(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントおよび一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントの前記挿入が、マウスVκおよびJκ遺伝子セグメントを置き換える、請求項5に記載のマウス。
前記イムノグロブリン重鎖座位は、一つ以上のマウスAdam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む、請求項15に記載のマウス。
その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含み、前記操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントが、マウスまたはヒトのCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして前記内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が、一つ以上のマウスイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)領域と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)領域をさらに含み、前記一つ以上のヒトEλ領域が三つのヒトIgλエンハンサー配列要素を含む、マウスを作製する方法であって、前記方法が、
マウスの前記生殖細胞ゲノムが、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含むよう操作されたイムノグロブリンλ軽鎖座位を含むよう、マウスの前記生殖細胞ゲノムを改変することであって、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントが、マウスまたはヒトのCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして前記内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が、一つ以上のマウスイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)領域と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)領域をさらに含み、前記一つ以上のヒトEλ領域が三つのヒトIgλエンハンサー配列要素を含み、それにより前記マウスを作製すること、を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0100】
配列表中の選択配列の簡単な説明
マウスCλ1 DNA(配列番号1):
GCCAGCCCAAGTCTTCGCCATCAGTCACCCTGTTTCCACCTTCCTCTGAAGAGCTCGAGACTAACAAGGCCACACTGGTGTGTACGATCACTGATTTCTACCCAGGTGTGGTGACAGTGGACTGGAAGGTAGATGGTACCCCTGTCACTCAGGGTATGGAGACAACCCAGCCTTCCAAACAGAGCAACAACAAGTACATGGCTAGCAGCTACCTGACCCTGACAGCAAGAGCATGGGAAAGGCATAGCAGTTACAGCTGCCAGGTCACTCATGAAGGTCACACTGTGGAGAAGAGTTTGTCCCGTGCTGACTGTTCC
【0101】
マウスCλ1 アミノ酸(配列番号2):
GQPKSSPSVTLFPPSSEELETNKATLVCTITDFYPGVVTVDWKVDGTPVTQGMETTQPSKQSNNKYMASSYLTLTARAWERHSSYSCQVTHEGHTVEKSLSRADCS
【0102】
マウスCλ2 DNA(配列番号3):
GTCAGCCCAAGTCCACTCCCACTCTCACCGTGTTTCCACCTTCCTCTGAGGAGCTCAAGGAAAACAAAGCCACACTGGTGTGTCTGATTTCCAACTTTTCCCCGAGTGGTGTGACAGTGGCCTGGAAGGCAAATGGTACACCTATCACCCAGGGTGTGGACACTTCAAATCCCACCAAAGAGGGCAACAAGTTCATGGCCAGCAGCTTCCTACATTTGACATCGGACCAGTGGAGATCTCACAACAGTTTTACCTGTCAAGTTACACATGAAGGGGACACTGTGGAGAAGAGTCTGTCTCCTGCAGAATGTCTC
【0103】
マウスCλ2 アミノ酸(配列番号4):
GQPKSTPTLTVFPPSSEELKENKATLVCLISNFSPSGVTVAWKANGTPITQGVDTSNPTKEGNKFMASSFLHLTSDQWRSHNSFTCQVTHEGDTVEKSLSPAECL
【0104】
マウスCλ3 DNA(配列番号5):
GTCAGCCCAAGTCCACTCCCACACTCACCATGTTTCCACCTTCCCCTGAGGAGCTCCAGGAAAACAAAGCCACACTCGTGTGTCTGATTTCCAATTTTTCCCCAAGTGGTGTGACAGTGGCCTGGAAGGCAAATGGTACACCTATCACCCAGGGTGTGGACACTTCAAATCCCACCAAAGAGGACAACAAGTACATGGCCAGCAGCTTCTTACATTTGACATCGGACCAGTGGAGATCTCACAACAGTTTTACCTGCCAAGTTACACATGAAGGGGACACTGTGGAGAAGAGTCTGTCTCCTGCAGAATGTCTC
【0105】
マウスCλ3 アミノ酸(配列番号6):
GQPKSTPTLTMFPPSPEELQENKATLVCLISNFSPSGVTVAWKANGTPITQGVDTSNPTKEDNKYMASSFLHLTSDQWRSHNSFTCQVTHEGDTVEKSLSPAECL
【0106】
ラットCλ1 DNA(配列番号7):
GTCAGCCCAAGTCCACTCCCACACTCACAGTATTTCCACCTTCAACTGAGGAGCTCCAGGGAAACAAAGCCACACTGGTGTGTCTGATTTCTGATTTCTACCCGAGTGATGTGGAAGTGGCCTGGAAGGCAAATGGTGCACCTATCTCCCAGGGTGTGGACACTGCAAATCCCACCAAACAGGGCAACAAATACATCGCCAGCAGCTTCTTACGTTTGACAGCAGAACAGTGGAGATCTCGCAACAGTTTTACCTGCCAAGTTACACATGAAGGGAACACTGTGGAGAAGAGTCTGTCTCCTGCAGAATGTGTC
【0107】
ラットCλ1 アミノ酸(配列番号8):
GQPKSTPTLTVFPPSTEELQGNKATLVCLISDFYPSDVEVAWKANGAPISQGVDTANPTKQGNKYIASSFLRLTAEQWRSRNSFTCQVTHEGNTVEKSLSPAECV
【0108】
ラットCλ2 DNA(配列番号9):
ACCAACCCAAGGCTACGCCCTCAGTCACCCTGTTCCCACCTTCCTCTGAAGAGCTCAAGACTGACAAGGCTACACTGGTGTGTATGGTGACAGATTTCTACCCTGGTGTTATGACAGTGGTCTGGAAGGCAGATGGTACCCCTATCACTCAGGGTGTGGAGACTACCCAGCCTTTCAAACAGAACAACAAGTACATGGCTACCAGCTACCTGCTTTTGACAGCAAAAGCATGGGAGACTCATAGCAATTACAGCTGCCAGGTCACTCACGAAGAGAACACTGTGGAGAAGAGTTTGTCCCGTGCTGAGTGTTCC
【0109】
ラットCλ2 アミノ酸(配列番号10):
DQPKATPSVTLFPPSSEELKTDKATLVCMVTDFYPGVMTVVWKADGTPITQGVETTQPFKQNNKYMATSYLLLTAKAWETHSNYSCQVTHEENTVEKSLSRAECS
【0110】
ラットCλ3 DNA(配列番号11):
