(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2シート部材は、前記第1層及び前記第2層がShoreA硬度70以上の熱可塑性エラストマーからなり、前記第3層がShoreA硬度65以下の熱可塑性エラストマーからなる、請求項1に記載の袋状構造体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[一実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る袋状構造体32を用いたカフ12を備える血圧計1ついて、
図1乃至
図6を用いて以下説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る血圧計1の構成を示す斜視図、
図2は血圧計1に用いられるカフ12の構成を示す断面図、
図3はカフ12に用いられる袋状構造体32の構成を一部切欠して示す斜視図、
図4は袋状構造体32を構成するシート部材41、42の一例の構成を示す断面図である。また、
図5及び
図6は、血圧計1を生体に装着させたときのカフと生体の関係を、袋状構造体の収縮及び膨張時でそれぞれ示す断面図である。
【0026】
血圧計1は、例えば、手首に装着する電子血圧計である。
図1に示すように、血圧計1は、装置本体11と、カフ12と、を備えている。
【0027】
装置本体11は、ケース21と、表示部22と、操作部23と、ポンプ24と、開閉弁25と、圧力センサ26と、電力供給部27と、制御部28と、を備えている。また、装置本体11は、ポンプ24、開閉弁25、圧力センサ26及びカフ12を流体的に接続する空気の流路を有する。例えば、空気の流路は、樹脂材料等により構成されたチューブ等がケース21内に配置されることで構成される。
【0028】
ケース21は、表示部22を上面に配置する。ケース21は、ポンプ24、開閉弁25、圧力センサ26、電力供給部27及び制御部28を収容する。ケース21は、カフ12と一体に接続される。
【0029】
表示部22は、電気的に制御部28に接続される。表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。表示部112は、最高血圧及び最低血圧などの血圧値や心拍数などの測定結果を含む各種情報を表示する。
【0030】
操作部23は、使用者からの指令を入力可能に構成される。例えば、操作部23は、ケース21に設けられた釦や、表示部に設けられたタッチパネルである。操作部23は、使用者が操作することで、指令を電気信号に変換する。操作部23は、電気的に制御部28に接続され、電気信号を制御部28へ出力する。
【0031】
ポンプ24は、例えば、ローリングポンプである。ポンプ24は、空気を圧縮し、流路を介して圧縮空気をカフ12に供給する。ポンプ24は、電気的に制御部28に接続される。
【0032】
開閉弁25は、電気的に制御部28に接続された電磁弁である。開閉弁25は、制御部28の指令によって開閉する。開閉弁25は、開くことで流路及び大気を連続させて、流路内を減圧する。
【0033】
圧力センサ26は、流路内の圧力を検出する。圧力センサ26は、電気的に制御部28に接続され、検出した圧力を電気信号に変換し、制御部28へ出力する。ここで、流路はカフ12の後述する袋状構造体32と連続することから、流路内の圧力とは、袋状構造体32の内部空間の圧力である。
【0034】
電力供給部27は、例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池である。電力供給部27は、制御部28に電気的に接続される。電力供給部27は、制御部28に電力を供給する。
【0035】
制御部28は、表示部22、操作部23、ポンプ24、開閉弁25及び圧力センサ26に電力を供給する。また、制御部28は、操作部23及び圧力センサ26が出力する電気信号に基づいて、表示部22、ポンプ24及び開閉弁25の動作を制御する。
【0036】
例えば、制御部28は、操作部23から血圧を測定する指令が入力されると、ポンプ24を駆動してカフ12に圧縮空気を送る。また、制御部28は、圧力センサ26が出力する電気信号に基づいて、ポンプ24の駆動及び停止、並びに、開閉弁25の開閉を制御する。また、制御部28は、圧力センサ26が出力する電気信号から、最高血圧及び最低血圧などの血圧値や心拍数などの測定結果を求め、この測定結果に対応した画像信号を表示部22へ出力する。
【0037】
図1及び
図2に示すように、カフ12は、基材31と、袋状構造体32と、を備えている。カフ12は、手首に巻き付けることで、手首に固定される。
【0038】
基材31は、腕の形状に沿って湾曲して構成される。基材31は、例えば、一端がケース21と一体に構成され、他端が留め具等によりケース21に固定可能に構成される。基材31は、袋状構造体32を内面に支持する。例えば、基材31は、袋状構造体32を接合する接着剤や両面テープ等の接合層31aを内面に有する。また、基材31は、硬質の樹脂材料により構成される。
【0039】
図2及び
図3に示すように、袋状構造体32は、一方向に長い矩形の袋状に構成される。袋状構造体32は、内部空間が装置本体11の流路に流体的に接続される空気室を構成する。袋状構造体32は、基材31の内面に沿って、湾曲して基材31の内面に配置される。袋状構造体32の幅は、例えば40mm以下に設定される。
【0040】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、袋状構造体32は、矩形状の第1シート部材41と、第1シート部材41と同形状の第2シート部材42と、第1シート部材41及び第2シート部材42により構成される内部空間と装置本体11の流路とを流体的に接続する接続チューブ43と、を備えている。
【0041】
袋状構造体32は、第1シート部材41及び第2シート部材42の周縁部を接合することで構成される。第1シート部材41及び第2シート部材42の接合は、例えば、レーザー溶着、高周波溶着、熱プレス溶着、又は、接着剤若しくは両面テープによる接着である。
【0042】
第1シート部材41は、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。第1シート部材41を構成する熱可塑性エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(Thermoplastic PolyUrethane、以下TPUと表記する)、塩化ビニル樹脂(PolyVinyl Chloride、以下PVCと表記する)、エチレン酢酸ビニル樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate、以下EVAと表記する)、熱可塑性ポリスチレン系樹脂(Thermoplastic PolyStyrene、以下TPSと表記する)、熱可塑性ポリオレフィン樹脂(Thermoplastic PolyOlefin、以下TPOと表記する)、熱可塑性ポリエステル系樹脂(ThermoPlastic Polyester、以下TPEEと表記する)及び熱可塑性ポリアミド樹脂(Thermoplastic PolyAmide、以下TPAと表記する)を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、TPUを用いることが好ましい。
