(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記界面を前記流路に沿って移動させることにより、前記流路の前記内壁面に滞留する前記粒子を前記内壁面から移動させて前記流路に沿って搬送する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検体処理方法。
前記界面を前記流路に沿って移動させ、前記内壁面に滞留する前記粒子と、移動する前記界面とを接触させることにより、前記粒子を前記内壁面から移動させる、請求項4に記載の検体処理方法。
前記流路内で前記処理液体の間に前記流体を導入し、両端にそれぞれ前記界面を有する前記流体の充填領域を前記処理液体の間に形成する、請求項1〜24のいずれか1項に記載の検体処理方法。
前記対象成分の処理の実施中または実施後に、前記流体を前記流路内に導入するためのバルブを開閉して、前記流路内に導入した前記流体の前記界面を形成する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の検体処理方法。
前記対象成分を有する前記粒子を前記流路内に導入するためのバルブ、および、前記処理液体を前記流路内に導入するためのバルブ、をそれぞれ開閉して、前記粒子および前記処理液体を前記流路内に導入し、
前記粒子および前記処理液体を前記流路内に導入した後、前記流体を前記流路内に導入するためのバルブを開閉して、前記流体を前記流路内に導入する、請求項27に記載の検体処理方法。
前記洗浄液の流れの中で、磁力によって捕捉した前記磁性粒子を前記流路に沿う方向に往復移動させ、前記磁性粒子を洗浄する、請求項30または31に記載の検体処理方法。
前記導入部は、前記界面を前記流路に沿って移動させることにより、前記流路の前記内壁面に滞留する前記粒子を前記内壁面から移動させて前記流路に沿って搬送する、請求項41〜43のいずれか1項に記載の検体処理装置。
前記導入部は、前記界面を前記流路に沿って移動させ、前記内壁面に滞留する前記粒子と、移動する前記界面とを接触させる、請求項41〜44のいずれか1項に記載の検体処理装置。
前記導入部は、前記処理液体を導入するための前記バルブの開閉と、前記流体を導入するための前記バルブの開閉とを交互に行い、前記流路内で前記処理液体の流れの間に前記流体を導入し、両端にそれぞれ前記界面を有する前記流体の充填領域を前記処理液体の間に形成する、請求項46に記載の検体処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者らが検討した結果、上記特許文献1のように微小流路中で液体を送液することにより対象成分を有する磁性粒子などの粒子を移動させる方法では、微小流路内に粒子が残留して、十分な移送量または回収量を得るのが困難であることが分かった。すなわち、上記特許文献1のように液体を送液した状態で磁性粒子の捕捉を解除して磁性粒子を移動させようとすると、磁性粒子が微小流路内に滞留することにより、磁石を取り除いて微小流路内に液体を流しても磁性粒子が残留してしまうことが分かった。
【0005】
このように検体処理チップの流路内で液体の流れによって粒子を移動させる場合、たとえば流路の内壁面付近は、液体を送液しても流速が低くなり易く、粒子が壁面に付着して凝集することもあるため、粒子を移動させることが難しくなる。そのため、粒子が流路内に残留するのを抑制することが望まれている。
【0006】
この発明は、対象成分を処理するための流路を備えた検体処理チップにおいて、対象成分を有する粒子が流路内に残留するのを抑制することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明者らが鋭意検討した結果、流路中に流路の内壁面と接触する界面を形成し、その界面を移動させて処理液体中の粒子を搬送させることによって、粒子が流路内に残留するのを抑制することができるという知見を得た。すなわち、この発明の第1の局面による検体処理方法は、流路(201)が形成された検体処理チップ(100)を用いて、検体中の対象成分(20)を処理するための検体処理方法であって、対象成分(20)の処理に用いる処理液体(21)との間で界面(23)を形成する流体(24)を流路(201)に導入することにより、流路(201)の内壁面(11)と接触する界面(23)を、対象成分(20)を有する粒子(22)を含む処理液体(21)と
流体(24)との間に形成し、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、処理液体(21)中に滞留する粒子(22)を、導入された流体(24)
の界面(23)によって
検体処理チップ(100)の外に押し出
し、検体処理チップ(100)の外に押し出された粒子(22)を、フローサイトメーター(40)により計数する。「粒子」とは、固体の粒子に限らず、液体の粒子である液滴も含む概念である。「流体」とは、気体および液体を含む概念である。
【0008】
第1の局面による検体処理方法では、上記のように、対象成分(20)の処理に用いる処理液体(21)との間で界面(23)を形成する流体(24)を流路(201)に導入することにより、流路(201)の内壁面(11)と接触する界面(23)を、対象成分(20)を有する粒子(22)を含む処理液体(21)との間に形成し、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、処理液体(21)中に滞留する粒子(22)を、導入された流体(24)によって押し出す。これにより、流路(201)内で対象成分(20)の処理に伴って処理液体(21)中に存在する粒子(22)が流路(201)内に滞留した場合にも、流路(201)中に導入された流体(24)によって、処理液体(21)との間に内壁面(11)と接触する界面(23)を形成することができる。そして、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、流路(201)中に滞留する粒子(22)を、移動する界面(23)によって処理液体(21)ごと押し出して搬送することができる。その結果、対象成分(20)を処理するための流路(201)を備えた検体処理チップ(100)において、対象成分(20)を有する粒子(22)が流路(201)内に残留するのを抑制することができる。
また、界面(23)から下流側の処理液体(21)を滞留した粒子(22)とともに検体処理チップ(100)の外に押し出すことができるので、たとえば流路(201)中に多量の処理液体(21)を流通させて滞留した粒子(22)を押し出す場合と比較して、検体処理チップ(100)からのサンプル回収量が増大するのを抑制しつつ、多数の粒子(22)を回収できる。そして、検体処理チップ(100)から最終的に回収される際のサンプル回収量が増大するのを抑制できるので、回収されたサンプル中の粒子(22)の濃度を高くすることができる。そのため、フローサイトメーター(40)により計数するのに適した濃度にするために、サンプルを濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。
【0011】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、処理液体(21)中に存在する粒子(22)の数が10万個以上1000万個以下である。このように多数の粒子(22)を取り扱う場合にも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを抑制することができる本発明によれば、対象成分(20)を有する粒子(22)の回収率を高めて測定感度を向上させることができる。
【0012】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、処理液体(21)は、水相の液体と油相の液体とを含む。この場合、水相の液体と油相の液体との一方が流路(201)の内壁面(11)に付着すると、他方との間で界面が形成されるため、粒子(22)が水相の液体と油相の液体との間にトラップされることにより内壁面(11)の近傍に滞留しやすい。本発明は、界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、内壁面(11)に滞留した粒子(22)を移動させることができるので、水相の液体と油相の液体とを含む処理液体(21)を用いる場合に効果的である。
【0013】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、界面(23)を流路(201)に沿って移動させることにより、流路(201)の内壁面(11)に滞留する粒子(22)を内壁面(11)から移動させて流路(201)に沿って搬送する。このように構成すれば、流路(201)の内壁面(11)に滞留する粒子(22)を、接近する界面(23)によって内壁面(11)から押し出して移動させることができる。その結果、特に流速が低く搬送しにくい流路(201)の内壁面(11)に粒子(22)が滞留する場合でも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、界面(23)を流路(201)に沿って移動させ、内壁面(11)に滞留する粒子(22)と、移動する界面(23)とを接触させることにより、粒子(22)を内壁面(11)から移動させる。このように構成すれば、粒子(22)が流路(201)の内壁面(11)に付着する場合でも、移動する界面(23)との接触によって、内壁面(11)から粒子(22)をはぎ取るように外力を作用させることができる。その結果、流路(201)の内壁面(11)に粒子(22)が付着する場合でも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのをより一層効果的に抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流路(201)内の粒子(22)が滞留する領域において、流体(24)の界面(23)を内壁面(11)に沿って往復移動させる。なお、「粒子が滞留する領域」は、処理に伴って粒子(22)が滞留する可能性のある領域であり、流路(201)中の局所領域のみならず、流路(201)の全体であってもよい。このように構成すれば、粒子(22)が流路(201)の内壁面(11)に付着する場合でも、往復移動する界面(23)を粒子(22)に接触させて、粒子(22)に繰り返し外力を作用させることができる。その結果、粒子(22)が流路(201)内に残留するのをさらに効果的に抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、対象成分(20)を有する粒子(22)は、内部に対象成分(20)を有する液滴(25)である。このように構成すれば、内部に対象成分(20)を有する液滴(25)を処理液体(21)中に存在させた場合に、流路(201)中で滞留する液滴(25)を移動する界面(23)によって押し出すように搬送することができる。したがって、粒子(22)が磁性粒子(26a)のような固体以外の液滴(25)の場合でも、流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。また、移動する界面(23)によって滞留した液滴(25)を搬送できるので、滞留を解消するために液滴(25)に過度な外力が作用することを抑制できる。
【0017】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、対象成分(20)を有する粒子(22)は、表面に対象成分(20)が結合した固体状の担体(26)である。このように構成すれば、検体中の対象成分(20)との結合によって互いに凝集し易く、流路(201)の内壁面(11)に付着しやすい担体(26)が、流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、対象成分(20)の処理は、流路(201)中で担体(26)を捕捉する処理を含み、担体(26)を捕捉する処理の後、捕捉が解除された担体(26)を流体(24)の界面(23)によって移動させる。流路(201)中で担体(26)を捕捉する場合、捕捉された担体(26)が流路(201)中で凝集して沈降したり、内壁面(11)に付着したりし易くなる。そこで、上記構成のように捕捉が解除された担体(26)を流体(24)の界面(23)によって移動させることにより、流路(201)中で滞留しやすい捕捉解除後の担体(26)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0019】
この場合、より好ましくは、担体(26)が磁性粒子(26a)であり、流路(201)中の磁性粒子(26a)を、磁力によって捕捉した後、磁力による捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させる。このように構成すれば、磁力によって流路(201)の内壁面(11)に捕捉された磁性粒子(26a)が内壁面(11)に付着した場合でも、流体(24)の界面(23)によって内壁面(11)から移動させることができる。その結果、内壁面(11)に捕捉された磁性粒子(26a)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0020】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、粒子(22)と処理液体(21)との比重が互いに異なり、粒子(22)の外径が0.1μm以上0.1mm以下である。この場合、粒子(22)が微小であり、かつ、処理液体(21)中で流路(201)底面側に沈むかまたは流路(201)上面側に浮かび易くなる。そのため、粒子(22)は、流路(201)底面側または流路(201)上面側の内壁面(11)近傍に滞留しやすくなる。上記構成によれば、流路(201)の底面側または流路(201)の上面側の内壁面(11)近傍に滞留しやすい粒子(22)であっても、界面(23)によって粒子(22)を搬送できるので、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。粒子(22)の外径は、平均粒子径を意味し、平均粒子径は、光散乱法により測定された個数平均径を意味する。
【0021】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流体(24)は気体である。このように構成すれば、気体の流体(24)により、様々な処理液体(21)に対して容易に界面(23)を形成することができる。また、液体の流体(24)を用いる場合と異なり、流路(201)内の液量が増加しないので、対象成分(20)を含んだ粒子(22)が最終的に回収される際のサンプル回収量が増大するのを抑制できる。そのため、サンプル回収後に、対象成分(20)を濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。
【0022】
この場合、好ましくは、流体(24)は空気である。このように構成すれば、空気以外の特定のガスを流体(24)に用いる場合と異なり、流体(24)としての空気を容易に入手し、流路(201)内に導入することができる。
【0023】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流路(201)の一端側に設けられた液体を流入させるための接続部(12)から、粒子(22)および処理液体(21)を流入させ、流路(201)のチャネル(202)において、粒子(22)が有する対象成分(20)に対して対象成分(20)の処理を行い、流路(201)の他端側に設けられた液体を送り出すための接続部(14)へ、処理を終えた粒子(22)および処理液体(21)を搬送する。このように構成すれば、粒子(22)および処理液体(21)を流路(201)の一端側から他端側に向けて流せばよく、往復させる必要がない。そのため、流体(24)も流路(201)の一端側から導入して他端側に向けて移動させるだけでよいので、粒子(22)の搬送を容易に行うことができる。
【0024】
この場合、好ましくは、チャネル(202)は、接続部(12、14)における流路幅(W2)より大きい流路幅(W1)を有する。このように構成すれば、チャネル(202)を、流路(201)内で相対的に流路幅が大きい幅広形状とすることができる。これにより、粒子(22)をチャネル(202)に幅広く分布させて処理液体(21)と接触させることができるので、対象成分(20)の処理を効率的に行うことができる。この場合でも、流体(24)は流路(201)の断面形状に合わせて形状を変化させることができるので、チャネル(202)内で粒子(22)が滞留した場合でも、界面(23)によって効率よく搬送することができる。
【0025】
上記流路(201)がチャネル(202)を備える構成において、好ましくは、チャネル(202)の断面は、高さ方向寸法(H1)よりも幅方向寸法(W1)が大きい。このように構成すれば、幅方向に大きい扁平なチャネル(202)が構成される。これにより、粒子(22)をチャネル(202)に平面的に分布させて処理液体(21)と効率的に接触させることができるので、対象成分(20)の処理を効率的に行うことができる。この場合でも、流体(24)は流路(201)の断面形状に合わせて形状を変化させることができるので、チャネル(202)内で粒子(22)が滞留した場合でも、界面(23)によって効率よく搬送することができる。
【0026】
上記流路(201)がチャネル(202)を備える構成において、好ましくは、チャネル(202)は、断面積(Ac)が0.01μm
2以上10mm
2以下である。ここで、「チャネルの断面積」とは、チャネル(202)内の液体の流通方向に直交する断面における断面積である。このような大きさのチャネル(202)を有する流路(201)は、一般にマイクロ流路と呼ばれる。断面積が小さい流路(201)では、流路(201)中を流す液量が少なく対象成分(20)の総量も多くないため、流路(201)内での粒子(22)の残留が最終的なサンプルの回収率を低下させる要因となる。そのため、界面(23)の移動によって粒子(22)の残留を抑制可能な本発明は、このようなマイクロ流路を用いる場合に有効である。
【0027】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、対象成分(20)の処理を行う際、流路(201)内の流れを層流とする。層流の流れでは、乱流のように流路(201)内で液体が攪拌する不規則な流れが生じず、流路(201)の内壁面(11)に近付くほど流速が小さくなる。そのため、層流の流れ中は、粒子(22)が流路(201)中に滞留し易い状況にある。界面(23)の移動によって粒子(22)の残留を抑制可能な本発明は、このような層流の流れ中で対象成分(20)の処理を行う場合に有効である。
【0028】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、対象成分(20)の処理を行う際、流路(201)内の流れのレイノルズ数が2000以下である。より好ましくは、対象成分(20)の処理を行う際、流路(201)内の流れのレイノルズ数が100以下である。さらに好ましくは、対象成分(20)の処理を行う際、流路(201)内の流れのレイノルズ数が10以下である。
レイノルズ数Reは、下式(1)により定義される。
Re=V×d/ν ・・・(1)
ここで、V[m/s]は、流路(201)内の流れの平均速度、d[m]は流路(201)の内径、ν[m
2/s]は流体の動粘性係数である。
