(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0021】
本発明のセルロース複合体は、セルロースと水溶性カルボキシメチルセルロースを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体を1質量%含む水分散液のtanδが、0.60以下のものである。また、本発明のセルロース複合体を1質量%含む水分散液の貯蔵弾性率(G’)が2Pa以上であるものが好ましい。本発明において、「複合化」とは、セルロースの表面の少なくとも一部が、水素結合等の化学結合により、水溶性カルボキシメチルセルロース等の多糖類で被覆されることを意味する。また、「懸濁安定」とは、ココアやカルシウム、穀粉等の水不溶性の微粒子を含む飲食品において、分離、凝集、沈降の少なくとも1つ以上が実質的に生じず、好ましくは均一な外観を呈する状態を意味する。
【0022】
<セルロース>
本発明における、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。工業的に量産されており安定した品質のものを入手できるセルロースとしては、結晶セルロースと粉末セルロースをあげることができる。
【0023】
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースは結晶セルロースが好ましく、該結晶セルロースの平均重合度は、500以下であることが好ましい。平均重合度は、「第十五改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、水溶性カルボキシメチルセルロースとの複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
【0024】
<セルロースの加水分解>
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと親水性ガムに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、水溶性カルボキシメチルセルロースを含む多糖類との複合化の制御が容易になる。
【0025】
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調整されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
【0026】
<結晶セルロース(結晶形態である通常のセルロース)>
本発明で使用できる結晶セルロースとは、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものである。例えば、第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)に記載の、結晶セルロースに該当するものである。
【0027】
結晶セルロースと粉末セルロースとでは、水に分散させたときの状態が異なる。当該水分散液状態の比較としては、セルロースを水に分散させ、ホモジナイザーで磨砕して分散液を作製し、その状態を目視観察して比較すると、結晶セルロースは全体が白色不透明なクリーム状を呈し分離が生じないのに対し、粉末セルロースは分離が生じ上澄み液と沈殿とに分かれる。例えば、セルロース含有量が10質量%となるよう、水及びセルロースを量り取り、25℃雰囲気下にてTKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、MARKII)で12,000rpmで10分間撹拌して分散液を作製し、この分散液を高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー 圧力15MPa)処理した白色の懸濁液を、25℃で1時間静置後の懸濁安定状態で比較することができる。
【0028】
本発明に用いるセルロースは、結晶セルロースであることが好ましい。結晶セルロースをセルロース複合体として飲食品に配合した場合、ざらつきを感じにくく、のどごしが優れるからである。
【0029】
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明のセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を、1質量%濃度でイオン交換水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散液を、0.1〜0.5質量%にイオン交換水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾させたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
【0030】
L/Dは、20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましい。L/Dの下限値は1より大きいことが好ましく、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上である。L/Dの値が大きいほど、セルロースは細長い形状であることを意味する。この範囲内であれば、ざらつきを感じにくく、のど越しが優れるからである。
【0031】
<水溶性カルボキシメチルセルロース(水溶性CMC)>
本発明のセルロース複合体には、多糖類の1種として、水溶性カルボキシメチルセルロースを配合する。カルボキシメチルセルロースは、セルロース誘導体の1種であり、D−グルコースがβ―1,4結合した、セルロース骨格を持ち、セルロースの水酸基(セルロース中のグルコース残基一単位には三か所の水酸基が存在する)中の水素原子がモノクロロ酢酸との反応によりカルボキシメチル基(−CH
2COO
−)に置換されたもので、一部または全部の水酸基中の水素原子がカルボキシメチル基に置き換えられた構造を持つセルロース誘導体の総称である。水溶性カルボキシメチルセルロースは、水を溶媒として混練することでセルロースとの複合化が促進されやすいため好ましい。特に、水溶性カルボキシメチルセルロース中のグルコース残基のカルボキシメチル基が、塩構造となっているものを用いることが好ましい。
【0032】
特定のカルボキシメチルセルロースが水溶性に該当するか否かは、以下の基準による。該カルボキシメチルセルロースの試料3gを、297gのイオン交換水に添加し、エクセルオートホモジナイザーで15,000rpmで5分間撹拌する。作製した水溶液(または水分散液)を100mlの沈降管に100ml充填し、25℃で3時間静置後の沈降量(ml)を目視で測定し、沈降量が1ml(1%)未満の場合水溶性であるとする。水溶性CMCの非限定的な例は、複合化しやすさの観点から、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウムである。
【0033】
<セルロースと水溶性CMCの配合比率>
本発明のセルロース複合体は、セルロースを50〜99質量%、水溶性CMCを含む多糖類を1〜50質量%含むことが好ましい。セルロースと該多糖類の複合化により、セルロース粒子の表面が、該多糖類により水素結合等の化学結合で被覆されることにより、セルロース複合体は水分散液中に分散可能となり、ネットワーク構造を形成することで懸濁安定性が向上する。また、セルロースと該多糖類を上記の組成で複合化することにより、複合化が効果的に進むため、好ましい。より好ましいセルロースの配合量は60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。好ましい上限としては、95質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以下である。該多糖類の好ましい配合量としては、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限としては、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0034】
本発明で用いる水溶性カルボキシメチルセルロースは、対イオンの種類、置換度、粘度の少なくともいずれか1つが異なるカルボキシメチルセルロースを2種以上配合することが好ましい。3種以上を配合すると、さらに好ましい。これにより、tanδが低く、G’が高いセルロース複合体が得られる。
ここで、第一の水溶性カルボキシメチルセルロースの粘度をη1、置換度をDS1とし、第二の水溶性カルボキシメチルセルロースの粘度をη2、置換度をDS2とするとき、対イオンの種類が同じであって、(η1−η2)/(η1+η2)の値が−0.20〜0.20であって、(DS1−DS2)/(DS1+DS2)の値が−0.025〜0.025である場合を同一の水溶性カルボキシメチルセルロースであるとし、それ以外の場合は異なる水溶性カルボキシメチルセルロースであるとする。
【0035】
2種配合する場合の好ましい配合比率は、一種目の水溶性CMCが99〜1質量%に対し、二種目の水溶性CMCが1〜99質量%である。3種配合する場合は、一種目の水溶性CMCが98〜1質量%、二種目の水溶性CMCが1〜98質量%、三種目の水溶性CMCが1〜98質量%の比率で配合することが好ましい。つまり、水溶性CMCの全量に対して、別の水溶性CMC(複数の場合には、その各々)を1質量%以上配合することが好ましい。より好ましくは、別の水溶性CMC(複数の場合には、その各々)を2質量%以上配合することが好ましい。
