特許第6884420号(P6884420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6884420放出制御及び階層化シクロデキストリン包接体ビヒクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884420
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】放出制御及び階層化シクロデキストリン包接体ビヒクル
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20210531BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20210531BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210531BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/191 20060101ALI20210531BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20210531BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20210531BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20210531BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20210531BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20210531BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20210531BHJP
   C07C 229/36 20060101ALN20210531BHJP
   C07C 323/59 20060101ALN20210531BHJP
   C07C 323/58 20060101ALN20210531BHJP
   C07C 53/126 20060101ALN20210531BHJP
   C07C 233/25 20060101ALN20210531BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20210531BHJP
【FI】
   A61K47/69
   A61K47/42
   A61K31/167
   A61K31/198
   A61P43/00 121
   A61P29/00
   A61P1/04
   A61P1/12
   A61P25/00
   A61P3/02
   A61K45/00
   A61P43/00 123
   A61K31/352
   A61K31/405
   A61K31/718
   A61K31/661
   A61K36/48
   A61K36/185
   A61K31/191
   A61K31/19
   A23L5/00 F
   A23L33/175
   A01M1/20 A
   A01M21/04 C
   !A23L33/105
   !C07C229/36
   !C07C323/59
   !C07C323/58
   !C07C53/126
   !C07C233/25
   A61K131:00
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-560451(P2018-560451)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公表番号】特表2019-512019(P2019-512019A)
(43)【公表日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】US2017016583
(87)【国際公開番号】WO2017136775
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2020年2月3日
(31)【優先権主張番号】62/291,202
(32)【優先日】2016年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/232,647
(32)【優先日】2016年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/285,264
(32)【優先日】2016年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/444,036
(32)【優先日】2017年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518277066
【氏名又は名称】クザップ リサーチ アンド デベロップメント エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CZAP RESEARCH AND DEVELOPMENT, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100214226
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博文
(72)【発明者】
【氏名】クザップ、アル
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225610(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0079012(KR,A)
【文献】 特開昭59−044318(JP,A)
【文献】 特表2002−539151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン包接体送達ビヒクルであって、
空洞を有するシクロデキストリンと、
前記シクロデキストリンの前記空洞内に少なくとも部分的にゲスト分子として保持されてシクロデキストリン包接体を形成する薬物又はプロドラッグであって、酪酸(ブタン酸)、プロピオン酸及び酢酸の1つ以上又はそのエステル誘導体である薬物又はプロドラッグと、
前記ゲスト分子が生物学的に許容される担体内で前記シクロデキストリンによって安定して保持されている、前記シクロデキストリン包接体のための生物学的に許容される担体と、
前記ゲスト分子を保持する前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素であって、前記送達ビヒクルの宿主生物への送達時に前記シクロデキストリン分解活性が活性化されて前記ゲスト分子を前記シクロデキストリンの前記空洞から放出するように前記シクロデキストリン包接体と共に製剤化されている酵素と
を含有するシクロデキストリン包接体送達ビヒクル。
【請求項2】
前記酵素が、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、マルトジェニックアミラーゼ又はネオプルラナーゼである、請求項1に記載の送達ビヒクル。
【請求項3】
前記アミラーゼが、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ又は微生物のアミラーゼである、請求項2に記載の送達ビヒクル。
【請求項4】
前記シクロデキストリナーゼが微生物のシクロデキストリナーゼである、請求項2に記載の送達ビヒクル。
【請求項5】
前記シクロデキストリンが疎水性のアルキル化シクロデキストリンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項6】
前記シクロデキストリンが混合メチル化/エチル化シクロデキストリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項7】
前記シクロデキストリンと前記ゲスト分子の比が5:1〜1:5である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項8】
前記シクロデキストリンがα−、β−又はγ−シクロデキストリンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項9】
前記送達ビヒクルが、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、点眼、脳室内、関節内、髄腔内、くも膜下腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、局所、腫瘍内、舌下又は経口の経路による送達のために製剤化されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項10】
前記送達ビヒクルが、薬物又はプロドラッグの持続放出のために製剤化されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の送達ビヒクル。
【請求項11】
アセトアミノフェンシクロデキストリン包接体及びN−アセチルシステインシクロデキストリン包接体を薬学的に許容される担体中に含み、
前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素をさらに含む、医薬製剤。
【請求項12】
前記シクロデキストリンがβ−又はγ−シクロデキストリンである、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
アセトアミノフェンシクロデキストリン包接体及びN−アセチルシステインシクロデキストリン包接体を薬学的に許容される担体に組み合わせることを含み、
前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素をさらに加えることを含む、アセトアミノフェンを製剤化する方法。
【請求項14】
空洞を有するシクロデキストリンと、
前記シクロデキストリンの前記空洞内に第1のゲスト分子として少なくとも部分的に保持されたN−アシルシステインと、
前記シクロデキストリンの前記空洞内に第2のゲスト分子として少なくとも部分的に保持されたアセトアミノフェンとを含む、多成分積重ねシクロデキストリン包接体。
【請求項15】
請求項14に記載の多成分積重ねシクロデキストリン包接体を含み、前記第1及び第2のゲスト分子を保持する前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素をさらに含む、医薬製剤であって、
前記酵素が、前記送達ビヒクルの標的への送達時に前記シクロデキストリン分解活性が活性化されて前記ゲスト分子を前記シクロデキストリンの前記空洞から放出するように製剤化されている、医薬製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリン分解活性を有する選択された酵素と一緒に送達され、シクロデキストリン内に包含物として運ばれる分子からなる送達ビヒクルを含む、生物活性剤の送達のための生化学的構築物の分野にある。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは、非還元性環状グルコースオリゴ糖であり、しばしばデンプンがシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(E.C. 2.4.1.19;CGTase)で触媒分解された生成物である。シクロデキストリンは、1,4−グルコシド結合によって環内に結合された6、7又は8個のD−グルコピラノシル残基を有する3つの一般的なシクロデキストリン(それぞれ、α−、β−及びγ−シクロデキストリン)含む、種々の構造を有し得る(参照:Saenger et al., Chem. Rev. 98(1998) 1787-1802)。シクロデキストリンの円錐台形状は空洞又は内腔を形成し、その空洞はグルコース単位の数に応じた異なる直径を有する。選択されたシクロデキストリン(CD)の構造の等級を表1に示す。シクロマルトノナオース(δ−CD)及びシクロマルトデカオース(ε−CD)等のより大きなシクロデキストリン、並びに種々のシクロデキストリンに基づく超分子構造も可能である(参照:Zhang and Ma, Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug; 65(9): 1215-33)。
