特許第6884666号(P6884666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6884666-リール交換装置およびリール交換方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884666
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】リール交換装置およびリール交換方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/04 20060101AFI20210531BHJP
   B65H 54/54 20060101ALI20210531BHJP
   B65H 54/58 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B65H67/04 Z
   B65H54/54 D
   B65H54/58
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-158768(P2017-158768)
(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公開番号】特開2018-30719(P2018-30719A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2020年2月14日
(31)【優先権主張番号】10 2016 115 497.0
(32)【優先日】2016年8月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517289480
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・アヴィトゥム・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファルク・ケストナー
【審査官】 國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第86/005468(WO,A1)
【文献】 特開2005−178979(JP,A)
【文献】 特表2010−511446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00 − 54/88
67/00 − 67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置(24)から吐出される繊維ストランドから繊維束を巻き取るために設けられるリール交換装置(2)であって、
一リールキャリア(4)および第二リールキャリア(6)
前記繊維ストランドを巻き付けるのに適した、前記第一リールキャリア(4)上に配置された第一リール(20)および前記第二リールキャリア(6)上に配置された第二リール(22)と、
第一ガイド手段(8)および第二ガイド手段(10)と、を備え、
リール交換の際に該第一リールキャリア(4)上に配置された第一リール(20)から該第二リールキャリア(6)上に配置された第二リール(22)に前記繊維ストランドを直接移動させることができるように、前記繊維ストランドの吐出方向に前記第一リール(20)および前記第二リール(22)が前後に配置されうるように、前記第一リールキャリア(4)が前記第一ガイド手段(8)に移動可能に受容されて案内されかつ前記第二リールキャリア(6)が前記第二ガイド手段(10)に移動可能に受容されて案内され
制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記リール(20、22)の回転動作および/またはトルクと、前記ガイド手段(8、10)に沿う前記リールキャリア(4、6)の移動と、を制御して、該リール(20、22)の該回転動作と、該ガイド手段(8、10)に沿う該リールキャリア(4、6)の該移動と、が、互いに対して調整され、該リール交換装置(2)の少なくとも部分的に自動化された作業を可能にし、前記リール交換の際に、前記繊維ストランドを、前記紡糸装置(24)に近いリール(20、22)から前記紡糸装置(24)から遠いリール(20、22)へと移動させるリール交換装置(2)。
【請求項2】
前記ガイド手段はリニアガイド(8、10)として形成され、
該リニアガイド(8、10)の各々は、前記紡糸装置(24)に隣接して配置され、前記紡糸装置(24)の繊維ストランド出口側(25)から離れるように延在し、かつ、前記繊維ストランドの前記吐出方向(28)に少なくとも略平行に配置されること、および、