【0036】
<カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)>
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、上記水溶性CMCのうち、セルロース中のグルコース残基のカルボキシメチル基が、ナトリウム塩となっている多糖類である。CMC−Naは、白色微粉末であり、水に速やかに溶解する。
【0037】
代表的な製法としては、水媒法と溶媒法がある。水媒法は、始めアルカリセルロースを作り、その後モノクロロ酢酸または、そのナトリウム塩を添加するアルカリ法と、セルロースをモノクロロ酢酸ナトリウム液と共に混和し、破砕し、次に水酸化ナトリウムを添加する早川法の2法がある。溶媒法は、様々な種類の溶媒、混合溶媒の使用が可能であり、イソプロピルアルコールを使用する方法が一般的である。イソプロピルアルコールとセルロース、水酸化ナトリウムを反応させてアルカリセルロースを作製し、これにモノクロロ酢酸を添加してエーテル化反応を行った後、メタノールで洗浄し製造する方法がある。カルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸ナトリウムとも呼ばれるものも本発明でいうCMC−Naに含まれる。
【0038】
<CMC−Naの置換度>
CMC−Naの置換度の理論値の上限は3であり、その範囲のものであれば本発明で使用することができるが、本発明で用いるCMC−Naは、置換度が1.5以下のものを用いることが好ましい。下限としては、0.5以上のものが好ましい。特に、tanδが小さいセルロース複合体を得るには、置換度は0.7以上が好ましく、より好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは0.86以上であり、特に好ましくは0.91以上である。上限としては、1.5以下が好ましく、より好ましくは1.1以下であり、さらに好ましくは1.0以下であり、特に好ましくは0.94以下である。
【0039】
また、セルロース複合体の貯蔵弾性率G’を高めるためには、CMC−Naの置換度は0.7以上が好ましく、より好ましくは0.86以上であり、さらに好ましくは1.0以上であり、特に好ましくは1.1以上である。上限としては、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0040】
これらのCMC−Naは、セルロース複合体のtanδ及びG’を所望の値にするために、2種以上を一括で混合してセルロースと複合化することもできるし、多段階に分けてセルロースに添加して複合化することも可能である。多段階に分けて添加して複合化する方法により、tanδが低く、G’が高いセルロース複合体が得られるため好ましい。
【0041】
ここでいう置換度は、日本薬局方で規定されている以下の方法で測定される。試料(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化させる。冷却後、これを500mlビーカーに写し、水を約250mlと0.05M硫酸35mlを加えて30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を滴下して過剰な酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定し、次式を用いて算出する。
【0042】
A={(af−bf1)/試料無水物の質量(g))−アルカリ度(または+酸度)
置換度=(162×A)/(10000−80×A)
ここで、以下のように定義する。
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(ml)
a:0.05M硫酸の使用量(ml)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(ml)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CH
2COONa−Hの分子量
【0043】
アルカリ度(または酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mlフラスコに精密に測り取り、水を約200ml加えて溶かす。これに、0.05M硫酸5mlを加え、10分間煮沸した後冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて0.1M水酸化カルシウムで滴定する(Sml)。同様に該試料を含まない水を使用してブランク試験を行い滴定する(Bml)。次式を用いてアルカリ度(または酸度)を算出する。
【0044】
アルカリ度={(B−S)×f}/試料無水物の質量(g)
【0045】
ここで、f:0.1M水酸化カリウムの力価と定義する。{(B−S)×f}の値がマイナスの場合は、酸度とする。
なお、CMC−Na以外の水溶性CMCの置換度も同様の方法で測定することができる。
【0046】
<CMC−Naの粘度>
本発明に用いるCMC−Naの粘度は、1質量%の水溶液において、450mPa・s以下が好ましい。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を1質量%測り取り、イオン交換水を、全量300gとなるよう加える。これを、高せん断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用いて、回転数15,000rpmで5分間分散させる。この水溶液を、25℃で1時間静置した後、B形粘度計(東機産業(株)製、商品名「TV−10」、ローター回転数60rpm)にローターを設置して60秒静置後に、30秒間回転させて測定する。ただし、ローターは粘度によって適宜変更できる。測定温度は25℃である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロースとの複合化が促進され、該セルロース複合体を水に分散させたとき、水分散液のtanδの値が低く制御でき、動的光散乱法で測定されるセルロース複合体のメジアン径が小さくなる。CMC−Naの粘度は、より好ましくは350mPa・s以下であり、さらに好ましくは200mPa・s以下であり、特に好ましくは100mPa・s以下であり、格別に好ましくは50mPa・s以下である。下限は、特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
なお、CMC−Na以外の水溶性CMCの粘度も同様の方法で測定することができる。
【0047】
<CMC−Naの添加量・配合比率>
本発明のセルロース複合体に添加されるCMC−Naは、1種以上配合することが好ましい。前述の理由から、tanδが低く、G’が高いセルロース複合体を得るためには、2種以上のCMC−Naを組み合わせて使用するのが好ましい。この場合、異なる置換度のものを組み合わせて使用することがより好ましい。
特に、CMC−Naを2段階以上に分けてセルロースと共処理する場合には、第一段階で置換度が0.86から0.94のCMC−Naを、セルロース(複合体でない)に配合して、共処理することが好ましい。該CMC−Naを第一段階で配合することにより、セルロースとの複合化を促進させて、tanδを小さく制御しやすい。この第一段階で配合するCMC−Naは、粘度が低いほうが好ましい。該粘度としては、450mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましい。それにより、tanδをより低く制御できる。
【0048】
第二段階で配合するCMC−Naは、第一段階で配合したCMC−Naと同じものであってもよいが、第一段階で配合したCMC−Naより置換度が高いものを用いることが好ましく、具体的には、第二段階で配合したCMC−Naの置換度は0.95〜1.5が好ましく、1.1〜1.5であることがより好ましい。
二種類以上のCMC−Naを配合する場合は、一種目のCMC−Naと二種目のCMC−Naとをセルロースに同時に配合してもよいが、第一段階でセルロースに一種目のCMC−Naを配合して共処理(たとえば、湿式混練)し、第二段階で二種目のCMC−Naを配合して共処理することが好ましい。該二種目のCMC−Naとしては、一種目のCMC−Naより置換度が高いものを用いることが好ましい。それにより、セルロース複合体のtanδを低く、G’を高くすることができる。
【0049】
各CMC−Naは、該一種目のCMC−Naがセルロース複合体全量に対し、1〜25質量%配合され、該二種目のCMC−Naが1〜25質量%配合されることが好ましい。より好ましくは、該一種目のCMC−Naが1〜15質量%で、該二種目のCMC−Naが1〜10質量%である。さらに好ましくは、該一種目のCMC−Naが1〜10質量%で、該二種目のCMC−Naが1〜5質量%である。それにより、セルロース複合体のtanδを低く、G’を高くすることができる。
【0050】
<カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)>
