特許第6884519号(P6884519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特許6884519通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置
<>
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000005
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000006
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000007
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000008
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000009
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000010
  • 特許6884519-通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884519
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】通過時刻測定方法、タイム測定方法、及びタイム測定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20210531BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20210531BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20210531BHJP
   G07C 1/24 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G01C21/28
   G01C15/00 102C
   G07C1/24
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-124902(P2016-124902)
(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-228161(P2017-228161A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 敏紀
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−108231(JP,A)
【文献】 特開2011−137706(JP,A)
【文献】 特開2012−052937(JP,A)
【文献】 特開2015−018533(JP,A)
【文献】 特開2013−170904(JP,A)
【文献】 特開2012−207919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 〜 1/16
G01C 21/26 〜 21/36
G01C 15/00
G07C 1/22 〜 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置から第1周期で出力される位置情報を第1時刻及び第2時刻でそれぞれ取得し、
前記位置情報に基づいて、前記測位装置を載せた車両が前記第1時刻と前記第2時刻との間で所定の基準位置を通過したことを検出し、
前記第1時刻に取得した前記位置情報が示す測位位置と前記基準位置との間の第1距離を算出し、
前記車両の車速情報及び加速度情報の少なくともいずれか一方を含む車両情報を前記第1周期より短い第2周期で取得し、
前記車両情報に基づいて、前記第1時刻と前記第2時刻との間において前記車両情報を前記第2周期で取得した複数の取得時刻と前記第1時刻との間に前記車両が移動した第2距離を各々推定し、
前記第1距離と前記第2距離との差に応じて、前記車両情報の前記複数の取得時刻のいずれかを前記基準位置の通過時刻として選択する、
ことを特徴とする通過時刻測定方法。
【請求項2】
前記第2距離が前記第1距離以上となり且つ前記第2距離と前記第1距離との差が最も小さくなる前記取得時刻を、前記通過時刻として選択することを特徴とする請求項1に記載の通過時刻測定方法。
【請求項3】
前記第2距離と前記第1距離との差が最も小さくなる前記取得時刻を、前記通過時刻として選択することを特徴とする請求項1に記載の通過時刻測定方法。
【請求項4】
前記第1時刻と前記第2時刻との間に取得された前記車両情報に基づいて、前記車両情報の取得時間間隔のそれぞれにおける前記車両の移動距離を算出し、
前記移動距離を累積することにより前記第2距離を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法。
【請求項5】
前記第1時刻は、前記車両が前記基準位置を通過する前の時刻であり、
前記通過時刻として選択される前記取得時刻における前記第2距離を計算する前記移動距離の累積回数を決定し、
前記累積回数に前記第2周期を乗じた積を前記第1時刻に加えて、前記通過時刻を算出することを特徴とする請求項4に記載の通過時刻測定方法。
【請求項6】
前記第1時刻は、前記車両が前記基準位置を通過した後の時刻であり、
前記通過時刻として選択される前記取得時刻における前記第2距離を計算する前記移動距離の累積回数を決定し、
前記累積回数に前記第2周期を乗じた積を前記第1時刻から減じて、前記通過時刻を算出することを特徴とする請求項4に記載の通過時刻測定方法。
【請求項7】