一般に、レイノルズ数Reが2300以下の場合に層流になるとされる。また、レイノルズ数が小さいほど、流路(201)の内径および流速が共に小さい傾向にあることから、レイノルズ数が小さいほど、粒子(22)が流路(201)中に滞留し易い傾向がある。したがって、界面(23)の移動によって粒子(22)の残留を抑制可能な本発明は、このようにレイノルズ数が小さい流れ中で対象成分(20)の処理を行う場合に有効であり、特にレイノルズ数が小さくなるほど粒子(22)が残留しやすくなるため効果的である。
【0029】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流体(24)を、0.1μL/min以上5mL/min以下の流量で流路(201)に導入する。ここで、0.1μL/min以上5mL/min以下の流量は、マイクロ流路において用いられる微小な流量であり、流体(24)の流量を特別大きくしなくても、界面(23)の移動によって粒子(22)の残留を効果的に抑制することができる。
【0030】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流路(201)内に導入された流体(24)により、流路断面の全面にわたる界面(23)を形成する。ここで、「流路断面」とは、流路(201)内の液体の流通方向に直交する断面である。このように構成すれば、流路(201)を完全に塞ぐ界面(23)が形成されるので、内壁面(11)に沿って界面(23)を移動させることにより、流路(201)中に存在する粒子(22)を、より確実に搬送することができる。
【0031】
上記流体(24)が空気である構成において、好ましくは、流路(201)内に空気を包含した界面(23)を有する複数のバブル(27)を形成し、複数のバブル(27)を内壁面(11)に沿って移動させる。このように構成すれば、複数のバブル(27)の集合体により形成される界面(23)により、流路(201)中に存在する粒子(22)を移動させることができる。複数のバブル(27)によっても、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを抑制することができる。
【0032】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流路(201)内で処理液体(21)の間に流体(24)を導入し、両端にそれぞれ界面(23)を有する流体(24)の充填領域(28)を処理液体(21)の間に形成する。このように構成すれば、処理液体(21)の流れの途中に流体(24)を導入するだけで、処理液体(21)の間に2つの界面(23)を形成することができる。流体(24)の充填領域(28)を処理液体(21)と共に移動させることにより、移動方向の1つ目の界面(23)では粒子(24)を搬送しきれない場合に、2つ目の界面(23)により搬送できるようになる。そのため、界面(23)による搬送効率を向上させることができる。
【0033】
この場合、好ましくは、流路(201)に流体(24)を断続的に複数回導入して、流体(24)の充填領域(28)を複数形成する。このように構成すれば、形成した流体(24)の充填領域(28)の2倍の数の界面(23)を形成することができる。そのため、同一の流体(24)の導入量でも、1つの大きな充填領域(28)を形成する場合と比較して、界面(23)による搬送効率をさらに向上させることができる。
【0034】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、対象成分(20)の処理の実施中または実施後に、流体(24)を流路(201)内に導入するためのバルブ(31)を開閉して、流路(201)内に導入した流体(24)の界面(23)を形成する。このように構成すれば、バルブ(522)の開閉により、容易に流体(24)の界面(23)を形成することができる。また、バルブ(522)の開放時間や開閉の回数を制御することにより、流体(24)の導入量や、形成する界面(23)の数を制御することができるので、流路形状や粒子(22)に応じて適切な界面形成を行うことができる。
【0035】
この場合、好ましくは、対象成分(20)を有する粒子(22)を流路(201)内に導入するためのバルブ(32)、および、処理液体(21)を流路(201)内に導入するためのバルブ(33)、をそれぞれ開閉して、粒子(22)および処理液体(21)を流路(201)内に導入し、粒子(22)および処理液体(21)を流路(201)内に導入した後、流体(24)を流路(201)内に導入するためのバルブ(31)を開閉して、流体(24)を流路(201)内に導入する。このように構成すれば、流路(201)への流体(24)の導入を、粒子(22)や処理液体(21)の導入とは独立して制御することができるので、粒子(22)や処理液体(21)の流量や流速に応じた適切な界面形成を行うことができる。
【0036】
上記粒子(22)が表面に対象成分(20)が結合した固体状の担体(26)である構成において、好ましくは、対象成分(20)は核酸であり、粒子(22)は、核酸を増幅する処理が行われることにより、増幅産物である核酸が表面を覆うように結合した担体(26)である。このように粒子(22)である担体(26)の表面が核酸により覆われる場合、担体(26)同士が凝集したり、流路(201)の内壁面(11)に付着したりし易い。そのため、流路(201)中に滞留しやすい核酸の増幅産物と結合した担体(26)であっても、内壁面(11)に沿って界面(23)を移動させることにより、滞留を解消して効果的に搬送することができる。
【0037】
この場合、好ましくは、担体(26)が磁性粒子(26a)であり、処理液体(21)が洗浄液であり、対象成分(20)の処理は、流路(201)中で磁性粒子(26a)を磁力によって捕捉する処理と、磁性粒子(26a)が捕捉された流路(201)中に洗浄液を導入する処理と、磁性粒子(26a)の捕捉を解除する処理と、を含み、洗浄液により磁性粒子(26a)を洗浄した後に、流路(201)内に流体(24)を導入して、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させる。この場合、表面が核酸の増幅産物に覆われることにより磁性粒子(26a)が凝集や付着しやすくなるのに加えて、磁性粒子(26a)が磁力によって集められて捕捉されるので、より一層、磁性粒子(26a)が流路(201)内で滞留しやすくなる。そこで、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、滞留しやすい磁性粒子(26a)の残留を効果的に抑制することができる。
【0038】
上記対象成分(20)が核酸であり、粒子(22)が核酸の増幅産物と結合した担体(26)である構成において、好ましくは、担体(26)が磁性粒子(26a)であり、処理液体(21)が洗浄液であり、対象成分(20)の処理は、流路(201)中で磁性粒子(26a)を磁力によって捕捉する処理と、核酸の増幅産物を検出するための標識物質を流路(201)内に導入して核酸の増幅産物と反応させ、標識物質を有する磁性粒子(26a)を形成する処理と、標識物質を有する磁性粒子(26a)を捕捉したまま、洗浄液を流路(201)に導入して磁性粒子(26a)を洗浄する処理と、を含み、洗浄液により磁性粒子(26a)を洗浄した後に、流路(201)内に流体(24)を導入して、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させる。この場合、表面が核酸の増幅産物および標識物質の結合体に覆われて磁性粒子(26a)が凝集や付着しやすくなるのに加えて、磁性粒子(26a)が磁力によって集められて捕捉されるので、より一層、磁性粒子(26a)が流路(201)内で滞留しやすくなる。そこで、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、滞留しやすい磁性粒子(26a)の残留を効果的に抑制することができる。
【0039】
上記洗浄液により磁性粒子(26a)を洗浄する構成において、好ましくは、洗浄液の流れの中で、磁力によって捕捉した磁性粒子(26a)を流路(201)に沿う方向に往復移動させ、磁性粒子(26a)を洗浄する。このように構成すれば、磁力により集めた磁性粒子(26a)を流路(201)に沿って移動させることにより、集められた磁性粒子(26a)と洗浄液とを効率的に接触させることができるので、洗浄効率を向上させることができる。その一方、磁力によって流路(201)の内壁面(11)に押し付けられた状態で動かされる磁性粒子(26a)は、内壁面(11)により一層付着しやすくなる。その場合でも、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させる本発明によれば、内壁面(11)に付着しやすい磁性粒子(26a)の残留を効果的に抑制することができる。
【0040】
上記粒子(22)が内部に対象成分(20)を有する液滴(25)である構成において、好ましくは、対象成分(20)は、核酸であり、対象成分(20)の処理は、流路(201)内の処理液体(21)中において、核酸、核酸の増幅反応のための試薬、および核酸と結合する担体(26)の混合液を含む液滴(25)を形成する処理を含み、流体(24)の界面(23)を移動させることにより、流路(201)中の液滴(25)を移動させる。このように流路(201)内で処理液体(21)中に液滴(25)を形成する場合、液滴(25)が流路(201)の内壁面(11)に付着して滞留することがある。そこで、処理液体(21)中に形成された液滴(25)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、液滴(25)の残留を効果的に抑制することができる。
【0041】
上記粒子(22)が内部に対象成分(20)を有する液滴(25)である構成において、好ましくは、対象成分(20)は、核酸であり、対象成分(20)の処理は、処理液体(21)中に存在させた核酸、核酸の増幅反応のための試薬、および核酸と結合する担体(26)の混合液を含む液滴(25)中の核酸を増幅する処理を含み、流体(24)の界面(23)を移動させることにより、核酸を増幅する処理による増幅産物である核酸が結合した担体(26)を含む液滴(25)を移動させる。このような核酸の増幅処理として、たとえば複数の異なる温度に変化させるサイクルを複数回繰り返すサーマルサイクル処理が行われる。流路(201)内でサーマルサイクル処理を行うには、たとえば流路(201)中に設定した複数の温度ゾーンを通過するように液滴(25)を搬送する。その場合に、搬送距離が長くなるため、搬送途中において滞留する液滴(25)が発生する場合がある。そこで、液滴(25)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、液滴(25)の残留を効果的に抑制することができる。
【0042】
上記粒子(22)が固体状の担体(26)である構成において、好ましくは、対象成分(20)は、核酸であり、対象成分(20)の処理は、核酸の増幅産物である核酸が結合した担体(26)を含む液滴(25)を破壊する処理であり、流体(24)の界面(23)を移動させることにより、破壊により液滴(25)から取り出された担体(26)を移動させる。ここで、たとえば油相のオイル中に形成された水相の液滴(25)を破壊する場合、破壊されて液滴(25)から取り出された担体(26)が周囲のオイルと接触して、凝集や付着しやすい状態となる。そこで、破壊により液滴(25)から取り出された担体(26)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、担体(26)の残留を効果的に抑制することができる。
【0043】
この場合、好ましくは、処理液体(21)は、液滴(25)を破壊するための試薬を含み、液滴(25)を破壊する処理において、核酸の増幅産物が結合した担体(26)を含む液滴(25)と、液滴(25)を破壊するための試薬を混合することにより液滴(25)を破壊する。このように構成すれば、液滴(25)と液滴(25)を破壊するための試薬とを混合するだけで容易に液滴(25)を破壊することができる。
【0044】
上記粒子(22)が内部に対象成分(20)を有する液滴(25)である構成において、好ましくは、対象成分(20)の処理は、流路(201)内の処理液体(21)中において、細胞、細胞を溶解するための試薬、および核酸と結合する担体(26)の混合液を含む液滴(25)を形成する処理であり、流体(24)の界面(23)を移動させることにより、細胞と、核酸が結合する担体(26)とを含む液滴(25)を移動させる。このように流路(201)内で処理液体(21)中に液滴(25)を形成する場合、液滴(25)が流路(201)の内壁面(11)に付着して滞留することがある。そこで、処理液体(21)中に形成された液滴(25)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、液滴(25)の残留を効果的に抑制することができる。
【0045】
上記粒子(22)が固体状の担体(26)である構成において、好ましくは、対象成分(20)が核酸であり、対象成分(20)の処理は、流路(201)内の処理液体(21)中において、細胞、細胞を溶解するための試薬、および核酸と結合する担体(26)の混合液中で細胞から溶出された核酸が結合した担体(26)を含む液滴(25)を破壊する処理を含み、流体(24)の界面(23)を移動させることにより、細胞から溶出された核酸が結合した担体(26)を移動させる。このように構成すれば、破壊により液滴(25)から取り出された担体(26)を流体(24)の界面(23)によって移動させることによって、担体(26)の残留を効果的に抑制することができる。
【0046】
上記第1の局面による検体処理方法において、好ましくは、流体(24)は、処理液体(21)と接触して互いに異なる相に分かれる液体であるか、または気体である。このように構成すれば、流体(24)として適切な液体または気体を選択することにより、容易に界面を形成することができる。
【0047】
この場合、好ましくは、処理液体(21)が水相である場合に、流体(24)は、油相または気体であり、処理液体(21)が油相である場合に、流体(24)は、水相または気体である。極性分子である水を主として含む液体と、非極性分子である油を主として含む液体とは、容易に界面を形成する。また、極性分子、非極性分子にかかわらず、液体に対して気体は容易かつ確実に界面を形成する。そのため、上記の流体(24)を用いることによって、処理液体(21)との間で界面形成をより確実に行うことができる。
【0048】
この発明の第2の局面による検体処理装置(500)は、検体処理チップ(100)を用いて、検体中の対象成分(20)を処理し、検体処理チップ(100)から回収された対象成分(20)
を有する粒子(22)をフローサイトメーター(40)により計数するための検体処理装置であって、流路(201)が形成された検体処理チップ(100)が設置される設置部(510)と、検体処理チップ(100)の流路(201)に、対象成分(20)の処理に用いる処理液体(21)との間で界面(23)を形成する流体(24)を流路(201)に導入するための導入部(520)とを備え、導入部(520)は、流路(201)の内壁面(11)と接触する界面(23)を、対象成分(20)を有する粒子(22)を含む処理液体(21)と流路(201)に導入された流体(24)との間に形成し、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、処理液体(21)中に滞留する粒子(22)を、導入された流体(24)の界面(23)によって検体処理チップ(100)の外に押し出す。
【0049】
第2の局面による検体処理装置(500)では、上記のように、流路(201)の内壁面(11)と接触する界面(23)を、対象成分(20)を有する粒子(22)を含む処理液体(21)と流路(201)に導入された流体(24)との間に形成し、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、処理液体(21)中に滞留する粒子(22)を、導入された流体(24)によって押し出す導入部(520)を設ける。これにより、流路(201)内で対象成分(20)の処理に伴って対象成分(20)を有する粒子(22)が流路(201)内に滞留した場合にも、流路(201)中に導入された流体(24)によって、処理液体(21)との間に内壁面(11)と接触する界面(23)を形成することができる。そして、形成された界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、流路(201)中に滞留する粒子(22)を、移動する界面(23)によって処理液体(21)ごと押し出すように搬送することができる。その結果、対象成分(20)に対して対象成分(20)を処理するための流路(201)を備えた検体処理チップ(100)において、対象成分(20)を有する粒子(22)が流路(201)内に残留するのを抑制することができる。
また、界面(23)から下流側の処理液体(21)を滞留した粒子(22)とともに検体処理チップ(100)の外に押し出すことができるので、たとえば流路(201)中に多量の処理液体(21)を流通させて滞留した粒子(22)を押し出す場合と比較して、検体処理チップ(100)からのサンプル回収量が増大するのを抑制しつつ、多数の粒子(22)を回収できる。そして、検体処理チップ(100)から最終的に回収される際のサンプル回収量が増大するのを抑制できるので、回収されたサンプル中の粒子(22)の濃度を高くすることができる。そのため、フローサイトメーター(40)により計数するのに適した濃度にするために、サンプルを濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。
【0051】
上記第2の局面による検体処理装置(500)において、好ましくは、処理液体(21)中に存在する粒子(22)の数が10万個以上1000万個以下である。このように多数の粒子(22)を取り扱う場合にも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを抑制することができる本発明によれば、対象成分(20)を有する粒子(22)の回収率を高めて測定感度を向上させることができる。
【0052】
上記第2の局面による検体処理装置(500)において、好ましくは、処理液体(21)は、水相の液体と油相の液体とを含む。この場合、水相の液体と油相の液体との一方が流路(201)の内壁面(11)に付着すると、他方との間で界面が形成されるため、粒子(22)が水相の液体と油相の液体との間にトラップされることにより内壁面(11)の近傍に滞留しやすい。本発明は、界面(23)を内壁面(11)に接触させた状態で流路(201)に沿って移動させることにより、内壁面(11)に滞留した粒子(22)を移動させることができるので、水相の液体と油相の液体とを含む処理液体(21)を用いる場合に効果的である。
【0053】
上記第2の局面による検体処理装置(500)において、好ましくは、導入部(520)は、界面(23)を流路(201)に沿って移動させることにより、流路(201)の内壁面(11)に滞留する粒子(22)を内壁面(11)から移動させて流路(201)に沿って搬送する。このように構成すれば、流路(201)の内壁面(11)に滞留する粒子(22)を、接近する界面(23)によって内壁面(11)から押し出すように移動させることができる。その結果、流速が低く特に搬送しにくい流路(201)の内壁面(11)に粒子(22)が滞留する場合でも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0054】