カルボキシメチルセルロースカルシウムは、セルロース中のグルコース残基の第一級または第二級アルコール性水酸基(グルコース1個につき合計3個存在する)の一部または全部がカルボキシメチル基とエーテル結合し、カルシウムを末端に持つ構造の多糖類である。代表的な製法としては、セルロースを、カルボキシメチル化したエーテル誘導体を酸処理して、水に不溶性のCMC酸とし、十分に洗浄して精製CMC酸を得た後、この精製CMC酸に炭酸カルシウムを加えて中和しカルシウム塩とすることで得る製法があげられる。カルメロースカルシウム、繊維素グリコール酸カルシウムとも呼ばれるものも本発明でいうCMC−Caに含まれる。CMC−Caの外観は白色微粉末であり、先述のCMC−Naとは異なり、水、酸に不溶であり、アルカリに部分溶解する。すなわち、CMC−Caは、前述の水溶性カルボキシメチルセルロースには該当しない。一方で、CMC−Caは、吸水性が非常に高いことが知られている。
【0051】
本発明では、CMC−Caを1種以上配合することが好ましい。CMC−Caは、吸水性に優れるため、セルロースと水溶性カルボキシメチルセルロースとを複合化する際に、混練時の固形分濃度を容易に上げることができる。このため、セルロースと水溶性CMCの複合化がより促進されるため好ましい。CMC−Caの置換度と粘度は、特定範囲に調整されたものを用いることが好ましい。置換度と粘度は、CMC−Naと同様に定義される。好ましい置換度は0.5以上であり、上限としては2以下であることが好ましい。好ましい粘度は500mPa・s以下であり、より好ましくは100mPa・s以下である。下限としては、1mPa・s以上である。CMC−Caの好ましい配合比率は、水溶性CMCとCMC−Caの総質量に対して、CMC−Caが0.01〜50質量%である。この範囲であれば、混練時の固形濃度をアップさせた状態で、混練が硬くなりすぎず、問題なく処理できるからである。
【0052】
<セルロース複合体>
本発明のセルロース複合体とは、主成分であるセルロースに水溶性カルボキシメチルセルロースを含む多糖類が複合化されたものである。複合化とは、前述のとおり、セルロース粉末を構成する粒子の表面の少なくとも一部が、水素結合等の化学結合により、多糖類で被覆された形態を意味する。したがって、セルロース複合体は、セルロース粉末と多糖類とを単に混合した状態ではなく、多糖類がセルロース粒子の表面を被覆した状態である。そのため、セルロース複合体を水系媒体中に分散させると、該水溶性カルボキシメチルセルロース等の多糖類がセルロース粒子の表面から剥離することなく、表面から放射状に広がった構造を形成し、水中でコロイド状となる。このコロイド状で存在するセルロース複合体は、それぞれの静電反発や立体反発、ファンデルワールス力等の相互作用によって、高次のネットワーク構造を形成することができる。
【0053】
本発明における多糖類としては、上述したCMC−NaやCMC−Caの他、親水性高分子物質を挙げることができる。ここで親水性とは、常温のイオン交換水に、一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、この水溶性高分子0.05gを、50mLのイオン交換水に、攪拌下(スターラーチップ等による)で平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、多糖類中に1質量%以上含まれることである。
【0054】
本発明に使用できる多糖類は、化学構造の一部に糖又は多糖を含むもので、水溶性カルボキシメチルセルロース以外には、ジェランガム、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、グルコマンナン、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、カードラン、プルラン、デキストラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにポリデキストロースが好適な例として挙げられる。
【0055】
また、セルロース複合体は、水系媒体への分散性を高める目的で、上記の多糖類に加えて、又はそれに替えて、高分子物質ではない親水性物質を含んでもよい。親水性物質は、水系媒体中に分散させた際の、崩壊剤、または導水剤として機能する。したがって、セルロース粒子の表面に親水性物質を被覆することで、セルロース複合体がさらに水中で分散しやすくなる。
【0056】
要するに、高分子物質ではない親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリンが分散性の点で好ましい。親水性物質の中には、デキストリン類、及び難消化デキストリンのように、多糖類としての機能も、僅かではあるがあわせ持つものもある。そのような親水性物質を用いる場合でも水溶性高分子をあわせて用いることが望ましいが、そのような場合には多糖類を用いなくてもよい別の態様もある。その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
【0057】
<セルロース複合体の水分散特性>
本発明のセルロース複合体は、水などの溶媒中に添加して撹拌処理を施し、サブミクロン〜数ミクロン程度まで分散させると、三次元ネットワーク構造を形成することができる。これは、まずセルロース粒子の表面の多糖類が水に溶解し、造粒物表面に多数の細孔が出現すると、その細孔から造粒物内部に溶媒が浸入することで造粒物が崩壊し、一次粒子の状態まで分散する。このとき、コロイド状となったセルロース粒子の表面は負に帯電することから、結晶セルロース粒子同士の反発により、三次元ネットワーク構造が形成される。したがって、セルロースは比重が1以上の水不溶性粒子であるにも関わらず、溶媒中で安定に分散できる。
【0058】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)>
本発明のセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
【0059】
本発明のセルロース複合体は、イオン交換水中に該セルロース複合体を1質量%含む水分散液の貯蔵弾性率(G’)が2Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率とは、水分散液のレオロジー弾性を表現するものであり、セルロースと水溶性CMCを含む多糖類との複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと該多糖類との複合化が促進され、セルロース複合体の水分散液におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体は懸濁安定性に優れる。
【0060】
本発明において、貯蔵弾性率は、セルロース複合体1質量%をイオン交換水中に分散させた水分散液の動的粘弾性測定により得られる値とした。水分散液に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が貯蔵弾性率として表れる。
【0061】
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体1質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させ得られた水分散液を1日間室温で静置する。この水分散液の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARESG2型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散液は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、温度25℃における歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散液の構造はより弾性的であり、セルロースのネットワークが剛直であることを意味する。つまり、貯蔵弾性率が大きいほど、食品微粒子の沈降抑制効果が高いといえる。
【0062】
イオン交換水中にセルロース複合体を1質量%含む水分散液の貯蔵弾性率は、2Pa以上が好ましく、2.5Pa以上がより好ましく、さらに好ましくは3Pa以上であり、特に好ましくは4Pa以上であり、最も好ましくは5Pa以上である。
【0063】
上限は、特に設定されるものではないが、飲料に配合した場合の飲みやすさや、水に分散させる場合の作業性を勘案すると、10Pa以下である。貯蔵弾性率がこの範囲内であれば、飲料の懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量(飲食品の形態により異なるが、例えば、ココア飲料では0.01〜1.0質量%)において、該飲料の飲み口が軽いため好ましい。
【0064】
<セルロース複合体のtanδ>
本発明のセルロース複合体のtanδについて説明する。本発明のセルロース複合体の水分散液のレオロジー特性として、上記方法にて、貯蔵弾性率G’と同時に、損失弾性率G’’が測定できる。水分散液に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する粘性成分が損失弾性率として表れる。本発明における損失弾性率G’’は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、温度25℃における歪み20%の値のことである。
【0065】
