(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
(1−1)電動作業機の全体構成
図1に示すように、本実施形態の電動作業機1は、被加工部材に対する穴開けやねじ締めなどを主目的として使用されるいわゆるドライバドリルとして構成されている。電動作業機1は、本体部3と、バッテリパック5とを備える。
【0024】
バッテリパック5は、バッテリ15を収容している。バッテリパック5は、本体部3に対して着脱可能であり、本体部3に装着されている場合にバッテリ15から本体部3へ電力を供給可能に構成されている。
【0025】
本体部3は、モータハウジング6と、ギアハウジング7と、ドリルチャック8と、ハンドグリップ9とを備えている。モータハウジング6は、モータ20を収容している。モータ20は、ドリルチャック8を回転駆動させる駆動力を発生する。
【0026】
ギアハウジング7は、モータハウジング6の前方に配置されている。ギアハウジング7は、モータ20の駆動力をドリルチャック8に伝達する不図示のギア機構を収容している。ドリルチャック8は、ギアハウジング7の前方に配置されている。ドリルチャック8の前端部には、工具ビットを着脱可能な装着機構が備えられている。
【0027】
ハンドグリップ9は、モータハウジング6の下方に配置されている。ハンドグリップ9は、電動作業機1の使用者が当該ハンドグリップ9を片手で把持可能に成形されている。ハンドグリップ9の上部前方には、トリガスイッチ10が設けられている。トリガスイッチ10は、電動作業機1の使用者がモータ20を駆動又は停止させるために操作される。
【0028】
トリガスイッチ10が引き操作されるとモータ20が回転し、トリガスイッチ10が引き操作されていない状態ではモータ20が停止する。また、トリガスイッチ10が引き操作されている場合に、その引き操作の操作量(以下、引き量)に応じてモータ20の回転速度が変化する。即ち、引き量が多いほどモータ20の回転速度が高くなる。なお、モータ20の回転速度はトリガスイッチ10の引き量によらず一定速度であってもよい。
【0029】
モータハウジング6における下方側には、正逆スイッチ12が設けられている。正逆スイッチ12は、モータ20の回転方向を正転、逆転の何れかに選択的に切り替えるために使用者により操作されるスイッチである。なお、モータ20の回転方向について、どの方向を正転と定義してどの方向を逆転と定義するかについては適宜決めてよい。
【0030】
モータハウジング6における上面には、モード切替スイッチ14が設けられている。モード切替スイッチ14は、モータ20の速度モードを複数種類のモードの何れかに選択的に切り替えるために使用者により操作されるスイッチである。本実施形態では、速度モードとして例えば低速モードと高速モードを有し、モード切替スイッチ14によって何れか一方の速度モードに設定される。トリガスイッチ10が引き操作された場合、同じ引き量に対し、低速モードよりも高速モードの方が回転速度が高い。
【0031】
ハンドグリップ9の下端部には、バッテリパック5を着脱可能に装着するためのバッテリパック装着部16が設けられている。バッテリパック装着部16は、当該バッテリパック装着部16に対してバッテリパック5を前後方向に摺動させることによってバッテリパック5を着脱することが可能に構成されている。
【0032】
(1−2)電動作業機の電気的構成
次に、電動作業機1の電気的構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、本体部3にバッテリパック5が装着された状態を示している。
図2に示すように、電動作業機1は、バッテリパック5と、モータ20と、駆動回路21と、制御部22と、回転位置検出部23とを備えている。本体部3にバッテリパック5が装着されると、バッテリパック5内のバッテリ15の電力(以下、バッテリ電力)が、駆動回路21及び制御部22に入力される。制御部22は、バッテリ電力が入力されている場合にバッテリ電力により動作する。
【0033】
モータ20は、バッテリ15から駆動回路21を介して供給されるバッテリ電力により駆動される。本実施形態のモータ20は、ブラシレスモータである。バッテリ15から供給されるバッテリ電力は、駆動回路21により三相電力に変換されてモータ20へ供給される。
【0034】
モータ20は、3つの巻線31,32,33を有する。本実施形態では、これら3つの巻線31,32,33がデルタ結線されているが、これはあくまでも一例であり、デルタ結線以外の結線方法で結線されていてもよい。また、モータ20は、電力入力用の端子として3つの端子20a,20b,20cを備えている。
【0035】
なお、各端子20a,20b,20cの具体的形状、構造等は特に限定されるものではなく、バッテリ電力を各巻線31,32,33に供給可能なあらゆる形態を採り得る。例えば、電線挿入用の穴を有する特定形状の導体端子であってもよいし、モータ20の本体から引き出されるリード線であってもよいし、モータ20と電気的に接続されたプリント基板上における、各巻線31,32,33と電気的に接続された特定の部位或いは部品等であってもよい。
【0036】
回転位置検出部23は、モータ20の回転位置に応じた信号、詳しくはモータ20が有するロータの回転位置に応じた信号を出力するよう構成されている。回転位置検出部23は、三つのホールセンサを有している。各ホールセンサは、モータ20のロータの周囲に電気角120度の間隔で配置されている。三つのホールセンサから出力される信号は制御部22に入力される。制御部22は、回転位置検出部23から入力される信号、即ち三つのホールセンサからの各信号に基づいて、モータ20の回転位置及び回転速度を検出する。
【0037】
駆動回路21は、本実施形態では、6つのスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を有する、いわゆる三相フルブリッジ回路として構成されている。
