特許第6884468号(P6884468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6884468-天井制気口の風量測定用整流冶具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884468
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】天井制気口の風量測定用整流冶具
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20060101AFI20210531BHJP
   G01F 11/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G01F1/00 G
   G01F11/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-69931(P2017-69931)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173296(P2018-173296A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】池田 朋人
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘昌
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05667189(US,A)
【文献】 特開2004−257842(JP,A)
【文献】 特開昭61−013112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00−9/02
G01F 15/00−15/18
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に開口する筒状をなし、建物の天井面に設けられた天井制気口を囲うことのできる周壁部を備えたベース部と、
前記ベース部と連結され、上下方向に延在する略棒状の支持部とを備え、
前記ベース部は、
前記周壁部の内周側中央部に配置される筒状の要部と、
前記要部と、前記周壁部との間を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記要部内で十字に交差するとともに、端部が前記周壁部の側壁部に締結された一対のボルトよりなり、
前記要部の下面側に前記支持部の上端部が差し込まれ前記連結部の交差部に略当接状態で連結され、
前記要部、及び、前記連結部は、前記周壁部の上縁部よりも下方に位置し、
前記連結部は、上下に弾性変形可能に構成されており、
前記支持部は、上下に伸縮可能に構成され、
前記周壁部の上縁部を天井面に当接させるとともに、前記支持部の下端部を建物の床面に当接させるようにして、天井面と床面との間において自立状態を維持可能な風量測定用整流冶具。
【請求項2】
前記ベース部は、前記周壁部の下縁部全周から下方に向けて縮径して延びるシート状の延設部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の風量測定用整流冶具。
【請求項3】
前記ベース部は、上下に開口する筒状をなし、前記延設部の下端部に連結された下部測定筒部を備え、前記下部測定筒部は、上下方向全域において略同径で、前記延設部よりも硬く構成されていることを特徴とする請求項に記載の風量測定用整流冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井面に設けられた制気口の風量を測定する場合に使用される風量測定用整流冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビル等の建物の天井面には、空気調和設備や換気設備の制気口(吹出し口、吸込み口等)が多数設けられている。また、制気口を通過する風量の確認、及び、風量の調節を行うべく、制気口の施工後、制気口の風量を測定することが行われている。
【0003】
従来、制気口の風量の測定に際しては、制気口を囲うようにして、筒状の風量測定用整流冶具を天井面に押し当て、制気口から吹き出されるか、或いは、吸引される空気を集めて当該風量測定用整流冶具の下部開口部の風速を開口面など同一面で何点か測定し、測定された風速を平均した平均風速と、制気口の面積とに基づいて、風量を算出することが行われている。この場合、風量測定用整流冶具により制気口周りの空気の整流が行われ、且つ他からの空気流れの影響が遮断されるので、風量のより正確な測定が可能となる。