また、この貯蔵弾性率と損失弾性率の比で表されるのが、tanδであり、次式で表される。すなわち、本発明におけるtanδは、温度25℃における歪み20%の値のことである。
tanδ=G’’(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率)
【0066】
ここで、tanδの値が1未満であれば、セルロースのネットワーク構造が弾性的であることを意味し、tanδの値が1以上であれば、構造が粘性的であることを意味する。本発明のセルロース複合体の水分散液のtanδは、0.60以下である。本発明のセルロース複合体は、従来のセルロース複合体と比較して、水分散液とした時のtanδの値が小さいという特徴がある。これは、水不溶性の食品微粒子が多く配合された系において、セルロースのネットワークが弾性的で剛直であることを意味する。つまり、水不溶性の食品微粒子が多く配合された系において、コロイダル状となったセルロース粒子のブラウン運動が活発であるため、セルロース粒子同士の衝突が激しく、相互作用が密に形成されるため、食品微粒子と凝集を引き起こしにくい特徴を持つと考えられる。この凝集抑制効果は、食品の保存温度が高いときに、より顕著に表れる。これは、高温では、食品微粒子のブラウン運動が、熱運動により活発化され、またタンパクが変性し、プラスにチャージしたコロイダル粒子によって、電荷バランスが中和されるため、凝集しやすくなるが、本発明のセルロース複合体はそれを打消す効果が高いからであると考えられる。
【0067】
tanδは、0.55以下であることが好ましく、より好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.45以下であり、特に好ましくは0.44以下であり、格別に好ましくは0.40以下であり、0.38以下が最も好ましい。下限としては、特に設定されるものではないが、好ましくは0.10以上である。
【0068】
<セルロース複合体の動的光散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、従来のセルロース複合体と比較して、動的光散乱法で水分散液を測定したときのメジアン径が小さいという特徴を持つ。
【0069】
ここで、動的光散乱法による水分散液のメジアン径の測定方法を説明する。セルロース複合体0.01質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させて水分散液を作製する。この水分散液を、超音波処理(EYLA社製、商品名「AU−180C」)を10分間施した後、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定する。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。
【0070】
この動的光散乱法によるメジアン径は、セルロース複合体が0.01質量%という極めて薄い濃度の水溶液で測定されるため、コロイド状となったセルロース粒子のブラウン運動の指標となる。すなわち、動的光散乱法によるメジアン径が小さいほど、セルロースから伸びている水溶性CMCの広がりが小さいことを意味し、水溶性CMCと水溶性CMC間の相互作用よりも、セルロースとセルロース間の相互作用が強いことを意味する。つまり、セルロースとセルロース間の距離が短く、密で剛直なネットワークを形成していることを意味する。そのため、動的光散乱法で測定されるメジアン径が小さいほど、食品微粒子を多く含む懸濁飲食品において、後述する保存後の分離を引き起こしにくいといえる。
【0071】
好ましい動的光散乱法によるメジアン径としては、600nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは450nm以下であり、さらに好ましくは400nm以下であり、特に好ましくは350nm以下である。下限は、特に設定しないが、セルロース自身の構造を考慮すると、30nm以上が好ましい。
【0072】
<セルロース複合体のレーザー回折法/散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、レーザー回折法/散乱法によるメジアン径が小さい特徴を持つ。
【0073】
このメジアン径の大きさは、以下の方法により測定できる。まず、セルロース複合体1質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させて水分散液を作製する。レーザー回折法/散乱法によるメジアン径とは、この水分散液を、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、装置付属機能の超音波処理1分、屈折率1.20)で測定した際の、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。このメジアン径は、40μm以下であれば、該セルロース複合体の水への分散安定性に優れるため、好ましい。また、セルロース複合体を含有する飲食品を食した際に、ザラツキのない、滑らかなのど越しの食感を提供することができる。より好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。下限は特に制限されないが、0.1μm以上が好ましい。
レーザー回折法/散乱法によるメジアン径は、セルロースそのものの径に対応する。
【0074】
<セルロース複合体の水分散状態のゼータ電位>
本発明のセルロース複合体の水分散状態におけるゼータ電位は、−40mV以下であることが好ましい。ここで、ゼータ電位の測定方法を説明する。セルロース複合体0.2質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させて水分散液を作製する。この水分散液を、超音波処理(EYLA社製、商品名「AU−180C」)を10分間施した後、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)を用いて、25℃、積算回数20回、溶媒の屈折率を1.33、溶媒の誘電率を78.3として測定する。このゼータ電位は、より好ましくは−50mV以下であり、特に好ましくは−70mV以下である。コロイダル状となったセルロースは負に帯電するため、負のゼータ電位の値を持つが、この負の絶対値が大きいほど、コロイダル粒子のネットワーク相互作用が強く、安定化の度合いが高いため好ましい。
【0075】
<セルロース複合体の製造方法>
本発明のセルロース複合体の製造方法を説明する。本発明の特定のtanδを持つセルロース複合体は、複合化工程においてセルロースと水溶性CMCを含む多糖類に機械的せん断力を与え、セルロースをサイズリダクションさせて微細化するとともに、セルロース表面に該多糖類を複合化させることにより得られる。また、水溶性CMC以外の多糖類や親水性物質、及びその他添加剤などを添加してもよい。上述の処理を経たものは、必要に応じて乾燥してもよい。本発明のセルロース複合体は、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
【0076】
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
【0077】
また、混練温度は低いほど多糖類の劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましい。混練温度は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、70℃以下が特に好ましい。下限としては、0℃以上が好ましく、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上である。機械的せん断を与えている状態で、上記範囲の温度を維持するには、ジャケットの冷却、放熱等の徐熱を自由に工夫することができる。
【0078】
混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは46質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ない不連続な顆粒状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。
【0079】
ここで、せん断速度について説明する。せん断速度とは、例えば二軸の押し出し機やニーダーにおいて、以下の式により算出されるものである。なお、せん断速度をシアレートとも表現する。
【0081】
ここで、以下の通り定義する。
D:ローター外径(mm)
N:ローター回転数(1/sec)
h:チップのクリアランス(mm)
【0082】
本発明において、せん断速度は150(1/s)以上が好ましい。より好ましくは300(1/s)以上である。この範囲であれば、セルロースと水溶性CMCを含む多糖類の複合化が促進されやすい。セルロースに対する該多糖類の配合量が少ない場合は、せん断速度が速いほうが、セルロースと該多糖類を効果的に接触させ得、且つサイズリダクションを促進し、また複合化を促進させ得るため、好ましい。また、速いせん断速度で混練することにより、セルロース複合体を水に分散した際、貯蔵弾性率が大きくなるとともに動的光散乱法で測定されるメジアン径が小さくなるため好ましい。上限としては設備に過大な負担とならないよう、10,000(1/s)以下であることが好ましい。