駆動回路21において、ハイサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q1、Q2、Q3は、モータ20の各端子20a,20b,20cとバッテリ15の正極側とを接続する各通電経路である各正極側通電経路に、それぞれ設けられている。また、ローサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q4、Q5、Q6は、モータ20の各端子20a,20b,20cとバッテリ15の負極側とを接続する各通電経路である各負極側通電経路に、それぞれ設けられている。各スイッチング素子Q1〜Q6は、オンされることにより対応する通電経路を導通させ、オフされることにより対応する通電経路を遮断させる。
【0038】
つまり、モータ20の3つの端子20a,20b,20cのうち、端子20aには、ハイサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q1(以下、「U相ハイサイドスイッチQ1」とも称する)とローサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q4(以下、「U相ローサイドスイッチQ4」とも称する)が接続されている。また、端子20bには、ハイサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q2(以下、「V相ハイサイドスイッチQ2」とも称する)とローサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q5(以下、「V相ローサイドスイッチQ5」とも称する)が接続されている。また、端子20cには、ハイサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q3(以下、「W相ハイサイドスイッチQ3」とも称する)とローサイドスイッチとしてのスイッチング素子Q6(以下、「W相ローサイドスイッチQ6」とも称する)が接続されている。
【0039】
各スイッチング素子Q1〜Q6は、本実施形態では、nチャネルMOSFETである。このため、各スイッチング素子Q1〜Q6のドレイン−ソース間には、それぞれ、ソースからドレインに向けて順方向となるダイオード(いわゆる寄生ダイオード)D1〜D6が並列に接続された状態となっている。各ダイオードD1〜D6は、バッテリ15の負極側から正極側への通電を許容するように接続されている。
【0040】
制御部22は、CPU22a、メモリ22bなどを含む1チップのマイクロコンピュータを有している。メモリ22bには、RAM、ROM、不揮発性メモリなどの各種半導体メモリが含まれる。メモリ22bには、制御部22の各種機能を実現するための各種プログラムやデータが記憶されている。制御部22が有する各種機能は、CPU22aがメモリ22bに記憶されている各種プログラムを実行することにより実現される。メモリ22bに記憶されているプログラムには、後述する
図7の通電停止処理のプログラムが含まれる。
【0041】
なお、制御部22により実現される各種機能は、ソフトウェア処理に限るものではなく、その一部又は全部の機能を、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。また、制御部22が1チップのマイクロコンピュータを有する構成であることはあくまでも一例であり、制御部22は、当該制御部22としての機能を実現可能な他の種々の構成を採り得る。
【0042】
制御部22には、トリガスイッチ10、正逆スイッチ12、モード切替スイッチ14、及び加速度センサ26が接続されている。トリガスイッチ10、正逆スイッチ12、及びモード切替スイッチ14からは、それぞれ、当該スイッチの操作状態を示す信号が制御部22に入力される。
【0043】
制御部22は、トリガスイッチ10から入力される信号に基づいて、トリガスイッチ10が引き操作されているか否か、及び引き操作されている場合における操作量を判断し、その判断結果に応じた制御を行う。
【0044】
制御部22は、トリガスイッチ10がオフされている間、即ちトリガスイッチ10が引き操作されていない間は、駆動回路21内の各スイッチング素子Q1〜Q6への駆動信号を全て停止させることにより、各スイッチング素子Q1〜Q6を全てオフさせて、モータ20を停止させる。
【0045】
一方、制御部22は、トリガスイッチ10がオン、即ちトリガスイッチ10が引き操作されている場合は、通常駆動制御を行うことによりモータ20を回転させる。制御部22は、通常駆動制御の実行中、回転位置検出部23から入力される信号に基づいてモータ20の回転位置を検出し、その検出した回転位置に応じて駆動回路21の各スイッチング素子Q1〜Q6を個別にオン、オフ制御することにより、バッテリ15からモータ20への通電を制御してモータ20を回転させる。
【0046】
本実施形態の通常駆動制御は、三つのハイサイドスイッチQ1〜Q3のうち何れか1つと、3つのローサイドスイッチQ4〜Q6のうち何れか1つへ駆動信号を出力して、これら2つのスイッチング素子をオンさせることにより、モータ20への通電を行ってモータ20を回転させるというものである。制御部22は、ハイサイド側においてオンさせる1つのスイッチング素子、及びローサイド側においてオンさせる1つのスイッチング素子を、モータ20の回転位置に応じて切り替えていくことで、モータ20を回転させる。
【0047】
通常駆動制御において、オンさせる2つのスイッチング素子を共にオン状態に固定させてもよいが、本実施形態では、通常駆動制御としてPWM制御が採用されている。即ち、本実施形態の通常駆動制御においては、オンさせる2つのスイッチング素子のうち、一方のスイッチング素子をオン状態に固定させて他方のスイッチング素子をPWM駆動させる、PWM制御が行われる。なお、PWM駆動とは、設定されたデューティ比にてオン、オフを周期的に交互に繰り返す周知の駆動方法である。
