(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に示すような表示装置を、例えば、液晶表示装置として用いる場合、バックライトの光を偏光とし、液晶セル内の液晶分子の配向制御とインセル偏光子による光の透過・吸収制御により、発光させる画素と発光させない画素とを選択した画像表示が可能となる。しかしながら、このような量子ドットを用いるカラーフィルターは、発光に必要な波長を含む外光(例えば、太陽光)によっても同時に発光することになる。例えば、太陽光が入射する室内等で特許文献3に示すような画像表示装置を観察した場合、黒表示においても、太陽光によりカラーフィルターが発光するため、黒輝度が向上する。その結果、コントラストが低下し、表示画像の視認性が大幅に低下することになる。また、太陽光に限らず、屋内における照明であっても、バックライトの光源(例えば青色LEDであれば発光時のピーク波長:450nm)と同じ波長の光がカラーフィルターに入射すると、画像表示の状態に関係なく、カラーフィルターが発光し、画像の視認性を大きく損ねてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、外光がある環境下でも、視認性に優れた表示画像を実現可能な量子ドットを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、画像表示装置の観察者側(外光の入射側)に、量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源のピーク波長含む光反射層を配置することにより、量子ドットを含有する波長変換層への外光の入射を低減でき、表示画像の視認性を向上できることを新規に見出した。
【0010】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]量子ドットを含有する波長変換層と、
前記波長変換層に対して観察者側に設けられ、前記量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源のピーク波長を反射波長域に含む光反射層と、を備える画像表示装置。
[2]液晶表示装置または有機ELディスプレイである、上記[1]に記載の画像表示装置。
[3]さらに、前記波長変換層に対して観察者側に偏光板が配置されている、上記[1]または[2]に記載の画像表示装置。
[4]前記波長変換層が、前記励起光により励起され緑色光を発光する第1量子ドットと、前記励起光により励起され赤色光を発光する第2量子ドットとを含有する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の画像表示装置。
[5]前記光源のピーク波長が、350nm以上650nm以下である、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の画像表示装置。
[6]前記光反射層の中心反射波長が、350nm以上750nm以下である、上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の画像表示装置。
[7]前記光反射層の中心反射波長と前記光源のピーク波長との差の絶対値が、0nm以上70nm以下である、上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の画像表示装置。
[8]前記光反射層が偏光反射層である、上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の画像表示装置。
[9]前記偏光反射層がコレステリック液晶層である、上記[8]に記載の画像表示装置。
[10]前記光反射層がコレステリック液晶層であり、かつ、
前記コレステリック液晶層と前記偏光板との間に、1/4波長板が配置されている、上記[3]に記載の画像表示装置。
[11]前記1/4波長板の位相差値が、90nm以上125nm以下である、上記[10]に記載の画像表示装置。
[12]前記1/4波長板の遅相軸と前記偏光板の偏光軸とのなす角が45°である、上記[10]または[11]に記載の画像表示装置。
[13]前記光反射層の観察者側に、反射防止層がさらに設けられている、上記[1]乃至[12]のいずれかに記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、外光がある環境下でも、視認性に優れた表示画像を実現可能な量子ドットを用いた画像表示装置を提供することができる。特に、光反射層として偏光反射層(以下、「反射型偏光子」とも称する)を用いる場合、本発明は、量子ドットの励起光の波長を含む外光をより効果的にカットし、画像表示装置からの出射光の明るさを維持しつつ、外光のみを効率よく反射できるといった優れた機能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係る各実施形態、比較例、実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、開示内容はあくまで一例にすぎず、当業者により適宜設計し得る変更は本発明の範囲に含まれるものである。また、図面は説明を明確にするために実際の態様に比べて幅、大きさ、厚み、形状等について模式的に表しているが、これもあくまで一例である。さらには、図面は本発明の効果を説明する上で不要な部分は適宜省略しているが、その省略したことについては本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
本発明に係る画像表示装置は、量子ドットを含有する波長変換層を備える画像表示装置であって、量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源のピーク波長を反射波長域に含む光反射層が、波長変換層より観察者側に配置される。画像表示装置は、好ましくは、液晶表示装置または有機ELディスプレイである。量子ドットを含有する波長変換層は、例えば、バックライトユニット、カラーフィルター等の画像表示装置を構成する任意の部材に含まれる構成要素である。量子ドットを含有する波長変換層は、カラーフィルター自体であるか、またはカラーフィルターの一部を構成することが好ましい。以下、画像表示装置の各実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、画像表示装置が液晶表示装置(LCD)である場合について説明する。第1の実施形態に係る液晶表示装置は、量子ドットを含有する波長変換層の観察者側に光反射層を備える構成を有する。
図1に示されるように、液晶表示装置1は、励起光を発光する光源を有するバックライトユニット11と、バックライトユニット11上に配置された液晶表示ユニット12とを備える。この液晶表示装置1では、観察者は、