【0083】
セルロースと水溶性CMCを含む多糖類の複合化は、せん断速度とせん断時間で調整することが可能である。通常は、上述のせん断速度の範囲において、2分以上せん断を与えることが好ましい。2分以上せん断を与えることで、セルロースの磨砕と、該多糖類との複合化が促進されるからである。より好ましいせん断時間は5分以上である。上限としては設定しないが、時間をかけてせん断しすぎると該多糖類が劣化し、複合化が減衰するため、せん断速度に対する必要なせん断時間関係を把握したうえで、運転時間を設定することが好ましい。
【0084】
特に、本発明では、目的とする範囲のtanδを発現するためには、セルロースに対する水溶性CMCを含む多糖類の比率に応じて、せん断速度及びせん断時間を調整することが好ましい。例えば、セルロースに対する該多糖類の比率が低い場合は、せん断時間への依存度は低いが、該多糖類の比率が高くなると、せん断時間は長いほうがtanδが低くなるため好ましい。
【0085】
本発明のセルロース複合体の製造では、水溶性CMCを多段階に分けて添加する場合、第一の水溶性CMCとセルロースをシアレートが300(1/s)以上で湿式混練する第一の混練工程(第一段階)と、さらに第二の水溶性CMCを添加して混練する第二の混練工程(第二段階)を含むことが好ましい。より好ましくは該シアレートが400(1/s)以上である。なお、第二の混練工程においても、湿式混練が好ましい。また、各混練工程において添加される水溶性CMCは、一度に添加されてもよいし、複数回に分けて添加されてもよい。
【0086】
第一段階と第二段階の混練では、シアレート(せん断速度)を、添加する水溶性CMCのそれぞれに適した速度に調整することが好ましい。例えば、第一の混練工程で、第一の水溶性CMCとして置換度が0.86−0.94の水溶性CMCを添加する場合、300(1/s)以上の第一のせん断速度で混練することが好ましい。より好ましくは400(1/s)以上であり、さらに好ましくは500(1/s)以上であり、特に好ましくは700(1/s)以上である。第一せん断速度の上限は特に制限されないが、例えば、10,000(1/s)以下が好ましく、5,000(1/s)以下がより好ましく、2,000(1/s)以下がさらに好ましい。次に、第二の混練工程で、上述で得られたセルロース複合体にさらに、置換度が1.1−1.5の第二の水溶性CMCを添加する場合は、1000(1/s)以下の第二のせん断速度で混練することが好ましい。より好ましくは800(1/s)以下であり、特に好ましくは500(1/s)以下である。第二せん断速度の下限は特に制限されないが、例えば、1(1/s)以上が好ましく、10(1/s)以上がより好ましく、100(1/s)以上がさらに好ましい。これは、第一の混練工程では、セルロースのサイズリダクション及び水溶性CMCとセルロースの複合化を促進させ、第二の混練工程では、G’を高めさせるためである。この方法により、G’’に対して相対的にG’を高めることができるので、tanδが低いセルロース複合体を得ることができる。
【0087】
また、第一の混練工程において、固形分を高めることでセルロースのサイズリダクションと水溶性CMCの複合化を促進する目的で、先述したCMC−Caを添加することも好ましい実施態様である。
【0088】
本発明のセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20質量%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。この含水量は、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。また、1質量%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5質量%以上である。
【0089】
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕してもよい。
【0090】
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成される。特に、セルロースが凝集や分離を起こさず、安定なコロイド分散体を形成するため、安定剤等として優れた機能を奏する。
【0091】
<水溶性CMCの添加方法(混練工程)>
セルロースと水溶性CMCを含む多糖類の複合化工程において、ウェットケーク状態としたセルロースに、乾燥状態の粉末状水溶性CMCを添加する方法が好ましい。水溶性CMCと、場合によりその他多糖類及びCMC−Caを添加する場合は、それらもまた乾燥状態で、全てを予め粉混合してセルロースに一括で添加してもよいし、別々に添加してもよい。好ましくは、別々に添加する方法である。これは、前述のとおり、混練工程で、せん断速度とせん断時間が重要であるため、多糖類の配合量や比率に応じて、適したせん断力とせん断時間を調整することにより、セルロース複合体をより高機能化させることが可能となるからである。たとえば、速いせん断速度で混練してセルロースのサイズリダクションと複合化を促進し、その後遅いせん断速度で混練することで貯蔵弾性率を発現させることが可能である。このとき、せん断時間を長く設定することにより、tanδを低く制御することが可能である。
【0092】
水溶性CMCを複数回に分けて添加して混練する場合は、異なる置換度や粘度をもつものを予め混合し、それを複数回に分けて添加してもよいし、置換度や粘度に応じて水溶性CMCを分類し、その分類ごとに分けて添加しても、どちらでもよい。好ましくは、分類ごとに分けて添加する方法である。これは、水溶性CMCの置換度や粘度に応じて、せん断速度と時間を最適化しやすいからである。また、分類ごとに添加する場合は、1つの分類の水溶性CMCにつき一度に添加してもよいし、複数回に添加しても、どちらでもよい。好ましくは、作業性の効率化から一度に添加する方法である。また、添加する順序としては、置換度が0.86−0.94、好ましくは0.91−0.94の水溶性CMCを最初に添加し、後から置換度がより高い水溶性CMCを添加する方法が好ましい。これは、置換度が低いものは、サイズリダクションやtanδの制御に特に効果を奏し、置換度が高いものは、G’の発現に特に効果を奏するからである。
【0093】
<セルロース複合体の用途>
本発明のセルロース複合体は、種々の飲食品に使用できる。例えば、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、果汁、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料、カルシウムやプロテイン、ナッツ類、穀粉等、食物繊維等を強化した栄養素強化飲料、健康飲料等の各種飲料、アイスクリーム、アイスミルク、ソフトクリーム、ミルクシェーキ、シャーベット等の冷菓、氷菓類、バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、プリン等の乳製品類、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の油脂加工食品類、各種のスープ、シチュー、ソース、たれ、ドレッシング等の調味料類、練りがらしに代表される各種スパイス類、ジャム、フラワーペーストに代表される各種フィリング、餡、ゼリーを含むゲル・ペースト状食品類、パン、麺、パスタ、ピザ、シリアル、各種プレミックスを含む穀物食品類、キャンディー、グミ、クッキー、ビスケット、チョコレート、スナック菓子、米菓を含む和・洋菓子類、かまぼこ、はんぺん類に代表される水産練り製品、ハム、ソーセージ、肉まん、シューマイ、ハンバーグに代表される畜肉製品、クリームコロッケ、春巻き、中華あん、グラタン、餃子等の各種惣菜、塩辛、キムチ、漬物等の珍味類、ペットフード及び経管流動食等があり、食するものであれば限定しない。
【0094】
本発明のセルロース複合体は、これらの用途において、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤、泡安定剤、クラウディー剤、組織付与剤、流動性改善剤、保形剤、離水防止剤、生地改質剤、粉末化基材、食物繊維基材、油脂代替などの低カロリー化基材として作用するものである。
【0095】
本発明のセルロース複合体を飲食品に配合する場合、各飲食品の製造で通常行われている方法と同様の機器を使用して、主原料のほか、必要に応じて香料、pH調整剤、増粘安定剤、糖類、油脂類、タンパク類、乳化剤、酸味料、色素と配合して、混合、混練、撹拌、乳化、加熱等の操作を行えばよい。
【0096】
<飲食品へのセルロース複合体の添加量>
飲食品に対するセルロース複合体の添加量としては、特に制限はないが、例えば、ココアやコーヒー、乳飲料等の飲料において、0.01質量%以上が好ましい、セルロース複合体の添加量を0.01質量%以上とすることで、分散、懸濁安定性、乳化安定性が向上する。より好ましい添加量は0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。上限としては、飲料としての飲みやすさ(のどごし、舌触り)から、5質量%以下が好ましい。
【0097】
<水不溶性成分>
本発明のセルロース複合体は、飲食品、特に飲料中に含まれる水不溶性成分が凝集・分離することを抑制することができる。
