に接続された第3の統合入力部I3を備える。第3の統合入力部I3は、第2のダクト(two−duct)130上の第2の統合出力部U2の接続部とマイクロ流体捕捉エリア110との間に位置する。
【0061】
図1Aからのマイクロ流体デバイス100は、次のように動作する:対象相が分離または単離される検体が、第1の統合入力部I1に取り込まれる。これは第1のダクト120に接続されているため、検体は、マイクロ流体捕捉エリア110に取り込まれる。ここで、対象相が分離される。次いで、分離された相を含まない検体の残りは、第1の統合出力部U1を介してマイクロ流体捕捉エリア110から除去される。本発明の実施形態の利点は、検体の投入及び分離時に、第2の統合出力部U2により検体の損失が生じ得ないことである。これは、検体の投入及び相の分離中ポンプに接続され、第2のダクト130において反対圧力を生成し、したがって第2の統合出力部U2への流動を不可能とする、第3の統合入力部I3を使用することにより不可能とされる。したがって、例えば検出器または分析カラムへの検体の漏出が、マイクロ流体基板において物理的な遮断弁を使用することなく防止される。分離された検体の残りが第1の統合出力部U1を介して排出されたら、マイクロ流体捕捉エリア110において獲得または分離された相は、一方側が分析ポンプに接続され、他方側が第1のダクト120に接続された第2の統合入力部I2を介したポンピングにより、統合出力部U2を介して捕捉エリア110から送出される。この場合も、第3の統合入力部I3を使用して、液体流が寄生ダクト(parasite duct)を介して逃げるのが防止される。より具体的には、第3の統合入力部I3を回路において第1の統合出力部に接続することにより、分離された相が第2の統合出力部の代わりに第1の統合出力部を介してデバイスから出るのが防止される。多くの場合少量である分離された相を特に考慮すると、いかなる損失もないことが重要である。
【0062】
したがって、相の分離及び相の注入中、第3の統合入力部I3を介して液体流が制御され得る。
【0063】
図1Bは、本発明の代替の実施形態によるマイクロ流体デバイス100の概略図を示す。
図1Aに示されるマイクロ流体デバイスとの違いは、システムが双方向流動用に構成されていることであり、したがって、分離及び溶出における流動方向が反対である。したがって、このマイクロ流体デバイス100は、
図1Aに示される実施形態に関して説明されたのと同様の構成要素を備える。しかしながら、
図1Bにおいて、第2の統合出力部U2は、第2のダクトの代わりに第1のダクト120に接続されている。その結果、対応する統合入力部は、第2のダクト130に接続されている。このように、獲得された相の溶出は、検体の投入のための流動様式に比べて反対の流動様式で行われ得る。ここでも、
図1Bからのマイクロ流体デバイス100は、統合出力部U2に加えて、同じく第1のダクト130に接続された第3の統合入力部I3を備える。第3の統合入力部I3は、第1のダクト130上の第2の統合出力部U2の接続部とマイクロ流体捕捉エリア110との間に位置する。
【0064】
図1Bからのマイクロ流体デバイス100は、次のように動作する:対象相が分離される検体が、第1の統合入力部I1に取り込まれる。これは第1のダクト120に接続されているため、検体は、マイクロ流体捕捉エリア110に取り込まれる。ここで、対象相が分離される。次いで、分離された対象相を含まない検体の残りは、第1の統合出力部U1を介してマイクロ流体捕捉エリア110から除去される。第3の統合入力部I3を介して圧力を生成することにより、検体が捕捉エリアの代わりに第2の統合出力部U2を介して流動するのが防止される。分離された検体の残りが第1の統合出力部U1を介して排出されたら、マイクロ流体捕捉エリア110において獲得または分離された相は、分析ポンプに接続され、また第2のダクト130に接続された第2の統合入力部I2を介して、捕捉エリア110から送出される。回路において第3の統合入力部I3を第1の統合入力部I1に接続することにより、溶出時の第1の統合入力部I1による損失が防止される。したがって、ここでも、相の分離及び相の注入中、第3の統合入力部I3を介して液体流が制御され得る。
【0065】