【0048】
また、制御部22は、通常駆動制御において、正逆スイッチ12からの信号に基づいて、正逆スイッチ12の操作状態を判断する。そして、その操作状態に応じて、モータ20の回転方向を正転及び逆転の何れかに設定し、その設定した回転方向へモータ20が回転するように駆動回路21を制御する。
【0049】
また、制御部22は、通常駆動制御において、モード切替スイッチ14から入力される信号に基づいて、モード切替スイッチ14の操作状態を判断し、その操作状態に応じて、動作モードを低速モード及び高速モードの何れかに設定する。そして、設定した動作モードに応じた回転速度でモータ20が回転するよう、駆動回路21を制御する。
【0050】
加速度センサ26は、電動作業機1に生じる加速度を検出してその検出した加速度を示す信号を制御部22へ出力する。本実施形態の加速度センサ26は、一例として、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の加速度を独立して検出可能に構成された、3軸加速度センサである。
【0051】
作業者が電動作業機1を用いて作業を行っている際、例えば作業対象の状態、作業者による電動作業機1の使用状態などの、種々の要因によって、電動作業機1に特定挙動が発生する可能性がある。具体的に、特定挙動として、例えば、落下或いは衝突等によって電動作業機1に外部から衝撃が加わること、動作中の電動作業機1が作業対象から反作用を受けることにより電動作業機1全体が振り回されること、動作中の電動作業機1が作業対象から反作用を受けることにより電動作業機1が作業対象から離れる方向へ移動するいわゆるキックバックが生じること、などが挙げられる。
【0052】
これら例示した特定挙動は、いずれも、当該特定挙動が発生した場合に電動作業機1に大きな加速度が発生する可能性が高くなるような挙動である。そこで、制御部22は、モータ20の駆動中、加速度センサ26から入力される信号に基づいて電動作業機1に生じる加速度を検出し、その加速度に基づいて、電動作業機1に特定挙動が発生したか否か判断する。そして、特定挙動が発生したと判断した場合は、後述の停止時特定制御を行うことによりバッテリ15からモータ20への通電を停止させる。
【0053】
なお、検出した加速度に基づいて特定挙動が発生したか否かを具体的にどのように判断するかについては適宜決めてよい。例えば、3軸の各加速度のうちいずれか1つでも閾値を超えていた場合に特定挙動が発生したと判断するようにしてもよい。
【0054】
また、バッテリ15からモータ20への通電経路には、バッテリ15からモータ20に供給される電流(以下、電源電流)の値を検出するための電流検出部24が設けられている。電流検出部24は、例えば、バッテリ15からモータ20への通電経路上に設けられたシャント抵抗を有し、そのシャント抵抗の両端の電圧を、電源電流の値を示す検出信号として制御部22へ出力する。なお、電流検出部24がシャント抵抗を有する構成であることはあくまでも一例であり、電源電流の値に応じた検出信号を出力可能な他の構成であってもよい。
【0055】
制御部22は、電流検出部24から入力される検出信号に基づいて電源電流の値を検出する。そして、その検出した値に応じて各種制御を行う。
(1−3)停止時特定制御
制御部22は、トリガスイッチ10がオンされたことにより通常駆動制御を開始した後、バッテリ15からモータ20への電力供給を停止させる停止条件が成立した場合は、停止時特定制御を行う。そしてその停止時特定制御を実行した後、最終的には、駆動回路21の全てのスイッチング素子Q1〜Q6をオフさせることでモータ20を停止状態に維持させる。
【0056】
ここで、通常駆動制御中にモータ20の回転を停止させるための具体的方法としては、例えば、駆動回路21の全てのスイッチング素子Q1〜Q6をオフさせることが考えられる。しかし、通常駆動制御が行われている状態、即ちハイサイド側及びローサイド側それぞれ1つずつスイッチング素子がオンされている状態から、それらオンされている2つのスイッチング素子を共にオフさせると、モータ20からバッテリ15側への回生電流が発生し、この回生電流の影響が制御部22に及ぶおそれがある。
【0057】
図3及び
図4を用いてより具体的に説明する。
図3は、
図2に示した電動作業機1全体の電気的構成のうち、バッテリ15から駆動回路21を経てモータ20に至る回路構成及び制御部22を抜粋して示したものである。後述する
図5、
図8についても同様である。
【0058】
通常駆動制御において、例えば、
図3に示すように、U相ハイサイドスイッチQ1とW相ローサイドスイッチQ6とがオンされているとする。この場合、
図3に破線矢印で示すような経路にて、バッテリ15からモータ20へ電流が流れる。即ち、バッテリ15の正極から、U相ハイサイドスイッチQ1、モータ20、W相ローサイドスイッチQ6、及び電流検出部24を経てバッテリ15の負極に至る経路にて電流が流れる。
【0059】
6つのスイッチング素子Q1〜Q6のうちオンされる2つのスイッチング素子は、モータ20の回転位置に応じて、
図4に示すように順次切り替わっていく。なお、前述の通り、通常駆動制御においては、オンさせる2つのスイッチング素子のうち一方のスイッチング素子をオン状態に固定させて他方のスイッチング素子をPWM駆動させるが、
図4及び後述する
図6においては、PWM駆動されることについての明示は省略している。ただし、後述する
図9においては、PWM駆動されるスイッチング素子が明示されている。
【0060】
また、
図4において、「電源電圧」とは、バッテリ15の正極から駆動回路21及び制御部22に至る通電経路、即ちバッテリ15の電圧が印加される通電経路の電圧である。また、「モータ電流」とは、駆動回路21からモータ20の各端子20a、20b、20cに入力されるU相電流、V相電流およびW相電流の総称である。なお、U相電流は第1端子20aに入力される電流であり、V相電流は第2端子20bに入力される電流であり、W相電流は第3端子20cに入力される電流である。また、