この場合、好ましくは、導入部(520)は、界面(23)を流路(201)に沿って移動させ、内壁面(11)に滞留する粒子(22)と、移動する界面(23)とを接触させる。このように構成すれば、粒子(22)が流路(201)の内壁面(11)に付着する場合でも、移動する界面(23)との接触によって、内壁面(11)から粒子(22)をはぎ取るように外力を作用させることができる。その結果、流路(201)の内壁面(11)に粒子(22)が付着する場合でも、粒子(22)が流路(201)内に残留するのをより一層効果的に抑制することができる。
【0055】
上記第2の局面による検体処理装置(500)において、好ましくは、導入部(520)は、流路(201)内に圧力を供給するポンプ(521)と、流路(201)内への圧力の供給経路を開閉するための複数のバルブ(522)と、を含み、それぞれのバルブ(522)を開閉することにより、流路(201)内に導入した処理液体(21)と流体(24)との間に界面(23)を形成させ、圧力により界面(23)を移動させる。このように構成すれば、バルブ(522)の開閉により、容易に流体(24)の界面(23)を形成することができる。また、ポンプ(521)の圧力、バルブ(522)の開放時間や開閉の回数を制御することにより、流体(24)の導入量や、形成する界面(23)の数を制御することができるので、流路形状や粒子(22)に応じて適切な界面形成を行うことができる。
【0056】
この場合、好ましくは、導入部(520)は、処理液体(21)を導入するためのバルブ(522)の開閉と、流体(24)を導入するためのバルブ(522)の開閉とを交互に行い、流路(201)内で処理液体(21)の流れの間に流体(24)を導入し、両端にそれぞれ界面(23)を有する流体(24)の充填領域(28)を処理液体(21)の間に形成する。このように構成すれば、処理液体(21)の流れの途中に流体(24)を導入するだけで、各処理液体(21)との間に2つの界面(23)を形成することができる。流体(24)の充填領域(28)を処理液体(21)と共に移動させることにより、移動方向の1つ目の界面(23)では粒子(22)を搬送しきれなかった場合でも、2つ目の界面(23)により搬送できるようになる。そのため、界面(23)による搬送効率を向上させることができる。また、各バルブ(522)の開閉を交互に行うだけの簡単な制御により、容易に流体(24)の充填領域(28)を流路(201)内に形成することができる。
【0057】
上記導入部(520)がポンプ(521)と複数のバルブ(522)とを含む構成において、好ましくは、流体(24)は空気であり、導入部(520)は、ポンプ(521)とバルブ(522)との間、およびバルブ(522)と検体処理チップ(100)との間に空気を流通させるためのエア経路(527)を有する。このように構成すれば、流体(24)を空気とすることにより、様々な処理液体(21)に対して容易に界面(23)を形成することができる。また、液体の流体(24)を用いる場合と異なり、流路(201)内の液量が増加しないので、対象成分(20)を含んだ粒子(22)が最終的に回収される際のサンプル回収量が増加するのを抑制することができる。そのため、サンプル回収後に、対象成分(20)を濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。さらに、空気以外の特定のガスを流体(24)に用いる場合と異なり、流体(24)としての空気を容易に入手し、エア経路(527)を介して流路(201)内に導入することができる。
【0058】
上記第2の局面による検体処理装置(500)において、好ましくは、対象成分(20)が核酸であり、粒子(22)は核酸が結合した磁性粒子(26a)であり、流路(201)中で磁性粒子(26a)を磁力によって捕捉するための磁石ユニット(542)をさらに備え、流路(201)中の核酸が結合した磁性粒子(26a)を磁石ユニット(542)の磁力によって捕捉した状態で対象成分(20)の処理を行い、対象成分(20)の処理の後、捕捉が解除された磁性粒子(26a)を流体(24)の界面(23)によって移動させる。このように構成すれば、磁力によって流路(201)の内壁面(11)に捕捉された磁性粒子(26a)が内壁面(11)に付着した場合でも、流体(24)の界面(23)によって内壁面(11)から移動させることができる。その結果、内壁面(11)に捕捉された磁性粒子(26a)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0059】
上記第2の局面による検体処理装置において、好ましくは、粒子(22)は、内部に対象成分(20)を有する液滴(25)であり、導入部(520)は、液滴(25)を含む処理液体(21)を含んだ流路(201)に流体(24)を導入して、液滴(25)を構成する液滴界面(25a)とは異なる界面(23)を形成し、形成された界面(23)を流路(201)に沿って移動させることにより、処理液体(21)中に存在する液滴(25)を流路(201)に沿って搬送する。このように構成すれば、処理液体(21)中に存在する液滴(25)が流路(201)内に滞留した場合にも、流路(201)内に導入した流体(24)によって、液滴界面(25a)とは別の界面(23)を内壁面(11)と接触するように形成することができる。そして、形成された界面(23)を内壁面(11)に沿って移動させることにより、流路(201)内の処理液体(21)中に滞留する液滴(25)を、移動する界面(23)によって処理液体(21)ごと押し出すように搬送することができる。その結果、対象成分(20)を有する液滴(25)が流路(201)内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0060】
対象成分を処理するための流路を備えた検体処理チップにおいて、対象成分を有する粒子が流路内に残留するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0063】
[検体処理方法の概要]
図1を参照して、本実施形態による検体処理方法の概要について説明する。
【0064】
本実施形態による検体処理方法は、流路201が形成された検体処理チップ100を用いて、検体中の対象成分20を処理するための検体処理方法である。
【0065】
検体処理チップ100は、検体処理装置500に設置され、検体処理装置500により供給される検体中の対象成分20に対して、1または複数の処理工程を含む検体処理を実行するためのチップである。検体処理チップ100は、対象成分20を含む検体を受け入れ可能に構成されており、検体処理装置500にセットされることにより、検体処理装置500による検体処理を行えるようにするためのカートリッジ型の検体処理チップである。また、検体処理チップ100は、後述するように、所望の処理工程を実施するための微細な流路を備えたマイクロ流体チップである。流路は、たとえば、断面寸法(幅、高さ、内径)が0.1μm〜1000μmのマイクロ流路である。
【0066】
検体処理チップ100には、患者から採取された体液や血液(全血、血清または血漿)などの液体、または、採取された体液や血液に所定の前処理を施して得られた検体が注入される。対象成分20は、たとえば、DNA(デオキシリボ核酸)などの核酸、細胞および細胞内物質、抗原または抗体、タンパク質、ペプチドなどである。たとえば対象成分20が核酸である場合、血液などから所定の前処理によって核酸を抽出した抽出液が検体処理チップ100に注入される。
【0067】
検体処理チップ100に注入された対象成分20を含む検体は、検体処理装置500によって検体処理チップ100内を送液される。検体が送液される過程で、1または複数の工程による対象成分20の処理が所定の順序で実施される。対象成分20の処理の結果、検体処理チップ100内では、検体を分析するのに適した測定用試料、または、別の装置を用いた後続の処理に適した液体試料が生成される。
【0068】
検体処理チップ100は、たとえば、流路201が形成された流体モジュール200と、基板300とを含む。検体処理チップ100の流路201には、対象成分20を含んだ液体の他、対象成分20の処理に用いる液体や、その他の気体などの各種流体が導入され得る。流路201は、内壁面11に囲まれた管状形状を有する。
【0069】
対象成分20の処理は、検体処理チップ100の用途に応じて様々である。対象成分20の処理は、たとえば、検体と試薬とを混合する処理、検体と試薬とを反応させる処理、対象成分20を含む検体を微小な液滴状に分散させる処理、分散させた液滴を破壊する処理、検体に含まれる不要成分を検体から分離して洗浄する処理、などを含む。対象成分20の処理は、上記例示した処理の内の特定の1つでもよいし、複数の処理の組み合わせでもよい。対象成分20の処理は、対象成分20に処理を施して所望の試料を生成するための処理であれば、どのような処理であってもよい。
【0070】
流路201中で処理が実施された結果、対象成分20を含んだ液体や固体は、後続する別の処理を行う流路や、検体処理チップ100の外部などに送り出される粒子22となる。粒子22は、処理で使用された処理液体21中に粒子状に存在した状態となることがある。つまり、処理液体21中で粒子22が処理液体21と混ざることなく粒子状の形状を維持したまま存在することがある。たとえば、対象成分20の処理は、処理の後に、処理液体21中に対象成分20を有する粒子22を分散させる種類の処理である。分散とは、粒子状の物質が液体中に浮遊または懸濁している状態のことである。
【0071】
したがって、流路201内で対象成分20に対する処理を実施することにより、対象成分20の処理に用いる処理液体21中に対象成分20を有する粒子22が存在している状態となる。
【0072】
処理液体21中で粒子22が存在する系では、対象成分20の処理を実行する過程で、粒子22が流路201内で意図せず滞留する場合がある。粒子22の滞留は、たとえば流路201の内壁面11に付着することにより発生する。粒子22の滞留は、たとえば複数の粒子22が流路201の底面を構成する内壁面11に沈降して凝集したり、流路201の上面を構成する内壁面11に浮上して凝集したりすることによっても、発生する。
【0073】
そこで、本実施形態の検体処理方法では、
図2に示すように、対象成分20の処理に用いる処理液体21との間で界面23を形成する流体24を流路201に導入することにより、流路201の内壁面11と接触する界面23を、対象成分20を有する粒子22を含む処理液体21との間に形成し、形成された界面23を内壁面11に接触させた状態で流路201に沿って移動させることにより、処理液体21中に滞留する粒子22を、導入された流体24によって押し出す。
【0074】
流体24は、粒子22を処理液体21とともに流路201に沿って搬送するための流体である。流体24は、液体でも気体でもよい。流体24は、処理液体21との間に界面23を形成可能であれば、特に制限されない。たとえば、流体24として、処理液体21と混ざらない液体や、処理液体21中への溶解量よりも多い量の気体を導入することにより、流路201中で処理液体21との間に界面23が形成される。界面は、流体24を構成する液体や気体の均一な相が、処理液体21を構成する他の均一な液体相と接している境界のことである。相は、気体、液体、固体などの物質の状態を表し、同一相内では化学的組成および物理的状態が均一または概ね均一と見なせる。
【0075】
内壁面11と接する界面23が流路201に沿って移動することにより、流路201中に滞留する粒子22を、移動する界面23によって処理液体21ごと押し出して搬送することができる。たとえば、流路201中に付着または沈降する粒子22は、接近する界面23によって動かされる。付着状態または沈降状態が解消された粒子22は、流体24および処理液体21を移動させる流れにより、流路201に沿って容易に搬送される。
【0076】
その結果、本実施形態の検体処理方法によれば、対象成分20の処理を実行するための流路201を備えた検体処理チップ100において、対象成分20を有する粒子22が流路201内に残留するのを抑制することができる。
【0077】
流体24は、処理液体21との間に形成される界面23が、流路201の内壁面11と接触するように導入される。界面23は、必ずしも流路断面を完全に覆うように、流路内断面と同一形状に形成される必要はない。つまり、界面23は、流路断面において、一部の内壁面11と接触し、他の内壁面11とは接触しないように形成されてもよい。たとえば、界面23は、内壁面11の内で、少なくとも粒子22が付着する側と接触するように形成される。また、たとえば、界面23は、流路201の全幅にわたって形成される。
【0078】
ここで、流路201内に導入された流体24により、流路断面の全面にわたる界面23を形成することが好ましい。この場合、流路201を完全に塞ぐ界面23が形成されるので、流路断面のどの位置に粒子22が滞留していても、界面23によって漏れなく搬送される。これにより、流路201に沿って界面23を移動させることにより、流路201中に存在する粒子22を、より確実に搬送することができる。
【0079】
流体24は、処理液体21と接触して互いに異なる相に分かれる液体であるか、または気体である。流体24として適切な液体または気体を選択することにより、容易に界面を形成することができる。
【0080】
たとえば処理液体21が水相である場合に、流体24は、油相または気体であることが好ましい。たとえば処理液体21が油相である場合に、流体24は、水相または気体であることが好ましい。ここで、極性分子である水を主として含む液体と、非極性分子である油を主として含む液体とは、容易に界面を形成する。また、極性分子、非極性分子にかかわらず、液体に対して気体は容易かつ確実に界面を形成する。そのため、上記の流体24を用いることによって、処理液体21との間で界面形成をより確実に行うことができる。
【0081】
好ましくは、流体24は、気体である。この場合、気体の流体24により、様々な処理液体21に対して容易に界面23を形成することができる。また、液体の流体24を用いる場合と異なり、流路201内の液量が増加しないので、対象成分20を含んだ粒子22が最終的に回収される際のサンプル液量が増加することがない。そのため、サンプル回収後に、対象成分20を濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。
【0082】
流体24として用いる気体は、好ましくは、空気である。この場合、空気以外の特定のガスを流体24に用いる場合と異なり、流体24としての空気を容易に入手し、流路201内に導入することができる。
【0083】
図2の例では、処理液体21中に滞留する粒子22が、導入された流体24によって検体処理チップ100の外に押し出される。対象成分20を有する粒子22は、処理液体21とともに流路201の出口から回収用のサンプル容器41などに回収される。このとき、界面23の移動に伴って、界面23から下流側の処理液体21を滞留した粒子22とともに検体処理チップ100の外に押し出すことができる。その結果、たとえば流路201中に多量の処理液体21を高速で流通させて滞留した粒子22を押し出す場合と比較して、検体処理チップ100からのサンプル回収量が増大するのを抑制しつつ、多数の粒子22を回収できる。
【0084】
対象成分20を有する粒子22を検体処理チップ100の外部で回収した場合、粒子22を含んだサンプルは、たとえば外部の計測装置に提供され、計測される。
図2の例では、検体処理チップ100の外に押し出された粒子22は、フローサイトメーター(FCM)40により計数される。上記の通り、界面23の移動によって粒子22を回収することにより、検体処理チップ100から最終的に回収される際のサンプル回収量が増大するのを抑制できるので、回収されたサンプル中の粒子22の濃度を高くすることができる。そのため、フローサイトメーター40により計数するのに適した濃度にするために、サンプルを濃縮する処理を別途行う必要がなくなる。たとえばサンプルを濃縮する場合、遠心分離などを行ってサンプル中の粒子22を沈殿させ、上清を除去するなどの作業が必要となるが、十分な粒子濃度のサンプルが得られれば、濃縮作業が不要となる。なお、濃度が高すぎる場合は、希釈用の液体を加えるだけでよいため、適正濃度にするための作業が濃縮作業よりも容易である。
【0085】
流路201中の流れは、流体の粘性によって内壁面11の近傍で流速が小さくなる。そのため、流路201内で滞留する粒子22は、特に、流路201の内壁面11に付着したり、沈降したりしやすい。内壁面11の近傍に滞留した粒子22は、流路201中を流れる流体の流量を大きくしても容易には搬送できない。そのため、好ましくは、界面23を流路201に沿って移動させることにより、流路201の内壁面11に滞留する粒子22を内壁面11から移動させて流路201に沿って搬送する。これにより、流路201の内壁面11に滞留する粒子22を、接近する界面23によって内壁面11から押し出すように移動させることができる。その結果、特に搬送しにくい流路201の内壁面11に粒子22が滞留する場合でも、粒子22が流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0086】
図3の例では、界面23を流路201に沿って移動させ、内壁面11に滞留する粒子22と、移動する界面23とを接触させることにより、粒子22を内壁面11から移動させる。つまり、流路201内の粒子22が存在する領域を通り過ぎるように界面23を移動させる。これにより、粒子22が流路201の内壁面11に付着する場合でも、移動する界面23との接触によって、内壁面11から粒子22をはぎ取るように外力を作用させることができる。その結果、流路201の内壁面11に粒子22が付着する場合でも、粒子22が流路201内に残留するのをより一層効果的に抑制することができる。
【0087】
図4の例では、流路201内の粒子22が滞留する領域において、流体24の界面23を流路201に沿って往復移動させる。これにより、粒子22が流路201の内壁面11に付着する場合でも、往復移動する界面23を粒子22に接触させて、粒子22に繰り返し外力を作用させることができる。界面23の往復移動によって粒子22の付着状態が解除され、一旦粒子22が流路201内に浮遊する状態になれば、流路201内の液体を送り出すだけで容易に搬送できる。その結果、粒子22が流路201内に残留するのをさらに効果的に抑制することができる。粒子22が滞留する領域は、流路201内で粒子22が沈降や付着などにより滞留しうる領域であり、流路201の一部でもよいし、流路201の全体でもよい。たとえば粒子22を流路201内で捕捉する処理を行う場合、粒子22が滞留する領域は、粒子22を捕捉する位置を含む局所範囲としてよい。単純に粒子22を流路201内で流通させる場合は、流路201内の全体で粒子22が滞留する可能性があるため、粒子22が滞留する領域は、流路201内の全体であってよい。
【0088】
また、
図4の例では、流路201内で処理液体21の間に流体24を導入し、両端にそれぞれ界面23を有する流体24の充填領域28を処理液体21の間に形成する。この場合、流体24は、処理液体21を流路201内で分断するように導入され、流路201内の一定距離の区間を占める充填領域28を形成する。これにより、処理液体21の流れの途中に流体24を導入するだけで、各処理液体21との間に2つの界面23を形成することができる。つまり、搬送方向の下流側の処理液体21との間の界面23と、搬送方向の上流側の処理液体21との界面23との2つが形成される。