前記リールキャリア(4、6)は、該リニアガイド(8、10)の範囲内で、かつ、該リニアガイド(8、10)に沿って直線的に、移動可能であること、を特徴とする請求項1に記載のリール交換装置(2)。
【請求項3】
前記繊維ストランドは、前記紡糸装置(24)から遠いリールキャリア(4、6)の位置にあるリール(20、22)上に置かれ、該リールキャリア(4、6)は、該繊維ストランドを巻き取る間に、該紡糸装置(24)に近い位置に向かって前記ガイド手段(8、10)に沿って移動する、ことを特徴とする請求項1または2のうちいずれか一項に記載のリール交換装置(2)。
【請求項4】
前記リールキャリア(4、6)の各々は、ガイド部(12、14)、および、前記リール(20、22)を動作可能かつ交換可能に受容する保持部(16、18)、を備え、該リールキャリア(4、6)の該保持部(16、18)の各々は、前記リール(20、22)がそれぞれ、前記繊維ストランドの前記吐出方向によって規定される垂直平面(E)寄りの各リールキャリア(4、6)の内側に配置されるように、内側に向かって突出しており、かつ、前記垂直平面(E)に向かいかつ互いの方を向いている、ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか一項に記載のリール交換装置(2)。
【請求項5】
前記リール(20、22)の各々は、繊維ストランドガイド手段、締め付け手段、切断手段、および、繊維ストランドの先端ならびに繊維ストランドの末端のための保持手段、を備えることを特徴とする請求項1〜のうちいずれか一項に記載のリール交換装置(2)。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のリール交換装置(2)において前記紡糸装置(24)から吐出される前記繊維ストランドから繊維束を巻き取るためのリール交換方法であって、
前記少なくとも二個のリール(20、22)のうちの、リールキャリア(4、6)が前記紡糸装置(24)から遠い位置に配置された第一リールに前記繊維ストランドを設置するステップと、
該繊維ストランドを各リール(20、22)に巻き付け、該紡糸装置(24)に近い位置へ前記ガイド手段(8、10)に沿って各リールキャリア(4、6)を移動させるステップと、を備えるリール交換方法。
【請求項7】
前記リールキャリア(4、6)が前記紡糸装置(24)に近い位置にて、前記第一リール(20、22)に巻き付けられた前記繊維ストランドを摘み取って切断するステップと、
前記少なくとも二個のリール(20、22)のうちの、リールキャリア(4、6)が該紡糸装置(24)から遠い位置に配置された第二リールに前記繊維ストランドを移動させるステップと、をさらに備える請求項に記載のリール交換方法。
【請求項8】
前記紡糸装置(24)に近い前記位置に配置された前記リールキャリア(4、6)を、該紡糸装置(24)から遠い前記位置へ移動させるステップと、
容量が満たされ、完全に巻き付けられたリール(20、22)を空のリールと交換する、または、巻き取られた繊維ストランドを直接取り外す、ステップと、をさらに備える請求項に記載のリール交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸装置から吐出された(中空)繊維ストランドを巻き取るため、あるいは、巻き付けるために提供されるリール交換装置に関する。本発明は、さらに、当該リール交換装置において繊維束を巻くためのリール交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の技術から、透析フィルタを製造するために中空繊維束を使用することが知られている。透析フィルタは、基本的に、血液透析、血液ろ過、または、血液透析ろ過、などの様々な体外血液処理プロセスにおいて採用されている。透析フィルタを製造するためには、まず、紡糸機械または装置から連続的に吐出される中空繊維ストランドが、回転しているリールまたはリールホイールに対して、巻き付けられるか、または、巻き取られる。巻き付けられた中空繊維ストランドは、回転しているリールまたはリールホイールにそれぞれ完全に巻き取られ次第、リールホイールから取り外され、特に、中空繊維同士をきつく、すなわち、密接に固定するのに有用なフィルムまたは箔が巻き付けられる。その後、中空繊維は、所望の長さに切断され、円筒形のフィルタカートリッジへの挿入、または、フィルタケーシングへの導入もしくは投入、がなされる。巻き付けられた箔は、ここで再び取り外されてもよい。
【0003】
