特許第6884786号(P6884786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6884786-測位モード間の遷移の発生 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884786
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】測位モード間の遷移の発生
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20210531BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G01S5/02 Z
   G01C21/28
【請求項の数】23
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-534028(P2018-534028)
(86)(22)【出願日】2015年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-530764(P2018-530764A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】FI2015050630
(87)【国際公開番号】WO2017051060
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】315002955
【氏名又は名称】ノキア テクノロジーズ オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ヤントゥテン ヨニ
(72)【発明者】
【氏名】コルモネン ヴェリ−マッティ
(72)【発明者】
【氏名】コスキミエス オスカリ
(72)【発明者】
【氏名】テイカリ イラリ
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−085780(JP,A)
【文献】 特開2015−102510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0038676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14,
G01S 19/00−19/55,
G01C 21/00−21/36,
G01C 23/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させることと、
モード遷移制御パケットの前記追跡可能デバイスによるワイヤレス受信か、または前記追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断かに応答して、前記第1の測位モードと前記第2の測位モードとの間の前記遷移を発生させることと、
を含む方法であって、
前記第1の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットの、前記ロケータデバイスへのワイヤレス送信を発生させ、
前記第2の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスと前記ロケータデバイスとの間の前記相対的位置の測定を可能にする前記データ部分を含まない1つ以上のデータパケットの、前記ロケータデバイスへのワイヤレス送信を発生させ、
前記第1および第2の測位モード間の前記遷移は、前記追跡可能デバイスに含まれる移動センサからのデータに基づく判断であって、前記追跡可能デバイスの移動に関する条件が満たされたとの前記判断に応答して発生させられる、
方法。
【請求項2】
前記データパケットは、前記第2の測位モードのときよりも前記第1の測位モードのときに、より高い頻度で前記追跡可能デバイスによって送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モード遷移制御パケットの受信に応答して前記第1および第2の測位モード間の前記遷移を発生させることを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モード遷移制御パケットの受信に応答して、または送信頻度制御パケットの前記追跡可能デバイスでのワイヤレス受信に応答して、無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔を変更することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記モード遷移制御パケットまたは前記送信頻度制御パケットは、送信と送信との間の前記間隔が変更後になるべき前記間隔を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の測位モード間の前記遷移を発生させる前に、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を変更することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを含む、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の前記間隔を短縮することにより前記受信頻度制御パケットの受信に応答することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記追跡可能デバイスが前記第2の測位モードのときに、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の前記間隔を短縮することにより前記受信頻度制御パケットの前記受信に応答することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記追跡可能デバイスが前記第2の測位モードのときに、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の前記間隔を増大させることにより前記受信頻度制御パケットの前記受信に応答することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して前記第1および第2の測位モード間を遷移する、前記追跡可能デバイスの能力を無効化することによって、デバイス開始型遷移制御パケットのワイヤレス受信に応答することを更に含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、前記追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させることと、
前記追跡可能デバイスの現在のコンテキストが所定の条件を満たすと判断することに応答して、前記モード遷移制御パケットの前記ワイヤレス送信を発生させることと、
を含む方法であって、
前記第1の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、リモートの前記追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、
前記第2の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスと前記ロケータデバイスとの間の前記相対的位置の測定を可能にする前記データ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、
前記現在のコンテキストは、前記追跡可能デバイスの前記現在の位置を含み、前記所定の条件は、前記第1の測位モードが適切である第1のエリアと前記第2の測位モードが適切である第2のエリアとの間の境界を越える前記追跡可能デバイスによる遷移の発生である、方法。
【請求項12】
前記モード遷移制御パケットは、前記追跡可能デバイスによるパケットの送信と送信との間の間隔の変更を発生させるように設定され、または、前記方法は、前記追跡可能デバイスによるパケットの送信と送信との間の前記間隔の前記変更を発生させるための送信頻度制御パケットの、前記追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モード遷移制御パケットまたは前記送信頻度制御パケットは、送信の頻度が変更後になるべき前記頻度を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モード遷移制御パケットの送信を発生させる前に、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を前記追跡可能デバイスに変更させるための受信頻度制御パケットの、前記追跡可能デバイスへの送信を発生させることを含む、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記追跡可能デバイスが前記第2の測位モードであると判断されると、前記受信頻度制御パケットの送信を発生させることを含み、前記受信頻度制御パケットは、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の前記間隔を前記追跡可能デバイスに短縮させるよう設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記追跡可能デバイスが前記第2の測位モードであると判断されると、前記受信頻度制御パケットの送信を発生させることを含み、前記受信頻度制御パケットは、前記追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の前記間隔を前記追跡可能デバイスに増大させるよう設定される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】

前記追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して前記第1および第2の測位モード間を遷移する前記追跡可能デバイスの能力の無効化を、前記追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して発生させるための、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させることを含む、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
処理手段及び記憶手段を備える装置であって、前記記憶手段はプログラム命令を格納し、前記プログラム命令は前記処理手段で実行されると、前記装置に、請求項1から10の何れかに記載の方法を遂行させるように構成される、装置。
【請求項19】
処理手段及び記憶手段を備える装置であって、前記記憶手段はプログラム命令を格納し、前記プログラム命令は前記処理手段で実行されると、前記装置に、請求項11から17の何れかに記載の方法を遂行させるように構成される、装置。
【請求項20】
装置の処理手段で実行されると、前記装置に、請求項1から10の何れかに記載の方法を遂行させるように構成されるプログラム命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項21】
装置の処理手段で実行されると、前記装置に、請求項11から17の何れかに記載の方法を遂行させるように構成されるプログラム命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項22】
追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させる手段と、
モード遷移制御パケットの前記追跡可能デバイスによるワイヤレス受信か、または前記追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断かに応答して、前記第1の測位モードと前記第2の測位モードとの間の前記遷移を発生させる手段と、
を備える装置であって、
前記第1の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットの、前記ロケータデバイスへのワイヤレス送信を発生させ、
