【実施例】
【0025】
以下、本実施例にかかる判定装置としてのサーバ装置を組み込んだ判定システムを
図1及び
図2を参照して説明する。
【0026】
判定システム1は、判定装置としてのサーバ装置10と、移動体としての車両に搭載された端末装置としてのナビゲーション装置20と、を備えている。
【0027】
サーバ装置10は、事業所などに設置されたコンピュータなどで構成されている。このサーバ装置10は、インターネットや公衆回線網などの通信網に接続されている。サーバ装置10は、ナビゲーション装置20と通信網を介して通信可能となっている。
【0028】
サーバ装置10は、
図1に示すように、制御部11と、通信部12と、地図データベース13と、施設データベース14と、記憶部15と、を備えている。
【0029】
制御部11は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)を含んで構成されている。制御部11は、サーバ装置10の全体制御を司る。
【0030】
制御部11は、出力制御部として働き、音声をナビゲーション装置20に送信する処理を行う。ナビゲーション装置20は、受信した音声を音声出力部28から出力し、出力した音声に対する搭乗者(例えば助手席の搭乗者)の応答を音声入力部25で集音してサーバ装置10に送信する。制御部11は、第1取得部として働き、ナビゲーション装置20からの応答を受信する。また、制御部11は、第1判定部及び第2判定部として働き、受信した応答に基づいて認知症の試験を受ける必要があるか否かを判定する処理などを行う。
【0031】
通信部12は、通信網に接続され、ナビゲーション装置20との通信を行う。
【0032】
地図データベース13は、道路を利用して目的地に向かう場合の所要時間や予定到着時刻を算出したり、目的地への経路を作成したりするための地図データが格納されているデータベースである。
【0033】
施設データベース14は、目的地となる施設の情報などを検索する際に用いるデータベースであり、コンビニエンスストアやレストラン、公園、駅、或いは休憩所などの施設の名称が、ジャンル、位置情報(緯度、経度)などに紐付けられて格納されている。
【0034】
記憶部15は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置で構成されている。記憶部15は、サーバ装置10での処理に必要な各種情報が記憶される。
【0035】
本実施例において、サーバ装置10は、
図1において1つのサーバ装置10で構成されていたが、これに限定されず、例えば、別のサーバ装置10に各データベースが設けられていてもよい。さらに、制御部11が行う動作と通信部12が行う動作を別々のサーバ装置10(演算サーバ装置と配信サーバ装置)に分割してもよい。即ち、サーバ装置10は複数のサーバ装置群で構成されていてもよい。このような場合、各サーバ装置10は互いに離れた位置に設置され、通信網を通じて通信し合うように構成されていてもよい。
【0036】
ナビゲーション装置20は、
図2に示すように制御部21と、送信部としての通信部22と、GPS受信部23と、記憶装置24と、音声入力部25と、操作部26と、表示部27と、出力部としての音声出力部28と、を備えている。
【0037】
制御部21は、例えばRAMやROMなどのメモリを備えたCPUで構成され、ナビゲーション装置20全体の制御を司る。
【0038】
通信部22は、通信網に接続され、サーバ装置10との通信を行う。なお、本実施例では、通信部22が、ナビゲーション装置20に一体に設けられている例を示すが、カード型の通信装置や携帯電話をケーブル等で接続するなど通信部22が別体として構成され、ナビゲーション装置20と着脱自在となっていてもよい。
【0039】
GPS受信部23は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、現在位置及び現在時刻を求めて制御部21に出力する。なお、本実施例では、GPS受信部23がナビゲーション装置20に一体に設けられている例を示すが、GPS受信部23が別体として構成され、ナビゲーション装置20と着脱自在となっていてもよい。
【0040】
記憶装置24は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成されており、制御部21がナビゲーション装置20を制御するためのプログラムやデータ、表示部27が表示する地図データ等が格納され、制御部21からの制御により読み書きがなされる。
【0041】
音声入力部25は、マイク等から構成され、ユーザの発話を集音する。
【0042】
操作部26は、ボタンやタッチパネルなどの入力部で構成されている。操作部26は、ナビゲーション装置20の各種入力操作が行われ、入力操作を示す制御信号が制御部21に出力される。
【0043】
表示部27は、液晶ディスプレイや該液晶ディスプレイを制御するドライバ回路等から構成されている。
【0044】