言い換えれば、中空繊維フィルタモジュールを製造するときは、まず、紡糸装置から吐出される中空繊維ストランドは、結合もしくは凝集が行われ、中空繊維束になる。前記中空繊維ストランドがリールホイールに巻き付けられるとき、中空繊維束内に存在する中空繊維の数Hは、リール回転数Nを用いて決定されうる(H=2×N)。所望の中空繊維数がリールまたはリールホイールに提供されると、リールまたはリールホイールは交換される必要がある。これは、リール交換装置またはリール交換方法を用いてなされる。最新の技術から、専用のリール交換方法による様々な手動または自動化されたリール交換装置が知られている。
【0004】
例えば、紡糸装置もしくは機械とは別に、(中空)繊維の吐出方向にリールもしくはリールホイールが取り付けられたリールドッグ、架台、または、フレーム、を提供することが知られている。まず、繊維ストランドがリールホイールに巻き付けられる。巻き付け作業の完了後、完全に巻き付けられたホイールは、リールフレームから手作業で取り外され、空のリールホイールと交換される。空のリールホイールがリールフレームに取り付けられ次第、繊維ストランドの巻き取りが再び可能になる。その間、連続的に吐出される繊維ストランドは、廃棄物処理器に吸引される。この手作業のリール交換方法は、このように、一方では繊維ストランドの多大な損失、不良品、および、廃棄物、を生み、他方では素早いリール交換のためには手作業を行う二人のユーザまたは作業者が必要であるという欠点を有する。
【0005】
さらに、完全に自動化されたリール交換装置が、国際公開第2008/067934号(特許文献1)から知られている。同装置では、吐出された繊維ストランドが、連結リール支持体に取り付けられた二個の梁型リールに連続的にかつ交互に巻き付けられる。梁型リールは、平行に並置され、連結回転軸周りに回転可能であるように配置される。リール交換時、梁型リールは、前記連結回転軸周りに180°回転される。一方の梁型リール上に巻き付けが行われている間、他方の梁型のリールからは、巻き付けられた中空繊維ストランドの取り外しまたは回収を行うことができる。しかし、特許文献1のリール装置は、技術的な点で極めて複雑な構造を有し、完全に自動化された方法でしか作動させることができないという欠点を有する。さらに、繊維ストランドを一方の梁型リールから他方の梁型リールへ移動させるときに繊維ストランドの張力を維持することが可能ではないため、紡糸装置から連続的に吐出される繊維ストランドの張力を維持するための追加のバッファ装置を上流に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/067934号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この背景に対して、本発明の目的は、最新の技術の欠点を回避または少なくとも軽減することである。特に、本発明の目的は、特に、(中空)繊維ストランドの連続的な巻き付けに関して、および、その後の巻き付けられた(中空)繊維束の取り外しに関して、容易かつ効率的な取り扱いを可能にし、手動作業と自動化作業との両方に適したリール交換装置およびリール交換方法を提供することにある。したがって、中空繊維のストランドもしくは束を巻き付けるための容易かつ効率的なリール交換の操作法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備えるリール交換装置、および、請求項8の特徴を備えるリール交換方法、によって達成される。有利な実施形態およびさらなる発展形態は、従属請求項において請求され、かつ/または、以下に説明される。
【0009】
本発明は、まず、紡糸装置もしくはフレームから吐出される繊維ストランドからの、繊維束の、特に中空繊維束の、巻き取り、特に連続的な巻き取り、のために提供され、特に透析フィルタを製造するために有用である、一個の第一リールキャリアもしくはリール支持体、および、一個の第二リールキャリアもしくはリール支持体を少なくとも備えるリール交換装置であって、
一個の第一リールキャリアもしくはリール支持体、および、一個の第二リールキャリアもしくはリール支持体は、
繊維ストランドを巻き取るのに特に適したリール、特にリールホイール、をそれぞれ有し、かつ、
リール交換の際に第一リールキャリア上に配置された第一リールから第二リールキャリア上に配置された第二リールへ前記繊維ストランドを直接移動させることができるように、前記繊維ストランドの吐出方向にそれらの二個のリールが、前後に、一列に、もしくは、縦列に、位置できるように、一個の第一ガイド手段および一個の第二ガイド手段に、少なくとも移動可能に受容されて案内される、
リール交換装置に関する。