前記第2の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスと前記ロケータデバイスとの間の前記相対的位置の測定を可能にする前記データ部分を含まない1つ以上のデータパケットの、前記ロケータデバイスへのワイヤレス送信を発生させ、
前記第1および第2の測位モード間の前記遷移は、前記追跡可能デバイスに含まれる移動センサからのデータに基づく判断であって、前記追跡可能デバイスの移動に関する条件が満たされたとの前記判断に応答して発生させられる、
装置。
【請求項23】
追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モード間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、前記追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させる手段と、
前記追跡可能デバイスの現在のコンテキストが所定の条件を満たすと判断することに応答して、前記モード遷移制御パケットの前記ワイヤレス送信を発生させる手段と、
を備える装置であって、
前記第1の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、リモートの前記追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、
前記第2の測位モードでは、前記追跡可能デバイスは、前記追跡可能デバイスと前記ロケータデバイスとの間の前記相対的位置の測定を可能にする前記データ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、
前記現在のコンテキストは、前記追跡可能デバイスの前記現在の位置を含み、前記所定の条件は、前記第1の測位モードが適切である第1のエリアと前記第2の測位モードが適切である第2のエリアとの間の境界を越える前記追跡可能デバイスによる遷移の発生である、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、測位モード間の遷移を発生させることに関し、特に、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させることに関する。
【背景】
【0002】
屋内空間の中で追跡可能ワイヤレスデバイスの位置を測定できるようにする屋内測位システムには、多くの異なるタイプがある。これらには、すでに実装されているものも、まだ開発中のものもある。このようなシステムとして、ノキアの高精度屋内測位(HAIP:High Accuracy Indoor Positioning)システムが挙げられる。このシステムは、ロケータデバイスを使用して追跡可能デバイスの位置を追跡するよう構成される。ロケータデバイスは、フェーズドアンテナアレイを利用して、ロケータデバイスで受信した無線周波数(RF:radio frequency)データパケットに基づいて追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置を測定する。このシステムは非常に正確で、30センチメートルよりも優れた精度を提供することができる。ほかに、提供される測位の精度は劣るが使用する計算リソース(例えば電気、処理能力、および帯域幅)がより少ない、コスト最適化屋内測位(COIP:cost−optimised indoor positioning)システムと呼ばれることもあるシステムがある。これらのシステムは、着信するデータパケットの信号強度を利用して部屋レベルの精度を提供でき、または、特定の空間内に十分な数のCOIPロケータデバイスが設置されていれば、信号強度をフィンガープリント(電波地図)に加えて利用して約2メートルの精度を提供できる。
【摘要】
【0003】
第1の側面において、本明細書は、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させることを含む方法であって、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させる、方法を記載する。
【0004】
一部の例では、データパケットは、第2の測位モードのときよりも第1の測位モードのときに、より高い頻度で追跡可能デバイスによって送信されてもよい。
【0005】
本方法は、モード遷移制御パケットの追跡可能デバイスによるワイヤレス受信か、または追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断かに応答して、第1および第2の測位モード間の遷移を発生させることをさらに含んでもよい。本方法は、モード遷移制御パケットの受信に応答して第1および第2の測位モード間の遷移を発生させることをさらに含んでもよい。本方法は、モード遷移制御パケットの受信に応答して、または送信頻度制御パケットの追跡可能デバイスでのワイヤレス受信に応答して、追跡可能デバイスによるパケットの送信と送信との間の間隔を変更することをさらに含んでもよい。モード遷移制御パケットまたは送信頻度制御パケットは、送信と送信との間の間隔が変更後になるべき間隔を示してもよい。
【0006】
本方法は、第1および第2の測位モード間の遷移を発生させる前に、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を変更することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを含んでもよい。本方法は、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を短縮することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することをさらに含んでもよい。本方法は、追跡可能デバイスが第2の送信モードのときに、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を短縮することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することをさらに含んでもよい。あるいは本方法は、追跡可能デバイスが第2の送信モードのときに、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を増大させることにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを含んでもよい。
【0007】
本方法は、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する、追跡可能デバイスの能力を無効化することによって、デバイス開始型遷移制御パケットのワイヤレス受信に応答することをさらに含んでもよい。
【0008】
第1および第2の測位モード間の遷移は、一部の例では、追跡可能デバイスに含まれる移動センサからのデータに基づく判断であって、追跡可能デバイスの移動に関する条件が満たされたとの判断に応答して発生させられてもよい。
【0009】
第2の側面において、本明細書は、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させることを含む方法であって、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、リモートの追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信する、方法を記載する。
【0010】
第2の側面の方法は、追跡可能デバイスの現在のコンテキストが所定の条件を満たすと判断するのに応答して、モード遷移制御パケットのワイヤレス送信を発生させることを含んでもよい。現在のコンテキストは、追跡可能デバイスの現在の位置を含んでもよく、所定の条件は、第1および第2のエリア間の境界を越える追跡可能デバイスによる遷移の発生である。
【0011】
モード遷移制御パケットは、追跡可能デバイスによる無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔の変更を発生させるように設定されてもよい。あるいは本方法は、追跡可能デバイスによる無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔の変更を発生させるための送信頻度制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させることをさらに含んでもよい。モード遷移制御パケットまたは送信頻度制御パケットは、送信と送信との間の間隔が変更後になるべき間隔を示してもよい。
【0012】
本方法は、モード遷移制御パケットの送信を発生させる前に、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに変更させる受信頻度制御パケットの、追跡可能デバイスへの送信を発生させることをさらに含んでもよい。本方法は、追跡可能デバイスが第2の送信モードであると判断されると、受信頻度制御パケットの送信を発生させることをさらに含んでもよく、受信頻度制御パケットは、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに短縮させるよう設定される。本方法は、追跡可能デバイスが第2の送信モードであると判断されると、受信頻度制御パケットの送信を発生させることをさらに含んでもよく、受信頻度制御パケットは、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに増大させるよう設定される。
【0013】
本方法は、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する追跡可能デバイスの能力の無効化を、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して発生させる、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させることを含んでもよい。
【0014】
第3の側面において、本明細書は、第1および第2の側面のいずれかによる方法を実行するよう構成された装置を記載する。
【0015】
第4の側面において、本明細書は、コンピューティング装置により実行されるとコンピューティング装置に第1および第2の側面のいずれかによる方法を実行させるコンピュータ可読命令を記載する。
【0016】
第5の側面において、本明細書は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを備える装置であって、コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させること、を装置にさせ、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させる、装置を記載する。
【0017】
一部の例では、データパケットは、第2の測位モードのときよりも第1の測位モードのときに、より高い頻度で追跡可能デバイスによって送信されてもよい。
【0018】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、モード遷移制御パケットの追跡可能デバイスによるワイヤレス受信か、または追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断かに応答して、第1および第2の測位モード間の遷移を発生させることを装置にさせてもよい。コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、モード遷移制御パケットの受信に応答して第1および第2の測位モード間の遷移を発生させることを装置にさらにさせてもよい。コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、モード遷移制御パケットの受信に応答して、または送信頻度制御パケットの追跡可能デバイスでのワイヤレス受信に応答して、無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔を変更することを装置にさらにさせてもよい。モード遷移制御パケットまたは送信頻度制御パケットは、送信と送信との間の間隔が変更後になるべき間隔を示してもよい。