前記第1時刻及び前記第2時刻のうちいずれか遅い一方の時刻より前に取得した前記車両情報に基づいて、前記一方の時刻よりも前に前記移動距離を算出することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法。
【請求項8】
前記測位位置と前記基準位置との間の距離が、前記第2時刻に取得した前記位置情報が示す第2の測位位置と前記基準位置との間の距離より短いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法により、走行コースに設けた前記基準位置の前記通過時刻を決定し、
決定した前記通過時刻に基づいて前記走行コースの走行タイムを測定して表示することを特徴とするタイム測定方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の通過時刻測定方法により、走行コースに設けた前記基準位置の前記通過時刻を決定し、
決定した前記通過時刻に基づいて前記走行コースの走行タイムを測定して表示し、
前記衛星信号と前記車両情報に基づいてデッドレコニング処理を行うことにより前記走行コースにおける前記車両の走行ラインを記録し、
前記通過時刻測定方法を実行する処理が、前記デッドレコニング処理から分離されていることを特徴とするタイム測定方法。
【請求項11】
測位衛星の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置と、
前記測位装置から第1周期で出力される位置情報を取得するコントローラと、を備えるタイム測定装置であって、
前記コントローラは、
第1時刻及び第2時刻で前記位置情報をそれぞれ取得し、
前記位置情報に基づいて、前記測位装置を載せた車両が前記第1時刻と前記第2時刻との間で所定の基準位置を通過したことを検出し、
前記第1時刻に取得した前記位置情報が示す測位位置と前記基準位置との間の第1距離を算出し、
前記車両の車速情報及び加速度情報の少なくともいずれか一方を含む車両情報を前記第1周期より短い第2周期で取得し、
前記車両情報に基づいて、前記第1時刻と前記第2時刻との間において前記車両情報を前記第2周期で取得した複数の取得時刻と前記第1時刻との間に前記車両が移動した第2距離を各々推定し、
前記第1距離と前記第2距離との差に応じて、前記車両情報の前記複数の取得時刻のいずれかを前記基準位置の通過時刻として選択する、
ことを特徴とするタイム測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過時刻測定方法、タイム測定方法及びタイム測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイム計測用のコースにおける走行タイムをGPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づいて計測する技術として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載のタイム計測装置は、地図データ記憶部に記憶された地図データに基づく地図上にタイム計測用のコースを生成する計測コース生成部と、GPS衛星からの電波によって自己位置を検出する自己位置検出部と、自己位置検出部により検出された自己位置が、コース上に設定されたタイム計測開始箇所を出発してからタイム計測終了箇所に達するまでのタイムを計測するタイム計測部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS衛星のような測位衛星の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置は、固定された周期で位置情報を出力する。このため、所定の基準位置の車両通過時刻を測定する場合、ちょうど車両が基準位置を通過した時刻で位置情報を出力しないことがある。その結果、車両通過時刻の測定精度が低下することがある。
本発明は、測位衛星の衛星信号に基づく所定の基準位置の車両通過時刻の測定精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る通過時刻測定方法では、測位衛星の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置から第1周期で出力される位置情報を第1時刻及び第2時刻で取得する。位置情報に基づいて、測位装置を載せた車両が第1時刻と第2時刻との間で所定の基準位置を通過したことを検出する。第1時刻の位置情報が示す測位位置と基準位置との間の第1距離を算出する。
そして、車両の車速情報及び加速度情報の少なくともいずれか一方を含む車両情報を第1周期より短い第2周期で取得する。車両情報に基づいて、第1時刻と第2時刻との間の車両情報の取得時刻と第1時刻との間に車両が移動した第2距離を推定する。第1距離と第2距離との差に応じて、車両情報の取得時刻のいずれかを前記基準位置の通過時刻として選択する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、測位衛星の衛星信号に基づく所定の基準位置の車両通過時刻の測定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のタイム測定装置を搭載した車両の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】ラップタイム測定のための走行タイム測定処理と、走行ライン記録のためのデッドレコニング処理が行われる期間を示すタイムチャートである。
図3】基準位置の車両通過時刻の決定方法の説明図である。
図4A】移動距離算出処理の一例のフローチャートである。
図4B】通過時刻測定処理の一例のフローチャートである。
図5】基準位置の車両通過時刻の決定方法の変形例の説明図である。