【0043】
第1シート部材41は、基材31に設けられる。第1シート部材41は、複数種類の材料からなる複数の層を有する複層構造を有する。
【0044】
第1シート部材41は、例えば、少なくとも2種類の材料が3層積層された2種3層構造に構成される。
図4に示すように、第1シート部材41は、第1層41aと、第2層41bと、第3層41cと、を備える。第1層41aは、第1シート部材41の、第2シート部材42側の外層を構成する。第2層41bは、第1シート部材41の内層を構成する。第3層41cは、第1シート部材41の、基材31側の外層を構成する。
第1シート部材41は、好ましくは、第2シート部材42と対向する第1層41aが他の層よりもShore A硬度が高い材料により構成される。ここで、Shore A硬度は、JIS K6253−3:2012(「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方−第3部:デュロメータ硬さ」)において規定された、タイプAデュロメータ硬さ試験によって得られるデュロメータ硬さである。第1シート部材41は、より好ましくは、第1シート部材41の外層を構成する第1層41a及び第3層41cが、内層を構成する他の層、本実施形態においては第2層41bよりもShore A硬度が高い材料により構成される。例えば、第1層41a及び第3層41cは、同じ材料により構成される。
【0045】
具体例として、第1層41a及び第3層41cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。また、第2層41bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。
【0046】
また、第1シート部材41は、外層を構成する第1層41a及び第3層41cが同じ厚さに構成される。第1シート部材41の層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第1シート部材41の厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層41aの厚さをT1a、第2層41bの厚さT2b、第3層41cの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0047】
このような第1シート部材41は、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41の厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。これは、袋状構造体32の厚さが薄すぎる場合、破れ等のリスクを生じる虞があり、袋状構造体32の厚さが厚すぎる場合、袋状構造体32を膨張させたときの形状追従性が低下する虞があるためである。また、第1シート部材41の層構成比は、成形時に、各層を構成する樹脂の吐出量を調整することで制御される。
【0048】
第2シート部材42は、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。第1シート部材41を構成する熱可塑性エラストマーとしては、例えば、TPU、PVC、EVA、TPS、TPO、TPEE及びTPAを用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、TPUを用いることが好ましい。
【0049】
第2シート部材42は、カフ12の装着時に生体と接触する。第2シート部材42は、複数種類の材料からなる複数の層を有する複層構造を有する。
【0050】
第2シート部材42は、例えば、少なくとも2種類の材料が3層積層された2種3層構造に構成される。例えば、第2シート部材42は、第1シート部材41と同じ構成である。
図4に示すように、第2シート部材42は、第1層42aと、第2層42bと、第3層42cと、を備える。第1層42aは、第2シート部材42の、生体側の外層を構成する。第2層41bは、第2シート部材42の内層を構成する。第3層41cは、第2シート部材42の、第1シート部材41側の外層を構成する。
【0051】
第2シート部材42は、好ましくは、生体と対向する第1層41aが他の層よりもShore A硬度が高い材料により構成される。第2シート部材42は、より好ましくは、第2シート部材42の外層を構成する第1層42a及び第3層42cが、内層を構成する他の層、本実施形態においては第2層42bよりもShore A硬度が高い材料により構成される。例えば、第1層42a及び第3層42cは、同じ材料により構成される。
【0052】
具体例として、第1層42a及び第3層42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。また、第2層42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。
【0053】
また、第2シート部材42は、外層を構成する第1層41a及び第3層41cが同じ厚さに構成される。第2シート部材42の層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第2シート部材42の厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層42aの厚さをT1a、第2層42bの厚さT2b、第3層42cの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0054】
このような第2シート部材42は、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第2シート部材42の厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。この厚さが小さすぎる場合、破れ等のリスクを生じる虞がある。また、この厚さが大きすぎる場合、袋状構造体32を膨張させたときの生体への形状追従性が低下し、袋状構造体32の生体への密着性が不十分となり、圧迫特性が低下する虞がある。また、第2シート部材42の層構成比は、成形時に、各層を構成する樹脂の吐出量を調整することで制御される。
【0055】
接続チューブ43は、樹脂材料により構成され、可撓性を有する。接続チューブ43は、袋状構造体32の長手方向の一端に固定される。接続チューブ43は、第1シート部材41及び第2シート部材42により構成される袋状構造体32の内部空間に一端が接続される。接続チューブ43は、装置本体11の流路に接続される。