GTCAGCCCAAGTCCACTCCCACACTCACAGTATTTCCACCTTCAACTGAGGAGCTCCAGGGAAACAAAGCCACACTGGTGTGTCTGATTTCTGATTTCTACCCGAGTGATGTGGAAGTGGCCTGGAAGGCAAATGGTGCACCTATCTCCCAGGGTGTGGACACTGCAAATCCCACCAAACAGGGCAACAAATACATCGCCAGCAGCTTCTTACGTTTGACAGCAGAACAGTGGAGATCTCGCAACAGTTTTACCTGCCAAGTTACACATGAAGGGAACACTGTGGAAAAGAGTCTGTCTCCTGCAGAGTGTGTC
【0111】
ラットCλ3 アミノ酸(配列番号12):
GQPKSTPTLTVFPPSTEELQGNKATLVCLISDFYPSDVEVAWKANGAPISQGVDTANPTKQGNKYIASSFLRLTAEQWRSRNSFTCQVTHEGNTVEKSLSPAECV
【0112】
ラットCλ4 DNA(配列番号13):
ACCAACCCAAGGCTACGCCCTCAGTCACCCTGTTCCCACCTTCCTCTGAAGAGCTCAAGACTGACAAGGCTACACTGGTGTGTATGGTGACAGATTTCTACCCTGGTGTTATGACAGTGGTCTGGAAGGCAGATGGTACCCCTATCACTCAGGGTGTGGAGACTACCCAGCCTTTCAAACAGAACAACAAGTACATGGCTACCAGCTACCTGCTTTTGACAGCAAAAGCATGGGAGACTCATAGCAATTACAGCTGCCAGGTCACTCACGAAGAGAACACTGTGGAGAAGAGTTTGTCCCGTGCTGAGTGTTCC
【0113】
ラットCλ4 アミノ酸(配列番号14):
DQPKATPSVTLFPPSSEELKTDKATLVCMVTDFYPGVMTVVWKADGTPITQGVETTQPFKQNNKYMATSYLLLTAKAWETHSNYSCQVTHEENTVEKSLSRAECS
定義
【0114】
本発明の範囲は、本明細書に添付される請求の範囲により規定されるものであり、本明細書に記載されるいくらかの実施形態により限定されない。当分野の当業者は、本明細書を読むことで、かかる記載される実施形態に対し均等であり得る様々な改変、または別の手段で請求の範囲内にあり得る様々な改変を認識するであろう。
【0115】
概して、本明細書で使用される用語は、明白な別段の示唆が無い限り、当分野で理解される意味に従う。ある用語の明白な定義を以下に提供する本明細書全体を通じ、特定の例におけるこれらの用語および他の用語の意味は、文脈から、当分野の当業者には明らかであろう。以下の用語および他の用語に関する追加的な定義は、本明細書全体を通じて説明される。本明細書内またはその関連部分内に引用されている特許および非特許参考文献は、参照によりその全体で本明細書に援用される。
【0116】
投与:本明細書において使用される場合、対象またはシステム(たとえば、細胞、臓器、組織、生物、または関連構成要素もしくはその構成要素のセット)に対する組成物の投与を含む。当業者であれば、投与経路は、例えば、その組成物が投与される対象またはシステム、組成物の性質、投与目的などに応じて異なり得ることを認識するであろう。例えば、特定の実施形態では、動物対象(例えば、ヒトまたは齧歯類)への投与は、気管支投与(気管支注入を含む)、口腔投与、腸内投与、皮間投与、動脈内投与、皮内投与、胃内投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、静脈内投与、心室内投与、粘膜投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、皮下投与、舌下投与、局所投与、気管投与(気管内注入を含む)、経皮投与、膣投与、および/または硝子体投与であってもよい。一部の実施形態では、投与は、間欠投薬を含み得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続投薬(例えば、灌流)を含み得る。
【0117】
改善:本明細書において使用される場合、状態の防止、減少、もしくは緩和、または対象の状態の改善を含む。改善は、疾患、障害、または症状の完全な回復または完全な防止を含むが、必須ではない。
【0118】
およそ:一つ以上の対象の値に適用される場合、指定された参照値に類似した値を含む。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段定めがない限り、または文脈からそうでないことが明らかな場合(このような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)を除いて、指定された参照値のいずれかの方向に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満以内の範囲の値を指す。
【0119】
生物学的に活性:本明細書で使用される場合、生物系、インビトロまたはインビボ(例えば、生物中)で活性を持つ任意の薬剤の特徴を示す。例えば、薬剤が生物内に存在する場合、その生物内で生物学的効果を持つ薬剤は、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性な場合、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、「生物学的に活性」な部分と一般的に呼ばれる。
【0120】
同等:本明細書において使用される場合、お互いに同一ではなくてもよいが、それらの間の比較を許容できるほど十分に類似しており、従って観察された差異または類似性に基づいて合理的に結論を導き得る、二つ以上の剤、実体、状況、状態のセットなどを指す。当分野の通常の技能を有する者であれば、文脈内において、任意の所与の環境下でかかる剤、実体、状況、条件群などの二つ以上が同等とみなされるためにはどの程度の同一性が必要とされるかを理解するであろう。
【0121】
保存的:本明細書で使用される場合、保存的アミノ酸置換を記載する例を指し、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を伴う側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。一般的に、保存的アミノ酸置換は、対象のタンパク質の機能特性、例えば、リガンドに結合する受容体の能力などを実質的に変化させない。類似の化学特性を伴う側鎖を有するアミノ酸群の例には以下が挙げられる:例えばグリシン(Gly、G)、アラニン(Ala、A)、バリン(Val、V)、ロイシン(Leu、L)、及びイソロイシン(Ile、I)などの脂肪族側鎖;例えばセリン(Ser、S)及びスレオニン(Thr、T)などの脂肪族−ヒドロキシル側鎖;例えばアスパラギン(Asn、N)及びグルタミン(Gln、Q)などのアミド含有側鎖;例えばフェニルアラニン(Phe、F)、チロシン(Tyr、Y)、及びトリプトファン(Trp、W)などの芳香族側鎖;例えばリシン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)、及びヒスチジン(His、H)などの塩基性側鎖;例えばアスパラギン酸(Asp、D)及びグルタミン酸(Glu、E)などの酸性側鎖;ならびに例えばシステイン(Cys、C)及びメチオニン(Met、M)などの硫黄含有側鎖。保存的アミノ酸置換基には、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン(Val/Leu/Ile、V/L/I)、フェニルアラニン/チロシン(Phe/Tyr、F/Y)、リシン/アルギニン(Lys/Arg、K/R)、アラニン/バリン(Ala/Val、A/V)、グルタミン酸/アスパラギン酸(Glu/Asp、E/D)、及びアスパラギン/グルタミン(Asn/Gln、N/Q)が含まれる。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えばアラニンスキャニング変異誘導などで使用される、アラニンを含むタンパク質の任意の未変性残基の置換である可能性がある。一部の実施形態では、Gonnet,G.H.et al.,1992,Science 256:1443−1445に開示されるPAM250対数尤度マトリクスにおいて正の値を有する保存的置換が行われる。一部の実施形態では、置換は中等度に保存的な置換であり、この場合において該置換はPAM250対数尤度マトリックスで負ではない値を有する。