図6】基準位置の車両通過時刻の決定方法の他の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1を参照する。車両1は、実施形態に係るタイム測定装置2を備える。また、車両1には、センサ3と、ECU(Electronic Control Unit)4と、通信インタフェース5が搭載されている。添付図面では通信インタフェースを「通信I/F」と表記する。
タイム測定装置2は、車両1に設置された専用の測定装置であってもよく、タイム測定用のアプリケーションプログラムがインストールされ、車両1に持ち込まれた携帯情報端末装置であってもよい。例えば、タイム測定装置2はスマートフォンであってよい。
【0009】
センサ3は、車両1の車輪速を検出して車輪速に基づいて車両1の車速を算出する。センサ3は、車速情報を含んだ第1車両情報をECU4へ出力する。センサ3は、例えば車輪速パルスを計測するロータリエンコーダなどのパルス発生器を含んでよい。
またセンサ3は、車両1の位置推定のためのデッドレコニング処理に利用される舵角、ヨーレート、及び加速度などを検出する。例えばセンサ3は、舵角センサ、ジャイロセンサー、及び加速度センサを含んでよい。
センサ3は、舵角情報、ヨーレート情報、及び加速度情報等を含む第2車両情報をECU4へ出力する。
【0010】
ECU4は、有線又は無線の通信規格に準拠する通信インタフェース5を介して第1車両情報及び第2車両情報をタイム測定装置2へ送信する。通信インタフェース5は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信や、Wi−Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)に準拠してよい。
【0011】
タイム測定装置2は、測位装置10と、通信部11と、表示部12と、記憶部13と、制御装置14を備える。
測位装置10は、測位衛星6から送信された衛星信号を受信する。測位衛星6は、例えば衛星信号としてGPS信号を送信するGPS衛星であってよく、これに限定されることなく例えばGLONASS(Global Navigation Satellite System)等の他の衛星測位システムで使用される測位衛星であってもよい。
測位装置10は、衛星信号に基づいて測位装置10の現在位置を測定する。測位装置10は、測位装置10の現在位置を示す位置情報を第1周期で制御装置14へ出力する。
【0012】
通信部11は、有線又は無線の通信回線を介して通信インタフェース5と通信する。これによりタイム測定装置2とECU4は、各種情報をやり取りする。タイム測定装置2は、通信部11を経由して、ECU4から送信された第1車両情報及び第2車両情報を取得する。いま、第1車両情報の取得周期を、第1周期よりも短い第2周期とする。第2周期は、例えば100ミリ秒であってよい。
第2車両情報の周期も、第1周期よりも短い。第2車両情報の周期は、第2周期と同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
表示部12は、表示手段として機能し、制御装置14の制御によって各種の情報の表示を行う。
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。記憶部13は、不揮発性メモリ又はハードディスクドライブ装置を備えてもよい。
【0014】
記憶部13には、制御装置14により実行される走行タイム測定プログラム20と、走行ライン測定プログラム21が記憶される。
走行タイム測定プログラム20は、タイム計測用の走行コースに予め設定したゴールラインを車両1が通過した通過時刻を測定する機能と、測定した通過時刻に基づき走行コースの走行タイムであるラップタイムを測定する機能と、測定したラップタイムを表示部12に表示する機能を、制御装置14に実現させる。ゴールラインは、特許請求の範囲に記載された所定の基準位置の一例である。
【0015】
走行ライン測定プログラム21は、衛星信号と第1車両情報及び第2車両情報とに基づくデッドレコニング処理により走行コースにおける車両1の位置推定を行って走行ラインを算出する機能と、推定した車両1の位置に基づいてラップタイムを測定する機能と、算出した走行ライン及び測定したラップタイムを記憶部13に記録する機能を、制御装置14に実現させる。
走行タイム測定プログラム20及び走行ライン測定プログラム21は、機械可読記録媒体に記録されて、図示しない媒体読取装置により読み取られて記憶部13にインストールされてもよい。また、走行タイム測定プログラム20及び走行ライン測定プログラム21は、通信部11を介して通信回線からダウンロードされ、記憶部13にインストールされてもよい。
【0016】
記憶部13には、タイム情報22とライン情報23が記憶される。タイム情報22は、走行タイム測定プログラム20により測定された通過時刻の情報や、走行ライン測定プログラム21により測定されたラップタイムの情報を含んでよい。ライン情報23は、走行ライン測定プログラム21により算出された走行ラインの情報を含んでよい。
制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及び周辺部品を含む電子回路装置である。制御装置14は、走行タイム測定部30と、走行ライン測定部31とを備える。
【0017】
走行タイム測定プログラム20は、制御装置14のプロセッサに走行タイム測定部30の機能を実現させる。走行ライン測定プログラム21は、制御装置14のプロセッサに走行ライン測定部31の機能を実現させる。
走行ライン測定部31は、測位装置10から位置情報を取得し、ECU4から第1車両情報及び第2車両情報を取得する。