【0056】
次に、血圧計1を使用した血圧値の測定について、
図1、
図5及び
図6を用いて説明する。
血圧値を測定に際して、使用者は生体、本実施形態においては手首100にカフ12を装着する。これにより、
図5に示すように、カフ12の袋状構造体32が手首100に接触する。次に、使用者は、
図1に示す操作部23を操作して、血圧値の測定開始に対応した指令の入力を行う。
【0057】
指令の入力操作が行われた操作部23は、測定開始に対応した電気信号を制御部28へ出力する。制御部28は、当該電気信号を受信すると、開閉弁25を閉じ、ポンプ24を駆動し、流路を介して袋状構造体32へ圧縮空気を供給する。これにより、袋状構造体32は膨張を開始する。
【0058】
圧力センサ26は、袋状構造体32の内部空間の圧力を検知し、この圧力に対応した電気信号を制御部28へ出力する。制御部28は、受信した電気信号に基づいて、袋状構造体32の内部空間の圧力が血圧測定のための所定の圧力に達しているか否かを判断する。袋状構造体32の内部空間の圧力が当該所定の圧力に達している場合には、制御部28は、ポンプ24の駆動を停止する。このとき、
図6に示すように、袋状構造体32は十分に膨張しており、膨張した袋状構造体32が手首を押圧し、手首100内の動脈110を閉塞する。
【0059】
その後、制御部28は、開閉弁25を制御し、開閉弁25の開閉を繰り返すか、又は、開閉弁25の開度を調整することで、袋状構造体32の内部空間の圧力を減圧させる。この減圧の過程において圧力センサ26が出力する電気信号に基づいて、制御部28は、最高血圧及び最低血圧等の血圧値や心拍数等の測定結果を求める。制御部28は、求めた測定結果に対応した画像信号を、表示部22へ出力する。
【0060】
表示部22は、画像信号を受信すると、当該測定結果を画面に表示する。使用者は、表示部22を視認することで、当該測定結果を確認する。なお、使用者は、測定終了後、留め具を外して手首から血圧計1を取り外す。
【0061】
このように構成された一実施形態に係る血圧計1に用いられるカフ12によれば、Shore A硬度が異なる複数種の材料を用い、外層のShore A硬度を内層のShore A硬度よりも高く構成した複層のシート部材41、42を用いた袋状構造体32を備える。また、袋状構造体32は、複層のシート部材41、42の外層及び内層の層構成比は、厚み比率でT1:T2:T1を1:2:1乃至1:20:1に構成される。また、Shore A硬度が高い外層の物性及びShore A硬度が小さい内層の物性のそれぞれが寄与することになる。結果、この構成の袋状構造体32は、クリープ耐性及び血管圧迫特性に優れる。また、袋状構造体32は、第1シート部材41及び第2シート部材42を接合するだけでよく、加工コストを抑制できる。
【0062】
即ち、カフ12は、空気で膨張させた際に、人肌面への密着性が高く、血管圧迫特性が良いことが求められるところ、カフ12に使用される袋状構造体32の材質は、高い柔軟性を有することが好ましい。このため、従前においては、袋状構造体は、エラストマー材料が多用されていた。このエラストマー材料は、柔らかさを付与するために可塑剤が添加されることが多いが、可塑剤は、使用環境下において可塑剤が経時での滲みだす、所謂ブリードアウトのリスクが有る。エラストマー材料に可塑剤の滲みだしが発生すると、エラストマー材料は硬化し、結果、血管圧迫特性が低下する。また、接触する人肌に対しても、かぶれ等が発生する虞がある。
【0063】
一方で、可塑剤を含まないエラストマー材料は、前述のリスクは無いが、低分子成分の比率が高く、粘着性を示し、生体への装着時に、人肌に張り付くことが見出されている。この粘着性は、人肌面の滑り性を阻害し、血管圧迫特性を悪化させる。加えて、人体への触感も著しく低下させる。
【0064】
また、高い柔軟性を有するエラストマー材料は、膨張及び伸縮を繰り返すことで、クリープによる弛みが発生する。この弛みは、圧迫時に圧力損失を発生し、血管圧迫特性を阻害する。
【0065】
本実施形態に係るカフ12の袋状構造体32は、第1シート部材41及び第2シート部材42の内層である第2層41b、42bに、TPUにより成形され、Shore A硬度65以下の柔軟な熱可塑性エラストマーを用いる。また、袋状構造体32は、第1シート部材41及び第2シート部材42の外層である第1層41a、42a及び第3層41c、42cに、TPUにより成形され、Shore A硬度70以上の硬質な熱可塑性エラストマーを用いる。これにより、第1シート部材41及び第2シート部材42は、柔軟な材料で構成される層が硬質な材料で構成される層に覆われた多層構造を有する。
【0066】
このため、袋状構造体32は、第2層41b、42bにより、血管圧迫特性が得られるとともに、第1層41a、42a及び第3層41c、42cにより、高いクリープ耐性が得られる。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の対向面を構成する第1層41a及び第3層42c、並びに、生体に接触する第2シート部材42の第1層42aを硬質な材料で構成するため、第1シート部材41及び第2シート部材42は、粘着性を有さず、結果、滑り性が良となる。結果、袋状構造体32は、膨張時に、第1シート部材41及び第2シート部材42が粘着した状態によって膨張が阻害されることを防止できるとともに、人肌に第2シート部材42が粘着することを防止し、結果、血管圧迫特性が低減することを防止できる。
【0067】
[変形例]
次に、袋状構造体32に用いる第1シート部材41及び第2シート部材42の変形例について、
図7乃至
図11を用いて説明する。
図7は、第1の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41A、第2シート部材42Aの構成を示す断面図、
図8は、第2の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41B、第2シート部材42Bの構成を示す断面図、
図9は、第3の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41C、第2シート部材42Cの構成を示す断面図、
図10は、第4の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41D、第2シート部材42Dの構成を示す断面図、
図11は、第5の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41Eの構成を示す断面図である。
【0068】
[第1の変形例]
図7に示すように、第1の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41A、第2シート部材42Aは、2種類の材料が5積層された2種5層構造に構成される。第1シート部材41A及び第2シート部材42Aは、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。この熱可塑性エラストマーは、上述した第1シート部材41及び第2シート部材42と同等の材料が用いられる。
