(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記喫煙物品用の紙は、前記セルロース繊維、前記セルロースナノファイバー、及び前記充填剤粒子の合計の重量に対して、前記セルロースナノファイバー2重量%〜32重量%を添加して抄紙されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の喫煙物品用の紙。
前記喫煙物品用の紙は、前記セルロース繊維、前記セルロースナノファイバー、及び前記充填剤粒子の合計の重量に対して、前記セルロースナノファイバー4重量%〜13重量%を添加して抄紙されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の喫煙物品用の紙。
前記セルロースナノファイバーは、繊維径が50nm以下であり、2%水溶液での粘度が1000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の喫煙物品用の紙。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る喫煙物品用の紙を詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る喫煙物品用の紙は、セルロース繊維を含み、セルロースナノファイバー及び一次粒子の平均粒径が1μm以下の吸着剤又は触媒である充填剤粒子を添加して抄紙されている。
【0014】
一般的に、紙は、セルロース繊維を懸濁させた湿紙を漉き合わせて、乾燥させることによって抄紙することができる。湿紙では、セルロース繊維間は水分子を介した緩やかな水素結合を形成しており、乾燥するにつれてセルロース繊維同士が近接されていく。その結果、乾燥した紙では、セルロース繊維同士が直接水素結合によって接合している。
【0015】
一方、湿紙に対して充填剤粒子をさらに添加して抄紙すると、充填剤粒子がセルロース繊維間の水素結合の形成を阻害する。その結果、充填剤粒子を添加して抄紙された紙では、充填剤粒子が添加されずに抄紙された紙と比較して、セルロース繊維同士の直接の接合が弱まり、セルロース繊維間の空隙が増加する。そのため、充填剤粒子を添加して抄紙された紙では、製造時に充填剤粒子が脱落しやすく、引張強度が低下し、通気度が増加する傾向がある。しかし、巻紙等の喫煙物品用の紙では、香喫味を損ねず、シガレット製造時に要求される強度と取扱性とを有するために通気度及び引張強度を適切な範囲にすることが要求されるため、充填剤粒子を添加し、抄紙された紙において通気度の増加及び引張強度の低下を抑制することが必要となる。これらの問題は、抄紙の際に添加される充填剤粒子の一次粒子の平均粒子径が小さいほど、また充填剤粒子の量が多いほど顕著に生じる。
【0016】
また、充填剤粒子の脱落を防止するため、湿紙に対して増粘多糖類等の結着剤をさらに添加して抄紙することが考えられるが、結着剤が充填剤粒子の表面を被覆して吸着剤又は触媒としての機能を低下させる傾向があるため好ましくない。
【0017】
本実施形態に係る喫煙物品用の紙では、湿紙に対して充填剤粒子に加えて、セルロースナノファイバーをさらに添加して抄紙されるものである。このような紙では、セルロースナノファイバーが、セルロース繊維間を橋渡しするように水素結合で接合することで、セルロース繊維間の水素結合を補強することができる。そのため、充填剤粒子及びセルロースナノファイバーを添加して抄紙されている紙では、充填剤粒子のみが添加して抄紙されている紙と比較して、紙の引張強度の低下が抑制される。また、セルロースナノファイバーの存在によって、セルロース繊維間の空隙が縮小するため、紙の通気度の増加が抑制され、製造時に充填剤粒子の脱落が生じにくくなり、歩留まりが向上する。なお、セルロースナノファイバーは、充填剤粒子の表面を被覆するものではないため、充填剤粒子の吸着剤又は触媒としての効果を妨げない。すなわち、本実施形態に係る喫煙物品用の紙は、セルロース繊維とセルロースナノファイバーとの混抄紙であって、その内部に充填剤粒子が担持されている紙である。
【0018】