走行ライン測定部31は、第1車両情報と第2車両情報とに基づくデッドレコニング処理を行うことにより位置情報を補正して車両1の位置を推定する。走行ライン測定部31は、推定した車両1の位置に基づいてラップタイムを測定する。走行ライン測定部31は、車両1の位置の軌跡である走行ラインと、ラップタイムとを記憶部13に記録する。
【0018】
一方、走行タイム測定部30は、第1車両情報を第2周期で取得する度に移動距離算出処理を行う。
移動距離算出処理において走行タイム測定部30は、取得した第1車両情報に含まれる車速情報に基づいて、車両情報の取得時間間隔(すなわち第1車両情報を連続して取得する2つの時刻の間の時間期間)のそれぞれにおける車両1の移動距離を算出する。走行タイム測定部30は、算出した移動距離を記憶部13に記憶しておく。
【0019】
第1周期で位置情報を取得すると、走行タイム測定部30は走行タイム測定処理を行う。
走行タイム測定処理において走行タイム測定部30は、取得した位置情報に基づき車両1がゴールラインを超えたか否かを判断する。車両1がゴールラインを超えたと判断すると、走行タイム測定部30は、取得した位置情報と、位置情報の取得時刻と、移動距離算出処理で求めた移動距離に基づいて、車両1がゴールラインを通過した通過時刻を決定する。
さらに、走行タイム測定処理において走行タイム測定部30は、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを算出し、表示部12に表示する。
このように、走行タイム測定部30による移動距離算出処理と走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理及び記録処理から分離されている。
【0020】
図2を参照して、走行タイム測定処理とデッドレコニング処理とが行われる期間を説明する。
時刻t0において測位装置10から位置情報を取得する。位置情報を取得すると、走行ライン測定部31がデッドレコニング処理を開始するとともに、走行タイム測定部30が走行タイム測定処理を開始する。走行タイム測定処理の完了時刻を時刻t1とする。
デッドレコニング処理が完了すると、走行ライン測定部31は、デッドレコニング処理で推定された車両1の軌跡である走行ライン、及び推定した位置に基づいて測定したラップタイムを記録する記録処理を開始する。記録処理の完了時刻を時刻t2とする。
【0021】
デッドレコニング処理における計算には時間を要するため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムの測定完了までには遅れが生じる。
例えば、デッドレコニング処理に1秒程度を要するとすれば、走行ライン測定部31の処理の完了時刻t2は時刻t0から1秒以上遅れることになる。また、ゴールラインの通過後1秒以上経過してからラップタイムが決まる。
このため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムを運転者に表示すると、運転者に周回ラップタイムを表示するタイミングが1秒以上遅れ、大きな違和感を生じる。
【0022】
一方で、走行タイム測定処理では、測位装置10から出力された位置情報と、位置情報の受信時刻と、第1車両情報に基づく移動距離算出処理により算出される移動距離とを用いて車両通過時刻を決定し、ラップタイムを求める。
取得時刻t0以前に取得した第1車両情報に基づく移動距離算出処理は、取得時刻t0よりも前に済ませておくことができる。さらに走行タイム測定処理では、移動距離算出処理により算出済みの移動距離を累積する加算演算と、累積回数のカウントと、比較演算等とを含んだ比較的簡易な演算で車両通過時刻を決定する。このため、走行タイム測定処理は、位置情報の取得時刻t0後に早期に完了する。例えば、取得時刻t0と完了時刻t1との差を0.1秒以下にすることができる。
タイム測定装置2は、走行タイム測定処理により算出したラップタイムを表示部12に表示することで、ラップタイムの表示の遅れによる違和感の発生を防ぐ。
【0023】
図1を参照する。走行タイム測定部30は、位置情報取得部40と、車両情報取得部41と、通過判定部42と、第1距離算出部43と、第2距離推定部44と、通過時刻決定部45と、走行タイム決定部46を備える。
位置情報取得部40は、測位装置10から出力される測位装置10の現在位置を示す位置情報を第1周期で取得する。
図3を参照する。例えば位置情報取得部40は、第1時刻T1及び第2時刻T2で測位装置10から出力される位置情報を取得する。図3は、第1時刻T1が第2時刻T2よりも後の時刻である例を示す。
【0024】
第1位置P1は第1時刻T1に取得した位置情報が示す位置であり、第2位置P2は第2時刻T2に取得した位置情報が示す位置である。
なお、第1時刻T1と第2時刻T2の間隔は第1周期と同じであってもよく、第1周期の整数倍であってもよい。なお、参照符号Lは、走行コースに予め設定したゴールラインLを示し、参照符号Txは車両1がゴールラインLを通過した実際の通過時刻を示し、参照符号Pxは通過時刻Txにおける車両1の位置を示す。
【0025】
図1を参照する。車両情報取得部41は、車両1の車速情報を含む車両情報を第1周期より短い第2周期で取得する。
図3を参照する。例えば車両情報取得部41は、時刻t、t、…、tn−m、…、tn−3、tn−2、tn−1、t、及びtn+1を含む複数の取得時刻のそれぞれで第1車両情報を取得する。インデックスmは、−1以上n以下の整数である。
第1車両情報を連続して取得する2つの時刻t及び時刻tの間の時間期間を取得時間間隔Sと表記する。同様に、第1車両情報を連続して取得する2つの時刻tn−3及び時刻tn−2の間の時間期間を取得時間間隔Sと表記する。すなわち、第1車両情報を連続して取得する2つの時刻tn−m及び時刻tn−(m−1)の間の時間期間を取得時間間隔Sと表記する。