【0069】
図7に示すように、第1シート部材41Aは、第1層41aと、第2層41bと、第3層41cと、第4層41dと、第5層41eと、を備える。第1層41aは、第1シート部材41Aの、第2シート部材42A側の外層を構成する。第2層41b、第3層41c及び第4層41dは、第1シート部材41Aの内層を構成する。第5層41eは、第1シート部材41Aの、基材31側の外層を構成する。
【0070】
第1シート部材41Aは、第1層41a、第3層41c及び第5層41eが、第2層41b及び第4層41dよりもShore A硬度が高い材料により構成される。例えば、第1層41a、第3層41c及び第5層41eは、同じ材料により構成され、第2層41b及び第4層41dは同じ材料により構成される。
【0071】
具体例として、第1層41a及び第3層41cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上でのTPUが用いられる。また、第2層41bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。
【0072】
また、第1シート部材41Aの層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第1シート部材41Aの厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層41aの厚さをT1a、第2層41b、第3層41c及び第4層41dの積算厚さT2b、第5層41eの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0073】
なお、第1シート部材41Aは、3種5層構造、4種5層構造、5種5層構造であってもよい。即ち、第1シート部材41Aは、少なくとも第2シート部材42Aと対向する第1層41aが粘着性を有さないShore A硬度を有する材料で構成されれば、適宜設定可能である。粘着性を有さないShore A硬度とは、例えばTPUの場合は、一般的に60以下とされている。
【0074】
このような第1シート部材41Aは、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41Aの厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。
【0075】
第2シート部材42Aは、第1層42aと、第2層42bと、第3層42cと、第4層42dと、第5層42eを有し、第1シート部材41Aと同じ構成の2種5層構造及び層構成比に構成される。このため、第2シート部材42Aの詳細な構成は省略する。なお、第1層42aは、第2シート部材42の、生体側の外層を構成する。第5層41eは、第2シート部材42Aの、第1シート部材41A側の外層を構成する。第2シート部材42Aは、生体と対向する第1層42a及び第1シート部材41Aと対向する第5層41eが粘着性を有さないShore A硬度を有する材料で構成されれば、適宜設定可能である。
【0076】
このように構成された第1シート部材41A及び第2シート部材42Aを含む袋状構造体32は、上述した一実施形態に係る第1シート部材41及び第2シート部材42を含む袋状構造体32と同等の効果を奏する。
【0077】
[第2の変形例]
図8に示すように、第2の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、3種類の材料が3積層された3種3層構造に構成される。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。この熱可塑性エラストマーは、上述した第1シート部材41及び第2シート部材42と同等の材料が用いられる。
【0078】
図8に示すように、第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、第1層41a、42aと、第2層41b、41bと、第3層41c、41cと、を備える。第1シート部材41Bの第1層41aは、第1シート部材41Bの、第2シート部材42B側の外層を、第2シート部材42Bの第1層41aは、第2シート部材42Cの、生体側の外層を構成する。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、生体、又は第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの他方と対向する外層が粘着性を有さない硬度に設定される。
【0079】
第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、第1層41a、42a及び第3層41c、42cが、第2層41b、42bよりもShore A硬度が高い材料により構成される。また、第1層41a、42a及び第3層41c、42cは、異なる材料により構成される。
【0080】
具体例として、第1層41a、42aには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上であり、且つ、第1層41a、42aとは組成が異なるTPUが用いられる。
【0081】
また、第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第1シート部材41Bの厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層41aの厚さをT1a、第2層41bの厚さT2b、第3層41cの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0082】
このような第1シート部材41B及び第2シート部材42Bは、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。
【0083】
このように構成された第1シート部材41B及び第2シート部材42Bを含む袋状構造体32は、上述した一実施形態に係る第1シート部材41及び第2シート部材42を含む袋状構造体32と同等の効果を奏する。
【0084】
[第3の変形例]
図9に示すように、第3の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、3種類の材料が3積層された3種4層構造に構成される。第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。この熱可塑性エラストマーは、上述した第1シート部材41及び第2シート部材42と同等の材料が用いられる。
【0085】
