特許第6884848号(P6884848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6884848セルロース製品の製造方法、セルロース製品の成形装置およびセルロース製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884848
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】セルロース製品の製造方法、セルロース製品の成形装置およびセルロース製品
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/16 20060101AFI20210531BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20210531BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20210531BHJP
   B27N 5/02 20060101ALI20210531BHJP
   B27N 5/00 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 49/02 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B27N3/16
   D04H1/732
   B27N3/04 B
   B27N5/02
   B27N5/00 E
   B29C49/02
   B29C51/08
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-500209(P2019-500209)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公表番号】特表2019-513597(P2019-513597A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】SE2017050255
(87)【国際公開番号】WO2017160218
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】1630058-4
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518330431
【氏名又は名称】パルパック アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】Pulpac AB
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーヴェ ラルソン
(72)【発明者】
【氏名】リヌス ラルソン
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−346441(JP,A)
【文献】 特開2003−311721(JP,A)
【文献】 特表2002−509781(JP,A)
【文献】 特開2015−203163(JP,A)
【文献】 特表2012−530007(JP,A)
【文献】 特開2008−296395(JP,A)
【文献】 特開2012−139847(JP,A)
【文献】 特開2001−246606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
セルロースブランク(1a)を乾式成形ユニット(11)内で乾式成形する工程;
前記セルロースブランク(1a)を成形型(3)内に配置する工程;
前記セルロースブランク(1a)を100℃〜200℃の範囲の成形温度に加熱する工程;および
前記セルロースブランク(1a)を前記成形型(3)において、少なくとも1MPaの成形圧力でプレスする工程
を含む、セルロース製品の製造方法であって、
前記セルロースブランク(1a)を前記乾式成形ユニット(11)内で乾式成形する際に、セルロース繊維(12)を、搬送媒体としての空気によって搬送し、かつ前記セルロースブランク(1a)に成形し、
前記セルロースブランク(1a)を、前記乾式成形ユニット(11)内で連続セルロースウェブ(16)として成形し、
前記連続セルロースウェブ(16)を、供給ユニット(17)によって前記成形型(3)に間欠的に供給し、
セルロースブランク(1a)を、実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に成形することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記供給ユニット(17)が、リフトローラーを備えたピボットローラーアーム(26)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形圧力が、1MPa〜100MPaの範囲である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
セルロースブランク(1a)をプレスする前に、前記セルロースブランク(1a)の加熱を少なくとも部分的に行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
セルロースブランク(1a)をプレスする前に、成形型(3)を加熱する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法であって、乾式成形ユニット(11)が、分離ユニット(13)、成形ワイヤ(14)および圧縮ユニット(15)を含み、前記方法がさらに以下の工程:
セルロースを、前記分離ユニット(13)内で離解セルロース繊維(12)に分離する工程;
前記セルロース繊維(12)を前記成形ワイヤ(14)上に配置する工程;および
前記セルロース繊維(12)を前記圧縮ユニット(15)内で圧縮してセルロースブランク(1a)を成形する工程
を含む、方法。
【請求項7】
以下の工程:
サイジング剤をセルロース繊維(12)に適用して、セルロースブランク(1a)の疎水性および/または機械的強度を高める工程
をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
セルロースブランク(1a)を100℃〜200℃の範囲の成形温度に加熱するための加熱ユニット(19)と、
前記セルロースブランク(1a)を、成形型(3)において、少なくとも1MPaの成形圧力でプレスすることによってセルロース製品を成形するための前記成形型(3)と
を含む、前記セルロースブランク(1a)から前記セルロース製品を製造するためのセルロース製品の成形装置(18)であって、
前記セルロース製品の成形装置が、前記セルロースブランク(1a)を成形するための乾式成形ユニット(11)をさらに含み、ここでセルロース繊維(12)が、搬送媒体としての空気によって搬送され、かつ前記セルロースブランク(1a)を成形し、
前記乾式成形ユニット(11)が、前記セルロースブランク(1a)を連続セルロースウェブ(16)として成形するように適合されており、
前記セルロース製品の成形装置(18)が、連続セルロースウェブ(16)を成形型(3)に間欠的に供給するように適合されている供給ユニット(17)を含み、
成形型(3)が、セルロースブランク(1a)を、実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に成形するように適合されていることを特徴とする、セルロース製品の成形装置(18)。
【請求項9】
前記供給ユニット(17)が、リフトローラーを備えたピボットローラーアーム(26)を有する、請求項記載のセルロース製品の成形装置(18)。
【請求項10】
乾式成形ユニット(11)が、
セルロースを離解セルロース繊維(12)に分離するための分離ユニット(13);
前記セルロース繊維(12)のための成形ワイヤ(14);および
前記セルロース繊維(12)を圧縮してセルロースブランク(1a)を成形するための圧縮ユニット(15)
を含むことを特徴とする、請求項または記載のセルロース製品の成形装置(18)。
【請求項11】
成形型(3)が加熱ユニット(19)を含むことを特徴とする、請求項から10までのいずれか1項記載のセルロース製品の成形装置(18)。
【請求項12】