図1の上方となる液晶表示ユニット12側から液晶表示装置1を観察する。液晶表示ユニット12は、バックライトユニット11上に配置され、バックライトからの光を偏光に変換するバックライト側偏光板13と、バックライト側偏光板13上に配置された表示パネル14と、表示パネル14上に配置された観察者側偏光板15と、観察者側偏光板15上に配置された光反射層16とを備える。観察者側偏光板15は、必ずしも配置されていなくてもよいが、観察者側偏光板15を使用することにより、画像のコントラストをより向上させることができ、また、光反射層16で吸収しきれなかった外光を吸収することで外光カット効率をさらに高めることができる。表示パネル14は、対向基板17と、対向基板17上に配置された液晶層18と、液晶層18上に配置されたアレイ基板19とを備える。対向基板17は、図示しない配向膜及び柱状スペーサ等を備える。
【0016】
アレイ基板19は、図示しない薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極及び配向膜等を備える。アレイ基板19は、
図2に示すように、一対のオーバーコート層20a,20bと、一対のオーバーコート層20a,20bによって挟持されたインセル偏光子21と、一方のオーバーコート層20b上に配置され、遮光部22a及び量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22(以下、単に「カラーフィルター22」ともいう)と、カラーフィルター22上に配置されたガラス基板23とを備える。アレイ基板19には、カラーフィルター22とガラス基板23との間に薄膜トランジスタが設けられていてもよく、また、図示しない信号線(ソース)、走査線(ゲート)、共通電極及び画素電極等が適宜設けられていてもよい。さらに、薄膜トランジスタのチャネル部は、図示しないアモルファスシリコン層(半導体層)を有しており、これ以外にもより移動度の高いポリシリコン層(半導体層)でチャネル部を形成してもよい。
【0017】
このように、液晶表示装置1において、カラーフィルター22の量子ドットを含有する波長変換層22bに対して、量子ドットの発光に用いる励起光を発光するバックライトユニット11の光源のピーク波長を反射波長域に含む光反射層16が、観察者側に配置される。なお、ここでいう量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22は、例えば、特許文献3に記載の、吸収型カラーフィルター層と、量子ドットを含有する波長変換層とを組み合わせた色層、量子ドットを含有する波長変換層のみで作製されたカラーフィルター等であり、量子ドットを備えていれば特に制限はない。
【0018】
<量子ドット>
量子ドット(第1量子ドット及び第2量子ドット)は、半導体のナノメートルサイズの微粒子である。量子ドットは、電子及び励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子または半導体ナノ結晶とも呼ばれる。量子ドットは、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果を生じる材料であれば特に限定されない。量子ドットとして、例えば、自らの粒径によって発光色が制限される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子とがある。量子ドットしては、いずれの半導体微粒子も使用することができ、共に優れた色純度を得ることが可能である。
【0019】
量子ドットは、粒径により発光色を異にする。例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmの蛍光スペクトルのピーク波長は、それぞれ528nm、570nm、592nm、637nmである。なお、量子ドットは、波長変換層22b中に、例えば、光源からの励起光により励起され緑色光を発光する、すなわち緑色に相当する波長の二次光を放出する第1量子ドット、及び励起光により励起され赤色光を発光する、すなわち赤色に相当する波長の二次光を放出する第2量子ドットを含有してもよい。量子ドットの含有量は、量子ドットを含有する波長変換層22bの厚み、バックライトユニット11における光のリサイクル率、及び所望の色相等に応じて適宜調整される。
【0020】
量子ドットのコアとなる材料は、作製の容易性、可視光域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、適宜選択される。量子ドットのコアとなる材料として、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI属半導体化合物;AlN、AlP、AiAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII―V属半導体化合物;Si、Ge、及びPbのようなIV属半導体等の半導体化合物または半導体化合物を含有する半導体結晶等が挙げられる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドットとしては、上記半導体化合物にEu
3+、Tb
3+、Ag
+、Cu
+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶も用いることができる。
【0021】
カラーフィルター22が、光源からの励起光により青色光、緑色光、赤色光を発光する少なくとも3種の量子ドットをそれぞれ含有する波長変換層22bを備える場合には、バックライトユニット11の光源として、白色光源を用いることができる。白色光源としては、例えば、白色発光ダイオード(LED)が挙げられる。白色LEDとしては、例えば、青色LEDと黄色蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG))とを組み合わせたものが挙げられる。また、バックライトの光が青色表示と励起光を兼ねる場合、バックライトユニット11から青色励起光(ピーク波長450nm)を出射させ、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する2種類の量子ドットを含有する波長変換層22bを備える、すなわち、無色、緑色、赤色の3色を1つの画素として含むカラーフィルター22、を使用して、画像表示をすることも可能である。バックライトユニット11の光源のピーク波長は、350〜650nmであることが好ましい。
【0022】
<インセル偏光子>
インセル偏光子21は、例えば一対のオーバーコート層20a,20bに挟まれて、カラーフィルター22と液晶層18との間に配置される。インセル偏光子21は、例えば、ワイヤーグリッド型、塗布型偏光子、あるいは二色性色素を含有する延伸高分子を有する偏光子である。塗布型偏光子としては、例えば、二色性色素を直接配向させたクロモニック偏光子、ネマチック液晶またはスメクチック液晶状態をとることのできる重合性液晶に二色性色素を含有させ、重合性液晶と二色性色素とが配向した後にこれらの双方または一方の配向を固定化させたゲスト−ホスト型偏光子等が挙げられる。塗布型偏光子または二色性色素を含有する延伸高分子を有する偏光子の具体例としては、例えば、特許第6006210号公報に記載の偏光素子等が挙げられる。
