(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2距離が前記第1距離以上となり且つ前記第2距離と前記第1距離との差が最も小さくなる前記取得時刻を、前記通過時刻として選択することを特徴とする請求項1に記載の通過時刻測定方法。
前記第1時刻及び前記第2時刻のうちいずれか遅い一方の時刻より前に取得した前記車両情報に基づいて、前記一方の時刻よりも前に前記移動距離を算出することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法。
前記測位位置と前記基準位置との間の距離が、前記第2時刻に取得した前記位置情報が示す第2の測位位置と前記基準位置との間の距離より短いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1を参照する。車両1は、実施形態に係るタイム測定装置2を備える。また、車両1には、センサ3と、ECU(Electronic Control Unit)4と、通信インタフェース5が搭載されている。添付図面では通信インタフェースを「通信I/F」と表記する。
タイム測定装置2は、車両1に設置された専用の測定装置であってもよく、タイム測定用のアプリケーションプログラムがインストールされ、車両1に持ち込まれた携帯情報端末装置であってもよい。例えば、タイム測定装置2はスマートフォンであってよい。
【0009】
センサ3は、車両1の車輪速を検出して車輪速に基づいて車両1の車速を算出する。センサ3は、車速情報を含んだ第1車両情報をECU4へ出力する。センサ3は、例えば車輪速パルスを計測するロータリエンコーダなどのパルス発生器を含んでよい。
またセンサ3は、車両1の位置推定のためのデッドレコニング処理に利用される舵角、ヨーレート、及び加速度などを検出する。例えばセンサ3は、舵角センサ、ジャイロセンサー、及び加速度センサを含んでよい。
センサ3は、舵角情報、ヨーレート情報、及び加速度情報等を含む第2車両情報をECU4へ出力する。
【0010】
ECU4は、有線又は無線の通信規格に準拠する通信インタフェース5を介して第1車両情報及び第2車両情報をタイム測定装置2へ送信する。通信インタフェース5は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信や、Wi−Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)に準拠してよい。
【0011】
タイム測定装置2は、測位装置10と、通信部11と、表示部12と、記憶部13と、制御装置14を備える。
測位装置10は、測位衛星6から送信された衛星信号を受信する。測位衛星6は、例えば衛星信号としてGPS信号を送信するGPS衛星であってよく、これに限定されることなく例えばGLONASS(Global Navigation Satellite System)等の他の衛星測位システムで使用される測位衛星であってもよい。
測位装置10は、衛星信号に基づいて測位装置10の現在位置を測定する。測位装置10は、測位装置10の現在位置を示す位置情報を第1周期で制御装置14へ出力する。
【0012】
通信部11は、有線又は無線の通信回線を介して通信インタフェース5と通信する。これによりタイム測定装置2とECU4は、各種情報をやり取りする。タイム測定装置2は、通信部11を経由して、ECU4から送信された第1車両情報及び第2車両情報を取得する。いま、第1車両情報の取得周期を、第1周期よりも短い第2周期とする。第2周期は、例えば100ミリ秒であってよい。
第2車両情報の周期も、第1周期よりも短い。第2車両情報の周期は、第2周期と同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
表示部12は、表示手段として機能し、制御装置14の制御によって各種の情報の表示を行う。
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。記憶部13は、不揮発性メモリ又はハードディスクドライブ装置を備えてもよい。
【0014】
記憶部13には、制御装置14により実行される走行タイム測定プログラム20と、走行ライン測定プログラム21が記憶される。
走行タイム測定プログラム20は、タイム計測用の走行コースに予め設定したゴールラインを車両1が通過した通過時刻を測定する機能と、測定した通過時刻に基づき走行コースの走行タイムであるラップタイムを測定する機能と、測定したラップタイムを表示部12に表示する機能を、制御装置14に実現させる。ゴールラインは、特許請求の範囲に記載された所定の基準位置の一例である。