【0003】
【表1】
【0004】
シクロデキストリンは、一般に両親媒性であり、2−OH及び3−OHを提示する内腔の広い縁部と、6−OHを提示する狭い縁部とを有する。これらの親水性の水酸基は従って内腔の外側にあるのに対して、内側の表面は一般に疎水性であり、内側の表面に沿ってアノメリック酸素原子及びC3−HとC5−Hの水素原子が並んでいる。水溶液中では、この疎水性の内腔は、水分子、例えば約3(α−CD)、7(β−CD)又は9(γ−CD)の僅かに保持され、しかし低エントロピーであり、相対的に容易に置換可能な水分子を含むことができる。その他、親水性のシクロデキストリンは、CDの内腔の内部で又は部分的に内部で、1つ以上の適切な大きさの分子と結合し、保持して、シクロデキストリン包含体又は包接体を形成することができる。例えば、脂溶性の薬物等の薬物を含む、非極性の脂肪族化合物及び芳香族化合物を結合することができ、通常は疎水性の化合物の水溶性を増加させ、又は特定の食品添加物における臭気又は味等の望ましくない特性を最小化することできる。この理由から、シクロデキストリン包接は、医薬品、食品及び化粧品の分野で広く使用されている(参照:Hedges, Chem. Rev. 98(1998) 2035-2044)。シクロデキストリンは、例えば、医薬化合物と疎水性のシクロデキストリン誘導体との包接体等の様々な持続放出医薬製剤に使用されている(US4869904)。
【0005】
例えば、シクロデキストリンの包接特異性、物理的及び化学的特性を改変するために、様々な方法でシクロデキストリンを化学的に修飾することができる。例えば、CDのヒドロキシル基を誘導体化することができる。例えば、多数の医薬品に、2つの改変CD:β−CDのポリアニオン性の可変的に置換されたスルホブチルエーテル体であるSBE−β−CD、すなわちCaptisol、及びJanssenによって商業的に開発された改変CDであるHP−β−CDが、使用されている。更なるCD誘導体には、γ−CDの6−ヒドロキシル基がカルボキシチオアセテートエーテル結合及びヒドロキシブテニル−β−CDによって置換されているSugammadex、すなわちOrg−25969が含まれる。シクロデキストリンの別の形態には、2,6−ジ−O−メチル−β−CD(DIMEB)、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、ランダムメチル化β−シクロデキストリン(RAMEB)、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBE−β−CD)、スルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン(SBE−γ−CD)、スルホブチル化β−シクロデキストリンナトリウム塩、スルホブチル化β−シクロデキストリンナトリウム塩、(2−ヒドロキシプロピル)−α−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシプロピル)−β−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシプロピル)−γ−シクロデキストリン、DIMEB−50、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)―β―シクロデキストリン、TRIMEB、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、オクタキス(6−デオキシ−6−ヨ−ド)−γ−シクロデキストリン、及びオクタキス(6−デオキシ−6−ブロモ)−γ−シクロデキストリンが挙げられる。これらのような良好な薬理学的特性及び毒物学的プロファイルを有するCDが開発されているが、投与後、残留CDが、特に非経口投与後の共投与された薬物を含む薬物の薬物動態学的性質を乱す可能性がある(参照:Stella and He, Toxicol Pathol, January 2008, vol.36 no.1, 30-42)。
【0006】
α−CD及びβ−CD等のCDは胃酸及び唾液と膵臓の酵素消化に抵抗性があるが、γ−CDはGIT中のアミラーゼによって部分的にのみ消化されることが観察されて、治療用CD包接体に由来する残留CDの生理学的効果が懸念された。比較的少量の経口CDのみが吸収され、吸収されたCDは有意な代謝を受けることなく尿中に排泄されると理解されることが一般的に受け入れられている。吸収されないCDは、腸内微生物叢によって発酵されると理解されている。
【0007】
シクロデキストリンは、可変的に酵素消化に対して感受性を有する。例えば、γ−CDはα−アミラーゼによって比較的容易に加水分解されるが、α−シクロデキストリンはより不十分にしか加水分解されない。CDベースの治療剤は、一般にCDを消化する内因性アミラーゼの活性に依存する。しかし、患者間でアミラーゼ活性に著しい変動がある。例えば、膵臓不全、嚢胞性線維症、セリアック病又はクローン病を有する患者は、正常量のアミラーゼを欠いている可能性がある。同様に、患者、特に老人性患者は、胃酸産生が不十分であることがあり、それによって膵臓アミラーゼの放出を適切に引き起こすために適切な十二指腸内の低pH条件を作り出すことができない。制酸薬、ヒスタミン2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤又は代替的な酸ブロッカーの一般的な使用の増加によって、類似の効果が起こりうる。
【0008】
種々の微生物性のシクロデキストリン消化酵素が同定されている。CD分解酵素には、シクロマルトデキストリナーゼ(又はシクロデキストリナーゼ,又はCDase,EC 3.2.1.54)、マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2,1.313)、ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135)が含まれ、これらはCD、場合によってはプルラン、デンプン等の追加の基質を加水分解することができることが報告されている。シクロデキストリナーゼ(CDase)は、CDの加水分解を触媒して、α−1,4−結合の線状オリゴ糖を形成し、それによりCD包接体から物質を放出することができる。Bacillus macerans由来のCDaseが1968年に報告された。それ以降、Bacillus sp.、Thermoanaerobacter ethanolicus株39E、Flavobacterium sp.及びKlebsiella oxytoca株M5a1に由来する酵素等の細菌に由来する多くのCDaseが特徴付けられている。Archaeoglobus fuigidus、Thermococcus sp.B1001、Thermococcus sp.CL1、Thermofilum pendens、及びPyrococcus furiosusに由来するArchaeaのCDaseが特徴付けられている。Fiavobacterium sp.由来のCDaseの構造が詳細に特徴付けされている(参照:Sun et al., Archaea, Volume 2015(2015), Article ID 397924,Thermococcus kodakarensis KOD1(CDase−Tk)由来のシクロデキストリナーゼをコードする遺伝子の同定を報告している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US4869904
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem. Rev. 98(1998) 1787-1802
【非特許文献2】Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug; 65(9): 1215-33
【非特許文献3】Chem. Rev. 98(1998) 2035-2044
【非特許文献4】Toxicol Pathol, January 2008, vol.36 no.1, 30-42
【非特許文献5】Archaea, Volume 2015(2015), Article ID 397924
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
シクロデキストリン包接体送達ビヒクルであって、前記シクロデキストリン包接体送達ビヒクル中のシクロデキストリンが、空洞と、前記空洞内に少なくとも部分的にゲスト分子として保持されてシクロデキストリン包接体を形成する生物学的に活性な分子とを有する、シクロデキストリン包接体送達ビヒクルが提供される。前記ゲスト分子が生物学的に許容される担体内で前記シクロデキストリンによって安定して保持されている、前記シクロデキストリン包接体のための前記生物学的に許容される担体が提供されてもよい。前記ゲスト分子を保持する前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素が、前記送達ビヒクルに含まれてもよい。前記送達ビヒクルの標的への送達時に前記シクロデキストリン分解活性が活性化されて前記ゲスト分子を前記シクロデキストリンの前記空洞から放出するように前記酵素が製剤化されてもよい。
【0012】
送達ビヒクルの別の側面では、前記酵素が前記シクロデキストリン包接体と共に製剤化されているか、前記酵素が前記送達ビヒクル中に前記シクロデキストリン包接体と共に包装されてもよい。前記酵素が共に包装される場合、前記送達ビヒクルはさらに前記酵素のための生化学的に許容される担体を含んでもよい。
【0013】
前記標的は、例えば、ヒト患者等の宿主生物であるか、又は前記標的は、ファブリック若しくは包装材料等の無生物の環境であってもよい。
【0014】
前記酵素は、例えば、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、マルトジェニックアミラーゼ又はネオプルラナーゼであってもよい。アミラーゼは、例えば、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ又は微生物のアミラーゼであってもよい。前記シクロデキストリナーゼは、例えば、微生物のシクロデキストリナーゼであってもよい。
【0015】
前記シクロデキストリンは、例えば、疎水性のアルキル化シクロデキストリン、又は混合メチル化/エチル化シクロデキストリン等のCD誘導体であってもよい。
【0016】
前記シクロデキストリンと前記ゲスト分子との比は、例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4又は1:5であってよく、このパラメータの広範囲の、非整数の比を含む代替の値も可能である。
【0017】
シクロデキストリンは、例えば、α−、β−又はγ−シクロデキストリンであってよく、また非常に広範囲の代替のCD構造を用いることもできる。
【0018】
選択された実施態様では、前記ゲスト分子は、例えば、フラボノイド(ケルセチン)、カンナビノイド又は抗炎症薬(アセトアミノフェンを含む)等の薬物又はプロドラッグであってもよい。この場合、前記生物学的に許容される担体は、有利に薬学的に許容される担体であってもよい。この種の送達ビヒクルは、例えば、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、脳室内、関節内、髄腔内、くも膜下腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、エアロゾル、局所、腫瘍内、舌下又は経口の経路による送達のために製剤化されてもよい。同様に、前記送達ビヒクルは、前記薬物又は前記プロドラッグの持続放出のために製剤化されてもよい。
【0019】
別の側面では、前記送達ビヒクルは、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、動物忌避剤、フェロモン、又は植物成長調節剤であるゲスト分子を含んでもよい。さらなる別の側面では、前記ゲスト分子は、例えばフレグランス分子であってもよい。
【0020】