水不溶性成分とは、水溶媒中に添加し、攪拌した際、溶解せずに分散、或いは浮遊、沈降する成分のことを意味する。例えば、洗いごまや煎りごま、擦りごま、皮むきごまなどのごま類や、大根をはじめ、ニンジン、ニンニク、生姜、タマネギ、ナガイモ、ホウレンソウ、トマト、ネギ、シイタケ、リンゴ、ナシ、オレンジ、レモンなどの野菜や果物をすりおろしたものや、細かく刻んだもの、繊維質、乾燥粉砕したものなどを挙げることができる。そのほかにも、小麦、大麦、ライ麦、燕麦(オーツ)、鳩麦等の麦類や米、ソバ、雑穀、トウモロコシ、モロコシ、アワ、ヒエ、キビ、雑穀等の穀物、大豆、小豆、緑豆、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、胡桃等のナッツ類、インゲン豆、そら豆、枝豆、カカオ豆、コーヒー豆などの豆類、かぼちゃの種、ひまわりの種、西瓜の種などの種類、或いは、ゆず、れもん、すだち、かぼす、だいだい、ライム、みかん、オレンジなどの柑橘系の果汁や、その他果物などの果汁や繊維質、コショウなどをはじめとするスパイスやハーブ、ココア、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類や、ウコン、タンパク質(ミルクプロテイン、大豆タンパク、ホエイ、カゼインなど)、コラーゲン、コエンザイムQ10、乳酸菌などの機能性食材、水不溶性成分であれば、食材の種類や成分としては特に限定しない。これらの原料は、酵素処理を施したものでも、施していないものでもどちらでも構わない。また、形態は、粉末状でも、ペースト状でもよく、形態は限定しない。
中でも、飲料としての味覚を考慮すると、ココア、穀物類、豆類が好ましい。
【0098】
<水不溶性成分の含有量>
本発明の飲料の水不溶性成分の含有量としては、特に制限は設けないが、好ましくは30質量%以下である。より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。水不溶性成分量がこの範囲であれば、飲料としての飲み口が良好かつ、セルロース複合体の添加量に対して、セルロース複合体が形成するネットワーク構造とのバランスがとれやすく、優れた懸濁安定性や流動性の効果を発揮しやすい。
本発明の飲食品、好ましくは飲料は、上述した本発明のセルロース複合体を含むため、例えば水溶性成分が4質量%以上という高濃度で飲食品中に存在していても、分離や凝集の発生を抑えることができる。
【0099】
<水不溶性成分の比重>
水不溶性成分の比重としては、1g/cm
3以上であることが好ましい。比重が水と同程度、あるいは水よりも大きいものにおいて、沈降を抑制し、液体中で均一に懸濁安定させる効果を発揮する。好ましくは1.1g/cm
3以上である。上限としては、セルロース複合体が形成するネットワークで懸濁安定できる大きさと、喫食時の咀嚼しやすさから、3g/cm
3以下が好ましい。
【0100】
<水不溶性成分の大きさ>
水不溶性成分の大きさとしては、体積平均粒子径が0.1μm以上10mm以下が好ましい。体積平均粒子径が10mm以下であれば、セルロース複合体が形成するネットワークに対して水不溶性成分が大きすぎることもないのでバランスが崩れず、懸濁安定化するので水不溶性成分が沈降しない。また、体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、セルロースが形成するネットワークに対して水不溶性成分が小さすぎることもなく、ネットワークに水不溶性成分が引っかかるのですり抜けて沈降、或いは浮上してしまうこともないため、好ましい。水不溶性成分の体積平均粒子径は、好ましくは、1μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上である。上限は、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
なお、本発明において、水不溶性成分の体積平均粒子径とは、1質量%の水分散液に対して、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、装置付属機能の超音波処理1分、屈折率1.20)で測定した際の、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0101】
<飲料の粘度>
本発明の飲料の粘度は、100mPa・s以下であることが好ましい。ここでの粘度は、25℃にてB形粘度計(東機産業(株)製、TV−10型)で60rpmで30秒間撹拌した際に測定される粘度値をいう。より好ましい粘度は50mPa・s以下であり、さらに好ましくは20mPa・s以下であり、特に好ましくは10mPa・s以下である。この範囲内であれば、のどごしのよい食感を維持できるからである。下限としては、2mPa・s以上が好ましい。
【0102】
<飲料のゼータ電位>
本発明の飲料のゼータ電位の絶対値が、5mV以上であることが好ましい。より好ましくは10mV以上であり、さらに好ましくは20mV以上であり、25mV以上であることが特に好ましい。また、負の値を持つことが好ましい。ゼータ電位の絶対値は、絶対値が大きいほど、飲料中で凝集や沈降がなく、安定に分散しているためである。このゼータ電位は、超音波処理(EYLA社製、商品名「AU−180C」)を10分間施した飲料を、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)を用いて、25℃、積算回数20回、溶媒の屈折率を1.33、溶媒の誘電率を78.3として測定される。
【0103】
また、本発明の飲料は40℃で1週間保存した後のゼータ電位の絶対値が5mV以上であることが好ましい。より好ましくは10mV以上であり、さらに好ましくは20mV以上である。40℃で1週間保存した後のゼータ電位の絶対値が高いと、加温した状態で静置保管しても沈降、凝集、及び分離が少ない。なお、ゼータ電位の絶対値が大きいほど、安定化の度合いが高いと言えるため、該絶対値の上限は特に制限されるものではないものの、飲料であれば、ゼータ電位の絶対値は100mV以下が好ましい。
【0104】
<飲料中の粒子のメジアン径(動的光散乱法)>
本発明の飲料中に分散している粒子の動的光散乱法によるメジアン径は、1000nm以下であることが好ましい。より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下であり、特に好ましくは500nm以下である。この範囲であれば、飲料中で凝集を引き起こしにくいからである。測定は、試料をイオン交換水で10倍に希釈して、超音波処理(EYLA社製、商品名「AU−180C」)を10分間施した飲料を、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)を用いて、25℃で、積算140回で測定したものである。
【実施例】
【0105】
本発明を、下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0106】
<水溶性CMCの粘度>
水溶性CMCの粉末を1質量%測り取り、イオン交換水を、全量300gとなるよう加えた。これを、高せん断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」)を用いて、回転数15,000rpmで5分間分散させた。この水溶液を、25℃で1時間静置した後、B形粘度計(東機産業(株)製、商品名「TV−10」、ローター回転数60rpm)にローターを設置して60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。なお、ローターは粘度に応じて最適なものを使用した。
【0107】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率G’>
セルロース複合体1質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させて得られた水分散液を1日間室温で静置した。この水分散液の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARESG2型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の方向で掃引、水分散液は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始した。)により測定した。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、温度25℃における歪み20%の値のことである。
【0108】
<セルロース複合体のtanδ>
上記で測定した貯蔵弾性率(G’)及び同時に測定した損失弾性率(G’’)の歪み20%値の比から、次式を用いて算出した。
tanδ=G’’(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率)
【0109】
<セルロース複合体の動的光散乱法によるメジアン径(DLS)>
セルロース複合体0.01質量%を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いてイオン交換水中に分散させて水分散液を作製した。この水分散液を、装置付属の超音波処理を10分間施した後、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定し、当該粒度分布の散乱強度の積算50%に対応する粒径値を求めた。