【0004】
ところで、上記のような風量測定用整流冶具を用いて制気口の風量を測定する場合には、風量測定用整流冶具を天井面に当接させた状態で保持する作業者と、風量測定用整流冶具の下部開口部において風速計を保持しながら風速を測定し、測定値の記録を行う作業者とが必要になってしまう。このため、制気口の風量の測定にかかるコストが増大することが懸念される。さらに、風量測定用整流冶具を天井面に当接させた状態で保持する作業者の負担が比較的大きく、交代で行ったとしても、比較的困難な作業となることが懸念される。しかも、通常、天井の制気口の施工後に風量を測定する時期はその建物の竣工間際になることも多く、非常に多数の制気口の風量測定に、多大なる手間と、短時間につめて行うための代替要員という更なるコストがかさんでしまう。
【0005】
また、風量測定用整流冶具として、風速計を風量測定用整流冶具に取付可能とする技術がある(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4034094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の風量測定用整流冶具を用いて制気口の風量を測定する場合には、風速計を風量測定用整流冶具に取付けられるため、一人での風量の測定も可能となる。しかしながら、例えば、風量測定用整流冶具の下部開口部の複数地点における風速を測定する場合には、風速計の位置調整を行ってから風量測定用整流冶具を天井面に当てて風速を測定し、風量測定用整流冶具を下ろして記録をするといった作業を繰り返す必要が生じてしまう。つまり、上向き作業で腕と首とをあげた姿勢で作業を行わざるを得ず、非常に疲れる作業を強いられる。また、記録するには測定値を読み取って記憶し、冶具を下ろして記憶をたどって記録するという負担もある。従って、作業者の負担が非常に大きくなることが懸念される。また、この回転羽根式風速計は、風速が非常に大きい場合には、羽根の回転が通過風量に追いつかないことが発生し、測定誤差が大きくなる。さまざまな大きさ風量の制気口の風量測定には不向きである。
【0008】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、天井制気口の風量をより簡易に測定することのできる風量測定用整流冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.上下に開口する筒状をなし、建物の天井面に設けられた天井制気口を囲うことのできる周壁部を備えたベース部と、
前記ベース部と連結され、上下方向に延在する略棒状の支持部とを備え、
前記ベース部は、
前記周壁部の内周側中央部に配置される筒状の要部と、
前記要部と、前記周壁部との間を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記要部内で十字に交差するとともに、端部が前記周壁部の側壁部に締結された一対のボルトよりなり、
前記要部の下面側に前記支持部の上端部が差し込まれ前記連結部の交差部に略当接状態で連結され、
前記要部、及び、前記連結部は、前記周壁部の上縁部よりも下方に位置し、
前記連結部は、上下に弾性変形可能に構成されており、
前記支持部は、上下に伸縮可能に構成され、
前記周壁部の上縁部を天井面に当接させるとともに、前記支持部の下端部を建物の床面に当接させるようにして、天井面と床面との間において自立状態を維持可能な風量測定用整流冶具。
【0011】
手段1によれば、天井制気口の風量(風速)の測定に際して、風量測定用整流冶具を自立させておくことができ、一人の作業者によって、風量測定用整流冶具を使用しつつ、天井制気口の風速を測定し、測定値の記録を行うことができる。従って、風速を測定して記録する作業者の他に、風量測定用整流冶具を天井面に当接させた状態で保持する作業者が別途必要になってしまうといった場合に比べ、作業者の手配や調整に関する利便性の向上及びコストの削減等を図ることができる。勿論、例えば、風量測定用整流冶具を2台用意して、建物に設けられた多数の天井制気口の風速を二人の作業者が手分けして測定するような場合には、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0012】