このようにして、本発明は、前記送達ビヒクルが、医薬品として、食品成分、医療用食品成分、栄養補助食品成分、栄養補助食品成分、フレグランスとして、ファブリック若しくは包装として、又は除草剤、殺虫剤、殺菌剤、動物忌避剤、フェロモン若しくは植物成長調節剤としての農業環境で用いてもよい、別の実施態様を提供する。
【0021】
種々の側面において、前記送達ビヒクルは、それに応じて、CD分解活性を有する酵素の有効量と共にCD包接体を提供し、それによって、予測可能な方法で前記ゲスト分子をCDから放出することを促進する。
【0022】
選択された実施態様では、前記送達ビヒクル中の前記薬物又は前記プロドラッグは、短鎖脂肪酸又はそのエステル誘導体、例えば、酪酸(ブタン酸)、プロピオン酸、酢酸又はそれらのエステル誘導体、例えば、グリセリドであってもよい。グリセリド形態が提供される場合、リパーゼが、例えば、前記送達ビヒクルに含まれてもよい。この種の製剤は、大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、オストミーストーマに関連する炎症又はオストミーストーマに関連する肉芽形成(granulation)等の胃腸障害の治療に使用することができる。
【0023】
ゲスト分子には、L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン等の様々なアミノ酸を含むことができる。選ばれた実施態様では、N−アセチルシステインは、例えば、肝保護製剤中にアセトアミノフェンと組み合わせることができる。別の肝保護性ゲスト分子は、例えば、シリマリン、クルクミン、又はテトラヒドロクルクミンの抽出物に由来するものでもよい。
【0024】
シクロデキストリン包接体送達ビヒクルを製剤化する方法であって、空洞を有するシクロデキストリンを提供する工程と、生物学的に活性な分子を提供し、前記生物学的に活性な分子がゲスト分子として前記シクロデキストリンの前記空洞内に少なくとも部分的に保持され、シクロデキストリン包接体を形成する工程と、前記シクロデキストリン包接体のための生物学的に許容される担体を提供し、前記ゲスト分子が前記生物学的に許容される担体内で前記シクロデキストリンによって安定して保持される工程と、任意に、前記ゲスト分子を保持する前記シクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素を提供し、前記送達ビヒクルの標的への送達時に前記シクロデキストリン分解活性が活性化されて前記ゲスト分子を前記シクロデキストリンの前記空洞から放出するように、前記酵素が前記シクロデキストリン包接体と共に製剤化されている工程とを含む、方法が提供される。
【0025】
また、例えば、空洞を有するシクロデキストリンと、前記シクロデキストリンの前記空洞内に第1のゲスト分子として保持されるアミノ酸と、前記シクロデキストリンの前記空洞内に第2のゲスト分子として少なくとも部分的に保持される生物学的に許容される脂質とを含む、多成分積重ねシクロデキストリン包接体が、提供される。選択された実施態様では、多成分積重ねシクロデキストリン包接体は、例えば、N−アシルシステイン(前記シクロデキストリンの前記空洞内に第1のゲスト分子として少なくとも部分的に保持される)と、アセトアミノフェン(前記シクロデキストリンの前記空洞内に第2のゲスト分子として少なくとも部分的に保持される)とを含んでもよい。これらの積重ね包接体において、前記ゲスト分子は任意の順序で存在してもよく、それによって、前記CD空洞が、円錐台状であり、すなわち、より大きい直径の開口部と、前記空洞の対向する端部に配置されたより小さな直径の開口部とを有する場合に、前記第1のゲスト分子は、前記より小さい開口部に近接し、前記第2のゲスト分子は、前記より大きな開口部に近接していてもよい(又はその逆であってもよい)。
【0026】
有効量の短鎖脂肪酸シクロデキストリン包接体を患者に投与することを含む、自閉症スペクトラム障害を有する患者を治療する方法が提供される。同様に、この種の方法を使用して、神経疾患を有する患者のマイクロバイオームを調節することができる。前記短鎖脂肪酸は、例えば酪酸であってもよく、またいくつかの実施態様において、この治療方法は有効量の酢酸(任意に包接体として)を投与することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】912個の睡眠サイクルに基づく、被験者の典型的なベースライン睡眠サイクルパターンを示すチャートである。
図2】アミラーゼを含まない大麻油シクロデキストリン包接体製剤の投与後の被験者の睡眠サイクルを示すチャートであり、アミラーゼを含む大麻油シクロデキストリン包接体製剤の投与後の被験者の睡眠パターンよりも顕著により少ない深い睡眠を示している。
図3】アミラーゼを含む大麻油シクロデキストリン包接体製剤の投与後の被験者の睡眠サイクルを示すチャートであり、被験者のベースラインの睡眠サイクルパターンよりも劇的により深い睡眠パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
多種多様な生物学的に活性な化合物は、本発明の送達ビヒクル中で、例えば、ドセタキセル(US2014−0336149、US2013−0296268)、カルバマゼピン(US2014−0080812)、リファンピシン(US7001893)、強心配糖体、特にジゴキシン(US4555504)、プロゲステロン(参照,Zoppetti et al., Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry, April 2007, Volume 57, Issue 1, pp 283-288)、アルベンダゾール、メベンダゾール、リコベンダゾール、フェノプロフェン、ケトプロフェン、コカイン、グリクラジド、ジギトキシン、マクロサイクル化合物(MCC)、イブプロキサム、プロクロロ−メタジン、DY−9760e、NSC−639829、ETH−615、ピロキシカム、塩酸レベモパミル、メシル酸ジプラシドン、スリンダク、メベンダゾール、スリンダク、フェノールフタレイン、ダナゾール(参照,Challa et al., 2005, AAPS PharmSciTech 2005; 6(2) Article 43)、イトラコナゾール、メシル酸ネルフィナビル、テルミサルタン、5−フルオロウラシル及び他のヌクレオシド類似体、カンプトテシン、又はフラボノイド等の医薬組成物の形態で含まれうる。
【0029】
同様に、農薬の分野では、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、忌避剤、フェロモン、及び成長調節剤等の多種多様な活性を有するゲスト分子を含む送達ビヒクルを提供することができる。
【0030】
本発明のシクロデキストリン送達ビヒクルはまた、織物、ファブリック又は包装材料中のフレグランス又は他の生物活性分子とのシクロデキストリン包接体を含むことができる(参照,Wang and Chen, 2005, Journal of Industrial Textiles, Vol 34, No.3, 157-166;US2015−0375521、US2015−0217896、US2015−0150256、US2014−0315780、US2013−0251926)。例えば、シクロデキストリン消化酵素を織物に組み込み、続いてシクロデキストリン包接体を酵素含有ファブリックに適用して送達ビヒクルを形成することができる。逆に、CD包接体を織物に組み込み、続いて酵素を織物に適用して送達ビヒクルを形成することができる。同様に、CD包接体及び酵素の両方を、製造中に織物に組み込むことができる。触媒活性を保持するように、酵素を織物基質に付着させた状態で、酵素を積層アセンブリ及び/又はナノコーティングを含む固定化によって織物に組み込むことができる(例えば、Wang et al, 2009, Bioprocess Biosyst Eng 32: 633-839に記載され、Advances in Textile Biotechnology, Nierstrasz and Cavaco-Paulo eds., Elsevier, 2010で概説された、リゾチームの固定化によるウールの抗細菌機能化プロセスと類似の方法)。
【0031】
CD及びCD誘導体に加えて、種々のシクロデキストリンに基づく超分子システムが、上記範囲の生物学的に活性な分子の送達に利用可能である(Zhang and Ma, Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug; 65(9): 1215-33に概説されている)。従って、シクロデキストリンに基づく送達ビヒクルの側面に、シクロデキストリンに基づくナノスポンジとして特徴付けられた実施態様が含まれる。これらのシステムは、例えば、薬物等の生物学的に活性な分子の制御された送達のための本発明の文脈に適合させることができる。
【0032】
選択された実施態様において、ビヒクルの標的への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化されてゲスト分子をシクロデキストリンの空洞から放出するように、ビヒクル中に含まれる酵素が製剤化されていてもよい。酵素の活性化は、例えば、経口送達のための医薬において、酵素が混合されたカプセル又は錠剤等の乾燥剤形で達成することができ、このようにすることで、酵素は、宿主の胃腸管で水分によって活性化されるまでは活性ではない。同様に、多種多様な時間放出マトリックス及び製剤が知られており、これらはCD送達ビヒクルでの使用に適合させて、標的への送達時にCD分解酵素の適切な活性化を編成することができる。
【0033】
種々の局面において、CD送達ビヒクルは、例えば、上記のようにシクロデキストリン包接体と共に製剤化された酵素を有していてもよく、又は酵素は送達ビヒクル中にシクロデキストリン包接体と共に包装されてもよい。共に包装する場合、送達ビヒクルは、例えば、CD包接体のための担体とは異なる、酵素のための生化学的に許容される担体を含むことができる。例えば、送達ビヒクルは、CD包接体及びCD分解酵素を含む分離した区画で提供されていてもよく、それによって、送達ビヒクルは、CD分解酵素区画に連結されたCD包接体区画から構成される。送達ビヒクル中のそれぞれの区画からCD包接体及びCD分解酵素を複合して放出するための機構を提供することができる。例えば、この種の別個の区画を有するシリンジが提供されてもよく、通常の排出機構、例えば各々の区画でピストンを協調的に移動させる機構によって排出され、一定分量のCD包接体及びCD分解酵素が排出され、それによって酵素とCD包接体を混合して、CDからのゲスト分子の酵素的放出を活性化することができる。この種のビヒクルは、例えば、局所用クリーム又は他の表面活性製剤(surface-active formulation)を分散するために用いてもよい。この種の多種多様な送達ビヒクルは、例えば、US4538920、US8100295、US8308340、US8875947、US8499976、WO2007/041266及びWO2000/021842に記載されている、エポキシ樹脂、二部式の医薬又は歯科製剤等の分散性二部式組成物として知られる装置から改作されてもよい。
【0034】
例えば、Chaudhary&Patel, IJPSR, 2013; Vol. 4(1): 68-78、US2009−0029020、US5070081、US5552378及びUS8658692に記載されているような、CD包接体を調製するために利用可能な様々な技術が存在する。CDを水又は水性アルコールと混合してペーストを得ることを含む混練法としては、一般的な手法が知られている。次いで、生物活性分子をペーストに添加し、特定の時間混練することができる。次いで、混練した混合物を乾燥させ、必要に応じて篩に通すことができる。CD包接体を調製するための他の既知のアプローチには、凍結乾燥、マイクロ波照射、及び超臨界流体逆溶剤技術(supercritical fluid antisolvent technique)が含まれる。
【0035】