【0110】
<実施例1>
市販溶解パルプ(DP)を細断後、2.5mol/Lの塩酸中、105℃で15分間加水分解した後、水洗、濾過し、固形分が55質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した。平均重合度は220であった。
【0111】
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93)を、セルロース/水溶性CMC=85/15、固形分濃度が48質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度393(1/sec)で12分間湿式混練し、セルロース複合体Aを得た。水溶性CMCは、一回で全量投入した。混練温度は70℃であった。
【0112】
得られたセルロース複合体Aのtanδは0.45、貯蔵弾性率G’は2.8Pa、DLSは419nmであった。結果を表1に示す。
【0113】
<実施例2>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(日本製紙製、F04HC、置換度0.93)を、セルロース/水溶性CMC=89/11、固形分濃度が48質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で10分間湿式混練し、セルロース複合体Bを得た。
【0114】
得られたセルロース複合体Bのtanδは0.46、貯蔵弾性率G’は2.0Pa、DLSは255nmであった。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例3>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93)と、水不溶性CMCとして市販のCMC−Ca(五徳薬品製、ECG)を、セルロース/CMC=89/11(セルロース/CMC−Na/CMC−Ca=89/10/1)、固形分濃度が48質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で10分間湿式混練し、セルロース複合体Cを得た。
【0116】
得られたセルロース複合体Cのtanδは0.41、貯蔵弾性率G’は2.7Pa、DLSは328nmであった。結果を表1に示す。
【0117】
<実施例4>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93)を、セルロース/水溶性CMC=94/6、固形分濃度が48質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度1193(1/sec)で24分間湿式混練し、セルロース複合体D得た。
【0118】
得られたセルロース複合体Dのtanδは0.57、貯蔵弾性率G’は0.7Pa、DLSは355nmであった。結果を表1に示す。
【0119】
<実施例5>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、12M31F、置換度1.2)を、セルロース/水溶性CMC=90/10、固形分濃度が46質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で38分間湿式混練し、セルロース複合体Gを得た。
【0120】
得られたセルロース複合体Gのtanδは0.51、貯蔵弾性率G’は2.0Pa、DLSは349nmであった。結果を表1に示す。
【0121】
<実施例6>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(ダイセル製、1330、置換度1.3)を、セルロース/水溶性CMC=85/15、固形分濃度が47質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Iを得た。このとき、CMC−Naは2回に分けて添加した。セルロースとの合計における水溶性CMCの割合15質量%のうち、まず10質量%分をセルロースと一緒にせん断速度785(1/sec)で30分間湿式混練した後、残りの5質量%分を加えてその混練物をせん断速度785(1/sec)で更に8分間湿式混練した。
【0122】
得られたセルロース複合体Iのtanδは0.47、貯蔵弾性率G’は3.8Pa、DLSは493nmであった。結果を表2に示す。
【0123】
<実施例7>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93とAshland製、Amburger1221、置換度1.3)を、セルロース/水溶性CMC=81/19、固形分濃度が47質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Jを得た。このとき、CMC−Naは2回に分けて添加した。セルロースとの合計における水溶性CMCの割合19質量%のうち、14質量%分がFL−9Aであり、5質量%分がAmburger1221である。まずFL−9A 14質量%を、セルロース 81質量%と一緒に、せん断速度785(1/sec)で10分間湿式混練した後、Amburger1221 5質量%を加えて、その混練物をせん断速度628(1/sec)で更に8分間湿式混練した。
【0124】
得られたセルロース複合体Jのtanδは0.42、貯蔵弾性率G’は3.2Pa、DLSは418nmであった。結果を表2に示す。
【0125】
<実施例8>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93とダイセル製、1330、置換度1.3)と、水不溶性CMCとして市販のCMC−Ca(五徳薬品製、ECG)を、セルロース/CMC=83/17(セルロース/CMC−Na/CMC−Ca=83/15/2)、固形分濃度が47質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Kを得た。このとき、CMCは2回に分けて添加した。セルロースとの合計におけるCMCの割合17質量%のうち、10質量%分がFL−9Aであり、5質量%分が1330であり、2質量%分がCMC−Caである。まずFL−9A 10質量%とCMC−Ca 2質量%とを、セルロース 83質量%と一緒に、せん断速度1193(1/sec)で26分間湿式混練した後、1330 5質量%を加えて、その混練物をせん断速度393(1/sec)で更に19分間湿式混練した。
【0126】
得られたセルロース複合体Kのtanδは0.37、貯蔵弾性率G’は3.8Pa、DLSは365nmであった。結果を表2に示す。
【0127】
<実施例9>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93とダイセル製、1330、置換度1.3)と、水不溶性CMCとして市販のCMC−Ca(五徳薬品製、ECG)を、セルロース/CMC=83/17(セルロース/CMC−Na/CMC−Ca=83/15/2)、固形分濃度が47質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Lを得た。このとき、CMCは3回に分けて添加した。セルロースとの合計におけるCMCの割合17質量%のうち、10質量%分がFL−9Aであり、5質量%分が1330であり、2質量%分がCMC−Caである。まずFL−9A 7質量%とCMC−Ca 2質量%とを、セルロース 83質量%と一緒に、せん断速度1193(1/sec)で13分間湿式混練した後、さらにFL−9A 3質量%を添加して、せん断速度を維持したままさらに13分間湿式混練し、その後、1330 5質量%を添加して、その混練物をせん断速度393(1/sec)で更に19分間湿式混練した。
【0128】
得られたセルロース複合体Lのtanδは0.38、貯蔵弾性率G’は3.5Pa、DLSは389nmであった。結果を表2に示す。
【0129】
<比較例1>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A)を、セルロース/水溶性CMC=40/60、固形分濃度が45質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で30分間湿式混練し、セルロース複合体Mを得た。
【0130】
得られたセルロース複合体Mのtanδは2.5、貯蔵弾性率G’は2.3Pa、DLSは1153nmであった。結果を表3に示す。
【0131】
<比較例2>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(ダイセル製、1330)を、セルロース/水溶性CMC=85/15、固形分濃度が47質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、セルロース複合体Oを得た。このとき、CMCは2回に分けて添加した。セルロースとの合計における水溶性CMCの割合15質量%のうち、まず10質量%分の1330をセルロースと一緒にせん断速度785(1/sec)で30分間湿式混練した後、混練物を取り出して5mm四方程度の大きさに小分けし、チャック付きのポリエチレン製の袋に入れて残りの5質量%分の1330を添加し、3分間袋を手で振り混合した。
【0132】
