(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884473
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
E02D 7/16 20060101AFI20210531BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
E02D7/16
E02D13/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-159206(P2017-159206)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2019-39139(P2019-39139A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 智彦
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−182716(JP,A)
【文献】
特開2011−153475(JP,A)
【文献】
特開2014−20012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/16
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダを後方から支持するリーダ起伏シリンダとを備えた杭打機において、前記リーダは、前記ベースマシンに取り付けられた下部リーダと、前記ベースマシンに前後方向に回動可能に設けられて前記下部リーダの上に連結される回動リーダと、前記リーダの最上部に配置される上部リーダとを備え、前記上部リーダは、筒状に形成された本体部と、該本体部の下端に設けられた連結用フランジと、前記本体部の上端に設けられた機器取付用フランジとを有するとともに、該本体部における上半部の前後方向寸法を、下半部の前後方向寸法より小さく形成し、本体部の上半部後部壁を前方にオフセットした状態の逃げ凹部を設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記機器取付用フランジの上にロッド連結部材が取り付けられ、該ロッド連結部材の後方に突出した部分に前記リーダ起伏シリンダのロッド先端を連結するロッド連結孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、高さ制限のある施工現場での杭打ち作業に対応した杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
橋の下や建屋内、トンネル内、地下などの空頭高さに制限のある場所で低空頭杭打作業を行う杭打機として、ベースマシンの全高を、例えば4m程度に低く抑えた低空頭対応杭打機が各種提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−153475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の低空頭対応杭打機は、低空頭専用機であることから、トンネル内などの低空頭杭打ち作業が多い場所では有効であるが、低空頭杭打ち作業が少なく、通常の杭打ち作業が多い施工現場では、通常用の杭打機と低空頭用の杭打機とを用意しなければならず、施工コストが大幅に上昇することになる。
【0005】
そこで本発明は、通常の杭打ち作業と低空頭杭打ち作業とを容易に切り替えて対応することが可能な構造を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダを後方から支持するリーダ起伏シリンダとを備えた杭打機において、前記リーダは、前記ベースマシンに取り付けられた下部リーダと、前記ベースマシンに前後方向に回動可能に設けられて前記下部リーダの上に連結される回動リーダと、前記リーダの最上部に配置される上部リーダとを備え、前記上部リーダは、筒状に形成された本体部と、該本体部の下端に設けられた連結用フランジと、前記本体部の上端に設けられた機器取付用フランジとを有するとともに、該本体部における上半部の前後方向寸法を、下半部の前後方向寸法より小さく形成し、本体部の上半部後部壁を前方にオフセットした状態の逃げ凹部を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の杭打機は、前記機器取付用フランジの上にロッド連結部材が取り付けられ、該ロッド連結部材の後方に突出した部分に前記リーダ起伏シリンダのロッド先端を連結するロッド連結孔が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、低空頭杭打ち作業用に使用する上部リーダに逃げ凹部を設けているので、杭打機を輸送状態にする際に、リーダ起伏シリンダを短縮させてリーダを後方に倒したときに、リーダ起伏シリンダと上部リーダとが干渉することがなくなり、リーダをベースマシンの上方に十分に倒すことができ、輸送状態の杭打機の全高を低くすることができる。また、上部リーダを、低空頭杭打ち作業用の上部リーダから通常の杭打ち作業用の上部リーダに交換することにより、一つのベースマシンを低空頭用と通常用とに使用することができる。さらに、回動リーダと上部リーダとの間に中間リーダを挿入して任意の高さのリーダを形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の杭打機を低空頭杭打ち作業用とした作業状態の一形態例を示す側面図である。