本実施形態の喫煙物品用の紙によれば、平均粒子径が小さい充填剤粒子を用いても製造時の充填剤粒子の脱落が抑制される。そのため、本実施形態の喫煙物品用の紙では、従来のものと比較して、平均粒子径がより小さい充填剤粒子を、より多く抄紙の際に添加させることが可能になる。その結果、本実施形態の喫煙物品用の紙によれば、主流煙中の不要な化学成分、例えば一酸化炭素、ホルムアルデヒドに代表される低級アルデヒド類、窒素酸化物、タールなどの成分を、より効果的に除去することが可能になる。また、通気度の増加及び引張強度の低下を抑制することができるため、喫煙物品用の紙に求められる物性に応じてそれらを調節することができる。
【0019】
以下に、セルロース繊維、セルロースナノファイバー及び充填剤粒子について詳細に説明する。
【0020】
1)セルロース繊維
セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、通常の喫煙物品の巻紙に使用されている針葉樹パルプ繊維若しくは広葉樹パルプ繊維等の木材パルプ繊維、亜麻パルプ繊維、大麻パルプ繊維、又はサイザル麻パルプ繊維等、又はこれらの混合物を用いることができる。セルロース繊維は、例えば、喫煙物品用の紙において、通気度を確保しつつ、引張強度の低下を抑制するため10gsm〜40gsm含有することが好ましい。セルロース繊維は、例えば、体積平均繊維長1478μmである亜麻パルプ繊維をショッパー・リーグラ濾水度が60°SRとなるように叩解して使用される。
【0021】
2)セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーは、平均繊維径Dが1μm以下であり、繊維長LがL/D>100を満足するものである。セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、5nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜50nmである。セルロースナノファイバー2重量%水溶液での粘度は、例えば、500mPas〜8000mPasであり、好ましくは1000mPas以上、より好ましくは6000mPas〜8000mPasである。セルロースナノファイバーの水溶液の粘度は、セルロースナノファイバーの平均繊維長が長いほど増加するため、セルロースナノファイバーの平均繊維長の目安として使用される。この粘度は、回転式粘度測定法による25℃で回転速度60rpmでの測定値である。このようなセルロースナノファイバーの例としては、株式会社スギノマシン製のバイオマスナノファイバーであるビンフィス(登録商標)が挙げられる。
【0022】
セルロースナノファイバーの作製方法は、特に限定されず、当業者に既知の作製方法によって作製することができる。長繊維のセルロースナノファイバーの作製方法としては、例えば、高分子相互配列体繊維法、剥離型複合紡糸法、改良型従来式紡糸法、スーパードロー法、及びレーザー延伸法が挙げられる。短繊維のセルロースナノファイバーの作製法としては、例えば、メルトフロー法(ジェット紡糸法)、フラッシュ紡糸法、叩解法、混合紡糸法、タック紡糸法、発泡シート化法、バクテリア法、金属核炭化水素高温加熱法、鋳型法、及び電解紡糸法が挙げられる。
【0023】
喫煙物品用の紙において、セルロースナノファイバーを添加して抄紙されていることは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して喫煙物品用の紙を分析することで判定できる。
【0024】
3)充填剤粒子
充填材粒子は、触媒又は吸着剤であり、主流煙中に含まれる不要な化学成分を分解又は吸着するものである。触媒としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物等を用いる事ができ、金属酸化物、金属水酸化物としては、B、Al、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Ce、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素の酸化物もしくは水酸化物が用いられる。吸着剤としては、例えば、多孔性材料、イオン交換樹脂、粘土鉱物が挙げられ、特に好ましい例としては活性炭、シリカ、アルミナ、チタニア、アルミノシリケート、ゼオライト、メソポーラスシリカ、ハイドロタルサイト、セピオライトならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0025】
