(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
切羽前方の地山に設けられた穿孔に挿入されるパイプと、前記パイプの内部に軸方向に沿って所定の間隔で配設された、弾性波を測定するための複数の受振器と、前記パイプの先端側の外周面に設けられた、前記穿孔内の孔壁周辺における地山の比抵抗を測定するための電流電極及び電位電極とを備えるとともに、前記電流電極及び電位電極は、地山との接触部が多数の細線状の電極を突出させたブラシ状に形成されていることを特徴とする切羽前方の地質探査装置。
前記複数の受振器は、隣り合う前記受振器を連結する連結部材によって一体化されるとともに、先端部が前記パイプの内部の先端に切断可能な部材を介して固定されている請求項1、2いずれかに記載の切羽前方の地質探査装置。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削に当たっては、切羽崩落災害等のトラブル防止或いはトンネル掘削時の支保パターンの妥当性を事前に評価する観点から、切羽前方の地山調査に係るニーズが高まっている。
【0003】
トンネル坑内から行われる切羽前方の地質探査方法の一つとして、ドリルジャンボによって切羽前方に穿孔を形成し、この穿孔を用いて地盤内を伝播する弾性波の速度を測定する速度検層の技術が確立されている。
【0004】
前記速度検層は、起振位置及び受振位置の関係などによって幾つかに分類でき、ダウンホール法が最も広く用いられている(下記特許文献1など)。下記特許文献1に記載されるダウンホール法は、
図6に示されるように、油圧ジャンボ等で削孔した穿孔50内に受振器51を設置し、切羽面Sをハンマー52で打撃することによって起振したときの弾性波の速度を測定する手法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載される従来のダウンホール法では、前記穿孔50内に受振器51を挿入する際、受振器51を挿入補助用の塩ビパイプ53や鋼線などに取り付けて直接挿入しているため、孔壁が崩壊しやすい不良地山などでは、崩壊した孔壁などによって受振器51が挿入できなくなるとともに、受振器51が崩壊した岩片などに挟まり、穿孔50内で拘束されて回収不能になるという問題がしばしば発生していた。
【0007】
また、孔壁が崩落した穿孔50内からの受振器51の回収を試みるため、穿孔50の入口付近で作業を行っていると、地質探査のために切羽を占用する時間が長くなり、トンネルの掘削作業に大きく影響を及ぼす問題があった。
【0008】
また、孔壁が崩落して穿孔50内から受振器51が回収不能になったときのリスクを考慮して、
図6に示されるように、穿孔50内に挿入する受振器51の数を3個程度の少数に限定する対策が採られていたが、これでは、1回の起振で取得できるデータの数が少なく、穿孔50内で受振器51を移動してデータ取得を繰り返す必要があり、測定回数が増加するという問題があった。例えば、
図6に示される上記特許文献1に記載の速度検層では、1m間隔で3つの受振器51、51、51が配置され、1回の起振でこれら3点の弾性波を測定した後、塩ビパイプを2m引き出して同様に起振させて弾性波を測定する作業を、受振器51が穿孔50の入口にくるまで繰り返し行うこととしている。従って、長さ30mの穿孔50を測定するには、15回測定作業を繰り返す必要がある。このように測定ポイントを変えて繰り返しデータを取得する場合には、切羽における打撃データがその都度異なるため、測定されるデータの精度や信頼性が低下する問題があった。
【0009】
更に、上記特許文献1記載の方法では、得られる情報が弾性波の速度のみで、地山評価の指標として用いられることも多い比抵抗のデータを取得することができなかった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、孔壁が崩壊しやすい不良地山でも確実に地質探査できるようにするとともに、トンネルの掘削作業に与える影響を最小限に抑え、測定作業を簡略化して、地質探査の精度を向上させた切羽前方の地質探査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、切羽前方の地山に設けられた穿孔に挿入されるパイプと、前記パイプの内部に軸方向に沿って所定の間隔で配設された、弾性波を測定するための複数の受振器と、前記パイプの先端側の外周面に設けられた、前記穿孔内の孔壁周辺における地山の比抵抗を測定するための電流電極及び電位電極とを備える