【
図2】同じく作業状態における要部の側面図である。
【
図4】同じく輸送状態における要部の側面図である。
【
図5】本発明の杭打機を通常の杭打ち作業用とした作業状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図4は、本発明の杭打機を、全高が4m程度の低空頭杭打ち作業用とした一形態例を示している。この杭打機11のベースマシン12は、クローラを備えた下部走行体13の上部に、旋回ベアリングを介して上部旋回体14を旋回可能に設けるとともに、該上部旋回体14に、運転室15や機器室16を設けている。さらに、上部旋回体14の後部には、カウンタウエイト17が設けられるとともに、後部両側には、左右一対のリアジャッキ18が設けられている。
【0011】
また、上部旋回体14の前端下部には、左右一対のフロントジャッキ19とリーダ20における下部リーダ20aとが装着されたフロントブラケット21が設けられ、上部旋回体14の前端上部には、リーダ20における回動リーダ20bを前後方向に回動可能に支持するリーダブラケット22が設けられている。さらに、リーダブラケット22の後部側には、リーダ20を後方から支持するリーダ起伏シリンダ23が前後方向に回動可能に設けられるとともに、該リーダ起伏シリンダ23に隣接して油圧ホース支持アーム24が前後方向に回動可能に設けられている。リーダ起伏シリンダ23には、伸縮比が大きな2段テレスコピック式が用いられている。
【0012】
リーダ20は、下端に振止装置25を装着した前記下部リーダ20aと、該下部リーダ20aの上端に連結される前記回動リーダ20bと、該回動リーダ20bの上端に連結される最上部の上部リーダとしての低空頭用上部リーダ20cとで形成されており、各リーダ20a,20b,20cは、連結用フランジを介して着脱可能に連結される。また、リーダ20の両側前部には、作業装置26のガイドギブ26aを昇降可能にガイドするガイドパイプ27aがそれぞれ設けられており、リーダ20の前面中央には、作業装置26に設けられた昇降ピニオン(図示せず)が噛合するラック27bが設けられている。
【0013】
本形態例に示す低空頭用上部リーダ20cは、低空頭杭打ち作業用に適した形状に形成されており、筒状に形成された本体部28と、該本体部28の下端に設けられた連結用フランジ29と、本体部28の上端に設けられた機器取付用フランジ30とを有するとともに、本体部28は、該本体部28における上半部の前後方向寸法を、下半部の前後方向寸法より小さく形成し、本体部28の上半部後部壁を前方にオフセットした状態の逃げ凹部28aを設けている。
【0014】
機器取付用フランジ30は、本体部28の上半部前後方向寸法に対応した前後方向寸法を有しており、この機器取付用フランジ30の上には、ロッド連結部材31が取り付けられている。ロッド連結部材31の後端は、機器取付用フランジ30の後端より後方に突出しており、この突出部に、リーダ起伏シリンダ23のロッド先端に設けられた連結孔に対応したロッド連結孔31aが設けられている。このロッド連結孔31aの中心は、機器取付用フランジ30の後端より後方で、かつ、連結用フランジ29の後端より前方に位置している。
【0015】
また、作業装置26の上部一側には油圧ホース接続部32が設けられるとともに、油圧ホース33をガイドするホースガイド部材33aが設けられている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、低空頭杭打ち作業状態の杭打機11は、下部リーダ20a、回動リーダ20b及び低空頭用上部リーダ20cをフランジ結合にて連結し、伸長させたリーダ起伏シリンダ23の連結孔とロッド連結部材31のロッド連結孔とを合わせて連結ピン34で連結してリーダ20を起立状態に保持するとともに、油圧ホース支持アーム24を後方に倒し、各油圧ホース33を所定位置に接続した状態で使用される。低空頭杭打ち作業は、従来の低空頭専用杭打機と同様に、作業装置26をリーダ20に沿って昇降させることによって行うことができる。
【0017】
一方、杭打機11をトレーラの荷台に積載して輸送する際には、
図3及び
図4に示すように、リーダ起伏シリンダ23を短縮させて回動リーダ20b及び低空頭用上部リーダ20cを後方に倒し、上部旋回体14の上に沿った輸送状態にする。作業状態から輸送状態に切り替える際には、振止装置25を取り外した下部リーダ20aの位置に作業装置26を降下させた後、下部リーダ20aと回動リーダ20bとのフランジ結合を解除してからリーダ起伏シリンダ23を短縮させ、回動リーダ20b及び低空頭用上部リーダ20cを連結状態のまま後方に倒していく。
【0018】