【0122】
対照:本明細書において使用される場合、結果が比較される基準である「対照」という当技術分野の意味を指す。一般的に、対照は、変数についての結論を出すために、このような変数を分離することによって実験の完全性を増加させるのに使用される。一部の実施形態では、対照は、コンパレーターを提供するために、試験反応またはアッセイと同時に実施される反応またはアッセイである。「対照」とは、「対照動物」も含む。「対照動物」は本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。ある実験では、「試験」(すなわち、試験されている変数)が適用される。その「対照」である第二の実験では、その試験されている変数が適用されない。一部の実施形態では、対照は歴史的対照(すなわち、以前に実施された試験またはアッセイの、または以前に知られた量または結果)である。一部の実施形態では、対照は印刷されたかまたはそれ以外の方法で保存された記録であるか、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照である場合がある。
【0124】
〜から誘導された:再構成されていない可変領域および/または再構成されていない可変領域遺伝子セグメント「から誘導された」再構成された可変領域遺伝子または可変ドメインに関して使用される場合、当該再構成された可変領域遺伝子または可変ドメインの配列を、再構成されていない可変領域遺伝子セグメント群まで遡り突き止める能力を指し、当該遺伝子セグメントは再構成されて、可変ドメインを発現する再構成済み可変領域遺伝子を形成した(適切な場合には、スプライス差異、および体細胞変異の原因となる)。例えば、体細胞変異を経た再構成済み可変領域遺伝子は、再構成されていない可変領域遺伝子セグメントから誘導されたという事実は変わらない。
【0125】
破壊:本明細書において使用される場合、(例えば、遺伝子または座位などの内因性相同配列を有する)DNA分子との相同組み換え事象の結果を指す。一部の実施形態では、破壊は、DNA配列の挿入、欠失、置換、交換、ミスセンス変異、もしくはフレームシフト、またはこれらの任意の組み合わせを達成または示す場合がある。挿入は、遺伝子全体または例えばエクソンなどの遺伝子の断片の挿入を含む場合があり、これは内因性配列以外の起源のもの(例えば、異種配列)であってもよい。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の(例えば、遺伝子によってコードされたポリペプチドの)発現および/または活性を増加させる場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の発現および/または活性を減少する場合がある。一部の実施形態では、破損は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたポリペプチド)の配列を変える場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたポリペプチド)を切断または断片化する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物を伸長させる場合がある。一部のかかる実施形態では、破損は融合ポリペプチドの組立を遂行する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに影響するが、その活性には影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に影響するが、そのレベルには影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルまたは活性のいずれに対しても顕著な効果を持たない場合がある。
【0126】
決定すること、測定すること、査定すること、評価すること、検査すること、および分析すること:本明細書において相互交換可能に使用され、任意の形態の測定結果を指し、要素が存在するかどうかを決定することを含む。これらの用語は、定量的および/または定性的決定の両方を含む。アッセイは相対的または絶対的である場合がある。「の存在をアッセイする」ことは、存在する何かの量を決定するおよび/またはそれが存在するか不在かを決定することである可能性がある。
【0127】
内因性座位または内因性遺伝子:本明細書において使用される場合、本明細書に記述される破損、欠失、置換、変化、または改変の導入前に、親または参照生物において存在する遺伝子座位を指す。一部の実施形態では、内因性座位は自然界に存在する配列を有する。一部の実施形態では、内因性座位は野生型座位である。一部の実施形態では、内因性座位は操作された座位である。一部の実施形態では、参照生物は野生型生物である。一部の実施形態では、参照生物は遺伝子操作された生物である。一部の実施形態では、参照生物は実験室で繁殖された生物(野生型または遺伝子操作型)である。
【0128】
内因性プロモーター:本明細書で使用される場合、例えば、野生型生物で、内因性遺伝子と自然に関連するプロモーターを指す。
【0129】
操作された(Engineered):本明細書において使用される場合、概して、ヒトの手により操作された態様を指す。例えば一部の実施形態では、自然界での順序では一緒に連結されていない二つ以上の配列がヒトの手により操作され、操作ポリヌクレオチド中で互いに直接連結された場合に、「操作された」とみなされ得る。一部の特定のかかる実施形態において、操作されたポリヌクレオチドは、自然界で第一のコード配列と作動的に関連しているが、第二のコード配列とは作動的に関連せずに存在し、ヒトの手により連結されて第二のコード配列と作動的に関連した制御配列を含んでいてもよい。あるいは、またはさらに、一部の実施形態では、各々、自然界では互いに連結されていないポリペプチド要素またはドメインをコードしている第一及び第二の核酸配列が、一つの操作されたポリヌクレオチドにおいて互いに連結されていてもよい。同様に、一部の実施形態では、細胞または生物体が操作され、それによりその遺伝情報が改変された(例えば、従前には存在していなかった新たな遺伝物質が導入されたり、または従前には存在していた遺伝物質が変更もしくは除去された)場合に、「操作された」とみなされ得る。一般的なことであり、当技術分野の当業者に理解されているとおり、操作されたポリヌクレオチドまたは細胞の子孫物も通常、実際の操作は過去の実体に対して行われていたのだとしても、「操作された」とみなされる。さらに、当技術分野の当業者により認識されているように、様々な技法が利用可能であり、それらを介して、本明細書に記載される「操作」を行うことができる。例えば、一部の実施形態では、「操作」には、分析または比較を行うようプログラムされた、または推奨された配列および/もしくは選択された配列を別手段により分析するようプログラムされた、コンピューターシステムの使用を介して(例えば核酸配列、ポリペプチド配列、細胞、組織および/または生物体の)選択または設計を行うことを含んでもよい。あるいは、またはさらに、一部の実施形態では「操作」には、インビトロ化学合成技術の使用、及び/または組み換え核酸技術、例えば(例えばポリメラーゼ鎖反応などを介した)核酸増幅、ハイブリダイゼーション、突然変異誘導、形質転換、トランスフェクションなどの使用を含んでもよく、及び/または様々な任意の制御交配法の使用を含んでもよい。当技術分野の当業者に認識されているように、確立されている様々なこうした技術(例えば組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えばエレクトロポレーション法、リポフェクション法など))が当技術分野に周知であり、様々な概説および詳説の参照文献中に記載されており、それらは本明細書全体を通じて引用および/または考察されている。例えば、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989、およびPrinciples of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Manipulation,5th Ed.,ed.By Old,R.W.and S.B.Primrose,Blackwell Science,Inc.,1994を参照のこと。
