【実施例】
【0060】
実施例1:セレノア及びプルヌスの抽出物
γ−シクロデキストリン(GCD,Wacker Chemi,ドイツ)と、2:1の比率のセレノア・レペンス精製種子抽出物(Indena,イタリア)及びプルヌス・アフリカナ樹皮抽出物(Indena,フランス)それぞれとから、混練法を用いて包接体を調製した。セレノア抽出物は、脂肪酸と植物ステロールが豊富である。セレノア抽出物は、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ゴンド酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含み得る。セレノア抽出物中の植物ステロールは、例えば、カンペステロール、β−シトステロール及びスチグマステロールを含み得る。同様に、プルヌスの植物ステロールは、例えば、多種多様なそのような化合物を含み得る。それらには、例えば、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、アトラリン酸、β−シトステロール、β−シトステノン、及びリノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸、及びドコサノール、ベヘン酸、ウルソール酸、リグノセリン酸、フェルラ酸及びフリーデリンを含み得る。
【0061】
セレンノア抽出油は琥珀色である。プルナス抽出物は、ほぼ黒く硬化した、手で混練することができる抽出物を含む「廃油ボール」に似ている。両方の抽出物は、ほぼ快適な深い果実の臭いを有し、この臭いは、シクロデキストリン包接体に含まれるとほとんど完全に消失する。
【0062】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、薬草抽出物の酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、容器1で包接体1gを蒸留水20mlと混合し、容器2で、同量の1gの包接体及び蒸留水20mlを希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)20mgと混合した。両方の容器を5分ごとに撹拌しながら37℃に加熱した。
【0063】
アッセイの20分の時点で、色の変化が容器2で明らかになるようになり始め、30分の時点でかなり顕著になった。対照的に、酵素を添加していない容器1では、オフホワイト色が(5時間以上にわたり一貫して)維持された。容器2の内容物は、アミラーゼがGCD包接体を消化するにつれて顕著に黒っぽくなった。30分後、GCDの保護エンベロープが酵素によって分解され、原材料が再び目に見えるようになるため、容器2は抽出物の本体の色のいくらかを現しつつあった。さらに、30分後に、容器1ではなく容器2において、2つの成分の臭気が再び明らかになった。30分の時点で、いかなる脂質も存在しておらず、容器の内容物が包接体の小片として残っていたことで証明されるように、容器1の成分は分離していなかった。しかし、容器2で30分の時点で、包接体の分解は、溶液の本体で明らかであるだけでなく、脂質物質として容器の周りに油膜と、容器2の白色セラミック表面上に見える油滴とを生じさせるセレンノア抽出物及びプルナス抽出物の環によっても明らかであった。
【0064】
この実施例は、CD包接体として製剤化された植物抽出物からの脂肪酸及び植物ステロールの有効な放出を説明する。従って、この実施態様は、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ゴンド酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、カンペステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、アトラリン酸、β−シトステノン、ドコサノール、ベヘン酸、ウルソール酸、リグノセリン酸、フェルラ酸及びフリーデリン等の1つ以上の遊離脂肪酸及び/又は植物ステロールを含むCD包接体の代表的なものである。
【0065】
実施例2:酪酸
α−シクロデキストリン(ACD,Wacker Chemi,ドイツ)と酪酸(Vigon,米国)とから、混練法を用いて包接体を調製した。酪酸は、室温で透明で軽質の油である脂肪酸(ブタン酸としても知られている)であり、不快でやや腐ったような悪臭の臭気を有する。この臭気は、シクロデキストリン包接体に含まれたときにほとんど完全に消える。酪酸の臭気は、人間の鼻で10ppmを超える濃度で検出され、皮膚、目及び呼吸器系を刺激する可能性がある。
【0066】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、酪酸の酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、容器1で包接体1gを蒸留水20mlと混合し、容器2で、同量の1gの包接体及び蒸留水20mlを希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)20mgと混合した。両方の容器を5分ごとに撹拌しながら37℃に加熱した。
【0067】