図1A及び1Bからのマイクロ流体デバイス100は、統合された弁を使用しない。さらに、入力及び出力要素が統合されるため、小型マイクロ流体デバイスが確実となる。様々な接続、例えば入力部からポンプへの、または入力部及び/もしくは出力部同士の間の回路を形成するための接続を成すために弁が使用されるが、弁がデバイスの外部にあり、その前の相の溶出の直接的経路内にはないことと併せたデバイスの特定の構成により、死容積が存在しない、したがって分離された相の損失が存在せず、溶出したプラグの関連した分散も存在しないことが確実となる。換言すれば、相を正確に分離するための小型デバイスが達成される。
【0066】
また一例として、
図1Cからのマイクロ流体デバイス100をさらに示す。ここでは、さらなる追加の統合アクセスが提供される。これにより、例えば、検体の投入時、第1及び第2の統合アクセスの間の第1のダクトにおいて圧力を生成することにより、第2の統合入力部への検体の損失を防止することができる。より一般的には、本発明の実施形態によるデバイスは、示された入力部及び出力部に加えて、他の追加の入力部及び出力部が提供されてもよいこと、また、上記の例におけるさらなる第3の統合入力部の考えによれば、他の追加の入力部及び出力部における流動を制御するためにさらなる入力部が存在してもよいことが留意されるべきである。
【0067】
実施形態をこれに制限することなく、さらなる例示として、例示的実施形態の特定の実装によるマイクロ流体デバイスの概略図が、後続の図に示される。外部の6方向弁及び/または10方向弁を使用した例が示される。これらは単なるいくつかの例であり、当然ながらこれらの外部弁は異なる様式で実装されてもよく、6方向弁は、例えば2つの正確に構成された3方向弁で置き換えられてもよいことが留意されるべきである。
【0068】
第1の明示的実装において、2つの6ポート弁及び1つの10ポート弁を使用したマイクロ流体デバイスが示される。
図2Aから
図2Cは、それぞれ、検体の投入、分離及び溶出のための、弁の構成及びマイクロ流体デバイスの関連した構成を概略的に示す。マイクロ流体デバイス100は、注入用の第1の6ポート弁210、カラム用の第2の6ポート弁220、及びカラム用の10ポート弁230に連結されている。複数ポート弁の様々な位置により、ポートの様々な相互接続がもたらされ、したがって、デバイスの入力部及び出力部の間、ならびに/またはこれらの入力部及び出力部とポンプとの間で様々な構成が実装され得る。
【0069】
図2Aは、検体の投入中の弁の位置を示す。ここでは、検体の投入は、デバイスとは別個に6ポート弁210の1つにおいて行われる。検体は、後に分離のためのデバイスに効率的に導入され得るように、注入ループ240において弁に取り込まれる。このために、例えば注入針242及びさらなる注入弁244が使用されるが、他の手段もまた可能である。
【0070】
図2Aに記載の実施形態は、検体を投入するために次のように動作する:検体が、注入針242を使用することにより、ポート6を介して第1の複数ポート弁210に注入される。次いで、検体は、弁5、6、3、4の間の経路を通って流動し、注入ループ240に投入される。
【0071】
検体が注入ループ240に投入されたら、検体が捕捉エリア110内に取り込まれ得るように、及び対象相が分離され得るように、第1、第2及び第3の複数ポート弁が手動または自動で調節される。
図2Bは、相の分離中の弁の位置を示す。この段階において、注入ループ240は、投入ポンプ250に接続され、10方向弁上のポートを介して捕捉エリア110に接続される。第2の側面で、捕捉エリア110は、10ポート弁230の他のポートに接続される。したがって、第1のポンプ250、例えば投入ポンプ、注入ループ240及び捕捉エリア110の間に、投入ポンプを使用して検体が捕捉エリア110に流動され得る経路が形成される。さらに、捕捉エリアの第1の出力部から出力ダクト270に、さらなる経路が形成される。第3の複数ポート弁のポートは、第3の統合入力部への接続を提供し、これにより、検体が、すでに同じく捕捉エリア110に接続されている分析カラム140に通過しないことが確実となる。このために、第3の複数ポート弁のポート1は、ポンプまたは圧力弁または圧力タンク280に接続され、他方側ではポート6を介して第3の統合入力部に接続される。分析カラム140もまた捕捉エリアと同じマイクロ流体基板に統合されてもよいことが留意されるべきである。次いで、分析カラム140もまた、捕捉エリア110に永久的に接続され得る。
【0072】