【0130】
機能性:本明細書において使用される場合、特定の特性を示す(例えばコード配列の一部を形成する)および/または活性を示す実体(例えば遺伝子または遺伝子セグメント)の形態または断片を指す。例えばイムノグロブリンとの関連において、可変ドメインは固有の遺伝子セグメント(すなわちV、Dおよび/またはJ)によりコードされ、アセンブリされて(または組み替えられて)機能性コード配列を形成する。ゲノム中に存在する場合、遺伝子セグメントはクラスター中に構造化されるが、多様性は発生する。「機能性」遺伝子セグメントは、発現配列(すなわち可変ドメイン)中に現れた遺伝子セグメントであり、それに対応するゲノムDNAは単離され(すなわちクローニングされ)、配列により特定されている。一部のイムノグロブリン遺伝子セグメント配列はオープンリーディングフレームを含有しており、機能性であるとみなされるが、発現レパートリー中には現れない。一方で他のイムノグロブリン遺伝子セグメント配列は終止コドンおよび/または短縮配列を生じさせる変異(すなわち点変異、挿入、欠失など)を含有し、それによりその後、かかる遺伝子セグメント配列は、非変異配列と関連した特性および/または活性を実施できなくなる。かかる配列は発現配列中に現れず、ゆえに偽遺伝子とカテゴライズされる。
【0131】
遺伝子:本明細書において使用される場合、産物(例えばRNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードする、染色体中のDNA配列を指す。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(すなわち、特定の産物をコードする配列)を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えばエクソン配列)と非コード配列(例えばイントロン配列)の両方を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、一つ以上の制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を含んでもよく、および/または例えば遺伝子発現(例えば、細胞型特異的発現、誘導発現など)の一つ以上の態様を制御することができる、もしくは影響を与えることができるイントロン配列を含んでもよい。明確化のために記載すると、本開示において使用される場合、用語「遺伝子」は、概してポリペプチドまたはその断片をコードする核酸の一部を意味し;当該用語は任意選択的に制御配列を包含する場合があり、これは当技術分野の当業者には文脈から明らかであるはずである。この定義は、「遺伝子」という用語を非タンパク質をコードする発現単位に適用することを除外する意図はなく、本明細書に使用される当該用語は、多くの場合においてはポリペプチドをコードする核酸を指すことを明らかにすることを意図している。
【0132】
異種:本明細書において用いられる場合、異なる起源からの主体または実体を指す。例えば、特定の細胞もしくは生物に存在するポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物に関連して使用される場合、該用語は、関連ポリペプチド、遺伝子または遺伝子産物が、1)ヒトの手により操作されていること、2)ヒトの手を介して細胞または生物(またはその前駆体)に導入されていること、および/または3)当該関連細胞もしくは生物(例えば関連細胞型または生物型)中に自然状態では産生されない、または存在しないこと、を明らかにする。「異種」は、たとえば天然では関連していない、および一部の実施形態では非内因性の制御因子(たとえばプロモーター)の制御下にある、特定の天然の細胞または生物中に通常存在するが、突然変異または置換により変化する、または改変されるポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物も含む。
【0133】
宿主細胞:本明細書において使用される場合、その中に核酸またはタンパク質が導入された細胞を指す。当業者が本開示を読めば、このような用語が特定の主題細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫を指すためにも使用されることを理解するであろう。突然変異または環境の影響によって特定の改変は後続世代にも起こる可能性があるため、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでも「宿主細胞」という文言の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞または真核細胞であるかそれを含む。一般的に、宿主細胞は、細胞が指定される種に関わらず、異種核酸またはタンパク質の受け入れおよび/または生産に適した任意の細胞である。細胞の例としては、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属(Bacillus spp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces spp.)などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF−9、SF−21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)など)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合体が挙げられる。一部の実施形態では、細胞はヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB−11 CHO、Veggie−CHO)、COS(例えば、COS−7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL−60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV−1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS−0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、および前述細胞から派生する細胞株。一部の実施形態では、細胞は一つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は単離細胞であるかそれを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は組織の一部である。一部の実施形態では、宿主細胞は生物の一部である。
【0134】
同一性:配列の比較と関連して本明細書において用いられる場合、ヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列の同一性を測定するために使用できる当技術分野において公知の多くの異なるアルゴリズムによって決定される同一性を指す。一部の実施形態では、本明細書に記述された同一性は、10.0のギャップ開始ペナルティ、0.1のギャップ延長ペナルティを用い、Gonnet類似性マトリックス(MACVECTOR(商標)10.0.2、MacVector Inc.、2008年)を使用したClustalW v.1.83(slow)アラインメントを使用して決定される。
【0135】
in vitro(インビトロ):本明細書で使用する場合、多細胞生物体内ではなく、例えば試験管または反応容器などの人工的環境、細胞培養などにおいて発生する事象を指す。
【0136】