ハイドロタルサイト類化合物は、層状の結晶が積層した構造を有しており、下記一般式:M
2+1−xM
3+x(OH)
2(A
n−)
x/n・mH
2O(ここで、M
2+はMg、Zn、Ni及びCaからなる群より選択される2価の金属イオン、M
3+はAlイオン、A
n−はCO
3、SO
4、OOC−COO、Cl、Br、F、NO
3、Fe(CN)6
3−、Fe(CN)6
4−、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アルケニル酸及びその誘導体、リンゴ酸、サリチル酸、アクリル酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸ならびにスルホン酸からなる群より選択されるn価のアニオンであり、0.1<x<0.4、0<m<2である)で表される。
【0026】
充填剤粒子は、一次粒子の平均粒子径(メディアン径(d
50))が1μm以下であり、好ましくは10nm〜500nmであり、より好ましくは10nm〜100nmである。充填剤粒子の一次粒子の平均粒子径がより小さいと、充填剤粒子の比表面積が増加し、充填剤粒子による主流煙中の不要な化学成分の吸着又は分解の効果が向上するため好ましい。一方、充填剤粒子の一次粒子の平均粒子径が10nm未満であると、喫煙物品用の紙の製造時の充填剤粒子の飛散が生じやすいため好ましくない。なお、「一次粒子」とは、外見上の幾何学的な形態から判断して単位粒子であるものを示し、対して「二次粒子」とは、多数の一次粒子が凝集して形成された集合体を示す。
【0027】
充填剤粒子は、例えば、喫煙物品用の紙において2重量%〜60重量%含有することが好ましく、より好ましくは10重量%〜45重量%、さらに好ましくは25重量%〜35重量%含有している。充填剤粒子の坪量が2重量%未満であると、充填剤粒子の種類にもよるが、充填剤粒子による主流煙中の不要な化学成分の吸着又は分解の効果が低下するため好ましくない。充填剤粒子の量が60重量%を超えると、喫煙物品用の紙の引張強度が低下して、通気度が増加するため喫煙物品用の紙として適さない物性になる傾向にあるため好ましくない。また、充填剤粒子は、例えば、喫煙物品用の紙において2gsm〜40gsm含有することが好ましく、より好ましくは10gsm〜40gsm含有している。
【0028】
喫煙物品用の紙の通気度は、例えば、10CORESTA単位〜500CORESTA単位であり、より好ましくは10CORESTA単位〜100CORESTA単位である。本明細書において、通気度とは、紙の両面の差圧が100mmH
2Oのときに、面積1cm
2を通過する気体の流量をml・cm
2/minの単位で表すものである。1ml・cm
2/minは、1CORESTA単位(1C.U.)である。喫煙物品用の紙の通気度を10CORESTA単位未満にすると、喫煙物品用の紙に添加して抄紙されている充填剤粒子に対して主流煙が接触しにくくなるため好ましくない。喫煙物品の紙の通気度が500CORESTA単位を超えると、喫煙物品用の紙を巻紙として使用する際にシガレットロッドの燃焼速度が増加しすぎるため好ましくない。
【0029】
喫煙物品用の紙の引張強度は、例えば、12.5N/15mm以上であることが好ましい。喫煙物品用の紙の引張強度が12.5N/15mm未満であると、喫煙物品用の紙を巻紙又はフィルタ巻取紙として使用する際に、巻き上げ機の機械スピードに耐えず破断する可能性があるため好ましくない。喫煙物品用の紙の坪量は、例えば、15gsm〜100gsmであることが好ましく、より好ましくは20gsm〜80gsmであり、さらに好ましくは40gsm〜60gsmである。喫煙物品用の紙の坪量がこれらの範囲であると、喫煙物品用の紙を巻紙又はフィルタ巻取紙として使用する際に、破断し難く、かつたばこ刻み又はフィルタ材の形状に合わせて巻装することができるため好ましい。
【0030】
なお、喫煙物品用の紙は、セルロース繊維、セルロースナノファイバー及び充填剤粒子の他に、香料、燃焼調節剤、着色剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
【0031】