25分の時点で、酪酸の臭気が容器2で明らかになり始め、35分の時点でさらに顕著になった。対照的に、酵素を添加していない容器1では、同じかすかな臭気が5時間以上増加することなく維持された。
【0068】
実施例3:大麻油抽出物
γ−シクロデキストリン(GCD,Wacker Chemi,ドイツ)と精製大麻油抽出物(CV Sciences,米国)とから、混練法を用いて包接体を調製した。大麻油は、典型的には、リノール酸、α−リノレン酸、オレイン酸、β−シトステロール、カンペステロール、フィトール、シクロアルタノール、γ−トコフェロール及びカンナビジオール等の種々の脂肪酸、植物ステロール及び生理学的に活性な成分、並びに僅かな割合のテルペン様物質を含有する。以下に議論するように、本明細書において参考のために「大麻精油」と名付けられた。
【0069】
乾燥及び粉砕後、包接体の試料を、大麻油抽出物のインビボ酵素放出に対する感受性についてアッセイした。このアッセイでは、包接体390mgをサイズ0のカプセルに封入した。包接体390mgと希釈されていないアミラーゼ粉末(Enzyme Development Corporation,ニューヨーク)10mgとを含有する第2のセットのカプセルを調製した。
【0070】
912夜の睡眠サイクルの記録を有する健康な43才の男性被験者に、異なる日に、十分に夕食後、唾液アミラーゼを誘発する食物を与えずに、標準就床時間の午後11時の30分前に、各調製物の2カプセルを与えた。
【0071】
図1は、深い睡眠の持続時間及びレベルを有する被験者の典型的な睡眠パターンを示す。
図2は、アミラーゼを添加しない包接体を服用した後の睡眠パターンを示し、自己評価で平均的な睡眠を記録する被験者の典型的なベースラインよりも僅かにより深い睡眠を示す睡眠パターンを示している。
図3は、被験者が「彼にとって何年も間で最も安らかな睡眠」と述べたものを劇的に示している。一時的に便所に行くために起き上がり、すぐに睡眠に戻ることを除いて、全体の睡眠パターンは、以前に達成されなかった睡眠の深さ及び深い睡眠の時間に達する。
【0072】
この実施例は、包接体製剤に添加されたアミラーゼを利用する包接体からの生理学的に活性な成分のインビボ放出を示している。この実施例の側面は、活性成分を放出するための唾液又は消化アミラーゼへの依存から製剤が独立していることである。
【0073】
典型的な実施態様では、代替的な製剤は、大麻又は大麻植物に由来する様々な生物学的に活性な分子、例えばカンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、及びカンナビノール(CBN)等の様々なカンナビノイドのシクロデキストリン包接体を含んでもよい。
【0074】
実施例4:緑内障
この実施例の被験者は、1996年以来、医療用マリファナを利用した経験を有するカリフォルニア医学博士である。被験者は、実施例3に記載の通り、大麻油包接体390mgとアミラーゼ粉末10mgとを含有して調製されたカプセルを自己投与した。数日間の連続使用の後、被験者は緑内障の顕著な改善を示した。包接体の使用によるこれらの結果は、被験者が過去に利用した単離カンナビジオール又は標準化製品の任意の組み合わせよりも良好であった。
【0075】
実施例5:階層化包接体
この実施例は、複数の代替的ゲスト分子が複数の代替的シクロデキストリンとの包接体を形成し、各々のゲスト分子が、ゲスト分子を安定に保持するための大きさ又は適合性を有する空洞を有する対応するシクロデキストリンに大きさ及び/又は親和性において一致する、CD包接体混合物の製造に関する。このようにして、別個の、例えば異なる大きさの生物学的に活性な物質の複雑な混合物を、階層化包接体混合物として製剤化することができる。
【0076】
例示的な実施態様では、大麻精油(参照,表2,%による割合)をα−及びβ−シクロデキストリンで連続的に製剤化した。大麻精油の試料を、α−シクロデキストリンと水とのスラリーに最初に添加し、経時的に混練して、α−シクロデキストリンの空洞内に収まる大きさのゲスト分子の包接体を形成させた。次に、より大きな空洞を有するシクロデキストリンであるβ−シクロデキストリンを、追加の水と共に時間をかけて添加し、混錬して、α−シクロデキストリンの空洞内に入るには大きすぎるゲスト分子の包接体を形成することによって、大きさで階層化包接体混合物を完成させた。最初により小さい空洞を有するシクロデキストリンと包接体を最初に形成させ、次により大きな空洞を有するシクロデキストリンと包接体を形成することによって、この方法は、ゲスト分子が最も安定な包接体を形成するシクロデキストリンにゲスト分子が収容され、小さな分子が最適ではなくより大きなCDに捕捉されることが回避された、包接体混合物を提供する。この方法は、ゲスト分子が化学的又は立体的に適合したシクロデキストリンに連続的に保持される複雑な階層化包接体を形成するために用いられる、一連のより大きい又は異なって変更されたCDを用いて、反復的であってもよい。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