in vivo(インビボ):本明細書で使用される場合、例えばヒトおよび/または非ヒト動物などの多細胞生物内で発生する事象を指す。細胞ベース系の文脈において、当該用語を使用して、(例えばインビトロシステムとは対照的に)生細胞内で発生する事象を意味する場合もある。
【0137】
単離された:本明細書において使用される場合、(1)(天然環境及び/もしくは実験環境のいずれかで)最初に産生された時にそれが関連していた成分の少なくとも一部から分離された物質ならびに/または実体、ならびに/あるいは(2)ヒトの手によって設計、産生、調製、及び/もしくは製造された物質ならびに/または実体を指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に関連していたその他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離される場合がある。一部の実施形態において、単離された物質は、それらが最初に関連していた他の成分の10%〜100%、15%〜100%、20%〜100%、25%〜100%、30%〜100%、35%〜100%、40%〜100%、45%〜100%、50%〜100%、55%〜100%、60%〜100%、65%〜100%、70%〜100%、75%〜100%、80%〜100%、85%〜100%、90%〜100%、95%〜100%、96%〜100%、97%〜100%、98%〜100%、または99%〜100%から分離される。一部の実施形態において、単離された物質は、それらが最初に関連していた他の成分の10%〜100%、10%〜99%、10%〜98%、10%〜97%、10%〜96%、10%〜95%、10%〜90%、10%〜85%、10%〜80%、10%〜75%、10%〜70%、10%〜65%、10%〜60%、10%〜55%、10%〜50%、10%〜45%、10%〜40%、10%〜35%、10%〜30%、10%〜25%、10%〜20%、または10%〜15%から分離される。一部の実施形態において、単離された物質は、それらが最初に関連していた他の成分の11%〜99%、12%〜98%、13%〜97%、14%〜96%、15%〜95%、20%〜90%、25%〜85%、30%〜80%、35%〜75%、40%〜70%、45%〜65%、50%〜60%、または55%〜60%から分離される。一部の実施形態において、単離された物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。一部の実施形態において、単離された物質は、80%〜99%、85%〜99%、90%〜99%、95%〜99%、96%〜99%、97%〜99%、または98%〜99%純粋である。一部の実施形態において、単離された物質は80%〜99%、80%〜98%、80%〜97%、80%〜96%、80%〜95%、80%〜90%、または80%〜85%純粋である。一部の実施形態において、単離された物質は85%〜98%、90%〜97%、または95%〜96%純粋である。一部の実施形態では、物質は、その他の成分が実質的に含まれない場合、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者であれば理解するように、例えば、一つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)などの特定のその他の成分と組み合わされた後でも、物質はまだ「単離された」または「純粋」とさえもみなされる場合があり、このような実施形態では、物質の単離または純度のパーセントはこのような担体または賦形剤を含めることなく計算される。一例を挙げると、一部の実施形態では、自然界に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体高分子は、a)導出の起源またはソースが、自然界の天然状態でそれに付随する成分の一部またはすべてと関連していない時、b)それが、自然界でそれを生産する種と同じ種のその他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない時、またはc)自然界でそれを生産する種ではない細胞またはその他の発現系によって発現されるか、またはそうでなければそれからの成分と関連している時、「単離された」とみなされる。従って、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成された、または自然界でそれを生産するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドとみなされる。あるいはまたは追加的に、一部の実施形態では、一つ以上の精製技術を受けたポリペプチドは、それが、a)それが自然界で関連している、および/またはb)最初に生産された時にそれが関連していたその他の成分から分離されている限りは「単離された」ポリペプチドとみなされることができる。
【0138】
座位:本明細書において使用される場合、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドをコードする配列、または生物ゲノムの染色体上の位置の特定の場所を指す。 例えば、「イムノグロブリン座位」とは、イムノグロブリン遺伝子セグメント(例えばV、D、JまたはC)の特定の位置、イムノグロブリン遺伝子セグメントDNA配列、イムノグロブリン遺伝子セグメントをコードする配列、またはかかる配列が存在する場所として特定された生物体ゲノムの染色体上のイムノグロブリン遺伝子セグメントの位置を指す場合がある。「イムノグロブリン座位」は、限定されないが、エンハンサー、プロモーター、5’および/もしくは3’の制御配列または領域、またはそれらの組み合わせをはじめとする、イムノグロブリン遺伝子セグメントの制御因子を含有する場合がある。「イムノグロブリン座位」は、通常、野生型座位の遺伝子セグメント間に存在するDNAを含有する場合があるが、そのDNA自身はイムノグロブリン遺伝子セグメントを欠いている(例えば、自然界ではV遺伝子セグメント群とJ遺伝子セグメント群の間に存在するイムノグロブリンDNA配列、自然界ではJ遺伝子セグメント群と定常領域遺伝子の間に存在するイムノグロブリンDNA配列、または自然界では定常領域遺伝子の3’側に存在するイムノグロブリンDNA配列など)。当技術分野の当業者には、一部の実施形態において、染色体が、数百、さらには数千の遺伝子を含有し得ること、及び異なる種の間で比較した場合に、類似した座位の物理的な共局在を示し得ることが理解されるであろう。かかる遺伝子座位は、シンテニー(synteny)を共有したと記載され得る。
【0139】
非ヒト動物:本明細書で使用される場合、ヒトではない任意の脊椎動物を指す。一部の実施形態では、非ヒト動物は、円口類、硬骨魚、軟骨魚(例えば、サメまたはエイ)、両生類、は虫類、哺乳類、および鳥である。一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳類である。一部の実施形態では、非ヒト哺乳類は、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウシ、または齧歯類である。一部の実施形態では、非ヒト動物はラットまたはマウスなどの齧歯類である。
【0140】