図4において、時刻t2よりも前の期間は、通常駆動制御が実行されている期間であり、時刻t2は、通常駆動制御から停止時特定制御に切り替わるタイミングである。
【0061】
通常駆動制御から停止時特定制御に切り替える停止条件は適宜決めてよい。本実施形態では、停止条件として、トリガスイッチ10がオフされること、電源電流の値が第1過電流閾値を超えること、及び特定挙動が発生すること、が設定されている。
【0062】
制御部22は、これら各停止条件のうち、トリガスイッチ10がオフされているか否かについては、トリガスイッチ10から制御部22に入力される信号に基づいて判断する。また、電源電流の値が第1過電流閾値を超えているか否かについては、電流検出部24から入力される検出信号に基づいて判断する。また、特定挙動が発生したか否かについては、前述の通り、加速度センサ26から入力される信号に基づいて判断する。
【0063】
なお、特定挙動が発生したか否かについては、加速度センサ26からの信号に限らず、他の物理量に基づいて判断するようにしてもよい。例えば、特定挙動が発生するとモータ20の回転速度が急激に変化する可能性がある。そこで、回転速度の変化率の絶対値に対して閾値を設定し、回転速度の変化率の絶対値が閾値を超えた場合に、特定挙動が発生したと判断するようにしてもよい。また、特定挙動が発生してモータ20の回転速度が急激に変化すると、それに応じて電源電流の値も急激に変化する可能性がある。そこで、電源電流の変化率の絶対値に対して閾値を設定し、電源電流の変化率の絶対値が閾値を超えた場合に、特定挙動が発生したと判断するようにしてもよい。
【0064】
図4に示すように、時刻t2よりも前の、通常駆動制御が行われている期間中は、モータ20の回転位置に応じて、オンされるスイッチング素子が順次切り替わっていく。そして、オンされるスイッチング素子が切り替わる度に、モータ電流も変化する。
【0065】
そして、時刻t1において、モータ20がロックする異常状態が発生したとする。つまり、時刻t1において、モータ20の回転が外的要因によって強制的に減速あるいは停止されたものとする。なお、時刻t1では、
図4に示すように、U相ハイサイドスイッチQ1とW相ローサイドスイッチQ6とがオンされた状態、即ち
図3に破線矢印で示した経路で電流が流れている状態である。
【0066】
時刻t1でモータ20のロックが発生して回転速度が減速あるいは停止すると、電源電流の値は、通常駆動時よりも上昇していく。即ち、モータ電流においては、U相電流及びW相電流がいずれも、各々の通電方向への電流値が上昇していく。
【0067】
そして、時刻t2で電源電流の値が第1過電流閾値を超えたときに、オンされている2つのスイッチング素子Q1、Q6を共にオフさせると、モータ20に蓄積されている磁気エネルギーによって、バッテリ15への回生電流が発生する。
【0068】
この場合の回生電流は、
図4において時刻t2から時刻t3の間に示す電源電流及びモータ電流の波形で示すように、また
図3においては一点鎖線矢印で示す経路にて、発生する。そして、この回生電流により、
図4に示すように、電源電圧が一時的に上昇する。電源電圧が上昇するということは、バッテリ15の正極に接続されている正極側通電経路の電圧が上昇するということである。そのため、電源電圧が上昇すると、制御部22を含む、バッテリ電圧が入力されるよう構成されている各部に対し、バッテリ電圧よりも高い電圧が印加されることになり、これら各部が故障したり誤動作したりする可能性がある。
【0069】
そこで、本実施形態の制御部22は、通常駆動制御中に停止条件が成立した場合、所定期間、停止時特定制御を実行する。停止時特定制御は、停止条件の成立時にオンされている2つのスイッチング素子のうち一方のみオフさせて他方はオン状態に保持させるという制御である。
【0070】
図5及び
図6を用いて停止時特定制御の一例を具体的に説明する。本実施形態では、通常駆動制御中に停止条件が成立した場合、停止時特定制御として、オンされている2つのスイッチング素子のうち、ハイサイド側のスイッチング素子をオフさせて、ローサイド側のスイッチング素子はオン状態に保持させる。なお、
図5において、破線矢印で示す通常駆動制御時の電流経路は
図3と同じである。また、
図6において、時刻t2以前の動作例は、
図4における時刻t2以前の動作例と全く同じである。
【0071】
図6に示すように、時刻t1でモータ20のロックが発生して電源電流の値が上昇していき、時刻t2で電源電流の値が第1過電流閾値を超えると、停止時特定制御が行われる。本実施形態では、停止時特定制御が実行される所定期間は、電源電流の値が第1過電流閾値を超えたタイミングから、所定の特定実行時間が経過したタイミングまでの期間である。
図6においては、時刻t2が所定期間の始期であり、時刻t2から特定実行時間が経過した時刻t5が上記所定期間の終期である。
【0072】
図6の例では、電源電流の値が第1過電流閾値を超える時刻t2において、U相ハイサイドスイッチQ1及びW相ローサイドスイッチQ6がオンされている。つまり、
図5に破線矢印で示す経路にて電流が流れている。この状態で、停止時特定制御が実行されると、
図6に示すように、U相ハイサイドスイッチQ1がオフされて、W相ローサイドスイッチQ6はオン状態に保持される。
【0073】
これにより、モータ20と駆動回路21との間には、
図5に一点鎖線矢印で示すような経路にて、環流電流が流れる。即ち、モータ20の第3端子20cから、W相ローサイドスイッチQ6、及びU相ローサイドスイッチQ4のダイオードD4を経てモータ20の第1端子20aに至る経路にて環流電流が流れる。環流電流は、モータ20の磁気エネルギーをバッテリ15に回生させる電流ではなく、あくまでも、モータ20と駆動回路21との間に流れるループ状の電流である。モータ20の磁気エネルギーはこの環流電流によって消費される。