包接体が形成される最初の混合物と比較して生物学的に活性な分子の比率が変化したものが提供されるように、階層化包接体の合成混合物を製剤化することができる。上記の例示的な実施態様を行うために、一連の大麻精油に由来するα−シクロデキストリン包接体をプールし、次いでこのプールしたα−シクロデキストリン製剤に一定分量のβ−シクロデキストリン包接体を加えて、最初の大麻精油の組成物と比較して、より小さな生物学的に活性な分子が包接体の形態で富化された製剤を提供することができる。あるいは、上記のように、選択された出発物質中の相対的に多量の生物学的に活性な分子を再捕捉するために、階層化包接体の合成混合物を製造してもよい。例示された実施態様において、α−シクロデキストリンとβ−シクロデキストリンを4:1の比で用いることで、これが達成された。このことは、大麻精油試料の約80%がα−シクロデキストリンに適合する大きさの生物学的に活性な分子から構成され、残りの20%の大部分はβ−シクロデキストリン包接体に収まる大きさであるとの事実を反映している。
【0080】
典型的な実施態様では、例えば麻若しくは大麻の試料又は抽出物に由来する、調整された比率のカンナビノイド及びテルペンを含む階層化包接体の合成混合物が提供される。これらの混合物は、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、及びカンナビノール(CBN)等の様々なカンナビノイドの包接体を含んでもよい。これらの混合物中のテルペン(イソプレノイド)は、例えば、α−ピネン、オシメン、カリオフィレン(β−カリオフィレン)、カンフェン、カンファー、ユーカリプトール、フムレン(α−フムレン)、ミルセン、γ−テルピネン、シス−ネロリドール、カレン、テルピノレン、テルピノール、トランス−ネロリドール、シメン(p−シメン)、リナロール、フェランドレン、グアイオール、リモネン、イソプレゴール、カリオキサイド(cary oxide)、α−テルピネン、ゲラニオール、バレンセン、フェンコール、ボルネオール(イソボルネオール)、フィトール、サビネン、メントール、セドレン、ネロリドール、イソプレゴール、酢酸ゲラニル、プレゴン及びビサボロールを含み得る。
【0081】
階層化包接体は、ゲスト分子を保持するシクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する1つ以上の酵素と共に送達するために製剤化することができる。選択された実施態様では、例えば、混合物中に見出されるシクロデキストリンのサブセットに対して優先的又は排他的な活性を有する酵素を選択することができる。このようにして、階層化シクロデキストリン包接体送達ビヒクルは、2つ以上の別個の酵素が存在するように適合され、別個の酵素は、送達ビヒクルの2つ以上の別個の標的、例えば、胃腸管の2つの別個の部分に送達された時に活性化される別個のシクロデキストリン分解活性を有するように製剤化されている。
【0082】
実施例6:短鎖脂肪酸包接体
この実施例は、個々の又は組み合わせた短鎖脂肪酸(SCFA)の、疎水性又は親水性のシクロデキストリン(α−、β−又はγ−CD、及びエチル化CD等の改変CDを含む)との包接体を含む薬物、栄養補助食品、食品又は医療食品製剤に関する。SCFAは、グリセリド(モノ、ジ又はトリグリセリド)等のエステル、塩又は他の薬学的に許容される誘導体の形態で存在してもよい。SCFA包接体は、α−、β−又はγ−アミラーゼ等のSCFAゲスト分子を保持するCDを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素を有する剤形で提供され得る。同様に、脂質からSCFAを放出するため、例えばグリセリド等のSCFAのエステルに作用させるため、リパーゼを製剤に添加してもよい。これらの製剤は、即時放出の投与形態若しくは食品形態、又は持続放出の投与形態若しくは食品形態として調製することができる。持続放出の投与形態では、SCFA医薬成分、CD及び/又はアミラーゼを含む1つ以上の成分の溶解及び放出が、制御された速度で持続又は遅延させてもよい。例えば、CD包含化合物の有無に関わらず、アミラーゼは、広範囲の持続放出のコーティング又は樹脂の形態でコーティングされたビーズ又は顆粒の形態で処方され得る。同様に、特にリパーゼが製剤中に含まれる場合、トリグリセリド等のグリセリドを、マトリックス上に提供する、例えばリパーゼと混合してセルロースマトリックス上に噴霧乾燥することができる。これらの製剤は、例えば、SCFA等の医薬化合物又はその代謝産物の血中濃度を、持続放出担体が存在しない場合よりも長い期間、有効レベルに制御又は維持するように適合されてもよい。
【0083】
これらの製剤の一側面は、SCFAをヒト又は哺乳動物等の対象の小腸及び大腸に提供する投与形態の使用である。製剤は、例えば、大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群(IBS)等の胃腸障害の治療において補助目的又は治療目的で使用されてもよい。別の側面において、これらの製剤は、結腸癌等の胃腸管の腫瘍性疾患の予防的又は治療的処置を提供するために使用され得る。さらなる側面において、これらの製剤は、糖尿病患者におけるインスリン感受性の予防的又は治療的処置を提供するために使用されてもよい。さらなる側面において、これらの製剤は、その後の体重減少を伴う熱発生活性を改善する予防的又は治療的処置を提供するために使用されてもよい。
【0084】