サイジング剤または他の物質をセルロース繊維(12)に適用するように適合されている適用ユニット(20)を含むことを特徴とする、請求項から11までのいずれか1項記載のセルロース製品の成形装置(18)。
【請求項13】
前記セルロース製品が、少なくとも90質量パーセントのセルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法
【請求項14】
前記セルロース製品が、少なくとも90質量パーセントのセルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項8から12までのいずれか1項記載のセルロース製品の成形装置(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本開示は、セルロース繊維からセルロース製品を製造する方法に関する。本開示はさらに、セルロース製品の成形装置およびセルロース製品に関する。
【0002】
発明の背景
多くの状況では、持続可能な材料で作られた物体を平坦な形状または実質的に非平坦な形状で提供することが望まれている。平坦な形状は、概して、例えばシート材料またはブランクの形状などの2次元(2D)形状を指し、実質的に非平坦な形状は、任意の好適な3次元(3D)物体の形状を指すことができる。このような状況の1つは、液体、乾燥材料および異なる種類の物品のパッケージングに関し、ここでパッケージングは、3次元形状で作られてよく、または2次元のシート材料から3次元形状に形成されてもよい。
【0003】
例えば、機械的高精度品、電子機器、および他の家庭用品やハードウェア用品などの高感度品のパッケージの場合、輸送中、保管中、またはその他の取り扱い中の例えば、機械的衝撃、振動または圧縮による機密品の損傷を避けるための保護パッケージが必要とされている。このようなパッケージには、通常、収容された商品に適合した形の保護インサートが必要であるため、商品はパッケージ内にしっかりと保持されている。このようなインサートは、通例、軽量石油由来の材料であり、かつ持続可能な材料とは見なされていない、発泡ポリスチレン(EPS)で作られている。
【0004】
インサートをパッケージングするのに、通例、使用されている低価格の材料は、成形パルプである。成形パルプには、持続可能なパッケージング材料として見なされるという利点がある。なぜなら、成形パルプは生体材料から製造されており、かつ使用後にリサイクルできるからである。結果として、成形パルプは、一次および二次のパッケージング用途(物品に密着したパッケージングおよびこのようなパッケージの集まり)の双方で人気が急速に高まっている。成形パルプは、一般に、吸引時に吸引モールドをパルプ懸濁液に浸すことによって成形され、それによってパルプの塊は繊維の堆積により所望の物品の形状で成形される。次に、吸引モールドが、懸濁液から引き抜かれ、残りの液体が排出されている間、通例、吸引が続けられ、堆積した繊維を圧縮する。
【0005】
すべての湿式成形技術に共通する欠点は、成形品の乾燥が必要とされることであり、これは、時間およびエネルギーを消費する工程である。別の欠点は、しばしば水素結合として説明される強力な繊維間結合が材料中の繊維間に形成されることであり、この結合は材料の可撓性を制限する。
【0006】
また、最新のリーン生産ラインの多くには、インラインおよびオンデマンドのパッケージまたはコンポーネントの製造が必要とされるが、この場合、湿式成形プロセスは好ましくない。
【0007】
近年、3次元物体の乾式成形を可能にするために、新しい繊維系材料が開発された。1つの手法は、国際公開第2014/142714号(WO2014/142714 A1)によって開示されており、ここで、乾式複合材ウェブは、40〜95質量パーセントのCTMP繊維、5〜50質量パーセントの熱可塑性材料、および0〜10質量パーセントの添加剤を含む3次元形状の物体を熱成形するための中間製品であり、その際、乾式複合材ウェブは、熱可塑性材料、ポリマーを含有する分散液、エマルションまたは溶液で含浸され、乾燥されて、50〜250kg/mの密度が得られるか、またはカレンダー加工で圧縮される場合、400〜1000kg/mの密度が得られる。国際公開第2014/142714号(WO2014/142714 A1)によれば、ポリマーの結合は、より高い温度が熱成形プロセスで適用されることによって活性化され、熱成形された物体の最終強度に寄与する。
【0008】
国際公開第2014/142714号(WO2014/142714 A1)に記載のポリマーは、最終強度に寄与し、かつ乾式ウェブの成形を可能にするが、このような熱可塑性成分は、複合材がリサイクルされないので、セルロースの持続可能な機能を失わせることとなる。この欠点は、再生可能でかつ堆肥化可能なバイオプラスチック、例えば、ポリラクチド(PLA)が国際公開第2014/142714号(WO2014/142714 A1)によって提示されたように使用される場合でも該当する。なぜなら、材料をリサイクルするための物流が利用できないからである。
【0009】
最近の調査研究や政治的決定、例えば、地球温暖化に関するパリ条約(2015年)には、消費される物およびパッケージのカーボンフットプリントが、いわゆるライフサイクル分析(LCA)において、材料のリサイクルおよび再利用の可能性の影響を強く受けると規定されている。ポリエチレンテレフタレート(PET)のような再生不可能な複数回リサイクルされた材料で基準を満たすには、セルロースやPLAなどの再生可能な材料でさえリサイクルされなければならない。
【0010】
材料のリサイクルは、世界のほとんどの地域で徐々に確立され続けている。欧州は、世界で約30%のリサイクル率を誇るが、米国は10%に過ぎず、多くの開発途上国は、まだリサイクルを始めていない。すべてのリサイクル活動は、共通して、紙、厚紙、ガラス、アルミ、スチールおよびPETなどの最も頻繁に使用されている材料に焦点を当てている。これらのリサイクル可能な画分は、廃棄物の大部分を占めており、バイオポリマーのような他の画分が、近い将来に公に利用可能なリサイクル物流として確立される可能性は低い。
【0011】
したがって、プラスチックに近い機械的特性を有する再生可能でかつリサイクル可能な材料では、3D成形パッケージ、ボックス、ハンガー、ボトル、カップ、プレート、ボウル、インサートおよびカバーに対する世界的な需要は非常に高い。
【0012】
刊行物、ISBN 978−91−7501−518−7(Helena Halonen、2012年10月)では、水のみで処理された市販の化学木材パルプの圧縮成形を用いる可能な手法の1つが研究されている。その目的は、加工中の構造変化、および最終的な生体複合材の機械的特性とナノスケール構造との関係の複雑さについて研究することであった。
【0013】
圧縮成形の間、高温(150℃〜170℃)と高圧(45MPa)とを併用することにより、おそらくセルロース−セルロース融合結合を含むフィブリル凝集、すなわち繊維−繊維結合領域におけるフィブリル凝集が顕著に増加する。このフィブリル凝集によって、例えば、PET強度(75MPa)およびPET弾性率(PET 3GPa)と比較して改善された強度(289MPa)、弾性率(12.5GPa)および靭性(6%)などの顕著な機械的特性を有する生体複合材が得られる。
【0014】
国際公開第2014142714号(WO2014142714A1)では、リサイクル不可能な熱可塑性成分が提案されており、ISBN 978−91−7501−518−7では、リサイクル可能なセルロース繊維を成形して良好な機械的特性を得るための科学的結果が示されているが、厚紙としてリサイクル可能なプラスチックの代替品としてのセルロースのパッケージおよびグッズの商業的な生産を、適度なサイクル時間で可能にする実用的または工業的方法は、これまでに発明されていない。
【0015】
従来技術の上記および他の欠点に鑑みて、本発明の課題は、改善された機械的特性を有するセルロース製品のコスト効率の良い合理的な製造を提供することである。
【0016】
発明の概要
本発明の課題は、上記の問題が回避される、セルロース製品の製造方法、セルロース成形装置およびセルロース製品を提供することである。この課題は、独立請求項の特徴によって少なくとも部分的に解決される。従属請求項には、セルロース製品の製造方法、セルロース成形装置およびセルロース製品のさらなる発展形態が含まれている。
【0017】