また、風量測定用整流冶具としても比較的シンプルな構造であり、風量測定用整流冶具を自立させたり、自立状態を解消させたりする作業についても、支持部を伸縮させるだけで比較的簡単なものとなっている。このため、一人でも比較的容易に風速測定作業を行うことができる上、支持部を短縮させることで、風量測定用整流冶具を比較的容易に持ち運ぶことができる。特に、風量測定用整流冶具のうち床面の周りは支持部が立設されるだけである。このため、風速測定作業のスペースを抑制することができ、例えば、周囲の床面にオフィス家具、配線、資材等が仮設置されているような状況であっても、比較的容易に風量測定用整流冶具の設置を行うことができ、また、風速測定作業が別の作業者の邪魔になるといった事態を抑制することができる。
また、連結部の弾性を利用して、風量測定用整流冶具を天井面と床面との間において好適に緊張状態とさせることができる。従って、天井面、及び、床面の損傷を防止しつつ、風量測定用整流冶具の自立状態の安定化を図ることができる。
【0015】
手段.前記ベース部は、前記周壁部の下縁部全周から下方に向けて縮径して延びるシート状の延設部を備えていることを特徴とする手段1に記載の風量測定用整流冶具。
【0016】
手段によれば、周壁部の上下幅を短くしても、延設部を下方に延設させることにより、風量(風速)の側定位置(天井制気口と連通するベース部の下端部位置)を作業者の手の届く位置まで持ってくることができる。従って、天井面への圧接にも耐え得るように構成される(延設部よりも硬く、重い)周壁部の上下幅を極力短くすることができ、風量測定用整流冶具の軽量化を図ることができる。さらに、風量測定用整流冶具の非使用時には、延設部を周壁部の内側に収容させるようにして、ベース部のコンパクト化を図ることができる。結果として、風量測定用整流冶具の設置や取外しに際しての作業性、運搬性、及び、保管性等の向上を図ることができる。
【0017】
手段.前記ベース部は、上下に開口する筒状をなし、前記延設部の下端部に連結された下部測定筒部を備え、前記下部測定筒部は、上下方向全域において略同径で、前記延設部よりも硬く構成されていることを特徴とする手段に記載の風量測定用整流冶具。
【0018】
手段4.前記ベース部は、上下に開口する筒状をなし、前記延設部の下端部に連結された下部測定筒部を備え、前記下部測定筒部は、上下方向全域において略同径で、前記延設部よりも硬く構成されていることを特徴とする手段3に記載の風量測定用整流冶具。
【0019】
手段によれば、延設部の下端部に対し、延設部よりも硬い下部測定筒部を設けることにより、天井制気口の風量の測定に際し、下部測定筒部が錘となって、延設部をより確実に伸長状態とさせることができ、また、横風等による延設部の変形・変位についても抑制することができる。さらに、風量測定用整流冶具のうち風量(風速)の側定位置となるベース部の下端部の開口形状をより確実に維持することができる。従って、風量測定作業の作業性の向上を図るとともに、ベース部のうち周壁部よりも下方部位における整流をより確実に行うことができ、より正確な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】風量測定用整流冶具の断面図である。
図2】風量測定用整流冶具の平面図である。
図3】天井制気口の風量測定作業の概略を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、建物の天井面21に設けられた天井制気口22(例えば、空調機で温度調節された空気が吹出される吹出し口等)の風量を測定する際に使用される風量測定用整流冶具1は、上下に開口する筒状をなし、天井制気口22を囲うことのできる周壁部3を備えたベース部2と、ベース部2と連結され、上下方向に延在する略棒状の支持部4とを備えている。
【0022】
図1図2に示すように、本実施形態の周壁部3は、略矩形状板状の(例えば、横幅が約1,000mmで、厚みが約6mm程度の)側壁部5を4枚使用して四角筒状に連結することで構成されている。さらに、各側壁部5は、一対の薄い板状体の間が複数のリブで連結されたポリプロピレンよりなるプラスチックダンボール(プラスチックベニヤ)によって構成されている。また、周壁部3のコーナー部の内周側において、一方の側壁部5から、他方の側壁部5にかけて粘着テープ6が貼着され、各側壁部5と、粘着テープ6とをリベット7(例えば、鍔径の比較的大きなタイプのリベット)で挟むようにして固定することで、側壁部5同士が連結されている。加えて、図1に示すように、周壁部3の上縁部には、全周にわたり発泡ゴム(例えば、ネオプレンゴム等)よりなる緩衝部8が設けられている。尚、図2では、緩衝部8の図示を省略している。
【0023】