【0089】
充填領域28を形成する場合、2つの界面23が、流路201内の粒子22が存在する領域を通り過ぎるように移動させれば、滞留する粒子22に対して界面23を2回接触させることができる。この結果、流体24の充填領域28を処理液体21と共に移動させることにより、移動方向の1つ目の界面23では搬送できなかった滞留した粒子22を、2つ目の界面23により搬送できるようになる。そのため、界面23による搬送効率を向上させることができる。
【0090】
流体24の充填領域28を形成する場合、流路201内に形成する充填領域28は、1つには限られない。好ましくは、流路201に流体24を断続的に複数回導入して、流体24の充填領域28を複数形成する。この場合、形成した流体24の充填領域28の2倍の数の界面23を形成することができる。そのため、同一の流体24の導入量でも、1つの大きな充填領域28を形成する場合と比較して、界面23による搬送効率をさらに向上させることができる。
【0091】
この他、
図5に示すように、流路201内に空気を包含した界面23を有する複数のバブル27を形成し、複数のバブル27を流路201に沿って移動させてもよい。この場合、複数のバブル27の集合体を形成することにより、各バブル27の界面23を壁状に連結することができる。流路断面を集合させたバブル27の界面23によって満たせば、単一の界面23を流路断面の全体にわたって形成するのと同様の作用が得られる。そのため、複数のバブル27を流路201に沿って移動させることにより、流路201中に存在する粒子22を移動させることができるので、粒子22が流路201内に残留するのを抑制することができる。
【0092】
流体24を流路201に導入して界面23を形成するのは、たとえば圧力により流体24を送り込むことにより行う。この際、
図6に示すように、流体24の導入は、流路201に接続したバルブ31の開閉により行うことができる。すなわち、対象成分20の処理の実施中または実施後に、流体24を流路201内に導入するためのバルブ31を開閉して、流路201内に導入した流体24の界面23を形成する。これにより、バルブ31の開閉により、容易に流体24の界面23を形成することができる。
【0093】
たとえば粒子22を含んだ処理液体21に後続してバルブ31の開閉を1回行った後、再度処理液体21を導入すれば、流体24の充填領域28が形成できる。バルブ31の開閉と、処理液体21の導入とを交互に行えば、複数個の充填領域28を形成できる。バルブ31の開放時間を調節することにより、導入する流体24の体積を制御できる。このように、バルブ31の開放時間や開閉の回数を制御することにより、流体24の導入量や、形成する界面23の数を制御することができるので、流路形状や粒子22に応じて適切な界面23を形成できる。
【0094】
流体24を導入するためのバルブ31は、対象成分20や処理液体21を導入するためのバルブとは別個に設けることが好ましい。具体的には、対象成分20を有する粒子22を流路201内に導入するためのバルブ32、および、処理液体21を流路201内に導入するためのバルブ33、をそれぞれ開閉して、粒子22および処理液体21を流路201内に導入し、粒子22および処理液体21を流路201内に導入した後、流体24を流路201内に導入するためのバルブ31を開閉して、流体24を流路201内に導入する。
【0095】
この場合、流路201への流体24の導入を、粒子22や処理液体21の導入とは独立して制御することができる。そのため、粒子22や処理液体21の流量や流速をバルブ32およびバルブ33により制御しながら、充填領域28の形成や、充填領域28の大きさの調節を自由に行うことが可能となる。したがって、粒子22や処理液体21の流量や流速に応じた適切な界面23を形成できる。
【0096】
〈粒子および処理液体〉
粒子22および処理液体21は、対象成分20の処理の内容に応じて様々な組み合わせが存在する。界面23による粒子22の移送は、このような様々な粒子22に対して実施されうる。
【0097】
たとえば、
図7に示すように、対象成分20を有する粒子22は、内部に対象成分20を有する液滴25である。この場合、内部に対象成分20を有する液滴25を処理液体21中に存在させた場合に、流路201中で滞留する液滴25を移動する界面23によって押し出すように搬送することができる。したがって、粒子22が磁性粒子26aのような固体以外の液滴25の場合でも、流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。また、移動する界面23によって滞留した液滴25を搬送できるので、滞留を解消するために液滴25に過度な外力が作用することを抑制できる。
【0098】
また、たとえば、
図8に示すように、対象成分20を有する粒子22は、表面に対象成分20が結合した固体状の担体26である。この場合、検体中の対象成分20との結合によって互いに凝集し易く、流路201の内壁面11に付着しやすい担体26が、流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0099】
図9の例では、対象成分20が核酸であり、粒子22は、核酸を増幅する処理が行われることにより、増幅産物である核酸が表面を覆うように結合した担体26である。粒子22である担体26の表面が核酸により覆われる場合、担体26同士が凝集したり、流路201の内壁面11に付着したりし易いため、流路201内で粒子22が滞留しやすい。そのため、核酸の増幅産物と結合した担体26が流路201内で滞留しても、流路201に沿って界面23を移動させることにより、滞留を解消して効果的に搬送することができる。
【0100】
また、本実施形態による検体処理方法は、粒子22と処理液体21との比重が互いに異なる場合に有効である。また、本実施形態による検体処理方法は、粒子22の外径が0.1μm以上0.1mm以下である場合に有効である。
【0101】
粒子22と処理液体21との比重が互いに異なる場合、処理液体21中で流路201の底面側に沈むかまたは流路201の上面側に浮かび易くなる。粒子22の比重が処理液体21の比重よりも大きい場合、流路201の底面を構成する内壁面11の近傍に滞留し易い。流路201の底面は、粒子22は検体処理チップ100の使用状態における重力方向下側の面である。粒子22の比重が処理液体21の比重よりも小さい場合、流路201の上面を構成する内壁面11の近傍に滞留し易い。流路201の上面は、粒子22は検体処理チップ100の使用状態における重力方向上側の内面である。
【0102】
また、粒子22の外径が0.1μm以上0.1mm以下である場合、粒子22が微小であり、粒子径が大きい場合よりも相対的に表面積が大きくなるため、凝集して滞留する量が増大しやすい。そのため、このような微小な粒子22が内壁面11近傍に滞留した場合でも、流体24により形成した界面23によって粒子22を搬送できるので、粒子22が流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0103】
また、検体処理チップ100において、処理液体21中に存在する粒子22の数は、たとえば10万個以上1000万個以下である。この場合、流路201中を極めて多数の粒子22が移動することになる。このように多数の粒子22を取り扱う場合にも、本実施形態は、粒子22が流路201内に残留するのを抑制することができるので有効である。その結果、多数の粒子22を取り扱う場合にも、対象成分20を有する粒子22の回収率を高めて測定感度を向上させることができる。
【0104】
また、本実施形態による検体処理方法は、処理液体21は、水相の液体と油相の液体とを含む場合に効果的である。たとえば、処理液体21が、水相の各種試薬と、油相のオイルとを含む場合が該当する。この場合、水相の液体と油相の液体との一方が流路201の内壁面11に付着すると、他方との間で界面が形成されるため、粒子22が水相の液体と油相の液体との間にトラップされることにより内壁面11の近傍に滞留しやすい。粒子22が内壁面11の近傍に滞留した場合でも、界面23を内壁面11に接触させた状態で流路201に沿って移動させることにより、内壁面11に滞留した粒子22を移動させることができるので、滞留が発生しやすい状況下で粒子22の残留を効果的に抑制できる。
【0105】
粒子22および処理液体21、あるいは処理液体21を用いた処理の内容によっては、粒子22が流路201内に滞留しやすい状況が発生する。本実施形態による検体処理方法は、粒子22の残留を抑制できるため、そのような粒子22が流路201内に滞留しやすい状況下では特に有効である。
【0106】
図10の例では、対象成分20の処理は、流路201中で担体26を捕捉する処理を含む。担体26を捕捉する方法は、特に限定されない。たとえば磁性体を含む担体26は、磁力により捕捉できる。荷電した担体26は、電気泳動を利用して電界を作用させることにより捕捉できる。
【0107】
捕捉された担体26は、一定時間、流路201中の所定位置に滞留する。流路201中で担体26を捕捉する場合、捕捉された担体26が流路201中で凝集して沈降したり、内壁面11に付着したりし易くなる。つまり一旦捕捉した後、捕捉を解除した場合でも、滞留し続ける担体26が発生しやすい。そこで、
図10の例では、担体26を捕捉する処理の後、捕捉が解除された担体26を流体24の界面23によって移動させる。捕捉が解除された担体26を流体24の界面23によって移動させることにより、流路201中で滞留しやすい捕捉解除後の担体26が滞留した場合でも、流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0108】
図10において、担体26は、たとえば磁性粒子26aである。磁性粒子26aを用いる場合、担体26を捕捉する処理では、流路201中の磁性粒子26aを磁力によって捕捉する。磁力による磁性粒子26aの捕捉は、流路201の外部に配置した磁石640によって、流路201の外部から磁性粒子26aに磁力を作用させることにより行う。そのため、磁性粒子26aは、磁力によって流路201の内壁面11に集められ、凝集や付着が発生しやすい。そのため、好ましくは、磁力によって捕捉した後、磁力による捕捉が解除された磁性粒子26aを流体24の界面23によって移動させる。これにより、磁力によって流路201の内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが内壁面11に付着した場合でも、流体24の界面23によって内壁面11から移動させることができる。その結果、内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0109】
〈流路〉
検体処理チップ100の流路201は、検体処理チップ100の入口部分から注入された液体を流すことができればどのような構造であってもよい。流路201は、その流路内で行う処理に応じた形状を有する。流路201は、その流路内で行う処理に応じた流路幅、流路高さあるいは流路深さ、流路長さ、容積を有するように形成される。流路201は、たとえば細長い管状の通路あるいはチャネルにより構成される。チャネルは、直線状、曲線状、ジグザグ形状などの形状とすることができる。流路201は、たとえば流路幅や高さなどの流路寸法が変化する形状(
図11参照)、流路の一部または全部が平面状に拡がる形状(
図34参照)、流入する液体を貯留可能なチャンバ形状(図示せず)などであってもよい。
【0110】
図11に示すように、流路201は、たとえば、一端側に設けられる接続部12と、対象成分20の処理を行うためのチャネル202と、他端側に設けられる接続部14とを有する。接続部12、チャネル202および接続部14の数は、いくつでもよい。
【0111】
たとえば、接続部12は、液体を流入させるための流入口である。粒子22および処理液体21は、接続部12からチャネル202内へ流入する。チャネル202において、粒子22が有する対象成分20の処理が行われる。処理を終えた粒子22および処理液体21は、チャネル202から接続部14に流入する。粒子22および処理液体21は、接続部14を介して、次の処理を行うための別の流路201や、検体処理チップ100の外部に送り出される。
【0112】
流体24も同様に、接続部12を介してチャネル202内に流入し、チャネル202内で界面23を形成する。流体24の界面23が接続部14側に移動されることにより、チャネル202内で滞留した粒子22は接続部14側へ搬送される。
【0113】
このように、粒子22および処理液体21は、接続部12が設けられた流路201の一端側から、接続部14が設けられた流路201の他端側へ向かう方向に流れる。この構成によれば、粒子22および処理液体21を流路201の一端側から他端側に向けて流せばよく、往復させる必要がない。そのため、流体24も流路201の一端側から導入して他端側に向けて移動させるだけでよいので、粒子22の搬送を容易に行うことができる。
【0114】
チャネル202は、たとえば、接続部12または接続部14における流路幅W2より大きい流路幅W1を有する。つまり、チャネル202は、流路201内で相対的に流路幅が大きい幅広形状を有する。この構成によれば、粒子22をチャネル202に幅広く分布させて処理液体21と接触させることができるので、対象成分20の処理を効率的に行うことができる。
【0115】
この場合、チャネル202内に導入された流体24は、チャネル202の流路幅に合わせて形状が変化する。チャネル202内に十分な量の流体24が導入されれば、チャネル202の流路断面の全体にわたる界面23が形成される。このように、流体24は流路201の断面形状に合わせて形状を変化させることができるので、チャネル202内で粒子22が滞留した場合でも、界面23によって効率よく搬送することができる。
【0116】
また、
図12に示すように、たとえば、チャネル202の断面は、高さ方向寸法H1よりも幅方向寸法W1が大きい。すなわち、幅方向に大きい扁平なチャネル202が構成される。これにより、粒子22をチャネル202に平面的に分布させて処理液体21と効率的に接触させることができるので、対象成分20の処理を効率的に行うことができる。この場合でも、流体24は流路201の断面形状に合わせて形状を変化させることができるので、チャネル202内で粒子22が滞留した場合でも、界面23によって効率よく搬送することができる。
【0117】
たとえば、チャネル202は、断面積Acが0.01μm
2以上10mm
2以下である。なお、「チャネル202の断面積」とは、チャネル202内の液体の流通方向に直交する断面における断面積である。チャネル202の断面積Acが小さい流路201では、流路抵抗が大きく流体の粘性の影響も大きくなるため、流体の流速を上げにくい。そのため、粒子22の滞留も生じ易い。また、流路201中を流す液量が少なく対象成分20の総量も多くないため、流路201内での粒子22の残留が最終的なサンプルの回収率を低下させる要因となる。そのため、界面23の移動によって粒子22の残留を抑制可能な本実施形態の検体処理方法は、このような大きさの流路201を用いる場合に有効である。
【0118】
流路201は、たとえば、樹脂やガラスなどにより形成されたブロック体に流路201が形成された流体モジュールの一部として構成される。流路201あるいは流体モジュールを構成する材料は、その流路201において実施される処理に適したものを採用するのが好ましい。たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)は疎水性を有する材料として好ましい。ポリカーボネート(PC)は耐熱性を有する材料として好ましい。ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)などは、耐薬品性を有する材料として好ましい。シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)は、自家蛍光の低い材料として、蛍光検出等に用いるのに好ましい。ガラス、ポリカーボネートなどは、親水性が高いか、親水処理が容易である点で好ましい。
【0119】
流路201内の流体の流れは、層流と乱流とに大別される。本実施形態では、たとえば、対象成分20の処理を行う際、流路201内の流れを層流とする。層流の流れでは、乱流のように流路201内で液体が攪拌する不規則な流れが生じず、流路201の内壁面11に近付くほど流速が小さくなる。そのため、層流の流れ中は、粒子22が流路201中に滞留し易い状況にあるといえる。そのため、界面23の移動によって粒子22の残留を抑制可能な本実施形態の検体処理方法は、このような層流の流れ中で対象成分20の処理を行う場合に有効である。
【0120】
流路201内の流れは、レイノルズ数Reによって表すことができる。レイノルズ数Reは、下式(1)により定義される。
Re=V×d/ν ・・・(1)
ここで、V[m/s]は、流路201内の流れの平均速度、d[m]は流路201の内径、ν[m
2/s]は流体の動粘性係数である。
一般に、レイノルズ数Reが2300以下の場合に層流になるとされる。また、レイノルズ数が小さいほど、流路201の内径および流速が共に小さい傾向にある。レイノルズ数が小さいほど、粒子22が流路201中に滞留し易い傾向がある。したがって、界面23の移動によって粒子22の残留を抑制可能な本実施形態の検体処理方法は、このようにレイノルズ数が小さい流れ中で対象成分20の処理を行う場合に有効であり、特にレイノルズ数が小さくなるほど粒子22が残留しやすくなるため効果的である。
【0121】
たとえば、対象成分20の処理を行う際、流路201内の流れのレイノルズ数が2000以下である。好ましくは、対象成分20の処理を行う際、流路201内の流れのレイノルズ数が100以下である。より好ましくは、対象成分20の処理を行う際、流路201内の流れのレイノルズ数が10以下である。
【0122】
流路201内に流体24を流す際には、たとえば、流体24は、0.1μL/min以上5mL/min以下の流量で流路201に導入される。流量は、この範囲内で一定でもよいし、変動してもよい。ここで、0.1μL/min以上5mL/min以下の流量は、マイクロ流路において用いられる微小な流量である。このように本実施形態の検体処理方法は、流路201の寸法に比べて流体24の流量を特別大きくしなくても、界面23の移動によって粒子22の残留を効果的に抑制することができる。
【0123】
図13は、別の検体処理方法を示す。
図13では、粒子22が液滴25である。流路201内の処理液体21中に、内部に対象成分20を有する液滴25が存在する。液滴25は、処理液体21との間に形成された液滴界面25aによって対象成分20を内部に包含した状態で、処理液体21中に存在する。液滴25中は、対象成分20を含有し、かつ、処理液体21との間で液滴界面25aを形成する混合液によって満たされる。
図13では、流路201で対象成分20の処理を行わなくてもよい。流路201は、たとえば単なる液体輸送用の流路であってよい。
【0124】
図13の例では、処理液体21との間で、液滴25を構成する液滴界面25aとは異なる界面23を形成するための流体24を、内部に対象成分20を包含する液滴25を含む処理液体21を含んだ流路201に、導入し、流路201の内壁面11と接触する界面23を形成する。そして、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、処理液体21中に存在する液滴25を流路201に沿って搬送する。
【0125】