喫煙物品用の紙の抄紙法は、特に限定されず、当業者に既知の抄紙法により作製することができる。抄紙法は、一般的に、紙漉き工程と、乾燥させる工程とを含む。抄紙機としては、従来公知のもの、例えば、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機等を用いることができ、適宜要求特性に応じて抄紙機を組み合わせることができる。紙漉き工程に用いる湿試料は、例えば、セルロース繊維をショッパー・リーグラ濾水度が60°SRとなるように叩解して調製したスラリーに対して、所定量の充填剤粒子及びセルロースナノファイバーを添加することで調製することができる。漉かれた湿紙は、従来公知の乾燥方法、例えば、ヤンキードライヤー式、多筒式、熱風式、赤外線加熱式等により乾燥することができる。湿紙は、例えば、100℃〜150℃の温度で乾燥させることができる。
【0032】
なお、喫煙物品用の紙は、セルロース繊維、セルロースナノファイバー、及び充填剤粒子の合計の重量に対して、好ましくはセルロースナノファイバー2重量%〜32重量%、より好ましくは4重量%〜13重量%を添加して抄紙されたものである。抄紙時のセルロースナノファイバーの添加量が上述する数値範囲であると、製造時の充填剤粒子の脱落効果的に抑制することができる。
【0033】
上述する喫煙物品用の紙は、
図1に示すような喫煙物品を構成する各種の紙として使用されることで効果を得ることができる。ここでは、喫煙物品の一例としてフィルタ付きシガレットについて説明するが、フィルタを備えない構成であってもよい。喫煙物品は、他の喫煙物品である、例えば、シガー、シガリロ等であってもよい。シガー、シガリロ等の場合、フィラーをバインダーで巻き上げる前でもバインダーで巻き上げた後に構成してもどちらでもよい。
【0034】
図1に本実施形態に係る喫煙物品用の紙を備える喫煙物品の一例として、フィルタ付きシガレット1を示す。フィルタ付きシガレット1は、シガレットロッド11と、シガレットロッド11と端部同士を突き合わせて配置されたフィルタ12と、フィルタ12の外周面全体及び突合せ近傍のシガレットロッド11の外周面部分を巻回し、シガレットロッド11及びフィルタ12を一体化するチップペーパー13とを備えている。シガレットロッド11は、たばこ刻み14と、たばこ刻み14を円柱状に巻回する巻紙15とを備えている。フィルタ12は、例えば、アセテートトウ、紙、パルプ不織布などを単繊維を束ねたトウ構造にしたり、折り畳んだり、圧縮したりして成形したフィルタ材16と、このフィルタ材16を円柱状に巻回するフィルタ巻取紙17とを備えている。
【0035】
喫煙物品用の紙は、例えば、
図1に示す巻紙15として使用される。このような喫煙物品1を喫煙すると、シガレットロッド11からの主流煙はたばこ刻み14の内部及び巻紙15の内部を通過した後、フィルタ12を通過してフィルタ12の下流端から排出される。このとき、主流煙中に含まれる不要な化学成分(例えば、一酸化炭素等)が巻紙に添加された充填剤粒子によって、吸着又は分解される。その結果、喫煙者が吸引する主流煙に含まれる不要な化学成分を減少させることができる。喫煙物品用の紙が巻紙として使用されるとき、特に、引張強度12.5N/mm以上、通気度10CORESTA単位〜100CORESTA単位であることがより好ましい。
【0036】
喫煙物品用の紙は、例えば、
図1に示すフィルタ巻取紙17として使用される。このような喫煙物品1を喫煙すると、シガレットロッド11からの主流煙は、フィルタ12を通過する際にフィルタ巻取紙17の内部も通過してフィルタ12の下流端から排出される。この構成によっても、上述する喫煙物品用の紙を巻紙15として使用したときと同様の効果を得ることができる。
【0037】
喫煙物品用の紙は、例えば、
図1に示すフィルタ材16として使用される。喫煙物品用の紙は、例えば、短冊状に切断した喫煙物品用の紙をフィルタの形に成形したフィルタ材、
図2に示すような喫煙物品用の紙にクレープ処理を施して折り畳み構造としたフィルタ材26として使用される。このような喫煙物品1を喫煙すると、シガレットロッド11からの主流煙は、フィルタ12を通過する際にフィルタ材16の内部を通過してフィルタ12の下流端から排出される。この構成によっても、上述する喫煙物品用の紙を巻紙15として使用したときと同様の効果を得ることができる。
【0038】
なお、喫煙物品用の紙は上述する巻紙15、フィルタ巻取紙17、及びフィルタ材16以外の喫煙物品用の紙として用いられてもよい。また、喫煙物品において、喫煙物品用の紙は、巻紙、フィルタ巻取紙及びフィルタ材のうちいずれか1つ又は複数を構成するものとして使用されてよい。