また、図1図2に示すように、風量測定用整流冶具1は、周壁部3の内周側中央部に配置される要部9と、要部9と周壁部3(側壁部5)との間を連結する連結部10とを備えている。要部9は、樹脂(例えば、塩化ビニル等)により構成され、上下に貫通する円筒状をなしている。さらに、図2に示すように、連結部10は、十字に交差して延びる一対の全ねじボルト11により構成されている。各全ねじボルト11は、自身の略中央部において要部9を貫通し、両端部において相対する一対の側壁部5の横幅方向略中央部を貫通している。加えて、各全ねじボルト11の各端部には、側壁部5の内面側、及び、外面側において、ワッシャ12a、及び、ナット12bがそれぞれ一対で設けられている。尚、外径の比較的大きいワッシャ12aを使用することにより、側壁部5に形成された全ねじボルト11の貫通孔が広げられるようなことなく、ナット12bの締結状態が好適に維持されるようになっている。
【0024】
また、図1に示すように、全ねじボルト11は、要部9の上部を貫通している。さらに、要部9の内径は、支持部4の上端部の外径とほぼ同じとなっている。そして、要部9に対し下側から支持部4の上端部が挿入されることで、支持部4が要部9、ひいては、ベース部2と連結されるようになっている。
【0025】
さて、本実施形態の支持部4は、上下に伸縮可能に構成されている。このため、図3に示すように、風量測定用整流冶具1は、周壁部3の上縁部(緩衝部8)を天井面21に当接させるとともに、支持部4の下端部を建物の床面23に当接させるようにして、天井面21と床面23との間において自立状態を維持可能に構成されている。尚、支持部4は、金属製で径の異なる2本の円筒体を入れ子状に組合わせることで構成され、所定の長さとした状態で円筒体同士の相対変位が防止されるようにロック可能となっている。さらに、支持部4のうち床面23と当接する下端部には、樹脂製の緩衝パーツ4aが装着される一方で、要部9に挿入されて連結される上端部には緩衝パーツは装着されていない。
【0026】
また、図1に示すように、全ねじボルト11により構成される連結部10は、上下に弾性変形可能となっている(図1の2点鎖線参照)。本実施形態では、一対の全ねじボルト11が上下にレベル差で立体交差されているが、周壁部3に対し要部9が上方に相対変位する場合には、双方の全ねじボルト11が同様に弾性変形するように構成されている。さらに、全ねじボルト11は、側壁部5のうち高さ方向中央部よりも若干上方の部位を貫通しており、要部9が周壁部3の上縁部よりも下方に位置するようになっている。本実施形態では、全ねじボルト11(連結部10)が上方に弾性変形した場合でも、要部9、及び、連結部10が、周壁部3の上縁部よりも上方に突出しないようになっている。これにより、周壁部3の上縁部(緩衝部8)を天井面21に当接させた状態でも、連結部10を弾性変形可能となっている。
【0027】
また、ベース部2は、周壁部3の下縁部全周から下方に延びるシート状の延設部13と、延設部13の下端部に連結された四角筒状の下部測定筒部14とを備えている。延設部13は、透明なビニールシートにより構成されており、延設部13を介して周壁部3の内周側、ひいては、天井制気口22を視認することができる。さらに、延設部13は、外形状が下方に向けて縮径する略四角錐台形状をなしている。尚、周壁部3、及び、下部測定筒部14と、延設部13とは、リベット7で連結されている。また、図2では、周壁部3、及び、下部測定筒部14と、延設部13とを連結するリベット7の図示を省略している。
【0028】
加えて、延設部13の下端部と連結される下部測定筒部14は、周壁部3よりも小型で、上下方向全域において略同径の四角筒状をなしている。また、下部測定筒部14は、周壁部3(側壁部5)と同様にプラスチックダンボールにより構成されている。下部測定筒部14は、側壁部5よりも厚みが薄く、軽量化が図られているものの、延設部13に比べると重く、かつ、硬くなっている。
【0029】
以上のように構成されてなる風量測定用整流冶具1を使用して、天井制気口22の風量を測定する場合には、先ず、支持部4を手で保持しつつ、天井制気口22を囲うようにして、ベース部2の上縁部を構成する周壁部3の上縁部(緩衝部8)を天井面21に当接させる。続いて、支持部4を床面23に当接するまで伸長させる。これにより、図3に示すように、風量測定用整流冶具1が、天井面21と床面23との間において緊張状態とされ、自立状態が維持されるようになっている。
【0030】