多くの状況では、持続可能な材料で作られた物体を、平坦または実質的に非平坦な形状で提供することが望まれている。平坦な形状とは、概して、2次元形状、例えばシート材またはブランクの形状を指し、実質的に非平坦な形状とは、適切な3次元物体の形状を指す。このような状況の1つは、液状物、乾燥物、および各種の物品のパッケージングに関係しており、ここでパッケージングは、3次元形状で作られるか、または2次元のシート材料から3次元形状に形成され得る。
【0018】
本開示は、セルロース製品の製造方法であって、以下の工程:
セルロースブランクを、乾式成形ユニット内で乾式成形する工程;セルロースブランクを、成形型内に配置する工程;セルロースブランクを、100℃〜200℃の範囲の成形温度に加熱する工程;およびセルロースブランクを、成形型において、少なくとも1MPaの成形圧力でプレスする工程を含む、製造方法に関する。
【0019】
セルロースブランクの乾式成形とは、セルロース繊維をエアレイドしてセルロースブランクを形成するプロセスを意味する。エアレイドプロセスでセルロースブランクを成形する場合、セルロース繊維は、搬送媒体としての空気によって運ばれてブランク構造を形成する。これは、紙の構造を形成する際にセルロース繊維の搬送媒体として水を使用する、通常の製紙プロセスとは異なる。エアレイドプロセスでは、セルロースブランクの特性を変えるために、水または他の物質が、セルロース繊維に添加され得るが、成形プロセスでは、空気がそのまま搬送媒体として使用される。
【0020】
これらの特徴の利点は、セルロース製品が、乾式成形プロセスで製造され、その際、セルロースブランクが、乾式成形ユニット中のセルロース繊維から乾式成形されることである。セルロースブランクを加熱し、かつプレスすることにより、良好な材料特性を有するセルロース製品が得られる。セルロース製品は、例えば、ボトル、容器、または容器の一部であってもよく、この方法に従って製造されたセルロース製品は、リサイクルがより困難なプラスチック製品に取って代わり得る。この方法に従って製造された他のセルロース製品は、例えば、パッケージ、パッケージ用のインサート、ハンガー、ボックス、ボウル、プレート、カップ、トレイ、またはカバーであり得る。100℃〜200℃の範囲の成形温度で、少なくとも1MPaの成形圧力でセルロース繊維をプレスする場合、セルロース繊維を互いに結合させると、得られたセルロース製品は良好な機械的特性を有することになる。特定の成形圧力でプレスする場合、成形温度が高くなるほどセルロース繊維間の結合が強くなることが試験で示されている。成形温度が100℃を上回り、かつ成形圧力が少なくとも1MPaである場合、セルロース繊維は、互いに強く結合することになる。成形温度が高くなるほど、フィブリル凝集、耐水性、ヤング率および最終セルロース製品の機械的特性は向上する。セルロース製品中のセルロース繊維間のフィブリル凝集には高い圧力が重要である。200℃より高い温度では、セルロース繊維が熱劣化するので、200℃を上回る温度は回避されるべきである。
【0021】
本開示の一態様によれば、セルロースブランクは、平坦な形状または実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に成形される。このようにして、3次元製品の成形に使用され得る実質的に2次元のブランクを含む、多くの異なるタイプの製品が製造され得る。
【0022】
本発明の別の態様によれば、成形圧力は1MPa〜100MPaの範囲にある。この圧力範囲内で、所望の特性を有するセルロース製品を成形することができ、成形される製品の種類の特定のニーズに合わせて圧力レベルを調整することができる。
【0023】
本開示のさらなる態様によれば、セルロースブランクの加熱は、少なくとも部分的に、セルロースブランクをプレスする前に行われる。任意選択で、セルロースブランクは、成形型にプレスする前に予熱されてもよい。代替的に、セルロースブランクは、プレスする前にある程度まで予熱され、さらにプレスされる際に加熱されてもよい。
【0024】
本開示の別の態様によれば、成形型は、セルロースブランクをプレスする前に加熱される。成形型を加熱することで、成形型に入れる際に、セルロースブランクに熱が伝わることになる。このようにして、セルロースブランクの成形温度は、成形型からの伝熱により効率的に得ることができる。
【0025】
本開示の一態様によれば、乾式成形ユニットは、分離ユニット、成形ワイヤおよび圧縮ユニットを含み、ここで、この方法は、さらに以下の工程:セルロースを、分離ユニット内で離解セルロース繊維に分離する工程;セルロース繊維を成形ワイヤ上に配置する工程;およびセルロース繊維を、圧縮ユニット内で圧縮してセルロースブランクを形成する工程を含む。このようにして、セルロースブランクの効率的な成形が行われる。乾式成形ユニットは、セルロース製品が製造される連続製造プロセスの一部であるプロセスユニットとして配置され得る。乾式成形ユニットは、さらにセルロース成形装置から離れて配置され得るが、セルロースブランクは、好ましくは、ロールでセルロース成形装置に供給され得る。
【0026】
本開示の別の態様によれば、本方法は、さらに以下の工程:サイジング剤をセルロース繊維に適用して、セルロースブランクの疎水性および/または機械的強度を高める工程をさらに含む。セルロースブランクから製造されたセルロース製品の疎水性および/または機械的強度を高めるために、様々な種類のサイズ剤が使用されてもよく、これは製造される製品の種類に依存し得る。サイズ剤の例としては、フルオロケミカル、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジン(酸性サイジング)、ワックス、リグニンおよび水ガラス(ケイ酸ナトリウム)が挙げられる。
【0027】
本開示のさらなる態様によれば、セルロースブランクは、乾式成形ユニット内で連続セルロースウェブとして成形される。連続セルロースウェブは、連続製造プロセスで使用されてよく、その際、連続セルロースウェブは、乾式成形ユニット内でセルロース繊維から乾式成形され、次いで成形型に搬送される。
【0028】
本開示の別の態様によれば、連続セルロースウェブは、供給ユニットによって成形型に間欠的に供給される。連続セルロースウェブの成形型への間欠的な供給を通して、連続セルロースウェブの成形および成形型におけるセルロース製品の成形は、セルロース繊維からのセルロース製品の効率的な製造のための同じ製造ユニットの一部であり得る。
【0029】
本開示はさらに、セルロース製品を製造するためのセルロース製品の成形装置であって、セルロースブランクを形成するための乾式成形ユニットと、セルロース製品を成形するための成形型とを含み、かつセルロース製品の製造方法を実施するように配置されている、前記装置に関する。これらの特徴の利点は、セルロース製品が乾式成形プロセスにおいてセルロース製品の成形装置で製造され、その際、セルロースブランクが乾式成形ユニット内でセルロース繊維から乾式成形されることである。セルロースブランクを加熱してプレスすることにより、良好な材料特性を有するセルロース製品が得られる。
【0030】
本開示の一態様によれば、セルロースブランクは、成形型中で、平坦な形状または実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に成形される。3次元製品の成形に使用され得る2次元のブランクを実質的に含む、多くの異なるタイプの製品が製造され得る。
【0031】
本開示の別の態様によれば、乾式成形ユニットは、セルロースを離解セルロース繊維に分離するための分離ユニット、セルロース繊維のための成形ワイヤ、およびセルロース繊維を圧縮してセルロースブランクを成形するための圧縮ユニットを含む。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、成形型は加熱ユニットによって加熱される。セルロースブランクを成形型に押し込む前に、セルロースブランクは、加熱ユニットで予熱されてもよい。代替的に、セルロースブランクは、プレスする前にある程度まで予熱され、さらにプレスされる際に加熱されてもよい。加熱ユニットは、成形型に一体化されてもよく、成形型に入れる際に、セルロースブランクに熱が伝わることになる。このようにして、セルロースブランクの成形温度は、成形型からの伝熱により効率的に得ることができる。
【0033】
本開示の一態様によれば、サイジング剤または他の物質は、適用ユニットによってセルロース繊維に適用される。適用ユニットは、例えば、スプレーノズルまたは同様の装置の形態であってもよく、サイジング剤を、乾式成形ユニット内のセルロース繊維に添加している。