【0015】
走行ライン測定プログラム21は、衛星信号と第1車両情報及び第2車両情報とに基づくデッドレコニング処理により走行コースにおける車両1の位置推定を行って走行ラインを算出する機能と、推定した車両1の位置に基づいてラップタイムを測定する機能と、算出した走行ライン及び測定したラップタイムを記憶部13に記録する機能を、制御装置14に実現させる。
走行タイム測定プログラム20及び走行ライン測定プログラム21は、機械可読記録媒体に記録されて、図示しない媒体読取装置により読み取られて記憶部13にインストールされてもよい。また、走行タイム測定プログラム20及び走行ライン測定プログラム21は、通信部11を介して通信回線からダウンロードされ、記憶部13にインストールされてもよい。
【0016】
記憶部13には、タイム情報22とライン情報23が記憶される。タイム情報22は、走行タイム測定プログラム20により測定された通過時刻の情報や、走行ライン測定プログラム21により測定されたラップタイムの情報を含んでよい。ライン情報23は、走行ライン測定プログラム21により算出された走行ラインの情報を含んでよい。
制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及び周辺部品を含む電子回路装置である。制御装置14は、走行タイム測定部30と、走行ライン測定部31とを備える。
【0017】
走行タイム測定プログラム20は、制御装置14のプロセッサに走行タイム測定部30の機能を実現させる。走行ライン測定プログラム21は、制御装置14のプロセッサに走行ライン測定部31の機能を実現させる。
走行ライン測定部31は、測位装置10から位置情報を取得し、ECU4から第1車両情報及び第2車両情報を取得する。
走行ライン測定部31は、第1車両情報と第2車両情報とに基づくデッドレコニング処理を行うことにより位置情報を補正して車両1の位置を推定する。走行ライン測定部31は、推定した車両1の位置に基づいてラップタイムを測定する。走行ライン測定部31は、車両1の位置の軌跡である走行ラインと、ラップタイムとを記憶部13に記録する。
【0018】
一方、走行タイム測定部30は、第1車両情報を第2周期で取得する度に移動距離算出処理を行う。
移動距離算出処理において走行タイム測定部30は、取得した第1車両情報に含まれる車速情報に基づいて、車両情報の取得時間間隔(すなわち第1車両情報を連続して取得する2つの時刻の間の時間期間)のそれぞれにおける車両1の移動距離を算出する。走行タイム測定部30は、算出した移動距離を記憶部13に記憶しておく。
【0019】
第1周期で位置情報を取得すると、走行タイム測定部30は走行タイム測定処理を行う。
走行タイム測定処理において走行タイム測定部30は、取得した位置情報に基づき車両1がゴールラインを超えたか否かを判断する。車両1がゴールラインを超えたと判断すると、走行タイム測定部30は、取得した位置情報と、位置情報の取得時刻と、移動距離算出処理で求めた移動距離に基づいて、車両1がゴールラインを通過した通過時刻を決定する。
さらに、走行タイム測定処理において走行タイム測定部30は、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを算出し、表示部12に表示する。
このように、走行タイム測定部30による移動距離算出処理と走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理及び記録処理から分離されている。
【0020】
図2を参照して、走行タイム測定処理とデッドレコニング処理とが行われる期間を説明する。
時刻t0において測位装置10から位置情報を取得する。位置情報を取得すると、走行ライン測定部31がデッドレコニング処理を開始するとともに、走行タイム測定部30が走行タイム測定処理を開始する。走行タイム測定処理の完了時刻を時刻t1とする。
デッドレコニング処理が完了すると、走行ライン測定部31は、デッドレコニング処理で推定された車両1の軌跡である走行ライン、及び推定した位置に基づいて測定したラップタイムを記録する記録処理を開始する。記録処理の完了時刻を時刻t2とする。
【0021】
デッドレコニング処理における計算には時間を要するため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムの測定完了までには遅れが生じる。