本発明のCD送達ビヒクルは、単独で、又は他の化合物(例えば、核酸分子、小分子、ペプチド又はペプチド類似体)と組み合わせて、リポソーム、アジュバント等の担体、又は任意の薬学的又は生物学的に許容される担体の存在下、提供することができる。選択された実施態様は、哺乳類、例えばヒトのような動物宿主への投与に適した形態の薬物を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」又は「賦形剤」には、生理学的に適合する任意の及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。担体は、局所、皮下、皮内、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、舌下、吸入、腫瘍内又は経口投与を含む、任意の適切な投与形態に好適であり得る。薬学的に許容される担体には、滅菌水性溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液若しくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬物の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬物が生物学的に活性な化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0036】
従来の製薬実務を用いて、送達ビヒクルを対象に投与するための適切な製剤又は組成物を提供することができる。例えば、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼科、脳室内、関節内、髄腔内、くも膜下腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、エアロゾル、局所、腫瘍内、舌下又は経口等の任意の適切な投与経路を用いることができる。治療用製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であり得る。経口投与の場合、製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。点鼻薬の場合、製剤は散剤、鼻腔内滴剤又はエアロゾルの形態であり得る。舌下製剤の場合、製剤は、滴剤、エアロゾル又は錠剤の形態であり得る。
【0037】
シクロデキストリン分解酵素又は消化酵素は、例えば経口送達用に製剤化することができる。例えば、乳化溶媒蒸発法(Sharma et al., Pharm Dev Technol. 2013 May-Jun: 18(3): 560-9)で調製されるサブミクロン粒子製剤等の腸内酵素製剤(enteric enzyme formulation)が提供され得る。同様に、送達ビヒクルは、ヒドロゲル(参照:US2014−0094433)又は薬用ガム(参照:US2013−0022652)として製剤化されてもよい
【0038】
製剤を製造するための当該分野で周知の方法は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Mack Publishing Company, Easton, PAに見出される。非経口投与のための製剤には、例えば、賦形剤、滅菌水、又は生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物起源の油、又は水素化ナフタレンが含まれ得る。生体適合性、生物分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを用いることで、化合物の放出を制御することができる。他の潜在的に有用な非経口送達システムには、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な点滴システム、及びリポソームが含まれる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含有してもよく、又は例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩及びデオキシコール酸塩を含む水溶液であってもよく、又は点鼻薬の形態で、若しくはゲルとしての投与のための油性溶液であってもよい。
【0039】
本発明の医薬組成物は、組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、組成物は、固体、液体又は気体(エアロゾル)の形態であってもよい。典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣及び鼻腔内が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、硬膜外、胸骨内注射又は点滴技術が含まれる。本発明の医薬組成物は、患者に組成物を投与した時に、組成物に含まれる活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化されている。患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり、例えば、錠剤、カプセル又はカシェ剤は単回投与単位であってよく、エアロゾル形態の化合物の容器は、複数の投与単位を含んでもよい。
【0040】
医薬組成物を調製するのに使用される材料は、薬学的に純粋であり、使用される量で非毒性でなければならない。本発明の組成物は、特に望ましい効果について知られている1つ以上の化合物(活性成分)を含み得る。医薬組成物中の活性成分の最適な投与量は、様々な要因に依存することは、当業者には明らかであろう。関連する因子には、対象の種類(例えば、ヒト)、有効成分の特定の形態、投与方法、及び用いられる組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
一般に、医薬組成物は、本明細書に記載の本発明の送達ビヒクルを、1つ以上の担体と混合して含む。組成物が、例えば、錠剤又は散剤の形態となるように、担体は粒子状であってもよい。例えば、経口シロップ又は注射液である組成物の場合、担体は液体であってもよい。さらに、例えば、吸入投与に有用なエアロゾル組成物を提供するために、担体は気体状であってもよい。
【0042】
経口投与が意図される場合、組成物は、好ましくは、固体又は液体のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁液及びゲルの形態は、固体又は液体のいずれかのような本明細書で考えられる形態内に含まれる。
【0043】
経口投与のための固体組成物として、組成物は、散剤、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、チューインガム、ウェーハ、ロゼンジ等の形態に製剤化することができる。このような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤又は食用担体を含有する。さらに、以下のアジュバントの1つ以上が存在してもよい:シロップ、アカシア、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン、及びそれらの混合物等の結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステロテックス(Sterotex)等の潤滑剤;乳糖、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、メチルセルロース、及びそれらの混合物等の充填剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等の高分子量ポリマー、ステアリン酸等の高分子量脂肪酸、シリカ等の潤滑剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;ショ糖又はサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香味等の香味剤;及び着色剤。
【0044】
組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、組成物は、上記タイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール又は脂肪油等の液体担体を含有してもよい。
【0045】
組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、水性若しくは油性の乳剤又は懸濁液、又は使用前に水及び/又は他の液体媒体で再構成することができる乾燥粉末の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与のため又は注射による送達のためのものであってもよい。経口投与を目的とする場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、増粘剤、防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸アルキル)、色素/着色剤及び風味増強剤(風味料)の1つ以上を含有する。注射により投与される組成物において、界面活性剤、保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸アルキル)、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤(例えばソルビトール、グルコース又は他の糖シロップ)、緩衝剤、安定剤及び等張剤の1つ以上を含有してもよい。乳化剤は、レシチン及びモノオレイン酸ソルビトールから選択することができる。
【0046】
本発明の液体医薬組成物は、溶液、懸濁液又は他の同様の形態であっても、以下のアジュバントの1つ以上を含んでもよい:注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム等の無菌希釈剤;溶媒又は懸濁媒体の役割を果たす合成モノ若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒等の不揮発性油;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチエンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度調整剤。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに封入することができる。生理食塩水が好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0047】
医薬組成物は、局所投与を意図することができ、その場合、担体は、溶液、乳剤、軟膏、クリーム又はゲルの基剤を適切に含むことができる。基剤は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水及びアルコール等の希釈剤、並びに乳化剤及び安定剤の1つ以上を含むことができる。増粘剤は、局所投与のための医薬組成物中に存在してもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチ又はイオントフォレーシス装置を含み得る。局所製剤は、約0.1〜約25%w/v(単位体積当たりの重量)の濃度の生物活性化合物を含有してもよい。
【0048】
組成物は、例えば、直腸で融解して薬物を放出する坐剤の形態で直腸投与を意図することができる。直腸投与のための組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有してもよい。そのような基剤としては、ラノリン、カカオバター及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。低融点ワックスは、坐剤の調製に好ましく、脂肪酸グリセリド及び/又はカカオバターの混合物が適切なワックスである。ワックスを溶融し、攪拌してアミノシクロヘキシルエーテル化合物を均一に分散させる。次いで、溶融した均一混合物を使いやすい大きさの型に注ぎ、冷却させて凝固させる。
【0049】
組成物は、固体又は液体投与単位の物理的形態を変更する様々な物質を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック、及び他の腸溶コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセル又はカシェに入れてもよい。
【0050】