【0010】
好ましくは、前記少なくとも二個のガイド手段の各々は、少なくとも、前記繊維ストランドの吐出方向が延在する垂直平面に近い位置に延出するように配置される。繊維束を巻き取るとは、特に、リールまたはリールホイールへの繊維ストランドの巻き付けと理解すべきである。リールとは、繊維ストランドの巻き付けもしくは巻き戻しに適した、または、そのために用意された、物体もしくは補助手段と理解すべきである。好ましくは、本発明に係るリール交換装置では、ホイール型の回転リールが使用され、これをリールホイールと呼ぶ。本発明によれば、紡糸装置とは、特に、連続的に吐出される繊維ストランドもしくは中空繊維ストランドを生成するのに有用な(紡糸)システムまたは(紡糸)機械と理解すべきである。
【0011】
本発明に係るリール交換装置では、二個のリールキャリア、すなわち、第一リールキャリアおよび第二リールキャリア、が設けられ、これらは、それぞれのガイド手段によって案内される。言い換えれば、第一リールキャリアは第一ガイド手段に受容されて案内され、第二リールキャリアは、第二ガイド手段に受容されて案内される。これらのガイド手段は、好ましくは、ガイドレールとして構成される。第一リールキャリアには、第一リールまたは第一リールホイールが配置され、第二リールキャリアには、第二リールまたは第二リールホイールが配置される。
【0012】
本発明によれば、第一および第二リールは、繊維ストランドの吐出方向に前後に配置されうる。したがって、好ましくは、第一および第二リールは、繊維ストランドの吐出方向に互いから離れるように配置され、特に繊維ストランドを移動させるとき、とりわけリールが交換されるときに、所定の位置を採用する。二個のリールまたはリールホイールが、繊維ストランドの吐出方向に互いから離れるように、すなわち、紡糸装置から異なる距離または空間を有するように配置されると、特に近接したガイド手段が使用されるときに、繊維ストランドの移動が容易になる。
【0013】
基本的に、ガイド手段またはガイドレールは、任意の設計を有してよい。例えば、ガイド手段またはガイドレールは、湾曲した経路と直線の経路との両方に沿ってリールキャリアを案内してよい。基本的に、少なくとも二個のガイド手段またはガイドレールは、互いから任意の距離を有してよいが、好ましくは、少なくとも、繊維ストランドの吐出方向が延在する垂直平面の近くの位置に延出するように配置される。この場合、二個のリールキャリアと、それらに固定もしくは保持されたリールまたはリールホイールと、は、リール交換の必要時に、ヤーンストランド出口平面と呼ぶことができる上述の平面の近くにまたは隣接して、前後に配置されうる。これにより、紡糸装置から連続的に吐出される繊維ストランドを一方のリールホイールから他方のリールホイールへ直接移動させることができる。このようにして、繊維束の連続的な巻き取りが達成される。
【0014】
さらに、好ましくは、少なくとも、一方のリールから他方のリールへの繊維ストランドの直接的な移動を可能または容易にするように、二個のガイド手段を近接もしくは隣接する位置に配置することが規定されてよい。
【0015】
したがって、本発明は、一方のリールから他方のリールへの連続的に吐出される繊維ストランドの直接的な移動を行う、技術的に容易に実現可能なリール交換装置を提供する。本発明により、二個のリールへの交互の巻き付けが可能になる。巻き付けの完了後、リールは、好ましくは、交互に交換されてよく、または、巻き取られた(中空)繊維束が取り外されてよい。本発明によれば、(中空)繊維束を取り外すこと、または、回収すること、は、このように、操作に組み込まれる。特に、本発明に係る課題解決法は、リール交換時に繊維ストランド廃棄物の吸引を必要としないため、繊維ストランドの損失がほとんど、もしくは、全く、発生しないだろう。
【0016】
このリール交換装置は、さらに、手作業および自動の両方で作動することができる。手動作業の場合は、必要なユーザまたは作業者は一人のみである。
【0017】
ガイド手段が、特に紡糸装置に隣接して配置されるリニアガイドとして形成され、特に水平方向に、紡糸装置の繊維ストランド出口側から離れるように延出し、繊維ストランドの吐出方向に少なくとも略平行に配置され、リールキャリアが、リニアガイドの範囲内で、かつ、リニアガイドに沿って直線的に、移動可能であるときに有利である。
【0018】