【0034】
本開示の他の態様によれば、乾式成形ユニットは、連続セルロースウェブとしてセルロースブランクを成形し、さらに連続セルロースウェブが、供給ユニットによって成形型に間欠的に供給される。連続セルロースウェブは、連続製造プロセスで使用されてよく、その際、連続セルロースウェブは、乾式成形ユニット内でセルロース繊維から乾式成形され、次いで成形型に搬送される。連続セルロースウェブを供給ユニットにより成形型に間欠的に供給することにより、成形型における連続セルロースウェブの成形とセルロース製品の成形とを、同一の製造ユニットの一部とすることができ、それによって、セルロース繊維からセルロース製品を効率的に製造することができる。
【0035】
本開示はさらに、平坦な形状または実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に関する。セルロース製品は、少なくとも90質量パーセントのセルロース繊維を含み得る。
【0036】
本開示のこれら態様および他の態様は、ここで本開示の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照してより詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本開示によるセルロース製品の成形装置を模式的に示す。
図2図2a〜図2bは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(a)および圧縮段階(b)を示す、複数回使用の膜を使用する、圧縮装置の第1の代替構成を模式的に示す。
図3図3a〜図3bは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(a)および圧縮段階(b)を示す、単回使用材料の一体化バリアを含む、圧縮装置の第2の代替構成を模式的に示す。
図4図4a〜図4dは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(aおよびb)ならびに圧縮段階(c)を示す、単回使用材料の一体化バリアおよびブロー成形を使用する、圧縮装置およびコンポーネントの第3の代替構成を模式的に示す。
図5図5a〜図5bは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(a)および圧縮段階(b)を示す、複数回使用の膜を使用する、圧縮装置の第4の代替構成を模式的に示す。
図6図6a〜図6cは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(aおよびb)ならびに圧縮段階(c)を示す、キャビティ補正圧力制御を用いる、圧縮装置の第5の代替構成を模式的に示す。
図7図7a〜図7bは、本開示の例示的な実施形態による初期段階(a)および圧縮段階(b)を示す、ブランク厚さ補償を用いる圧縮装置の第6の代替構成を模式的に示す。
図8図8a〜図8cは、本開示による大きな可撓性膜を使用する、圧縮装置の代替構成を模式的に示す。
図9図9a〜図9cは、本開示による大きな可撓性膜を使用する、圧縮装置の別の代替構成を模式的に示す。
【0038】
例示的な実施形態の説明
本開示の様々な態様は、以下において添付の図面と併せて説明され、本開示を例示するが、限定するものではなく、その際、同様の名称は同様の要素を指し、記載された態様の変形は、具体的に示された実施形態に限定されず、本開示の他の変形に適用可能である。
【0039】
本発明の詳細な説明では、セルロース製品、加圧成形装置、およびセルロース製品の製造方法について説明する。
【0040】
本開示によるシート材またはブランクの種々の実施形態は、主に、成形するための成形型内の位置に、平坦な形状で配置されたセルロースブランクに関して論じられている。これは、本発明の範囲を決して制限するものではなく、例えば3次元物体に予め成形されたブランクを同様に含むことに留意すべきである。例えば、ブランクは、所望の最終形状の物体に似た形状で成形型に提供され得る。別の実施形態は、ロール上のウェブの状態で成形型に供給されるセルロースブランクを含み得る。
【0041】
平面形状とは、例えば、ブランクまたはシート材の形状などの一般的に2次元(2D)形状を意味し、実質的に非平坦な形状とは、適切な3次元(3D)形状を意味し得る。本開示による対象物は、2次元形状、3次元形状で作られ得るか、または2次元のブランクまたはシート材から3次元形状に成形され得る。
【0042】
さらに、セルロース繊維のコヒーレントシートを模式的に示すことにより、これは本発明の範囲を決して限定するものではなく、例えば、成形型に緩やかでかつ隔離された繊維が適用されたブランクを同様に含む。
【0043】
本発明の詳細な説明では、形成されるべき3次元のセルロース製品および本発明によるセルロース製品を形成する成形型の様々な実施形態が、主に、概して均一な厚さを有する中空ボウル、中空カップまたは中空ボトルに関して論じられている。これは決して本発明の範囲を限定するものではなく、例えば厚さが異なる複雑な形状、非中空部分または大きな物体も同様に含むことに留意すべきである。例えば、物体は、有利には、スティフナー、折り目、穴、3D形状のテキスト、ヒンジ、ロック、スレッド、スナップ、フィート、ハンドルまたは表面のパターンを含み得る。
【0044】
図1では、セルロース製品の成形装置18におけるセルロース製品の製造方法が模式的に示されており、ここで、セルロースブランク1aは、乾式成形ユニット11内で乾式成形され、成形型3に配置され、成形温度に加熱され、かつ成形圧力で成形型3内にプレスされる。第1工程では、セルロースブランク1aは、乾式成形ユニット11内で乾式成形される。乾式成形ユニット11は、図1に点線で模式的に示されており、かつ分離ユニット13、成形ボックス23、成形ワイヤ14、および圧縮ユニット15を含む。セルロースブランク1aは、上記方法により、平坦な形状または実質的に非平坦な形状を有するセルロース製品に成形される。
【0045】
分離ユニット13では、セルロースは、離解セルロース繊維12に分離される。分離ユニット13で使用されるセルロースは、例えば、木材パルプおよびフラッフパルプなどの適切な供給源、または綿、麻、ヘンプ、サトウキビおよび穀物由来のセルロース繊維に由来し得る。他の種類のセルロースが使用されてもよく、分離ユニット13の設計に応じて、織物、紙、厚紙または他の適切な供給源由来のセルロース繊維を再利用することさえ可能であり得る。一例として、分離装置は、従来のハンマーミルであり得る。標準的なバージンフラッフパルプは、セルロース原料として使用されており、例えば、市場にてロールで購入され得る。図1では、フラッフパルプのロール21が原料として使用され、分離ユニット13に供給される。
【0046】
セルロース繊維12は、乾式成形ユニット11内で通常の方法で成形ワイヤ14上に配置される。離解セルロース繊維12は、遠心ファン22により分離ユニット13から引き出され、かつ成形ボックス23に吹き込まれ、このボックスは、例えば、成形ワイヤ14の上に配置された空気カーディング塔の形であってもよい。成形塔または成形ボックス23は、離解セルロース繊維12を下側の成形ワイヤ14に直接接触させる開放された底部を有するハウジングを含む。上側の成形ワイヤ14の下に真空ボックス24が配置されてもよい。遠心ファン22は、離解セルロース繊維12を、成形ボックス23の内部に供給しており、多数の繊維分離ローラー25が、1列以上で、成形ボックスハウジングの繊維入口と成形ボックスハウジング底部との間に配置され、セルロース繊維12を成形ワイヤ14上に均一に分配し得る。したがって、遠心ファン22は、離解セルロース繊維12を分離ユニット13から抜き出し、このセルロース繊維12を成形ボックス23内に吹き込む。セルロース繊維12は、真空ボックス24内の真空によって成形ワイヤ14上に引き込まれて、セルロースウェブを形成し、このウェブは、さらに成形ワイヤ14によって圧縮ユニット15に搬送される。成形ワイヤ14は、従来のように、例えば、織られたメッシュ構造から作られた無端ベルトとして配置されてよく、この無端ベルトは、セルロースウェブを成形する際に一定の速度で連続的に移動され得る。セルロースウェブの密度は、成形されるセルロース製品にとって適切であるように選択され得る。
【0047】