選択された実施態様では、これらの製剤は、少なくとも1つの疎水性シクロデキストリンとの包含化合物として複合化することができる少なくとも1つのSCFAを有効成分として含む包接体を含む薬物調製物を提供する。特定の実施態様では、SCFAは、例えば、酪酸(ブタン酸)、プロピオン酸、及び酢酸の1つ以上であってよい。複数のSCFAは、選択された食料に、例えば9:1から1:9で、提供されてもよい。選択されたSCFAは、最適化された製剤中に製剤化されることができ、例えば、酪酸75〜95%、プロピオン酸1〜20%、及び酢酸1〜10%を含み、例えば、酪酸約85%、プロピオン酸約10%及び酢酸約5%を含む。
【0085】
実施例7:酪酸製剤による胃腸の治療
この実施例は、一般的な胃腸障害の治療に関する。臨床的に多様な胃腸障害の活発で長期にわたる症状を呈した48歳の女性に、実施例2に記載の通り、調製された酪酸包接体の30mgカプセル剤を1日2回4カプセルで与えられた。治療開始から3週間後、担当医師は、臨床的に治療効果に関連する証拠、すなわち4年間で初めて患者が正常な胃腸機能として特徴付けられるものを示したことを報告した。
【0086】
実施例8:SCFA製剤による胃腸の治療
この実施例は、SCFAの混合物を含有する製剤による特定の胃腸症状の治療を説明する。被験者は、断続的な液状下痢を呈し、朝のコーヒー(特に朝の柑橘類と共に)の後に、又は脂っこい(rich)夕食を食べた後に、予知可能な症候性紅斑を伴う65歳の男性として示された。SCFA包接体薬で、α−シクロデキストリンとの包接体中に酪酸(27mg)、プロピオン酸(2.5mg)及び酢酸(2.5mg)を含むカプセルで、治療を開始した。初期の治療計画は1日3回、4カプセルであった。これは後で1日2回に下げられた。最初の投薬から24時間以内に、液状下痢は止まり、5週間の全治療期間中に再発しなかった。治療中、患者は便が完全に一貫したと報告し、糞便排出量は劇的に減少した。患者はまた、食事後及び就寝前に通常の制酸薬治療を中止することができ、中等度のアルコール摂取の耐性が改善されたことを報告した。
【0087】
実施例9:酪酸製剤によるIBDの治療
この実施例は、慢性過敏性腸疾患(IBD)の症状の緩和を説明する。患者は、30年間、慢性IBDを有し、毎日2〜4回のロペラミドによる対症療法を受ける、52歳の女性として示された。治療を、IBD再発の間に開始し、実施例2の酪酸製剤、1日2回3カプセルで開始し、酪酸包接体製剤での7日間の治療の間、ロペラミドの同時治療を伴わなかった。48時間以内にすべての下痢が止まった。この患者はまた、7日間の治療後に明確な食欲抑制を報告した。従って、この実施例は、IBDの治療における治療有効性、並びに食欲抑制薬としてのSCFA包接体製剤の使用を証明する。
【0088】
実施例10:オストミー炎症
この実施例は、炎症及び肉芽形成を含む、オストミーに関連する症状の治療を説明する。これは、3年間の再発性オストミー炎症及び感染の病歴を有する医師の症例である。酪酸塩CD製剤での治療の前に、患者の臨床病歴は以下の通りであった。
・1971年の潰瘍性大腸炎のための結腸切除。
・2012年11月〜2014年1月のスタキボトリスへの継続的な未知の暴露。
・スタキボトリスの暴露に副次的な免疫機能不全。
・01/13〜08/15の回腸嚢炎と腸管皮膚瘻の再発。いずれもシプロフロキサシンとメトロニダゾールの多回投与に反応しなかった。その間に損傷の軽減のための5回の開腹手術。最終的に、結腸貯留嚢の取り壊しと、標準的なブルック回腸瘻造設(ileostomy)での置き換え。
・治癒しない皮膚創傷による創傷清拭及び最終的な回腸瘻造設の移動のための2回の外科手術。
・ストーマ周辺の持続的な肉芽形成組織は、タクロリムスクリームを併用した2回のステロイド注射に反応しなかった。
【0089】
治療を、実施例2に従って調製した経口酪酸製剤、1日2回8カプセルで開始した。カプセルは、アミラーゼ酵素を有する持続放出CD製剤中の正味の酪酸30mgであった。炎症の治癒は、治療が終了したとの決断の間際まで進行した。酪酸塩CD治療の中断から1週間以内に、病変は再び崩壊して成長し始めた。病変は合計2週間悪化した。酪酸CD治療の再開時に、再び治癒が開始された。
【0090】
実施例11:骨髄線維症
この実施例は、骨髄線維症に関連する症状の治療を説明する。骨髄線維症に罹患している患者をケルセチンCD製剤で治療した。製剤を、ケルセチン(Glanbia Nutritionais)の粉末から、γ−シクロデキストリンとの包接体として形成させ、乾燥し、アミラーゼ粉末と混合して調製した。ケルセチンCD治療の開始時に、患者は約10日ごとに輸血を必要としていた。ケルセチンCD治療の開始後、患者は輸血間に20日間経過することができた。1984年以来ケルセチン使用を実践している監督医師は、この患者が標準的なケルセチン補給の投与計画の後にこの結果を得ていなかったことを述べた。
【0091】
この実施例は、ケルセチン等のバイオフラボノイドを含むフラボノイドの有利な送達を提供するために、本発明の送達ビヒクルを用いることができることを証明する。
【0092】
実施例12:自閉症
この実施例は、アミラーゼと混ぜ合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体を用いた、子供における自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療の3つの症例を含む。