風量測定用整流冶具1を自立状態とした後、支持部4から手を離し、風速センサ24により、ベース部2の下部開口部を構成する下部測定筒部14の下部開口部における複数地点の風速を測定し、記録する。尚、測定された風速の平均値と、天井制気口22の面積とに基づいて、天井制気口22の風量を算出する。このような測定に用いる風速センサ24には、たとえば熱線風速計を用いればその測定可能風速の微速から高速までの幅広さから好適である。建物内にはさまざまな大きさの制気口やフィルタボックスがあり、それらから吹き出される風量の幅に基づき、下部測定筒部14の測定面での風速の幅が発生するが、どのような風速においても正確に計測が可能である。
【0031】
風速の測定後、支持部4を短縮させて風量測定用整流冶具1を取外し、支持部4をできる限り短縮させる等して風量測定用整流冶具1をコンパクトにまとめ、次の測定対象となる天井制気口22まで風量測定用整流冶具1を持って移動する。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態では、天井制気口22の風量(風速)を測定する際に使用される風量測定用整流冶具1は、天井制気口22を囲うことのできる周壁部3を備えたベース部2と、ベース部2と連結され、上下方向に伸縮可能な略棒状の支持部4とを備えており、天井面21と床面23との間において支持部4を伸長させて緊張状態とし、自立させておくことができる。このため、一人の作業者によって、風量測定用整流冶具1を使用しつつ、天井制気口22の風速を測定し、測定値の記録を行うことができる。従って、風速を測定して記録する作業者の他に、風量測定用整流冶具1を天井面21に当接させた状態で保持する作業者が別途必要になってしまうといった場合に比べ、作業者の手配や調整に関する利便性の向上及びコストの削減等を図ることができる。勿論、例えば、風量測定用整流冶具1を2台用意して、建物に設けられた多数の天井制気口22の風速を二人の作業者が手分けして測定するような場合には、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0033】
また、風量測定用整流冶具1としても比較的シンプルな構造であり、風量測定用整流冶具1を自立させたり、自立状態を解消させたりする作業についても、支持部4を伸縮させるだけで比較的簡単なものとなっている。このため、一人でも比較的容易に風速測定作業を行うことができる上、支持部4をできる限り短縮させることで、風量測定用整流冶具1を比較的容易に持ち運ぶことができる。特に、風量測定用整流冶具1のうち床面23の周りは支持部4が立設されるだけである。このため、風速測定作業のスペースを抑制することができ、例えば、周囲の床面23にオフィス家具、配線、資材等が仮設置されているような状況であっても、比較的容易に風量測定用整流冶具1の設置を行うことができ、また、風速測定作業が別の作業者の邪魔になるといった事態を抑制することができる。また、風量測定用整流冶具1を構成する各部材とも軽量であるため、取り扱いや搬送が容易で、さらに転倒などにおいても危険が少なくなる。
【0034】
さらに、支持部4の上端部と連結される要部9と、周壁部3を構成する各側壁部5との間を連結する連結部10(全ねじボルト11)は、周壁部3(緩衝部8)が天井面21に当接している状態であっても、上下に弾性変形可能に構成されている。このため、連結部10の弾性を利用して、風量測定用整流冶具1を天井面21と床面23との間において好適に緊張状態とさせることができる。従って、天井面21、及び、床面23の損傷を防止しつつ、風量測定用整流冶具1の自立状態の安定化を図ることができる。
【0035】
加えて、ベース部2は、周壁部3の下縁部全周から下方に向けて縮径して延びるシート状の延設部13を備えている。このため、周壁部3の上下幅を短くしても、延設部13を下方に延設させることにより、風量(風速)の側定位置(天井制気口22と連通するベース部2の下端部位置)を作業者の手の届く位置まで持ってくることができる。従って、天井面21への圧接にも耐え得るように構成される(延設部13よりも硬く重い)周壁部3の上下幅を極力短くすることができ、風量測定用整流冶具1の軽量化を図ることができる。さらに、風量測定用整流冶具1の非使用時には、延設部13、及び、下部測定筒部14を周壁部3の内側に収容させるようにして、ベース部2のコンパクト化を図ることができる。結果として、風量測定用整流冶具1の設置や取外しに際しての作業性、運搬性、及び、保管性等の向上を図ることができる。
【0036】
また、延設部13は、透明なビニールシートにより構成され、延設部13を介して周壁部3の内周側を視認可能に構成されている。このため、天井制気口22を囲うようにして周壁部3を天井面21に当接させる際の作業性の向上を図ることができる。