セルロースウェブからセルロースブランク1aを成形するために、セルロース繊維12は、圧縮ユニット15内で圧縮またはカレンダー加工される。圧縮ユニット15は、乾式成形ユニット11に一体化された1つ以上の圧縮ロールまたはカレンダーロールを用いて構成されており、1つ以上の圧縮ロールが成形ワイヤ14と一緒に配置され得る。一例として、圧密(圧縮)ロールが成形ワイヤの上に配置され、この圧密ロールが、乾式成形プロセスで成形されたセルロースウェブに圧縮圧力を加えている。このようにして、セルロースブランク1aは、乾式成形ユニット11において連続セルロースウェブ16として成形される。セルロース繊維12を圧縮する際に、圧縮ロールまたはカレンダーロールは加熱されてもよい。
【0048】
セルロースブランク1aの乾式成形は、別個のプロセス工程として行われてよく、その際、セルロースブランク1aは、セルロース製品の成形前に、シート状に積み重ねられるかまたはロール状ウェブとして配置される。代替的に、セルロースブランク1aの乾式成形は、図1に示すように、連続プロセスの一部であってもよく、その際、セルロース製品は、セルロース製品の成形装置で製造され、したがって、セルロースブランク1aの乾式成形は、セルロースブランク1aを成形型3内に配置、加熱、プレスする前の初期プロセス工程となる。
【0049】
セルロース製品を成形するために、セルロースブランク1aは、成形型3に配置され、セルロースブランク1aは、その後、100℃〜200℃の範囲の成形温度に加熱され、次いで少なくとも1MPaの成形圧力で成形型3内でプレスされる。成形型3でのセルロースブランク1aの加熱および加圧については、後でさらに説明されることになる。試験では、適切な圧力レベルが1〜100MPaの範囲にあり得ることが示された。セルロースブランク1aの加熱は、成形型3でのプレス前、または少なくとも部分的に成形型3でのプレス前に行われてもよい。代替的に、セルロースブランク1aの加熱は、プレス時に成形型3内で行われている。セルロースブランク1aの加熱は、例えば、セルロースブランク1aをプレスする前に、成形型3の加熱を通して行われてもよい。圧力は、セルロースブランク1aを加熱する前に加えられてもよく、例えば、セルロースブランクの加熱は、プレス中に成形型3内で行われてよい。
【0050】
セルロース繊維を、少なくとも1MPaの成形圧力で100℃〜200℃の範囲の成形温度でプレスする場合、セルロース繊維12は、互いに結合し、得られるセルロース製品は、良好な機械特性を有することになる。試験は、特定の成形圧力でプレスした際に、成形温度が高くなるほど、セルロース繊維12間の結合が強くなることを示した。成形温度が100℃を超え、成形圧力が1〜100MPaの場合、セルロース繊維12は互いに強く結合することになる。成形温度が高くなると、フィブリル凝集、耐水性、ヤング率、最終セルロース製品の機械的特性が向上することになる。高い圧力は、セルロース製品中のセルロース繊維12の間のフィブリル凝集にとって重要である。200℃を上回る温度では、セルロース繊維12が熱劣化するので、200℃を上回る温度は回避されるべきである。成形圧力および成形温度は、製造される特定のセルロース製品にとって適切であるように選択され得る。
【0051】
セルロースブランク1aは、任意の適切な方法で成形型3に配置され、一例として、セルロースブランク1aは、手動で成形型3に配置され得る。別の方法は、セルロースブランク1aのための供給装置を配置することであり、これによりセルロースブランク1aは成形型に搬送される。供給装置は、例えば、コンベアベルト、産業用ロボット、または他の適切な製造装置であり得る。セルロースブランク1aの乾式成形が、セルロース製品が製造される連続製造プロセスの一部である場合、図1に示すように、セルロースブランク1aは、成形ワイヤ14により乾式成形ユニット11から成形型3に供給され得る。より具体的には、成形ワイヤ14が、乾式成形ユニット11内を一定速度で移動し、セルロース製品の成形が、成形型3において間欠的なプロセス工程で行われる場合、セルロースブランク1aは、供給ユニット17によって間欠的に成形型3に供給され得る。
【0052】
セルロースブランクは、例として、図1に示されるように、緩衝ゾーン構造の形態で、供給ユニット17によって成形型に間欠的に供給され得る。リフトローラーを備えたピボットローラーアーム26は、セルロースブランク1aを、なだらかな円弧でかつ同期されたサーボ制御動作で持ち上げて曲げる。このようにして、適切な長さのセルロースブランク1aの移動を緩衝し、セルロースブランク1aの成形型3へのオンデマンド増分供給を可能にする。ピボットローラーアーム26が下降されると、緩衝されたセルロースブランク1aは、間欠的に成形型3に供給され得る。したがって、ピボットローラーアーム26が、繰返し昇降されると、セルロースブランク1aの緩衝も繰り返し行われ、セルロースブランク1aは、例えば、ピボットローラーアーム26の後に配置された供給ローラー27を介して、成形型3に間欠的に供給され得る。
【0053】
代替的に、供給ユニット17を使用する代わりに、成形型3の動きを往復させ、これをセルロースブランク1aの供給と同期させることで、製造プロセスを通してセルロースブランク1aを一定速度で搬送することができる。このようにして、成形型は、セルロース製品のプレス中にセルロースブランクの供給方向に沿って移動する。
【0054】
上記のように、セルロース製品は、セルロース繊維12から製造され、セルロース製品は、少なくとも90質量パーセントのセルロース繊維を含み得る。セルロース繊維のみでセルロース製品を製造することは可能であるが、サイジング剤または他の適切な添加剤が、セルロース繊維12に使用されて、セルロースブランク1aの疎水性、機械的強度および/または他の特性が高められ得る。サイジング剤または添加剤は、例えば、分離ユニット13において、セルロースブランク1aの成形に使用され得る。セルロース繊維に添加され得る他の適切な物質は、例えば、様々な形のデンプン、例えば、ジャガイモ由来のデンプン、粉末状の穀類またはトウモロコシであってよく、これらは成形型3でのセルロース製品の成形前にセルロース繊維12に添加され得る。デンプンを加えることにより、最終的なセルロース製品の強度が高まることになる。一例として、セルロース製品は、90〜98質量パーセントのセルロース繊維および2〜10質量パーセントの他の物質、例えばデンプン、サイジング剤、および/または他の適切な添加剤および物質を含み得る。他の適切な物質が使用される場合、セルロース繊維の量が、90質量パーセントより少ないこともあり得る。セルロース繊維に添加され得る他の適切な物質は、例えば、紙製品、フルオロケミカル、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジン(酸性サイジング)、ワックス、リグニンおよび水ガラス(ケイ酸ナトリウム)の湿式成形において従来から使用されている添加剤またはサイジング剤である。セルロース製品の使用後のリサイクルが確実に行われるように、添加される物質は、生分解性またはリサイクルに適したものであり得る。
【0055】
図1に関して上述したように、セルロース製品の成形装置18は、セルロースブランク1aを成形するための乾式成形ユニット11とセルロース製品を成形するための成形型3とを含む。セルロース製品の成形装置18は、セルロース製品をセルロース原料から製造する単一の生産ユニットとして、セルロース製品のための連続生産ユニットとして構成され得る。セルロースブランク1aは、最初に乾式成形ユニット11で成形され、次いで成形型3でセルロース製品に成形され、その際、セルロース製品は平坦な形状または実質的に非平坦な形状を有し得る。
【0056】
乾式成形ユニットは、セルロースを離解セルロース繊維12に分離するための分離ユニット13、セルロース繊維12のための成形ボックス23および成形ワイヤ14、ならびにセルロース繊維12を圧縮してセルロースブランク1aを成形するための圧縮ユニット15を含む。図1に示すように、別個に配置された加熱ユニット19は、セルロースブランク1aを成形型3でプレスする前に、セルロースブランク1aを加熱している。代替的に、成形型3は、加熱ユニット19によって加熱されてもよく、その際、成形型3を加熱するために、加熱された流体媒体、電気ヒータ、または他の適切な加熱手段が使用される。
【0057】