【0023】
<カラーフィルター>
カラーフィルター22は、インセル偏光子21の外側、すなわち、液晶層18側とは反対側である観察者側に配置される。通常の液晶表示装置の場合、バックライト側偏光板13から入射する直線偏光を液晶層18の液晶分子の配向により制御し、対向する観察者側偏光板15の透過軸方向に一致する光のみを透過させることにより、画像が表示される。しかしながら、量子ドットにより発光した光は、全方位に散乱する散乱光であるため、2つの偏光板(偏光子)、すなわち、バックライト側偏光板13とインセル偏光子21との間にカラーフィルター22を配置した場合は、液晶によって制御された偏光が乱され、表示に大きな影響を与えてしまう。特に黒表示においては、コントラスト低下の大きな要因となる。したがってカラーフィルター22は、インセル偏光子21の外側、すなわち、液晶層18側とは反対側の位置に配置することが望ましい。
【0024】
<液晶表示モード>
液晶表示装置で使用する液晶表示モードには制限はない。液晶表示モードとしては、例えば、基板面に略垂直な電界を用いて液晶分子の配向をスイッチするTN方式(Twisted Nematic)、VA方式(Vertical Alignment)、また、基板面に略平行な電界を用いて液晶分子の配向をスイッチするIPS方式(In Plane Switching)、さらには、液晶を駆動するための電極が画素内で重畳しており、電極近傍のフリンジ電界により液晶分子をスイッチするFFS方式(Fringe Field Switching)等が挙げられる。
【0025】
<光反射層>
光反射層16は、太陽光等の外光がカラーフィルター22に入射することを低減する機能を有する。これにより、液晶表示装置1は、量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22の外光による発光を抑制し、表示画像の視認性を維持することができる。光反射層16は、量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源の波長域の光を反射することができれば特に制限はない。光反射層16は、効率よい外光の反射、液晶表示装置1からの出射光の効率よい取り出しのために、反射光または透過光が偏光となる偏光反射層であることが好ましい。偏光反射層としては、例えば、コレステリック液晶層、ワイヤーグリッド型偏光子、多層膜複屈折干渉型偏光子、プリズム型偏光子等の反射型偏光子が挙げられる。これら偏光反射層の透過軸と液晶表示装置1の観察者側偏光板15の透過軸とを一致させることにより、液晶表示装置1からの出射光の透過率の低下を抑制しつつ、効果的に外光を反射することができる。なお、これら偏光反射層は、少なくとも量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源のピーク波長を含む光を反射できるように適宜設計される。
【0026】
偏光反射層として、ワイヤーグリッド型偏光子、多層膜複屈折干渉型偏光子、プリズム型偏光子、コレステリック液晶層等の反射型偏光子を用いた場合、可視光域を広く反射すると表面が鏡のようになってしまう場合がある。そのような場合は、励起光の波長域を選択的に反射するよう、偏光反射層の反射波長域を調整することが望ましい。特にコレステリック液晶層は、特定波長域を選択的に反射する性質を有するので好適に用いられる。
【0027】
偏光反射層に用いられるコレステリック液晶は、キラリティを持つネマチック液晶またはネマチック液晶にカイラル剤を添加した配合物から得られる。コレステリック液晶は、カイラル剤の種類、量により、螺旋の向き、反射波長を任意に設計できることから、ネマチック液晶にカイラル剤を添加して得ることが好ましい。ネマチック液晶は、いわゆる電界で操作する液晶とは異なり、螺旋配向状態を固定化して使用される。そのため、ネマチック液晶は、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いて得ることが好ましい。
【0028】
(重合性液晶モノマー)
重合性基を有するネマチック液晶モノマーは、分子内に重合性基を有し、ある温度範囲または濃度範囲で液晶性を示す化合物である。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコニル基、シンナモイル基及びエポキシ基などが挙げられる。また、液晶性を示すためには分子内にメソゲン基があることが好ましく、メソゲン基とは、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基及びアセナフトキノキサリン基等のロッド状または板状の置換基、あるいは、トリフェニレン基、フタロシアニン基及びアザクラウン基等の円盤状の置換基、即ち液晶相挙動を誘導する能力を有する基を意味する。ロッド状または板状の置換基を有する液晶化合物は、カラミティック液晶として当該技術分野で既知である。このような重合性基を有するネマチック液晶モノマーは具体的には、特開2003−315556号公報及び特開2004−29824号公報に記載の重合性液晶、PALIOCOLORシリーズ(BASF社製)、RMMシリーズ(Merck社製)等が挙げられる。これら重合性基を有するネマチック液晶モノマーは、単独でも、あるいは複数混合して用いることができる。
【0029】
(カイラル剤)
カイラル剤としては、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーを右巻きまたは左巻き螺旋配向させることができ、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと同様に重合性基を有する化合物が好ましい。そのようなカイラル剤としては、例えば、Paliocolor LC756(BASF社製)、特開2002−179668号公報に記載されている化合物等が挙げられる。このカイラル剤の種類により、反射する円偏光の向きが決まり、さらには、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量に応じて、光反射層の反射波長を変えることができる。例えば、カイラル剤の添加量を多くするほど、短波長側の波長を反射する光反射層16を得ることができる。カイラル剤の添加量は、カイラル剤の種類と反射させる波長によっても異なる。カイラル剤の添加量としては、通常光に対する光反射層16の中心反射波長λ2を、所望の波長領域に調整する観点から、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下程度が好ましく、1質量部以上20質量部以下程度がより好ましく、3質量部以上10質量部以下程度がさらに好ましい。
【0030】
(紫外線硬化型樹脂)