得られたセルロース複合体Oのtanδは0.73、貯蔵弾性率G’は1.5Pa、DLSは832nmであった。結果を表3に示す。一部のCMCを混練せずに単にまぶしただけでは、tanδが大きくなり、G’は低下し、メジアン径は大きくなった。
【0133】
<比較例3>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、12M31F、2質量%水溶液中での粘度が480mPa・s)と、水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、Amburgum1221、2質量%水溶液中での粘度が45mPa・s)を、セルロース/水溶性CMC=92/8、固形分濃度が48質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、セルロース複合体Pを得た。このとき、12M31F/Amburgum1221=1/3(質量比)となるよう配合し、水溶性CMCは1回で最初にセルロースに添加し、せん断速度785(1/sec)で30分間湿式混練した。
【0134】
得られたセルロース複合体Pのtanδは0.62、貯蔵弾性率G’は3.8Pa、DLSは653nmであった。結果を表3に示す。
【0135】
<比較例4>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、7LF)を、セルロース/水溶性CMC=85/10(質量比)、固形分濃度が46質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で6分間混練した。これを水に分散し、さらに水溶性CMCである市販のCMC−Na(Ashland製、12M31F)を5質量%添加し(セルロースと水溶性CMCの合計を100質量%とした)、スリーワンモーターで500rpmで10分間混合した。これを、スプレードライヤーで乾燥させて、粉末状のセルロース複合体Qを得た。
【0136】
得られたセルロース複合体Qのtanδは1.39、貯蔵弾性率G’は0.37Pa、DLSは452nmであった。結果を表3に示す。
【0137】
<比較例5>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、7LF)を、セルロース/水溶性CMC=85/15、固形分濃度が45質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、せん断速度785(1/sec)で13分間湿式混練し、セルロース複合体Rを得た。
【0138】
得られたセルロース複合体Rのtanδは1.54、貯蔵弾性率G’は0.37Pa、DLSは319nmであった。結果を表3に示す。
【0139】
<比較例6>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、7LF)を、セルロース/水溶性CMC=85/10、固形分濃度が10質量%(イオン交換水で調整)とし、スリーワンモーターを用いて500rpmで10分間混合した。これを、ピストン型ホモジナイザー(APV社製、マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて15MPaで均質化処理した。これに、さらに市販のCMC−Na(Ashland製、12M31F)を5質量%添加し(セルロースと水溶性CMCの合計を100質量%とした)、スリーワンモーターを用いて500rpmで10分間混合した。これをピストン型ホモジナイザーを用いて15MPaで均質化処理し、セルロース複合体Sを得た。
【0140】
得られたセルロース複合体Sのtanδは1.86、貯蔵弾性率G’は0.31Pa、DLSは1237nmであった。結果を表4に示す。
【0141】
<比較例7>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(Ashland製、FL−9A、置換度0.93とAshland製、Amburger1221、置換度1.3)を、セルロース/水溶性CMC=81/19、固形分濃度が46質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Tを得た。このとき、CMC−Naは2回に分けて添加した。セルロースとの合計における水溶性CMCの割合19質量%のうち、まず14質量%分のFL−9Aをセルロースと一緒にせん断速度141(1/sec)で30分間湿式混練した後、残りの5質量%分であるAmburger1221を加えてその混練物をせん断速度141(1/sec)で更に10分間湿式混練した。
【0142】
得られたセルロース複合体Tのtanδは1.58、貯蔵弾性率G’は0.64Pa、DLSは948nmであった。結果を表4に示す。
【0143】
<比較例8>
実施例1と同様にして、ウェットケーキ状のセルロースを作製した。次に、ウェットケーキ状のセルロースと水溶性CMCとして市販のCMC−Na(ダイセル製、1330、置換度1.3)を、セルロース/水溶性CMC=85/15、固形分濃度が10質量%(イオン交換水で調整)とし、これらを二軸の混練機(DSM Xplore製、Compounder15)に投入して、混練し、セルロース複合体Uを得た。このとき、CMC−Naは2回に分けて添加した。セルロースとの合計における水溶性CMCの割合15質量%のうち、まず10質量%分をセルロースと一緒にせん断速度785(1/sec)で30分間湿式混練した後、残りの5質量%分をせん断速度785(1/sec)で更に30分間湿式混練した。
【0144】
得られたセルロース複合体Uのtanδは2.1、貯蔵弾性率G’は0.41Pa、DLSは1550nmであった。結果を表4に示す。
【0145】
<ココア飲料の評価>
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体を使用し、以下の手順でココア飲料を作製し、評価した。予め粉混合したココア粉末40g、砂糖320g、スキムミルク200g、セルロース複合体8gを、80℃に調温したイオン交換水中に添加して全量4000gとし、スリーワンモーター(HEIDON製、BL−600、かい十字羽)で10分間撹拌混合した。これを、ピストン型ホモジナイザー(APV社製、マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、15MPaで均質化処理した。これを、140℃で60秒間UHT殺菌処理し、350mlのペットボトルに充填して栓をして、25℃、40℃及び50℃の各温度で縦置きに静置して1か月間保存した。保存期間終了後、分離、凝集、沈降状態を目視観察した。評価結果を、表1〜4に記す。評価基準を以下に示す。
【0146】
<ピーナッツミルク飲料の評価>
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体を使用し、以下の手順でピーナッツミルク飲料を作製し、評価した。予め粉混合した砂糖240g、ピーナッツパウダー160g、スキムミルク200g、カゼインナトリウム8g、及びセルロース複合体8gを、75℃に調温したイオン交換水中に添加して全量4000gとし、スリーワンモーター(HEIDON製、BL−600、かい十字羽)で10分間撹拌混合した。これを、さらにTKホモジナイザー(エスエムテー製)を用いて10,000rpmで10分間撹拌後、ピストン型ホモジナイザー(APV社製、マントンゴーリンホモジナイザー)を用いて、20MPaで均質化処理した。これを、140℃で5秒間UHT殺菌処理し、350mlのペットボトルに充填して栓をして、25℃、40℃及び50℃の各温度で縦置きに静置して1か月間保存した。保存期間終了後、分離、凝集、沈降状態を目視観察した。評価結果を、表1〜4に記す。また、評価基準を以下に示す。
【0147】
<飲料の評価>
25℃、40℃、50℃の各温度の恒温機内で1カ月保存後の懸濁安定性を、分離、凝集、沈降の3項目について、下記にしたがい評価した。
−分離−
◎:分離(側面から観察して上部と下部が色調の異なる2層に分離した状態を意味する)なし、○:分離した上層が全体の1〜10%の高さ、△:分離した上層が全体の11〜30%の高さ、×:分離した上層が全体の31%以上の高さ
−凝集−
◎:側面から観察して凝集なし(均一)、○:側面から観察して20%未満の面積に凝集が発生、△:側面から観察して20%以上50%未満の面積に凝集が発生、×:側面から観察して50%以上の面積に凝集が発生
−沈降−
◎:底面から観察して沈降なし(均一)、○:底面から観察して20%未満の面積に沈降が発生、△:底面から観察して20%以上80%未満の面積に沈降が発生、×:底面から観察して80%以上の面積に沈降が発生
【0148】
<飲料のゼータ電位>
40℃で1週間静置保存した後の飲料のゼータ電位を25℃で測定した。ゼータ電位は、超音波処理(EYLA社製、商品名「AU−180C」)を10分間施した飲料を、ゼータ電位計(大塚電子(株)製、商品名「ELS−Z2」)を用いて、25℃、積算回数20回、溶媒の屈折率を1.33、溶媒の誘電率を78.3として測定し、以下の通り分類した。
◎:ゼータ電位の絶対値が20mV以上、○:ゼータ電位の絶対値が10以上20mV未満、△:ゼータ電位の絶対値が5以上10mV未満、×:ゼータ電位の絶対値が5mV未満
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】