【0039】
(実施例及び比較例)
以下、実施例1〜16、及び比較例1〜6により本実施形態をより詳細に説明する。以下に示す方法によって、実施例1〜16及び比較例1〜6に係る試験サンプルを作製した。
【0040】
実施例1,2
充填剤粒子として、一次粒子の平均粒子径が50nmであり、BET表面積が111.5m
2/gのハイドロタルサイト(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)を使用した。セルロースナノファイバーとして、株式会社スギノマシン製のバイオマスナノファイバーであるビンフィス(登録商標)の型式FMa−10002を使用した。なお、このビンフィス(登録商標)の型式FMa−10002は、平均繊維径が約20nmであって、2重量%水溶液の粘度が700mPa・sの平均繊維長の短いセルロースナノファイバーである。
【0041】
亜麻パルプ繊維であるセルロース繊維を、下記表1に示す添加量でショッパー・リーグラ濾水度が60°SRとなるように叩解してスラリーを調整した。次いで、この叩解した亜麻パルプ繊維に対して、下記表1に示す添加量になるように充填剤粒子及びセルロースナノファイバーを添加した。次に、得られた湿紙料を用いて、TAPPI標準手漉き機によって湿紙料を抄紙した。次いで、熊谷理機工業株式会社製KRK回転型乾燥機にて100℃で約1分乾燥させたのち、熱風循環式乾燥器(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−60M(商品名))を使用して105℃にて12時間乾燥させた。次いで、試料を、温度22℃、相対湿度60%の条件下に載置し、所定の長さに裁断して、実施例1,2に係る試験サンプルを作製した。
【0042】
実施例3,4
実施例3,4では、実施例1,2と異なるセルロースナノファイバーを用いたこと以外は、実施例1,2と同様に、下記表1に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。セルロースナノファイバーとして、株式会社スギノマシン製のバイオマスナノファイバーであるビンフィス(登録商標)の型式IMa−10002を使用した。なお、このビンフィス(登録商標)の型式IMa−10002は、平均繊維径が約20nmであって、2重量%水溶液の粘度が7500mPa・sの平均繊維長の長いセルロースナノファイバーである。
【0043】
比較例1
比較例1では、セルロースナノファイバーを添加せずに抄紙したこと以外は、実施例1,2と同様に、下記表1に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。すなわち、比較例1に係る試験サンプルは、亜麻パルプ繊維であるセルロース繊維と、ハイドロタルサイトである充填剤粒子とから抄紙されたものである。
【0044】
比較例2
比較例2では、セルロースナノファイバー及び充填剤粒子を添加せずに抄紙したこと以外は、実施例1,2と同様に試験サンプルを作製した。すなわち、比較例2に係る試験サンプルは、亜麻パルプ繊維であるセルロース繊維のみから抄紙されたものである。
【0045】
実施例5〜6、9〜10及び13〜14
実施例5〜6、9〜10、及び13〜14では、抄紙時のハイドロタルサイトの添加量以外は実施例1,2と同様に、それぞれ表2、表3、及び表4に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。
【0046】
実施例7〜8、11〜12、及び15〜16
実施例7〜8、11〜12、及び15〜16では、ハイドロタルサイトの添加量以外は、実施例3,4と同様に、それぞれ表2、表3、及び表4に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。
【0047】
比較例3、4及び6
比較例3、4及び6では、ハイドロタルサイトの添加量以外は比較例1と同様に、表2、表3及び表4に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。
【0048】
比較例5
比較例5では、セルロース繊維の添加量以外は比較例2と同様に、表3に示す添加量になるように試験サンプルを作製した。
【0049】