【0019】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、第1および第2の測位モード間の遷移を発生させる前に、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を変更することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを装置にさせてもよい。コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を短縮することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを装置にさせてもよい。コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスが第2の送信モードのときに、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を短縮することにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを装置にさせてもよい。あるいは、コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスが第2の送信モードのときに、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を増大させることにより受信頻度制御パケットの受信に応答することを装置にさせてもよい。
【0020】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する、追跡可能デバイスの能力を無効化することによって、デバイス開始型遷移制御パケットのワイヤレス受信に応答することを装置にさせてもよい。
【0021】
第1および第2の測位モード間の遷移は、追跡可能デバイスに含まれる移動センサからのデータに基づく判断であって、追跡可能デバイスの移動に関する条件が満たされたとの判断に応答して発生させられてもよい。
【0022】
第6の側面において、本明細書は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを備える装置であって、コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させること、を装置にさせ、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、リモートの追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信する、装置を記載する。
【0023】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスの現在のコンテキストが所定の条件を満たすと判断するのに応答してモード遷移制御パケットのワイヤレス送信を発生させることを装置にさせてもよい。現在のコンテキストは、追跡可能デバイスの現在の位置を含んでもよく、所定の条件は、第1および第2のエリア間の境界を越える追跡可能デバイスによる遷移の発生である。
【0024】
モード遷移制御パケットは、追跡可能デバイスによる無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔の変更を発生させるように設定されてもよく、または、コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスによる無線周波数パケットの送信と送信との間の間隔の変更を発生させるための送信頻度制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信をさらに発生させる。モード遷移制御パケットまたは送信頻度制御パケットは、送信頻度が変更後になるべき頻度を示してもよい。
【0025】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、モード遷移制御パケットの送信を発生させる前に、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに変更させるための受信頻度制御パケットの、追跡可能デバイスへの送信を発生させることを装置にさせてもよい。コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスが第2の送信モードであると判断されると受信頻度制御パケットの送信を発生させることを装置にさらにさせてもよく、受信頻度制御パケットは、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに短縮させるよう設定される。あるいは、コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、追跡可能デバイスが第2の送信モードであると判断されると受信頻度制御パケットの送信を発生させることを装置にさせてもよく、受信頻度制御パケットは、追跡可能デバイスが着信する制御パケットをリッスンする受信タイムスロット間の間隔を追跡可能デバイスに増大させるよう設定される。
【0026】
コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する追跡可能デバイスの能力の無効化を、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して発生させる、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させることを装置にさせてもよい。
【0027】
第7の側面において、本明細書は、コンピュータ可読コードが記憶されたコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読コードは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させることの実行を少なくとも発生させ、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させる、コンピュータ可読媒体を記載する。第7の側面の媒体に記憶されたコンピュータ可読コードは、第1の側面の方法を参照して記載された動作のいずれかの実行をさらに発生させてもよい。
【0028】
第8の側面において、本明細書は、コンピュータ可読コードが記憶されたコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読コードは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させることの実行を少なくとも発生させ、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、リモートの追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信する、コンピュータ可読媒体を記載する。第8の側面の媒体に記憶されたコンピュータ可読コードは、第2の側面の方法を参照して記載された動作のいずれかの実行をさらに発生させてもよい。
【0029】
第9の側面において、本明細書は、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させる手段を備えた装置であって、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させる、装置を記載する。第9の側面の装置は、第1の側面の方法を参照して記載された動作のいずれかの実行を発生させる手段をさらに備えてもよい。
【0030】
第10の側面において、本明細書は、追跡可能デバイスに第1の測位モードと第2の測位モードとの間を遷移させるためのモード遷移制御パケットの、追跡可能デバイスへのワイヤレス送信を発生させる手段を備えた装置であって、第1の測位モードでは、追跡可能デバイスは、リモートの追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信し、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、追跡可能デバイスとロケータデバイスとの間の相対的位置の測定を可能にするデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信する、装置を記載する。第10の側面の装置は、第2の側面の方法を参照して記載された動作のいずれかの実行を発生させる手段をさらに備えてもよい。
【0031】
本明細書に記載される方法、装置、およびコンピュータ可読命令がより包括的に理解されるよう、以下、添付の図面と関連して解釈される以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】追跡可能デバイスが異なる2つの測位モード間を切り替えるよう動作可能な測位システムである。
図2図1の追跡可能デバイスによって提供されてもよい様々な機能性を概略的に示すフローチャートである。
図3図1の測位サーバ装置によって提供されてもよい様々な機能性を概略的に示すフローチャートである。
【詳細説明】
【0033】
本記載および図面では、同じ参照数字が、全体にわたって同じ構成要素を指すこともある。
【0034】
図1は、少なくとも1つの追跡可能デバイス10、少なくとも1つのロケータデバイス11、および測位サーバ装置12を備え、追跡可能デバイス10と少なくとも1つのロケータデバイス11との間でワイヤレスで渡されるデータパケットに基づいて少なくとも1つの追跡可能デバイス10の位置を測定する、測位システム1である。
【0035】
測位システム1は、異なる2つの測位モードを使用して追跡可能デバイス10の位置を測定することができる。第1の測位モードは精度がより高く、第2の測位モードは精度が劣るが計算リソースの要求がより低い。例えば、第1のモードは、高精度屋内測位(HAIP)技術を利用してもよく、第2のモードは、コスト最適化屋内測位(COIP)技術を利用してもよい。2つの測位モードは、「屋内」測位と呼ばれるが、当然のことながら、これらの測位モードを利用したシステムは屋外にも実装されてもよい。追跡可能デバイス10は、電子タグ、または例えばパーソナルコンピューティング/通信デバイス(次に限定されるものではないが、携帯電話、タブレットコンピュータ、またはスマートウォッチなどのウェアラブルコンピューティングデバイスなど)などのより複雑なデバイスであってもよい。図1に示してはいないが、当然のことながら、システム1は様々な異なるタイプのものであってもよい複数の追跡可能デバイスを含んでもよく、これらデバイスの一部または全部が本願明細書に記載された機能性を提供する。
【0036】
システム1は、特定のデータ部分を含むデータパケットの受信から得られるデータに基づき追跡可能デバイスからロケータデバイス11Aまでの相対的位置が測定されることを可能にする高精度測位(例えばHAIP)モード(第1の測位モード)で動作するよう構成された、少なくとも1つのロケータデバイス11Aを含む。高精度モードで動作可能な少なくとも1つのロケータデバイス11Aは、アンテナのフェーズドアレイ110を含む。アレイ110のアンテナは、スイッチ機構112を介してトランシーバ回路111に接続されており、スイッチ機構112は、どの時点においてもトランシーバ回路111にアンテナのうちの1つのみを接続するよう構成されている。追跡可能デバイス10に対する相対的位置は、スイッチ機構112がそれぞれのアンテナを順次、トランシーバ回路111に接続するのに伴い、データパケットの特定のデータ部分の受信から得られるデータに基づいて測定できる。いくつかの具体例では、データパケットの受信から得られるデータは、IおよびQデータを含んでもよい。ロケータデバイス11Aは、デバイス11Aの他のコンポーネントを上記で説明した形で制御するため、および後述のような様々な機能性を提供するための、コントローラ114をさらに含む。例えば、コントローラ114は、追跡可能デバイス10からのデータパケットの受信から得られたデータを測位サーバ12に提供させてもよい。同様に、コントローラ114は、測位サーバ12から受信された制御パケットを追跡可能デバイス10による受信のために送信させてもよい。