さらに、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと反応可能な液晶性を有しない重合性化合物を使用することも可能である。そのような化合物としては、例えば、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロン−ジ−イソシアネートとの反応生成物等のエステル系ウレタンアクリレート系樹脂及びウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、プロピレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−ジ−(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサンジオール−ジ−(メタ)アクリレート、グリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールA−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの紫外線硬化型樹脂は、単独でもあるいは複数混合して用いることができる。これらの中でも、紫外線硬化型樹脂としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エステル系ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂及びウレタン(メタ)アクリレート系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。これら液晶性を持たない紫外線硬化型樹脂は、液晶性を失わない程度に添加する。紫外線硬化型樹脂の添加量は、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、1.0質量部以上10質量部以下程度がより好ましい。
【0031】
(光重合開始剤)
重合性基を有するネマチック液晶モノマー及び他の重合性化合物が紫外線硬化型である場合、これらを含んだ組成物を紫外線により硬化させるために、光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(BASF社製、イルガキュアー907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、イルガキュアー184)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(BASF社製、イルガキュアー2959)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製、ダロキュアー953)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製、ダロキュアー1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製、イルガキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASF社製、イルガキュアー651)等のベンゾイン系化合物;ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬社製、カヤキュアーMBP)等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬社製、カヤキュアーCTX)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬社製、カヤキュアーRTX)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロオチオキサントン(日本化薬社製、カヤキュアーCTX)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、カヤキュアーDETX)、または2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬社製、カヤキュアーDITX)等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。好ましくは、例えば、Irgacure TPO、Irgacure TPO−L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 379、Irgacure 819、Irgacure 127、Irgacure 907及びIrgacure 1173(いずれもBASF社製)が挙げられ、特に好ましくはIrgacure TPO、Irgacure TPO−L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300及びIrgacure 907が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種類でも複数でも任意の割合で混合して使用することができる。
【0032】
光重合開始剤としてベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物を用いる場合には、光重合反応を促進させるために、助剤を併用することも可能である。そのような助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’―ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、または4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物が挙げられる。これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
光重合開始剤及び助剤の添加量は、ネマチック液晶モノマーを含む組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましく。これらの添加量は、当該組成物中の紫外線で硬化する化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下程度がより好ましい。また、助剤の添加量は、光重合開始剤に対して、0.5倍以上2倍量以下程度が好ましい。
【0034】
(その他の添加剤)
紫外線硬化型樹脂を使用する場合は、必要に応じて、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、熱線遮蔽微粒子、表面調製剤、各種染料、顔料、蛍光色素等の各種添加剤をさらに使用してもよい。
【0035】