とともに、前記電流電極及び電位電極は、地山との接触部が多数の細線状の電極を突出させたブラシ状に形成されていることを特徴とする切羽前方の地質探査装置が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、切羽前方の地山に設けられた穿孔に挿入されるパイプの内部に、軸方向に沿って所定の間隔で弾性波測定用の複数の受振器が配設されているため、孔壁が崩壊しやすい不良地山でも、前記パイプが受振器の挿入補助とケーシングの役割を果たし、確実に地質探査を実施することができるようになる。
【0013】
また、前記受振器がパイプによって保護されているため、孔壁が崩壊しても受振器が岩片に挟まって回収不能になることがなく、受振器を確実に回収することができる。この際、受振器の回収にかかる時間も短くて済む。このため、穿孔の全長に亘って受振器を設置でき、1回の起振で全ての地点での弾性波が測定できるようになる。このように、地質探査に係る作業が簡略化できるため、地質探査のために切羽を占用する時間が短くて済み、トンネルの掘削作業に与える影響が最小限に抑えられる。また、繰り返しデータを取得する必要がないので、測定作業が簡略化でき、かつ調査精度が向上できる。
【0014】
本発明に係る地質探査装置では、前記パイプの先端側の外周面に、地山の比抵抗測定用の電流電極及び電位電極が備えられているため、パイプの回収時にパイプを引き抜きながら地山の比抵抗を測定することができる。これによって、前記受振器による速度検層の結果と合わせて、切羽前方の地質を総合的に評価でき、地質探査の精度を向上させることができる。
【0015】
更に、本発明では、前記電流電極及び電位電極は、地山との接触部が多数の細線状の電極を突出させたブラシ状に形成されている。従って、前記電流電極及び電位電極が凹凸のある孔壁と確実に密着して、地山の比抵抗が精度良く測定できるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記パイプは、樹脂からなり、所定の長さで分割された複数のパイプがコネクタで連結されて構成されている請求項1記載の切羽前方の地質探査装置が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記パイプとして、樹脂製の所定の長さで分割された複数のパイプを連結したものを用いることによって、前記パイプの挿入作業及び引き抜き作業が容易になり、地質探査にかかる時間を更に短縮することができるようになる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記複数の受振器は、隣り合う前記受振器を連結する連結部材によって一体化されるとともに、先端部が前記パイプの内部の先端に切断可能な部材を介して固定されている請求項1、2いずれかに記載の切羽前方の地質探査装置が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明は、孔壁が崩壊して前記パイプを引き抜くことができなくなった場合、内部の受振器だけを回収できるようにするための手段であり、連結部材によって一体化された複数の受振器の先端部を前記パイプの内部の先端に切断可能な部材を介して固定したものである。これによって、孔壁が崩壊してパイプが引き抜けなくなった場合でも、パイプ内部の前記連結部材によって一体化された受振器を強引に引っ張ることにより、前記切断可能な部材が切断し、受振器とパイプとの固定が解除されて、受振器が回収できるようになる。このように、孔壁が崩壊してパイプが引き抜けなくなっても、高価な受振器だけは回収できるため、経済的負担を軽減することができる。
【0020】
請求項
4に係る本発明として、前記電流電極及び電位電極から延びるリード線は、前記パイプの内部に配線されている請求項1〜
3いずれかに記載の切羽前方の地質探査装置が提供される。
【0021】
上記請求項
4記載の発明では、前記電流電極及び電位電極に接続されるリード線を前記パイプの内部に配線することによって、パイプの挿入時や引き抜き時などにリード線が断線しないようにしている。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、孔壁が崩壊しやすい不良地山でも確実に地質探査できるとともに、トンネルの掘削作業に与える影響を最小限に抑え、測定作業が簡略化でき、地質探査の精度が向上できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