【0037】
ノキアが開発したHAIPは当技術分野で既知である。実際、(数ある文献の中でも特に)次の公開PCT特許出願において言及され、様々な詳細さで記載されている:国際公開第2014087196(A1)号、国際公開第2013179195(A1)号、国際公開第2014087198(A1)号、国際公開第2015013904(A1)号、国際公開第2014107869(A1)号、国際公開第2014108753(A1)号、国際公開第2014087199(A1)号、および国際公開第2014087197(A1)号。これらおよびその他の開示を考慮して、HAIPを提供するために追跡可能デバイス10、ロケータデバイス11A、および測位サーバ装置12によって利用される基本原理は、本明細書にこれ以上詳細に記載されない。
【0038】
システム1はさらに、コスト最適化屋内測位(COIP)モード(第2の測位モード)で動作するよう構成された少なくとも1つのロケータデバイス11を含む。COIPモードでは、ロケータデバイス11は、追跡可能デバイス10からのデータパケットの受信に基づいて、ロケータデバイス11の通信圏内に追跡可能デバイス10があると判断することを可能にしてもよい。場合によっては、少なくとも1つのロケータデバイス11はさらに、約2mの精度で追跡可能デバイスの位置について測定することを可能にしてもよい。ただしこれは、コスト最適化モードで動作する複数のロケータデバイス11が、特定の追跡可能デバイス10から同じデータパケットを受信することを必要とするかもしれず、位置は、各ロケータデバイス11でのデータパケットの測定された信号強度と、ロケータデバイス11が設置されているエリアの電波地図とを使用して測定される。
【0039】
システム1のロケータデバイス11の1つ以上は、高精度測位モードおよびコスト最適化測位モードの両方で動作できてもよい。かかるロケータデバイスは、高精度ロケータデバイス11Aを参照して記載されたように構成されてもよいが、コスト最適化モードで動作しているときは、アレイ110のアンテナの1つのみを使用して追跡可能デバイス10からデータパケットを受信するように構成されてもよい。
【0040】
一部の例では、システム1は、コスト最適化測位モードのみで動作するよう構成されている1つ以上のロケータデバイス11Bを含んでもよい。図1の例では、このようなロケータ11Bは網掛けを使用して示されている。かかるロケータデバイス11Bは、単一のアンテナ113を含んでもよく、これは、少なくとも1つの追跡可能デバイス10からデータパケットを受信するため、および適切な場合は、追跡可能デバイス10により受信される制御パケットを送信するために、トランシーバ回路114に接続される。コスト最適化専用のロケータデバイス11Bにより提供される機能性は、ロケータデバイス11Bの一部を構成するコントローラ116によって制御され(または発生させ)てもよい。
【0041】
追跡可能デバイス10およびロケータデバイス11A、11B、11は、任意の適切なワイヤレス伝送プロトコルを使用して通信するように構成されてもよい。ただしいくつかの具体例では、追跡可能デバイス10およびロケータデバイス11のトランシーバ101、111、114はそれぞれ、個々のコントローラの制御下でBluetooth(登録商標)伝送プロトコルを介して相互に通信するよう構成されてもよい。例えば、トランシーバ101、111、114は、Core Bluetooth仕様の現行版(バージョン4.2)に記載のとおりの、またはそれと互換性のあるBluetooth Low Energyプロトコルを使用して、データパケット(位置測定を可能にするためのデータパケットおよび制御パケットを含む)を送信および/または受信するように構成されてもよい。ただし他の例では、デバイス11、11A、11B、の少なくとも一部が同様に、または追加して、別の適切なプロトコルを使用して通信するよう構成されてもよい。かかるプロトコルは、次に限定はされないが、802.11ワイヤレスローカルエリアネットワークプロトコル、他のタイプのBluetoothプロトコル、またはIEEE802.15.4プロトコルを含んでもよい。
【0042】
測位サーバ装置12は、追跡可能デバイス10からの1つ以上のデータパケットの受信から得られたデータをロケータデバイス11から受信するよう構成される。ロケータデバイス11が高精度測位モードで動作している場合、当該データは、IおよびQデータ、ならびに追跡可能デバイス10を識別するデバイスIDを含んでもよい。受信されたデータパケットの信号強度を示すデータも測位サーバ装置12に渡されてもよい。ロケータデバイス11がコスト最適化測位モードで動作している場合、当該データは、デバイスIDと、受信されたデータパケットの信号強度を示すデータとを含んでもよい。ただし、コスト最適化モードで動作している場合、ロケータデバイス11はIおよびQデータを測位サーバ装置12に渡さない。いずれのモードにおいても、例えば追跡可能デバイス10内の1つ以上のセンサ103から得られたセンサデータおよびシグナリングデータ(フラグなど)などの追加のデータも、追跡可能デバイス10によって送信されるデータパケットに含まれてもよい。この追加のデータも、処理のために測位サーバ装置12に渡されてもよい。(数ある機能性の中でも特に)データ処理および位置測定は、コントローラ120によって提供されてもよい。
【0043】
データは、ロケータデバイス11の入出力(I/O:input/output)インターフェース115を介して測位サーバ装置12に渡される。データは、有線またはワイヤレス接続で任意の適切なプロトコルを使用して渡されてもよく、使用される接続およびプロトコルのタイプに基づきI/Oインターフェース115が適宜構成される。測位サーバ装置12も、ロケータデバイス11からデータを受信するために、およびさらにデータ(制御データなど)をロケータデバイス11に提供するために、それ自体のI/Oインターフェース121を含む。
【0044】
測位サーバ装置12は、ロケータデバイス11と同じ敷地内に位置してもよい1つ以上の別々のコンピューティング装置で構成されてもよく(別の言い方をすればローカルエリアネットワークの一部であってもよく)、またはリモートに位置してインターネットを介してロケータデバイス11に接続されてもよい(別の言い方をすればクラウドサーバであってもよい)。図示されていないが、測位サーバ装置12がリモートに位置する場合は、システム1はゲートウェイデバイスをさらに含んでもよく、それを介してロケータデバイス11からのすべてのデータがサーバ装置12にルーティングされ、その逆も同様にされる。
【0045】
図1から分かるように、追跡可能デバイス10は、少なくともコントローラ100およびトランシーバ回路101を備える。コントローラ100(その構成はより詳細に後述)は、後述される機能性を提供し、さらにアンテナ102を介してデータパケットを送受信するためにトランシーバ回路101の動作を制御するよう構成される。より詳細に後述されるいくつかの例では、追跡可能デバイス10はさらに、追跡可能デバイス10に関連する条件を検出する1つ以上のセンサ103も含んでもよい。
【0046】
追跡可能デバイス10は、第1および第2の測位モード間を遷移するよう構成される。第1の高精度な測位モードのとき、追跡可能デバイス10は、追跡可能デバイス10とHAIPロケータデバイス11Aとの間の相対的位置の測定を可能にする特定のデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信するよう動作可能である。第2のコスト最適化された測位モードのとき、追跡可能デバイス10は、特定のデータ部分を含まない(または省略した)1つ以上のデータパケットをワイヤレス送信するよう動作可能である。
【0047】
つまり、追跡可能デバイスのコントローラ100は、第1の測位モードでの動作と第2の測位モードでの動作との間の遷移を発生させるよう構成される。第1の測位モードでは、追跡可能デバイス10は、第1の分解能での追跡可能デバイスの位置の測定を可能にする特定のデータ部分をそれぞれが含む1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードでは、追跡可能デバイスは、特定のデータ部分を含まない1つ以上のデータパケットのワイヤレス送信を発生させ、第2の測位モードは、より低い第2の分解能を用いた追跡可能デバイスの位置の測定を可能にする。
【0048】
特定のデータ部分を省略することにより、データパケットはより短くなり、結果として、それらを送信するために必要な時間が短くなる。別の言い方をすれば、第1の高精度測位モードでのデータパケットの送信は、第2のコスト最適化測位モードでのデータパケットの送信よりも多くの電力を利用する。さらに、第2のコスト最適化測位モードでのデータパケットの送信時間は短い(例えば、HAIPでは特定のデータ部分の送信に160μsかかる)。よって、密集したエリア内でパケット同士が衝突する可能性が低下する。さらに、センサデータが送信される例では、特定のデータ部分を省略することで、いくらかの、またはより多くの量のセンサデータを、通常は主に測位に利用されるデータパケットに含められる。よって、同じ量のセンサデータを配信するために送信する必要のあるデータパケットの数を削減できる。これにより、追跡可能デバイス10による消費電力が大きく低下し得る。例えば、センサデータを1秒ごとに1回送る必要があり、デバイス10の追跡を可能にするデータパケットも1秒ごとに1回送る必要がある場合、特定のデータ部分を省略することで、デバイスの追跡を可能にするためのデータパケットにセンサデータを含め、それにより送る必要のあるパケットの量を半減させることが可能かもしれない。これは、デバイスの消費エネルギーに大きな影響を有する。
【0049】
追跡可能デバイス10は、モード遷移制御パケットのワイヤレス受信および/または追跡可能デバイス10にローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して、第1および第2の測位モード間を遷移するよう構成されてもよい。モード遷移制御パケットのワイヤレス受信に応答した測位モード間の遷移は、「サーバ開始型遷移」と呼ばれてもよく、追跡可能デバイス10にローカルで利用可能なデータに基づく遷移は、「デバイス開始型遷移」と呼ばれてもよい。
【0050】
モード遷移制御パケットは、測位サーバ装置12の制御下でロケータデバイス11のうちの1つ以上によってワイヤレス送信されてもよい。追跡可能デバイス10の現在のコンテキストが所定の条件を満たしていると判断するのに応答して、測位サーバ装置12は、モード遷移制御パケットのワイヤレス送信を発生させてもよい。例えば、現在のコンテキストは、追跡可能デバイス10の最も最近測定された位置を含んでもよく、所定の条件は、第1および第2の測位モードそれぞれがより適切である第1のエリアと第2のエリアとの間の仮想の境界(ジオフェンス)を越えた追跡可能デバイス10による遷移の発生であってもよい。
【0051】
もちろん、当然のことながら、測位サーバ装置12が応答としてモード遷移制御パケットの送信を発生させる状況はほかにも多くあり得る。例えば、モード遷移制御パケットの送信は、測位サーバ装置12が過負荷であるかまたはそうなりつつあり、すべての追跡可能デバイス10をHAIP精度で位置測定することができないかまたはじきにできなくなる、との判断に応答して発生してもよい。同じく、モード遷移制御パケットは、エリアが密集している(例えば、著しく多数の追跡可能デバイスを含む)との判断に応答して送信されてもよい。そのような状況では、デバイス10は、パケットの送信頻度がより低いCOIPモードで動作するように制御されてもよく、それによりパケット間の衝突の数が削減される。