コレステリック液晶を用いて偏光反射層を作製する方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーに、所望とする波長を反射するように右巻きまたは左巻き螺旋配向となるカイラル剤を必要量添加する。次に、これらを溶剤に溶解し、光重合開始剤を添加する。このような溶剤は、使用する液晶モノマー、カイラル剤等を溶解できれば、特に限定されるものではないが、例えば、シクロペンタノン、アニソール、メチルエチルケトンが好ましい。その後、この溶液をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、アクリル系フィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱にて溶剤を除去させながら、基板上でコレステリック液晶となって所望の螺旋ピッチで配向するような温度条件で一定時間放置させる。このとき、プラスチック基板表面を塗布前にラビングまたは延伸等の配向処理をしておくことで、コレステリック液晶の配向をより均一にすることができ、偏光反射層としてのヘイズ値を低減することが可能となる。次いで、この配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等で紫外線を照射し、配向を固定化させることにより、偏光反射層が得られる。ここで、右巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる偏光反射層は右回り円偏光を選択的に反射し、一方で、左巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層は、左回り円偏光を選択的に反射する。この特定の円偏光を選択的に反射する現象を選択反射といい、選択反射している波長帯域を選択反射領域という。また、用いるプラスチック基板は、液晶表示装置1の観察者側になるように配置して用いることで、光反射層16の保護層として用いることもできる。さらに、保護層としての強度を高めるために、プラスチック基板の光反射層16とは反対側の面にハードコート層を形成してもよい。
【0036】
光反射層16の反射率は、光反射層作製時における光反射層16の厚さを変えることで適宜調整することができる。光反射層16の反射率は、対象となる外光の励起光波長に対して、10%以上100%以下が好ましく、20%以上100%以下がより好ましく、30%以上100%以下がさらに好ましい。偏光反射層としてコレステリック液晶を用いる場合は、右巻き螺旋配向、左巻き螺旋配向それぞれの光反射層16の最大反射率が50%であるために、それぞれの配向を有するコレステリック液晶層を積層して用いれば、外光からの励起光を理論上最大で100%反射することが可能となる。
【0037】
偏光反射層として右巻き螺旋配向コレステリック液晶層と左巻き螺旋配向コレステリック液晶層の両方を積層して用いると、反射率によっては外光を反射しすぎる場合がある。そのような場合は、右巻き螺旋配向コレステリック液晶層または左巻き螺旋配向コレステリック液晶層のいずれかを用いることが好ましい。そして、
図3に示すように、観察者側偏光板15とコレステリック液晶層である光反射層16との間に、1/4波長板24を観察者側偏光板15の偏光軸(吸収軸または透過軸)と、1/4波長板24の遅相軸とのなす角が45°となるように配置すればよい。このとき、遅相軸の向きは、コレステリック液晶層を透過した円偏光(例えば、コレステリック液晶層が右巻き螺旋配向の場合は、反射光は右回り円偏光となり、透過光は左回り円偏光となる)が、1/4波長板24により直線偏光に変換されたときに、その直線偏光の偏光軸が観察者側偏光板15の吸収軸と一致するように配置することが好ましい。このように配置することで、外光に含まれる励起光は、コレステリック液晶層で最大で50%反射され、さらにコレステリック液晶層を透過した残りの円偏光は、1/4波長板24で直線偏光に変換されて観察者側偏光板15により吸収される。その結果、カラーフィルター22に対する外光に含まれる励起光の入射を大幅に抑制することができる。
【0038】
また、右巻き螺旋および左巻き螺旋のいずれかのコレステリック液晶層を用いた場合には、
図3に示すように、観察者側偏光板15とコレステリック液晶層である光反射層16との間に、1/4波長板24を配置する。ここでは、観察者側偏光板15の偏光軸(吸収軸または透過軸)と、1/4波長板の遅相軸とのなす角が45°となるように配置すればよい。このとき、観察者側偏光板15の遅相軸の配置は、観察者側偏光板15から出た直線偏光が1/4波長板24で円偏光になる際に、光反射層16が反射する円偏光の回転方向とは逆回りの円偏光となるように配置することが好ましい。このように配置することで、観察者側偏光板15から出た直線偏光は、1/4波長板24で円偏光に変換される。これにより、変換された円偏光は、コレステリック液晶層である光反射層16によって反射されることがなく観察者に到達し、同時に外光に含まれる励起光波長の光も反射されるため、外光による量子ドットの発光を低減することができる。
【0039】
光反射層16の反射波長は、バックライトユニット11の光源が発光する量子ドットの発光のための励起光の波長域の全体または一部を含むように適宜調整される。光反射層16の反射波長域は、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長を含む。光反射層16の中心反射波長は、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長との差の絶対値が、例えば、0nm以上70nm以下であることが好ましく、0nm以上50nm以下であることがより好ましく、0nm以上30nm以下であることがさらに好ましく、0nm以上20nm以下であることが特に好ましい。また、光反射層16の中心反射波長は、350nm以上750nm以下であることが好ましい。例えば、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長が380nmである場合には、光反射層16の中心反射波長は、350nm以上450nm以下であることが好ましく、360nm以上400nm以下であることがより好ましい。また、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長が450nmの場合は、光反射層16の中心反射波長は、400nm以上500nm以下であることが好ましく、430nm以上480nm以下であることがより好ましい。また、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長が550nmの場合は、光反射層16の中心反射波長は、500nm以上600nm以下であることが好ましく、530nm以上580nm以下であることが好ましい。バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長が650nmの場合は、光反射層16の中心反射波長は、600nm以上750nm以下であることが好ましく、630nm以上680nm以下であることがより好ましい。なお、中心反射波長とは、光反射層16の最大反射率の80%に相当する短波長側の波長と長波長側の波長との平均となる波長を意味する。例えば、光反射層16の最大反射率が20%であった場合、最大反射率の80%に相当する16%の反射率を示す短波長側の波長をλ1、長波長側の波長をλ3とすると、下記式(1)で示されるλ2が中心反射波長となる。
【0041】