リニアガイドとしてのガイド手段またはガイドレールの設計は、本発明に係るリール交換装置の、単純で、低コストかつ省スペースであり、したがって好適でもある実施形態を構成する。好ましくは、リールキャリアは、このように、リニアガイドに沿って、紡糸装置から離れる方向、および、紡糸装置に近づく方向に、直線的に移動可能である。リニアガイドは、好ましくは水平に配置され、繊維ストランドが吐出される紡糸装置の側に設けられる。優先的には、リニアガイドは、繊維ストランドの吐出方向に少なくとも略平行に、かつ、その全長に亘って、繊維ストランドの吐出方向が延在する垂直平面の近くに延出するように配置される。少なくとも略平行とは、本発明において、0°から22.5°の範囲内であるリニアガイドと繊維ストランドの吐出方向の間の角度を意味する。繊維ストランドの吐出方向が延在する垂直平面は、好ましくは、二個のリニアガイドの間に延在する。言い換えれば、二個のリニアガイドは、好ましくは、いずれも上述の平面と交差せず、この平面に対してそれぞれ異なる側に配置される。リールキャリアは、リニアガイドに沿って、任意の、さらに所定の位置に配置されてよい。
【0019】
一つの有利な実施形態は、リール交換の際に、繊維ストランドを、紡糸装置に近いリールから、紡糸装置から遠いリールへと移動させることを特徴とする。
【0020】
繊維ストランドを、その吐出方向に、好ましくは紡糸装置に近い第一リニアガイドの軸方向の一端に位置する第一リールから、好ましくは紡糸装置から遠い第二リニアガイドの軸方向の一端に位置する第二リールへと移動させる場合、繊維ストランドの再配置は、繊維ストランドバッファ装置を用いずに達成されうる。この目的のためには、特に、リールが、再配置時に互いに十分な離間距離を有しているという特徴、および、その再配置が繊維ストランド吐出方向に行われるという特徴、が極めて重要である。したがって、リニアガイドは、好ましくは、所定の十分な長さを有し、その長さは、特に繊維が吐出される速度に対して調整されなければならない。
【0021】
したがって、好ましくは、繊維ストランドが、紡糸装置から離れたそれぞれのリールキャリアの位置でリール上に設置もしくは載置され、リールキャリアは、紡糸装置に近い位置に向かって繊維ストランドの巻き付け時にガイド手段に沿って移動する。
【0022】
このようにして、繊維ストランドが、紡糸装置から遠い二個のリニアガイドの軸方向の一端に設置され、繊維ストランドが、紡糸装置に隣接または近接したリニアガイドの軸方向の一端にて完全に巻き付けられたリールから回収または切断されることが達成される。このようにして、繊維ストランドバッファ装置を用いずに繊維ストランドを再配置することができる。
【0023】
リールキャリアの各々が、(特に回転方向に)動作可能かつ交換可能な方法でリールを受容する少なくとも一個のガイド部、および、少なくとも一個の保持部、を備え、(二個の)リールキャリアの保持部は、リールの各々が、特に二個のリールの互いからの距離を減少するために、リールキャリアの内部や内側に配置されるように内側に向かって突出しており、かつ、互いの方を向いているように構成されると有用である。
【0024】
特に、リールキャリアは、それぞれのガイド部を介して、リニアガイド、ガイドレール、もしくは、ガイド手段、の、範囲内で、または、それらに沿って、案内され、それらの内部に受容される。リールまたはリールホイールは、リールキャリアの保持部に、取り外し可能に、特に形状(確動)結合式(positively)または摩擦(非確動)結合式(non−positively)に、固定または受容される。クリップで留めることによって、または、係合ロック要素によって、なされる容易に取り外し可能な接続が有利であることが分かっている。二個のリールキャリアの保持部の各々は、繊維ストランドの吐出方向が延在する垂直平面内に整列され、リールまたはリールホイールの各々が、リールキャリアの内部や内側に、すなわち、前述の平面に対向または近接して、配置、取り付け、もしくは、固定、が行われるようにしている。これは、二個のリールまたはリールホイール間の距離をさらに減少するため、および繊維ストランドの吐出方向が延在する平面のより近くに二個のリールホイールを移動させるのに有用である。したがって、一方のリールから他方のリールへの繊維ストランドの再配置がさらに容易になる。
【0025】
有利な方法では、当該リール交換装置は、好ましくはモータによって生じるリールの回転動作および/またはトルクと、好ましくはモータによって生じるガイド手段に沿うリールキャリアの移動と、を制御し、リールの回転動作およびガイド手段に沿うリールキャリアの移動が互いに対して調整され、好ましくは当該リール交換装置の(部分的に)自動化された作業を可能にするようにするための制御装置を含む。
【0026】