【0093】
ASDの確定診断を受けた5歳の男性Oを、混練法を利用して調製された、アミラーゼと組み合わせた経口酪酸α−シクロデキストリン包接体で治療した。投薬は、正味の酪酸30mgを1日2回投与した。精神医学的評価では、10日以内にASD症状の劇的な改善が認められた。これは、生活の質のかなりの改善との介護者の評価と一致した。
【0094】
自閉症スペクトラムで確定診断を受けた6歳の男性Mを、混練法を利用して調製された、アミラーゼ酵素と組み合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体のティースプーン(tsp)1/4で毎日治療した。Mは、以前は一般に、誰かと、母親とさえ話すときに目を合わせることができず、靴紐を結ぶことができなかった。酪酸塩CD治療の開始から22時間後、2回の投与の後、Mは靴紐を結び、彼の業績に誇りを示すときに母親と直接目を合わせた。
【0095】
自閉症の非言語スペクトラムで確定診断を受けた17歳の女性を、混練法を利用して調製された、アミラーゼ酵素と正味の酪酸塩180mgとを組み合わせた酪酸α−シクロデキストリン包接体の1日2回3カプセルで治療した。3日以内に患者はより良く目を合わせ、穏やかになった。今では、求められなくても、絵本で動物や絵を指し示し、特定の人物の名前を言葉に表すことさえできる。
【0096】
自閉症は様々な胃腸症状に関連しており、研究によって、酪酸塩の有益な効果に関係する証拠と共に、自閉症患者の腸内マイクロバイオームの明らかな特徴の証拠が見出された。従って、一側面では、本発明は、神経学的疾患を有する患者の腸内マイクロバイオームを調節するための使用のための酪酸シクロデキストリン包接体製剤を提供する。
【0097】
実施例13:低アレルギー性の食事代替剤(meal replacement formulation)及び成分栄養剤(elemental diet formulation)
この実施例は、例えば、難溶性アミノ酸の味を遮蔽し、その溶解性を改善するように、個々のアミノ酸又はアミノ酸の群がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。
【0098】
例示的な実施態様では、CD包接体は、苦い又は味で硫黄優勢である(sulfur dominant in taste)ことが知られている個々のアミノ酸、例えばL−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン等から形成されてもよい。1つの実施例では、これらのアミノ酸は、それぞれ個々に、混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリンに含ませた。第2のグループは、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に添加すると、これらの包接体は完全に可溶であり、元の材料と比較して不快な味を極めて良好に隠蔽することが見出された。
【0099】
他の実施態様では、同じアミノ酸(L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン)を1つのグループとして予め混合し、次いで混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリンに含ませた。第2のグループを、混練法を利用して等モルでγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、組み合せとしてのこれらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0100】
従って、これらの方法が、天然に存在するアミノ酸又は合成アミノ酸に対して個々に若しくは組み合わせて利用することができる。β−シクロデキストリン包含物は、いくつかの状況において、例えば経口投与による一日量が比較的少量に制限されるなど、投与要件が制限されていることがある。従って、少量の特定のアミノ酸の投与を意図した製剤では、β−シクロデキストリンは、包接のための適切な選択肢であり得る。β−シクロデキストリンは、α−又はγ−シクロデキストリンと比較してコストの観点から有利であり得る。あるいは、大きさが許せば、アミノ酸をα−シクロデキストリン包接体に含めることができる。
【0101】
アミノ酸、大豆油(必要な脂肪のため)、マルトデキストリン/トウモロコシデンプン(炭水化物源)、及び基本ビタミン及びミネラルと防腐剤の包装された商品であるVivonex(商標)Plus等の市販の食事代替剤が、胃腸の練習の使用のために入手可能である。苦味又は硫黄優勢な味を有する5つのアミノ酸(L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン(及びL−システイン)、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファン)が、この種の生成物の味をよくすると認識され得る。