図9に示すように、第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、第1層41a、42aと、第2層41b、41bと、第3層41c、41cと、第4層41d、42dと、を備える。第1シート部材41Cの第1層41aは、第1シート部材41Cの、第2シート部材42C側の外層を、第2シート部材42Cの第1層41aは、第2シート部材42Cの、生体側の外層を構成する。第1シート部材41C及び第2シート部材42Cの第2層41b、42b及び第3層41c、42cは、第1シート部材41C及び第2シート部材42Cの内層を構成する。第1シート部材41Cの第4層41dは、第1シート部材41Cの、基材31側の外層を、第2シート部材42Cの第4層42dは、第2シート部材42Cの、第1シート部材41C側の外層を構成する。
【0086】
第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、生体、又は第1シート部材41C及び第2シート部材42Cの他方と対向する外層が粘着性を有さない硬度に設定される。
【0087】
第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、第1層41a、42a、第3層41c、42c及び第4層41d、42dが、第2層41b、42bよりもShore A硬度が高い材料により構成される。また、第1層41a、42a及び第4層41d、42dが同じ材料により、そして、第1層41a、42a、第2層41b、42b、並びに、第3層41c、42cは、異なる材料により構成される。
【0088】
具体例として、第1層41a、42a及び第4層41d、42dには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上であり、且つ、第1層41a、42a及び第4層41d、42dとは組成が異なるTPUが用いられる。なお、第3層41c、42cは、例えば、第1シート部材41C及び第2シート部材42Cの柔軟性を調整するために設けられる。
【0089】
また、第1シート部材41Cの層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第1シート部材41の厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層41aの厚さをT1a、第2層41b及び第3層41cの積算厚さT2b、第4層41dの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0090】
このような第1シート部材41C及び第2シート部材42Cは、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41C及び第2シート部材42Cの厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。
【0091】
このように構成された第1シート部材41C及び第2シート部材42Cを含む袋状構造体32は、上述した一実施形態に係る第1シート部材41及び第2シート部材42を含む袋状構造体32と同等の効果を奏する。
【0092】
[第4の変形例]
図10に示すように、第4の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、3種類の材料が7積層された3種7層構造に構成される。第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。この熱可塑性エラストマーは、上述した第1シート部材41及び第2シート部材42と同等の材料が用いられる。
【0093】
図10に示すように、第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、第1層41a、42aと、第2層41b、41bと、第3層41c、41cと、第4層41d、42dと、第5層41e、42eと、第6層41f、42fと、第7層41g、42gと、を備える。第1シート部材41Dの第1層41aは、第1シート部材41Dの、第2シート部材42D側の外層を、第2シート部材42Dの第1層41aは、第2シート部材42Dの、生体側の外層を構成する。第1シート部材41D及び第2シート部材42Dの第2層41b、42b乃至第6層41f、42fは、第1シート部材41D及び第2シート部材42Dの内層を構成する。第1シート部材41Dの第7層41gは、第1シート部材41Dの、基材31側の外層を、第2シート部材42Dの第7層42gは、第2シート部材42Dの、第1シート部材41D側の外層を構成する。
【0094】
第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、生体、又は第1シート部材41D及び第2シート部材42Dの他方と対向する外層が粘着性を有さない硬度に設定される。
【0095】
第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、第1層41a、42a、第3層41c、42c、第4層41d、42d及び第6層41f、42f、第7層41g、42gが、第2層41b、42b及び第5層41e、42eよりもShore A硬度が高い材料により構成される。また、第1層41a、42a、第4層41d、42d及び第7層41g、42gが同じ材料により、第3層41c、42c及び第6層41f、42fが同じ材料により構成される。そして、第1層41a、42a、第4層41d、42d及び第7層41g、42g、並びに第3層41c、42c及び第6層41f、42fが異なる材料により構成される。
【0096】
具体例として、第1層41a、42a、第4層41d、42d及び第7層41g、42gには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。第2層41b、42b及び第5層41e、42eには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。第3層41c、42c及び第6層41f、42には、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上であり、且つ、第1層41a、42a及び第4層41d、42dとは組成が異なるTPUが用いられる。なお、例えば、第3層41c、42c及び第6層41f、42は、第1シート部材41D及び第2シート部材42Dの柔軟性を調整するために設けられる。
【0097】
また、第1シート部材41Dの層構成比は、厚み比率として、外層の厚さをT1、内層の厚さをT2としたときに、1:2:1≦T1:T2:T1≦1:20:1に構成される。好ましくは、第1シート部材41の厚み比率は、1:4:1≦T1:T2:T1≦1:10:1に構成される。即ち、第1層41aの厚さをT1a、第2層41b、第3層41c、第4層41d、第5層41e、第6層41fの積算厚さT2b、第7層41gの厚さT1cとすると、T1a:T2b:T1cは1:2:1乃至1:20:1に、好ましくは、1:4:1乃至1:10:1に構成される。
【0098】