したがって、本発明に係るリール交換装置の手動作業とは別に、その(部分的に)自動化された作業も、本発明にしたがって提供されてよい。この目的のためには、プロセッサ(CPU)を備える、または、プロセッサ(CPU)によって形成される制御装置もしくは制御器が必要とされる。当該リール交換装置の制御器は、紡糸装置内に一体化して設けられてもよく、別体として設けられてもよい。制御器を用いて、リールキャリア内に位置する回転モータが制御されてよく、所望の速度および所望のトルクが、それぞれ、リールおよびリールホイールをそれぞれ回転駆動するために回転モータに適用されてよい。繊維ストランドの張力を連続的に維持するために、例えば、規定のトルクによって速度とは無関係にリールを駆動することが有利であることが分かっている。
【0027】
さらに、制御器によって、ガイド手段やリニアガイドに沿って、特に並進的に、リールキャリアを駆動もしくは移動させるように構成される(リニア)駆動モータが制御されうる。好ましくは、リールもしくはリールホイールの回転動作と、ガイド手段に沿うリールキャリアの、したがってリールの移動、特に並進的な移動と、が、互いに対して調整され、特に同期される。これらの二つの運動を調整または同期することにより、繊維ストランドは、リール交換中に連続的に張力を維持されうる。
【0028】
リールの各々は、繊維ストランドガイド手段、締め付け手段、切断手段、および、繊維ストランドの先端ならびに繊維ストランドの末端のための保持手段、を備えると、さらに有用である。
【0029】
繊維ストランドを設置または再配置するとき、紡糸装置から連続的に吐出される繊維ストランドは、好ましくは、まずリールの繊維ストランドガイド手段と接触し、繊維ストランドガイド手段を介して、繊維ストランドの先端のための保持手段に供給される。繊維ストランドが保持手段に保持され次第、繊維ストランドの巻き付けが行われてよい。繊維ストランドが完全に巻き付けられると、繊維ストランドは、締付け手段によって摘み取られ、切断手段によって切断され、繊維ストランドの末端は、別の保持手段によって保持される。
【0030】
その後に続く一方のリールから他方のリールへの繊維ストランドの移動は、ユーザによって手作業で行われうる。本発明に係るリール交換装置の(部分的に)自動化された作業では、さらに、連続的に吐出される繊維ストランドを捉えまたは掴み、それを他方の空のリールへ供給する移動グリッパが設けられてもよい。また、一方のリールから他方のリールへの繊維ストランドの伝達または移動は、吸引パイプによる吸引によって実行または支援されることも考えられる。
【0031】
さらに、本発明は、前述のリール交換装置において紡糸装置もしくは紡糸機械から吐出される、好ましくは連続的に吐出される、(中空)繊維ストランドから繊維束を、特に中空繊維束を、巻き取るためのリール交換方法であって、
少なくとも二個のリールのうちの、リールキャリアが紡糸装置から遠い位置に好ましくは設置もしくは提供された第一リールに繊維ストランドを設置するステップと、
繊維ストランドを各リールに巻き付け、特にそれと同時に、ガイド手段に沿って、紡糸装置に近い位置に向かって各リールキャリアを同時に移動させるステップと、
を備えるリール交換方法に関する。
【0032】
有利な方法では、当該リール交換方法は、
リールキャリアが紡糸装置に近い位置にて、第一リールに巻き付けられた繊維ストランドを摘み取って切断するステップと、
少なくとも二個のリールのうちの、リールキャリアが紡糸装置から遠い位置に配置された第二リールに繊維ストランドを移動させるステップと、
をさらに備える。
【0033】
当該リール交換方法は、以下のステップ、すなわち、
紡糸装置に近い位置にあるリールキャリアを、紡糸装置から遠い位置に移動させるステップと、
容量が満たされ、完全に巻き付けられたリールを空のリールと交換する、または、巻き付けられた繊維束を直接取り外すステップと、
をさらに備えると好都合である。
【0034】
本発明に係る方法により、繊維ストランドバッファ装置が必要とされることなく、一方のリールから他方のリールへと、既に記したように、連続的に吐出される繊維ストランドを直接再配置することが可能になる。本発明に係るリール交換装置に関する上記説明または記載は、本発明に係るリール交換方法に同様に適用可能である。
【0035】
したがって、言い換えれば、本発明は、特に容易に操作することができ、かつ、連続的に供給される繊維ストランドからの(中空)繊維束の製造を改善する、単純かつ効率的なリール交換を可能にする。前記改善は、特に、連続的に生成される繊維ストランドを、一方のリールから他方のリールへ直接再配置することができ、かつ、常に張力を維持することができる、ことによって達成される。したがって、他方のリールが繊維ストランドを巻き取っている間に、一方のリールは、取り外しまたは交換がそれぞれ行われることができ、巻き付けられた繊維束を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、本発明を、図面を用いてさらに説明する。