光反射層16は、1層に限定されるものではなく、2層以上の複数の層が積層されていてもよい。例えば、励起光の波長に幅がある場合、光反射層16の反射帯域が不十分であることがある。このような場合は、異なる中心反射波長を有する複数の光反射層16を積層することにより、広い帯域で外光を反射することができる。また、光反射層16がコレステリック液晶層を含む場合、液晶の複屈折率によっては十分な反射帯域を確保できない場合がある。このような場合は、例えば、中心反射波長が400nm以上500nm以下、500nm以上600nm以下、600nm以上750nm以下の異なる中心反射波長を有する複数のコレステリック液晶層を積層するか、または、コレステリック液晶の螺旋ピッチを連続的に変化させて、1層の光反射層16で反射帯域を拡げてもよい。
【0042】
また、コレステリック液晶層の反射波長域は、光の入射角度が斜め方向に傾くにつれて短波長側へシフトする性質がある。そのため、コレステリック液晶層は、外光の入射角度が液晶表示装置1の表示面に対して斜め方向となる場合は、その角度に応じて、中心反射波長を予め長波長側に調整しておくことで、より効果的な外光反射が可能となる。この場合、例えば、外光の入射角度が20°以上50°以下である場合は、光反射層16の中心反射波長は、励起光のピーク波長よりも20nm以上80nm以下程度、長波長側にあることが好ましく、20nm〜50nm程度長波長側にあることがより好ましい。具体的には、バックライトユニット11の光源からの励起光のピーク波長が450nmであり、外光の入射角度が20°以上50°以下である場合、コレステリック液晶層の中心反射波長が470nm以上530nm以下であることで、外光に含まれる励起光波長(450nm)をより効果的に反射することができる。また、例えば、中心反射波長が400nm以上500nm以下、500nm以上600nm以下、600nm以上750nm以下の異なる中心反射波長を有する複数のコレステリック液晶層を積層するか、または、コレステリック液晶の螺旋ピッチを連続的に変化させて、1層の光反射層16で反射帯域を拡げておくことで、太陽光の入射角度を考慮したコレステリック液晶層の反射波長域の調整をすることなく、太陽光に含まれる励起光のピーク波長を効果的に反射できる。
【0043】
コレステリック液晶層のように、特定波長のみが反射すると、透過光が着色する場合がある。このような場合には、液晶表示装置1から出射される発光スペクトルを調整して画像の色再現性を調整すればよい。このような方法としては、例えば、カラーフィルター22からの青色光、緑色光、及び赤色光のそれぞれの発光強度を調整する方法が挙げられる。また、光反射層16の反射率、ヘイズ等を調整して透過光の色味をニュートラルに調整してもよい。光反射層16のヘイズ値は、光反射性及び透過光のニュートラル性を両立できる観点から、0.5%以上5.0%以下であることが好ましく、0.8%以上3.0%以下であることがより好ましい。また、液晶表示装置1は、光反射層16の前面または背面に表示画像の色再現性を調整するための光吸収層をさらに配置してもよい。
【0044】
(偏光板)
観察者側偏光板15は、ヨウ素及び染料等の二色性色素が一方向に配向することによって、特定方向の偏光を吸収する偏光素子である。一般的には、ポリビニルアルコールフィルムに上記二色性色素を含浸させたのち、ホウ酸水溶液中で一軸延伸することによりこのような偏光素子を得ることができる。用いるヨウ素−ポリビニルアルコール錯体の状態、用いる二色性染料の配合比率等によって、偏光素子の色相を調整することができる。このため、観察者側偏光板15は、色相を調整することにより、上記表示画像の色再現性調整にも用いることができる。なお、通常、偏光素子は機械的強度に劣るため、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー等の透明プラスチックフィルムで挟持することで偏光素子を保護する。
【0045】
(1/4波長板)
1/4波長板24は、円偏光を直線偏光に変換する機能をもつ位相差素子である。1/4波長板24は、例えば、ポリカーボネートまたはシクロオレフィンポリマーから作製されたフィルムを、位相差が波長の1/4となるように一軸延伸するか、または水平配向する重合性液晶を、位相差が波長の1/4となるような厚さで配向させることによって得ることができる。1/4波長板24は、単独で用いてもよく、波長分散による位相差のずれが大きい場合には、広帯域1/4波長板と呼ばれる位相差素子を用いてもよい。広帯域1/4波長板とは、位相差の波長依存性が低減した位相差素子であり、例えば、同じ波長分散をもつ1/2波長板と1/4波長板とをそれぞれの遅相軸のなす角が60°となるように積層した位相差素子、または、位相差の波長依存性を低減したポリカーボネート系位相差素子(帝人社製、ピュアエースWR−S)等が挙げられる。1/4波長板24は、通常、偏光の入射角度によって位相差値が変化するため、使用される環境等に応じて、予め位相差値を調整しておくか、または、位相差素子の屈折率を調整した位相差素子を用いることにより、入射角に伴う位相差の変化を抑制することができる。そのような例としては、位相差素子の面内での遅相軸方向の屈折率をnx、面内でnxと直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとするとき、下記式(2)で示されるNz係数が、好ましくは0.3以上1.0以下、より好ましくは0.5以上0.8以下程度となるように制御する。
【0046】
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) 式(2)
【0047】
1/4波長板24の位相差値は、対象とする励起光のピーク波長の1/4程度であることが好ましく、具体的には、90nm以上125nm以下であることが好ましい。例えば、励起光のピーク波長が400nmである場合、1/4波長板24の位相差値は、90nm以上110nm以下程度が好ましく、励起光のピーク波長が450nmである場合には、1/4波長板24の位相差値は、100nm以上125nm以下程度が好ましい。また、広帯域1/4波長板のように、各波長に対して1/4波長板として機能するような位相差素子は、波長毎に調整する必要もなくなるため、特に好ましい。広帯域1/4波長板とは、位相差の波長依存性が低減した位相差素子であり、例えば、同じ波長分散をもつ1/2波長板と1/4波長板とをそれぞれの遅相軸のなす角が60度となるように積層した位相差素子、位相差の波長依存性を低減したポリカーボネート系位相差素子(帝人社製、ピュアエースWR−S)、特許第6133456号公報の実施例7等に記載される重合性液晶を用いた位相差素子等が挙げられる。
【0048】
光反射層16は、外光を反射することで、外光による量子ドットの発光を抑制する。一方、光反射層16の反射による眩しさ、周辺の映り込み等がある場合には、例えば、