【0052】
同じく、モード遷移制御パケットは、追跡可能デバイス10の測定された位置を利用するアプリケーションサーバ装置13と、測位サーバ装置12との間の接続の帯域幅が限られている、または他の何らかの用途のために予約されているとの判断に応答して送信されてもよい。そのような状況では、測位サーバ装置12は、デバイスの位置が測定される頻度がより低いCOIPモードに追跡可能デバイス10を遷移させてもよい。
【0053】
一部の例では、アプリケーションサーバ装置13(またはアプリケーションサーバ装置と通信しているユーザ)は、モード遷移制御パケットの送信を発生させる基準を定義してもよい。同じく、アプリケーションサーバ13は、(例えばユーザが定義した基準またはその他入力基づいて)測位サーバ12に追跡可能デバイス10の優先順位を指示してもよい。優先順位に基づいて、測位サーバ12は、どのデバイスがどのモードを使用すべきか判断し、それに応じておよびモード遷移制御パケットを送ってもよい。例えば、優先順位がより高いデバイスは、可能であればHAIPモードを使用するように制御されてもよい。そのような例では、例えば追跡可能デバイス10の測定された位置に基づいて、アプリケーションサーバ13が優先順位を決定してもよい。さらに、または代わりに、デバイス10の優先順位は、センサデータまたは一日のうちの時間帯などの他のパラメータに基づいて決定されてもよい。
【0054】
一部の状況では、追跡可能デバイス10から受信されるセンサデータがそれらの位置よりも重要な場合もあり、そのような状況では、追跡可能デバイス10は、COIPのモードで動作し、それにより帯域幅を節約する(送信が少なくなることが理由で)ように制御されてもよく、その帯域幅をより多くのセンサデータを送信するために利用することができる。これは、アプリケーションサーバ13によって測位サーバ装置12に指示されてもよく、測位サーバ装置12は、必要に応じてモード遷移制御パケットを送信することによって応答する。一部の例では、追跡可能デバイス10を人が携帯している場合、その人または管理者は、測位が実行されるべき精度をアプリケーションサーバ13を介して指示してもよい。例えば、HAIP精度が必要でなくなれば、ユーザはこれを指示して、デバイス10を消費電力がより少ないCOIPモードに切り替えさせてもよい。次にアプリケーションサーバ13は、必要な指示を測位サーバ装置12に送ってもよく、測位サーバ装置12は、必要に応じてモード遷移制御パケットを送信することによって応答する。
【0055】
モード遷移制御パケットは、一部の例では、モード遷移が実行されるべきであるとだけ指示してもよい。一方、他の例では、モード遷移制御パケットは、遷移が第1の高精度測位モードから第2のコスト最適化測位モードであるか、またはその逆であるかを明示的に指示するように設定されてもよい。
【0056】
一部の例では、追跡可能デバイス10は、コスト最適化された第2の測位モードのとき、デバイスが第1の高精度な測位モードで動作しているときにパケットが送信される頻度よりも低い頻度で(つまり、よりまれに)データパケットをワイヤレス送信するよう動作可能であってもよい。よって、第2のモードへの遷移は、デバイスによって送信されるデータの量を削減することに加えて、送られるパケットの合計数をも削減してもよい。例えば、一部の実装において(例えばスポーツの試合の参加者に関連するデバイスを追跡するとき)、高精度測位モードでは20Hzの頻度(つまり、1秒あたり20パケット)が使用されてもよく、一方、(例えば、追跡可能デバイスの関連する選手が置き換えられたため)コスト最適化モードに切り替えられた後は1Hz(つまり、1秒あたり1パケット)以下の頻度が使用されてもよい。
【0057】
データパケットが追跡可能デバイスによって送信される頻度の変更は、モード遷移制御パケットの受信に応答して、または送信頻度制御パケットと呼ばれてもよい別の専用制御パケットの追跡可能デバイス10でのワイヤレス受信に応答して、追跡可能デバイス10によって実行されてもよい。モード遷移制御パケットの場合と同様に、送信頻度制御パケットは、測位サーバ12の制御下でロケータデバイス11のうちの1つ以上により送信されてもよい。いずれの場合でも、応答として送信頻度の変更が行われる制御パケットは、送信頻度が変更後になるべき頻度を指示してもよい。あるいは、2つの測位モードのときに追跡可能デバイス10がデータパケットを送信する送信頻度は、追跡可能デバイス10に事前に記憶されてもよい。よって、一部の例では、追跡可能デバイス10により送信頻度が変更されるために、測位サーバ12からの具体的な命令は必要ないかもしれない。
【0058】
追跡可能デバイス10は、着信する制御パケットを追跡可能デバイスがリッスンする受信タイムスロット間の間隔を変更することにより、受信頻度制御パケットと呼ばれてもよい別のタイプの制御パケットの受信に応答するように、さらに構成されていてもよい。受信頻度制御パケットは、モード遷移制御パケットの送信および受信より前に送信および受信されてもよい。いくつかの具体例では、追跡可能デバイス10は、着信する制御パケットを追跡可能デバイス10がリッスンする受信タイムスロット間の間隔を短縮することにより受信頻度制御パケットの受信に応答してもよい。これは例えば、測位サーバ12が、コスト最適化モードから高精度モードへの遷移が差し迫っていると判断すると発生してもよく、その結果、受信タイムスロット間の間隔を短縮することで、追跡可能デバイス10は、高精度モードへの遷移を発生させるためのモード遷移制御パケットを他の場合よりも早く受信することができ、それにより、第2モードから第1モードへの適時な遷移が促進される。追跡可能デバイス10が、特定のデータ部分を省略したデータパケットを送信している(つまりコスト最適化モードである)が、それとともに、より高い頻度で制御パケットをリッスンするように動作している(つまり、通常よりも多い単位時間あたりの受信スロット数を割り当てる)場合、第3の、すなわち「近高精度」モードで動作していると言うことができる。受信頻度制御パケットは、一部の例では、受信スロットの頻度を指定してもよい。他の例では、追跡可能デバイス10は、受信スロットの頻度を所定の頻度に変更することにより受信頻度制御パケットに応答するよう構成されてもよい。
【0059】
一部の例では、追跡可能デバイス10はさらに、追跡可能デバイスが第2の送信モードのときに、着信する制御パケットを追跡可能デバイス10がリッスンする受信タイムスロット間の間隔を増大させることにより受信頻度制御パケットの受信に応答するよう構成されてもよい。このような例では、受信頻度制御パケットは、受信スロット間の間隔の短縮を発生させるものとは別のタイプのものであってもよく、または受信頻度制御パケットは、新たな間隔(または受信スロットの頻度)を指定してもよい。測位サーバ12が、第2モードから第1モードへの遷移の可能性が低いと判断すると、受信タイムスロット間の間隔の増大が開始されてもよい。この結果として、受信スロットの頻度の削減はデバイスの消費電力を削減する。これは、デバイス10がパケット送信も着信する制御パケットのリッスンもしていないときにはデバイス10のトランシーバ回路101が休止状態になることができるからである。
【0060】
第2のモードから第1のモードへの遷移が差し迫っているか、またはその可能性が低いかについての判断は、1つ以上の異なる要因に基づいて下されてもよい。一部の例では、判断は、追跡可能デバイスの測定された位置に基づいてもよい。例えば、高精度がより適切な第1のエリアとコスト最適化測位がより適切な第2のエリアとの間の仮想の境界(ジオフェンス)と、測定された位置との間の距離に基づいてもよい。さらに、判断は、デバイスの現在の方向に基づいてもよく、現在の方向は、デバイスの以前に測定された位置および/または追跡可能デバイスから受信される移動センサデータ(加速度計データなど)を使用して判断されてもよい。例えば、追跡可能デバイス10の位置がジオフェンスの所定の範囲内にあり、デバイス10がジオフェンスに向かって進行している場合、測位サーバ12は、第1の測位モードへの遷移が差し迫っていると判断してもよい。同じく、追跡可能デバイスが、ジオフェンスから特定の範囲外にあり、ジオフェンスから離れる方に進行していれば、第1の測位モードへの遷移の可能性は低いと判断されてもよい。一部の例では、デバイスの速度(例えば、連続して測定される位置および/または移動センサデータに基づいて測定される)が考慮に入れられてもよい。
【0061】
上述のとおり、追跡可能デバイス10は、追跡可能デバイス10にローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して、第1および第2の測位モード間を遷移するよう構成されてもよい。例えばこのデータは、デバイスに含まれている1つ以上のセンサ103からのデータを含んでもよい。例えば追跡可能デバイス10は、追跡可能デバイス10に含まれた移動センサ(例えば加速度計)からのデータに基づく判断であって、追跡可能デバイスの移動に関する条件が満たされたとの判断に応答して、第1および第2の測位モード間を遷移するよう構成されてもよい。この条件は、例えば、追跡可能デバイス10の速度または加速度に関係してもよい。
【0062】
一部の例では、追跡可能デバイス10は、さらにまたは代わりに、電池レベルセンサ、温度センサ、光センサ、および振動センサのうちの1つ以上を含んでもよい。デバイス10の現在のコンテキストが、追跡可能デバイス10に含まれている1つ以上のセンサ103の、任意の1つの出力または複数出力の組み合わせに基づいて判断されてもよい。次に、モード間の遷移をするかどうかについての決定が、判断された現在のコンテキストに基づいて下されてもよい。
【0063】
一部の例では、追跡可能デバイス10は、そのパケットと他のデバイスのパケットとの衝突を検出することができてもよく、衝突の頻度に依存して、デバイス10がモード遷移(例えば、衝突の頻度が低いときはHAIPモードへ、衝突の頻度が高いときはCOIPモードへ)を発生させてもよい。他の例では、追跡可能デバイス10は、エリア内の他のデバイスの近接性および/または数を検出する(例えば特定の閾値を超える信号強度の他のデバイスのパケットの検出などにより)よう決定されてもよい。デバイス10は、他のデバイスの測定された近接性/数に応答して測位モード遷移(例えば、エリア内のデバイスの数が閾値を下回っているときはCOIPからHAIP、エリア内のデバイスの数が閾値を上回っているときはHAIPからCOIP)を発生させてもよい。他の例では、測位モードの遷移を、時間(例えば内部クロックに基づく)またはユーザ入力(例えば、ボタンもしくはその他デバイス上のユーザインターフェースを介して受信されるか、または追跡可能デバイス10のリモート制御器として機能する別のデバイスからのメッセージとして受信される)に応答して発生させてもよい。
【0064】
一部の例では、追跡可能デバイス10は、追跡可能デバイス10にローカルで利用可能なデータ(例えば、デバイス10内に位置する1つ以上のセンサから得られたセンサデータ)に基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する、追跡可能デバイスの能力を無効化するよう構成されてもよい。別の言い方をすれば、追跡可能デバイス10は、デバイス開始型遷移の実行を無効化するよう構成されてもよい。この機能性の無効化は、測位サーバ装置12が送信を発生させる「デバイス開始型遷移」制御パケットと呼ばれてもよい制御パケットへの応答であってもよい。測位サーバ装置12は、追跡可能デバイスが測位モード間の遷移を行うのが適切でない場合には、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させることにより遷移を防止してもよい。例えば、測位サーバ装置12は、追跡可能デバイス10をHAIP精度で追跡することが欠かせない(例えば追跡可能デバイスがジオフェンス内にあるため)と判断してもよく、したがって、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させることにより、温度、照明レベル、電池レベル、または同様のものなどのローカルデータに基づいてデバイスが遷移を行うことを防止してもよい。他の例では、デバイス開始型遷移制御パケットの送信は、デバイス10が特定のモードで動作すべきであると、ユーザが(例えばアプリケーションサーバ13を介して)指示することへの応答であってもよい。