このような第1シート部材41D及び第2シート部材42Dは、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41D及び第2シート部材42Dの厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。
【0099】
このように構成された第1シート部材41D及び第2シート部材42Dを含む袋状構造体32は、上述した一実施形態に係る第1シート部材41及び第2シート部材42を含む袋状構造体32と同等の効果を奏する。
【0100】
[第5の変形例]
図11に示すように、第5の変形例に係る袋状構造体32の第1シート部材41Eは、2種類の材料が2積層された2種2層構造に構成され、第2シート部材42Eは、上述した一実施形態に係る袋状構造体32の第2シート部材42と同一の構成である。第1シート部材41Eは、熱可塑性エラストマーにより構成されたシート状の部材である。この熱可塑性エラストマーは、上述した第1シート部材41と同等の材料が用いられる。
【0101】
図11に示すように、第1シート部材41Eは、第1層41aと、第2層41bと、を備える。第1シート部材41Eの第1層41aは、第1シート部材41Eの、第2シート部材42側の外層を、第2層41bは、基材31側の外層を構成する。
【0102】
第1シート部材41Eは、第2シート部材42と対向する外層が粘着性を有さない硬度に設定される。第1シート部材41Eは、第1層41aが、第2層41bよりもShore A硬度が高い材料により構成される。
【0103】
具体例として、第1層41aには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70以上のTPUが用いられる。第2層41bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65以下のTPUが用いられる。
【0104】
このような第1シート部材41Eは、例えば、Tダイ押出し法やインフレーション法で成形される。第1シート部材41Eの厚さは、好ましくは0.05mm乃至0.50mmの範囲内にあり、より好ましくは0.10mm乃至0.40mmの範囲内にある。
【0105】
このように構成された第1シート部材41E及び第2シート部材42を含む袋状構造体32は、上述した一実施形態に係る第1シート部材41及び第2シート部材42を含む袋状構造体32と同等の効果を奏する。また、第1シート部材41Eの基材31側の外層は、粘着性を有することになるが、基材31の内面に接合層31aを介して接合されることから、袋状構造体32の機能に影響が生じない。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限定されない。例えば、袋状構造体32は、生体と接触する外層及び空気室内に露出する外層が粘着性を有さないShore A硬度で構成されるとともに、本発明の作用効果を満足すれば上記構成に限定されない。即ち、袋状構造体32は、上記実施形態及び変形例の構成のシート部材を適宜組み合わせて構成されていてもよい。
【0107】
また、上述した実施形態及び各変形例においては、説明の便宜上、第1シート部材41及び第2シート部材42は、生体100側から基材31に向かって、第1層、第2層、第3層といったように複数の層を示したが、この数字によりなんら限定されるものではない。例えば、第1シート部材41及び第2シート部材42は、上記実施形態及び各変形例の構成を有していれば、外層を第1層及び第2層とし、内層を第3層と示してもよい。
【0108】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【実施例】
【0109】
本発明の特徴をより具体的にするために、以下、実施例及び評価試験について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:8:1とした。
【0111】
[実施例2]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:8:1とした。
【0112】
[実施例3]
袋状構造体32を3種3層構造の第1シート部材41B及び第2シート部材42Bにより作製した。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの第1層41a、42aには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65のTPUを用いた。第1シート部材41B及び第2シート部材42Bの第3層41c、42cは、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が75のTPUを用いた。
【0113】
第1シート部材41Bの厚さは、0.15mmである。第2シート部材42Bの厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:8:1とした。
【0114】
[実施例4]
袋状構造体32を2種5層構造の第1シート部材41A及び第2シート部材42Aにより作製した。第1シート部材41A及び第2シート部材42Aの第1層41a、42a、第3層41c、42c及び第5層41e、42eには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41A及び第2シート部材42Aの第2層41b、42b及び第4層41d、42dには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65のTPUを用いた。
【0115】
第1シート部材41Aの厚さは、0.15mmである。第2シート部材42Aの厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:8:1とした。
【0116】
[実施例5]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:2:1とした。即ち、実施例5の袋状構造体32は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比が異なる構成である。
【0117】
[実施例6]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:4:1とした。即ち、実施例6の袋状構造体32は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比が異なる構成である。
【0118】
[実施例7]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:10:1とした。即ち、実施例7の袋状構造体32は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比が異なる構成である。
【0119】
[実施例8]