【0074】
そのため、時刻t2で停止時特定制御が開始されると、
図6に示すように、電流検出部24で検出される電源電流は0となる。そして、U相電流及びW相電流によって環流電流が形成される。この環流電流は徐々に減少していき、時刻t4で0になる。そして、時刻t5で、停止時特定制御が終了する。停止時特定制御の終了後は、本実施形態では、駆動回路21の全てのスイッチング素子Q1〜Q6をオフさせる。
【0075】
停止時特定制御が実行される所定期間の長さ、即ち
図6においては時刻t2から時刻t5までの時間である、特定実行時間は、本実施形態では、環流電流がゼロになるのに要する時間以上に設定されている。時刻t2で停止時特定制御を開始してから環流電流がゼロになるまでの時間は、停止時特定制御開始時の電源電流の値やその他の各種要因によってバラツキがある。しかも、環流電流は電流検出部24には流れないため、環流電流の値を電流検出部24によって検出することもできない。
【0076】
そのため、本実施形態では、環流電流が流れる経路全体の電気的特性、及び第1過電流閾値などに基づき、第1過電流閾値の電流が流れている状態で停止時特定制御を開始した場合に環流電流がゼロになるまでに要する時間を理論的或いは実験的に求め、その求めた時間に対して一定のマージンを加えた値を、特定実行時間として設定している。
【0077】
(1−4)通電停止処理
次に、通常駆動制御から停止時特定制御への移行を実現するために実行される通電停止処理について、
図7を用いて説明する。制御部22は、トリガスイッチ10がオンされることにより通常駆動制御を開始すると、その通電駆動制御と並行して、
図7の通電停止処理を実行する。なお、制御部22による停止時特定制御の実行は、具体的には、CPU22aにより行われる。
【0078】
制御部22は、
図7の通電停止処理を開始すると、S110で、電源電流の値が第1過電流閾値より大きいか否か判断する。電源電流の値が第1過電流閾値より大きい場合、即ち停止条件が成立している場合は、S140で、通常駆動制御から停止時特定制御に切り替える。つまり、現時点でオンされている2つのスイッチング素子のうち、ハイサイド側のスイッチング素子をオフさせ、ローサイド側のスイッチング素子はオン状態に保持させる。
【0079】
S110で、電源電流の値が第1過電流閾値以下の場合は、S120に進む。S120では、特定挙動が発生したか否か判断する。特定挙動が発生した場合、即ち停止条件が成立している場合は、S140で、通常駆動制御から停止時特定制御に切り替える。特定挙動が発生していない場合は、S130に進む。
【0080】
S130では、トリガスイッチ10がオフされているか否か判断する。トリガスイッチ10がオフされている場合、即ち停止条件が成立している場合は、S140で、通常駆動制御から停止時特定制御に切り替える。トリガスイッチ10がオンされている場合は、S110に戻る。S130で否定判定されてS110に戻るということは、停止条件が成立していないということであり、その場合は、通常駆動制御を継続する。
【0081】
S140で通常駆動制御から停止時特定制御に切り替えた後、S150では、電源電流の値が第2過電流閾値を超えているか否か判断する。停止時特定制御では、駆動回路21の6つのスイッチング素子Q1〜Q6のうちオンされるスイッチング素子は1つであるため、電源電流の値は0になるはずである。それにもかかわらず、電源電流の値が第2過電流閾値を超えている場合は、例えば何れかのスイッチング素子が短絡故障しているなど、何らかの異常が生じている可能性がある。
【0082】
そこで、S150で電源電流の値が第2過電流閾値を超えている場合は、S170で、駆動回路21の全てのスイッチング素子Q1〜Q6をオフさせて、通電停止処理を終了する。S150で、電源電流の値が第2過電流閾値以下の場合は、S160に進む。なお、第1過電流閾値及び第2過電流閾値は、それぞれ、適宜決めてよい。また、これら2つの過電流閾値の大小関係も適宜決めてよく両者を同じ値にしてもよい。
【0083】
S160では、S140で停止時特定制御に切り替えてから特定実行時間が経過したか否か判断する。特定実行時間が経過していない場合はS150に戻る。特定実行時間が経過した場合はS170に進む。
【0084】
(1−5)第1実施形態の効果
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
即ち、制御部22は、通常駆動制御中に停止条件が成立した場合、そのときオンされている2つのスイッチング素子のうちハイサイドスイッチをオフさせてローサイドスイッチはオン状態を保持させるという、停止時特定制御を行う。この停止時特定制御が行われることにより、バッテリ15からモータ20への通電が停止されると共に、モータ20に蓄積されている磁気エネルギーによって環流電流が流れる。
【0085】
そのため、停止条件が成立した場合に、モータ20からバッテリ15への回生電流を抑制しつつ、モータ20への通電を停止させることができる。
また、停止時特定制御を行う特定実行時間は、環流電流がゼロになるのに要する時間以上に設定されている。そのため、停止条件成立時にモータ20に蓄積されている磁気エネルギーを全て環流電流によって消費させることができるため、モータ20からバッテリ15への回生電流をより効果的に抑制できる。
【0086】
また、停止条件として、トリガスイッチ10がオフされること、電源電流の値が第1過電流閾値を超えること、及び特定挙動が発生すること、が設定されており、通常駆動制御中にこれら3つの停止条件のうち何れか1つでも成立した場合、停止時特定制御に切り替わる。
【0087】