図1に示されるように、本発明に係る地質探査装置1は、穿孔機2によってトンネル空間内から切羽S前方の地山に形成された穿孔3に挿入されるパイプ4と、前記パイプ4の内部に軸方向に沿って所定の間隔で配設された、弾性波を測定するための複数の受振器5、5…と、前記パイプ4の先端側の外周面に設けられた、前記穿孔3内の孔壁周辺における地山の比抵抗を測定するための電流電極6、6及び電位電極7、7とを備えている。
【0026】
前記穿孔機2は、走行可能な台車に対して、ガイドセルに前後進可能に搭載されたドリフタと、このドリフタにシャンクロッドを介して接続され、先端に穿孔用ビットを備えた穿孔ロッドとが搭載された、ドリルジャンボなどの穿孔用重機である。
【0027】
前記穿孔3は、前記穿孔機2によって切羽Sから前方に向けてほぼ水平に形成された削孔であり、長さ(深さ)数m〜数十m、好ましくは30〜50m程度に形成するのが好ましい。この穿孔3としては、前記穿孔機2による削孔時の削孔速度や打撃圧等のデータから切羽前方の地質を評価する削孔検層を行った孔を利用することができる。
【0028】
前記穿孔3に挿入されるパイプ4は、塩化ビニル、ポリエチレン、アクリルなどの樹脂からなり、
図3に示されるように、所定の長さで分割された複数のパイプ4a、4a…がコネクタ8で連結されて構成されるようにするのが好ましい。前記パイプ4の外径は、穿孔3に挿入できる大きさであればよいが、好ましくは穿孔3の直径の90%以下、特に50〜80%程度とするのがよい。前記パイプ4の内径は、内部に受振器5などを配設する関係上、少なくとも35mm、好ましくは40〜50mmのものを用いるのがよい。従って、前記穿孔3の直径は、これより大きく、40mm以上、好ましくは50〜100mm程度とするのがよい。
【0029】
前記分割されたパイプ4aの1本当たりの長さLは1〜3m、好ましくは2m程度とするのがよい。これを多数連結しながら穿孔3に挿入し、所定の長さ(穿孔3の長さ)に形成する。
【0030】
前記分割された2本のパイプ4a、4aを連結するには、
図3に示されるように、各パイプ4aの両端部に予め雌ねじを切るとともに、雄ねじが切られた前記コネクタ8の両端にそれぞれ、各パイプ4a、4aの一端を螺合することにより成すことができる。すなわち、一方のパイプ4aの後端にコネクタ8を軸方向の中間位置まで螺合した後、前記コネクタ8の後端に、他方のパイプ4aの前端を螺合して、前記分割されたパイプ4a、4a…を順次連結する。
【0031】
前記コネクタ8は、樹脂などからなる円管であり、外面に前記パイプ4aの雌ねじに螺合可能な雄ねじが切られている。前記コネクタ8の両端にそれぞれ前記パイプ4aの雌ねじ部が螺合されることにより、2つの分割されたパイプ4a、4aが連結される。なお、前記コネクタ8は、一端側を一方のパイプ4aに内設し、他端側を一方のパイプ4aから突出した状態で、一端側が一方のパイプ4aに接着剤などによって固定され、突出した部分に雄ねじが切られた構造とし、この突出した部分の雄ねじに他方のパイプ4aが螺合されるようにしてもよい。
【0032】
前記パイプ4の先端には、
図4に示されるように、基端部が前記パイプ4とほぼ同じ外径を有するとともに、先端に向けて先細に形成された円錐状のノーズ9が取り付けられている。前記ノーズ9は、樹脂などからなる中実状部材で形成されている。前記ノーズ9をパイプ4の先端に連結するには、ノーズ9の後端に後方に突出する円環状又は円柱状の接続部9aを設けるとともに、前記接続部9aの外周に雄ねじを切り、この接続部9aをパイプ4の先端に切られた雌ねじに螺合することにより行うことができる。
【0033】
前記ノーズ9の後方の中心部には、軸方向に沿ってねじ穴9bが設けられ、このねじ穴9bに、先端に線材又はフック材が掛止可能な開孔又はフック部が備えられた掛止具10が螺合されている。この掛止具10には、後段で詳述するように、切断可能な部材12を介して前記受振器5の先端が固定される。
【0034】
前記受振器5、5…は、前記パイプ4の内部に軸方向に沿って所定の間隔で配設され、切羽Sをハンマーによって打撃したときの地山を伝達した弾性波を受振する。