袋状構造体32を2種3層構造の第1シート部材41及び第2シート部材42により作製した。第1シート部材41及び第2シート部材42の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材41及び第2シート部材42の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材41の厚さは、0.15mmである。第2シート部材42の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比は、T1:T2:T1=1:20:1とした。即ち、実施例8の袋状構造体32は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比が異なる構成である。
【0120】
[比較例1]
実施例1乃至実施例4と比較する比較例1として、袋状構造体を、単層の第1シート部材及び第2シート部材により作製した。第1シート部材及び第2シート部材のShore A硬度は65であり、第1シート部材41Aの厚さは、0.15mmである。
【0121】
[比較例2]
実施例1乃至実施例4と比較する比較例2として、袋状構造体を、単層の第1シート部材及び第2シート部材により作製した。第1シート部材及び第2シート部材のShore A硬度は70であり、第1シート部材41Aの厚さは、0.15mmである。
【0122】
[比較例3]
実施例1乃至実施例4と比較する比較例3として、袋状構造体を2種3層構造の第1シート部材及び第2シート部材により作製した。なお、比較例3の第1シート部材及び第2シート部材は、外層のShore A硬度が内層のShore A硬度よりも低い値で設定している。具体的には、第1シート部材及び第2シート部材の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が65のTPUを用いた。第1シート部材及び第2シート部材の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が70のTPUを用いた。第1シート部材41Aの厚さは、0.15mmである。第2シート部材42Aの厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比は、T1:T2:T1=1:25:1とした。
【0123】
[比較例4]
実施例2、実施例5乃至実施例8と比較する比較例4として、袋状構造体を2種3層構造の第1シート部材及び第2シート部材により作製した。第1シート部材及び第2シート部材の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材及び第2シート部材の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材の厚さは、0.15mmである。第2シート部材の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比は、T1:T2:T1=1:1:1とした。即ち、比較例4の袋状構造体は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比が異なる構成である。
【0124】
[比較例5]
実施例2、実施例5乃至実施例8と比較する比較例4として、袋状構造体を2種3層構造の第1シート部材及び第2シート部材により作製した。第1シート部材及び第2シート部材の第1層41a、42a及び第3層41c、42cには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が95のTPUを用いた。第1シート部材及び第2シート部材の第2層41b、42bには、熱可塑性エラストマーとして、Shore A硬度が60のTPUを用いた。第1シート部材の厚さは、0.15mmである。第2シート部材の厚さは、0.15mmである。また、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比は、T1:T2:T1=1:25:1とした。即ち、比較例5の袋状構造体は、実施例2の袋状構造体32と、第1シート部材41及び第2シート部材42の層構成比が異なる構成である。
【0125】
[評価試験1]
評価試験1として、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5の袋状構造体32の肌触感評価試験を行った。
【0126】
肌触感評価試験としては、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5で作成した袋状構造体32を血圧計1のカフ12に組み立て、任意に選択した10人に対して当該血圧計1のカフ12を装着し、血圧計1を使用した。このときの肌触感として、滑り性が無く、粘着感、引掛り感のあるものを×、滑り性が良く付け心地がよいものを〇と判断し、○が10人中10人である袋状構造体32を良とし、それ以外を不良と判断した。
【0127】
[評価試験2]
評価試験2として、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5の袋状構造体32の血管圧迫特性評価試験を行った。
【0128】
血管圧迫特性評価試験としては、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5で作成した袋状構造体32を組み立てた血圧計1で実際に同一人に対して上腕式血圧計と実施例、および比較例で作成した血圧計で、交互に血圧をそれぞれ10回計測した。
【0129】
ここで上腕式血圧計として、オムロンヘルスケア株式会社製の上腕式血圧計 型式HEM−7120を用いた。また、上腕式血圧計は、上腕に、実施例及び比較例の血圧計1は、手首に、それぞれ装着した。10回分の血圧値の差分の標準偏差が7mmHg以上であった袋状構造体32は、血管圧迫特性が悪く、計測精度がバラつくとして不良とし、標準偏差が7mmHgを下回った袋状構造体32は、血管圧迫特性が良く、計測精度が安定するとして良と判断した。
【0130】
[評価試験3]
評価試験3として、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5の袋状構造体32の繰返し耐久性評価試験を行った。
【0131】
繰返し耐久性評価試験としては、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例5で作成した袋状構造体32を組み立てた血圧計1を、袋状構造体32の内圧が300mmHgの圧力となるまで膨張させ、その後減圧して収縮させる工程を1万回繰り返した。膨張及び収縮前と、1万回膨張及び収縮を繰り返した後の袋状構造体32の伸びにより弛みを測定し、袋状構造体32に5%以上の弛みが生じているものを不良、5%を下回るものを良と判断した。
【0132】
[評価試験の結果]