【0037】
図1】本発明に係るリール交換装置の第一の実施形態。
図2】本発明に係るリール交換装置の第二の実施形態。
【0038】
図面は、単に概要であり、本発明の理解に役立つにすぎない。同様の要素は、同様の参照番号を備える。個々の実施形態または例示的な構成のそれぞれの特徴は交換されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1では、リール交換装置2の第一の実施形態が示されている。リール交換装置2は、二個のリールキャリア4、6、すなわち、第一リールキャリア4および第二リールキャリア6を含む。第一リールキャリア4は、第一リニアガイド8に受容されて案内される。第二リールキャリア6は、第二リニアガイド10に受容されて案内される。リニアガイド8、10は底部に位置している。リールキャリア4、6は、リニアガイド8、10から垂直に、したがって底部から離れるように延出している。特に、リールキャリア4、6はガイド部12、14を含み、ガイド部12、14を介して、リールキャリア4、6は、リニアガイド8、10において直線的に移動可能であるように案内される。
【0040】
リールキャリア4、6の各々は、固定ボルトの形状である保持部16、18を含む。第一リールキャリア4の保持部16では、第一リールホイール20が取り外し可能または交換可能に、配置もしくは固定される。第二リールキャリア6の保持部18では、第二リールホイール22が取り外し可能または交換可能に、配置もしくは固定される。リールホイール20、22の各々は、繊維ストランドガイド手段、締め付け手段、切断手段、および、繊維ストランドの先端ならびに繊維ストランドの末端のための保持手段、を含んでよい(これらは図示せず)。リールホイール20、22の各々は、円周方向に互いに均等に離間し、半径方向に延在する(十六本の)アーム21、23を有する。
【0041】
紡糸機械24の繊維ストランド出口側25には繊維ストランド出口開口26が設けられ、この開口26から繊維ストランドが、繊維ストランド吐出方向28に、繊維ストランドガイド手段30に向かって所定の速度で連続的に吐出される。繊維ストランド吐出方向28は、図1に示す垂直平面Eに延在している。リールホイール20、22の上流には、図1には図示されない、締め付け手段、切断手段、および、保持手段、も設けられてよい。
【0042】
リニアガイド8、10は、平面Eに平行に配置される。平面Eの各側には、リニアガイド8、10のうちの一方が設けられる。リニアガイド8、10、したがってリールキャリア4、6は、平面Eから、したがって互いからも最小距離を有する。特に、リニアガイド8、10の間、したがってリールキャリア4、6間には、可能な限り小さな横方向距離が設けられる。
【0043】
リールキャリア4、6の保持部16、18の各々は、平面Eの方を向いて垂直に突出している。言い換えれば、保持部16、18に留められたリールホイール20、22は、リールキャリア4、6の内部もしくは内側に配置される。このようにして、二個のリールホイール20、22の距離は、より一層短縮されうる。リールホイール20、22は、言い換えれば、平面Eに概ね接しており、そこから最小の距離を有する。
【0044】
作業中、連続的に吐出される繊維ストランドは、第一リールホイール20上に設置され、そのリールキャリア4は、リニアガイド8上の紡糸機械24から遠い後方位置Hに位置している。その後、繊維ストランドは、リールホイール20に巻き付けられる。巻き付けと同時に、リールキャリア4は、紡糸機械24に近接もしくは隣接する前方位置Vに向かって移動し、リールキャリア6は、リニアガイド10にて紡糸機械24から遠い後方位置Hに向かって移動する。リールホイール20が完全に巻き付けられ、これが、例えば回転数計(図示せず)によって検出され次第、繊維ストランドは、リールホイール20上の締め付け手段(図示せず)によって摘み取られ、切断手段(図示せず)によって切断される。
【0045】