【0037】
さらに、ベース部2は、上下に開口する筒状をなし、延設部13の下端部に連結された下部測定筒部14を備え、下部測定筒部14は、上下方向全域において略同径で、延設部13よりも硬く、かつ、延設部13よりも重く構成されている。このように、延設部13の下端部に対し延設部13よりも硬く重い下部測定筒部14が設けられることにより、天井制気口22の風量の測定に際し、下部測定筒部14が錘となって、延設部13をより確実に伸長状態とさせることができ、また、横風等による延設部13の変形・変位についても抑制することができる。さらに、風量測定用整流冶具1のうち風量(風速)の側定位置となるベース部2の下端部の開口形状をより確実に維持することができる。従って、風量測定作業の作業性の向上を図るとともに、ベース部2のうち周壁部3よりも下方部位における整流をより確実に行うことができ、より正確な測定を行うことができる。
【0038】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0039】
(a)上記実施形態の連結部10は全ねじボルト11により構成されているが、要部9と、ベース部2との間を連結する構成は特に限定されるものではなく、スムースな通気を確保可能に構成されていればよい。但し、上記実施形態のように、連結部10が上下に弾性変形可能に構成されることで、天井面21や床面23の損傷を防止しつつ、風量測定用整流冶具1の自立状態の安定化を図ることができる。また、連結部10は、水平方向に延びる一対の全ねじボルト11が十字に立体交差するような格好で配置されているが、全ての全ねじボルト11の高さを揃えるように構成してもよい。
【0040】
(b)上記実施形態では、周壁部3は、4枚の略矩形板状をなすプラスチックダンボールの端部同士を連結することで構成されているが、例えば、1枚又は2枚のプラスチックダンボールを折り曲げて四角筒状に組み、端縁同士を粘着テープ等で連結することにより構成してもよい。また、周壁部3(側壁部5)、及び、下部測定筒部14の材料としても、特にプラスチックダンボールに限定されるものではなく、適宜、変更可能である。但し、周壁部3は、連結部10(全ねじボルト11)を弾性変形させつつ、風量測定用整流冶具1を天井面21と床面23との間に自立状態とした場合であっても、損傷が回避される程度の強度を有するとともに、極力軽量であることが望ましい。
【0041】
加えて、周壁部3の大きさ等に応じて、適宜、周壁部3の補強の構造を設けることとしてもよい。例えば、比較的薄肉の金属製で、断面L字状のアングルを周壁部3のコーナー部の内周側に設け、各側壁部5とアングルとを固定することで側壁部5同士を連結してもよい。また、側壁部5同士を溶着したり、周壁部3を一体形成したりしてもよい。さらに、周壁部3の上縁部に沿って、比較的薄肉で金属製の枠部を設けることとしてもよい。
【0042】
(c)上記実施形態では特に言及していないが、支持部4は、要部9に対して着脱可能に構成されていることとしてもよい。また、支持部4が着脱可能に構成される場合に、支持部4の装着状態を保持するロック手段を設けることとしてもよい。さらに、支持部4のうち手で握ることでバランス良く風量測定用整流冶具1を保持できる範囲に目印や滑り止めが設けられることとしてもよい。
【0043】
(d)上記実施形態では、延設部13は、全体が透明なビニールシートにより構成されているが、例えば、延設部13の一部において周壁部3の内周側を透視可能とする透視部が設けられるように構成してもよい。さらに、延設部13の素材等についても特に限定されるものではなく、周壁部3と同じ材料で構成する場合よりも軽量となればよい。但し、風量測定用整流冶具1の非使用時において、延設部13、及び、下部測定筒部14を周壁部3の内周側にほぼ収容するようにして、ベース部2を小さくまとめておくことができるように収縮可能・折畳み可能に構成されることが望ましい。加えて、上記実施形態では、周壁部3、及び、下部測定筒部14と、延設部13とがリベット7により連結されているが、別の方法で連結してもよい。例えば、リベット7に代えて、又は、加えて、粘着テープを使用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…風量測定用整流冶具、2…ベース部、3…周壁部、4…支持部、5…側壁部、8…緩衝部、9…緩衝部、10…連結部、11…全ねじボルト、13…延設部、14…下部測定筒部、21…天井面、22…天井制気口、23…床面、24…風速センサ。
図1
図2
図3