上記評価試験1乃至評価試験3の結果として、の表1及び表2に評価試験の結果を示す。なお、評価試験の結果を明らかとするために、表1においては、袋状構造体32の層構成比率が同一である複数の層を有する実施例1乃至実施例4及び比較例3、並びに、単層の比較例1及び比較例2の評価結果を示す。また、同理由から、表2においては、同一の材料で複数の層が構成され、そして、層構成比率の異なる実施例2、実施例5乃至実施例7並びに比較例4及び比較例5の評価試験の結果を示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1に示すように、実施例1乃至実施例4は、評価試験1の肌触感、評価試験2の血管圧迫特性、及び、評価試験3の繰返し耐久性ともに良であった。
【0135】
これに対し、比較例1は、評価試験1の肌触感、評価試験2の血管圧迫特性、及び、評価試験3の繰返し耐久性のすべてが不良であった。比較例1の袋状構造体は、ShoreA硬度65と柔らかいTPU材料の単層シートを用いることから、袋状構造体が粘着性を示すため、人肌の触感が悪化する他、粘着性により、膨張時に生体を圧迫した際に人肌面への馴染み性が悪く、血管圧迫特性も悪化することが要因と考えられる。また、ShoreA硬度65と柔らかいため、袋状構造体の繰返し耐久性であるクリープ耐性も低下すると考えられる。
【0136】
比較例2は、評価試験1の肌触感、及び評価試験3の繰返し耐久性は良であったが、評価試験2の血管圧迫特性は不良であった。比較例2の袋状構造体は、ShoreA硬度70と、比較的硬い材料であることから、粘着性を有さず、且つ、クリープによる弛みが少ないものの、膨張時に生体を圧迫した際に人肌面への追従性が低く、結果、血管圧迫特性が悪化することが要因と考えられる。
【0137】
比較例3は、評価試験1の肌触感、評価試験2の血管圧迫特性、及び、評価試験3の繰返し耐久性のすべてが不良であった。これは、比較例3が2種3層構造の第1シート部材及び第2シート部材を用いているが、一実施形態の第1シート部材41及び第2シート部材42の2種3層構造の層構成を逆転させた構成である。このため、比較例3の袋状構造体は、外層がShoreA硬度65である柔らかいTPUにより形成されることから、袋状構造体の外面に粘着性を有することになり、結果、粘着性を要因として、肌触感、血管圧迫特性及び繰返し耐久性が悪化することが要因と考えられる。
【0138】
【表2】
【0139】
表2に示すように、実施例2、実施例5乃至実施例7は、評価試験1の肌触感、評価試験2の血管圧迫特性、及び、評価試験3の繰返し耐久性ともに良であった。
【0140】
これに対し、比較例4は、評価試験1の肌触感及び評価試験3の繰返し耐久性は良であったが、評価試験2の血管圧迫特性が不良であった。これは、比較例4の袋状構造体は、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比がT1a:T2b:T1c=1:1:1であり、内層である第2層41b、42bが第1シート部材及び第2シート部材の総厚さに占める割合が小さい。このため、比較例4の袋状構造体は、内層の割合が少ないことから、外層である第1層41a、42a及び第3層41c、42cの物性が支配的となる。結果、比較例4の袋状構造体は、硬質となることから、粘着性を有さず、且つ、クリープによる弛みが少ないものの、柔軟性を得ることが難しくなり、膨張時に生体を圧迫した際に人肌面への追従性が低くなる。これにより比較例4の袋状構造体の血管圧迫特性が悪化することが要因と考えられる。
【0141】
また、比較例5は、評価試験1の肌触感及び評価試験2の血管圧迫特性は良であったが、評価試験3の繰返し耐久性が不良であった。これは、比較例5の袋状構造体は、第1シート部材及び第2シート部材の層構成比がT1a:T2b:T1c=1:25:1であり、内層である第2層41b、42bが第1シート部材及び第2シート部材の総厚さに占める割合が大きい。このため、比較例5の袋状構造体は、外層である第1層41a、42a及び第3層41c、42cの物性の寄与が難しくなり、第1シート部材及び第2シート部材が柔らかくなる。結果、比較例5の袋状構造体は、粘着性を有さず、且つ、膨張時に生体を圧迫した際に人肌面への追従性が高いものの、クリープによる弛みが増加することが要因と考えられる。
【0142】
これらの結果から、血圧計1のカフ12に用いられる袋状構造体32を上記実施形態及び各変形例の構成とすることで、高いクリープ耐性と柔軟性との両立を達成することができ、血圧計1のカフ12として適正な機能を有することが示された。また、袋状構造体32は、第1シート部材41及び第2シート部材42の2枚の部材を接合することで構成されることから、適正な機能を有していても、加工コストを抑制できることが示された。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 熱可塑性エラストマーからなる層を含む第1シート部材と、
異なる硬度を有する複数種の熱可塑性エラストマーからなる複数の層を含む第2シート部材と、を備え、
前記第2シート部材は、前記第1シート部材と接合され、
前記第2シート部材の複数の層のうち生体と接触する層のShore A硬度が、前記第2シート部材の他の少なくとも一つの層よりも高い袋状構造体。
[2] 前記第2シート部材は、熱可塑性エラストマーからなる層を3層以上含み、前記生体と接触する第1層と、前記第1シート部材と接触する第2層との間に、これらの層よりもShoreA硬度が低い第3層を含む、[1]に記載の袋状構造体。
[3] 前記第1層及び前記第2層は、同じ厚さに構成され、
前記第2シート部材の層構成比は、前記第1層の厚さ及び前記第2層の厚さをT1、並びに、前記第3層の厚さをT2としたときに、T1:T2:T1が1:2:1乃至1:20:1のいずれかに構成される、[2]に記載の袋状構造体。
[4] 前記第2シート部材は、前記第1層及び前記第2層がShoreA硬度70以上の熱可塑性エラストマーからなり、前記第3層がShoreA硬度65以下の熱可塑性エラストマーからなる、[2]に記載の袋状構造体。
[5] 前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン樹脂である、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の袋状構造体。
[6] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載の袋状構造体と、
前記第1シート部材と接合される基材と、
を備える血圧計用カフ。
[7] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載の袋状構造体、及び、前記第1シート部材と接合される基材を具備するカフと、
前記袋状構造体に圧縮空気を供給するポンプと、
前記ポンプにより供給された前記圧縮空気により膨張した前記袋状構造体を収縮させる開閉弁と、
前記袋状構造体の圧力を検出する圧力センサと、
前記ポンプ及び前記開閉弁を制御し、前記圧力センサで検出された圧力情報に基づいて血圧値を求める制御部と、
を備える血圧計。