サイジング剤、添加剤、または他の必要な物質が、適用ユニット20によってセルロース繊維12に適用される。適用ユニットは、例えば、乾式成形ユニット11においてセルロース繊維12にサイジング剤または他の物質を添加する1つ以上のスプレーノズルまたは類似の装置の形であり得る。
【0058】
連続セルロースウェブ16の形のセルロースブランク1aが、供給ユニット17によって成形型3に間欠的に供給され得るように、乾式成形ユニットの後に供給ユニット17が配置されている。
【0059】
以下、セルロースブランク1aから成形型3でセルロース製品を成形することについて、さらに説明されることになる。下記のセルロースブランク1aからの成形型3でのセルロース製品の成形方法は、連続したセルロース製品の成形方法の一部であってもよく、また、記載された異なるタイプの成形型3が、セルロース製品の成形装置18に一体化されてもよい。
【0060】
本開示の例示的な実施形態による、力規定型の圧縮装置であり得る成形型3は、ここで図2a〜図2bを参照して説明されることになる。図2aでは、熱を使用するセルロース繊維の成形型3の形態の圧縮装置または加圧成形装置の模式的な側面図が開いた状態で示されている。圧縮装置または成形型3は、セルロース製品を成形する際に等方圧が適用されるように構成され得る。また、適用される圧力は、セルロース製品を成形する際に成形型3の様々な部分に様々な圧力レベルが適用されるように非等方性であってもよい。
【0061】
本開示のこの実施形態の成形型3は、複数回使用の膜4の下に配置された1つの剛性の成形型部分2aを使用する。膜4は、図示されていない圧力チャンバ内に収容された、例えば油圧オイルなどの圧力媒体または流体5のためのシールを構成する。ダイアフラムとも呼ばれる膜4は、好ましくはゴム、シリコーン、エラストマーまたはポリウレタンで作られ得る。
【0062】
同様のプレス装置は、まったく別の産業にも見られ、例えば、航空機用の金属板の成形または金属粉を均一な材料に加工する際に見られる。例えば、従来の目的のための等方プレスでは、通常、非常に高い圧力、例えば1000〜2000バールの範囲の圧力が使用されている。
【0063】
主としてセルロース繊維をいくつかの添加剤や試薬とともに含むセルロースブランク1aは、図2aに示すように、膜4と、図2aでは膜4の下に配置されている剛性の成形型部分2aとの間の隙間に配置されている。また、セルロースブランク1aは、多量の水分を含有してもよく、この水分は、例えば周囲大気の湿度に応じて変化し得る。
【0064】
セルロースブランク1aからセルロース製品またはセルロース製品の一部を成形するために、セルロースブランク1aは、成形温度T(100℃〜200℃の範囲にあり得る)に加熱されなければならない。成形型部分2aが、所望の温度Tに加熱され、熱がセルロースブランク1aに伝達されて、セルロースブランク1aがその成形温度Tに達するようにされ得る。成形型3は、成形型部分2aの内部チャネル7に加熱されたオイルを圧送することにより、例えば150℃〜170℃の温度に予熱され得る。成形型3を予熱するための代替法は、図示されていない一体型の電気抵抗器を使用することである。セルロースブランク1aは、例えば、工具に入れる前に赤外線を用いて予熱することもできる。また、圧力媒体5を圧力媒体温度Tに加熱することも、適切な代替法であり得る。
【0065】
図2bでは、圧力媒体5として使用される油圧オイルは、少なくとも1MPaの圧力に加圧されており、膜4は、加熱された成形型2aを、圧縮材料1bと一緒に包み、その間でセルロース製品を成形する。セルロース製品を成形する際の適切な圧力Pは、1〜100MPaの範囲内であり得る。適切な圧力を適用することにより、セルロース繊維が圧縮される。適用される圧力は、成形型部分2a上の相対位置や繊維の実際の局所量にかかわらず、セルロース繊維を均一に圧縮するために、均一または等方性であり得る。代替的な実施形態では、圧力は、非等方性であってもよく、成形型3の様々な部分で様々な圧力レベルが、セルロース製品を成形するために使用されている。これは、例えば、セルロース製品の様々な部分で様々な構造特性が望まれる場合に使用され得る。
【0066】
圧縮装置は、圧力媒体5のための流体制御装置(図示せず)を備えていてもよく、流体を圧縮するアクチュエータであってもよく、または加圧された流体が圧力チャンバに入るように制御可能な流体流れ制御装置であってもよく、圧力チャンバはその壁の一部として可撓性膜4を有する。装置は流体を含んでよく、または流体は周囲大気から取り込まれた空気であってもよい。
【0067】
本発明者らは、セルロース製品を成形する際に160℃の温度で4MPa(40バール)の圧力Pを加えることで、10秒の保持時間後に多くの熱可塑性プラスチックに匹敵するフィブリル凝集がセルロース繊維において起こることを見出した。
【0068】
圧縮材料1bからセルロース製品への工業生産のサイクル時間を短縮するために、前記圧縮材料1bの冷却は、例えば、冷却された油を、成形型部分2aに配置された内部チャネル7または圧力チャンバに圧入することによって行われてよく、その際、セルロース繊維におけるフィブリル凝集が完了した後、成形型部分2aの温度Tおよび圧力媒体温度Tは、急速に低下し得る。
【0069】
プロセスおよび装置は、圧力媒体5を大気圧Pに下げることによって図2aに示される開かれた状態に戻り、その際、前記膜4は、多かれ少なかれ平らな初期状態に戻り、完成したセルロース製品が取り出され、不要な残留圧縮セルロース繊維または非圧縮セルロース繊維は、切断除去され得る。
【0070】
セルロース製品の最終厚さtは、セルロース繊維の実際の局所量に応じてわずかに変動し得る。
【0071】
別の実施形態では、可撓性または柔軟性の膜4の代わりに剛性の成形型部分が使用されてよく、これは、セルロース製品を成形する際に様々な圧力レベルが望ましい場合に適切であり得る。可撓性膜4を使用すると、等方圧縮法がもたらされ、その結果、高強度でかつ製造サイクル時間が短い均一なセルロース製品が得られる。
【0072】
図3a〜図3bを参照すると、図2a〜図2bの複数回使用の膜4は、薄膜バリア6を含む単回使用の膜で置き換えられており、その際、前記膜バリア6は、セルロースブランク1aを製造する際にセルロースブランク1aに予め適用され得るか、または膜バリア6は、例えば、図示されていないロールから圧縮装置に供給され、セルロースブランク1aが等方圧である間にセルロースブランク1aに適用される。
【0073】
前記薄膜バリア6は、PET、バイオポリエチレン、またはPLAのような熱可塑性材料で作られ、1〜700μmの範囲内の厚さを有し得る。
【0074】
図3aは、その初期の開いた状態の圧縮装置または成形型3を含み、セルロース繊維1aに適用された薄膜バリア6を使用し、温度Tに予熱された下部の凹成形型部分2bと、圧力チャンバ(図示されていない)に収容された圧力媒体または流体5、好ましくは大気圧のガスまたは空気とを含む、方法を模式的に示す。
【0075】
図3bは、圧縮された状態の、図3aに示したのと同じ装置およびセルロースブランク1aを示し、圧力媒体5、好ましくは圧縮空気または水などの非汚染液体が、圧力Pまで加圧され、薄膜バリア層6は、セルロースブランク1aの圧縮材料1bから圧力媒体を隔離してシールし、圧力媒体5および膜6は、前記成形型部分2bの温度Tでもって、加熱された成形面全体にわたり等しい圧力をセルロース繊維に加える。
【0076】
一定の時間Xの間、特定の温度で特定の圧力を保持することにより、セルロース繊維にフィブリル凝集が起こり、熱可塑性プラスチックに近い機械的特性を有する圧縮材料1bの生体複合材のコンポーネントが作り出される。例として、圧力Pが4MPa(40バール)であり、成形温度Tが140℃であり、成形型部分2bの温度Tが160℃であり、かつ時間Xが10秒である場合、熱可塑性プラスチックに近い機械的特性を有する圧縮材料1bの生体複合材のコンポーネントが得られる。時間間隔Xは、例えば、セルロースブランクの成形温度および適用される圧力に応じて、0.1秒〜数秒の範囲であり得る。
【0077】
圧力媒体5を除去し、時間X後に大気圧Pまで減圧することにより、圧縮材料1bから形成されたセルロース製品が取り出され、必要に応じてその最終形状に切断され得る。
【0078】