取得時間間隔Sの長さは第2周期と同じであり、図3の例では第1周期は第2周期の整数倍(この例ではn+1倍)と同期する。このため時刻tが第2時刻T2と一致し、時刻tn+1が第1時刻T1と一致する。
【0026】
図1を参照する。通過判定部42は、車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したか否かを判断する。図3を参照する。通過判定部42は、予め設定されたゴールラインLの座標情報と、第1時刻T1及び第2時刻T2で取得した位置情報とに基づいて、第1位置P1と第2位置P2とを結ぶ線分とゴールラインLとの交点Piが存在する否かを判断する。交点Piが存在する場合、通過判定部42は、車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したと判断する。図3の例では、時刻T1は車両1がゴールラインLを通過した後の時刻となり、時刻T2は車両1がゴールラインLを通過する前の時刻となる。
【0027】
図1を参照する。車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間にゴールラインLを通過したと判断した場合、第1距離算出部43は、第1時刻T1に取得した位置情報が示す測位位置(すなわち第1位置P1)と交点Piとの間の第1距離D1を算出する。言い換えれば、第1距離算出部43は第1位置P1とゴールラインLとの間の第1距離D1を算出する。
図3を参照する。第1時刻T1と第2時刻T2との間に車両1がゴールラインLを通過すると、第1距離D1は第1位置P1と第2位置P2との間の距離D0よりも短くなる。
【0028】
図1を参照する。第2距離推定部44は、第1時刻T1と第2時刻T2との間の第1車両情報の取得時刻tn−mと第1時刻T1との間に車両1が移動した第2距離Dを推定する。すなわち、第2距離推定部44は、取得時刻tn−mにおける車両1の位置と、第1位置P1との間の第2距離Dを推定する。
図3を参照する。参照符号p、p、…、pn−3、pn−2、pn−1、p、及びpn+1は、それぞれ時刻t、t、…、tn−3、tn−2、tn−1、t、及びtn+1における車両1の位置をそれぞれ示す。
【0029】
図1を参照する。第2距離推定部44は、移動距離算出処理を行う移動距離算出部50と、累積演算部51を備える。
移動距離算出部50は、第1車両情報に基づいて取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsを算出する。図3を参照する。参照符号ds、ds、ds、ds、…、dsnは、それぞれ取得時間間隔S、S、S、S、…、Sにおける車両1の移動距離を示す。
移動距離算出部50は、例えば次式(1)に従って移動距離dsを算出してよい。
【0030】
【数1】
【0031】
式中、Vは、時刻tn−iにおける車両1の速度であり、tは第2周期の長さを示す。
移動距離算出部50は、第1時刻T1より前の取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離ds(i=1〜n)の算出を第1時刻T1より前に済ませておいてよい。すなわち、移動距離算出部50は、第1時刻T1より前に取得した第1車両情報に基づいて、第1時刻T1より前の取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsを第1時刻T1より前に算出してよい。移動距離算出部50は、算出した移動距離dsを記憶部13に記憶する。
【0032】
図1を参照する。第2時刻T2において位置情報取得部40が位置情報を取得すると、累積演算部51は、記憶部13に記憶された移動距離dsを読み出す。
移動距離算出部50が、取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsの算出を完了すると、累積演算部51は、移動距離dsを累積することにより取得時刻tにおける第2距離Dを算出する。すなわち、累積演算部51は次式(2)に従って第2距離Dを算出する。
【0033】
【数2】
【0034】
通過時刻決定部45は、第1時刻T1と第2時刻T2との間に車両情報をそれぞれ取得した複数の取得時刻t、t、…、tn−3、tn−3、tn−1、t及びtn+1のうち、第2距離Dと第1距離D1との差に応じて選択したいずれかを、ゴールラインLの通過時刻として決定する。
例えば通過時刻決定部45は、第2距離Dが第1距離D1以上となり、かつ第2距離Dと第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻tをゴールラインLの通過時刻として決定してよい。
【0035】
この場合、例えば、インデックスmを−1から小さい順に設定して第2距離Dを順次算出し、第2距離Dが第1距離D1を超えた場合に、取得時刻tn−mを通過時刻として決定すればよい。すなわち、次式(3)を満足した場合に取得時刻tn−mを通過時刻として決定する。
第2距離Dm−1 < 第1距離D ≦ 第2距離D …(3)
累積演算部51が第2距離Dを算出した際の移動距離dsの累積回数は(m+1)回であり、車両1が移動距離dsのそれぞれを移動した期間は第2周期tであることから、取得時刻tn−mは次式(4)によって決定できる。
n−m=T1−(t×(m+1)) …(4)
すなわち、通過時刻は、累積回数(m+1)に第2周期tを乗じた積を第1時刻T1から減じることにより算出できる。
通過時刻決定部45は、決定した通過時刻を記憶部13に記憶する。
【0036】
走行タイム決定部46は、通過時刻決定部45が決定したゴールラインLの通過時刻に基づいて、走行コースのラップタイムを決定する。例えば、走行タイム決定部46は、前回ゴールラインLを通過した時の通過時刻を記憶部13から読み出し、今回の通過時刻との差分をラップタイムとして決定する。走行タイム決定部46は、決定したラップタイムを表示部12に表示する。