【0035】
前記受振器5、5…は、穿孔3(パイプ4)のほぼ全長に亘って配設されている。前記受振器5、5…の配置間隔は任意であるが、前記分割されたパイプ4aの長さLとほぼ同等とするのが好ましい。
【0036】
前記複数の受振器5、5…は、隣り合う受振器5、5を連結する連結部材11によって一体化されている。前記連結部材11は、樹脂などからなる管体で構成され、内部に受振器5に接続するリード線が配線されている。前記受振器5、5…から延びるリード線は、
図2に示されるように、連結部材11の後端から外部に延在し、図示しない記録装置などに接続されている。
【0037】
前記連結部材11によって一体化された受振器5、5…は、先端部がパイプ4の内部の先端に設けられた前記掛止具10に、切断可能な部材12を介して固定されている。前記受振器5、5…が前記切断可能な部材12を介してパイプ4の先端に固定されているため、穿孔3に対してパイプ4を挿脱することによって、同時に受振器5、5…が挿脱されることとなる。
【0038】
前記受振器5は、先端部が前記切断可能な部材12を介してパイプ4に固定される以外は、前記パイプ4には固定されていない。このため、パイプ4の回動によって、パイプ4の内周を受振器5が自由に移動でき、パイプ4が穿孔3内に設置された回転角に応じて、受振器5が重力によってパイプ4の内周の下端部に自然と配置されるようになる。このため、パイプ4の外面が接する穿孔3内の下端部の孔壁からの弾性波が受振しやすくなる。
【0039】
前記切断可能な部材12とは、穿孔3に対してパイプ4を挿脱する際には切断せず、孔壁の崩壊などによってパイプ4が穿孔3内から引き抜けなくなったときに、前記連結部材11によって一体化された受振器5、5…のみを引き抜いたときの引き抜き力によって、前記切断可能な部材12が切断するように構成されたものである。前記切断可能な部材12としては、所定の引張応力を有する線材やチェーンなどを用いるのが好ましい。
【0040】
前記電流電極6及び電位電極7は、前記パイプ4の先端側の外周面に設けられた、穿孔3内の孔壁周辺における地山の比抵抗を測定するための電極であり、電流電極6、6間の地層に電流を流し、電位電極7、7間の電位差を計測・解析する比抵抗検層に用いられる。
【0041】
図3に示されるように、前記電流電極6及び電位電極7は、それぞれ2箇所ずつ、パイプ4の先端側の所定区間内に、軸方向に沿ってほぼ等間隔に配置されている。具体的には、前記所定区間内において、パイプ4の軸方向の前後端部にそれぞれ電流電極6が配置され、その中間に所定の間隔をあけた2箇所に電位電極7がそれぞれ配置されている。
【0042】
前記電流電極6及び電位電極7は、パイプ4の外周面の地山と接触可能な位置に設けられている。つまり、各電極6,7の少なくとも一部が地山と接触し、地山に通電可能な状態で配置されている。
【0043】
ここで、穿孔3内の孔壁の表面は平らではなく少なからず凹凸を有するものである。そこで、前記電流電極6及び電位電極7が地山と接触しやすくするため、前記電流電極6及び電位電極7は、地山との接触部が多数の細線状の電極を突出させたブラシ状に形成するのが好ましい。これにより、表面が凹凸を有する孔壁との密着性が高まり、測定精度が向上できる。
【0044】
前記ブラシ状の電極6、7は、
図5に示されるように、パイプ4の外面からの突出長aを2〜10mmとするのが好ましく、パイプ4の軸方向の幅bを1〜5mmとするのが好ましい。前記ブラシ状の電極6、7は、パイプ4の周方向に対し連続的又は間欠的に設けるのが望ましい。図示例では、
図3(B)に示されるように、周方向に所定の間隔で複数のブラシ状の電極6、7が間欠的に配置されている。これにより、パイプ4がいずれの回転角であっても、パイプ4の下方側に位置する電極6、7が穿孔3の下方側の地山に接触できるようになる。周方向に間欠的に配置する場合の電極6、7の数は、4〜20箇所程度とするのがよく、図示例では12箇所としている。
【0045】
前記電流電極6及び電位電極7は、パイプ4の軸方向に等間隔に配置するのが好ましく、その離隔距離としては、100〜500mm程度とするのが好ましい。
【0046】
前記電流電極6及び電位電極7をパイプ4に取り付けるには、