表1〜4は、実施例1〜16、及び比較例1〜6に係る試験サンプルに対して、抄紙時のセルロース繊維、充填剤粒子及びセルロースナノファイバーの添加量、紙の坪量、紙の充填剤粒子の含有量、並びに(1)充填剤粒子の歩留り、(2)通気度、及び(3)引張強度の測定結果を示す。表1に示す実施例1〜4及び比較例1では、抄紙時の充填剤粒子の添加量が16gsmである。表2に示す実施例5〜8及び比較例3では、抄紙時の充填剤粒子の添加量が32gsmである。表3に示す実施例9〜12及び比較例4では、抄紙時の充填剤粒子の添加量が48gsmである。表4に示す実施例13〜16及び比較例5では、抄紙時の充填剤粒子の添加量が96gsmである。表1,2に示す比較例2、及び表3,4に示す比較例5では抄紙時に充填剤粒子を添加していない。なお、表1〜4に示すセルロースナノファイバーの添加量[重量%]とは、セルロース繊維、セルロースナノファイバー、及び充填剤粒子の合計の重量に対する、セルロースナノファイバーの重量%を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0050】
以下に、(1)〜(3)の各試験の測定方法に関して説明する。
【0051】
(1)充填剤粒子の歩留り
充填剤粒子の歩留りの測定は、熱風循環式乾燥器(光洋サーモシステム株式会社製、KLO−60M(商品名))を使用して測定した。まず、105℃に設定した熱風循環式乾燥器内に各試験サンプルを12時間載置して乾燥させて紙の乾燥重量を測定した。次いで、その紙の乾燥重量から、抄紙時のセルロース繊維及びセルロースナノファイバーの添加量を引き算することで、紙中の充填剤粒子の含有量を算出した。歩留りは、次式にて算出される。
【0052】
歩留り(%)=充填剤粒子の含有量/抄紙時の充填剤粒子の添加量×100
(2)通気度
通気度の測定は、Coresta method No.3に記載の方法に基づいて、通気度測定装置(Borfwaldt社製、Air Permeability Tester A20(商品名))を使用して測定した。通気度は、紙の両面の差圧が100mmH
2Oのときに、面積1cm
2を通過する気体の流量をml・cm
2/minの単位で表す。1ml・cm
2/minは、1CORESTA単位(1C.U.)である。
【0053】
(3)引張強度
引張強度の測定は、JIS P 8113に基づいて、引張強度測定装置(東洋精機株式会社製、STRONGRAPH E3−L(商品名))を使用して測定した。各試験サンプルを、幅15mm、長さ200mmに裁断して、引張強度200mm/分で引張り、破断した際の荷重を引張強度の値とした。
【0054】
結果
実施例1〜16、及び比較例1〜6に係る試験サンプルの測定結果について説明する。
【0055】
表1において、抄紙時にセルロース繊維に対して充填剤粒子とセルロースナノファイバーとを添加している実施例1〜4と、充填剤粒子のみを添加している比較例1とを比較する。実施例1〜4の充填剤粒子の歩留りは、比較例1では47%であるのに対して、72%〜92%の高い値を示した。実施例1〜4の通気度は、比較例1では164C.U.であるのに対して、55.7C.U.〜120C.U.と低い値を示した。また、実施例1〜4の引張強度は、比較例1では17.9N/15mmであるのに対して、19.4N/15mm〜24.8N/15mmの高い値を示した。また、実施例1〜4の充填剤粒子の含有量は、比較例1では21.8重量%であるのに対して、28.7重量%〜33.2重量%の高い値を示した。これらの結果から、実施例1〜4では、セルロースナノファイバーを添加しているため、比較例1と比較して充填剤粒子の歩留りが向上し、通気度が低減し、引張強度が増加することがわかる。また、実施例1〜4では、平均粒子径が小さい充填剤粒子を、比較例1と比較して、より多く添加して抄紙しているため、主流煙中の不要な化学成分、すなわち一酸化炭素、ホルムアルデヒドに代表される低級アルデヒド類、窒素酸化物、タールなどの成分を、より効果的に除去することが可能である。これと同様の結果が、表1とは充填剤粒子の添加量が異なる表2〜4からも得られた。
【0056】
表1において、抄紙時のセルロースナノファイバーの添加量が3.58重量%である実施例1と、12.94重量%である実施例2を比較する。実施例2では、抄紙時のセルロースナノファイバーの添加量が多いため、実施例1と比較して充填剤の歩留りが向上し、通気度が減少し、引張強度も増加していることがわかる。これと同様の結果が、表1とは充填剤粒子の添加量が異なる表2〜4の結果からも得られた。