例えば、デッドレコニング処理に1秒程度を要するとすれば、走行ライン測定部31の処理の完了時刻t2は時刻t0から1秒以上遅れることになる。また、ゴールラインの通過後1秒以上経過してからラップタイムが決まる。
このため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムを運転者に表示すると、運転者に周回ラップタイムを表示するタイミングが1秒以上遅れ、大きな違和感を生じる。
【0022】
一方で、走行タイム測定処理では、測位装置10から出力された位置情報と、位置情報の受信時刻と、第1車両情報に基づく移動距離算出処理により算出される移動距離とを用いて車両通過時刻を決定し、ラップタイムを求める。
取得時刻t0以前に取得した第1車両情報に基づく移動距離算出処理は、取得時刻t0よりも前に済ませておくことができる。さらに走行タイム測定処理では、移動距離算出処理により算出済みの移動距離を累積する加算演算と、累積回数のカウントと、比較演算等とを含んだ比較的簡易な演算で車両通過時刻を決定する。このため、走行タイム測定処理は、位置情報の取得時刻t0後に早期に完了する。例えば、取得時刻t0と完了時刻t1との差を0.1秒以下にすることができる。
タイム測定装置2は、走行タイム測定処理により算出したラップタイムを表示部12に表示することで、ラップタイムの表示の遅れによる違和感の発生を防ぐ。
【0023】
図1を参照する。走行タイム測定部30は、位置情報取得部40と、車両情報取得部41と、通過判定部42と、第1距離算出部43と、第2距離推定部44と、通過時刻決定部45と、走行タイム決定部46を備える。
位置情報取得部40は、測位装置10から出力される測位装置10の現在位置を示す位置情報を第1周期で取得する。
図3を参照する。例えば位置情報取得部40は、第1時刻T1及び第2時刻T2で測位装置10から出力される位置情報を取得する。
図3は、第1時刻T1が第2時刻T2よりも後の時刻である例を示す。
【0024】
第1位置P1は第1時刻T1に取得した位置情報が示す位置であり、第2位置P2は第2時刻T2に取得した位置情報が示す位置である。
なお、第1時刻T1と第2時刻T2の間隔は第1周期と同じであってもよく、第1周期の整数倍であってもよい。なお、参照符号Lは、走行コースに予め設定したゴールラインLを示し、参照符号Txは車両1がゴールラインLを通過した実際の通過時刻を示し、参照符号Pxは通過時刻Txにおける車両1の位置を示す。
【0025】
図1を参照する。車両情報取得部41は、車両1の車速情報を含む車両情報を第1周期より短い第2周期で取得する。
図3を参照する。例えば車両情報取得部41は、時刻t
0、t
1、…、t
n−m、…、t
n−3、t
n−2、t
n−1、t
n、及びt
n+1を含む複数の取得時刻のそれぞれで第1車両情報を取得する。インデックスmは、−1以上n以下の整数である。
第1車両情報を連続して取得する2つの時刻t
0及び時刻t
1の間の時間期間を取得時間間隔S
nと表記する。同様に、第1車両情報を連続して取得する2つの時刻t
n−3及び時刻t
n−2の間の時間期間を取得時間間隔S
3と表記する。すなわち、第1車両情報を連続して取得する2つの時刻t
n−m及び時刻t
n−(m−1)の間の時間期間を取得時間間隔S
mと表記する。
取得時間間隔S
mの長さは第2周期と同じであり、
図3の例では第1周期は第2周期の整数倍(この例ではn+1倍)と同期する。このため時刻t
0が第2時刻T2と一致し、時刻t
n+1が第1時刻T1と一致する。
【0026】
図1を参照する。通過判定部42は、車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したか否かを判断する。
図3を参照する。通過判定部42は、予め設定されたゴールラインLの座標情報と、第1時刻T1及び第2時刻T2で取得した位置情報とに基づいて、第1位置P1と第2位置P2とを結ぶ線分とゴールラインLとの交点Piが存在する否かを判断する。交点Piが存在する場合、通過判定部42は、車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したと判断する。
図3の例では、時刻T1は車両1がゴールラインLを通過した後の時刻となり、時刻T2は車両1がゴールラインLを通過する前の時刻となる。
【0027】