核酸:本明細書において使用される場合、オリゴヌクレオチド鎖であるか、もしくはオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれることができる任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態では、「核酸」とはオリゴヌクレオチド鎖であるか、またはホスホジエステル結合でオリゴヌクレオチド鎖組み込むことができる化合物および/または物質である。文脈から明らかであるように一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指し、一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基を備えるオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」はRNAであるかまたはそれを含み、一部の実施形態では、「核酸」はDNAであるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の天然核酸残基を含むかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の核酸類似体を含むかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、核酸類似体は、ホスホジエステル骨格を利用しないという点で「核酸」とは異なる。例えば、一部の実施形態では、「核酸」は、当技術分野で公知であり、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を持つ、一つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「核酸」は、ホスホジエステル結合ではなく、一つ以上のホスホロチオエートおよび/または5’−N−ホスホラミダイト結合を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)であるか、または一つ以上の天然ヌクレオシドから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C−5 プロピニル−シチジン、C−5 プロピニル−ウリジン、2−アミノアデノシン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、2−チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、およびそれらの組み合わせ)であるか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、天然核酸のものと比べて、一つ以上の改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)を含む。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のエクソンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、天然起源物からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組み換え細胞または系での複製、および化学合成の一つ以上によって調製される。一部の実施形態では、「核酸」は、少なくとも限定されないが、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれを超える残基の長さである。一部の実施形態では、「核酸」は一本鎖であり、一部の実施形態では、「核酸」は二重鎖である。一部の実施形態では、「核酸」はポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の補体である少なくとも一つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、「核酸」は酵素活性を持つ。
【0141】
操作可能に連結された:本明細書において使用される場合、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を指す。例えば、再構成されていない可変領域遺伝子セグメントが再構成されて、再構成済み可変領域遺伝子を形成することができ、そして当該再構成済み可変領域が、定常領域遺伝子と連結されて抗原結合タンパク質のポリペプチド鎖として発現される場合は、当該再構成されていない可変領域遺伝子セグメントは、連続的な定常領域遺伝子に「操作可能に連結されている」。コード配列に「操作可能に連結した」対照配列は、対照配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように結合されている。「操作可能に連結した」配列には、対象の遺伝子と連続する発現制御配列と、トランスで、または離れて作用して対象の遺伝子(または対象の配列)を制御する発現制御配列の両方を含む。「発現制御配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列を含み、それらが結合されるコード配列の発現およびプロセッシングに作用するために必要である。「発現制御配列」には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザック配列)、ポリペプチド安定性を強化する配列、および望ましい場合には、ポリペプチド分泌を強化する配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、かかる制御配列としては、概して、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が挙げられる一方、真核生物では、かかる制御配列としては、概して、プロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。「制御配列」という用語は、その存在が発現およびプロセシングのために必須である要素を含むことを意図しており、その存在が有利である追加的要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。
【0142】
生理学的条件:本明細書において使用される場合、細胞および生物が生存し、および/または繁殖する条件に言及する当分野に理解される意味を指す。一部の実施形態では、当該用語には、生物または細胞系に対し自然界で発生し得る外的環境または内的環境の条件が含まれる。一部の実施形態では、生理学的条件は、ヒトまたは非ヒト動物の身体内にある条件であり、特に手術部位の、および/または手術部位内の条件である。生理学的条件は、典型的には、たとえば20〜40℃の範囲の温度、1気圧、pH6〜8、1〜20mMのグルコース濃度、大気中の酸素濃度、および地球上で遭う重力などを含む。一部の実施形態では、実験室での条件は、生理学的条件に操作され、および/または維持される。一部の実施形態では、生理学的条件は、生物内で遭う条件である。
【0143】
ポリペプチド:本明細書において使用される場合、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在するアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在しないアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、お互いに別々に自然界に存在する部分を含むアミノ酸配列を持つ(すなわち、例えば、ヒトおよび非ヒト部分など、二つ以上の異なる生物からのもの)。一部の実施形態では、ポリペプチドは、それが人の手の作用を通して、設計および/または生産されるという点で、遺伝子操作されたアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界には存在しない配列にコードされるアミノ酸配列を有する(例えば、それがヒトの手の作用を介して、前記ポリペプチドをコードするように設計および/または生産されるという点で操作された配列を有する)。
【0144】