本発明の医薬組成物は、気体状投与単位から構成されてもよく、例えば、エアロゾルの形態であってもよい。用語エアロゾルは、コロイド性のものから加圧包装からなるシステムまでの範囲の様々なシステムを示すのに使用される。送達は、液化又は圧縮気体によって、又は活性成分を分配する適切なポンプシステムによって行うことができる。本発明の化合物のエアロゾルは、活性成分を送達するために、単相系、二相系又は三相系で送達することができる。エアロゾルの送達には、一緒にキットを形成することができる必要な容器、アクチベータ、バルブ、サブコンテナなどが含まれる。
【0051】
生物学的に活性な化合物は、遊離塩基の形態であるか、又は塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、当該分野で公知の他の塩等の薬学的に許容される塩の形態であってもよい。適切な実施態様(例えば、経口又は非経口投与経路)のために、化合物の生物学的利用能又は安定性を高める適切な塩が選択される。
【0052】
注射によって投与されることが意図された組成物は、本発明の送達ビヒクルを水及び好ましくは緩衝剤と組み合わせて溶液を形成することによって調製することができる。水は、好ましくは無菌の発熱物質を含まない水である。均質な溶液又は懸濁液の形成を容易にするために、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、アミノヘキシルエーテル化合物と非共有結合的に相互作用して、水性送達系へのアミノヘキシルエーテル化合物の溶解又は均一に懸濁を促進する化合物である。本発明によるアミノシクロヘキシルエーテル化合物が疎水性であり得るため、界面活性剤が本発明の水性組成物中に存在することが望ましい。注射用の他の担体としては、滅菌の過酸化物を含まないオレイン酸エチル、脱水アルコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
注射溶液のための適切な薬学的アジュバントには、安定化剤、可溶化剤、緩衝剤及び粘度調整剤が含まれる。これらのアジュバントの例としては、エタノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酒石酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び高分子量ポリエチレンオキシド粘度調整剤が挙げられる。これらの医薬製剤は、筋肉内、硬膜外、腹腔内、又は静脈内に注射することができる。
【0054】
本発明はまた、1つ以上の送達ビヒクルを含む医薬組成物を含むキットを提供する。キットには、医薬品の使用説明書も含まれる。好ましくは、市販の包装品は、医薬組成物の1つ以上の単位用量を含有する。例えば、そのような単位用量は、静脈注射の調製に十分な量であり得る。光感受性な及び/又は空気感受性な化合物は特別な包装及び/又は製剤を必要とすることは当業者に明らかであろう。例えば、光に対して不透明であり、及び/又は周囲空気との接触から密封され、及び/又は適切なコーティング剤又は賦形剤で製剤化された包装品を使用することができる。
【0055】
本発明によるCD包接体送達ビヒクルの「有効量」には、治療的有効量又は予防的有効量が含まれる。「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を表す。送達ビヒクルの治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する化合物の能力等の因子によって変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調節することができる。治療的有効量はまた、送達ビヒクル又は活性化合物の毒性又は有害な効果が治療上有益な効果を上回るものであってもよい。「予防的有効量」は、所望の予防結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を表す。典型的には、疾患の前又はその初期に予防的用量を対象に用い、それによって予防的有効量が治療的有効量未満であり得る。任意の特定の対象に対しては、個々の必要性、及び組成物を投与する又は投与を監督する者の専門的判断に従って、経時的に(例えば、タイミングは毎日、1日おき、毎週、毎月であり得る)、治療のタイミング及び用量を調整することができる。
【0056】
選択された実施態様において、本発明は、生物学的に活性な化合物、その溶媒和物、薬学的に許容される塩、エステル、アミド、錯体、キレート、立体異性体、立体異性体の混合物、幾何異性体、結晶型、非晶質型、代謝体、代謝前駆体又はプロドラッグ、それらの単離されたエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の生物学的に活性な化合物を、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、含有する組成物又は医薬品を提供する。さらに、本発明はそのような組成物又は医薬品の製造方法を提供する。
【0057】
本発明の様々な実施態様が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般的知識に従って、本発明の範囲内で多くの適応及び変更を行うことができる。このような変更には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の側面に対する既知の均等物の置換が含まれる。数値範囲は、範囲を定義する数字を含む。用語「含んでいる(comprising)」は、本明細書において、「含むがこれに限定されない」という語句と実質的に同等の無制限の用語として使用され、単語「含む(comprises)」は対応する意味を有する。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「もの(a thing)」への言及は、複数のそのものを含む。
【0058】
本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書に引用された特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない任意の優先権書類及び全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。ここに引用された文書に引用又は参照されているすべての文書は、ここに記載された、又は参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書に記載された任意の製品の製造者の指示、説明書、製品仕様及び製品シートと共に、参照により本明細書に組み込まれ、又は本発明の実施に用いてもよい。より具体的には、各々の個々の刊行物が具体的に、個別に本明細書に参照として組み込まれて示され、又は完全に本明細書に記載されているのと同程度に、全ての参照された刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、すべての実施態様、及び実質的に前述された変形例を含み、実施例及び図面が参照される。
【0059】
いくつかの実施態様では、本発明は、医学的又は外科的処置を含む工程を排除する。
【実施例】
【0060】
実施例1:セレノア及びプルヌスの抽出物
γ−シクロデキストリン(GCD,Wacker Chemi,ドイツ)と、2:1の比率のセレノア・レペンス精製種子抽出物(Indena,イタリア)及びプルヌス・アフリカナ樹皮抽出物(Indena,フランス)それぞれとから、混練法を用いて包接体を調製した。セレノア抽出物は、脂肪酸と植物ステロールが豊富である。セレノア抽出物は、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ゴンド酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含み得る。セレノア抽出物中の植物ステロールは、例えば、カンペステロール、β−シトステロール及びスチグマステロールを含み得る。同様に、プルヌスの植物ステロールは、例えば、多種多様なそのような化合物を含み得る。それらには、例えば、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、アトラリン酸、β−シトステロール、β−シトステノン、及びリノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸、及びドコサノール、ベヘン酸、ウルソール酸、リグノセリン酸、フェルラ酸及びフリーデリンを含み得る。
【0061】
セレンノア抽出油は琥珀色である。プルナス抽出物は、ほぼ黒く硬化した、手で混練することができる抽出物を含む「廃油ボール」に似ている。両方の抽出物は、ほぼ快適な深い果実の臭いを有し、この臭いは、シクロデキストリン包接体に含まれるとほとんど完全に消失する。
【0062】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、薬草抽出物の酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、容器1で包接体1gを蒸留水20mlと混合し、容器2で、同量の1gの包接体及び蒸留水20mlを希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)20mgと混合した。両方の容器を5分ごとに撹拌しながら37℃に加熱した。
【0063】
アッセイの20分の時点で、色の変化が容器2で明らかになるようになり始め、30分の時点でかなり顕著になった。対照的に、酵素を添加していない容器1では、オフホワイト色が(5時間以上にわたり一貫して)維持された。容器2の内容物は、アミラーゼがGCD包接体を消化するにつれて顕著に黒っぽくなった。30分後、GCDの保護エンベロープが酵素によって分解され、原材料が再び目に見えるようになるため、容器2は抽出物の本体の色のいくらかを現しつつあった。さらに、30分後に、容器1ではなく容器2において、2つの成分の臭気が再び明らかになった。30分の時点で、いかなる脂質も存在しておらず、容器の内容物が包接体の小片として残っていたことで証明されるように、容器1の成分は分離していなかった。しかし、容器2で30分の時点で、包接体の分解は、溶液の本体で明らかであるだけでなく、脂質物質として容器の周りに油膜と、容器2の白色セラミック表面上に見える油滴とを生じさせるセレンノア抽出物及びプルナス抽出物の環によっても明らかであった。
【0064】
この実施例は、CD包接体として製剤化された植物抽出物からの脂肪酸及び植物ステロールの有効な放出を説明する。従って、この実施態様は、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ゴンド酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、カンペステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、アトラリン酸、β−シトステノン、ドコサノール、ベヘン酸、ウルソール酸、リグノセリン酸、フェルラ酸及びフリーデリン等の1つ以上の遊離脂肪酸及び/又は植物ステロールを含むCD包接体の代表的なものである。
【0065】
実施例2:酪酸
α−シクロデキストリン(ACD,Wacker Chemi,ドイツ)と酪酸(Vigon,米国)とから、混練法を用いて包接体を調製した。酪酸は、室温で透明で軽質の油である脂肪酸(ブタン酸としても知られている)であり、不快でやや腐ったような悪臭の臭気を有する。この臭気は、シクロデキストリン包接体に含まれたときにほとんど完全に消える。酪酸の臭気は、人間の鼻で10ppmを超える濃度で検出され、皮膚、目及び呼吸器系を刺激する可能性がある。
【0066】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、酪酸の酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、容器1で包接体1gを蒸留水20mlと混合し、容器2で、同量の1gの包接体及び蒸留水20mlを希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)20mgと混合した。両方の容器を5分ごとに撹拌しながら37℃に加熱した。
【0067】