【0037】
(動作)
次に、実施形態に係るタイム測定装置2の動作の一例を説明する。
図4Aに示す移動距離算出処理は、車両情報取得部41が第1車両情報を取得する第2周期で繰り返し実行される。
ステップS1において車両情報取得部41は、第1車両情報を取得する。
ステップS2において移動距離算出部50は、第1車両情報の取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsを、第1車両情報に基づいて算出する。
ステップS3において移動距離算出部50は、算出した移動距離dsを記憶部13に記憶する。
【0038】
図4Bに示す通過時刻測定処理は、位置情報取得部40が位置情報を取得する第1周期で繰り返し実行される。
ステップS10において位置情報取得部40は、測位装置10から出力される位置情報を取得する。
ステップS11において通過判定部42は、車両1がゴールラインLを通過したか否かを判断する。車両1がゴールラインLを通過した場合(ステップS11:Y)に処理はステップS12へ進む。車両1がゴールラインLを通過してない場合(ステップS11:N)に処理はステップS10へ戻る。
【0039】
ステップS12において第1距離算出部43は第1距離D1を算出する。
ステップS13において累積演算部51は、記憶部13に記憶された移動距離dsを読み出す。
ステップS14において累積演算部51は、インデックスmの値を0にリセットする。
ステップS15において累積演算部51は、インデックスmに応じて移動距離dsを累積することにより第2距離Dを算出する。
【0040】
ステップS16において通過時刻決定部45は、第2距離Dが第1距離D1以上となったか否かを判断する。第2距離Dが第1距離D1以上となった場合(ステップS16:Y)に処理はステップS18へ進む。第2距離Dが第1距離D1に至らない場合(ステップS16:N)に処理はステップS17へ進む。
ステップS17においてインデックスmの値をインクリメントする。その後に処理はステップS15へ戻る。
【0041】
ステップS18において通過時刻決定部45は、取得時刻tをゴールラインLの通過時刻として決定する。通過時刻決定部45は決定した通過時刻を記憶部13に記憶する。
ステップS19において走行タイム決定部46は、通過時刻決定部45が決定したゴールラインLの通過時刻に基づいて、走行コースのラップタイムを決定する。走行タイム決定部46は、決定したラップタイムを表示部12に表示する。
【0042】
(実施形態の効果)
(1)位置情報取得部40は、測位衛星6の衛星信号に基づき現在位置を測定する測位装置10から第1周期で出力される位置情報を、第1時刻T1及び第2時刻T2でそれぞれ取得する。通過判定部42は、位置情報に基づいて、測位装置10を載せた車両1が第1時刻T1と第2時刻T2との間でゴールラインLを通過したことを検出する。第1距離算出部43は、第1時刻T1に取得した位置情報が示す測位位置である第1位置P1とゴールラインLとの間の第1距離D1を算出する。
【0043】
車両情報取得部41は、車両1の車速情報を含む第1車両情報を第1周期より短い第2周期で取得する。
第2距離推定部44は、第1車両情報に基づいて、第1時刻T1と第2時刻T2との間の車両情報の取得時刻tn−mと第1時刻T1との間に車両1が移動した第2距離Dを推定する。
通過時刻決定部45は、第1時刻T1と第2時刻T2との間の複数の取得時刻t、t、…、tn−3、tn−3、tn−1、t及びtn+1のうち、第2距離Dと第1距離D1との差に応じて選択されるいずれかの取得時刻を、基準位置の通過時刻として決定する。
【0044】
これにより、衛星信号に基づく位置信号を取得する第1周期よりも短い第2周期で第1車両情報を取得した取得時刻tn−mのいずれかを、取得時刻tn−mにおける車両1の位置とゴールラインLとの差に応じて選択することができる。
このため、衛星信号に基づく位置信号を取得した時刻より実際のゴールラインLの通過時刻に近い時刻を測定することができる。したがって、測位衛星の衛星信号に基づくゴールラインの通過時刻の測定精度を向上できる。
【0045】
なお、走行コースでのタイム測定を安価にするために、測定対象の走行コースの地図データを予め用意して利用するシステムが知られている。しかし、世界中にある多くのサーキットコースの地図データを用意したり、サーキットコースに複数の走行パターンがある場合やコース改修に対応するのは困難であるという課題がある。
本実施形態のタイム測定装置2によれば、第1車両情報を用いることにより測定対象の走行コースの地図データを用いることなく通過時刻の測定精度を向上できる。
【0046】
(2)通過時刻決定部45は、第2距離Dが第1距離D1以上となり且つ第2距離Dと第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻tn−mを、ゴールラインLの通過時刻として選択する。
このような取得時刻tn−mを選択することで、各取得時刻tn−mにおける第2距離Dを小さい順に順次計算し、第2距離Dが第1距離D1以上となった時点で計算を完了することができる。これにより、第2距離Dを順次計算する度に、第1距離D1との差が最も小さいか否かを判断する必要がなくなるので、取得時刻tn−mを選択する計算負荷を低減することができる。
【0047】
(3)移動距離算出部50は、第1時刻T1と第2時刻T2との間に取得された第1車両情報に基づいて、第1車両情報の取得時間間隔Sのそれぞれにおける車両の移動距離dsを算出する。累積演算部51は、移動距離dsを累積することにより第2距離Dを算出する。