たとえば、液滴25は、対象成分20や各種試薬を含んだ水相の液体から構成され、オイルなどの油相の処理液体21中に液滴界面25aを形成して分散する。流体24は、たとえば空気などの気相であり、液滴界面25aとは異なる界面23を処理液体21との間で形成する。
【0126】
これにより、処理液体21中に分散した液滴25が流路201内に滞留した場合にも、流体24を導入して、液滴界面25aとは別の界面23を内壁面11と接触するように流路201内に形成することができる。そして、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、流路201内の処理液体21中に滞留する液滴25を、移動する界面23によって処理液体21ごと押し出すように搬送することができる。その結果、対象成分20の処理を実行するための流路201を備えた検体処理チップ100において、対象成分20を有する液滴25が流路201内に残留するのを抑制することができる。
【0127】
図14は、他の検体処理方法を示す。
図14では、粒子22が固体状の担体26である。担体26は、表面に対象成分20が結合している。対象成分20との結合方法は問わない。
図14では、流路201で対象成分20の処理を行わなくてもよい。流路201は、たとえば単なる液体輸送用の流路であってよい。
【0128】
担体26は、たとえば、免疫測定で用いられる公知の粒子である。粒子は、例えば、磁性粒子、ラテックス粒子、ゼラチン粒子などが挙げられる。担体26として磁性粒子を用いるのが好ましい。磁性粒子としては、磁性を有する材料を基材として含み、通常の免疫測定に用いられる粒子であればよい。例えば、基材としてFe
2O
3および/またはFe
3O
4、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを用いた磁性粒子が利用できる。担体26は、対象成分20と結合するための結合物質がコーティングされていてよい。
【0129】
担体26は、処理液体21中に存在する。流路201内では、担体26が凝集して内壁面11の近くに凝集したりする場合がある。
【0130】
図14の例では、処理液体21との間で界面23を形成するための流体24を流路201に導入し、流路201の内壁面11と接触する界面23を形成し、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、処理液体21中で対象成分20と結合した担体26を流路201に沿って搬送する。
【0131】
これにより、処理液体21中に存在する担体26が流路201内に滞留した場合にも、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、流路201内の処理液体21中に滞留する担体26を、移動する界面23によって処理液体21ごと押し出すように搬送することができる。その結果、対象成分20の処理を実行するための流路201を備えた検体処理チップ100において、対象成分20を有する担体26が流路201内に残留するのを抑制することができる。
【0132】
担体26が磁性粒子26aである場合、磁力によって磁性粒子26aを捕捉してもよい。すなわち、流路201中の磁性粒子26aを、磁力によって捕捉したの後、磁力による捕捉が解除された磁性粒子26aを流体24の界面23によって移動させる。磁力によって流路201の内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが内壁面11に付着した場合でも、流体24の界面23によって内壁面11から移動させることができる。その結果、内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0133】
[検体処理チップの構成例]
図15は、本実施形態の検体処理チップ100の構成例を示す。基板300上には、機能が異なる複数種類の流体モジュール200が設置される。
図15の例では、対象成分20を含む検体や試薬等が、流体モジュール200a、200b、200cを順次流れることにより、複数種類の流体モジュールの組み合わせに対応したアッセイが実行される。流体モジュール200a、200b、200cは、それぞれ、異なる種類の流体モジュールである。基板300に設置する流体モジュール200の組み合わせを変更することにより、組み合わせに応じた様々なアッセイが実施可能である。基板300に設置する流体モジュール200の数に制限はない。流体モジュール200の形状が種類毎に異なっていてもよい。
【0134】
図16は、基板300の構成例を示す。基板300は、複数の基板流路310を有する。基板300は、平板形状を有し、主表面である第1面301および第2面302を有する。第2面302は、第1面301とは反対の面である。たとえば、基板300は樹脂またはガラスにより形成されている。
【0135】
基板300の厚さdは、たとえば、1mm以上5mm以下である。これにより、流体モジュール200に形成される流路201の流路高さ(およそ10μm〜500μmのオーダー)と比較して、基板300を十分大きな厚みを有するように形成できる。その結果、容易に、基板300に十分な耐圧力性能を確保できる。
【0136】
基板流路310は、たとえば、基板300を厚み方向に貫通する貫通孔である。基板流路310は、流体モジュール200の流路201と接続される他、検体処理チップ100内に液体や試薬を供給するためのポート110(
図19参照)や、検体処理チップ100内から液体を回収するためのポート120(
図19参照)として機能できる。
【0137】
図16の例では、基板300は、4行×6列の基板流路310を2組有する。基板300に設けられる基板流路310の個数および組数は、
図16の例に限定されない。
【0138】
基板流路310は、たとえば、所定のピッチで配置される。
図16の例では、各基板流路310は、縦方向のピッチV、横方向のピッチHで配列されている。この場合、流体モジュール200を、基板300上にピッチ単位の任意の位置に配置して、流路201を任意の基板流路310に接続できる。基板流路310は、基板300上に配置される各種流体モジュール200と接続するために必要な位置にのみ形成されていてもよい。
【0139】
図17は、流体モジュール200の構成例を示す。接続部203は、基板300の基板流路310のピッチと一致するように、流体モジュール200上に配置される。すなわち、接続部203は、基板300の基板流路310のピッチVおよびHの整数倍のピッチで、流体モジュール200上に配置される。チャネル202は、所定のピッチで配置された接続部203の間を接続するように配置される。所定のピッチで配置された接続部203と、チャネル202とが、流体モジュール200に複数組配置されてもよい。
【0140】
各流体モジュール200a〜200cは、それぞれ異なる流路形状を有してよい。各流体モジュール200は、第1面301のみならず第2面302にも配置されてよいし、第2面302のみに配置されてもよい。
【0141】
図18の構成例では、検体処理チップ100は、流体モジュール220をさらに備える。流体モジュール220は、流体モジュール200が配置される基板300の第1面301とは反対の第2面302に配置されている。流体モジュール220は、流路221を備え、流体モジュール200同士を接続する機能を有する接続モジュールである。ここでは、流体モジュール220を接続モジュールと呼ぶ。接続モジュール220には、対象成分20の処理工程を実施するための流路が設けられていない。接続モジュール220に相当する流路構造を基板300に形成してもよい。
【0142】
各流体モジュール200(接続モジュール220を含む)は、たとえば、基板300と固相接合により接続される。固相接合は、たとえば、接合面をプラズマ処理してOH基を形成し、接合面同士を水素結合により接合する方法や、真空圧接などの方法を採用することができる。固相接合により、流体モジュール200と基板300とを強固に接合できる。流体モジュール200は、接着剤等によって基板300と接続されてもよい。
【0143】
図18の例では、基板300の基板流路310aが、液体を注入するためのポート110として機能する。基板流路310fが、液体を回収するためのポート120として機能する。ポート110およびポート120は、いくつ設けられてもよい。
【0144】
検体、処理液体21や流体24は、コネクタ400等の冶具を介して基板流路310に注入される。コネクタ400等の冶具は、基板流路310のうち、流路201側の端部とは反対側の端部に接続される。コネクタ400にプラグ401を挿入することで、任意の基板流路310を封止できる。
【0145】
[検体処理装置の構成例]
図19は、検体処理装置500の概略を示す。
【0146】
検体処理装置500は、検体処理チップ100を用いて、検体中の対象成分20を処理するための検体処理装置である。検体処理の内容は、使用する検体処理チップ100により決まる。検体処理装置500は、使用する検体処理チップ100の種類によって異なる種類の検体処理を行うことが可能である。
【0147】
検体処理装置500は、流路201が形成された検体処理チップ100が設置される設置部510と、導入部520と、導入部520を制御する制御部530とを備える。
【0148】
設置部510は、検体処理チップ100に対応させた形状に形成され、検体処理チップ100を支持する。設置部510は、検体処理チップ100の流路201との接続や、検体処理チップ100内での各種処理工程に用いる処理ユニットを設置するため、検体処理チップ100の上方および下方の少なくとも一方を開放するような構造を有する。設置部510は、たとえば検体処理チップ100を収容できる凹状あるいは枠状の構造とすることができる。
【0149】
導入部520は、検体処理に用いる液体や気体を導入する機能を有する。導入部520は、検体処理チップ100の流路201に、処理液体21との間で界面23を形成する流体24を導入する。
図19の例では、導入部520は、対象成分20、および対象成分20の処理に用いる処理液体21を流路201に導入する。導入部520が導入する代わりに、対象成分20や処理液体21が予め検体処理チップ100内に収容されていてもよい。
【0150】
また、導入部520は、陽圧の供給によって検体処理チップ100内の液体を工程の順序に従って進めたり、検体処理チップ100内から液体や気体を排出させたりできる。導入部520は、陰圧の供給によって検体処理チップ100の液体や気体を移送したり、排出させたりしてもよい。
【0151】
制御部530は、検体処理チップ100の流路201内に対象成分20を含む検体や処理液体21を供給し、対象成分20の処理が実施されるように導入部520を制御する。
【0152】
各種処理工程に用いる処理ユニットが検体処理装置500に設置される場合、制御部530がそれらの処理ユニットを制御してもよい。各種処理工程に用いるユニットは、たとえば、液体の温度を制御するヒーターユニットまたは冷却ユニット、液体に磁力を作用させる磁石ユニット、液体の撮像を行うカメラユニット、液体中の検体や標識の検出を行う検出ユニットなどである。これらの処理ユニットは、複数の流体モジュール200の少なくともいずれかに対応して設けられ、対応する流体モジュール200により処理工程を実施する際に作動するように構成される。
【0153】
本実施形態では、導入部520は、流路201の内壁面11と接触する界面23を、対象成分20を有する粒子22を含む処理液体21と流路201に導入された流体24との間に形成し、形成された界面23を内壁面11に接触させた状態で流路201に沿って移動させることにより、処理液体21中に滞留する粒子22を、導入された流体24によって押し出す。すなわち、導入部520は、
図2に示したように流路201内に流体24の界面23を形成し、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、粒子22を流路201に沿って搬送する制御を行う。
【0154】
これにより、流路201内で対象成分20の処理に伴って対象成分20を有する粒子22が流路201内に滞留した場合にも、流体24を導入して、流路201中に内壁面11と接触する界面23を処理液体21との間に形成できる。そして、形成された界面23を流路201に沿って移動させることにより、流路201中に滞留する粒子22を、移動する界面23によって処理液体21ごと押し出すように搬送することができる。その結果、対象成分20の処理を実行するための流路201を備えた検体処理チップ100において、対象成分20を有する粒子22が流路201内に残留するのを抑制することができる。
【0155】
図2の例に示したように、導入部520は、たとえば、処理液体21中に滞留する粒子22を、導入された流体24によって検体処理チップ100の外に押し出す。これにより、界面23から下流側の処理液体21を滞留した粒子22とともに検体処理チップ100の外に押し出すことができるので、たとえば流路201中に多量の処理液体21を流通させて滞留した粒子22を押し出す場合と比較して、検体処理チップ100からのサンプル回収量が増大するのを抑制しつつ、多数の粒子22を回収できる。
【0156】
導入部520は、界面23を流路201に沿って移動させることにより、流路201の内壁面11に滞留する粒子22を内壁面11から移動させて流路201に沿って搬送する。これにより、流路201の内壁面11に滞留する粒子22を、接近する界面23によって内壁面11から押し出すように移動させることができる。その結果、特に流速が低く搬送しにくい流路201の内壁面11に粒子22が滞留する場合でも、粒子22が流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0157】
また、導入部520は、
図3に示したように、界面23を流路201に沿って移動させ、内壁面11に滞留する粒子22と、移動する界面23とを接触させてもよい。これにより、粒子22が流路201の内壁面11に付着する場合でも、移動する界面23との接触によって、内壁面11から粒子22をはぎ取るように外力を作用させることができる。その結果、流路201の内壁面11に粒子22が付着する場合でも、粒子22が流路201内に残留するのをより一層効果的に抑制することができる。
【0158】
検体処理装置500の構成例を
図20に示す。
図20の構成例では、導入部520は、流路201内に圧力を供給するポンプ521と、流路201内への圧力の供給経路を開閉するための複数のバルブ522と、を含む。また、導入部520は、検体処理チップ100に注入する液体を収容するための液体リザーバー523と、検体保持部524とを含む。また、導入部520は、検体処理チップ内を流れる液体のフローレートを計測する流量センサ525を備える。
【0159】
ポンプ521、液体リザーバー523、バルブ522および流量センサ525は、送液管526により順番に接続されている。検体処理装置500は、ポンプ521、液体リザーバー523及びバルブ522によって、コネクタ400を介して、検体処理チップ100への液体注入や検体処理チップ100からの液体回収を行う。
図20の例では、一組のポンプ521、液体リザーバー523およびバルブ522が、所定のコネクタ400に対応する。少なくとも1つの液体リザーバー523は、検体を保持する検体保持部524として構成される。
【0160】
検体保持部524として構成される液体リザーバー523は、検体処理チップ100に設けてもよい。この場合、検体が注入されるポート110上に筒状の液体リザーバーが設けられる。検体処理チップ100から対象成分20の処理後のサンプルを回収するための液体リザーバー523が、液体を回収するためのポート120上に設けられてもよい。
【0161】
1つのポンプ521に対して、複数の液体リザーバー523および複数のバルブ522を接続してもよい。バルブ522によって経路切替を行うことにより、共通のポンプ521で複数の液体や試薬を検体処理チップ100に供給できる。
【0162】
ポンプ521は、液体リザーバー523や検体保持部524に、圧力を付与する。ポンプ521が陽圧を付与することで、液体リザーバー523から液体が送出される。ポンプ521が陰圧を付与することで、検体処理チップ100から液体リザーバー523に液体が流入する。ポンプ521は、たとえば、空気圧を供給するプレッシャーポンプである。この他、ポンプ521として、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプなどが採用できる。
【0163】
流体24として液体を用いる構成では、液体リザーバー523のうちの少なくとも1つが、流体24を貯留する。
【0164】
流体24として気体を用いる構成では、気体を密封した気体リザーバー(図示せず)を設けてもよい。流体24として空気を用いる構成では、導入部520は、ポンプ521とバルブ522との間、およびバルブ522と検体処理チップ100との間に空気を流通させるためのエア経路527を有する。空気自体は検体処理装置500の設置環境の雰囲気から入手できる。
【0165】
ポンプ521は、エア経路527を介して検体処理チップ100に圧力を付与することにより、流路201に流体24である空気を流入させることができる。これにより、流体24を空気とすることにより、様々な処理液体21に対して容易に界面23を形成することができる。また、液体の流体24を用いる場合と異なり、流路201内の液量が増加しないので、対象成分20を含んだ粒子22が最終的に回収される際のサンプル回収量が増加するのを抑制することができる。さらに、空気以外の特定のガスを流体24に用いる場合と異なり、流体24としての空気を容易に入手し、エア経路527を介して流路201内に導入することができる。
【0166】
制御部530は、導入部520のそれぞれのバルブ522の開閉を制御することにより、圧力により検体処理チップ100内に液体や気体を輸送させる。制御部530は、たとえば、検体処理チップ100内に液体を注入してからの経過時間または検体処理チップ100内への液体や気体の注入量に基づいて、バルブ522を開くタイミングを制御する。
【0167】
複数のバルブ522のうち少なくとも1つは、流体24を流路201内に導入するためのバルブ31として機能する。バルブ522のうち少なくとも1つは、粒子22を流路201内に導入するためのバルブ32として機能する。バルブ522のうち少なくとも1つは、処理液体21を流路201内に導入するためのバルブ33として機能する。
【0168】
また、導入部520は、バルブ31を開閉することにより、流路201内に導入した処理液体21と流体24との間に界面23を形成させ、圧力により界面23を移動させる。バルブ31の開閉により、容易に流体24の界面23を形成できる。また、ポンプ521の圧力、バルブ31の開放時間や開閉の回数を制御することにより、流体24の導入量や、形成する界面23の数を制御することができるので、流路形状や粒子22に応じて適切な界面形成を行うことができる。
【0169】
たとえば、導入部520は、処理液体21を導入するためのバルブ33の開閉と、流体24を導入するためのバルブ31の開閉とを交互に行い、流路201内で処理液体21の流れの間に流体24を導入し、両端にそれぞれ界面23を有する流体24の充填領域28(
図4参照)を処理液体21の間に形成する。これにより、処理液体21の流れの途中に流体24を導入するだけで、各処理液体21との間に2つの界面23を形成することができる。流体24の充填領域28を処理液体21と共に移動させることにより、移動方向の1つ目の界面23では搬送しきれなかった粒子22を、2つ目の界面23により搬送できるようになる。そのため、界面23による搬送効率を向上させることができる。また、各バルブ522(31、33)の開閉を交互に行うだけの簡単な制御により、容易に流体24の充填領域28を流路201内に形成することができる。