図1を参照する。車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したと判断した場合、第1距離算出部43は、第1時刻T1に取得した位置情報が示す測位位置(すなわち第1位置P1)と交点Piとの間の第1距離D1を算出する。言い換えれば、第1距離算出部43は第1位置P1とゴールラインLとの間の第1距離D1を算出する。
図3を参照する。第1時刻T1と第2時刻T2との間に車両1がゴールラインLを通過すると、第1距離D1は第1位置P1と第2位置P2との間の距離D0よりも短くなる。
【0028】
図1を参照する。第2距離推定部44は、第1時刻T1と第2時刻T2との間の第1車両情報の取得時刻t
n−mと第1時刻T1との間に車両1が移動した第2距離D
mを推定する。すなわち、第2距離推定部44は、取得時刻t
n−mにおける車両1の位置と、第1位置P1との間の第2距離D
mを推定する。
図3を参照する。参照符号p
0、p
1、…、p
n−3、p
n−2、p
n−1、p
n、及びp
n+1は、それぞれ時刻t
0、t
1、…、t
n−3、t
n−2、t
n−1、t
n、及びt
n+1における車両1の位置をそれぞれ示す。
【0029】
図1を参照する。第2距離推定部44は、移動距離算出処理を行う移動距離算出部50と、累積演算部51を備える。
移動距離算出部50は、第1車両情報に基づいて取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
iを算出する。
図3を参照する。参照符号ds
0、ds
1、ds
2、ds
3、…、ds
nは、それぞれ取得時間間隔S
0、S
1、S
2、S
3、…、S
nにおける車両1の移動距離を示す。
移動距離算出部50は、例えば次式(1)に従って移動距離ds
iを算出してよい。
【0031】
式中、V
iは、時刻t
n−iにおける車両1の速度であり、t
sは第2周期の長さを示す。
移動距離算出部50は、第1時刻T1より前の取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
i(i=1〜n)の算出を第1時刻T1より前に済ませておいてよい。すなわち、移動距離算出部50は、第1時刻T1より前に取得した第1車両情報に基づいて、第1時刻T1より前の取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
iを第1時刻T1より前に算出してよい。移動距離算出部50は、算出した移動距離ds
iを記憶部13に記憶する。
【0032】
図1を参照する。第2時刻T2において位置情報取得部40が位置情報を取得すると、累積演算部51は、記憶部13に記憶された移動距離ds
iを読み出す。
移動距離算出部50が、取得時間間隔S
0における車両1の移動距離ds
0の算出を完了すると、累積演算部51は、移動距離ds
iを累積することにより取得時刻t
mにおける第2距離D
mを算出する。すなわち、累積演算部51は次式(2)に従って第2距離D
mを算出する。
【0034】
通過時刻決定部45は、第1時刻T1と第2時刻T2との間に車両情報をそれぞれ取得した複数の取得時刻t
0、t
1、…、t
n−3、t
n−3、t
n−1、t
n及びt
n+1のうち、第2距離D
mと第1距離D1との差に応じて選択したいずれかを、ゴールラインLの通過時刻として決定する。
例えば通過時刻決定部45は、第2距離D
mが第1距離D1以上となり、かつ第2距離D
mと第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻t
mをゴールラインLの通過時刻として決定してよい。
【0035】
この場合、例えば、インデックスmを−1から小さい順に設定して第2距離D
mを順次算出し、第2距離D
mが第1距離D1を超えた場合に、取得時刻t
n−mを通過時刻として決定すればよい。すなわち、次式(3)を満足した場合に取得時刻t
n−mを通過時刻として決定する。
第2距離D
m−1 < 第1距離D ≦ 第2距離D
m …(3)
累積演算部51が第2距離D
mを算出した際の移動距離ds
iの累積回数は(m+1)回であり、車両1が移動距離ds
iのそれぞれを移動した期間は第2周期t
sであることから、取得時刻t
n−mは次式(4)によって決定できる。
t
n−m=T1−(t
s×(m+1)) …(4)
すなわち、通過時刻は、累積回数(m+1)に第2周期t
sを乗じた積を第1時刻T1から減じることにより算出できる。
通過時刻決定部45は、決定した通過時刻を記憶部13に記憶する。
【0036】