これにより、取得時間間隔Sにおける移動距離dsの算出を予め済ませておけば、移動距離dsを累積する単純な加算演算により第2距離Dを算出することができる。
このため、第1時刻T1より前の取得時間間隔Sにおける移動距離dsを第1時刻T1より前に算出しておけば、第1時刻T1から第2距離Dの計算完了までの時間を短縮できる。このため、通過時刻の決定、並びにラップタイムの算出及び表示を完了するまでの時間を短縮できる。
【0048】
(4)通過時刻決定部45は、ゴールラインLの通過時刻として選択される取得時刻tn−mにおける第2距離Dを計算する移動距離dsの累積回数(m+1)を決定する。車両1が基準位置を通過した後に第1時刻T1が到来する場合、通過時刻決定部45は、累積回数(m+1)に第2周期tを乗じた積を第1時刻T1から減じて、通過時刻を算出する。
これにより、取得時間間隔Sにおける移動距離dsが算出済みであれば、移動距離dsを累積して第2距離Dを算出する単純な加算演算と、第2距離Dと第1距離D1との比較により累積回数(m+1)を決定することができる。したがって、累積回数(m+1)を決定する加算演算及び比較演算、累積回数(m+1)と第2周期tの乗算、これらの積を第1時刻T1から減じる減算、といった比較的簡単な演算によって通過時刻を算出できる。
このため、第1時刻T1より前の取得時間間隔Sにおける移動距離dsを第1時刻T1より前に算出しておけば、第1時刻T1から通過時刻の算出完了までの時間を短縮できる。このため、通過時刻の決定、並びにラップタイムの算出及び表示を完了するまでの時間を短縮できる。
【0049】
(5)第2距離推定部44は、第1時刻T1及び第2時刻T2のうち遅い時刻である第1時刻より前に取得した第1車両情報に基づいて、第1時刻T1よりも前に移動距離dsを算出する。すなわち、第2距離推定部44は、第2時刻T2以降且つ第1時刻T1より前の取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsのいずれかを第1時刻T1より前に算出する。このため、第2距離Dを計算する際には移動距離dsのいずれかは既に計算済みであるため、第1時刻T1から第2距離Dの計算完了までの時間を短縮できる。
【0050】
(6)タイム測定装置2は、走行タイム測定部30により走行コースに設けたゴールラインLの通過時刻を決定し、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを測定して表示部12に表示する。これにより、ゴールラインLを通過してからラップタイムの表示を更新するまでの時間を短縮できることができ、違和感の発生を防止できる。
【0051】
(7)タイム測定装置2は、走行タイム測定部30により走行コースに設けたゴールラインLの通過時刻を決定し、決定した通過時刻に基づいて走行コースのラップタイムを測定して表示部12に表示する。走行ライン測定部31は、衛星信号と第1車両情報及び第2車両情報に基づいてデッドレコニング処理を行うことにより走行コースにおける車両1の走行ラインを記録する。走行タイム測定部30により通過時刻を測定する走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理から分離されている。
【0052】
走行コースの走行中に走行ラインや車速などを記録して走行後にこれらを表示するデータロガー機能を持つ記録装置には、デッドレコニング処理を行って測位衛星からの衛星信号に基づく測位結果に対して位置補正アルゴリズムを適用するものがある。このようなデッドレコニング処理により、衛星信号のマルチパスなどが大きい場所での正確な走行ラインを記録することができる。
しかし、デッドレコニング処理における計算には時間を要するため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムの測定完了までには遅れが生じる。このため、デッドレコニング処理に基づくラップタイムを運転者に表示すると、運転者に周回ラップタイムを表示するタイミングが例えば1秒以上遅れ、大きな違和感を生じる。
【0053】
このように、走行中に走行ラインや車速などを記録する記録装置には、高精度且つロバストな走行ライン測定のためにデッドレコニング処理による位置補正と、運転者に対するリアルタイムなラップタイムの表示と、を両立させるという技術課題がある。
本実施形態のタイム測定装置2によれば、走行タイム測定部30により通過時刻を測定する走行タイム測定処理は、走行ライン測定部31によるデッドレコニング処理から分離されている。これによりラップタイムを計算するための計算量を減らすことにより、リアルタイムにラップタイムを表示することが可能になり、ラップタイムの表示遅れによる違和感の発生を防止できる。
【0054】
(変形例)
(1)車速情報に代えて、第1車両情報は加速度情報を含んでいてもよい。移動距離算出部50は、取得時間間隔Sにおける移動距離dsを加速度情報に基づいて算出してもよい。以下の変形例でも同様である。
(2)通過時刻決定部45は、第2距離Dが第1距離D1との差が最も小さくなる取得時刻tをゴールラインLの通過時刻として決定してもよい。以下の変形例でも同様である。
この場合、例えば通過時刻決定部45は、上式(3)を満たす第2距離Dm−1及び第2距離Dのうちいずれが第1距離D1に近いのかを判断する。第2距離Dm−1の方が第2距離Dよりも第1距離D1に近い場合には、取得時刻tm−1をゴールラインLの通過時刻として決定する。第2距離Dの方が第2距離Dm−1よりも第1距離D1に近い場合には、取得時刻tをゴールラインLの通過時刻として決定する。
これにより、ゴールラインLの通過時刻の測定精度をより向上することができる。
【0055】