【0170】
制御部530は、各ポンプ521の動作を個別に制御できる。制御部530は、各ポンプ521を個別に制御することで、検体処理チップ100に搭載された流体モジュール200の組み合わせに応じた送液制御が可能となる。
【0171】
図20の構成では流量センサ525は、送液管526を流れる液体や気体のフローレート(単位の例:μL/min)を検出する。流量センサ525は、フローレートの検出結果をポンプ521にフィードバックする。ポンプ521は、流量センサ525からのフィードバックに応じて、圧力を制御する。流量センサ525は、制御部530にフィードバックしてもよい。制御部530は、流量センサ525により計測されたフローレートに基づいて、液体を移送するための導入部520の圧力を制御する。
【0172】
コネクタ400は、送液管526と接続している。検体等の液体は、コネクタ400を介して、検体処理チップ100に送液される。また、検体処理チップ100から、コネクタ400を介して、液体が回収される。
【0173】
検体処理チップ100は、設置部510にセットされる。たとえば、検体処理チップ100は基板300の第2面302が上側になるように保持され、基板流路310の第2面302側の端部とコネクタ400とが接続される。
【0174】
検体処理チップ100は、設置部510に設置するための固定器具450を備えてもよい。固定器具450は、設置部510から分離できてもよいし、設置部510に固定されていてもよい。
【0175】
この他、検体処理装置500は、モニタ531、入力部532、および、読取部533などを備えることができる。モニタ531には、制御部530により、検体処理装置500の動作に応じた所定の表示画面が表示される。検体処理装置500が外部のコンピュータ(図示せず)と接続され、コンピュータのモニタ上に画面表示をしてもよい。入力部532は、たとえばキーボードなどからなり、情報入力を受け付ける機能を有する。読取部533は、たとえばバーコードや2次元コードなどのコードリーダ、RFIDタグなどのタグリーダからなり、検体処理チップ100に付与された情報を読み取る機能を有する。読取部533は、対象成分を含んだ検体を収容する検体容器(図示せず)などの情報も読み取り可能である。
【0176】
(バルブの構成例)
図21は、バルブ522(31、32、33)の構成例を示す。バルブ522は、たとえば、電磁バルブである。バルブ522は、弁601、コイル602、プランジャ603を備える。弁601が送液管526を開閉する。バルブ522は、
図20の例のように、検体処理装置500に複数配置されている。制御部530は、各バルブ522の開閉を個別に制御できる。
【0177】
(液体リザーバーおよび検体保持部の構成例)
図22は、液体リザーバー523および検体保持部524の構成例を示す。
【0178】
検体や試薬等の液体容器611は、液体リザーバー523および検体保持部524内の容器設置部612に配置される。
図22のように、容器設置部612が複数配置されてもよいし、容器設置部612は単一であってもよい。
【0179】
容器設置部612の蓋613に設けられた送液管526は、バルブ522を介して、検体処理チップ100と接続される。液体リザーバー523内の圧力を高めてバルブ522を開放すれば、容器611内の液体が検体処理チップ100側に供給される。
【0180】
(設置部の蓋の構成例)
設置部510には、設置部510に対応する蓋621を設けてもよい。
図23は、設置部510の蓋621の構成例を示す。蓋621は、設置部510にセットされる検体処理チップ100を覆うように設けられる。
【0181】
蓋621は、ヒンジ622により検体処理装置本体501と接続される。蓋621は、ヒンジ622の回転により開閉される。蓋621は、コネクタ400を含んでもよい。設置部510の蓋621を閉じるだけで、設置部510に設置された検体処理チップ100とコネクタ400とが接続される。蓋621は、検体処理装置本体501に対して着脱可能であってもよい。この場合ヒンジ622は設けなくてよい。
【0182】
(コネクタの構成例)
図24は、コネクタ400の構成例を示す。コネクタ400は、蓋621に設けられている。コネクタ400は、基板300の基板流路310にアクセスするための穴402を有する。コネクタ400は、基板300の基板流路310に対応する位置に設置される。コネクタ400は、任意の基板流路310に対応する位置にのみ設置されてもよい。コネクタ400は、複数の送液管526およびエア経路527が形成されたマニホールドとして構成されてもよい。この場合、蓋621を閉じることにより、各送液管526およびエア経路527と、検体処理チップ100のすべてのポート110および120とが、コネクタ400を介して一括で接続される。
【0183】
検体や試薬等の液体は、穴402を介して、送液管526から検体処理チップ100に注入される。検体処理チップ100を流れる液体は、穴402を介して、検体処理チップ100から回収される。コネクタ400は、検体処理チップ100との接触面にガスケット403などの液漏れや異物混入を抑止するシール材を有する。
【0184】
〈固定器具の構成例〉
図25〜
図27は、検体処理チップ100を検体処理装置500に設置するために用いる固定器具450の例を示す。
【0185】
図25に示すように、検体処理チップ100は、たとえば、固定器具451および452によって固定される。固定器具451と452とは、嵌合部材453によって固定される。位置決め部454により、検体処理チップ100と固定器具451および452との相対位置が決まる。検体処理チップ100が、
図26のように、固定器具で固定される。
【0186】
図27(A)に示されるように、固定器具452は、基板300に対応する箇所に貫通穴からなる開口部455を有する。検体処理装置500のコネクタ400などは、開口部455を介して基板300に上方からアクセス可能である。また、
図27(B)に示されるように、固定器具451は、基板300および流体モジュール200に対応する箇所に貫通穴からなる開口部456を有しており、開口部456を介して基板300および流体モジュール200に下方からアクセス可能である。
【0187】
固定器具452を設置部510の蓋621に固定してもよい。固定器具451および452は、検体処理装置500に設けられる各種処理ユニットを配置するための取付穴457を有していてもよい。
【0188】
(各種処理ユニットの設置例)
図28〜
図30は、検体処理装置500の各種処理工程に用いる処理ユニットの設置例を示す。
【0189】
たとえば、流体モジュール200内の液体を加温するためのヒーターユニット(ヒーター541)、流体モジュール200内の液体に磁力を作用させるための磁石ユニット542(
図30参照)、流体モジュール200内の液体を冷却するための冷却ユニット(図示せず)、検体処理チップ100内で対象成分の検出を行うための検出ユニット(検出部544、
図29参照)、流体モジュール200内の液体の流れを撮影するためのカメラユニット(図示せず)などが、取付穴457を介して固定器具451または452に取り付けられる。コネクタ400を固定器具451または452に取り付けてもよい。ユニットは、これらのうち複数の機能を備えた複合型のユニットであってもよい。たとえば、液体を加温する機能と、液体に磁力を作用させる機能とを備えたユニットが用いられてもよい。
【0190】
〈ヒーターユニット〉
図28は、検体処理装置500におけるヒーター541の配置例を示す。
【0191】
ヒーター541は、検体処理チップ100の温度を調整する。たとえば、流体モジュール200内でDNAをPCRにより増幅するために、ヒーター541が検体処理チップ100を加温する。
【0192】
ヒーター541は、設置部510に設けられる。たとえば、ヒーター541は、検体処理チップ100の下面側の固定器具451に取り付けられる。ヒーター541は、設置部510に設置された検体処理チップ100の下面側から、検体処理チップ100の温度を調節する。ヒーター541は、蓋621または上面側の固定器具452に取り付けられてもよい。ヒーター541は、温度調節の対象となる流体モジュール200に対応する位置に配置される。ヒーター541は、移動可能であってもよい。
【0193】
〈検出ユニット〉
図29は、検体処理装置500の検出部544の構成例を示す。
【0194】
検出部544は、たとえば、対象成分に結合した標識物質の蛍光を検出する。検出部544は、たとえば、フォトマルチプライヤーである。検出部544は、たとえば、検体処理チップ100の上面側の固定器具452に取り付けられる。検出部544を蓋621に設けてもよい。検出部544は、検体処理チップ100に接続されたコネクタ400の間から蛍光を検出する。検出部544は、検体処理チップ100の下面側の固定器具451や、検体処理装置本体501に設けられてもよい。この場合、検出部544は、検体処理チップ100の下面側から蛍光を検出する。
【0195】
〈磁石ユニット〉
図30は、検体処理チップ100内の液体中に含まれる磁性粒子26aの制御に用いられる磁石ユニット542の構成例を示す。
【0196】
磁石ユニット542は、たとえば、検体処理チップ100の下面側の固定器具451に取り付けられる。磁石ユニット542は、検体処理装置本体501に設けられてもよい。磁石ユニット542は、蓋621または上面側の固定器具452に取り付けられてもよい。磁石ユニット542は、磁石640を含む。磁石640は、検体処理チップ100内の液体に含まれる磁性粒子26aに磁力を印加する。磁石ユニット542は、たとえば、検体処理チップ100の長手方向に磁石640を移動可能である。
【0197】
図10に示したように、たとえば、対象成分20が核酸であり、粒子22は核酸が結合した磁性粒子26aである場合に、磁石ユニット542は、流路201中で磁性粒子26aを磁力によって捕捉する。流路201中で磁性粒子26aを磁力によって捕捉すると、磁性粒子26aが1箇所に集められるため、磁性粒子26aが凝集しやすい。また、磁性粒子26aが磁力によって流路201の内壁面11に押圧されるので、磁性粒子26aが内壁面11に滞留しやすい。
【0198】
そこで、検体処理装置500は、流路201中の核酸が結合した磁性粒子26aを磁力によって捕捉した後、捕捉が解除された磁性粒子26aを流体24の界面23によって移動させる制御を行う。これにより、磁力によって流路201の内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが内壁面11に付着した場合でも、流体24の界面23によって内壁面11から移動させることができる。その結果、内壁面11に捕捉された磁性粒子26aが流路201内に残留するのを効果的に抑制することができる。
【0199】
図示は省略するが、カメラユニットや冷却ユニットについても同様である。
【0200】
[検体処理チップを用いたアッセイの例]
次に、検体処理チップ100を用いた具体的なアッセイの例を説明する。
【0201】
(エマルジョンPCRアッセイ)
上述の検体処理チップ100を用いてエマルジョンPCRアッセイを実施する例を説明する。
【0202】
図31は、エマルジョンPCRアッセイのフローの例を示す。
図32は、エマルジョンPCRアッセイにおける反応の進行過程を説明する図である。
【0203】
ステップS1において、前処理により、血液等の試料からDNAが抽出される(
図32(A)参照)。前処理は、専用の核酸抽出装置を用いて行ってもよいし、検体処理装置500に前処理機構を設けてもよい。
【0204】
ステップS2において、抽出されたDNAは、Pre−PCR処理によって増幅される(
図32(A)参照)。Pre−PCR処理は、前処理後の抽出液に含まれるDNAを、後続するエマルジョン作成処理が可能となる程度に予備増幅する処理である。Pre−PCR処理では、抽出されたDNAと、ポリメラーゼやプライマーを含むPCR増幅用の試薬とが混合され、サーマルサイクラによる温度制御によって、混合液中のDNAが増幅される。サーマルサイクラは、混合液に対して、複数の異なる温度に変化させる1つのサイクルを複数回繰り返すサーマルサイクル処理を行う。
【0205】
ステップS3は、対象成分である核酸(DNA)と、核酸の増幅反応のための試薬と、核酸の担体との混合液を含む液滴を分散媒体中に形成するエマルジョン形成工程である。核酸の増幅反応のための試薬は、DNAポリメラーゼなどのPCRに必要な物質を含んでいる。ステップS3において、磁性粒子やポリメラーゼ等を含む試薬とDNAとを包含するエマルジョンが形成される(
図32(B)参照)。エマルジョンとは、分散媒体中に、分散媒体とは混合しない液体が分散した分散系溶液のことである。つまり、ステップS3では、磁性粒子やポリメラーゼ等を含む試薬とDNAとの混合液を内部に含む液滴が形成され、多数の液滴が分散媒体中に分散される。液滴内に閉じ込められる磁性粒子は、表面に核酸増幅用のプライマーが付与されている。液滴は、磁性粒子とターゲットDNA分子とが液滴内にそれぞれ1個程度含まれるように形成される。分散媒体は混合液に対して非混和性を有する。この例では、混合液は水系であり、分散媒体は油系である。分散媒体は、たとえば、オイルである。
【0206】
ステップS4は、エマルジョン形成工程により形成された液滴中の核酸(DNA)を増幅するエマルジョンPCR工程である。ステップS4において、サーマルサイクラによる温度制御によって、エマルジョンの各液滴内で、DNAが磁性粒子上のプライマーと結合し、増幅される(エマルジョンPCR)(
図32(C)参照)。これにより、個々の液滴内で、ターゲットDNA分子が増幅する。すなわち、各液滴内で核酸の増幅産物が形成される。増幅された核酸は、液滴内でプライマーを介して担体に結合する。
【0207】
ステップS5は、エマルジョンPCR工程による核酸(DNA)の増幅産物を担持した担体(磁性粒子)を含む液滴を破壊するエマルジョンブレーク工程である。すなわち、ステップS4において磁性粒子上でDNAを増幅後、ステップS5において、エマルジョンが破壊され、増幅されたDNAを含む磁性粒子が液滴から取り出される(エマルジョンブレーク)。エマルジョンの破壊には、アルコールや界面活性剤などを含む1または複数種類のエマルジョン破壊試薬が用いられる。
【0208】
ステップS6は、エマルジョンブレーク工程における破壊により液滴から取り出された担体(磁性粒子)を集める洗浄工程である。ステップS6において、液滴から取り出された磁性粒子は、BF分離工程により洗浄される(1次洗浄)。BF分離工程は、増幅されたDNAを含む磁性粒子を磁力によって集磁した状態で洗浄液中を通過させることにより、磁性粒子に付着した不要な物質を除去する処理工程である。1次洗浄工程では、たとえば、アルコールを含む洗浄液が用いられる。アルコールは、磁性粒子上の油膜を除去し、かつ、増幅された二本鎖DNAを一本鎖に変性させる。
【0209】
ステップS7は、洗浄工程により集められた担体(磁性粒子)上の増幅産物と標識物質とを反応させるハイブリダイゼーション工程である。洗浄後、ステップS7において、磁性粒子上で一本鎖に変性したDNAが、検出用の標識物質とハイブリダイズされる(ハイブリダイゼーション)(
図32(D)参照)。標識物質は、たとえば、蛍光を発する物質を含む。標識物質は、検出対象のDNAに特異的に結合するように設計されている。
【0210】
ステップS8において、標識物質と結合した磁性粒子は、BF分離工程により洗浄される(2次洗浄)。2次BF分離工程は、1次BF分離工程と同様の処理により行われる。2次洗浄工程では、たとえば、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)が洗浄液として用いられる。PBSは、DNAと結合しなかった未反応の標識物質(磁性粒子に非特異的に吸着している標識物質を含む)を除去する。
【0211】
ステップS9において、ハイブリダイズされた標識物質を介して、DNAが検出される。DNAは、たとえば、フローサイトメーターで検出される。フローサイトメーターにおいて、標識物質と結合したDNAを含む磁性粒子がフローセルを流れ、磁性粒子にレーザー光が照射される。照射されたレーザー光によって発せられた標識物質の蛍光が検出される。
【0212】
DNAは、画像処理によって検出されてもよい。たとえば、標識物質と結合したDNAを含む磁性粒子が平板スライド上に分散され、分散された磁性粒子がカメラユニットにより撮像される。撮像された画像に基づいて、蛍光を発している磁性粒子数がカウントされる。
【0213】
[検体処理の例]
以下、各種の検体処理チップ100を用いた検体処理のアッセイ例を説明する。以下の説明において、検体処理チップ100への検体、各種試薬、処理液体21、流体24などの流体の輸送および検体処理チップ100中での流れ制御は、検体処理チップ100が設置された検体処理装置500の制御部530が導入部520を制御することにより行われる。
【0214】
(エマルジョンPCRアッセイ)
図33は、エマルジョンPCRアッセイに用いられる検体処理チップ100の構成例を示す。
【0215】
図33の検体処理チップ100は、機能が異なる複数種類の流体モジュール(200A〜200E)の組み合わせにより構成されている。具体的には、流体モジュール200Aにおいて、対象成分20の処理としてPre−PCR処理が行われる。流体モジュール200Bにおいて、対象成分20の処理として液滴形成処理が行われる。流体モジュール200Cにおいて、対象成分20の処理としてエマルジョンPCR処理が行われる。流体モジュール200Dにおいて、対象成分20の処理として液滴破壊処理が行われる。流体モジュール200Eにおいて、対象成分20の処理として洗浄(1次洗浄)処理が行われる。流体モジュール200Aにおいて、対象成分20の処理としてハイブリダイゼーション処理および洗浄(2次洗浄)処理が行われる。対象成分であるDNAや試薬等の液体が検体処理チップ100上の各流体モジュール内を順次流れることにより、エマルジョンPCRアッセイが実行される。流体モジュール200A〜200Eを一体化して、単一の流体モジュール200にそれぞれの処理を実施するための流路201を形成してもよい。
【0216】
〈Pre−PCR〉
図34は、Pre−PCRに用いられる流体モジュール200Aの構成例を示す。流体モジュール200Aの流路201は、チャネル202と、試薬や検体を注入する接続部203aおよび203bと、液体を排出する接続部203cとを有する。チャネル202は、液体の流速制御のため、たとえば菱形に成形されている。
【0217】
流体モジュール200Aは、たとえばポリカーボネートなどの耐熱性の高い材料により形成される。チャネル202の高さは、たとえば、50μm〜500μmに形成される。
【0218】
たとえば、接続部203aから、前処理で抽出されたDNAが注入され、接続部203bからPCR増幅用試薬が注入される。DNAと試薬の混合液は、チャネル202を流れる過程で、ヒーター541により温度が制御される。温度制御によって、DNAと試薬が反応し、DNAが増幅される。増幅されたDNAを含む液体は、接続部203cを介して、隣接する流体モジュール200に移送される。
【0219】
〈エマルジョン形成〉