走行タイム決定部46は、通過時刻決定部45が決定したゴールラインLの通過時刻に基づいて、走行コースのラップタイムを決定する。例えば、走行タイム決定部46は、前回ゴールラインLを通過した時の通過時刻を記憶部13から読み出し、今回の通過時刻との差分をラップタイムとして決定する。走行タイム決定部46は、決定したラップタイムを表示部12に表示する。
【0037】
(動作)
次に、実施形態に係るタイム測定装置2の動作の一例を説明する。
図4Aに示す移動距離算出処理は、車両情報取得部41が第1車両情報を取得する第2周期で繰り返し実行される。
ステップS1において車両情報取得部41は、第1車両情報を取得する。
ステップS2において移動距離算出部50は、第1車両情報の取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
iを、第1車両情報に基づいて算出する。
ステップS3において移動距離算出部50は、算出した移動距離ds
iを記憶部13に記憶する。
【0038】
図4Bに示す通過時刻測定処理は、位置情報取得部40が位置情報を取得する第1周期で繰り返し実行される。
ステップS10において位置情報取得部40は、測位装置10から出力される位置情報を取得する。
ステップS11において通過判定部42は、車両1がゴールラインLを通過したか否かを判断する。車両1がゴールラインLを通過した場合(ステップS11:Y)に処理はステップS12へ進む。車両1がゴールラインLを通過してない場合(ステップS11:N)に処理はステップS10へ戻る。
【0039】
ステップS12において第1距離算出部43は第1距離D1を算出する。
ステップS13において累積演算部51は、記憶部13に記憶された移動距離ds
iを読み出す。
ステップS14において累積演算部51は、インデックスmの値を0にリセットする。
ステップS15において累積演算部51は、インデックスmに応じて移動距離ds
iを累積することにより第2距離D
mを算出する。
【0040】
ステップS16において通過時刻決定部45は、第2距離D
mが第1距離D1以上となったか否かを判断する。第2距離D
mが第1距離D1以上となった場合(ステップS16:Y)に処理はステップS18へ進む。第2距離D
mが第1距離D1に至らない場合(ステップS16:N)に処理はステップS17へ進む。
ステップS17においてインデックスmの値をインクリメントする。その後に処理はステップS15へ戻る。
【0041】
ステップS18において通過時刻決定部45は、取得時刻t
mをゴールラインLの通過時刻として決定する。通過時刻決定部45は決定した通過時刻を記憶部13に記憶する。
ステップS19において走行タイム決定部46は、通過時刻決定部45が決定したゴールラインLの通過時刻に基づいて、走行コースのラップタイムを決定する。走行タイム決定部46は、決定したラップタイムを表示部12に表示する。
【0042】
(実施形態の効果)
(1)位置情報取得部40は、測位衛星6の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置10から第1周期で出力される位置情報を、第1時刻T1及び第2時刻T2でそれぞれ取得する。通過判定部42は、位置情報に基づいて、測位装置10を載せた車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間でゴールラインLを通過したことを検出する。第1距離算出部43は、第1時刻T1に取得した位置情報が示す測位位置である第1位置P1とゴールラインLとの間の第1距離D1を算出する。
【0043】
車両情報取得部41は、車両1の車速情報を含む第1車両情報を第1周期より短い第2周期で取得する。
第2距離推定部44は、第1車両情報に基づいて、第1時刻T1と第2時刻T2との間の車両情報の取得時刻t
n−mと第1時刻T1との間に車両1が移動した第2距離D
mを推定する。
通過時刻決定部45は、第1時刻T1と第2時刻T2との間の複数の取得時刻t
0、t
1、…、t
n−3、t
n−3、t
n−1、t
n及びt
n+1のうち、第2距離D
mと第1距離D1との差に応じて選択されるいずれかの取得時刻を、基準位置の通過時刻として決定する。
【0044】
これにより、衛星信号に基づく位置信号を取得する第1周期よりも短い第2周期で第1車両情報を取得した取得時刻t
n−mのいずれかを、取得時刻t
n−mにおける車両1の位置とゴールラインLとの差に応じて選択することができる。
このため、衛星信号に基づく位置信号を取得した時刻より実際のゴールラインLの通過時刻に近い時刻を測定することができる。したがって、測位衛星の衛星信号に基づくゴールラインの通過時刻の測定精度を向上できる。