組み換え:本明細書で使用される場合、組み換え手段によって設計、操作、調製、発現、生成または単離されたポリペプチドを指すことが意図されており、例えば、宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチド、組み換えコンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリから単離されたポリペプチド(Hoogenboom,H.R.,1997,TIB Tech.15:62−70;Azzazy,H.and W.E.Highsmith,2002,Clin.Biochem.35:425−45;Gavilondo,J.V.and J.W.Larrick,2002,BioTechniques 29:128−45;Hoogenboom H.,and P.Chames,2000,Immunol.Today 21:371−8)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対しトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.et al.,1992,Nucl.Acids Res.20:6287−95;Kellermann,S−A.and L.L.Green,2002,Curr.Opin.Biotechnol.13:593−7;Little,M.et al.,2000,Immunol.Today 21:364−70;Osborn,M.J.et al.,2013,J.Immunol.190:1481−90;Lee,E−C.et al.,2014,Nat.Biotech.32(4):356−63;Macdonald,L.E.et al.,2014,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5147−52;Murphy,A.J.et al.,2014,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5153−8を参照)または選択された配列要素の相互スプライスを伴うその他の任意の手段によって調製、発現、生成または単離されたポリペプチドを指す。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上は自然界に存在する。一部の実施形態では、このような選択された配列要素の一つ以上はインシリコで設計される。一部の実施形態では、一つ以上のこのような選択配列要素は、例えば、天然または合成起源の既知の配列要素の変異誘導(例えば、インビボまたはインビトロ)から生じる。例えば、一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、対象のソース生物(例えば、ヒト、マウスなど)のゲノムに見られる配列から成る。一部の実施形態では、組み換えポリペプチドは、変異誘導(例えば、非ヒト動物での、インビトロまたはインビボ)から生じるアミノ酸配列を持ち、従って、組み換えポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリペプチド配列から由来するが、インビボで非ヒト動物のゲノム内に自然には存在しない場合がある。
【0145】
参照:本明細書で使用される場合、対象の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値が比較される、標準または対照の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を指す。一部の実施形態では、参照の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列もしくは値の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。一部の実施形態では、参照の作用剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、任意選択的に有形媒体で具現化された公知の参照である。一部の実施形態では、参照は対照を指す場合がある。「参照」は、「参照動物」も含む。「参照動物」は本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。典型的には、当業者には理解されるように、参照の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の剤、動物(例えば、哺乳類)、コホート、個人、集団、サンプル、配列もしくは値を決定または特徴付けるために利用される条件と同等の条件下で決定または特徴付けられる。
【0146】
置換:本明細書に記載される場合、それを通して(例えば、ゲノムの)宿主座位に見られる「置換された」核酸配列(例えば、遺伝子)がその座位から取り除かれ、異なる「置換」用核酸がその場所に配置されるプロセスを指す。一部の実施形態では、置換された核酸配列及び置換用核酸配列は、例えば、それらがお互いに相同である、及び/または対応する要素(例えば、タンパク質コード要素、調節エレメントなど)を含有するという点でお互いに同等である。一部の実施形態では、置換された核酸配列は、プロモーター、エンハンサー、スプライス供与部位、スプライスアクセプター部位、イントロン、エクソン、非翻訳領域(UTR)のうち一つ以上を含み、一部の実施形態では、置換用核酸配列は、一つ以上のコード配列を含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列は、置換された核酸配列のホモログまたはバリアント(たとえば変異体)である。一部の実施形態では、置換用核酸配列は、置換された配列のオルソログまたはホモログである。一部の実施形態では、置換用核酸配列はヒト核酸配列であるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列がヒト核酸配列であるかまたはそれを含む場合を含め、置換された核酸配列は齧歯類配列(例えば、マウスまたはラット配列)であるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列がヒト核酸配列であるかまたはそれを含む場合を含め、置換された核酸配列はヒト配列であるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、置換用核酸配列は、置換された配列のバリアントまたは変異体(すなわち、置換された配列と比較して、たとえば置換などの一個以上の配列の違いを含有する配列)である。そのように配置された核酸配列は、そのように配置された配列を得るために使用されるソース核酸配列の一部である一つ以上の調節配列を含む場合がある(例えば、プロモーター、エンハンサー、5’−または3’−非翻訳領域など)。例えば、様々な実施形態で、置換は、そのように配置された核酸配列(異種配列を含む)からの遺伝子産物の産生を生じる異種配列を伴う内因性配列の代替であるが、内因性配列の発現の代替ではない。置換は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を有するポリペプチドをコードする核酸配列を持つ内因性ゲノム配列のものである(例えば内因性ゲノム配列は非ヒト可変ドメインポリペプチドのすべてまたは一部をコードし、DNA断片は一つ以上のヒト可変ドメインポリペプチドのすべてまたは一部をコードする)。様々な実施形態において、内因性非ヒトイムノグロブリン遺伝子セグメントまたはその断片は、ヒトイムノグロブリン遺伝子セグメントまたはその断片で置換される。
【0147】
実質的に:本明細書で使用される場合、対象の特徴または特性のすべてのまたはほぼすべての範囲または程度を示す定性的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象はあったとしても、完了まで進む、および/または完全な状態まで進行する、または絶対的な結果を達成または避けることは稀であることを理解するであろう。従って「実質的に」という用語は本明細書では、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の欠如の可能性をとらえるために使用される。
【0148】
実質的な相同性:本明細書で使用される場合、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指す。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に相同な残基を含む場合、「実質的に相同」であると一般的にみなされる。相同残基は同一の残基である場合がある。あるいは、相同残基は、適度に類似した構造および/または機能的特徴を持つ非同一残基であってもよい。例えば、当業者には周知のように、特定のアミノ酸は「疎水性」または「親水性」アミノ酸、および/または「極性」または「非極性」側鎖を持つものとして一般的に分類される。一つのアミノ酸の同じタイプの別のアミノ酸での置換は、「相同」置換とみなされる場合がよくある。一般的なアミノ酸分類を以下の表に要約する。
【表A】
【表B】
【0149】