【0065】
追跡可能デバイス10は、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づく判断に応答して第1および第2の測位モード間を遷移する追跡可能デバイスの能力を再度有効化するようさらに構成されてもよい。これは例えば、機能性が無効化された後に開始されたタイマの満了に応答して、または別のデバイス開始型遷移制御パケットの受信に応答して発生してもよい。
【0066】
図1から分かるように、かつ上述したように、測位システムは、測位サーバ装置12から測定された追跡可能デバイス10の位置を識別する情報を受信するよう構成されたアプリケーションサーバ装置13をさらに含んでもよい。アプリケーションサーバ装置13は、追跡可能デバイス10の場所の視覚表示を含むユーザインターフェースのユーザへの提供を有効化するためのデータを出力するよう構成されてもよい。ユーザは、特定の追跡可能デバイス10を選択し、それにより、どちらの測位モードでデバイス10が動作すべきか命令するために、このユーザインターフェースとやりとりできてもよい。ユーザインターフェースは、第1の測位モードで動作している追跡可能デバイス10が第1の色で示され、第2の測位モードで動作している追跡可能デバイス10が第2の色で示されるように構成されてもよい。したがって、アプリケーションサーバ装置13は、選択されたデバイスへの制御パケットの送信を発生させるために制御信号を測位サーバ装置12に送ることによって、特定のデバイスの(例えば、デバイスの視覚指示に触れること、クリックすること、または拡大表示することによる)選択に応答してもよい。アプリケーションサーバ装置13の機能性は、コントローラ130の制御下で提供されてもよい。
【0067】
図2は、図1の追跡可能デバイス10によって提供されてもよい様々な動作および機能性を示すフローチャートである。
【0068】
動作S2.1では、デバイス10は、第1および第2の測位モードのうちの現在のもので動作している。よって、特定のデータ部分を含む(第1のモードのとき)または特定のデータ部分を省略する(第2のモードのとき)データパケットのいずれかの定期的な送信を発生させる。
【0069】
動作S2.2では、測位モード間の遷移が実施されるべきかどうか判断される。この特定の判断は、追跡可能デバイスにローカルで利用可能なデータに基づいて実施される。例えば、デバイス10の現在のコンテキストが所定の条件を満たす(または満たした)という判断に基づいてもよい。例えば、ローカルデータは、デバイスの移動に関連する特徴が特定の閾値を上回っていることまたは下回っていることを示す移動センサ(加速度計など)から得られてもよい。例えば、移動センサ103からのデータが、デバイスの速度または加速度が閾値を上回っていると示せば、コントローラ100は、既に高精度測位モードでないならばそのモードへの遷移が行われるべきであると決定してもよい。同じく、速度/加速度が閾値を下回ったと判断されれば、コントローラは、第2のコスト最適化測位モードへの遷移が実施されるべきであると判断してもよい。ローカルデータに基づく現在のコンテキストの他の例として、時間(例えば、高精度測位は、一日のうちデバイス10の移動の可能性がより高い特定の時間帯に使用されてもよく、一方、コスト最適化測位は、一日のうちデバイス10の移動の可能性がより低い時間帯に使用されてもよい)または電池レベル(例えば電池レベルが特定の閾値を下回ると第2のコスト最適化測位モードが使用されるべきである)が含まれてもよい。
【0070】
モード遷移は必要ないと判断されれば、本方法は動作S2.3に進んでもよく、そこで、追跡可能デバイス10の動作を制御するための制御パケットがワイヤレス受信されたかどうかが判断される。動作S2.2およびS2.3は連続して示されているが、もちろん、当然のことながら、追跡可能デバイス10が常に(またはほぼ常に)、いずれかの判断に関する肯定的な結果にすぐに応答できるように、現実にはこれらの判断は同時に実行されてもよい。別の言い方をすれば、コントローラ100は絶えず(または少なくとも定期的に)ローカルデータを監視し(この機能性が無効化されていない限り)かつ制御パケットを受信できる受信タイムスロットを割り当てていてもよい。
【0071】
コントローラ100は、n個のデータパケットの送信が終わるたびに(例えば第2、第3、第4、または第5の送信の後)受信タイムスロットを割り当ててもよい。受信スロットの発生は、受信タイムスロットの直前の(または受信スロットの一定数前の送信スロットである)データパケットに含まれた情報(例えばフラグ)によって測位サーバ12に示されてもよい。受信タイムスロットの発生を示すデータパケットに含まれる情報はさらに、受信スロットの長さおよび/または受信タイムスロットが発生する頻度を示してもよい。
【0072】
動作S2.2およびS2.3の両方で否定的な判断に到達すれば、追跡可能デバイス10は、動作S2.1に戻り、それにより現在の測位モードで動作し続ける。
【0073】
動作S2.2において、モード遷移が発生すべきであると、ローカルで利用可能なデータに基づいて判断されれば、動作S2.4が実行される。動作S2.4では、測位モード間のデバイス開始型モード遷移が実行される。この後、追跡可能デバイス10は(動作S2.5において)遷移した測位モードで動作する。前述のとおり、測位モードの変更は、データパケットの送信頻度の変更を含んでもよい。そのような例では、動作S2.5は、変更された頻度でデータパケットを送信することを含んでもよい。例えば、コスト最適化モードのとき、データパケットの送信間の間隔は1秒を上回ってもよく、一方、高精度モードでは、間隔は例えば10ミリ秒から100ミリ秒の間であってもよい。
【0074】
動作S2.5の後、コントローラ100は、モード遷移が必要かどうかを判断するための(動作S2.2での)ローカルで利用可能なデータの監視に戻ってもよい。上述のとおり、図面に示してはいないが、デバイス10は、ローカルで利用可能なデータを監視するのに加えて、着信する制御パケットを監視してもよい。
【0075】
動作S2.6からS2.12を説明する前に、まず留意が必要なのは、これらの動作およびそれらの記載順序は、ロケータデバイス11を介して測位サーバ装置12から受信される制御パケットに応答して追跡可能デバイス10により提供されてもよい動作および機能の様々な例を示すためのものでしかないということである。現実には、示される様々な判断(例えば、S2.5、S2.6、S2.7、S2.9、およびS2.11のうちの1つ以上)は、実際には実行されなくてもよい。その代わりに、示されたすべての動作S2.5からS2.12が、次の動作に置き換えられてもよい:a)制御パケット(単数または複数)を受信する、b)制御パケットに基づいて命令(単数または複数)を判断する、およびc)命令を実行する。しかしながら、本願明細書に記載された測位システム1によって提供される様々な機能性の理解を促進するために、以下、動作S2.6からS2.12について記載する。
【0076】
動作S2.3に戻る。制御パケットが受信されたと判断されれば、デバイス10は動作S2.6に進み、そこで測位モード遷移が命令されたかどうかが判断される。これは、制御パケットのタイプフィールドに示されてもよい制御パケットのタイプ(例えば、モード遷移制御パケットであるかどうか)に基づいて判断されてもよい。一部の例では、モード遷移制御パケットは、どの測位モードへの遷移が必要かを示すインジケータを含んでもよい。例えば、遷移制御パケットは、第2の測位モードへの遷移が必要であると示してもよい。
【0077】
動作S2.6において実行される実際のプロセスは、制御パケットに含まれる情報によって決まってもよい。例えば、制御パケットが(遷移先とされるべき)ターゲット測位モードを示さなければ、デバイス10は単に、他の測位モードへの遷移が実行される動作S2.4に直接進むことで、着信するモード遷移制御パケットに応答してもよい。一方、モード遷移制御パケットがターゲットモードを示せば、デバイスは、まずこれと、デバイスが現在動作している測位モードとを比較してもよく、現在の測位モードとモード遷移制御パケットにより示されたターゲット測位モードとが異なる場合にのみ、遷移が必要であると判断してもよい。いずれにしても、モード遷移が必要と判断した後、デバイスは動作S2.4に進む。
【0078】
前述のとおり、モード遷移制御パケットは、ターゲット送信頻度をさらに示してもよい。よって、(動作S2.5において)もう一方の測位モードで動作するとき、デバイスはさらに、示された頻度でデータパケットを送信してもよい。なお、他の例では、データパケットの送信の要求される頻度を示す個別の送信頻度制御パケットが、モード遷移制御パケットに加えて送られてもよい。図2に明示的に示されてはいないが、この送信頻度制御パケットが受信されてもよく、それに応じて追跡可能デバイスが、データパケットが送信される頻度を変更してもよい。
【0079】
動作S2.6において、着信する制御パケットは測位モード遷移が必要であると示していないと判断されれば、デバイス10は動作S2.7に進んでもよい。動作S2.7において、デバイス10は、受信タイムスロットの頻度(またはそれらの間の間隔)の変更が必要かどうか判断する。これは、受信頻度制御パケットにより示されてもよい。モード遷移制御パケットの場合と同様に、この制御パケットの性質はタイプフィールドで示されてもよい。この制御パケットはさらに、ターゲット受信タイムスロット頻度を示してもよい。指示は明示的であってもよく、(例えば、連続した受信タイムスロット間の間隔を指定してもよい)または黙示的であってもよい(例えば、特定の受信スロット頻度レベル、高、中、低を指定してもよく、これが追跡可能デバイス10によって使用されて、記憶済みの情報に基づいて受信スロット間隔が特定されてもよい)。
【0080】
上述のとおり、測位サーバ装置12は、追跡可能デバイス10の現在のコンテキスト(例えば、位置、方向、および速度のうちの1つ以上)に基づいてモード遷移が起こりそうであるまたはモード遷移の可能性が低いと判断した場合、受信タイムスロットの頻度の変更を発生させてもよい。モード遷移が差し迫っていると判断されると、モード遷移が必要なとき適時な形で実行可能なように、受信スロット頻度は増大されてもよい(つまり、デバイス10は受信タイムスロットをより多く定期的に提供してもよい)。逆に、モード遷移の可能性が低いときはデバイス10による消費電力を削減するために、受信スロット頻度は削減されてもよい(つまり、デバイスは受信スロットをより少なく定期的に提供してもよい)。非限定的な1つの具体例では、増大した受信スロット頻度は、100msごとに1つの受信タイムスロットに対応してもよく、通常の受信タイムスロットは、1sごとに1つの受信タイムスロットに対応してもよく、削減された頻度は、10sごとに1つの受信タイムスロットに対応してもよい。
【0081】
受信スロットの頻度が変更されるのは、デバイス10がコスト最適化測位モードで動作しているときのほうが一般的かもしれないが、かかる変更は、デバイスがすでに高精度モードのときも利点(適時なモード遷移対省電力化)は相変わらず当てはまるので、同じく発生させられてもよい。
【0082】
動作S2.7において、受信スロット頻度の変更が必要であると判断されれば、デバイス10は動作S2.8の実行に進み、そこで受信スロットの割り当ての頻度が受信間隔制御パケットに従って変更される。動作S2.8の後、デバイス10は動作S2.1に戻ってもよく、そこで現在の測位モードでの動作を続ける。
【0083】
動作S2.7において、受信タイムスロットの頻度の変更が必要ないと判断されると、デバイス10は動作S2.9に進んでもよい。動作S2.9において、デバイス10は、制御パケットが「デバイス開始型モード遷移」を実行するその能力(つまり、ローカルで利用可能なデータのみに基づいて測位モード間を遷移する能力)を無効化するべきであると示すかどうかを判断する。前述のとおり、これは、デバイス開始型遷移制御パケットにより示される。デバイス開始型遷移制御パケットは、デバイス開始型遷移を無効化するべきかもしくは有効化するべきかを明示的に示してもよく、または単に、デバイス開始型遷移を実行するデバイス10の能力の変更が発生すべきであると示してもよい。