音声出力部28は、スピーカおよびスピーカを駆動するアンプ等から構成され、制御部21からの制御により経路案内音声などが出力される。
【0045】
次に、上述した構成の判定システム1の動作の一例について
図3を参照して説明する。
図3のフローチャートは、サーバ装置10で実行される。また、サーバ装置10の制御部11が、このフローチャートをコンピュータプログラムとすることで、判定方法をコンピュータにより実行される判定プログラムとなる。
【0046】
ナビゲーション装置20の制御部21(以下、ナビゲーション装置20と略記する)は、車両の助手席への乗車を検出すると、通信部22からその旨をサーバ装置10に送信する。ここで、イグニッションスイッチ(キースイッチ)やプッシュスイッチの操作された(ONになった)ことを検出したとき、ナビゲーション装置20が車両の助手席への乗車を検出するようにしてもよい。また、ドアの施錠が解除された後、助手席側のドアの開閉が行われたことを検出したときや、車両の助手席への着座が検出されたときに、乗車を検出することも考えられる。
【0047】
サーバ装置10の制御部11(以下、サーバ装置10と略記する)は、ナビゲーション装置20から乗車検出した旨を受信すると、搭乗者との音声対話により認知症の判定を行う判定処理を開始する。尚、ここでは、サーバ装置10が、不図示のカメラを用いて搭乗者を認識し、搭乗者を特定するようにしてもかまわない。また、顔を認識させることに限らず、サーバ装置10に予め搭乗者として複数のユーザを登録し、サーバ装置10は、表示部27に複数のユーザを表示させ、当該搭乗者に操作部26を操作させ、自身を選択させることにより、搭乗者を特定できるようにしてもよい。その他、公知技術を用いて、搭乗者を特定してもよい。
【0048】
サーバ装置10は、判定回数nがN回(所定回数)以上であるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、判定回数nとは、音声対話における助手席の搭乗者の応答に、認知症の疑いがある応答であるとの判定された回数である。
【0049】
判定回数nがN回以上でなければ(ステップS1でN)、サーバ装置10は、行先確認を行い、その応答による認知症の判定処理を行う(ステップS2)。ステップS2において、サーバ装置10は、助手席に座っている搭乗者に行き先を確認するための音声データをナビゲーション装置20に送信する。ナビゲーション装置20は、音声データを受信すると、音声出力部28から音声データを出力する。これにより、音声出力部28から例えば「今日はどこに行きますか?」との音声が出力される。
【0050】
その後、ナビゲーション装置20は、音声入力部25への音声の入力を受け付ける。搭乗者が上記音声に対して応答すると、音声入力部25に入力される。応答が入力されると、ナビゲーション装置20は、通信部22を制御してサーバ装置10に対して応答を送信する。応答を受信すると、サーバ装置10は、その応答が認知症の疑いがある応答であるか否かを判定する。
【0051】
上記ステップS2における認知症の判定処理の具体的な一例について説明する。サーバ装置10は、搭乗者が応答するまの応答時間に基づいて、判定を行うようにしてもよい。例えば、所定時間待っても応答がない場合、サーバ装置10は、認知症の疑いがある応答であると判定する。
【0052】
また、サーバ装置10は、「えーっと、えーっと」を繰り返すなど行先でない応答である場合や、応答が施設データベース14に登録されていない行先であった場合も、認知症の疑いがある応答であると判定するようにしてもよい。
【0053】
また、サーバ装置10は、現在位置と搭乗者が応答した行先の位置とに基づいて判定を行うようにしてもよい。例えば、現在位置が東京であるにも関わらず、国外の地名や沖縄、八丈島など飛行機で行く必要があり、車両だけでは行くことができにない場所を行先とした場合は、認知症の疑いがある応答であると判定することができる。また、現在位置と行先との距離が第1所定距離以上離れていた場合、認知症の疑いがある応答であると判定するようにしてもよい。また、行先と現在位置とが同じ場所であったり、行先と現在位置との距離が車両を利用するには近すぎる場所である場合、認知症の疑いがある応答であると判定するようにしてもよい。
【0054】
また、サーバ装置10は、現在時刻又は到着予測時刻と行先とに基づいて、判定してもよい。例えば、現在時刻又は到着予測時刻が真夜中なのに、その時間、閉園しているレジャー施設を行先とした場合や、24時間の救急設備がなく、その時間、閉院している病院を行先とした場合、認知症の疑いがある応答であると判定する。
【0055】
応答が「決めてない」など行先が決まっていないことを示すものである場合は、サーバ装置10は、認知症の疑いがない応答であると判定する。
【0056】
なお、搭乗者が操作部26により音声対話のキャンセル操作を行うと、サーバ装置10は直ちに判定処理を終了する。この場合、サーバ装置10により認知症の疑いがある応答であるか否かの判定は行われず、判定回数nは加算されない。