【0045】
なお、走行コースでのタイム測定を安価にするために、測定対象の走行コースの地図データを予め用意して利用するシステムが知られている。しかし、世界中にある多くのサーキットコースの地図データを用意したり、サーキットコースに複数の走行パターンがある場合やコース改修に対応するのは困難であるという課題がある。
本実施形態のタイム測定装置2によれば、第1車両情報を用いることにより測定対象の走行コースの地図データを用いることなく通過時刻の測定精度を向上できる。
【0046】
(2)通過時刻決定部45は、第2距離D
mが第1距離D1以上となり且つ第2距離D
mと第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻t
n−mを、ゴールラインLの通過時刻として選択する。
このような取得時刻t
n−mを選択することで、各取得時刻t
n−mにおける第2距離D
mを小さい順に順次計算し、第2距離D
mが第1距離D1以上となった時点で計算を完了することができる。これにより、第2距離D
mを順次計算する度に、第1距離D1との差が最も小さいか否かを判断する必要がなくなるので、取得時刻t
n−mを選択する計算負荷を低減することができる。
【0047】
(3)移動距離算出部50は、第1時刻T1と第2時刻T2との間に取得された第1車両情報に基づいて、第1車両情報の取得時間間隔S
iのそれぞれにおける車両の移動距離ds
iを算出する。累積演算部51は、移動距離ds
iを累積することにより第2距離D
mを算出する。
これにより、取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iの算出を予め済ませておけば、移動距離ds
iを累積する単純な加算演算により第2距離D
mを算出することができる。
このため、第1時刻T1より前の取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iを第1時刻T1より前に算出しておけば、第1時刻T1から第2距離D
mの計算完了までの時間を短縮できる。このため、通過時刻の決定、並びにラップタイムの算出及び表示を完了するまでの時間を短縮できる。
【0048】
(4)通過時刻決定部45は、ゴールラインLの通過時刻として選択される取得時刻t
n−mにおける第2距離D
mを計算する移動距離ds
iの累積回数(m+1)を決定する。車両1が基準位置を通過した後に第1時刻T1が到来する場合、通過時刻決定部45は、累積回数(m+1)に第2周期t
sを乗じた積を第1時刻T1から減じて、通過時刻を算出する。
これにより、取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iが算出済みであれば、移動距離ds
iを累積して第2距離D
mを算出する単純な加算演算と、第2距離D
mと第1距離D1との比較により累積回数(m+1)を決定することができる。したがって、累積回数(m+1)を決定する加算演算及び比較演算、累積回数(m+1)と第2周期t
sの乗算、これらの積を第1時刻T1から減じる減算、といった比較的簡単な演算によって通過時刻を算出できる。
このため、第1時刻T1より前の取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iを第1時刻T1より前に算出しておけば、第1時刻T1から通過時刻の算出完了までの時間を短縮できる。このため、通過時刻の決定、並びにラップタイムの算出及び表示を完了するまでの時間を短縮できる。
【0049】
(5)第2距離推定部44は、第1時刻T1及び第2時刻T2のうち遅い時刻である第1時刻より前に取得した第1車両情報に基づいて、第1時刻T1よりも前に移動距離ds
iを算出する。すなわち、第2距離推定部44は、第2時刻T2以降且つ第1時刻T1より前の取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
iのいずれかを第1時刻T1より前に算出する。このため、第2距離D
mを計算する際には移動距離ds
iのいずれかは既に計算済みであるため、第1時刻T1から第2距離D
mの計算完了までの時間を短縮できる。
【0050】
(6)タイム測定装置2は、走行タイム測定部30により走行コースに設けたゴールラインLの通過時刻を決定し、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを測定して表示部12に表示する。これにより、ゴールラインLを通過してからラップタイムの表示を更新するまでの時間を短縮できることができ、違和感の発生を防止できる。