【0084】
ローカルで利用可能なデータに基づいてモード遷移を開始するデバイスの能力が無効化されるべきであると判断されれば、デバイス10は、動作S2.10に進み、デバイス開始型遷移が無効化される。この後、デバイス10は動作S2.1に戻り、現在のモードで動作し続ける。ただし、デバイス開始型遷移を無効化した後、デバイス10はその後は動作S.2.2をバイパスし、動作S2.1から動作S2.3に進むことに留意されたい。
【0085】
動作S2.9において、ローカルで利用可能なデータに基づいてモード遷移を開始するデバイスの能力が無効化されるべきでないと判断されれば、デバイス10は動作S2.11に進む。動作S2.11において、デバイス開始型遷移を有効化するべきかどうかが判断される。これは、受信されたデバイス開始型遷移制御パケットに応答して実行されてもよい。動作S2.11で否定的な判断に到達すれば、デバイス10は、動作S2.1に戻り、現在の測位モードで動作し続ける。当然のことながら、動作S2.1の後、デバイスは動作S2.3(デバイス開始型遷移が現在無効化されている場合)にも動作S2.2(デバイス開始型遷移が現在無効化されていない場合)にも進み得る。
【0086】
動作S2.11で肯定的な判断に到達すれば、デバイス10は、(動作S2.12での)デバイス開始型モード遷移を実行する能力の有効化に進む。この後、デバイス10はもとの測位モードで動作し続け、動作S2.3およびS2.2のいずれかまたは両方の実行に戻る。
【0087】
図2に示してはいないが、一部の例では、デバイス10は、受信スロット間隔の変更を開始してもよい(例えば、電池レベルが低いとの判断に応答して間隔を増大させてもよい)。その後、変更された受信スロット間隔は、測位サーバ装置12に対し示されてもよい。
【0088】
図3は、図1の測位サーバ装置12によって実行されてもよい様々な動作および機能性を示すフローチャートである。
【0089】
動作S3.1において、測位サーバ装置12は、追跡可能デバイス10によってロケータデバイス11に送信されるデータパケットの受信から得られたデータを1つ以上のロケータデバイス11から受信する。測位サーバ装置12によって受信される実際のデータは、追跡可能デバイス10が動作している測位モードによって決まる。例えば、追跡可能デバイスが第1の高精度な測位モードで動作している場合、送信されるデータパケットには、追跡可能デバイスに対する相対的位置の測定を可能にする特定のデータ部分が含まれる。よって、測位サーバにより受信されるデータは、例えば、この測定を可能にするIおよびQデータを含んでもよい。受信されるデータはさらに、追跡可能デバイスを識別する追跡可能デバイスID、および一部の例ではさらに、受信されたデータパケットの信号強度の指示を含んでもよい。追跡可能デバイスが、第2のコスト最適化されたモードで動作している場合、測位サーバ装置で受信されるデータは、デバイスID、および一部の例ではさらに、受信されたパケットの信号強度の指示を含んでもよい。測位モードに関係なく、受信されるデータは、一部の例では、追跡可能デバイス10に含まれた1つ以上のセンサ103から得られたセンサデータを含んでもよい。
【0090】
続いて、データの受信後、測位サーバ装置12は受信したデータを使用して追跡可能デバイス10の位置を動作S3.2において測定する。前述のとおり、測定される位置の分解能は、追跡可能デバイス10が現在動作させている測位モードによって決まってもよい。例えば、デバイス10が高精度モードで動作している場合、30センチメートルよりもよい分解能が可能かもしれないが、その一方で、デバイス10がコスト最適化モードで動作している場合、3メートル以下の分解能(例えば部屋レベルの分解能)が達成されてもよい。
【0091】
次に、動作S3.3において測位サーバ装置12は、追跡可能デバイスの現在のコンテキストを判断してもよい。現在のコンテキストは、追跡可能デバイスの測定された位置、ならびに一部の例では、追跡可能デバイス10に設けられたセンサ103から得られたデータに基づいて判断されてもよい。現在のコンテキストとは、例えば、デバイス10の位置、位置および現在の方向(例えば、以前に計算された位置に基づいて測定される)、またはデバイス10の位置および現在の速度(例えば、以前測定された位置および/または追跡可能デバイスに含まれている1つ以上の移動センサから得られたデータに基づいて計算される)であってもよい。
【0092】
次に動作S3.4において、測位サーバ装置12は、モード遷移が必要かどうかを判断する。これは、追跡可能デバイス10の現在のコンテキストに関する特定の条件が満たされたかどうかを判断することにより判断されてもよい。一例では、条件とは、追跡可能デバイス10が、現在の測位モードがより適切な第1のエリアと別の測位モードがより適切な第2のエリアとの間の仮想の境界(ジオフェンス)を越えたことであってもよい。例として、高精度がより適切である可能性があるエリアは、施設(病院または刑務所など)の個人用またはセキュリティ保護されたエリアであるかもしれない。一方、より低精度のコスト最適化測位は、同じ施設の共同エリアには適するかもしれない。よって、現在のコンテキストが、追跡可能デバイスがセキュリティ保護されたエリアから共同エリアに、またはその逆に通過したことを示すと、測位サーバ装置は、測位モードの遷移が発生すべきかどうかを判断してもよい。他の例では、適切な測位モードは、例えば追跡可能デバイスの、高精度測位を提供できるロケータデバイス11Aへの近接性によって決まってもよい。例えば、追跡可能デバイスが高精度ロケータデバイス11Aから所定の範囲(高精度測位が可能な最大距離であってもよい)外にある場合、コスト最適化測位モードがより適切かもしれない。追跡可能デバイス10がロケータデバイス11Aから最大範囲内にあると判断されると、高精度測位モードがより適切であると判断されてもよい。追跡可能デバイス10とロケータデバイスとの間の範囲は、測定された追跡可能デバイス10の場所に基づいて、またはロケータデバイス11Aにて受信されたデータパケットの信号強度に基づいて判断されてもよい。範囲を判断するために信号強度を使用することは、例えば、ロケータデバイスが移動可能で、例えば屋内ドローンまたは他のそのような輸送手段に搭載されるなどの場合に、より適切かもしれない。
【0093】
動作S3.4においてモード遷移が必要と判断されれば、測位サーバ装置は動作S3.5に進み、ロケータデバイス11の1つ以上を介したモード遷移制御パケットの追跡可能デバイス10への送信を発生させる。制御パケットは、追跡可能デバイスのIDを使用して追跡可能デバイス10宛てにされてもよい。制御パケットのセキュリティが、追跡可能デバイス10および測位サーバ装置12のみに知られた秘密鍵を用いて制御パケットを暗号化することにより強化されてもよい。当然のことながら、他のタイプの制御パケットもこの仕方で暗号化されてもよい。
【0094】
前述のとおり、モード遷移制御パケットは、モード遷移が実施された後にデータパケットが送信されるべき送信頻度をさらに示してもよい。一方、他の例では、要求される頻度は、別に送信される送信頻度制御パケットにおいて示されてもよく、その送信は動作S3.6で発生してもよい。
【0095】
動作S3.5またはS3.6の後、測位サーバ装置12は動作S3.1に戻る。
【0096】
動作S3.4において、モード遷移は必要ないと判断されれば、測位サーバ装置は動作S3.7に進んでもよい。動作S3.7において、測位サーバ装置12は、モード遷移が差し迫っているかどうかを判断する。モード遷移が差し迫っていると判断されれば、測位サーバ装置12は動作S3.8に進む。動作S3.8において、追跡可能デバイス10宛ての受信頻度制御パケットの送信が発生する。動作S3.8の受信頻度制御パケットは、追跡可能デバイスに受信タイムスロットを割り当てる頻度を増大させるよう設定されてもよい。その結果、追跡可能デバイス10は、モード遷移制御パケットが送られたときそれをすぐに受信できる可能性が高い。受信頻度制御パケットは、受信スロットの頻度(または間隔)を明示的に指定してもよく、または代わりに、頻度レベル(例えば高、通常、または低頻度)を指定してもよい。受信頻度制御パケットの送信を発生させた後、測位サーバ装置12は動作S3.1に戻る。
【0097】
動作S3.7において、モード遷移は差し迫っていないと判断されれば、測位サーバ装置12は、動作S3.9およびS3.10のいずれか1つに進んでもよい。
【0098】
動作S3.9において、測位サーバ装置12は、受信タイムスロットの頻度を削減するため、つまり、受信タイムスロット間の間隔を増大させるために、受信頻度制御パケットの送信を発生させてもよい。これは、追跡可能デバイス10が電力を節約できるようにしてもよく、モード遷移の可能性が特に低いと測位サーバ装置12が判断したときに送信されてもよい。
【0099】
モード遷移が差し迫っているかまたは可能性が低いか否かについての判断は、追跡可能デバイス10の現在のコンテキストに基づいて判断されてもよい。例えば、追跡可能デバイスがジオフェンスの特定の範囲内にあり、ジオフェンスに向かって進行していれば、測位サーバ装置12は、モード遷移が差し迫っていると判断してもよい。逆に、追跡可能デバイスが、ジオフェンスから所定の範囲外にあり、ジオフェンスから離れる方に進行していれば、測位サーバ装置は、モード遷移の可能性は低いと判断してもよい。
【0100】
動作S3.10において、測位サーバ装置は、デバイス開始型遷移が無効化されるべきか、またはそれが既に無効化されている場合は再度有効化されるべきかを判断する。この場合もやはり、これは、現在のコンテキストに基づいて判断されてもよい。例えば、一部の特定の地理的エリアでは、追跡可能デバイス10がコスト最適化測位モードで動作することは許容できないかもしれない(高精度の測位が要求されることが理由で)。よって、これらのエリアにある場合は、測位サーバ装置12は、デバイス開始型遷移制御パケットの送信を発生させて、それにより、コスト最適化モードへの遷移を開始するデバイス10の能力を無効化してもよい。
【0101】
現在のコンテキストに基づいて、デバイス開始型遷移機能性が無効化(または再度有効化)されるべきであると判断されれば、測位サーバ装置12は動作S3.11に進み、ロケータデバイス11の1つ以上を介したデバイス開始型遷移制御パケットの追跡可能デバイス10への送信を発生させる。デバイス開始型遷移制御パケットは、デバイス開始型遷移機能性が有効化されるか無効化されるかを示してもよい。動作S3.11の後、測位サーバ装置は動作S3.1に戻る。
【0102】
動作S3.10において、デバイス開始型遷移を無効化または再度有効化する必要はないと判断されれば、測位サーバ装置は動作S3.1に戻る。
【0103】
図1〜3に関する上記の説明から分かるとおり、本願明細書に記載された測位システム1は、消費電力の削減ならびに衝突および帯域幅使用の削減など、多くの技術的な利点を提供すると同時に、適度な精度の位置情報が確実に取得されるようにする。
【0104】
例示の実装
上述のシステムは、異なる多数のシナリオに適用され得る。例えば、前述のとおり、システム1は、スポーツの競技場(例えばアイスホッケーの競技場)で選手の動きを監視するために使用されてもよい。そのようなシナリオでは、追跡可能デバイスは、それぞれの選手に関連してもよい。選手が試合に関与している(例えばコートまたはリンクにいる)ときは高精度測位モードのほうが適切かもしれない(詳細な行動分析などのため)。一方、選手がベンチにいるときはコスト最適化測位で十分かもしれない。このシナリオでは、測位モード間の遷移は、デバイスの位置(つまり、デバイスがコート/リンクにあるかまたはベンチにあるか)に基づいて行われてもよく、したがって、測位サーバによって開始されてもよいし、または、デバイスの移動に基づいて決定されてもよく(ベンチの選手は移動がより少ないため)、したがって例えば、デバイスに含まれている加速度計からのデータに基づくデバイス開始型であってもよい。