25分の時点で、酪酸の臭気が容器2で明らかになり始め、35分の時点でさらに顕著になった。対照的に、酵素を添加していない容器1では、同じかすかな臭気が5時間以上増加することなく維持された。
【0068】
実施例3:大麻油抽出物
γ−シクロデキストリン(GCD,Wacker Chemi,ドイツ)と精製大麻油抽出物(CV Sciences,米国)とから、混練法を用いて包接体を調製した。大麻油は、典型的には、リノール酸、α−リノレン酸、オレイン酸、β−シトステロール、カンペステロール、フィトール、シクロアルタノール、γ−トコフェロール及びカンナビジオール等の種々の脂肪酸、植物ステロール及び生理学的に活性な成分、並びに僅かな割合のテルペン様物質を含有する。以下に議論するように、本明細書において参考のために「大麻精油」と名付けられた。
【0069】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、大麻油抽出物のインビボ酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、包接体390mgをサイズ0のカプセルに封入した。包接体390mgと希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)10mgとを含有する第2のセットのカプセルを調製した。
【0070】
912夜の睡眠サイクルの記録を有する健康な43才の男性被験者に、異なる日に、十分に夕食後、唾液アミラーゼを誘発する食物を与えずに、標準就床時間の午後11時の30分前に、各調製物の2カプセルを与えた。
【0071】
図1は、深い睡眠の持続時間及びレベルを有する被験者の典型的な睡眠パターンを示す。図2は、アミラーゼを添加しない包接体を服用した後の睡眠パターンを示し、自己評価で平均的な睡眠を記録する被験者の典型的なベースラインよりも僅かにより深い睡眠を示す睡眠パターンを示している。図3は、被験者が「彼にとって何年も間で最も安らかな睡眠」と述べたものを劇的に示している。一時的に便所に行くために起き上がり、すぐに睡眠に戻ることを除いて、全体の睡眠パターンは、以前に達成されなかった睡眠の深さ及び深い睡眠の時間に達する。
【0072】
この実施例は、包接体製剤に添加されたアミラーゼを利用する包接体からの生理学的に活性な成分のインビボ放出を示している。この実施例の側面は、活性成分を放出するための唾液又は消化アミラーゼへの依存から製剤が独立していることである。
【0073】
典型的な実施態様では、代替的な製剤は、大麻又は大麻植物に由来する様々な生物学的に活性な分子、例えばカンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、及びカンナビノール(CBN)等の様々なカンナビノイドのシクロデキストリン包接体を含んでもよい。
【0074】
実施例4:緑内障
この実施例の被験者は、1996年以来、医療用マリファナを利用した経験を有するカリフォルニア医学博士である。被験者は、実施例3に記載の通り、大麻油包接体390mgとアミラーゼ粉末10mgとを含有して調製されたカプセルを自己投与した。数日間の連続使用の後、被験者は緑内障の顕著な改善を示した。包接体の使用によるこれらの結果は、被験者が過去に利用した単離カンナビジオール又は標準化製品の任意の組み合わせよりも良好であった。
【0075】
実施例5:階層化包接体
この実施例は、複数の代替的ゲスト分子が複数の代替的シクロデキストリンとの包接体を形成し、各々のゲスト分子が、ゲスト分子を安定に保持するための大きさ又は適合性を有する空洞を有する対応するシクロデキストリンに大きさ及び/又は親和性において一致する、CD包接体混合物の製造に関する。このようにして、別個の、例えば異なる大きさの生物学的に活性な物質の複雑な混合物を、階層化包接体混合物として製剤化することができる。
【0076】
例示的な実施態様では、大麻精油(参照,表2,%による割合)をα−及びβ−シクロデキストリンで連続的に製剤化した。大麻精油の試料を、α−シクロデキストリンと水とのスラリーに最初に添加し、経時的に混練して、α−シクロデキストリンの空洞内に収まる大きさのゲスト分子の包接体を形成させた。次に、より大きな空洞を有するシクロデキストリンであるβ−シクロデキストリンを、追加の水と共に時間をかけて添加し、混錬して、α−シクロデキストリンの空洞内に入るには大きすぎるゲスト分子の包接体を形成することによって、大きさで階層化包接体混合物を完成させた。最初により小さい空洞を有するシクロデキストリンと包接体を最初に形成させ、次により大きな空洞を有するシクロデキストリンと包接体を形成することによって、この方法は、ゲスト分子が最も安定な包接体を形成するシクロデキストリンにゲスト分子が収容され、小さな分子が最適ではなくより大きなCDに捕捉されることが回避された、包接体混合物を提供する。この方法は、ゲスト分子が化学的又は立体的に適合したシクロデキストリンに連続的に保持される複雑な階層化包接体を形成するために用いられる、一連のより大きい又は異なって変更されたCDを用いて、反復的であってもよい。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
包接体が形成される最初の混合物と比較して生物学的に活性な分子の比率が変化したものが提供されるように、階層化包接体の合成混合物を製剤化することができる。上記の例示的な実施態様を行うために、一連の大麻精油に由来するα−シクロデキストリン包接体をプールし、次いでこのプールしたα−シクロデキストリン製剤に一定分量のβ−シクロデキストリン包接体を加えて、最初の大麻精油の組成物と比較して、より小さな生物学的に活性な分子が包接体の形態で富化された製剤を提供することができる。あるいは、上記のように、選択された出発物質中の相対的に多量の生物学的に活性な分子を再捕捉するために、階層化包接体の合成混合物を製造してもよい。例示された実施態様において、α−シクロデキストリンとβ−シクロデキストリンを4:1の比で用いることで、これが達成された。このことは、大麻精油試料の約80%がα−シクロデキストリンに適合する大きさの生物学的に活性な分子から構成され、残りの20%の大部分はβ−シクロデキストリン包接体に収まる大きさであるとの事実を反映している。
【0080】
典型的な実施態様では、例えば麻若しくは大麻の試料又は抽出物に由来する、調整された比率のカンナビノイド及びテルペンを含む階層化包接体の合成混合物が提供される。これらの混合物は、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、及びカンナビノール(CBN)等の様々なカンナビノイドの包接体を含んでもよい。これらの混合物中のテルペン(イソプレノイド)は、例えば、α−ピネン、オシメン、カリオフィレン(β−カリオフィレン)、カンフェン、カンファー、ユーカリプトール、フムレン(α−フムレン)、ミルセン、γ−テルピネン、シス−ネロリドール、カレン、テルピノレン、テルピノール、トランス−ネロリドール、シメン(p−シメン)、リナロール、フェランドレン、グアイオール、リモネン、イソプレゴール、カリオキサイド(cary oxide)、α−テルピネン、ゲラニオール、バレンセン、フェンコール、ボルネオール(イソボルネオール)、フィトール、サビネン、メントール、セドレン、ネロリドール、イソプレゴール、酢酸ゲラニル、プレゴン及びビサボロールを含み得る。
【0081】
階層化包接体は、ゲスト分子を保持するシクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する1つ以上の酵素と共に送達するために製剤化することができる。選択された実施態様では、例えば、混合物中に見出されるシクロデキストリンのサブセットに対して優先的又は排他的な活性を有する酵素を選択することができる。このようにして、階層化シクロデキストリン包接体送達ビヒクルは、2つ以上の別個の酵素が存在するように適合され、別個の酵素は、送達ビヒクルの2つ以上の別個の標的、例えば、胃腸管の2つの別個の部分に送達された時に活性化される別個のシクロデキストリン分解活性を有するように製剤化されている。
【0082】
実施例6:短鎖脂肪酸包接体
この実施例は、個々の又は組み合わせた短鎖脂肪酸(SCFA)の、疎水性又は親水性のシクロデキストリン(α−、β−又はγ−CD、及びエチル化CD等の改変CDを含む)との包接体を含む薬物、栄養補助食品、食品又は医療食品製剤に関する。SCFAは、グリセリド(モノ、ジ又はトリグリセリド)等のエステル、塩又は他の薬学的に許容される誘導体の形態で存在してもよい。SCFA包接体は、α−、β−又はγ−アミラーゼ等のSCFAゲスト分子を保持するCDを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素を有する剤形で提供され得る。同様に、脂質からSCFAを放出するため、例えばグリセリド等のSCFAのエステルに作用させるため、リパーゼを製剤に添加してもよい。これらの製剤は、即時放出の投与形態若しくは食品形態、又は持続放出の投与形態若しくは食品形態として調製することができる。持続放出の投与形態では、SCFA医薬成分、CD及び/又はアミラーゼを含む1つ以上の成分の溶解及び放出が、制御された速度で持続又は遅延させてもよい。例えば、CD包含化合物の有無に関わらず、アミラーゼは、広範囲の持続放出のコーティング又は樹脂の形態でコーティングされたビーズ又は顆粒の形態で処方され得る。同様に、特にリパーゼが製剤中に含まれる場合、トリグリセリド等のグリセリドを、マトリックス上に提供する、例えばリパーゼと混合してセルロースマトリックス上に噴霧乾燥することができる。これらの製剤は、例えば、SCFA等の医薬化合物又はその代謝産物の血中濃度を、持続放出担体が存在しない場合よりも長い期間、有効レベルに制御又は維持するように適合されてもよい。
【0083】
これらの製剤の一側面は、SCFAをヒト又は哺乳動物等の対象の小腸及び大腸に提供する投与形態の使用である。製剤は、例えば、大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群(IBS)等の胃腸障害の治療において補助目的又は治療目的で使用されてもよい。別の側面において、これらの製剤は、結腸癌等の胃腸管の腫瘍性疾患の予防的又は治療的処置を提供するために使用され得る。さらなる側面において、これらの製剤は、糖尿病患者におけるインスリン感受性の予防的又は治療的処置を提供するために使用されてもよい。さらなる側面において、これらの製剤は、その後の体重減少を伴う熱発生活性を改善する予防的又は治療的処置を提供するために使用されてもよい。
【0084】
選択された実施態様では、これらの製剤は、少なくとも1つの疎水性シクロデキストリンとの包含化合物として複合化することができる少なくとも1つのSCFAを有効成分として含む包接体を含む薬物調製物を提供する。特定の実施態様では、SCFAは、例えば、酪酸(ブタン酸)、プロピオン酸、及び酢酸の1つ以上であってよい。複数のSCFAは、選択された食料に、例えば9:1から1:9で、提供されてもよい。選択されたSCFAは、最適化された製剤中に製剤化されることができ、例えば、酪酸75〜95%、プロピオン酸1〜20%、及び酢酸1〜10%を含み、例えば、酪酸約85%、プロピオン酸約10%及び酢酸約5%を含む。
【0085】
実施例7:酪酸製剤による胃腸の治療
この実施例は、一般的な胃腸障害の治療に関する。臨床的に多様な胃腸障害の活発で長期にわたる症状を呈した48歳の女性に、実施例2に記載の通り、調製された酪酸包接体の30mgカプセル剤を1日2回4カプセルで与えられた。治療開始から3週間後、担当医師は、臨床的に治療効果に関連する証拠、すなわち4年間で初めて患者が正常な胃腸機能として特徴付けられるものを示したことを報告した。
【0086】
実施例8:SCFA製剤による胃腸の治療
この実施例は、SCFAの混合物を含有する製剤による特定の胃腸症状の治療を説明する。被験者は、断続的な液状下痢を呈し、朝のコーヒー(特に朝の柑橘類と共に)の後に、又は脂っこい(rich)夕食を食べた後に、予知可能な症候性紅斑を伴う65歳の男性として示された。SCFA包接体薬で、α−シクロデキストリンとの包接体中に酪酸(27mg)、プロピオン酸(2.5mg)及び酢酸(2.5mg)を含むカプセルで、治療を開始した。初期の治療計画は1日3回、4カプセルであった。これは後で1日2回に下げられた。最初の投薬から24時間以内に、液状下痢は止まり、5週間の全治療期間中に再発しなかった。治療中、患者は便が完全に一貫したと報告し、糞便排出量は劇的に減少した。患者はまた、食事後及び就寝前に通常の制酸薬治療を中止することができ、中等度のアルコール摂取の耐性が改善されたことを報告した。