次に、繊維ストランドを、この時点で後方位置Hにあるリールホイール22に直接移動させ、さらに連続的に吐出される繊維ストランドは、リールホイール22に巻き付けられる。繊維ストランドを前方位置Vから後方位置Hに、したがって繊維ストランド吐出方向28に移動させることにより、繊維ストランドをリールホイール20からリールホイール22へ移動させる間、繊維ストランドの張力が維持されうる。リールホイール22は、ここで巻き取られ、その際、後方位置Hから前方位置Vへゆっくりと移動させる。同時に、容量が満たされたリールホイール20を、前方位置Vから後方位置Hへ移動させる。次に、再び図1に示す配置になる。容量が満たされたリールホイール20が後方位置Hに配置されるとき、リールホイール20を空のリールホイールと交換することができ、または、巻き付けられた繊維束を取り外しもしくは回収することができる。したがって、容量が満たされたリールホイール20の交換、または、巻き付けられた繊維束の取り外しは、リールホイール22に繊維ストランドを巻き付けることと同時に行われる。図示の手順は、連続的に繰り返され、ユーザによって手作業で、または、自動化して、行われうる。
【0046】
自動化された作業の際は、CPU(破線で示す)を有する制御器が設けられる。この制御器を用いて、リールホイール20、22の回転動作、および、リールキャリア4、6の水平移動、を何らかの方法で制御することができ、互いに対して調整することができる。必要に応じて、リールホイール20、22の回転動作、および、リールキャリア4、6の水平移動、の両方は、減速、加速、もしくは、停止、されうる。例えば、繊維ストランドを移動させるためにリールホイール20、22の回転動作が完全に停止されるときでも繊維ストランドの張力を維持する制御器が設けられうる。これは、例えば、リールキャリア4、6の適切な移動によって、または、繊維ストランドが移動され次第リールホイール20、22の回転速度を一時的に高めることによって、達成されうる。
【0047】
図2は、リール交換装置2の第二の実施形態を示す。以下、主に、第一の実施形態との違いを述べる。図2におけるリニアガイド8、10は、底部ではなく高所に設けられる。さらに、図2のリニアガイド8、10は、平行ではなく、単に略平行でありかつ鋭角を有するように形成される。リールキャリア4、6は、リニアガイド8、10上を案内され、リニアガイド8、10から下方に垂直に延出する。リールホイール20、22は、リールキャリア4、6上に交換可能かつ動作可能に配置される、リールキャリア4、6は、リニアガイド8、10に沿って前方位置Vと後方位置Hの間で移動可能である。前方位置Vと後方位置Hの両方には、ストッパ32が設けられる。
【0048】
第二の実施形態では、紡糸機械(図示せず)から連続的に吐出される繊維ストランドが、まず、繊維ストランドガイド手段30に供給される。そこから、繊維ストランドは、まず、第一リールホイール20に設置され、巻き付けられる。第一リールホイール20が完全に巻き付けられ次第、繊維ストランドは、ユーザまたは作業者によって、リールホイール20にて、手作業で摘み取られ、切断される。続いて、繊維ストランドは、後方位置Hに近い第二リールホイール22に手作業で案内される。その後、繊維ストランドは、第二リールホイール22上に設置もしくは載置される。第二リールホイール22がここで繊維ストランドを巻き取る間、第二リールホイール22を、前方位置Vに向かって、すなわち、図2において左へ移動させる。充填すなわち完全に巻き取られたリールホイール20は、後方位置Hへ、すなわち、図2において右に、手作業で移動または付勢される。この後、リールホイール20に巻き付けられた繊維束の取り外しが行われる。この作業は、リールの交換毎に繰り返される。
【0049】
図2の実施形態では、リールホイール20、22の各々が、リールホイール駆動部34によって規定のトルクで駆動される。このようにして、繊維ストランドは、均等な張力に維持されてよい。リールホイール駆動部は、巻き付けられた繊維束の取り外しまたは回収のために停止されうる。リールホイール20、22の回転数は、回転数計(図示せず)を用いて検出されうる。したがって、ユーザまたは作業者は、例えば、リール交換が近づいていることを通知されうる。リールキャリア4、6は、作業者やユーザによって手作業でリニアガイド8、10に沿って水平方向に変位させられる。
【符号の説明】
【0050】
2 リール交換装置
4 第一リールキャリア
6 第二リールキャリア
8 第一リニアガイド
10 第二リニアガイド
12 ガイド部(第一リールキャリア)
14 ガイド部(第二リールキャリア)
16 保持部(第一リールキャリア)
18 保持部(第二リールキャリア)
20 第一リールホイール
21 リールアーム(第一リールホイール)
22 第二リールホイール
23 リールアーム(第二リールホイール)
24 紡糸機械
25 繊維ストランド出口側
26 繊維ストランド出口開口
28 繊維ストランド吐出方向
30 繊維ストランドガイド手段
32 ストッパ
34 リールホイール駆動部
図1
図2