図35は、エマルジョン形成に用いられる流体モジュール200Bの構成例を示す。流体モジュール200Bの流路201は、チャネル202と、検体や試薬等の液体が注入される接続部203a、203b及び203cと、液体が排出される接続部203dとを有する。チャネル202は、少なくとも2つのチャネルが交差する交差部分204を有する。交差部分204を形成する各チャネルの幅は、数十μmである。本実施例では、チャネルの幅は20μmである。なお、流体モジュール200Bには、接続部203b又は203cのいずれかのみが設けられてもよい。
【0220】
流体モジュール200Bのチャネル202の高さは、たとえば10μm〜20μmである。オイルに対する濡れ性を良くするため、たとえば、チャネル202の壁面は疎水性の材料やフッ素により処理されている。流体モジュール200Bの材料は、たとえばPDMSやPMMA等である。
【0221】
たとえば、Pre−PCRで増幅されたDNAを含む液体は接続部203bから注入され、磁性粒子とPCR増幅用の試薬とを含む液体が接続部203cから注入される。接続部203bと203cからそれぞれ注入された液体は、チャネル202中で混合され、交差部分204に流入する。磁性粒子の粒径は、たとえば、平均粒子径で0.5μm〜3μmの範囲から選択される。平均粒子径は、光散乱法により測定された個数平均径を意味する。接続部203bおよび203cに送液するために、ポンプ521は、接続部203bと203cからそれぞれ注入された液体のフローレートが一定となるように、圧力P(1000mbar≦P≦10000mbar)を付加する。
【0222】
たとえば、エマルジョン形成用のオイルが、接続部203aから注入される。注入されたオイルは、たとえば、チャネル202で複数の経路に分岐され、分岐された複数経路から交差部分204に流入する。接続部203aにオイルを送液するために、ポンプ521は、接続部203aから注入された液体のフローレートが一定となるように、圧力P(1000mbar≦P≦10000mbar)を付加する。
【0223】
図36は、交差部分204でエマルジョンが形成される例を示す。DNAと試薬の混合液は、
図36の上下方向からオイルが流入する交差部分204に流れ込む。混合液は、交差部分204においてオイルによって挟まれることにより生じたせん断力によって、液滴状に分断される。分断された液滴が交差部分204に流入したオイルに包まれることで、エマルジョンが形成される。エマルジョンとなった試料流は、接続部203dを介して、隣接する流体モジュール200に移送される。
【0224】
たとえば、DNAと試薬の混合液は、0.4μL/min〜7μL/minの範囲内から選択される一定のフローレートで交差部分204に流入し、オイルは、1μL/min〜50μL/minの範囲内から選択される一定のフローレートで交差部分204に流入する。フローレートは、ポンプ521が付加する圧力で制御される。たとえば、DNAと試薬の混合液を2μL/min(約5200mbar)、オイルを14μL/min(約8200mbar)のフローレートでそれぞれ交差部分204に流入させることで、約1千万個/minの液滴25が形成される。液滴25は、たとえば約60万個/min〜約1800万個/min(約1万個/sec〜約30万個/sec)の割合で形成される。
【0225】
なお、
図36の例では、交差部分204は、混合液の流入するチャネル202aが1つ、オイルの流入するチャネル202bが2つ、エマルジョンが流出するチャネル202cが1つの、合計4つのチャネル202により十字に形成されている。交差部分204としては、
図37に示すように、3つのチャネル202によりT字状に形成されていてもよい。
【0226】
流体モジュール200Bにおいて、対象成分20の処理として液滴形成処理が行われる結果、チャネル202中には、オイルからなる処理液体21中に、粒子22としての液滴25が分散される。液滴25の形成が終わった後、接続部203a、203b、203cのいずれかの入り口から流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内でオイルとの間に界面23を形成する。流体24は、所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する液滴25が界面23とともに移動され、接続部203dから排出される。
【0227】
このように、流体モジュール200Bにおいて、対象成分20の処理は、流路201内の処理液体21中において、核酸、核酸の増幅反応のための試薬、および核酸と結合する担体26の混合液を含む液滴25を形成する処理を含む。液滴25を形成する処理の後、流体24の界面23を移動させることにより、流路201中の液滴25が移動される。このように流路201内で処理液体21中に液滴25を形成する場合、液滴25が流路201の内壁面11に付着して滞留することがある。そこで、処理液体21中に形成された液滴25を流体24の界面23によって移動させることによって、液滴25の残留を効果的に抑制することができる。
【0228】
〈PCR〉
図38は、エマルジョンPCRに用いられる流体モジュール200Cの構成例を示す。流体モジュール200Cの流路201は、チャネル202と、液体が流入する接続部203aと、液体が排出される接続部203bとを有する。
【0229】
流体モジュール200Cは、たとえばポリカーボネートのような耐熱性の高い材料で形成される。チャネル202の高さは、たとえば、50μm〜500μmに形成される。
【0230】
チャネル202は、ヒーター541により形成される複数の温度ゾーンTZ1〜TZ3を複数回経由するような構造を有する。温度ゾーンTZは、3つ以外の他の数でもよい。チャネル202が各温度ゾーンTZ1〜TZ3を経由する回数は、サーマルサイクル数に対応する。
図38では簡略化して図示しているが、エマルジョンPCRのサーマルサイクル数は、たとえば、40サイクル程度に設定される。チャネル202は、サイクル数に応じた回数分の往復形状あるいは蛇行形状に形成される。
【0231】
図38に示すように、それぞれの液滴25内のDNAは、チャネル202を流れる過程で増幅される。
【0232】
流体モジュール200Cにおいて、対象成分20の処理としてエマルジョンPCR処理が行われる間、チャネル202中には、オイルからなる処理液体21中に、粒子22としての液滴25が分散された状態を継続する。エマルジョンPCRの処理中、あるいは処理後に、接続部203aから流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内でオイルとの間に界面23を形成する。流体24は、たとえば所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203bに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する液滴25が界面23とともに移動され、接続部203bから排出される。増幅されたDNAを含む液滴25は、接続部203bを介して、隣接する流体モジュール200Dに移送される。
【0233】
このように、流体モジュール200Cにおいて、対象成分20の処理は、処理液体21中に分散した核酸、核酸の増幅反応のための試薬、および核酸と結合する担体26の混合液を含む液滴25中の核酸を増幅する処理を含む。核酸を増幅する処理の実施中または実施後に、流体24の界面23を移動させることにより、核酸を増幅する処理による増幅産物である核酸が結合した担体26を含む液滴25が移動される。流路201内でサーマルサイクル処理を行う際に複数の温度ゾーンTZを通過するように液滴25を搬送すると、搬送距離が長くなるため搬送途中において搬送されずに滞留する液滴25が発生する場合がある。そこで、液滴25を流体24の界面23によって移動させることによって、液滴25の残留を効果的に抑制することができる。
【0234】
〈エマルジョンブレーク〉
図39は、エマルジョンのブレークに用いられる流体モジュール200Dの構成例を示す。流体モジュール200Dの流路201は、チャネル202と、エマルジョンやエマルジョンブレーク用の試薬が流入する接続部203a、203bおよび203cと、液体が排出される接続部203dとを含む。
【0235】
流体モジュール200Dは、たとえば、ポリカーボネートやポリスチレンのように耐薬品性の高い材料により形成される。チャネル202の高さは、たとえば、50μm〜500μmで形成される。
【0236】
たとえば、エマルジョンPCR工程を経たエマルジョンが接続部203bから流入し、エマルジョンブレーク用の試薬が接続部203aおよび203cから流入する。エマルジョンと、エマルジョンブレーク用の試薬は、チャネル202を流れる過程で混合され、エマルジョン中の液滴25が破壊される。すなわち、対象成分20の処理において、核酸の増幅産物が結合した担体26を含む液滴25と、液滴25を破壊するための試薬を混合することにより、液滴25が破壊される。これにより、液滴25と液滴25を破壊するための試薬とを混合するだけで容易に液滴25を破壊することができる。チャネル202は、液体の混合が促進されるような形状で構成される。たとえば、チャネル202は、液体が検体処理チップ100の幅方向に複数回往復するように形成される。液滴25から取り出された磁性粒子は、接続部203dを介して、隣接の流体モジュール200に移送される。
【0237】
流体モジュール200Dにおいて、対象成分20の処理として液滴破壊処理が行われる結果、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22および担体26としての磁性粒子26aが分散される。磁性粒子26aは、破壊により液滴25中から取り出されたものであり、核酸の増幅産物である核酸が結合している。チャネル202中の処理液体21は、オイル、エマルジョンブレーク用の試薬、破壊により液滴25中から流出した液体(PCR増幅用の試薬やDNAとともに液滴25中に包含された液体)などを含む混合液である。
【0238】
液滴破壊処理の後、接続部203a、203b、203cのいずれかの入口から流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。チャネル202内への流体24の導入量が増大するのに伴って、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する磁性粒子26aが界面23とともに移動され、接続部203dから排出される。
【0239】
このように、流体モジュール200Dにおいて、対象成分20の処理は、核酸の増幅産物である核酸が結合した担体26を含む液滴25を破壊する処理である。液滴25を破壊する処理の後、流体24の界面23を移動させることにより、破壊により液滴25から取り出された担体26が移動される。油相のオイル中に形成された水相の液滴25を破壊する場合、破壊されて液滴25から取り出された担体26が周囲のオイルと接触して、凝集や付着しやすい状態となる。そこで、破壊により液滴25から取り出された担体26を流体24の界面23によって移動させることによって、担体26の残留を効果的に抑制することができる。
【0240】
〈洗浄(1次洗浄)〉
図40は、洗浄工程(1次洗浄)で用いられる流体モジュール200Eの構成例を示す。流体モジュール200Eの流路201は、液体が流入する接続部203a、203bと、液体が排出される接続部203c、203dと、チャネル202とを含む。チャネル202は、たとえば、略長方形の形状など、所定方向に直線状に延びる形状を有する。また、チャネル202は、磁性粒子の集磁や分散が十分にできるように幅広形状を有する。流入側の接続部203a、203bがチャネル202の一端側に配置され、排出側の接続部203c、203dがチャネル202の他端側に配置される。
【0241】
流体モジュール200Eは、たとえば、ポリカーボネートやポリスチレンのように耐薬品性の高い材料で形成される。チャネル202の高さは、たとえば、50μm〜500μmで形成される。
【0242】
図41は、流体モジュール200Eにより磁性粒子を洗浄・濃縮する動作例を示す。接続部203aから203cに向けて、磁性粒子を含む液体が流れる。液体中の磁性粒子は、磁石640の磁力により濃縮される。磁石640は、チャネル202の長手方向に往復移動できる。磁性粒子は、磁石640の往復運動に追従し、チャネル202内を往復移動しながら凝集される。
【0243】
接続部203bからは、洗浄液が供給される。洗浄液は、接続部203bから203dに向けて連続的に流れる。接続部203dは、洗浄液を排出するためのドレーンとして機能する。
【0244】
たとえば、洗浄液の流れの中で、磁力によって捕捉した磁性粒子26aを流路201に沿う方向に往復移動させ、磁性粒子26aを洗浄する。すなわち、洗浄液の流れの中で磁性粒子が磁石640の動作に追従してチャネル202内を往復移動することにより、洗浄処理が行われる。このように磁力により集めた磁性粒子26aを流路201に沿って移動させることにより、集められた磁性粒子26aと洗浄液とを効率的に接触させることができるので、洗浄効率を向上させることができる。その一方、磁力によって流路201の内壁面11に押し付けられた状態で動かされる磁性粒子26aは、内壁面11により一層付着しやすくなる。その場合でも、捕捉が解除された磁性粒子26aを流体24の界面23によって移動させることにより、内壁面11に付着しやすい磁性粒子26aの残留を効果的に抑制することができる。
【0245】
1次洗浄工程では、アルコールを含む洗浄液が用いられる。洗浄液を用いた1次洗浄により、磁性粒子上の油膜が除去され、増幅された二本鎖DNAが一本鎖に変性する。
【0246】
流体モジュール200Eにおいて、対象成分20の処理として1次洗浄処理が行われる結果、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22および担体26としての磁性粒子26aが分散される。磁性粒子26aは、洗浄後に磁力による捕捉が解除されたものであり、チャネル202中の最終の集磁位置に集まった状態となる。チャネル202中の処理液体21は、洗浄液である。1次洗浄処理の後、接続部203aまたは203bから流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する磁性粒子26aが界面23とともに移動され、接続部203dから排出される。洗浄・濃縮された磁性粒子は、接続部203bから排出され、隣接する流体モジュール200Aに移送される。
【0247】
〈ハイブリダイゼーション〉
磁性粒子は、
図34と同様の構成の流体モジュール200Aにおいて、標識物質を含む試薬と混合され、サーマルサイクルに供される。たとえば、接続部203aから磁性粒子を含む液体が移送され、接続部203bから標識物質を含む試薬が注入される。サーマルサイクルによって、磁性粒子上のDNAと標識物質が結合する。
【0248】
〈洗浄(2次洗浄)〉
標識物質とのハイブリダイゼーション(結合)後の2次洗浄工程は、流体モジュール200Aで行うようにしてもよい。たとえば
図34において、磁石640(
図41参照)によって磁性粒子をチャネル202内に集磁した状態で、接続部203bから洗浄液が注入される。2次洗浄工程では、PBSが洗浄液として用いられる。洗浄液を用いた2次洗浄により、DNAと結合しなかった未反応の標識物質(磁性粒子に非特異的に吸着している標識物質を含む)が除去される。2次洗浄後の標識物質を含む磁性粒子は、接続部203cから排出される。この場合、流体モジュール200E(
図40参照)と同様に、流体モジュール200Aにもドレーン用の排出側の接続部203を設けるのがよい。
【0249】
流体モジュール200Aにおいて、対象成分20の処理としてハイブリダイゼーションおよび2次洗浄処理が行われる結果、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22および担体26としての磁性粒子26aが分散される。磁性粒子26aは、洗浄後に磁力による捕捉が解除されたものであり、チャネル202中の最終の集磁位置に集まった状態となる。チャネル202中の処理液体21は、洗浄液である。2次洗浄処理の後、接続部203aまたは203bから流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する磁性粒子26aが界面23とともに移動され、接続部203cから排出される。
【0250】
磁性粒子26aは、流体24の界面23によって接続部203cから検体処理チップ100の外部に送り出され、たとえばサンプル容器(
図2参照)に回収される。流体24が空気などの気体である場合、流体24は検体処理チップ100から外部の大気中に拡散する。そのため、最終的に検体処理チップ100の外部に送り出されるサンプル液量は、流体24を送り込む前にチャネル202内で磁性粒子26aが分散していた洗浄液の量に概ね等しくなり、磁性粒子26aの高い回収率を必要最小限のサンプル液量で実現できる。
【0251】
流体24が液体の場合、流体24は、検体処理チップ100の外部に送り出される時に磁性粒子26aとともに回収される。そのため、回収されるサンプル量が流体24の分だけ増大し、回収されたサンプル中の磁性粒子26aの濃度が、流体24によって希釈されることになる。たとえば、サンプル中の磁性粒子26aの濃度が検出に適した濃度範囲を下回る場合、サンプル中の磁性粒子26aの濃縮処理が行われる。濃縮処理は、たとえばサンプル容器中で磁性粒子26aを集磁し、磁力により磁性粒子26aが捕捉された状態で上澄みの液体成分が除去される。磁性粒子26a以外の担体26が用いられる場合、たとえば遠心分離などを行って担体26と液体成分とを分離した上で、液体成分が除去される。そのため、回収されるサンプルの希釈は、処理工数および処理時間が増大をさせる可能性がある。このため、流体24は気体が好ましく、たとえば空気が好ましい。
【0252】
このように、流体モジュール200Aでは、対象成分20の処理は、流路201中で磁性粒子26aを磁力によって捕捉する処理と、磁性粒子26aが捕捉された流路201中に洗浄液を導入する処理と、磁性粒子26aの捕捉を解除する処理と、を含む。この場合、表面が核酸の増幅産物に覆われることにより磁性粒子26aが凝集や付着しやすくなるのに加えて、磁性粒子26aが磁力によって集められて捕捉されるので、より一層、磁性粒子26aが流路201内で滞留しやすくなる。そこで、洗浄液により磁性粒子26aを洗浄した後に、流路201内に流体24を導入して、捕捉が解除された磁性粒子26aが流体24の界面23によって移動される。その結果、滞留しやすい磁性粒子26aの残留を効果的に抑制することができる。
【0253】
より具体的には、流体モジュール200Aでの対象成分20の処理は、流路201中で磁性粒子26aを磁力によって捕捉する処理と、核酸の増幅産物を検出するための標識物質を流路201内に導入して核酸の増幅産物と反応させ、標識物質を有する磁性粒子26aを形成する処理と、標識物質を有する磁性粒子26aを捕捉したまま、洗浄液を流路201に導入して磁性粒子26aを洗浄する処理と、を含む。この場合、表面が核酸の増幅産物および標識物質の結合体に覆われて磁性粒子26aが凝集や付着しやすくなるのに加えて、磁性粒子26aが磁力によって集められて捕捉されるので、より一層、磁性粒子26aが流路201内で滞留しやすくなる。そこで、洗浄液により磁性粒子26aを洗浄した後に、流路201内に流体24を導入して、捕捉が解除された磁性粒子26aが流体24の界面23によって移動される。その結果、滞留しやすい磁性粒子26aの残留を効果的に抑制することができる。
【0254】