【0051】
(7)タイム測定装置2は、走行タイム測定部30により走行コースに設けたゴールラインLの通過時刻を決定し、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを測定して表示部12に表示する。走行ライン測定部31は、衛星信号と第1車両情報及び第2車両情報に基づいてデッドレコニング処理を行うことにより走行コースにおける車両1の走行ラインを記録する。走行タイム測定部30により通過時刻を測定する走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理から分離されている。
【0052】
走行コースの走行中に走行ラインや車速などを記録して走行後にこれらを表示するデータロガー機能を持つ記録装置には、デッドレコニング処理を行って測位衛星からの衛星信号に基づく測位結果に対して位置補正アルゴリズムを適用するものがある。このようなデッドレコニング処理により、衛星信号のマルチパスなどが大きい場所での正確な走行ラインを記録することができる。
しかし、デッドレコニング処理における計算には時間を要するため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムの測定完了までには遅れが生じる。このため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムを運転者に表示すると、運転者に周回ラップタイムを表示するタイミングが例えば1秒以上遅れ、大きな違和感を生じる。
【0053】
このように、走行中に走行ラインや車速などを記録する記録装置には、高精度且つロバストな走行ライン測定のためにデッドレコニング処理による位置補正と、運転者に対するリアルタイムなラップタイムの表示と、を両立させるという技術課題がある。
本実施形態のタイム測定装置2によれば、走行タイム測定部30により通過時刻を測定する走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理から分離されている。これによりラップタイムを計算するための計算量を減らすことにより、リアルタイムにラップタイムを表示することが可能になり、ラップタイムの表示遅れによる違和感の発生を防止できる。
【0054】
(変形例)
(1)車速情報に代えて、第1車両情報は加速度情報を含んでいてもよい。移動距離算出部50は、取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iを加速度情報に基づいて算出してもよい。以下の変形例でも同様である。
(2)通過時刻決定部45は、第2距離D
mが第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻t
mをゴールラインLの通過時刻として決定してもよい。以下の変形例でも同様である。
この場合、例えば通過時刻決定部45は、上式(3)を満たす第2距離D
m−1及び第2距離D
mのうちいずれが第1距離D1に近いのかを判断する。第2距離D
m−1の方が第2距離D
mよりも第1距離D1に近い場合には、取得時刻t
m−1をゴールラインLの通過時刻として決定する。第2距離D
mの方が第2距離D
m−1よりも第1距離D1に近い場合には、取得時刻t
mをゴールラインLの通過時刻として決定する。
これにより、ゴールラインLの通過時刻の測定精度をより向上することができる。
【0055】
(3)第1時刻T1は、第2時刻T2よりも先の時刻であってもよい。すなわち、時刻T1は車両1がゴールラインLを通過する前の時刻であり、時刻T2は車両1がゴールラインLを通過した後の時刻であってもよい。以下の変形例でも同様である。
図5を参照する。車両情報取得部41は、時刻t
−1、t
0、t
1、t
2、t
3、…、t
m、…、t
n−1、及びt
nを含む複数の取得時刻のそれぞれで第1車両情報を取得する。
図5の例では第1周期は第2周期の整数倍(この例ではn+1倍)と同期する。このため時刻t
−1が第1時刻T1と一致し、時刻t
nが第2時刻T2と一致する。
第1車両情報を連続して取得する2つの時刻t
m−1及び時刻t
mの間の時間期間を取得時間間隔S
mと表記する。また、参照符号p
−1、p
0、p
1、p
2、p
3、…、p
n−1、及びp
nは、それぞれ時刻t
−1、t
0、t
1、t
2、t
3、…、t