【0087】
実施例9:酪酸製剤によるIBDの治療
この実施例は、慢性過敏性腸疾患(IBD)の症状の緩和を説明する。患者は、30年間、慢性IBDを有し、毎日2〜4回のロペラミドによる対症療法を受ける、52歳の女性として示された。治療を、IBD再発の間に開始し、実施例2の酪酸製剤、1日2回3カプセルで開始し、酪酸包接体製剤での7日間の治療の間、ロペラミドの同時治療を伴わなかった。48時間以内にすべての下痢が止まった。この患者はまた、7日間の治療後に明確な食欲抑制を報告した。従って、この実施例は、IBDの治療における治療有効性、並びに食欲抑制薬としてのSCFA包接体製剤の使用を証明する。
【0088】
実施例10:オストミー炎症
この実施例は、炎症及び肉芽形成を含む、オストミーに関連する症状の治療を説明する。これは、3年間の再発性オストミー炎症及び感染の病歴を有する医師の症例である。酪酸塩CD製剤での治療の前に、患者の臨床病歴は以下の通りであった。
・1971年の潰瘍性大腸炎のための結腸切除。
・2012年11月〜2014年1月のスタキボトリスへの継続的な未知の暴露。
・スタキボトリスの暴露に副次的な免疫機能不全。
・01/13〜08/15の回腸嚢炎と腸管皮膚瘻の再発。いずれもシプロフロキサシンとメトロニダゾールの多回投与に反応しなかった。その間に損傷の軽減のための5回の開腹手術。最終的に、結腸貯留嚢の取り壊しと、標準的なブルック回腸瘻造設(ileostomy)での置き換え。
・治癒しない皮膚創傷による創傷清拭及び最終的な回腸瘻造設の移動のための2回の外科手術。
・ストーマ周辺の持続的な肉芽形成組織は、タクロリムスクリームを併用した2回のステロイド注射に反応しなかった。
【0089】
治療を、実施例2に従って調製した経口酪酸製剤、1日2回8カプセルで開始した。カプセルは、アミラーゼ酵素を有する持続放出CD製剤中の正味の酪酸30mgであった。炎症の治癒は、治療が終了したとの決断の間際まで進行した。酪酸塩CD治療の中断から1週間以内に、病変は再び崩壊して成長し始めた。病変は合計2週間悪化した。酪酸CD治療の再開時に、再び治癒が開始された。
【0090】
実施例11:骨髄線維症
この実施例は、骨髄線維症に関連する症状の治療を説明する。骨髄線維症に罹患している患者をケルセチンCD製剤で治療した。製剤を、ケルセチン(Glanbia Nutritionais)の粉末から、γ−シクロデキストリンとの包接体として形成させ、乾燥し、アミラーゼ粉末と混合して調製した。ケルセチンCD治療の開始時に、患者は約10日ごとに輸血を必要としていた。ケルセチンCD治療の開始後、患者は輸血間に20日間経過することができた。1984年以来ケルセチン使用を実践している監督医師は、この患者が標準的なケルセチン補給の投与計画の後にこの結果を得ていなかったことを述べた。
【0091】
この実施例は、ケルセチン等のバイオフラボノイドを含むフラボノイドの有利な送達を提供するために、本発明の送達ビヒクルを用いることができることを証明する。
【0092】
実施例12:自閉症
この実施例は、アミラーゼと混ぜ合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体を用いた、子供における自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療の3つの症例を含む。
【0093】
ASDの確定診断を受けた5歳の男性Oを、混練法を利用して調製された、アミラーゼと組み合わせた経口酪酸α−シクロデキストリン包接体で治療した。投薬は、正味の酪酸30mgを1日2回投与した。精神医学的評価では、10日以内にASD症状の劇的な改善が認められた。これは、生活の質のかなりの改善との介護者の評価と一致した。
【0094】
自閉症スペクトラムで確定診断を受けた6歳の男性Mを、混練法を利用して調製された、アミラーゼ酵素と組み合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体のティースプーン(tsp)1/4で毎日治療した。Mは、以前は一般に、誰かと、母親とさえ話すときに目を合わせることができず、靴紐を結ぶことができなかった。酪酸塩CD治療の開始から22時間後、2回の投与の後、Mは靴紐を結び、彼の業績に誇りを示すときに母親と直接目を合わせた。
【0095】
自閉症の非言語スペクトラムで確定診断を受けた17歳の女性を、混練法を利用して調製された、アミラーゼ酵素と正味の酪酸塩180mgとを組み合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体の1日2回3カプセルで治療した。3日以内に患者はより良く目を合わせ、穏やかになった。今では、求められなくても、絵本で動物や絵を指し示し、特定の人物の名前を言葉に表すことさえできる。
【0096】
自閉症は様々な胃腸症状に関連しており、研究によって、酪酸塩の有益な効果に関係する証拠と共に、自閉症患者の腸内マイクロバイオームの明らかな特徴の証拠が見出された。従って、一側面では、本発明は、神経学的疾患を有する患者の腸内マイクロバイオームを調節するための使用のための酪酸シクロデキストリン包接体製剤を提供する。
【0097】
実施例13:低アレルギー性の食事代替剤(meal replacement formulation)及び成分栄養剤(elemental diet formulation)
この実施例は、例えば、難溶性アミノ酸の味を遮蔽し、その溶解性を改善するように、個々のアミノ酸又はアミノ酸の群がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。
【0098】
例示的な実施態様では、CD包接体は、苦い又は味で硫黄優勢である(sulfur dominant in taste)ことが知られている個々のアミノ酸、例えばL−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン等から形成されてもよい。1つの実施例では、これらのアミノ酸は、それぞれ個々に、混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリンに含ませた。第2のグループは、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に添加すると、これらの包接体は完全に可溶であり、元の材料と比較して不快な味を極めて良好に隠蔽することが見出された。
【0099】
他の実施態様では、同じアミノ酸(L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン)を1つのグループとして予め混合し、次いで混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリンに含ませた。第2のグループを、混練法を利用して等モルでγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、組み合せとしてのこれらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0100】
従って、これらの方法が、天然に存在するアミノ酸又は合成アミノ酸に対して個々に若しくは組み合わせて利用することができる。β−シクロデキストリン包含物は、いくつかの状況において、例えば経口投与による一日量が比較的少量に制限されるなど、投与要件が制限されていることがある。従って、少量の特定のアミノ酸の投与を意図した製剤では、β−シクロデキストリンは、包接のための適切な選択肢であり得る。β−シクロデキストリンは、α−又はγ−シクロデキストリンと比較してコストの観点から有利であり得る。あるいは、大きさが許せば、アミノ酸をα−シクロデキストリン包接体に含めることができる。
【0101】
アミノ酸、大豆油(必要な脂肪のため)、マルトデキストリン/トウモロコシデンプン(炭水化物源)、及び基本ビタミン及びミネラルと防腐剤の包装された商品であるVivonex(商標)Plus等の市販の食事代替剤が、胃腸の練習の使用のために入手可能である。苦味又は硫黄優勢な味を有する5つのアミノ酸(L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン)が、この種の生成物の味をよくすると認識され得る。この種の製品、及びCD包接体の形態で存在する1つ以上のアミノ酸を含む本発明の対応する製品の成分は、例えば、マルトデキストリン(トウモロコシ由来)、L−グルタミン、加工コーンスターチ、L−ロイシン、L−アルギニンアセテート、大豆油、及び2%未満のグルコン酸マグネシウム、L−リジンアセテート、グリセロリン酸カルシウム、L−イソロイシン、L−バリン、L−フェニルアラニン、クエン酸ナトリウム、L−スレオニン、クエン酸カリウム、L−システイン塩酸塩、クエン酸、L−メチオニン、L−チロシン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−アスパラギン酸、L−プロリン、L−トリプトファン、リン酸二ナトリウム、塩化カリウム、重酒石酸コリン、L−セリン、L−アラニン、グリシン、アスコルビン酸、脂肪酸のポリグリセロールエステル、タウリン、L−カルニチン、酢酸α−トコフェロール、硫酸亜鉛、ソルビン酸カリウム、及びbha及びbht及びトコフェロール(新鮮さを維持するため)、硫酸第一鉄、ナイアシンアミド、ビタミンAパルミテート、パントテン酸カルシウム、グルコン酸銅、ビタミンD3、塩酸ピリドキシン、硫酸マンガン、リボフラビン、塩酸チアミン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、ヨウ化カリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィトナジオン、ビタミンB12を含んでもよい。
【0102】
これらの食事代替剤及び成分栄養剤は、例えば、約79.4g:タンパク質(アミノ酸として)13.5g、脂肪2g、炭水化物57g、ビタミン、ミネラル及び他の成分6.9gの1回分の大きさで提供するように製剤化されてもよい。
【0103】
食事代替剤は、代替的に、卵等の天然タンパク質供給源でモデル化されたアミノ酸比を提供してもよい。
【0104】
例示的な実施態様では、脂肪酸供給源のカノーラ油を等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に、混練法を利用して含ませた。次いで、材料を乾燥させ、プレミックスとして粉砕して、食事代替剤に添加した。含まれていたプレミックスの1回分の量は、gで表わすと、カノーラ油2.0、γ−シクロデキストリン由来の炭水化物10.5であった。この実施態様では、アミノ酸:L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファンを1つのグループとして予め混合し、次に等モル比でγ−シクロデキストリンに、混練法を利用して含ませた。次いで、材料を乾燥させ、プレミックスとして粉砕して、食事代替剤に添加した。含まれているプレミックスの1回分の割合は、gで表わせば、以下の通りである。
<アミノ酸>
L−フェニルアラニン 0.85
N−アセチルシステイン 0.5
L−メチオニン 0.5
L−イソロイシン 0.85
L−トリプトファン 0.42
γ−シクロデキストリン由来の炭水化物 26.8
【0105】
次いで、この材料を以下のアミノ酸量(g)に加えた。
L−ロイシン 2.2
L−アルギニン 2.1
L−バリン 1.0
L−チロシン 0.5
L−ヒスチジン 0.5
L−リシン 0.76
L−スレオニン 0.6
L−アスパラギン酸 0.5
L−グルタミン 3.2
L−プロリン 0.5
L−セリン 0.85
L−アラニン 0.85
グリシン 0.85
タウリン 0.34
L−カルニチン 0.34
【0106】
ブレンド中に存在するアミノ酸の総重量は18.21gである。ブレンド中のγ−シクロデキストリンの総重量は37.3gである。ブレンド中のカノーラ油の総重量は2gである。
【0107】
この材料のドライブレンドを作成し、以下を加えた。
ライスマルトデキストリン 19.7g
塩化ナトリウム 366mg
【0108】