この種の製品、及びCD包接体の形態で存在する1つ以上のアミノ酸を含む本発明の対応する製品の成分は、例えば、マルトデキストリン(トウモロコシ由来)、L−グルタミン、加工コーンスターチ、L−ロイシン、L−アルギニンアセテート、大豆油、及び2%未満のグルコン酸マグネシウム、L−リジンアセテート、グリセロリン酸カルシウム、L−イソロイシン、L−バリン、L−フェニルアラニン、クエン酸ナトリウム、L−スレオニン、クエン酸カリウム、L−システイン塩酸塩、クエン酸、L−メチオニン、L−チロシン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−アスパラギン酸、L−プロリン、L−トリプトファン、リン酸二ナトリウム、塩化カリウム、重酒石酸コリン、L−セリン、L−アラニン、グリシン、アスコルビン酸、脂肪酸のポリグリセロールエステル、タウリン、L−カルニチン、酢酸α−トコフェロール、硫酸亜鉛、ソルビン酸カリウム、及びbha及びbht及びトコフェロール(新鮮さを維持するため)、硫酸第一鉄、ナイアシンアミド、ビタミンAパルミテート、パントテン酸カルシウム、グルコン酸銅、ビタミンD3、塩酸ピリドキシン、硫酸マンガン、リボフラビン、塩酸チアミン、葉酸、塩化クロム、ビオチン、ヨウ化カリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、フィトナジオン、ビタミンB12を含んでもよい。
【0102】
これらの食事代替剤及び成分栄養剤は、例えば、約79.4g:タンパク質(アミノ酸として)13.5g、脂肪2g、炭水化物57g、ビタミン、ミネラル及び他の成分6.9gの1回分の大きさで提供するように製剤化されてもよい。
【0103】
食事代替剤は、代替的に、卵等の天然タンパク質供給源でモデル化されたアミノ酸比を提供してもよい。
【0104】
例示的な実施態様では、脂肪酸供給源のカノーラ油を等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に、混練法を利用して含ませた。次いで、材料を乾燥させ、プレミックスとして粉砕して、食事代替剤に添加した。含まれていたプレミックスの1回分の量は、gで表わすと、カノーラ油2.0、γ−シクロデキストリン由来の炭水化物10.5であった。この実施態様では、アミノ酸:L−フェニルアラニン、N−アセチルシステイン、L−メチオニン、L−イソロイシン及びL−トリプトファンを1つのグループとして予め混合し、次に等モル比でγ−シクロデキストリンに、混練法を利用して含ませた。次いで、材料を乾燥させ、プレミックスとして粉砕して、食事代替剤に添加した。含まれているプレミックスの1回分の割合は、gで表わせば、以下の通りである。
<アミノ酸>
L−フェニルアラニン 0.85
N−アセチルシステイン 0.5
L−メチオニン 0.5
L−イソロイシン 0.85
L−トリプトファン 0.42
γ−シクロデキストリン由来の炭水化物 26.8
【0105】
次いで、この材料を以下のアミノ酸量(g)に加えた。
L−ロイシン 2.2
L−アルギニン 2.1
L−バリン 1.0
L−チロシン 0.5
L−ヒスチジン 0.5
L−リシン 0.76
L−スレオニン 0.6
L−アスパラギン酸 0.5
L−グルタミン 3.2
L−プロリン 0.5
L−セリン 0.85
L−アラニン 0.85
グリシン 0.85
タウリン 0.34
L−カルニチン 0.34
【0106】
ブレンド中に存在するアミノ酸の総重量は18.21gである。ブレンド中のγ−シクロデキストリンの総重量は37.3gである。ブレンド中のカノーラ油の総重量は2gである。
【0107】
この材料のドライブレンドを作成し、以下を加えた。
ライスマルトデキストリン 19.7g
塩化ナトリウム 366mg
【0108】
製剤は、多種多様なビタミン及びミネラルを含んでもよい。例えば、高度に吸収可能な生物学的に活性な成分(合計約3g)を含有するマルチビタミンミネラルプレミックスを添加してもよく、以下のものを含んでもよい。
ビタミンA(β−カロテンから2,00IU、パルミチン酸として1,000IU) 3000IU
ビタミンC(アスコルビン酸として) 50mg
ビタミンD(ビタミンD3として) 200IU
ビタミンE(d−α−トコフェリルとして) 40IU
チアミン(チアミン塩酸塩として) 5mg
リボフラビン(リボフラビン5'−リン酸ナトリウムとして) 2mg
ナイアシン(ナイアシンアミドとして20mg及びナイアシンとして5mg) 25mg
ビタミンB6(ピリドキサール5'−リン酸として) 2mg
葉酸塩(L−5−メチルテトラヒドロ葉酸グルコサミン塩由来のL−5−メチルテトラヒドロ葉酸塩として200μg) 200μg
ビタミンB12(アデノシルコバラミン10μg及びメチルコバイアミン10μg) 20μg
ビオチン 100μg
パントテン酸(パントテン酸カルシウムとして) 20mg
コリン(クエン酸塩として) 100mg
カルシウム(クエン酸カルシウム120mg及びリンゴ酸カルシウム90mg)210mg
鉄(ピコリン酸鉄として) 3mg
ヨウ素(ヨウ化カリウムとして)225μg
マグネシウム(クエン酸マグネシウム60mg及びリンゴ酸マグネシウム30mg)90mg
亜鉛(ピコリン酸亜鉛として) 3mg
セレン(L−セレノメチオニンとして)40μg
銅(ピコリン酸銅として) 0.3mg
マンガン(ピコリン酸マンガンとして) 3mg
クロム(ニコチン酸クロムグリシネートキレート)
* 40μg
モリブデン(ピコリン酸モリブデンとして) 20μg