図3a〜図3bで論じた方法の利点の1つは、膜バリア6は、製品の使用中にコンポーネントにさらされる他の媒体に対するバリアとしても機能し得ることである。例えば、膜バリア6を備えたセルロース製品が、現存のサラダ用ボウルである場合、圧縮材料1b中のセルロース繊維を野菜との接触から保護し、かつボウルの吸湿特性を低下させる。この方法は、液体製品用のボトルまたは容器の製造にも使用することができ、したがって、セルロース製品は、炭酸化液体を含む様々な種類の液体または飲料を詰めるのに適切であり得る。
【0079】
図4a〜図4dを参照すると、成形型3は、膜バリア6を含む管形状のセルロースブランク1aを取り囲む、少なくとも2つの開閉可能な凹型成形表面または部分2a、2bを含み、その際、外層は、非圧縮セルロース繊維であり、その添加剤および内層6は、薄膜バリア6を含む単回使用の膜である。ブランクは、好ましくは、平坦な形状で、ロール(図示されていない)から圧縮装置に供給することができ、その際、ブランクは、圧力媒体ノズル8を取り囲む、管(図示されていない)の形状に形成される。
【0080】
図4aでは、成形面または部分2a、2bを有する成形型3は、成形型温度Tに予熱されており、その成形プロセス方法の開いた初期段階が模式的に示されている。膜バリア6を有する管形状のセルロースブランク1aは、固定された圧力媒体ノズル8を取り囲む上部から供給され、このことは、膜バリア6を有する管形状のセルロースブランク1aが、上から成形面2a、2bへの方向に供給されることを意味する。
【0081】
予熱された成形型3を閉じることにより、図4cに示される圧力媒体ノズル8からの圧力媒体9に基づいて成形型3の内側に加えられる圧力Pによって生じる、開く力よりも大きい閉じ力Fが加えられる。成形面2a、2bを有する成形型3の閉じた状態は、図4b〜図4cに模式的に示されている。閉じ力Fとキャビティの上下に隣接する成形面2a、2bの構成により、セルロースブランク1aの内容積は、外気圧Pからシールされることになる。
【0082】
図示されていない、別の実施形態では、セルロースブランク1aは、成形型3を閉じる際に、成形型によって残留材料から切断され得る。1つまたは双方の成形型部分には、セルロース製品を成形型で成形する場合と同じプレス動作で不要な残留圧縮セルロース繊維または非圧縮セルロース繊維をセルロース製品から切断するための、鋭利な刃先などの切断装置が備えられ得る。この切断装置は、セルロース製品の特定の厚さに合うように設計され得る。切断装置は、成形されたセルロース製品の端を、所望のセルロース製品の形状に応じて、2次元および3次元の双方の形状で切断し得る。切断装置は、最終製品の切断に効率的であるような様々な様式、例えば、一方の成形型部分に配置された狭い切開部を、他方の成形型部分の突出している刃先と接触させる様式、または一方の成形型部分に配置された刃先を、他方の成形型部分の切断面と接触させる様式で構成され得る。代替的に、切断装置は、成形型に一体化した可動カッターとして配置されてもよく、これは、プレス動作に相対的にある方向に移動している。
【0083】
セルロース製品に使用されない、残留セルロース繊維12は、回収され、かつリサイクルのために分離ユニット13に戻され得る。
【0084】
図4cは、本発明の方法のフィブリル凝集相の成形を示し、ここで、前記ブランクの内部容積は、圧力媒体ノズル8からの圧力媒体9で満たされ、かつ圧力Pに加圧され、ここで、圧力媒体9および単回使用の膜6は、前記成形型の加熱された成形面2aおよび2bにわたり等しい成形圧力をセルロース繊維に加える。
【0085】
充填プロセスは、図4bおよび図4cに示された工程の間に行われ、空気チャネル10が、成形型3のキャビティ内の膜バリア6を有するセルロースブランク1aの外側の空気を、ブランクの膨張プロセスの間に排出できるようにすることが求められている。
【0086】
図4dは、圧縮材料1bおよび膜バリア6から作られた中空物体の形の3次元のセルロース製品、例えば、前記圧力媒体9が充填された図4a〜図4cに記載された方法によって成形された飲料用ボトルであって、該膜バリア6が、圧力媒体9を該圧縮セルロース繊維1bから隔てている、前記飲料用ボトルを示す。
【0087】
本開示によれば、圧力媒体9は、この実施形態では、セルロース製品に充填されることが意図された飲料、例えば、ミルク、ジュース、水および炭酸飲料によって構成され得る。
【0088】
膜バリア6は、好ましくは、PET、バイオポリエチレンまたはPLAのような薄い熱可塑性材料で作られており、1〜700μmの範囲の厚さを有し、ここで従来から飲料用の紙パッケージに適用されている膜バリア6も、セルロース製品の貯蔵および使用の間の飲料との接触からセルロース繊維1bをシールする。
【0089】
図4cに示すプロセス工程のサイクル時間は、飲料が、例えば1〜20℃の温度Tに冷却され、急速に、好ましくは1秒未満で充填される場合、短縮され得る。成形面2a、2bを有する成形型3が、例えば、200℃の成形温度Tに予熱され、かつブランクが例えば140℃の温度Tに予熱される場合、圧力媒体温度Tによって、充填されたボトルを、数秒またはそれ以下のサイクル時間で成形型3から取り出すことができる。
【0090】
図5a〜図5bは、本開示の別の原理を模式的に示しており、ここで、圧縮装置は、少なくとも1つの凸成形型部分2aと、少なくとも1つの凹加圧型部分(成形型部分)2bと、複数回使用の予備成形膜4とを備え、セルロースブランク1aを取り囲む成形型部分2aおよび2bが閉じられた後、圧力媒体5は圧力Pまで加圧される。
【0091】
セルロースブランク1aのセルロース繊維においてフィブリル凝集が起こる最終成形段階を図5bに示す。図5bに示す拡大断面図は、圧力媒体5が、上部の凹加圧型部分2bと膜4との間の成形型3内にどのように浸透するかを示しており、ここで、圧力Pによって、セルロースブランク1aは、予熱された下部の凸成形型の成形面2aに向かって均一に圧縮される。圧力媒体5の浸透は、圧力媒体5のマイクロチャネルとして作用する上部の凹加圧型部分2bの表面において、図示されていない小さな凹みによって容易にすることができる。
【0092】
より短いサイクル時間が好ましい場合には、図2a〜図2bに記載の方法よりも図5a〜bによる圧縮装置の実施形態の方が有益であり得る。図5a〜図5bに示す実施形態では、膜4を同じ程度まで変形させる必要はない。
【0093】
上記の圧縮方法の例は、図2図5を参照して、等方圧を加えるために使用され得る可撓性膜4を含む。水だけで処理された木材パルプなどのセルロース繊維の加熱圧縮成形を用いる全セルロース複合材の3次元物体の成形は、従来の工具を用いて、依然として等方圧を得ながら行われるものと理解されたい。
【0094】
図6a〜図6cを参照すると、上部の予熱された凹状の非可撓性加圧型部分2bと、下部の予熱された凸状の非可撓性成形型部分2aとがセルロースブランク1aを取り囲み、ここで、下部の予熱された凸状の非可撓性成形型部分2aと上部の予熱された凹状の非可撓性加圧型部分2bとの間のキャビティ厚さt(P)は、公称上の均一厚から逸脱しており、そのずれは、理論上および/または事実上立証されており、成形型部分が力Fで圧縮される際に成形型部分2aおよび2bに向かってセルロースブランク1aのすべての部分に等方圧Pが加えられることになる。
【0095】
図6aは、成形型部分に供給される連続したウェブの平坦な状態のセルロースブランク1aを有する初期の開いた状態の実施形態を模式的に示す。図6cは、圧縮された非平坦状態のセルロースブランク1aを有する閉じた状態の実施形態を模式的に示す。図6bは、圧縮されていない非平坦状態にある、開いた状態と閉じた状態との中間の実施形態を模式的に示す。
【0096】
図6a〜図6cは、中空ボウル用の圧縮装置の一例を示しており、凸成形型部分2aが、公称の好ましい形状を有し、凹加圧型部分2bが等しい圧力Pを得るために調整された形状を有する。
【0097】
図6bに示すように、ブランクは2つの成形型部分2a、2bによって変形され、セルロースブランク1aの厚さtは、摩擦およびセルロースブランク1aに残留するひずみによって変化する。多くの方法で変更され得る、この模式的な例では、セルロースブランク1aは、加圧型部分(成形型部分)2bのキャビティ入口の近傍で最も薄い厚さtminになり、成形型部分2aの上部で最も厚い厚さtmaxになる。
【0098】
したがって、セルロースブランク1aを、凹加圧型部分2bを用いて、成形面全体にわたりセルロースブランク1aに作用する実質的に等しい成形圧力Pで凸成形型部分2aに対してプレスすることによって、最も狭いキャビティ厚さsminは、セルロースブランクの最も薄いtminの近傍に位置し、かつ最も広いキャビティ厚さsmaxは、圧縮されていないセルロースブランク1aの最も厚いtmaxの近傍に位置するので、2つの成形型部分2aと2bとの間のキャビティの厚さsは補償若しくは調整されている。