この輸送状態において、伸縮比が大きな2段テレスコピック式で、基部のシリンダボディ23aの直径が大きなリーダ起伏シリンダ23を使用しても、低空頭用上部リーダ20cの後部に逃げ凹部28aを設けているので、シリンダボディ23aの先端側と上部リーダ20cの後部とが干渉することがなくなる。これにより、リーダ起伏シリンダ23を最短状態まで短縮させて回動リーダ20b及び低空頭用上部リーダ20cを後方に向けて十分に倒すことができ、低空頭用上部リーダ20cやリーダ起伏シリンダ23を取り外したりすることなく、輸送状態の杭打機11の全高を輸送制限内に収めることができる。
【0019】
低空頭用上部リーダ20cは、本体部28の上半部後部側に逃げ凹部28aを設けているため、強度は低下するが、作業装置26を最上部に上昇させた状態で、ガイドパイプ27aに係合するガイドギブ26aの長さは、ガイドギブ26aの全体長さに対して半分以下、本形態例では1/3程度であり、実際の杭打ち作業は、作業装置26が最上部より下方に位置した状態で行われるので、杭打ち作業中に作業装置26から低空頭用上部リーダ20cに大きなねじり力が作用することはほとんどなく、逃げ凹部28aを設けたことによる低空頭用上部リーダ20cの強度低下は、実際の杭打ち作業で問題になることはない。
【0020】
図5は、本発明の杭打機を、全高が5m程度となる通常の杭打ち作業用とした例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した杭打機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
通常の杭打ち作業状態では、前記低空頭杭打ち作業状態に対して、回動リーダ20bの背面にウインチ41を取り付け、上部リーダを、前記低空頭用上部リーダ20cから通常用上部リーダ42に変更するとともに、通常用上部リーダ42の上に、ウインチ41から巻き出された鋼管杭吊り上げ用ワイヤ(図示せず)を巻掛けるトップシーブブロック43を装着したものである。
【0022】
通常用上部リーダ42は、回動リーダ20bと同様に、筒状本体部44の上下に連結用フランジ45をそれぞれ設けたものであって、下端部の連結用フランジ45が回動リーダ20bの上端部の連結用フランジに結合され、上端部の連結用フランジ45の上にトップシーブブロック43が取り付けられる。また、通常用上部リーダ42の背面には、台座46を介してロッド連結部材47が取り付けられており、リーダ背面から突出したロッド連結部材47に連結ピン34を介してリーダ起伏シリンダ23が連結される。
【0023】
通常の杭打ち作業は、リーダ起伏シリンダ23を伸長させ、連結された回動リーダ20b及び通常用上部リーダ42を起立させるとともに、下部リーダ20aと回動リーダ20bとをフランジ結合した状態で行われる。また、油圧ホース支持アーム24は、シリンダ24を適宜伸長させて油圧ホースの長さに応じて起立方向に回動させる。
【0024】
このように、同一のベースマシン12を使用してリーダ20の上部側部材を変更するだけで、低空頭杭打ち作業用と通常の杭打ち作業用とに使い分けることができる。したがって、大部分が通常の杭打ち作業で、一部に低空頭杭打ち作業が必要な現場においても、1台の杭打機で全ての杭打ち作業を行うことが可能となる。
【0025】
図5に示す状態の通常の杭打ち作業用の杭打機を輸送する際に、リーダ起伏シリンダ23を短縮させて回動リーダ20b及び通常用上部リーダ42を後方に倒した場合、リーダ起伏シリンダ23のロッド先端が、通常用上部リーダ42の背面から突出したロッド連結部材47に連結されているため、シリンダボディ23aが通常用上部リーダ42の後面に干渉することはない。
【0026】
さらに、回動リーダ20bと通常用上部リーダ42との間に、適宜な長さの中間リーダを挿入したり、リーダ起伏シリンダ23を長尺のものに変更したりすることにより、リーダ20の高さを10m以上にすることも可能である。また、低空頭用上部リーダ20cの上にもトップシーブブロック43を取付可能とし、通常用上部リーダ42に代えて低空頭用上部リーダ20cを使用可能にしておくことにより、リーダ長のパターンを数多く設定することができる。
【符号の説明】
【0027】
11…杭打機、12…ベースマシン、13…下部走行体、14…上部旋回体、15…運転室、16…機器室、17…カウンタウエイト、18…リアジャッキ、19…フロントジャッキ、20…リーダ、20a…下部リーダ、20b…回動リーダ、20c…低空頭用上部リーダ、21…フロントブラケット、22…リーダブラケット、23…リーダ起伏シリンダ、23a…シリンダボディ、24…油圧ホース支持アーム、25…振止装置、26…作業装置、26a…ガイドギブ、27a…ガイドパイプ、27b…ラック、28…本体部、28a…逃げ凹部、29…連結用フランジ、30…機器取付用フランジ、31…ロッド連結部材、32…油圧ホース接続部、33…油圧ホース、33a…ホースガイド部材、34…連結ピン、41…ウインチ、42…通常用上部リーダ、43…トップシーブブロック、44…筒状本体部、45…連結用フランジ、46…台座、47…ロッド連結部材