カリウム(クエン酸カリウム30mg及びリンゴ酸カリウム30mg) 60mg
ホウ素(ピコリン酸ホウ素として) 0.5mg
バナジウム(ピコリン酸バナジウムとして) 20μg
【0109】
前述の実施態様に従って、約80gの全体の1回分の大きさが提供される。これは、味のよい低アレルギー性のVivonex型の食事代替剤を、苦い又は硫黄のアミノ酸残渣に特徴的な耐えられない味がなく、製造した。代替の1回分の大きさ、成分及び成分比も提供される。追加の又は代替の成分は、例えば、ニコチンアミドリボシド、酪酸、及び酢酸を含んでもよい。
【0110】
他の実施態様では、アミノ酸:L−フェニルアラニン及びL−トリプトファンを個々に、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。次いで、各材料を乾燥させ、粉砕してプレミックスに添加し、さらに食事代替剤に添加した。これの他の変更例では、2つのアミノ酸で繰り返し、予め混合し、その後、加えて同じ最終物を得た。続いて、個々のアミノ酸:N−アセチルシステイン、L−メチオニン及びL−イソロイシンを各々、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。例えば、最終製剤における空間をより少さくするように、最終製品に油を供給することもできる。この実施例の目的のために、カノーラ油を各アミノ酸包含物にアミノ酸と同量、各個々の製造プロセスで添加して混練した。カノーラ油0.85gを添加してL−フェニルアラニンを製剤化し、カノーラ油0.5gを添加してN−アセチルシステインを製剤化し、カノーラ油0.5gを添加してL−メチオニンを製剤化した。驚くべきことに、これらの量で添加した時、油は明らかにγ−シクロデキストリン包接体に取り込まれた。従って、シクロデキストリンはアミノ酸を空洞に入れて、アミノ酸の不快な味を遮蔽するだけでなく、CDはまた、カノーラトリグリセリドの少なくとも一部を入れて、CD空洞内に概念的な栓を形成する油でCD中のアミノ酸を閉じ込める。従って、本発明は、脂質と組み合わせた可溶性の臭気が遮蔽されたアミノ酸を提供するこの種の製剤を提供する。カノーラ油の代わりに個々の脂肪酸、カプリン酸を用いて、この実施例を繰り返したが、同じ驚くべき結果が得られた。これにより、単一のシクロデキストリン内に積重ね二重包接体が得られる。次いで、カノーラで処理した材料のそれぞれを乾燥させ、粉砕してプレミックスに添加して、食事代替剤にさらに添加した。これの他の変更例では、同じ3つのアミノ酸で繰り返し、予め混合し、その後、加えて、さらにカノーラ油を加えて、同じ最終物を得た。
【0111】
上記のように、この実施例は、味のよさのためにCDを有する成分栄養剤(CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず)に関する。この状況で、一部の患者では、成分栄養が膵臓酵素分泌の低下を引き起こしており、これが起こっている患者には、本製剤中での1つ以上の酵素の使用が特に有利であるという証拠がある。
【0112】
アミノ酸サプリメントもまた、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、CD包接体として提供することができる。これは、例えば、ロイシン、イソロイシン及びバリン等の分枝鎖アミノ酸に特に有利であり得る。従って、本実施例では、ロイシン及びバリンが、味のよいα−CD包接体に製剤化され、イソロイシンは、味のよいγ−CD包接体に製剤化されている。
【0113】
実施例14:アセトアミノフェン包接体
一つの側面では、この実施例は、味を遮蔽し、溶解性を改善するように、スタンドアロン包含物として抗炎症薬又は鎮痛物質がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。別の実施態様では、他の物質が包含化合物に含まれていてもよい。これらの実施態様は、CDの分解を容易にする1つ以上の酵素の有無に関わらず、製剤化することができる。
【0114】
例示的な実施態様において、アセトアミノフェンを、混練法を利用して等モル比でα−シクロデキストリン包接体に含ませた。第2の量を、混練法を利用して等モル比でβ−シクロデキストリン包接体に含ませた。第3の量を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリン包接体に含ませた。次いで、各材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、これらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0115】
さらなる実施態様では、上記の実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、通常の不快な味と臭気を非常に遮蔽することも見出された。
【0116】
次いで、アセトアミノフェン/γ−シクロデキストリン乾燥粉末及びN−アセチルシステイン/γ−シクロデキストリン乾燥粉末を混合物とした。水道水と混合した時、N−アセチルシステインの肝臓保護機能を提供しつつ、治療用量のアセトアミノフェンを提供した。包含物としての2つの成分の組み合わせは、溶解性の増大によってアセトアミノフェンをより容易に送達する送達ビヒクルを提供するが、劇的により少ない臭気と不快な味を有するN−アセチルシステインの送達形態も提供する。この種の製剤は、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、例えば、散剤の剤形として、風味剤及び甘味料化合物を少量添加して増強されてもよく、又は持続放出形態を含むカプセル若しくは錠剤等の他の標準剤形に組み込まれてもよい。