図4に示すように、液晶表示装置1は、光反射層16の観察者側の最表面に直接または間接的に反射防止層25を配置することも可能である。反射防止層25としては、高屈折率層と低屈折率層とを所定の膜厚で積層したいわゆる反射防止膜(AR)、バインダー中に光を散乱する微粒子を分散させて、表面に微細な凹凸を設けて光を散乱させるいわゆるアンチグレア層(AG)等が挙げられる。反射防止層25には、光反射層16がコレステリック液晶層の場合、光反射層16の表面に反射防止層25を配置しても、外光の反射機能は維持される。そのため、このような場合、反射防止層25を使用することが好ましい。反射防止層25を配置する方法としては、TACフィルム、COPフィルムのような位相差の少ない透明プラスチックフィルム上に、反射防止層25を形成し、次いで光反射層16に粘着剤または接着剤等を用いて積層する方法、光反射層16上に直接反射防止層25を形成する方法等が挙げられる。
【0049】
(他の位相差フィルム)
観察者側偏光板15とアレイ基板19もしくはバックライト側偏光板13と対向基板との間、あるいはいずれの間には、必要に応じて視野角改良のための位相差フィルムを配置してもよい。位相差フィルムは、液晶表示方式によって異なるものを使用してもよい。位相差フィルムとしては、液晶表示モードがTN方式である場合には、ハイブリッド配向させたディスコティック液晶層を有する位相差フィルム(この場合、バックライト側偏光板13と対向基板17との間にも配置する)、VA方式である場合には、Negative−C−Plateと呼ばれる位相差フィルム、IPS方式である場合には、Negative−A−PlateまたはA−PlateとPositive−C−Plateの積層体等が好適に用いられる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、画面表示装置が有機ELディスプレイ(OLED)である場合について説明する。有機ELディスプレイは、量子ドットを含有する波長変換層を有する一般的な有機ELディスプレイにおいて、量子ドットの発光に用いる励起光を発光する光源のピーク波長を反射波長域に含む光反射層を、量子ドットを含有する波長変換層より観察者側に配置することにより得ることができる。
【0051】
例えば、
図5に示されるように、有機ELディスプレイ2は、反射防止層25、光反射層16、1/4波長板24、円偏光板28、ガラス基板23b、遮光部22a及び量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22、有機EL層27、薄膜トランジスタ(TFT)26、及びガラス基板23aを、観察者側からこの順に備える。
図5において、
図1〜4に示す液晶表示装置1と共通する構成要素については同一の符号を付し、その機能も同一であるものとする。すなわち、第1の実施形態で説明した、光反射層16、遮光部22a及び量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22、ガラス基板23、1/4波長板24及び反射防止層25は、有機ELディスプレイ2でも同様に使用することができ、これらの機能も同一であるものとする。薄膜トランジスタ26上に形成された発光層でもある有機EL層27は、青色光のみを発光する。この青色光は、カラーフィルター22の波長変換層22bに含まれる量子ドットの励起光と同じ波長(例えば450nm)を有する。第1の実施形態で示した液晶表示装置1と同様に、量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22は、無色、緑色、赤色の3色を1つの画素として含み、緑色及び赤色の画素は量子ドットを含有する波長変換層22bを備えている。また、観察者側には、任意の構成として円偏光板28を備える。一般的な有機ELディスプレイでは、外光に含まれる励起光により、カラーフィルター22が発光する恐れがある。しかしながら、第1の実施形態で上述した光反射層16を、カラーフィルター22に対して外光が入射する側に、具体的には、ディスプレイ最前面に配置することにより、太陽光などの外光がディスプレイのカラーフィルター22に入射することを低減し、視認性に優れた表示が可能となる。また、円偏光板28を配置した場合、第1の実施形態で示した液晶表示装置1と同様、光反射層16と円偏光板28との間に1/4波長板24を適切に配置することで、円偏光板28からの出射光を光反射層16で反射させることなく、出射させることができる。さらには、最表面には任意の構成として反射防止層25が配置されていてもよい。その他の構成については、上述した第1の実施の形態と同一であるため説明を省略する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により、本発明を詳細に例示する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。また、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
【0053】
[実施例1]
<光反射層の作製>
以下の手順により光反射層を作製し、得られた光反射層と1/4波長板とを積層して、積層体を得た。
【0054】
(1)表1に示す組成の塗布液(R1)を調製した。
(2)プラスチック基板として特開2002−90743号公報の実施例1に記載された方法で面を予めラビング処理された下塗り層がない東洋紡績社製PETフィルム(商品名A4100、厚さ50μm)を準備した。このPETフィルムのラビング処理面上に、ワイヤーバーを用いて、乾燥後に得られる光反射層の厚みが4μmになるように、塗布液を室温にて塗布した。
(3)塗布膜を、150℃にて5分間加熱して溶剤を除去するとともに、コレステリック液晶相とした。次いで、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製)を120W出力にて、5〜10秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、PETフィルム上に光反射層を得た。
(4)(2)〜(3)にて作製した、PETフィルム上の光反射層と、480nmにおける位相差値が115nmである1/4波長板(帝人社製、ピュアエースWR−S)とを、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、アクリル粘着剤SKダイン906)を用いて積層し、積層体を得た。
(5)PETフィルムを剥離した。
【0055】
<光反射層の評価>
得られた光反射層の可視光領域における反射率を、分光光度計(フィルメトリクス社製、F20−UVX)を用いて測定した結果、中心反射波長は450nm(半値幅は123nm)であり、中心反射波長における反射率は47%であった。
【0056】
塗布液(R1)の組成を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[実施例2〜6]
<光反射層の作製>
表2に示した塗布液(R2)〜(R6)を調整し、実施例1と同様にして、厚さが約1μmの光反射層と、1/4波長板との積層体を作製した。
【0059】
塗布液(R2)〜(R6)の組成を下記表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示される紫外線硬化型樹脂および添加剤A、Bは以下のとおりである。
・「ブレンマーLA」:ラウリルアクリレート(Mw.240.4)