そのため、電源電流の値が第1過電流閾値を超えるような異常状態が発生した場合であっても、モータ20からバッテリ15への回生電流の発生を抑えつつ、バッテリ15からモータ20への通電を停止させることができる。また、使用者によりトリガスイッチ10がオフされた場合も、モータ20からバッテリ15への回生電流を抑制しつつ、モータ20の回転を停止させることができる。
【0088】
また、停止時特定制御への移行後も依然として電源電流の値が第2過電流閾値を超えている場合は、駆動回路21の全てのスイッチング素子Q1〜Q6をオフさせることができる。
【0089】
(1−6)特許請求の範囲の文言との対応関係
ここで、第1実施形態の文言と特許請求の範囲の文言との対応関係について説明する。バッテリ15は直流電源の一例に相当する。各ダイオードD1〜D6は整流素子の一例に相当する。6つのスイッチング素子Q1〜Q6のうちハイサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q1〜Q3は正極側スイッチング素子の一例に相当し、ローサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q4〜Q6は負極側スイッチング素子の一例に相当する。トリガスイッチ10は操作部の一例に相当する。回転位置検出部23及び電流検出部24は駆動状態検知部の一例に相当する。
【0090】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0091】
第2実施形態では、停止時特定制御においてオフさせるスイッチング素子及びオン状態を保持させるスイッチング素子が、第1実施形態とは異なる。即ち、第1実施形態では、停止条件が成立して停止時特定制御を開始する際、そのときオンされている2つのスイッチング素子のうち、ハイサイドスイッチをオフさせて、ローサイドスイッチはオン状態に保持させる。これに対し、第2実施形態では、第1実施形態とは逆に、ローサイドスイッチをオフさせて、ハイサイドスイッチをオン状態に保持させる。
【0092】
例えば、U相ハイサイドスイッチQ1及びW相ローサイドスイッチQ6がオンされていることにより、
図8に破線矢印で示す経路にて電流が流れているとする。この状態で、停止条件が成立して停止時特定制御に切り替わった場合、U相ハイサイドスイッチQ1についてはオン状態に保持され、W相ローサイドスイッチQ6がオフされる。
【0093】
これにより、モータ20と駆動回路21との間には、
図8に一点鎖線矢印で示すような経路にて、環流電流が流れる。即ち、モータ20の第3端子20cから、W相ハイサイドスイッチQ3のダイオードD3、及びU相ハイサイドスイッチQ1を経てモータ20の第1端子20aに至る経路にて環流電流が流れる。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0094】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0095】
前述した第1実施形態では、停止時特定制御への切り替え時に、オンされている2つのスイッチング素子のうちハイサイドスイッチをオフさせた。また、前述した第2実施形態では、停止時特定制御への切り替え時に、第1実施形態とは逆に、オンされている2つのスイッチング素子のうちローサイドスイッチをオフさせた。
【0096】
これに対し、本第3実施形態では、停止時特定制御への切り替え時、即ち停止条件の成立時に、PWM駆動されているスイッチング素子をオフさせ、PWM駆動されておらずオン状態に固定されているスイッチング素子についてはそのままオン状態に保持させる。
【0097】
例えば、
図9に例示するように、U相ハイサイドスイッチQ1及びW相ローサイドスイッチQ6がオンされている状態で、時刻t2にて停止条件が成立したとする。また、時刻t2で停止条件が成立した時点では、オン対象の2つのスイッチング素子Q1、Q6のうち、U相ハイサイドスイッチQ1はオン状態に固定され、W相ローサイドスイッチQ6がPWM駆動されていたものとする。
【0098】
この場合、時刻t2で停止時特定制御に切り替わると、オン状態に固定されているU相ハイサイドスイッチQ1はそのままオン状態が保持され、PWM駆動されているW相ローサイドスイッチQ6がオフされる。なお、
図9において、時刻t2以前の動作例は、
図4及び
図6における時刻t2以前の動作例と全く同じである。
【0099】
したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。しかも、第3実施形態では、停止条件の成立時、PWM駆動されているスイッチング素子がオフされて、オン状態に固定されているスイッチング素子はそのままオン状態に保持される。そのため、停止条件成立による通常駆動制御から停止時特定制御への切り替えにかかる処理負荷を低減できる。
【0100】
[4.第4実施形態]
第1実施形態〜第3実施形態では、モータ20がブラシレスモータであって、駆動回路21が6つのスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータである構成を示した。これに対し、第4実施形態では、モータ及び駆動回路として、第1実施形態〜第3実施形態とは異なる構成例を示す。
【0101】
第4実施形態の電動作業機40を、
図10に示す。
図10に示す電動作業機40は、
図2に示した第1実施形態の電動作業機1と比較して、主に次の三点で異なる。一つ目は、モータ50がブラシ付き直流モータであることである。二つ目は、駆動回路41がHブリッジ回路であることである。三つ目は、回転位置検出部23が搭載されていないことである。
【0102】
ブラシ付き直流モータとしてのモータ50は、バッテリ電力が入力される2つの端子50a、50bを有する。これら各端子50a,50bは、モータ50内部の不図示の巻線に接続されている。
【0103】