製剤は、多種多様なビタミン及びミネラルを含んでもよい。例えば、高度に吸収可能な生物学的に活性な成分(合計約3g)を含有するマルチビタミンミネラルプレミックスを添加してもよく、以下のものを含んでもよい。
ビタミンA(β−カロテンから2,00IU、パルミチン酸として1,000IU) 3000IU
ビタミンC(アスコルビン酸として) 50mg
ビタミンD(ビタミンD3として) 200IU
ビタミンE(d−α−トコフェリルとして) 40IU
チアミン(チアミン塩酸塩として) 5mg
リボフラビン(リボフラビン5'−リン酸ナトリウムとして) 2mg
ナイアシン(ナイアシンアミドとして20mg及びナイアシンとして5mg) 25mg
ビタミンB6(ピリドキサール5'−リン酸として) 2mg
葉酸塩(L−5−メチルテトラヒドロ葉酸グルコサミン塩由来のL−5−メチルテトラヒドロ葉酸塩として200μg) 200μg
ビタミンB12(アデノシルコバラミン10μg及びメチルコバイアミン10μg) 20μg
ビオチン 100μg
パントテン酸(パントテン酸カルシウムとして) 20mg
コリン(クエン酸塩として) 100mg
カルシウム(クエン酸カルシウム120mg及びリンゴ酸カルシウム90mg)210mg
鉄(ピコリン酸鉄として) 3mg
ヨウ素(ヨウ化カリウムとして)225μg
マグネシウム(クエン酸マグネシウム60mg及びリンゴ酸マグネシウム30mg)90mg
亜鉛(ピコリン酸亜鉛として) 3mg
セレン(L−セレノメチオニンとして)40μg
銅(ピコリン酸銅として) 0.3mg
マンガン(ピコリン酸マンガンとして) 3mg
クロム(ニコチン酸クロムグリシネートキレート) 40μg
モリブデン(ピコリン酸モリブデンとして) 20μg
カリウム(クエン酸カリウム30mg及びリンゴ酸カリウム30mg) 60mg
ホウ素(ピコリン酸ホウ素として) 0.5mg
バナジウム(ピコリン酸バナジウムとして) 20μg
【0109】
前述の実施態様に従って、約80gの全体の1回分の大きさが提供される。これは、味のよい低アレルギー性のVivonex型の食事代替剤を、苦い又は硫黄のアミノ酸残渣に特徴的な耐えられない味がなく、製造した。代替の1回分の大きさ、成分及び成分比も提供される。追加の又は代替の成分は、例えば、ニコチンアミドリボシド、酪酸、及び酢酸を含んでもよい。
【0110】
他の実施態様では、アミノ酸:L−フェニルアラニン及びL−トリプトファンを個々に、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。次いで、各材料を乾燥させ、粉砕してプレミックスに添加し、さらに食事代替剤に添加した。これの他の変更例では、2つのアミノ酸で繰り返し、予め混合し、その後、加えて同じ最終物を得た。続いて、個々のアミノ酸:N−アセチルシステイン、L−メチオニン及びL−イソロイシンを各々、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。例えば、最終製剤における空間をより少さくするように、最終製品に油を供給することもできる。この実施例の目的のために、カノーラ油を各アミノ酸包含物にアミノ酸と同量、各個々の製造プロセスで添加して混練した。カノーラ油0.85gを添加してL−フェニルアラニンを製剤化し、カノーラ油0.5gを添加してN−アセチルシステインを製剤化し、カノーラ油0.5gを添加してL−メチオニンを製剤化した。驚くべきことに、これらの量で添加した時、油は明らかにγ−シクロデキストリン包接体に取り込まれた。従って、シクロデキストリンはアミノ酸を空洞に入れて、アミノ酸の不快な味を遮蔽するだけでなく、CDはまた、カノーラトリグリセリドの少なくとも一部を入れて、CD空洞内に概念的な栓を形成する油でCD中のアミノ酸を閉じ込める。従って、本発明は、脂質と組み合わせた可溶性の臭気が遮蔽されたアミノ酸を提供するこの種の製剤を提供する。カノーラ油の代わりに個々の脂肪酸、カプリン酸を用いて、この実施例を繰り返したが、同じ驚くべき結果が得られた。これにより、単一のシクロデキストリン内に積重ね二重包接体が得られる。次いで、カノーラで処理した材料のそれぞれを乾燥させ、粉砕してプレミックスに添加して、食事代替剤にさらに添加した。これの他の変更例では、同じ3つのアミノ酸で繰り返し、予め混合し、その後、加えて、さらにカノーラ油を加えて、同じ最終物を得た。
【0111】
上記のように、この実施例は、味のよさのためにCDを有する成分栄養剤(CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず)に関する。この状況で、一部の患者では、成分栄養が膵臓酵素分泌の低下を引き起こしており、これが起こっている患者には、本製剤中での1つ以上の酵素の使用が特に有利であるという証拠がある。
【0112】
アミノ酸サプリメントもまた、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、CD包接体として提供することができる。これは、例えば、ロイシン、イソロイシン及びバリン等の分枝鎖アミノ酸に特に有利であり得る。従って、本実施例では、ロイシン及びバリンが、味のよいα−CD包接体に製剤化され、イソロイシンは、味のよいγ−CD包接体に製剤化されている。
【0113】
実施例14:アセトアミノフェン包接体
一つの側面では、この実施例は、味を遮蔽し、溶解性を改善するように、スタンドアロン包含物として抗炎症薬又は鎮痛物質がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。別の実施態様では、他の物質が包含化合物に含まれていてもよい。これらの実施態様は、CDの分解を容易にする1つ以上の酵素の有無に関わらず、製剤化することができる。
【0114】
例示的な実施態様において、アセトアミノフェンを、混練法を利用して等モル比でα−シクロデキストリン包接体に含ませた。第2の量を、混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリン包接体に含ませた。第3の量を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。次いで、各材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、これらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0115】
さらなる実施態様では、上記の実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、通常の不快な味と臭気を非常に遮蔽することも見出された。
【0116】
次いで、アセトアミノフェン/γ−シクロデキストリン乾燥粉末及びN−アセチルシステイン/γ−シクロデキストリン乾燥粉末を混合物とした。水道水と混合した時、N−アセチルシステインの肝臓保護機能を提供しつつ、治療用量のアセトアミノフェンを提供した。包含物としての2つの成分の組み合わせは、溶解性の増大によってアセトアミノフェンをより容易に送達する送達ビヒクルを提供するが、劇的により少ない臭気と不快な味を有するN−アセチルシステインの送達形態も提供する。この種の製剤は、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、例えば、散剤の剤形として、風味剤及び甘味料化合物を少量添加して増強されてもよく、又は持続放出形態を含むカプセル若しくは錠剤等の他の標準剤形に組み込まれてもよい。
【0117】
実施例15:肝保護製剤
この実施例は、例えば味を遮蔽し、溶解性を改善するように、スタンドアロン包含物として、又は包含化合物であってもよい他の物質に添加する時に、肝保護物質がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。
【0118】
例示的な実施態様では、実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0119】
シリマリン抽出物(Indena SPA)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0120】
クルクミン抽出物(Sabinsa)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0121】
クルクミン抽出物(Sabinsa)を、混練法を利用して1:2の比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0122】
テトラヒドロクルクミン(Sabina)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0123】
テトラヒドロクルクミン(Sabina)を、混練法を利用して1:2の比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0124】
例えば、商標名MucomystのN−アセチルシステインは、例えば、Rumack−Matthewの毒性レベルのノモグラムに従って肝毒性リスクを有する患者のために、アセトアミノフェンの過剰摂取の緊急治療室の状況で与えられる。ほとんどのERの利用は、N−アセチルシステインの非常に不快な味と臭気のために、現在、静脈内経路によっている。従って、実施態様は、アミラーゼ等のCD分解酵素の有無に関わらず、例えば、アセトアミノフェン中毒のための救済治療薬として、患者に水又はジュースと共に投与するように製剤化された、N−アセチルシステインの混合物を提供する。あるいは、そのような製剤は、例えば毎日又は高用量のアセトアミノフェンの使用と併せて、予防薬として提供することができる。同様に、シリマリン、クルクミノイド、及び他の公知の肝保護剤を含む追加の肝保護剤を提供することができる。この他の公知の肝保護剤には、グレープフルーツ、ナリンジン、ナリンゲニン、ブルーベリー、クランベリー、フラボノイド、カテキン、エピカテキン、アントシアニジン、プロアントシアニジン、レスベラトロール、カクタスペア、カモミール、スピルリナ、プロポリス、及びβ−グルカンが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
代替の側面では、アセトアミノフェンそれ自体を、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、アミノ酸CD包接体と共に製剤化することができる。例えば、肝傷害を予防するために、特に小児用製剤としての使用のため、N−アセチルシステインCD包接体を製剤化することができる。代替の実施態様では、アセトアミノフェンは、例えば、多成分積重ね包接体の代替形態で、例えば、アセトアミノフェンを最初の包接物として、アミノ酸を第2の包接物として、又はその逆で有して、N−アセチルシステインと同じCDに含めることができる。選択された実施態様では、γ−シクロデキストリンを利用して、アセトアミノフェン及びN−アシルシステインの両方をCDの空洞内に含めることができる。
【0126】
包含物としての2つ以上の成分の組み合わせは、溶解度の増大によって成分をより容易に送達するビヒクルを提供し、散剤の剤形として、風味剤及び甘味料化合物を少量添加して容易に調整されてもよく、又は持続放出形態を含むカプセル若しくは錠剤等の他の標準剤形に組み込まれてもよい、劇的により少ない臭気と不快な味を有する送達形態を提供する。
【0127】
実施例16:積重ね包含体
この実施例は、味を遮蔽し、溶解性を改善するように、物質がシクロデキストリンと積重ね包接体として包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。例示的な実施態様では、実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。アセトアミノフェンを等モル比でN−アセチルシステイン包接体に添加して、積重ね包接体を形成した。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に添加すると、これらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に隠蔽することが見出された。選択された実施態様では、複数の化合物を単一のシクロデキストリンに含めることを容易にし、製品の投与量を減少させるように、積重ね包接体を製剤化してもよい。
図1
図2
図3