図2Bにおいて説明される実施形態は、検体を分離するために次のように動作する:注入ループ240内にある検体が、投入ポンプ250により第1のダクトに取り込まれる。検体が入口または第1のダクトに送出されたら、第3の統合入力部に接続されたポンプ、圧力弁または圧力タンク280は、第1のダクト内の圧力生成下で、検体が検出器または分析カラム140に流動し得ないことを予測する。検体が捕捉エリア110を通過し、したがってその相が分離された後、廃棄物または検体の残りは、第2のダクトと第2の複数ポート弁との間の接続により形成された経路を介して排出される。この構成により、捕捉エリア110と分析カラム140との間の能動的な閉塞防止動作を伴う死容積のない接続が確実となる。
【0073】
ここで相が分離されるが、この相は、典型的には、デバイスから、例えば検出器または分析カラムに取り出されなければならない。このために、液体は、捕捉エリアに注入され、分離された相は、検出器または分析カラムまで移動及び通過される。
図2Cは、例えば検出器または分析カラムへの溶出時の弁の位置を示す。このために、例においてマイクロポンプまたは分析ポンプと呼ばれるポンプ260は、10点弁230を介して第2のダクト及び捕捉エリア110に接続される。次いで、分離された相は、捕捉エリア110に移動され、第2の統合出力部を介して分析カラム140に取り込まれる(この例において)。他の入力部及び出力部は、10ポート弁及び6ポート弁上の残りのポートを介して停止部に連結され、したがって、流動は不可能であり、相がこれらのダクト内に漏出することはできない。投入ポンプ250は、残余出力部252に接続される。
【0074】
図3Aから3Cは、3つの6ポート弁を使用したマイクロ流体デバイスの第2の具体例の概略図を示す。この例において、投入及び分離は、第1の明示的な例において説明されたのと同様に行われる。しかしながら、溶出中、
図3Cに示されるように、停止部を使用する代わりに、第1の統合入力部及び第3の統合入力部は、ここでも流動が不可能となるように、回路において6ポート弁の1つを介して互いに接続される。またこれによって、相が漏出できなくなる。
【0075】
図4Aから4Cは、1つの6方向弁及び1つの10方向弁を使用したマイクロ流体デバイスの第3の具体例の概略図を示す。ここでは、第2の具体例において説明されたのと同じ効果的な構成を得るために、様々なポートが最適に構成されている。
【0076】
第2の態様において、本発明はまた、第1の対象において説明されたようなデバイスと、デバイスに接続された分析カラムとを備えるクロマトグラフィーシステムに関し、これによって、検体の特定の相が分析カラムに注入され得る。クロマトグラフィーシステムのさらなる構成要素は、最新技術において知られているクロマトグラフィーシステムと同様であってもよい。このクロマトグラフィーシステムの特性及び利点は、第1の態様からの、マイクロ流体デバイスの実施形態の説明において記載された特性及び利点に対応する。
【0077】
第3の態様において、本発明はまた、クロマトグラフィー手順における固定相としての、第1の態様からの実施形態の1つによるマイクロ流体デバイスの使用に関する。
【0078】
第4の態様において、本発明は、検体中の相を分離するためのマイクロ流体デバイスを走査するための方法に関する。したがって、マイクロ流体デバイスは、第1の態様からの実施形態において説明されたようなマイクロ流体デバイスに対応する。方法は、第1の統合入力部を介した入力及び第1の統合出力部を介した出力により、マイクロ流体捕捉エリアにおいて相を捕捉することを含み、検体の溶出を防止するために、第2の統合出力部(U2)が連結されるチャネルに反対圧力が提供される。方法はまた、第2の統合入力部を介した第2の統合出力部への送出により、分離された相を溶出することを含み、第1の統合入力部または第1の統合出力部による分離された相の損失は、回路において、第3の統合入力部を使用して第1の統合入力部または第1の統合出力部を閉鎖することにより防止される。方法はまた、動作モードにおいてデバイスを通して双方向に流動するように、少なくとも2つの入力部に接続されたポンプシステムを制御することを含んでもよい。様々な流動方向の流動速度もまた制御され得る。さらなる方法ステップは、第1の態様において説明されたようなデバイスの様々な特性の機能性に対応し得る。
【0079】
上記説明は、本発明のある特定の実施形態の詳細を示す。しかしながら、上記がいかに詳細に文章で示されたとしても、本発明は多くの様式で適用され得ることは明らかである。本発明のある特定の特性または態様を説明する際のある特定の専門用語の使用は、ここでも、本明細書における専門用語が、この専門用語が連結される本発明の特定の特性または態様に制限されるように定義されることを暗示するように解釈されるべきではないことが留意されるべきである。