(3)第1時刻T1は、第2時刻T2よりも先の時刻であってもよい。すなわち、時刻T1は車両1がゴールラインLを通過する前の時刻であり、時刻T2は車両1がゴールラインLを通過した後の時刻であってもよい。以下の変形例でも同様である。
図5を参照する。車両情報取得部41は、時刻t−1、t、t、t、t、…、t、…、tn−1、及びtを含む複数の取得時刻のそれぞれで第1車両情報を取得する。図5の例では第1周期は第2周期の整数倍(この例ではn+1倍)と同期する。このため時刻t−1が第1時刻T1と一致し、時刻tが第2時刻T2と一致する。
第1車両情報を連続して取得する2つの時刻tm−1及び時刻tの間の時間期間を取得時間間隔Sと表記する。また、参照符号p−1、p、p、p、p、…、pn−1、及びpは、それぞれ時刻t−1、t、t、t、t、…、tn−1、及びtにおける車両1の位置をそれぞれ示す。
【0056】
移動距離算出部50は、第1車両情報に基づいて取得時間間隔Sにおける車両1の移動距離dsを算出する。図3を参照する。参照符号ds、ds、ds、ds、…、dsnは、それぞれ取得時間間隔S、S、S、S、…、Sにおける車両1の移動距離を示す。
移動距離dsの算出が完了すると、累積演算部51は、移動距離dsを累積することにより取得時刻tにおける第2距離Dを算出する。累積演算部51は上式(2)に従って第2距離Dを算出する。
通過時刻決定部45は、第1時刻T1から第2時刻T2までに車両情報をそれぞれ取得した取得時刻t−1、t、t、t、t、…、tn−1、及びtのうち、第2距離Dと第1距離D1との差に応じて選択したいずれかを、ゴールラインLの通過時刻として決定する。
【0057】
取得時刻tをゴールラインLの通過時刻として決定する場合、取得時刻tは次式(5)によって決定できる。
=T1+(t×(m+1)) …(5)
すなわち、通過時刻は、累積回数(m+1)に第2周期tを乗じた積を第1時刻T1に加えることにより算出できる。
【0058】
これにより、取得時間間隔Sにおける移動距離dsが算出済みであれば、移動距離dsを累積して第2距離Dを算出する単純な加算演算と、第2距離Dと第1距離D1との比較により累積回数(m+1)を決定することができる。したがって、累積回数(m+1)を決定する加算演算及び比較演算、累積回数(m+1)と第2周期tの乗算、これらの積を第1時刻T1に加える加算演算、といった比較的簡単な演算によって通過時刻を算出できる。
このため、第2時刻T2より前の取得時間間隔Sにおける移動距離dsを第2時刻より前に算出しておけば第2時刻T2から通過時刻の算出完了までの時間を短縮できる。
【0059】
(4)第1距離算出部43及び第2距離推定部44は、車両1がゴールラインLを通過する前に位置情報を取得した第1取得位置と車両1がゴールラインLを通過した後に位置情報を取得した第2取得位置とのうち、ゴールラインLにより近い位置で位置情報を取得した時刻を第1時刻T1として選択してよい。すなわち、第1位置P1とゴールラインLとの間の距離は、第2時刻T2に取得した位置情報が示す第2位置P2とゴールラインLとの間の距離より短い。以下の変形例でも同様である。
これにより、通過時刻の決定に要する第2距離の長さを短くすることができる。したがって、第1車両情報に基づき推定される第2距離による測定誤差を低減できる。
【0060】
(5)第1周期は第2周期の整数倍に同期していなくてもよく、第1周期は第2周期の整数倍でなくてもよい。
図6を参照する。図6の例では、第1周期は第2周期の整数倍ではなく、このため第1車両情報の取得時刻tが第2時刻T2と一致せず、取得時刻tn+1が第1時刻T1と一致しない。
車両情報取得部41が各取得時刻tn−mで第1車両情報を取得すると、第2距離推定部44は、各取得時刻tn−mを記憶部13にそれぞれ記憶する。
第1時刻T1において位置情報取得部40が位置情報を取得すると、累積演算部51は、最後に記憶部13に記憶された取得時刻を読み出す。図6の例では、累積演算部51は取得時刻tを読み出す。
【0061】
累積演算部51は、第1時刻T1の直前の取得時刻tから第1時刻T1までの距離dcを算出する。例えば累積演算部51は、取得時刻tから第1時刻T1まで車両1が等速運動すると仮定し、取得時刻tと第1時刻T1の差と取得時刻tにおける速度から距離dcを算出してよい。取得時刻tにおける加速度情報を利用できる場合には、速度を係数とする1次項に加速度を係数とする2次項を加えて距離dcを算出してもよい。累積演算部51は、次式(6)に従って第1時刻T1の直前の取得時刻tと1つ前の取得時刻tとの取得時間間隔Sから順に遡って移動距離dsを累積することにより、第2距離Dを算出する。
【0062】
【数3】
【0063】
このように、取得時刻tn+1が第1時刻T1と一致していなくても第2距離Dを算出することができる。したがって、第1周期が第2周期の整数倍に同期していなくても又は第1周期は第2周期の整数倍でなくても第2距離Dを算出することができる。
なお、第2周期ts程度の誤差の増加が許容可能であれば、上式(2)と同様に第2距離Dを算出してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…車両、2…タイム測定装置、3…センサ、4…ECU、5…通信インタフェース、6…測位衛星、10…測位装置、11…通信部、12…表示部、13…記憶部、14…制御装置、20…走行タイム測定プログラム、21…走行ライン測定プログラム、22…タイム情報、23…ライン情報、30…走行タイム測定部、31…走行ライン測定部、40…位置情報取得部、41…車両情報取得部、42…通過判定部、43…第1距離算出部、44…第2距離推定部、45…通過時刻決定部、46…走行タイム決定部、50…移動距離算出部、51…累積演算部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6