【0105】
同じく前述したとおり、システム1は、例えばショッピングモール、工場、病院、刑務所、倉庫などの施設内の資産または人を追跡するために使用されてもよい。そのような状況では、測位モードは、例えば、追跡可能デバイス内のセンサ(例えば加速度計)からのデータ(例えば、特定の移動特性が低いとコスト最適化測位で十分であるが、移動特性が閾値を上回ると高精度測位がより適切)または場所(特定のエリアではコスト最適化測位で十分かもしれず、他のエリアでは高精度測位のほうが適するかもしれない)に基づいて選択されてもよい。
【0106】
上述した装置およびデバイス10、11A、11B、12、13のコンポーネントおよび特徴のいくらかのさらなる詳細について、およびその代替案について以下記載する。
【0107】
各装置またはデバイス10、11A、11B、12のコントローラ100、114、116、120、130は、メモリ1002、1142、1162、1202、1302に通信結合された処理回路1001、1141、1161、1201、1301を備える。メモリ1002、1142、1162、1202、1302には、コンピュータ可読命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aが記憶され、コンピュータ可読命令は、処理回路1001、1141、1161、1201、1301によって実行されると、図1〜3を参照して記載した動作の様々なものを実行させることを処理回路1001、1141、1161、1201、1301に行わせる。コントローラ100、114、116、120、130は、場合によっては、一般名で「装置」と呼ばれることもある。
【0108】
図1〜3を参照して記載した装置10、11A、11B、12、1301のいずれかの処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、任意の適切な構成のものであってもよく、任意の適切なタイプの、または複数タイプの適切な組み合わせの1つ以上のプロセッサ1001A、1141A、1161A、1201A、1301Aを含んでもよい。例えば、処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、コンピュータプログラム命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aを解釈し、データを処理するプログラム可能プロセッサであってもよい。処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、複数のプログラム可能プロセッサを含んでもよい。あるいは、処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、例えば、組み込みファームウェアを備えたプログラム可能ハードウェアであってもよい。処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、処理手段と称されてもよい。処理回路1001、1141、1161、1201、1301は代わりにまたはさらに、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでもよい。場合によっては、処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、コンピューティング装置と呼ばれてもよい。
【0109】
処理回路1001、1141、1161、1201、1301は、それぞれのメモリ(または、1つ以上の記憶デバイス)1002、1142、1162、1202、1302に結合され、データをメモリ1002、1142、1162、1202、1302に対し読み取り/書き込みするよう動作可能である。メモリ1002、1142、1162、1202、1302は、コンピュータ可読命令(またはコード)1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aが記憶された単一のメモリユニットまたは複数のメモリユニットを備えてもよい。例えば、メモリ1002、1142、1162、1202、1302は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの両方を備えてもよい。例えば、コンピュータ可読命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aは、不揮発性メモリに記憶されてもよく、データまたはデータおよび命令を一時的に記憶するために揮発性メモリを使用して処理回路1001、1141、1161、1201、1301によって実行されてもよい。揮発性メモリの例としては、RAM、DRAM、およびSDRAMなどが挙げられる。不揮発性メモリの例としては、ROM、PROM、EEPROM、フラッシュメモリ、光学式記憶、磁気記憶、などが挙げられる。メモリは一般的に、非一時的なコンピュータ可読メモリ媒体と呼ばれることもある。
【0110】
「メモリ」という用語は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリの両方を備えるメモリを対象とするのに加え、1つ以上の揮発性メモリのみ、1つ以上の不揮発性メモリのみ、または1つ以上の揮発性メモリおよび1つ以上の不揮発性メモリも対象としてもよい。
【0111】
コンピュータ可読命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aは、装置10、11A、11B、12、13に事前にプログラムされてもよい。あるいは、コンピュータ可読命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aは、装置10、11A、11B、12、13に電磁キャリア信号を介して到達してもよく、またはコンピュータプログラム製品、メモリデバイス、またはCD−ROMもしくはDVDなどの記録媒体など、物理エンティティ14(図1参照)からコピーされてもよい。コンピュータ可読命令1002A、1142A、1162A、1202A、1302Aは、デバイス/装置10、11A、11B、12、13が上述した機能性を実行できるようにする論理およびルーチンを提供してもよい。メモリに記憶されているコンピュータ可読命令の組み合わせは(上述したタイプのいずれのものも)、コンピュータプログラム製品と呼ばれてもよい。
【0112】
該当する場合は、装置10、11A、11B、12、13のBLE機能は、単一の集積回路によって提供されてもよい。あるいは、集積回路のセット(つまり、チップセット)によって提供されてもよい。あるいはBLE機能は、ハードワイヤードの特定用途向け集積回路(ASIC)であってもよい。
【0113】
当然のことながら、本願明細書に記載された装置10、11A、11B、12、13は、図示されていないこともある様々なハードウェアコンポーネントを含んでもよい。例えば、追跡可能デバイス10は、一部の実装において、携帯電話またはタブレットコンピュータなどのポータブルコンピューティングデバイスであってもよく、したがって、特定のタイプのデバイスに一般的に含まれているコンポーネントを含んでもよい。同じく、装置10、11A、11B、12、13は、本発明の実施形態と直接相互作用しないかもしれないことから本明細書に記載されていないさらなるオプションとしてのソフトウェアコンポーネントを備えてもよい。
【0114】
本発明の実施形態は、ソフトウェア、ハードウェア、アプリケーション論理、またはソフトウェア、ハードウェア、およびアプリケーション論理の組み合わせにおいて実装されてもよい。ソフトウェア、アプリケーション論理、および/またはハードウェアは、メモリまたは任意のコンピュータ媒体上に存在してもよい。例示の実施形態では、アプリケーション論理、ソフトウェア、または命令セットは、様々な従来のコンピュータ可読媒体のうちの任意のものにおいて維持される。本文書の文脈では、「メモリ」または「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータなどの命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれに関連して使用される命令を含むこと、記憶すること、伝達すること、伝播させること、または搬送することができる任意の媒体または手段であってもよい。
【0115】
関連する場合、「コンピュータ可読記憶媒体」、「コンピュータプログラム製品」、「有形に具現化されたコンピュータプログラム」など、または「プロセッサ」もしくは「処理回路」などへの言及は、単一/マルチプロセッサアーキテクチャおよびシーケンサ/並列アーキテクチャなどの種々のアーキテクチャを有するコンピュータのみでなく、フィールドプログラム可能ゲートアレイFPGA(field−programmable gate array)、特定用途向け集積回路ASIC、信号処理デバイス、およびその他のデバイスなどの特殊回路も含むと理解されるべきである。コンピュータプログラム、命令、コードなどへの言及は、プログラム可能プロセッサのソフトウェア、プロセッサのための命令としてのハードウェアデバイスのプログラム可能コンテンツなどのファームウェア、または固定機能デバイス、ゲートアレイ、プログラム可能論理デバイスなどの構成済み設定もしくは構成設定を表現すると理解されるべきである。
【0116】
本願で使用される「回路」という用語は、次のすべてを指す:(a)ハードウェアのみの回路実装(アナログおよび/またはデジタル回路のみの実装など)、ならびに(b)回路とソフトウェア(および/またはファームウェア)との組み合わせ、例えば(該当する場合)(i)プロセッサ(単数または複数)の組み合わせまたは(ii)プロセッサ(単数または複数)/ソフトウェア(携帯電話またはサーバなどの装置にさまざまな機能を実行させるよう協働するデジタル信号プロセッサ(単数または複数)、ソフトウェア、およびメモリ(単数または複数)を含む)の一部、ならびに(c)ソフトウェアまたはファームウェアが物理的に存在しなくても動作のためにソフトウェアまたはファームウェアを必要とするマイクロプロセッサ(単数または複数)またはマイクロプロセッサ(単数または複数)の一部などの回路。
【0117】
「回路」のこの定義は、任意の特許請求の範囲を含め、本願におけるこの用語のすべての使用に当てはまる。さらなる例として、本願において使用される「回路」という用語は、プロセッサ(または複数のプロセッサ)のみ、またはプロセッサの一部およびその(またはそれらの)付随するソフトウェアおよび/またはファームウェアの実装も対象とすると考えられる。「回路」という用語は、例えば特定の請求項の構成要素に当てはまる場合、携帯電話のベースバンド集積回路もしくはアプリケーションプロセッサ集積回路、またはサーバ、セルラネットワークデバイス、もしくはその他ネットワークデバイス内の同様の集積回路も対象とすると考えられる。
【0118】
必要に応じて、本願明細書で説明された種々の機能は、異なる順序で実行されること、および/または互いに同時に実行されることが可能である。さらに、必要に応じて、上記の機能のうちの1つ以上を、任意選択とすることも、組み合わせることもできる。
【0119】
本発明の様々な側面が独立クレームに記載されているが、本発明の他の側面は、特許請求の範囲に明示的に記載された組み合わせのみではなく、その他、記載された実施形態および/または従属クレームからの特徴と、独立クレームの特徴との組み合わせを含む。
【0120】
さらに、この点において、上記の事項は様々な例について記載しているが、これらの記載は、限定的な意味に捉えられてはならないということを指摘しておく。それどころか、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく加えることができる、変化および変更がいくつかある。例えば、上記の例はHAIP技術を参照して記載したが、当然のことながら、本願明細書に記載された原理は、より高精度な第1の測位モードと、精度は劣るが計算の要求もより少ない第2の測位モードとの両方を利用できる任意の測位システムに等価に適用可能である。
図1
図2
図3