【0057】
表1において、抄紙時に添加したセルロースナノファイバーがFMa−10002である実施例1と、IMa−10002である実施例3を比較する。この結果より、実施例3で使用される2重量%水溶液の粘度が7500mPa・sのIMa−10002の方が、実施例1で使用されている2重量%水溶液の粘度が700mPa・sのFMa−10002と比較して、歩留りを向上させ、通気度を減少させ、引張強度を増加させる効果が高いことがわかる。表1の結果と同様に、充填剤粒子の添加量の異なる表2〜表4の結果からも同様の結果が得られた。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る喫煙物品用の紙では、セルロースナノファイバーを添加しているため、1次粒子の平均粒子径が小さい充填剤粒子を含有していても、歩留りの低下、引張強度の低下、通気度の増加を抑制することができる。また、本実施形態に係る喫煙物品用の紙では、従来と比較してより平均粒子径の小さい充填剤粒子が添加して抄紙されており、かつより多くの充填剤粒子を含有することが可能であるため、主流煙中の不要な化学成分をより効果的に除去できる構成にすることができる。
【0059】
なお、いくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示であり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることができ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] セルロース繊維を含み、セルロースナノファイバー及び一次粒子の平均粒径が1μm以下の吸着剤又は触媒である充填剤粒子を添加して抄紙されたものであることを特徴とする喫煙物品用の紙。
[2] 前記喫煙物品用の紙は、坪量が20gsm〜80gsmであり、前記充填剤粒子を2重量%〜60重量%含有することを特徴とする[1]に記載の喫煙物品用の紙。
[3] 前記喫煙物品用の紙は、前記セルロース繊維、前記セルロースナノファイバー、及び前記充填剤粒子の合計の重量に対して、前記セルロースナノファイバー2重量%〜32重量%を添加して抄紙されたものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の喫煙物品用の紙。
[4] 前記喫煙物品用の紙は、前記セルロース繊維、前記セルロースナノファイバー、及び前記充填剤粒子の合計の重量に対して、前記セルロースナノファイバー4重量%〜13重量%を添加して抄紙されたものであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙。
[5] 前記セルロースナノファイバーは、繊維径が50nm以下であり、2%水溶液での粘度が1000mPa・s以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙。
[6] 前記充填剤粒子は、一次粒子の平均粒径が10nm〜500nmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙。
[7] 前記喫煙物品用の紙は、通気度が10CORESTA単位〜500CORESTA単位であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の喫煙物品用の紙。
[8] 前記喫煙物品用の紙は、引張強度が12.5N/15mm以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙。
[9] [1]〜[8]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙を、シガレットのたばこ刻みを巻装する巻紙として備えることを特徴とする喫煙物品。
[10] [1]〜[8]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙を、フィルタを巻装するフィルタ巻取紙として備えることを特徴とするフィルタ付き喫煙物品。
[11] [1]〜[8]のいずれか1つに記載の喫煙物品用の紙を、フィルタ材として備えることを特徴とするフィルタ付き喫煙物品。