なお、ハイブリダイゼーションを行う流体モジュール200Aの下流側に、2次洗浄を行う流体モジュール200Eを追加してもよい。この場合も、対象成分20の処理としての2次洗浄後に、流体モジュール200Eに流体24が導入されて、界面23によって検体処理チップ100の外部に送り出された磁性粒子26aが回収される。
【0255】
〈1次洗浄、ハイブリダイゼーションおよび2次洗浄の変形例〉
他の構成例として、1つの流体モジュール200E(
図40参照)において、1次洗浄、ハイブリダイゼーションおよび2次洗浄を実施するように構成してもよい。この場合、接続部203aからエマルジョンブレーク後の試料をチャネル202に導入して磁石640により集磁しておく。接続部203bから、1次洗浄用のアルコール含有洗浄液、ハイブリダイゼーション用の標識試薬、2次洗浄用の洗浄液(PBS)を順番に注入して、各工程の処理を実行する。この場合、流体モジュール200Eの下流側の流体モジュール200Aを設ける必要はない。この場合も、対象成分20の処理としての1次洗浄、ハイブリダイゼーションおよび2次洗浄の後に、流体モジュール200Eに流体24が導入されて、界面23によって検体処理チップ100の外部に送り出された磁性粒子26aが回収される。
【0256】
〈検出〉
2次洗浄後の標識物質を含む磁性粒子は、たとえばフローサイトメーター40(
図2参照)や画像解析により検出される。フローサイトメーター40(
図2参照)で検出するため、標識物質を含む磁性粒子は、たとえば、検体処理装置500から回収された後、別個に設けられたフローサイトメーターに移送される。また、標識物質を含む磁性粒子は、検体処理装置500の検出部544によって標識に基づく蛍光などが検出される。また、標識物質を含む磁性粒子は、検体処理装置500のカメラユニット545によって撮像され、検体処理装置500又は検体処理装置500に接続されたコンピュータによって撮像された画像が解析される。
【0257】
(単一細胞解析〈Single Cell Analysis〉)
上述の検体処理チップ100を用いて単一細胞解析を実施する例を説明する。血液などの試料に含まれる個々の細胞を解析対象として、細胞単位での解析を行う手法である。
図42は、単一細胞解析に用いられる検体処理チップ100の構成例を示す。
【0258】
検体処理チップ100は、たとえば、液体混合用の流体モジュール200D、エマルジョン形成用の流体モジュール200B、PCR増幅用の流体モジュール200Cの組み合わせにより構成される。
【0259】
単一細胞解析は、対象成分である細胞と、細胞中の核酸の増幅反応のための試薬とを混合する工程(第1工程)、第1工程により混合された液体と、細胞溶解試薬との混合液を含む液滴を分散媒体中に形成する工程(第2工程)、第2工程によって液滴中で細胞から溶出した核酸を液滴中で増幅する工程(第3工程)、を含む。
【0260】
流体モジュール200Dの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図39に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。血液等の検体が流体モジュール200Dの接続部203bから注入され、PCR増幅用試薬が接続部203aおよび203cから注入される。検体に含まれる細胞とPCR増幅用試薬がチャネル202を流れる過程で混合される。
【0261】
流体モジュール200Dにおいて、対象成分20の処理として各種液体の混合処理が行われる結果、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22としての細胞が分散される。チャネル202中の処理液体21は、検体中の液体成分およびPCR増幅用試薬の混合液である。混合処理の後、接続部203a、203b、203cのいずれかの入口から流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する細胞が界面23とともに移動され、接続部203cから排出される。混合された液体は、接続部203cを介して、隣接の流体モジュール200Bに移送される。
【0262】
流体モジュール200Bの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図35に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。細胞とPCR増幅用試薬、蛍光色素の混合液が、流体モジュール200Bの接続部203bから注入される。細胞溶解試薬が、接続部203cから注入される。接続部203aから、エマルジョン形成用のオイルが注入される。細胞、PCR増幅用試薬および細胞溶解試薬の混合液は、交差部分204においてオイルに包まれた液滴25になり、エマルジョンが形成される。混合液を包み込んだ液滴25は、接続部203cを介して、隣接する流体モジュール200Cに移送される。液滴25内の細胞は、エマルジョンが流体モジュール200Cに移送される過程で、細胞溶解試薬によって溶解される。溶解された細胞から、細胞内のDNAがPCR増幅用試薬を含む液滴25内に溶出する。
【0263】
流体モジュール200Bにおいて、対象成分20の処理として液滴形成処理が行われる結果、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22としての液滴25が分散される。液滴25は、細胞、PCR増幅用試薬および細胞溶解試薬の混合液を含み、細胞が溶解された後は、対象成分20および核酸としてのDNAが内包される。チャネル202中の処理液体21は、オイルである。液滴形成処理の後、接続部203a、203b、203cのいずれかの入口から流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。その後処理液体21を送液すると、界面23が接続部203dに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する液滴25が界面23とともに移動され、接続部203cから排出される。混合された液体は、接続部203cを介して、隣接の流体モジュール200Cに移送される。
【0264】
このように、流体モジュール200Bにおいて、対象成分20の処理は、流路201内の処理液体21中において、細胞、細胞を溶解するための試薬、および核酸と結合する担体26の混合液を含む液滴25を形成する処理である。液滴25を形成する処理の実施中または実施後に、流体24の界面23を移動させることにより、細胞と、核酸が結合する担体26とを含む液滴25が移動される。このように流路201内で処理液体21中に液滴25を形成する場合、液滴25が流路201の内壁面11に付着して滞留することがある。そこで、処理液体21中に形成された液滴25を流体24の界面23によって移動させることによって、液滴25の残留を効果的に抑制することができる。
【0265】
流体モジュール200Cの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図46に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。流体モジュール200Cに移送されたエマルジョンは、流体モジュール200Cのチャネル202を流れる過程でサーマルサイクルに供される。サーマルサイクルによって、液滴25内で細胞から溶出したDNAが増幅される。液滴25内で細胞から溶出されたタンパク質を酵素と変更/基質の反応等によって検出しても良い。
【0266】
流体モジュール200Cにおいて、対象成分20の処理としてPCR処理が行われる間、チャネル202中には、処理液体21中に、粒子22としての液滴25が分散された状態が継続する。液滴25は、対象成分20および核酸としてのDNAを含んだ、PCR増幅用試薬および細胞溶解試薬の混合液である。チャネル202中の処理液体21は、オイルである。PCR処理の実施中または後に、接続部203aから流体24として空気が導入される。流体24は、チャネル202内で処理液体21との間に界面23を形成する。流体24は、たとえば、所定流量で所定時間の間、導入される。チャネル202内への流体24の導入量が増大するのに伴って、界面23が接続部203bに向けてチャネル202内を移動する。その結果、チャネル202に滞留する液滴25が界面23とともに移動され、接続部203cから排出される。
【0267】
なお、流体モジュール200Cの後に
図39に示した流体モジュール200Dを設けて、液滴25を破壊する処理を行ってもよい。この場合、流体モジュール200Dにおいて、対象成分20の処理は、流路201内の処理液体21中において、細胞、細胞を溶解するための試薬、および核酸と結合する担体26の混合液中で細胞から溶出された核酸が結合した担体26を含む液滴25を破壊する処理である。液滴25を破壊する処理の後、流体24の界面23を移動させることにより、細胞から溶出された核酸が結合した担体26が移動される。これにより、破壊により液滴25から取り出された担体26を流体24の界面23によって移動させることによって、担体26の残留を効果的に抑制することができる。
【0268】
(免疫測定〈Digital ELISA〉)
上述の検体処理チップ100を用いて免疫測定を実施する例を説明する。免疫測定は、血液などに含まれる抗原や抗体などのタンパク質を対象成分とする。
図43は、Digital ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)に用いられる検体処理チップ100の構成例を示す。
【0269】
検体処理チップ100は、温度制御用の流体モジュール200A、BF分離用の流体モジュール200E、エマルジョン形成用の流体モジュール200B、温度制御用の流体モジュール200Aの組み合わせにより構成される。
【0270】
図44は、Digital ELISAの概要を示す。ELISAは、対象成分となる抗原(抗体でもよい)および標識物質を磁性粒子に担持させることにより免疫複合体を形成し、免疫複合体中の標識に基づいて対象成分の検出を行う手法である。Digital ELISAは、限界希釈(各微小区画に対象成分が1または0となるような希釈)したサンプルを微小区画内に分散させ、標識に基づく信号がポジティブとなる微小区画の数を直接カウントすることにより、サンプル中の対象成分濃度を絶対的に測定する手法である。
図44の場合、エマルジョン中の個々の液滴25が微小区画となる。検体処理チップ100により、
図44の例に示されるアッセイが実行される。
【0271】
より具体的には、Digital ELISAアッセイは、抗原抗体反応により対象成分(抗原または抗体)と担体とを結合させた免疫複合体を形成する工程(第1工程)、第1工程により形成された免疫複合体と、標識物質とを反応させる工程(第2工程)、第2工程により標識物質が結合した免疫複合体と、標識物質の検出のための基質とを含む液滴を分散媒体中に形成する工程(第3工程)、第3工程により形成された液滴中の標識物質に対して基質を反応させる工程(第4工程)、を含む。
【0272】
流体モジュール200Aの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図34に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。流体モジュール200Aの接続部203aから抗原を含む検体が注入され、接続部203bから一次抗体および磁性粒子を含む試薬が注入される。検体と試薬は、チャネル202で混合される。混合液は、チャネル202で温度制御に供され、抗原、一次抗体および磁性粒子を含む免疫複合体が生成される。温度は、約40℃〜約50℃、より好ましくは約42℃に制御される。生成された複合体を含む液体は、接続部203cを介して、隣接する流体モジュール200Eに移送される。
【0273】
流体モジュール200Eの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図40に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。流体モジュール200Eのチャネル202において、磁性粒子を含む複合体は磁石640により集磁され、洗浄される(1次BF分離)。1次BF分離後、磁石640による磁力の影響を排除し、免疫複合体を分散させる。分散された免疫複合体を、酵素標識抗体と反応させる。反応後、再度、免疫複合体を磁石640により集磁し、洗浄する(2次BF分離)。洗浄後、免疫複合体は、隣接する流体モジュール200Bに移送される。
【0274】
流体モジュール200Bの構成(材質やチャネル高さ等)は、
図35に例示された構成と同様であり、詳細な説明は省略する。複合体は、流体モジュール200Bの接続部203bから注入され、蛍光/発光基質を含む試薬が接続部203cから注入される。エマルジョン形成用のオイルは、接続部203aから注入される。免疫複合体を含む液体と、蛍光/発光基質を含む試薬とは、交差部分204において、オイルに包み込まれて液滴25となることにより、エマルジョンを形成する。エマルジョンは、接続部203cから、隣接する流体モジュール200Aに移送される。
【0275】
流体モジュール200Aに移送されたエマルジョンは、チャネル202において加温され、個々の液滴25内で基質と免疫複合体が反応し、蛍光が発生する。検体処理装置500の検出部544は、蛍光を検出する。この結果、個々の液滴25に包含された対象成分の一分子単位の検出が可能となる。
【0276】
流体モジュール200Aでは、粒子22である磁性粒子26aが、対象成分20である抗原または抗体と結合し、処理液体21としての検体および試薬の混合液中に分散される。流体モジュール200Eでは、粒子22である磁性粒子26aが、処理液体21としての洗浄液中に分散される。流体モジュール200Bでは、粒子22である液滴25が、処理液体21としてのオイル中に分散される。流体モジュール200Aでは、粒子22である液滴25が、処理液体21としてのオイル中に分散される。
【0277】
これらの流体モジュール200A、200E、200B、200Aにおいても、それぞれの対象成分20の処理の実施中または後に、流体24として空気が導入される。流体24により形成された界面23がチャネル202内を移動する結果、チャネル202に滞留する粒子22が界面23とともに移動され、排出される。流体モジュール200Eでは磁力による磁性粒子26aの捕捉および捕捉の解除の工程が含まれるため、対象成分20の界面23による磁性粒子26aの搬送が効果的である。
【0278】
(実験結果の説明)
次に、本実施形態の検体処理方法の効果を確認するために行った実験について説明する。本実験では、流体24の界面23を移動させて流路201中の粒子22を搬送し、流路201から排出されたサンプルを回収した。比較例として、流路201内で処理液体21を流して流路201から排出されたサンプルを回収した。回収されたそれぞれのサンプル中に含まれる対象成分20と結合した磁性粒子26aを検出し、検出数を比較した。
【0279】
実験で用いた流路を
図45に示す。流路201は、液滴破壊処理を行う流体モジュール200Dと、洗浄処理を行う流体モジュール200Eとの各流路201を接続したものである。流路201の一端側に、接続部203a、203b(12)があり、液滴破壊処理を行うためのチャネル202aの一端側に接続している。チャネル202aの他端側は、洗浄処理を行うためのチャネル202bの一端側に接続している。チャネル202bで集磁および洗浄動作が行われる。チャネル202bの他端側が、排出口である接続部203c(14)に接続している。
【0280】
接続部203aは、エマルジョンブレーク用の試薬、1次洗浄のためのアルコールを含む洗浄液、および、2次洗浄のための洗浄液であるPBSを導入する共通の入口となっている。また、接続部203aから流体24としての空気が導入される。接続部203bは、粒子22である磁性粒子26aがオイル中に分散したエマルジョンを導入するための入口となっている。接続部203cは、排出口であり、それぞれの処理中に流出する液体は廃棄し、最終のサンプル排出の際に流出する液体を回収容器に回収する。
【0281】
本実験は、上述したエマルジョンPCRアッセイにおける検出直前の処理である2次洗浄処理を実施し、FCM分析のために回収する工程を想定して実験した。粒子22は、対象成分20および標識物質と結合した磁性粒子26aであり、処理液体21は洗浄液である。また、2次洗浄処理では、磁力によって磁性粒子26aを捕捉する処理および、洗浄後に磁性粒子26aの捕捉を解除する処理が行われる。
【0282】
〈本実施形態〉
以下、本実施形態の実験手法について説明する。
(1)用手法で以下の試薬を用いて形成した液滴25を準備した。効果確認の実験のため、DNAを用いずに代替物を使用した。
・BEAMing PCR Master Mix
・Emulsion Beads(磁性粒子)
・Taq−DNA Polymerase
・EmulsiFIRE
・1xTE pH8.0(DNAの代用として使用)
・50mM NaOH
【0283】
(2)液滴25とBB1/1%BB2をチャネル202a内で混合することで液滴25を破壊し、チャネル202b内に輸送し、磁性粒子26aを磁力により捕捉した。液滴は40mbar、BB1は140mbarの圧力で供給した。BB1、BB2はアルコールを含む洗浄液である。
【0284】
(3)チャネル202bに磁石を近づけ、チャネル202b内で磁性粒子26aを磁力により捕捉しながらBB2を流通させた。BB2は100mbarの圧力で3分間供給した。
【0285】
(4)チャネル202b内で磁性粒子26aを捕捉しながら処理液体21(洗浄液)としてPBSを供給した。PBSは、80mbarの圧力で3分間供給した。
【0286】
(5)チャネル202から磁石を遠ざけ、磁力による捕捉を解除した。
【0287】
(6)流体24のバルブ31および処理液体21のバルブ33を交互に開閉することにより、処理液体21としてのPBSと流体24としての空気を交互にチャネル202へ送り、流体24による充填領域28を形成した。充填領域28を接続部203cまで移動させ、処理液体21としてのPBS中に存在する磁性粒子26aを回収した。充填領域28は5個形成し、70mbarの圧力で3分間供給した。
【0288】
(7)回収したサンプル溶液をフローサイトメーターで計数して、検出されたシングレットの数によって磁性粒子の回収量を比較した。シングレットは、単一粒子の状態でフローサイトメーターの検出部を通過した磁性粒子26aである。
【0289】
実験条件下において、上式(1)によりレイノルズ数Reを算出すると、流れの平均速度V=0.002[m/s]、流路内径d≒0.2257×10
-3[m]、動粘性係数ν=1.0×1010
-6[m
2/s]から、Re=0.451となった。
【0290】
〈比較例〉
比較例では、(6)において流体24としての空気を導入せず、代わりにPBSを流通させて磁性粒子26aを回収した。PBSは70mbarの圧力で3分間供給した。比較例の他の処理は本実施形態と同様である。
【0291】
回収量(すなわち、磁性粒子26aの検出数)の比較結果を
図46に示す。流体24を用いて界面23により搬送を行った本実施形態では、検出総数(カウント数)が2630105であった。比較例では、検出総数が204077であった。本実施形態の方が約12.9倍多く磁性粒子26aを回収できていることが確認された。これにより、本実施形態の検体処理方法により流路201中における粒子22の残存を抑制できることが確認された。
【0292】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。