【0117】
実施例15:肝保護製剤
この実施例は、例えば味を遮蔽し、溶解性を改善するように、スタンドアロン包含物として、又は包含化合物であってもよい他の物質に添加する時に、肝保護物質がシクロデキストリンと包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。
【0118】
例示的な実施態様では、実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0119】
シリマリン抽出物(Indena SPA)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0120】
クルクミン抽出物(Sabinsa)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0121】
クルクミン抽出物(Sabinsa)を、混練法を利用して1:2の比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0122】
テトラヒドロクルクミン(Sabina)を、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0123】
テトラヒドロクルクミン(Sabina)を、混練法を利用して1:2の比でγ−シクロデキストリンに含ませた。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に加えた際、この包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に遮蔽することも見出された。
【0124】
例えば、商標名MucomystのN−アセチルシステインは、例えば、Rumack−Matthewの毒性レベルのノモグラムに従って肝毒性リスクを有する患者のために、アセトアミノフェンの過剰摂取の緊急治療室の状況で与えられる。ほとんどのERの利用は、N−アセチルシステインの非常に不快な味と臭気のために、現在、静脈内経路によっている。従って、実施態様は、アミラーゼ等のCD分解酵素の有無に関わらず、例えば、アセトアミノフェン中毒のための救済治療薬として、患者に水又はジュースと共に投与するように製剤化された、N−アセチルシステインの混合物を提供する。あるいは、そのような製剤は、例えば毎日又は高用量のアセトアミノフェンの使用と併せて、予防薬として提供することができる。同様に、シリマリン、クルクミノイド、及び他の公知の肝保護剤を含む追加の肝保護剤を提供することができる。この他の公知の肝保護剤には、グレープフルーツ、ナリンジン、ナリンゲニン、ブルーベリー、クランベリー、フラボノイド、カテキン、エピカテキン、アントシアニジン、プロアントシアニジン、レスベラトロール、カクタスペア、カモミール、スピルリナ、プロポリス、及びβ−グルカンが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
代替の側面では、アセトアミノフェンそれ自体を、CDの分解を容易にする酵素の有無に関わらず、アミノ酸CD包接体と共に製剤化することができる。例えば、肝傷害を予防するために、特に小児用製剤としての使用のため、N−アセチルシステインCD包接体を製剤化することができる。代替の実施態様では、アセトアミノフェンは、例えば、多成分積重ね包接体の代替形態で、例えば、アセトアミノフェンを最初の包接物として、アミノ酸を第2の包接物として、又はその逆で有して、N−アセチルシステインと同じCDに含めることができる。選択された実施態様では、γ−シクロデキストリンを利用して、アセトアミノフェン及びN−アシルシステインの両方をCDの空洞内に含めることができる。
【0126】
包含物としての2つ以上の成分の組み合わせは、溶解度の増大によって成分をより容易に送達するビヒクルを提供し、散剤の剤形として、風味剤及び甘味料化合物を少量添加して容易に調整されてもよく、又は持続放出形態を含むカプセル若しくは錠剤等の他の標準剤形に組み込まれてもよい、劇的により少ない臭気と不快な味を有する送達形態を提供する。
【0127】
実施例16:積重ね包含体
この実施例は、味を遮蔽し、溶解性を改善するように、物質がシクロデキストリンと積重ね包接体として包接体を形成するCD包接体混合物の製造に関する。例示的な実施態様では、実施例13におけるようにN−アセチルシステインを、混練法を利用して等モル比でγ−シクロデキストリンに含ませた。アセトアミノフェンを等モル比でN−アセチルシステイン包接体に添加して、積重ね包接体を形成した。次いで、材料を乾燥させ、粉砕した。水道水に添加すると、これらの包接体は完全に可溶であり、不快な味を極めて良好に隠蔽することが見出された。選択された実施態様では、複数の化合物を単一のシクロデキストリンに含めることを容易にし、製品の投与量を減少させるように、積重ね包接体を製剤化してもよい。