図5に示されるように、外面の周方向に沿って所定の間隔で前記電極6、7が取り付けられた環状の電極リング13を、電極6、7の配設位置にて分割されたパイプ4b、4b間に配置し、前記パイプ4b、4bをコネクタ14によって連結することにより成すことができる。前記電極リング13をパイプ4に組み立てるには、一方のパイプ4bの後端にコネクタ14を螺合した後、前記コネクタ14に電極リング13を挿入し、他方のパイプ4bの前端をコネクタ14に螺合して、両方のパイプ4b、4bの端部同士で電極リング13を押さえ付けるようにして固定する。
【0047】
また、パイプ4の前端部に設けられる電流電極6は、
図4に示されるように、外面の周方向に沿って所定の間隔で複数の電流電極6、6…が取り付けられた電極リング13が、ノーズ9とパイプ4の前端との間に配置されている。
【0048】
前記電極リング13の各電極6、7に接続されるリード線は、1つに纏められ、電極リング13の内面側に延びるように配線するのが好ましい。また、前記コネクタ14に、他方側の端縁から軸方向の中央部にかけて軸方向に延びるスリット14aを設けておき、前記電極リング13をコネクタ14に挿入する際、前記電極リング13のリード線を前記コネクタ14のスリット14aに係合させることにより、前記リード線がパイプ4の内部に配線されるようにするのが好ましい。
【0049】
なお、前記電極リング13は、前記コネクタ14と別体に形成されるのではなく、前記コネクタ14の軸方向の中間部に、前記コネクタ14と一体に形成されるようにしてもよい。
【0050】
また、前記電極リング13を使用せずに、各電極6、7を直接パイプ4に配設するようにしてもよい。
【0051】
前記電流電極6及び電位電極7から延びるリード線15は、
図2に示されるように、パイプ4の内部に配線され、パイプ4の後端から外部に延在し、図示しない記録装置などに接続されている。
【0052】
以上の構成からなる本地質探査装置1による地質探査を行うには、前記穿孔機2によってトンネル空間内から切羽S前方の地山に穿孔3を形成した後、この穿孔3に、前記受振器5と電流電極6及び電位電極7とが備えられたパイプ4を挿入する。前記パイプ4を挿入するには、所定長さに分割されたパイプ4a、4a…を前記コネクタ8によって順次接続するとともに、前記受振器5を順次連結しながら行われる。
【0053】
前記パイプ4を挿入し終えたならば、切羽Sを打撃し、前記受振器5、5…によって弾性波の伝播速度を測定した後、パイプ4を引き抜きながら、前記電流電極6、6間の地山に電流を流し、前記電位電極7、7間の電位差を測定して比抵抗を求める。
【0054】
前記弾性波の伝播速度を測定する際、本地質探査装置1では、受振器5が穿孔3の全長に亘って所定の間隔で複数配設されているので、1回の打撃で穿孔3の全長に亘って弾性波が測定できる。このため、速度検層の作業が簡略化できるとともに、起振データが等しいため、測定データの精度や信頼性が向上できる。
【0055】
前記比抵抗は地山の割れ目の情報をほとんど含まず、前記弾性波は地山の割れ目の影響が大きいという特徴を有するので、係数K=弾性波の伝播速度/比抵抗、という式から、地山の割れ目の情報を得ることができる。
【0056】
さらに、前記穿孔3を利用して、本地質探査装置1による地質探査(弾性波速度、比抵抗)に加えて、削孔検層や切羽前方の地質を内視鏡で直接観察する切羽前方調査を行うことにより、切羽前方の地質を総合的に評価することができるようになる。
【0057】
本地質探査装置1では、受振器5がパイプ4内に設けられているため、孔壁が崩壊しやすい不良地山でも、パイプ4が挿入補助の役割を果たして受振器5を確実に穿孔3内に挿入することができるとともに、前記パイプ4を挿入した状態で孔壁が崩壊しても、パイプ4がケーシングの役割を果たして受振器5、5…が保護されるため、速度検層を確実に行うことができる。
【0058】
また、孔壁が崩壊して、パイプ4を引き抜くことができなくなったとき、前記連結部材11によって一体化された受振器5、5…を強く引っ張ることにより、先端の切断可能な部材12が切断され、パイプ4との接続が解除されるため、パイプ4を穿孔3内に残して、高価な受振器5、5…を回収することができる。従って、経済的負担が少なくて済む。
【0059】
更に、本地質探査装置1では、上述の通り地質探査の作業が簡略化でき、孔壁が崩壊したときでも受振器5を簡単に回収できるため、地質探査のために切羽を占用する時間が短くて済み、トンネルの掘削作業に与える影響が最小限に抑えられる。