・「DPHA」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、(Mw.578)
・UX−5000:エステル系ウレタンアクリレート系樹脂、(Mw.1,500)
・DPHA−40H:ウレタンアクリレート系樹脂(Mw.2,000)
・添加剤A:ポリアクリレート系表面調整剤
・添加剤B:ナフタルイミド系蛍光色素
【0062】
<光反射層の評価>
得られた光反射層の中心反射波長、半値幅、中心反射波長における反射率、ヘイズ値及び光反射層透過色の色味を示すb*値を測定した。結果を表3に示す。なお、ヘイズ値は、ヘイズメーター(東京電色社製、TC−HIII)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。b*値は、色差計(コニカミノルタ社製、CM2600d)を用いて、JIS Z8730:2009に準拠して測定した。
【0063】
【表3】
【0064】
<液晶表示装置の作製>
液晶表示装置を、
図1及び
図2に示される構成になるように作製した。アレイ基板19は、ガラス基板23上に、薄膜トランジスタ、信号線、走査線、量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22、オーバーコート層20a,20bに挟持されたインセル偏光子21、共通電極及び画素電極を配置して作製した。信号線上に、絶縁膜を介して、量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22を配置した。なお、量子ドットとしては、技術文献:Journal of American Chemical Society.2007, 129, 15432−15433の記載に準じて、励起光のピーク波長が450nmであって、蛍光スペクトルのピーク波長が637nmのInP/ZnSコアシェル型量子ドット、及び蛍光スペクトルのピーク波長が528nmのInP/ZnSコアシェル型量子ドットを作製することができる。本実施例では、特開2017−21322号公報の実施例の記載に準じて、各量子ドット分散体と感光性樹脂との混合物を含む組成物を作製し、それぞれの組成物をスピンコーティング法でガラス基板上へ塗布した後、加熱、続いて1μm以上100μm以下のライン/スペースパターンを有するフォトマスクを用いて紫外線を照射した。次いで、現像液で現像、洗浄することにより、無色、緑色、赤色の3色を1つの画素として含むカラーフィルター22を得た。作製した液晶表示装置1では、量子ドットを含有するカラーフィルター22上に絶縁膜を介して、一対のオーバーコート層20a,20bに挟持されたインセル偏光子21を配置した。また、インセル偏光子21のオーバーコート層20a上には、絶縁膜を介して共通電極と、共通電極上に絶縁膜を介して画素電極とをさらに配置した。共通電極及び画素電極は、透明性及び導電性に優れたITO(Indium Tin Oxide)で構成されていた。信号線と走査線とは互いに交差しており、交差部の近傍には薄膜トランジスタを有し、画素電極と一対一に対応していた。画素電極に、薄膜トランジスタとコンタクトホールを介して信号線より画像信号に対応した電位が付与し、また、薄膜トランジスタの動作を、走査線の走査信号により制御した。液晶表示装置1は、画素電極の液晶層18に近接する側に図示しない第一の配向膜を備えていた。第一の配向膜は、ポリイミド系の高分子であり、光配向またはラビング処理により、所定の方向に配向処理されていた。
【0065】
対向基板17は、ガラス基板上の液晶層18に近接する側に、図示しない柱状スペーサと第二の配向膜とを設けて作製した。第二の配向膜は、第一の配向膜と同様にポリイミド系の高分子であり、光配向またはラビング処理により、所定の方向に配向処理されていた。上記アレイ基板19と対向基板17とを組み立て、両者の間隙は、対向基板17に配置した柱状スペーサで均一に維持した。この間隙に液晶を封入して、液晶層18を作製した。
【0066】
対向基板17のバックライトユニット11側には、バックライト側偏光板13を配置した。バックライト側偏光板13と対向基板17とは、アクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、バックライト側偏光板13の吸収軸とインセル偏光子21との吸収軸とが直交するように配置した。さらに、アレイ基板19の観察者側にアクリル系粘着剤を用いて観察者側偏光板15を貼り合せた。ここでは、観察者側偏光板15の吸収軸とインセル偏光子21の吸収軸とが平行になるように配置した。さらに、観察者側偏光板15の観察者側に、1/4波長板24と、プラスチック基板を観察者側になるように配置した光反射層16との上記積層体を、観察者側偏光板15と光反射層16との間に1/4波長板24が配置されるようにアクリル系粘着剤を用いて積層した。ここでは、観察者側偏光板15の吸収軸と、1/4波長板24の遅相軸とのなす角が45°になるように積層した。
【0067】
バックライトユニット11は、光源に青色LED(発光時のピーク波長は約450nm)を用いている市販の液晶表示装置と同じものを使用した。バックライトユニット11は、エッジライト型であり、導光板の下方に反射板、導光板の上方には拡散シート、プリズムシート2枚を備えていた。なお、2枚のプリズムシートは、それぞれのストライプラインは直交していた。以上のように、液晶表示ユニット12とバックライトユニット11とを組み合わせることで、実施例1〜6の液晶表示装置1を作製した。
【0068】
<表示画像の評価>
作製した実施例1の液晶表示装置1を室内の窓際に配置し、表示画像の視認性を目視で観察した。実施例1の液晶表示装置1では、太陽光が窓から液晶表示装置1の表示面から約30°傾けた方向から入射した場合であっても、光反射層16により太陽光に含まれる励起波長をカットしたため、量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22の外光による発光を抑制することができた。その結果、液晶表示装置1の表示画像の視認性を大幅に向上することが可能であった。さらに、実施例2〜6で作製した液晶表示装置1では、光反射層16の透過の黄色味が少ないため、外光による量子ドットを含有する波長変換層22bを備えるカラーフィルター22の発光を抑制しつつ、表示画像の表示色への影響を大幅に低減することができた。
【0069】
[比較例]
図1における光反射層16を配置しないこと以外は、実施例1と同様の液晶画像表示装置を作製した。この液晶画像表示装置を実施例1と同様に室内の窓際に配置し、同様に観察した。量子ドットを含有する波長変換層を備えるカラーフィルターは、外光による発光を抑制することができず、その結果、液晶表示装置1の表示画像の視認性が大幅に低下した。
【0070】
以上の結果より、本発明に係る画像表示装置は、外光がある環境下でも、視認性に優れた表示画像を実現することができる。特に、本発明に係る画像表示装置は、量子ドットの励起光の波長を含む外光をより効果的にカットし、画像表示装置からの出射光の明るさを維持しつつ、外光のみを効率よく反射できる。