【0057】
上記判定を行った結果、認知症の疑いのある応答であれば(ステップS2でY)、サーバ装置10は、判定回数nに1を加算した後(ステップS5)、ステップS1に戻る。一方、認知症の疑いがある応答でなければ(ステップS2でN)、サーバ装置10は、応答された行先を目的地として設定し、ナビゲーションを開始する(ステップS3)。
【0058】
その後、サーバ装置10は、所定のタイミングでしりとりを行い、その応答による認知症の判定処理を行う(ステップS4)。所定のタイミングとは、例えば、信号待ちなど車両の速度が0になるタイミングでもよいし、風景の変化が少ない高速道路の走行中や、渋滞した道路の走行中など、搭乗者が退屈してしまうようなタイミングでもよい。ステップS4において、サーバ装置10は、ナビゲーション装置20と通信を行い、ナビゲーション装置20の音声出力部28から「しりとりをしませんか?まずはしりとりの「り」から。」との音声を出力する。本実施例では、「り」からしりとりを始めているが、これに限ったものではなく、毎回異なる単語であってもよい。
【0059】
搭乗者が上記音声に対して応答すると、音声入力部25に入力される。応答が入力されると、ナビゲーション装置20は、通信部22を制御してサーバ装置10に対して応答を送信する。応答を受信すると、サーバ装置10は、その応答が認知症の疑いがある応答であるか否かを判定する。
【0060】
上記ステップS4における認知症の判定処理の具体的な一例について説明する。サーバ装置10は、搭乗者が応答するまでの応答時間に基づいて、判定を行うようにしてもよい。例えば、所定時間待っても応答がない場合、サーバ装置10は、認知症の疑いがある応答であると判定する。
【0061】
また、搭乗者の応答の始まりの単語が間違っていた場合、サーバ装置10は、認知症の疑いがある応答であると判定するようにしてもよい。また、サーバ装置10は、応答の始まりの単語が合っていれば、応答の終わりの単語が「ん」であっても、認知症の疑いがない応答であると判定する。
【0062】
応答がしりとりをやりたくないことを示すものであれば、サーバ装置10は、認知症の疑いがない応答であると判定し(ステップS4でY)、処理を終了する。認知症の疑いがある応答であるか否かの判定は、最初のm回の応答に対して行われ、m回以降の応答に対しては行われない。サーバ装置10は、最初のm回の応答が認知症の疑いがない応答であれば、認知症の疑いがない応答であると判定し(ステップS4でY)、どちらかが負けるまでしりとりを続けた後、処理を終了する。
【0063】
上記判定を行った結果、認知症の疑いがある応答であれば(ステップS4でY)、サーバ装置10は、判定回数nに1を加算した後(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0064】
判定回数nに1を加算した結果(ステップS5、S6)、判定回数nがN回以上になると(ステップS1でY)、サーバ装置10は、提示制御部として働き、認知症の試験を受ける必要があると判定して、ナビゲーション装置20に認知症用の試験問題を送信して、提示させる(ステップS7)。試験問題の提示は、表示部27を用いてもよいし、音声出力部28を用いてもよいし、表示部27及び音声出力部28の両方を用いてもよい。この提示に応じて搭乗者が回答を入力する。回答の入力は音声入力部25を用いてもよいし、操作部26を用いてもよい。認知症用の試験問題は、例えば、病院や運転免許センターなどで用いられている問題である。
【0065】
ナビゲーション装置20は、入力された回答をサーバ装置10に送信する。サーバ装置10は、第2取得部及び第3判定部として働き、回答を受信すると、その回答に基づいて認知症の疑いがあるか否かを判定し(ステップS8)、判定した結果をナビゲーション装置20に表示させて処理を終了する。
【0066】
上述した実施例によれば、サーバ装置10が、車両の搭乗者に向かって音声を出力させ、搭乗者の応答が認知症の疑いがある応答であるか否かを判定し、認知症の疑いがある応答であるとの判定回数nがN回以上のときに、認知症の試験を受ける必要があると判定している。これにより、搭乗者に対して認知症の試験を受ける必要があるかの判定を行うことができ、搭乗者が病院に行くきっかけとなる。また、音声に対する応答により判定を行っているため、搭乗者に対して認知症の疑いを判定していることを意識させ難い。
【0067】
また、上述した実施例によれば、搭乗者の行先を確認する音声に対する応答により、認知症の疑いがある応答か否かを判定している。行先を確認することは搭乗者に対して自然なことであり、より一層、搭乗者に対して認知症の疑いを判定していることを意識させ難い。
【0068】
また、上述した実施例によれば、サーバ装置10は、現在位置と搭乗者が応答した行先の位置とに基づいて認知症の疑いがある応答であるか否かの判定を行っている。これにより、簡単に搭乗者が応答した行先により、認知症の疑いがある応答であるか否かを判定できる。