駆動回路41は、4つのスイッチング素子Q11、Q12、Q13、Q14を有する、いわゆるHブリッジ回路として構成されている。駆動回路41において、ハイサイドスイッチとしての2つのスイッチング素子Q11、Q12は、モータ50の各端子50a,50bとバッテリ15の正極側とを接続する各通電経路である各正極側通電経路に、それぞれ設けられている。また、ローサイドスイッチとしての2つのスイッチング素子Q13,Q14は、モータ50の各端子50a,50bとバッテリ15の負極側とを接続する各通電経路である各負極側通電経路に、それぞれ設けられている。
【0104】
また、各スイッチング素子Q11〜Q14は、本実施形態では、nチャネルMOSFETである。このため、各スイッチング素子Q11〜Q14のドレイン−ソース間には、それぞれ、ソースからドレインに向けて順方向となるダイオード(いわゆる寄生ダイオード)D11〜D14が並列に接続された状態となっている。各ダイオードD11〜D14は、バッテリ15の負極側から正極側への通電を許容するように接続されている。
【0105】
このように構成された電動作業機40において、制御部42は、トリガスイッチ10がオンされると、通常駆動制御を実行する。具体的に、ハイサイドスイッチとしての2つのスイッチング素子Q11,Q12のうち何れか1つと、ローサイドスイッチとしての2つのスイッチング素子Q13,Q14のうち何れか1つを,オンさせる。なお、本実施形態においても、オンさせる2つのスイッチング素子のうち一方をオン固定させて他方をPWM駆動させてもよい。
【0106】
通常駆動制御において、例えば、
図11及び
図12に示すように、ハイサイド側のスイッチング素子Q11とローサイド側のスイッチング素子Q14とがオンされているとする。この場合、
図11に破線矢印で示すような経路にて、バッテリ15からモータ50へ電流が流れる。即ち、バッテリ15の正極から、ハイサイド側のスイッチング素子Q1、モータ50、ローサイド側のスイッチング素子Q4、及び電流検出部24を経てバッテリ15の負極に至る経路にて電流が流れる。オンさせるスイッチング素子を、他の2つのスイッチング素子Q2、Q3に切り替えると、モータ50の回転方向が切り替わる。
【0107】
図12において、時刻t2よりも前の期間は、通常駆動制御が実行されている期間であり、時刻t2は、停止条件の成立により通常駆動制御から停止時特定制御に切り替わるタイミングである。
【0108】
図12に示すように、時刻t1において、モータ50がロックする異常状態が発生したとする。時刻t1でモータ50がロックして回転速度が減速あるいは停止すると、モータ電流及び電源電流の値は、通常駆動時よりも上昇していく。
【0109】
そして、時刻t2で電源電流の値が第1過電流閾値を超えたときに、仮に、オンされている2つのスイッチング素子Q11、Q14を共にオフさせると、モータ50に蓄積されている磁気エネルギーによって、バッテリ15への回生電流が発生する。
【0110】
この場合の回生電流は、
図12において時刻t2から時刻t3の間に示す電源電流及びモータ電流の波形で示すように、また
図11においては一点鎖線矢印で示す経路にて、発生する。そして、この回生電流により、
図12に示すように、電源電圧が一時的に上昇する。
【0111】
そこで、本実施形態の制御部42も、第1実施形態〜第3実施形態と同様、通常駆動制御中に停止条件が成立した場合、所定期間、停止時特定制御を実行する。
図13及び
図14を用いて、本実施形態の停止時特定制御の一例を具体的に説明する。本実施形態では、通常駆動制御中に停止条件が成立した場合、停止時特定制御として、第1実施形態と同様、オンされている2つのスイッチング素子のうち、ハイサイド側のスイッチング素子をオフさせて、ローサイド側のスイッチング素子はオン状態に保持させる。なお、
図13において、破線矢印で示す通常駆動制御時の電流経路は
図11と同じである。また、
図14において、時刻t2以前の動作例は、
図12における時刻t2以前の動作例と全く同じである。
【0112】
図14に示すように、時刻t1でモータ50のロックが発生して電源電流の値が上昇していき、時刻t2で電源電流の値が第1過電流閾値を超えると、所定期間、停止時特定制御が行われる。本実施形態の所定期間も、第1実施形態と同様、電源電流の値が第1過電流閾値を超えたタイミングから特定実行時間が経過するまでの期間であり、
図14においては時刻t2〜時刻t5までの期間である。
【0113】
図14の例では、電源電流の値が第1過電流閾値を超える時刻t2において、ハイサイド側のスイッチング素子Q11及びローサイド側のスイッチング素子Q14がオンされている。つまり、
図13に破線矢印で示す経路にて電流が流れている。この状態で、停止時特定制御が実行されると、
図14に示すように、ハイサイド側のスイッチング素子Q11がオフされて、ローサイド側のスイッチング素子Q14はオン状態に保持される。
【0114】
これにより、モータ50と駆動回路41との間には、
図13に一点鎖線矢印で示すような経路にて、環流電流が流れる。即ち、モータ50の第2端子50bから、ローサイド側のスイッチング素子Q14、及びローサイド側のスイッチング素子Q13のダイオードD13を経てモータ50の第1端子50aに至る経路にて環流電流が流れる。
【0115】
そのため、時刻t2で停止時特定制御が開始されると、
図14に示すように、電流検出部24で検出される電源電流は0となり、モータ50と駆動回路41との間で環流電流が流れる。環流電流は徐々に減少していき、時刻t4で0になる。そして、時刻t5で、停止時特定制御が終了する。停止時特定制御の終了後は、本実施形態では、駆動回路41の全てのスイッチング素子Q11〜Q14をオフさせる。
【0116】
また、本実施形態の電動作業機40においても、制御部42が、通常駆動制御の開始後、
図7に示した通電停止処理を実行する。
したがって、本実施形態の電動作業機40においても、通常駆動制御時に停止条件が成立した場合において、第1実施形態と同等の作用効果が得られる。