n−1、及びt
nにおける車両1の位置をそれぞれ示す。
【0056】
移動距離算出部50は、第1車両情報に基づいて取得時間間隔S
iにおける車両1の移動距離ds
iを算出する。
図3を参照する。参照符号ds
0、ds
1、ds
2、ds
3、…、ds
nは、それぞれ取得時間間隔S
0、S
1、S
2、S
3、…、S
nにおける車両1の移動距離を示す。
移動距離ds
0の算出が完了すると、累積演算部51は、移動距離ds
iを累積することにより取得時刻t
mにおける第2距離D
mを算出する。累積演算部51は上式(2)に従って第2距離D
mを算出する。
通過時刻決定部45は、第1時刻T1から第2時刻T2までに車両情報をそれぞれ取得した取得時刻t
−1、t
0、t
1、t
2、t
3、…、t
n−1、及びt
nのうち、第2距離D
mと第1距離D1との差に応じて選択したいずれかを、ゴールラインLの通過時刻として決定する。
【0057】
取得時刻t
mをゴールラインLの通過時刻として決定する場合、取得時刻t
mは次式(5)によって決定できる。
t
m=T1+(t
s×(m+1)) …(5)
すなわち、通過時刻は、累積回数(m+1)に第2周期t
sを乗じた積を第1時刻T1に加えることにより算出できる。
【0058】
これにより、取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iが算出済みであれば、移動距離ds
iを累積して第2距離D
mを算出する単純な加算演算と、第2距離D
mと第1距離D1との比較により累積回数(m+1)を決定することができる。したがって、累積回数(m+1)を決定する加算演算及び比較演算、累積回数(m+1)と第2周期t
sの乗算、これらの積を第1時刻T1に加える加算演算、といった比較的簡単な演算によって通過時刻を算出できる。
このため、第2時刻T2より前の取得時間間隔S
iにおける移動距離ds
iを第2時刻より前に算出しておけば第2時刻T2から通過時刻の算出完了までの時間を短縮できる。
【0059】
(4)第1距離算出部43及び第2距離推定部44は、車両1がゴールラインLを通過する前に位置情報を取得した第1取得位置と車両1がゴールラインLを通過した後に位置情報を取得した第2取得位置とのうち、ゴールラインLにより近い位置で位置情報を取得した時刻を第1時刻T1として選択してよい。すなわち、第1位置P1とゴールラインLとの間の距離は、第2時刻T2に取得した位置情報が示す第2位置P2とゴールラインLとの間の距離より短い。以下の変形例でも同様である。
これにより、通過時刻の決定に要する第2距離の長さを短くすることができる。したがって、第1車両情報に基づき推定される第2距離による測定誤差を低減できる。
【0060】
(5)第1周期は第2周期の整数倍に同期していなくてもよく、第1周期は第2周期の整数倍でなくてもよい。
図6を参照する。
図6の例では、第1周期は第2周期の整数倍ではなく、このため第1車両情報の取得時刻t
0が第2時刻T2と一致せず、取得時刻t
n+1が第1時刻T1と一致しない。
車両情報取得部41が各取得時刻t
n−mで第1車両情報を取得すると、第2距離推定部44は、各取得時刻t
n−mを記憶部13にそれぞれ記憶する。
第1時刻T1において位置情報取得部40が位置情報を取得すると、累積演算部51は、最後に記憶部13に記憶された取得時刻を読み出す。
図6の例では、累積演算部51は取得時刻t
nを読み出す。
【0061】
累積演算部51は、第1時刻T1の直前の取得時刻t
nから第1時刻T1までの距離dcを算出する。例えば累積演算部51は、取得時刻t
nから第1時刻T1まで車両1が等速運動すると仮定し、取得時刻t
nと第1時刻T1の差と取得時刻t
nにおける速度から距離dcを算出してよい。取得時刻t
nにおける加速度情報を利用できる場合には、速度を係数とする1次項に加速度を係数とする2次項を加えて距離dcを算出してもよい。累積演算部51は、次式(6)に従って第1時刻T1の直前の取得時刻t
nと1つ前の取得時刻t
nとの取得時間間隔S
iから順に遡って移動距離ds
iを累積することにより、第2距離D
mを算出する。
【0063】
このように、取得時刻t
n+1が第1時刻T1と一致していなくても第2距離D
mを算出することができる。したがって、第1周期が第2周期の整数倍に同期していなくても又は第1周期は第2周期の整数倍でなくても第2距離D
mを算出することができる。
なお、第2周期ts程度の誤差の増加が許容可能であれば、上式(2)と同様に第2距離D
mを算出してもよい。