【0069】
また、上述した実施例によれば、サーバ装置10は、車両への搭乗が検出されるとすぐに(即ち、車両が移動する前に)、ナビゲーション装置20に行先確認するための音声を出力させている。これにより、車両を移動する前に自然に行先を確認することができるため、より一層、搭乗者に対して認知症の疑いを判定していることを意識させ難い。
【0070】
また、上述した実施例によれば、しりとり(所謂言葉遊び)の音声に対する応答により、認知症の疑いがある応答か否かを判定している。これにより、搭乗者としてはゲームをしているだけで、認知症の疑いを判定していることを意識させ難い。
【0071】
また、上述した実施例によれば、サーバ装置10は、搭乗者が応答するまでの応答時間に基づいて判定を行っている。これにより、認知症の疑いがある応答であるか否かの判定を簡単に行うことができる。
【0072】
また、上述した実施例によれば、サーバ装置10は、判定回数nがN回以上となり、認知症用の試験を受ける必要があると判定されると、ナビゲーション装置20に認知症用の試験問題を提示させる。これにより、搭乗者に対して認知症の試験を行うことができる。
【0073】
また、サーバ装置10は、認知症用の試験の回答に基づいて認知症の疑いがあると判定した場合、その旨を通知(通知)している。これにより、搭乗者に認知症の疑いがあることを伝えることができる。
【0074】
なお、上述した実施例によれば、サーバ装置10は、行先確認に対する応答が認知症の疑いがある応答であり(ステップS2でY)、判定回数nに1が加算されても(ステップS5)、判定回数nがN回未満であれば(ステップS1でN)、再び行先確認するがこれに限ったものではない。再び行先確認せずに、ステップS4のしりとりの処理に進む、あるいは判定処理自体を終了するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施例によれば、ステップS2の行先確認においては、行先のみを確認していたが、これに限ったものではない。サーバ装置10は、「何時に到着したいですか?」などの行先へ到着希望時間、「どのような施設ですか?」などの行先のジャンル及び「何をしにいくのですか?」などの行先に行く目的を音声により出力させるようにしてもよい。サーバ装置10は、これらの音声に対する搭乗者の応答が認知症の疑いのある応答であるか否かを判定する。
【0076】
具体的には、サーバ装置10は、行先と同様に、所定時間待っても応答がない場合や、「えーっと、えーっと」を繰り返すなど答えられなかった場合、認知症の疑いがある応答であると判定する。また、サーバ装置10は、搭乗者が先に応答した行先に対してふさわしくないような到着希望時間やジャンル、目的を応答した場合、サーバ装置10は、認知症の疑いのある応答であると判定する。例えば、先に応答した行先に到着できないような到着希望時間を応答した場合、施設データベース14上において、先に応答した行先が分類されているジャンルとはかけ離れたジャンルや目的を応答した場合、認知症の疑いのある応答であると判定する。
【0077】
また、上述した実施例においては、判定回数nをリセットさせていなかった。しかしながら、認知症でない人でも口ごもったり、うまく答えられないときがある。このときの認知症の疑いがあるとの判定回数が長い時間かけて蓄積されて、誤判定されないために、判定回数nは例えば1カ月に1回程度でリセットされるようにしてもよい。
【0078】
また、上述した実施例では、言葉遊びとしてしりとりをおこなっていたが、これに限ったものではない。例えば、山手線ゲームのような言葉遊びであってもよい。また、言葉遊びに限ったものではなく、簡単な計算問題であってもよい。
【0079】
また、上述した実施例では、行先確認、及び、しりとりを用いて、認知症の疑いのある応答であるか否かを判定していたが、これに限ったものではない。行先確認、及び、しりとりの何れか一方だけで判定を行ってもよい。
【0080】
また、サーバ装置10の機能を1つのナビゲーション装置などの端末装置に含めてしまってもよい。この場合、端末装置が判定装置の一例に相当し、認知症の疑いを判定する。
【0081】
また、上述した実施例では、認知症の試験を受ける必要があると判定されると、認知症用の試験問題を搭乗者に提示していたが、これに限ったものではない。認知症用の試験問題を提示せずに、認知症の疑いがある旨を通知するようにしてもよい。
【0082】
また、端末装置としては、ナビゲーション装置20に限らず、移動体外でも使える携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末やタブレット型のパーソナルコンピュータなどでもよい。このとき、使用場所は、自宅などの移動体外であってもよい。また、搭乗の予定のないユーザでもよい。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。