【0099】
また、セルロースブランクの厚さtと、キャビティの厚さsと、最終的なキャビティ形状との間の関係も、キャビティの幾何学的な圧力の発生に関係している。力Fによって、凸成形型部分2aの上部の圧力Pが決定され、最も狭いキャビティ厚さsmin近傍のキャビティの凸面、厚さおよび角度が最終圧力Pを決定する。
【0100】
本発明者らは、実質的に等方の圧力Pを得るために、キャビティの最終形状が複雑なアルゴリズムt(P)であることを見出し、その際、数学的な解析法、好ましくは有限要素法(FEM)と、実証試験、好ましくは試行錯誤との双方が、コンポーネントの全体にわたって等しい圧力を得るために必要である。
【0101】
可撓性膜を用いない本開示の別の実施形態によれば、図6a〜図6cの幾何学的に圧力調整されたキャビティは、セルロースブランクの厚さ補償(調整)によって置き換えることができる。
【0102】
図7a〜図7bは、好ましく等しい公称のキャビティ厚さtをもたらす従来の圧力調整されていない凹成形型部分2bおよび調整されていない凸成形型部分2aを、模式的に示し、ここで、ブランクは、図6a〜図6cに関して論じられた実施形態について説明されたのと同じ理論および同じ方法で確立されたtmin−tmax間の圧力調整された厚さを有する。
【0103】
図6a〜図6cおよび図7a〜図7bに関して示された、可撓性膜を用いずに等方圧を生じさせる方法の選択は、圧縮装置のサイクル時間の短縮およびコストの削減に関連する。しかしながら、剛性を示す成形型を使用する方法では、開発努力に、より多くのコストがかかる可能性がある。
【0104】
図6a〜図6cに関して記載された方法に対して図7a〜図7bに関して記載された方法を用いることの利点は、均一な厚さt1を有する最終セルロース製品が得られることである。しかしながら、ブランクは、図7a〜図7bに記載された方法で製造することによりコストがかかる可能性がある。
【0105】
代替法として、成形型3は、大きな可撓性膜構造として構成された膜により形成してもよい。図8a〜図8cには、凹成形型部分2bと凸成形型部分2aとを有する別の成形型3が模式的に示されている。凸成形型部分2aは、セルロース製品を成形する際に、セルロースブランク1aに等方圧をかけている大きな分厚い可撓性膜4に成形圧力Fを加えている。大きな可撓性膜とは、上記の実施形態で説明した膜構造と同様の、セルロースブランク1aに等方圧をかける能力を有するが、より薄い膜構造と比較してより大きな弾性変形領域を有する可撓性構造を意味する。大きな可撓性膜4は、厚膜構造で構成されてよく、またはさらに均質な可撓性材料の塊で作られてもよい。可撓性材料は、その塊に圧力が加えられる際に成形型部分の間に材料を浮かせるような特性を有し得る。図8a〜図8cに示す実施形態では、大きな可撓性膜4は、均質な可撓性材料の塊から構成されている。
【0106】
別の実施形態では、大きな可撓性膜4は、様々な厚さを有してよく、その際、大きな可撓性膜は、例えば、様々な厚さの構造に成形または鋳造される。様々な厚さを有する大きな可撓性膜の薄い領域および厚い領域は、セルロースブランク1aにかけられた圧力を均等または一定にするために膜の小さな変形または大きな変形を必要とする成形型部分の領域を補償し得る。大きな可撓性膜構造を使用することで、成形型を安価でかつ簡単な構造で作製することができる。
【0107】
大きな可撓性膜4は、圧力Fが成形型部分から加えられると、大きな可撓性膜4が変形し、等方圧を加えるように構成されている。大きな可撓性膜4は、例えばゴム、ラテックス、ポリウレタンまたはシリコーンなどの適切な特性を有する材料で作られてよい。他の適切な材料またはエラストマー特性を有する材料の組み合わせも使用され得る。大きな可撓性膜4の可撓性のために、大きな可撓性膜4は、等方圧をセルロースブランク1aに加える。
【0108】
図8aでは、セルロースブランク1aは、凹成形型部分2bと大きな可撓性膜4との間に配置されている。図8a〜図8bに示すように、成形圧力Fが成形型部分に加えられる際に、凸成形型部分2aは、大きな可撓性膜4およびセルロースブランク1aを、凹成形型部分2bに押し込んでいる。セルロース製品を成形する際に、凹成形型部分2bは、成形型部分温度Tに加熱され、成形プロセスの間、セルロースブランク1aは、成形温度Tに加熱される(図8a〜図8cを参照のこと)。
【0109】
図9a〜図9cには、凹成形型部分2bと凸成形型部分2aとを有する別の代替的な成形型3が、模式的に示されている。凹成形型部分2bは、セルロース製品を成形する際に、成形圧力Fを大きな可撓性膜4に加え、これは等方圧をセルロースブランク1aに加える。大きな可撓性膜4は、圧力Fが成形型部分から加えられると、大きな可撓性膜4が変形し、等方圧を加えるように構成されている。大きな可撓性膜4は、図8a〜図8cに示された実施形態に関して上記されたものと同じ構造のものであってもよい。図9a〜図9cに示された実施形態では、大きな可撓性膜4は、凸成形型部分2aの形状に合わせて変化した厚さを有する。大きな可撓性膜4の可撓性のために、大きな可撓性膜4は、セルロースブランク1aに等方圧を加える。
【0110】
図9aでは、セルロースブランク1aは、凸成形型部分2aと大きな可撓性膜4との間に配置される。図9a〜図9bに示すように、成形圧力Fが成形型部分に加えられる際に、凸成形型部分2aは、セルロースブランク1aを、大きな可撓性膜4に向かって凹成形型部分2b内に押し込んでいる。セルロース製品を成形する際に、凸成形型部分2aは、成形型部分温度Tに加熱され、成形プロセスの間、セルロースブランク1aは、成形温度Tに加熱される(図9a〜図9cを参照のこと)。
【0111】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は、他の要素または工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外していない。特定の測定値が、互いに異なる従属請求項に記載されているという事実だけでは、これらの測定値の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0112】
上記の説明は実質的に単に例示的なものであり、本開示、その用途または使用を限定するものではないことが理解されることになる。特定の例が明細書に記載され、かつ図面に示されているが、当業者であれば、特許請求の範囲に規定された本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてよく、かつ等価物がその要素の代わりに用いられてもよいことを理解することになる。さらに、その実質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を、本開示の教示に適合させるために改変がなされてもよい。したがって、本開示は、図面によって示され、かつ本開示の教示を実施するための現在考えられる最良の形態として明細書に記載された特定の例に限定されるものではなく、本開示の範囲は、前述の説明および添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むことになる。特許請求の範囲に記載された参照符号は、特許請求の範囲によって保護されている事項の範囲を限定するものと見なすべきではなく、その唯一の機能は、特許請求の範囲を理解しやすくすることである。
【0113】
参照符号
1a:セルロースブランク
1b:圧縮材料
2a〜b:成形型部分
3:成形型
4:膜
5:圧力媒体
6:膜バリア
7:内部チャネル
8:圧力媒体ノズル
9:圧力媒体
10:空気チャネル
11:乾式成形ユニット
12:セルロース繊維
13:分離ユニット
14:成形ワイヤ
15:圧縮ユニット
16:連続セルロースウェブ
17:供給ユニット
18:セルロース製品の成形装置
19:加熱ユニット
20:適用ユニット
21:ロール
22:遠心ファン
23:成形ボックス
24:真空ボックス
25:繊維分離ローラー
26:ピボットローラーアーム
27:供給ローラー
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c