【0117】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0118】
(5−1)停止時特定制御を実行する特定実行時間の設定方法として、第1実施形態で説明した方法、即ち、環流電流がゼロになるまでに要する時間を理論的或いは実験的に求めてその求めた時間に対して一定のマージンを加えた値を特定実行時間として設定する方法は、あくまでも一例である。停止時特定制御を実行する特定実行時間は、他の各種の方法で設定してもよい。
【0119】
また、停止時特定制御を環流電流が0になるまで行うことは必須ではなく、環流電流がまだ流れている状態で停止時特定制御を終了してもよい。その場合においても、停止時特定制御を実行する特定実行時間は適宜決めてよい。例えば、回生電流が発生しても電源電圧の上昇が一定レベル以下に抑えられる程度にまでモータの磁気エネルギーを消費させることが可能な時間を理論的或いは実験的に求めてその時間以上が経過した特定のタイミングまで、を特定実行時間として設定してもよい。
【0120】
また、停止時特定制御を実行する所定期間として、停止条件が成立してから上記の特定実行時間のような一定時間が経過するまでの期間を設定することは、必須ではない。例えば、停止条件の成立後、停止時特定制御を終了するための特定の終了条件が成立するまでの期間を、所定期間として設定してもよい。
【0121】
具体的に、例えば、実際に環流電流の値を検出して、その検出値が0になるまでの期間、或いはその検出値が0になってからさらに一定時間経過するまでの期間を、停止時特定制御を実行する所定期間として設定してもよい。その場合、環流電流の値を検出するための検出部を環流電流の経路において具体的にどこに設けるかについては適宜決めてよい。
【0122】
また例えば、トリガスイッチ10がオフされること以外の他の停止条件が成立した場合は、その停止条件が成立してからトリガスイッチ10がオフされるまでの期間を、停止時特定制御を実行する所定期間に設定してもよい。
【0123】
また例えば、回転位置検出部23から入力される信号に基づいてモータ20の回転速度を監視し、停止条件の成立後、モータ20の回転速度が停止条件成立時の回転速度よりも一定量低い値になるまでの期間を、停止時特定制御を実行する所定期間に設定してもよい。なお、停止条件成立時の回転速度にかかわらず、停止条件の成立後、モータ20の回転速度が予め決められた一定の回転速度以下になるまでの期間を、停止時特定制御を実行する所定期間に設定してもよい。
【0124】
また例えば、停止条件が成立した時を停止時特定制御の始期(つまり所定期間の始期)とすることは必須ではなく、停止条件が成立してから所定の開始条件が成立するまで待機し、開始条件が成立したら停止時特定制御を開始する(つまり所定期間の始期とする)ようにしてもよい。この場合、開始条件は適宜決めてよい。開始条件として、例えば、停止条件成立後、一定の時間が経過すること、を設定してもよい。
【0125】
つまり、停止時特定制御を実行する所定期間は、その始期、終期、及び時間のいずれも、種々の方法で設定してもよい。
(5−2)通常駆動制御から停止時特定制御に切り替えるための条件である停止条件として、トリガスイッチ10がオフされること、電源電流の値が第1過電流閾値を超えること、及び特定挙動が発生することは、あくまでも一例である。これら3つのうちいずれか1つのみを停止条件に設定しても良いし、何れか2つを停止条件に設定してもよい。また、これら3つとは異なる停止条件を少なくとも1つ以上設定してもよい。
【0126】
例えば、モータの回転速度が閾値以下になること、を停止条件として設定してもよい。モータの回転速度が低下する要因の1つとして、モータがロックすることが考えられる。そのため、モータの回転速度に対して閾値を設け、回転速度が閾値以下になった場合に停止時特定制御に切り替えることで、ロック発生時にバッテリ15への回生電流を抑制しつつモータを停止させることができる。
【0127】
(5−3)スイッチング素子に並列接続される整流素子が、スイッチング素子自体がもともと有する寄生ダイオードであることは、あくまでも一例である。スイッチング素子自体とは別にダイオードを並列接続するようにしてもよい。
【0128】
(5−4)本体部3に対してバッテリパック5を着脱可能な構成であることはあくまでも一例である。例えば、本体部3にバッテリ15が内蔵された構成であってもよい。また例えば、電動作業機の外部から直流電力を入力する入力部(例えばDCジャック)を備え、その入力部から直流電力を取り込んで駆動回路へ供給することが可能な構成であってもよい。
【0129】
また、モータ駆動用の直流電源、即ち駆動回路に入力する直流電力の電力源は、バッテリ15に限らず、他の電源であってもよい。例えば、外部の商用電源等から交流電力を取り込み、その交流電力をAC/DCコンバータ等によって直流電力に変換して、その変換後の直流電力が駆動回路に入力される構成であってもよい。この例の場合、AC/DCコンバータ等の、交流電力を直流電力に変換する構成要素が、本開示の直流電源に相当する。
【0130】
(5−5)本開示を適用可能な電動作業機として、上記のドライバドリルはあくまでも一例である。本開示は、ドライバドリルに限らず、園芸用、石工用、金工用、木工用の電動工具などの、各種の電動作業機に適用することができる。より具体的には、電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動ハンマ、電動カッター、電動チェンソー、電動マルノコ、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機、といった、モータを用いる各種電動作業機に本開示を適用することができる。
【0131】
(5−6)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。