当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI−BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。かかるプログラムの例は、Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.,215(3):403−10;Altschul,S.F.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:460−80;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.,25:3389−402;Baxevanis,A.D.and B.F.F.Ouellette(eds.) Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisener et al.(eds.)Bioinformatics Methods and Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.132,Humana Press,1998に解説されている。相同配列を特定することに加えて、上述のプログラムは相同性の程度の指標を一般的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも例えば限定されないが、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が相同の場合、実質的に相同であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17またはそれ以上の残基である。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿って不連続な残基を含み、例えばポリペプチドまたはその一部のフォールディングされた構造により引き合わされた非隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも例えば限定されないが、10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0150】
実質的な同一性:本明細書で使用される場合、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較を指す。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に同一な残基を含む場合、「実質的に同一」であると一般的にみなされる。当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI−BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。かかるプログラムの例は、Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.,215(3):403−10;Altschul,S.F.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:460−80;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.,25:3389−402;Baxevanis,A.D.and B.F.F.Ouellette(eds.)Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisener et al.(eds.)Bioinformatics Methods and Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.132,Humana Press,1998に解説されている。同一配列の特定に加え、上述のプログラムは多くの場合、同一性の程度の指標も提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が同一の場合、実質的に同一であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する残基区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する残基区間は例えば限定されないが少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0151】
標的化構築物または標的化ベクター:本明細書で使用される場合、標的化領域を備えるポリヌクレオチド分子を指す。標的化領域は、標的細胞、組織または動物の配列と同一または実質的に同一の配列を含み、相同組み換えにより、標的化構築物を、細胞、組織または動物のゲノム内の位置に統合する。部位特異的リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位またはFrt部位)を使用して標的にする標的化領域も含まれ、本明細書に記載される。一部の実施形態では、本明細書に記載の標的化構築物は、特に対象となる核酸配列または遺伝子と、選択可能マーカーと、制御配列および/または調製配列と、こうした配列が関与する組み換えを補助または促進するタンパク質を外部から付加することにより媒介する組み換えを可能にする、その他の核酸配列とをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される標的化構築物は対象の遺伝子の全部または一部をさらに含み、対象の該遺伝子は、内因性配列によってコードされるタンパク質と類似の機能を持つポリペプチドの全部または一部をコードする異種遺伝子である。一部の実施形態では、本明細書に記載される標的化構築物は対象のヒト化遺伝子の全部または一部をさらに含み、対象の該ヒト化遺伝子は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を持つポリペプチドの全部または一部をコードする。一部の実施形態では、標的化構築物(または標的化ベクター)は、人の手によって操作された核酸配列を含み得る。例えば一部の実施形態では、標的化構築物(または標的ベクター)は、自然界での状態では互いに連結されていないが、操作されたポリヌクレオチドまたは組み換えポリヌクレオチドにおいて互いに直接連結されるように人の手により操作されている二つ以上の配列を含む、操作されたポリヌクレオチドまたは組み換えポリヌクレオチドを含むように構築され得る。
【0152】
導入遺伝子または導入遺伝子構築物:本明細書に記載される場合、例えば本明細書に記載される方法などにより、ヒトの手により細胞内に導入された核酸配列(例えば対象ポリペプチドのすべてまたは一部をコードする核酸配列)を指す。導入遺伝子は、部分的または全体的に異種、すなわち、導入されるトランスジェニック動物または細胞に対して外来性であってもよい。導入遺伝子は、例えばイントロンまたはプロモーターなどの一つ以上の転写制御配列と、任意の他の核酸とを含む場合があり、それらは選択された核酸配列の発現に必要になり得る。
【0153】
トランスジェニック動物、トランスジェニック非ヒト動物、またはTg
+:本明細書において相互交換可能に使用することができ、任意の非天然非ヒト動物を意味し、非ヒト動物の細胞の一つ以上が、対象のポリペプチドの全部または一部をコードする、異種核酸および/または遺伝子を含有している。例えば一部の実施形態において、「トランスジェニック動物」または「トランスジェニック非ヒト動物」とは、本明細書に記載される導入遺伝子または導入遺伝子構築物を含有する動物または非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、異種核酸および/または遺伝子は、例えばマイクロインジェクションを用いるか、または組み換えウイルスによる感染を用いるなどの計画的な遺伝子操作を介した前駆細胞への導入によって、直接的または間接的に細胞内に導入される。遺伝子操作という用語は、伝統的な交配技術を含めずに、むしろ組み換えDNA分子の導入を対象にするものである。この分子は、染色体内に組み込まれてもよく、または染色体外で複製するDNAであってもよい。用語「Tg
+」には、異種核酸および/もしくは遺伝子に対してヘテロ接合性もしくはホモ接合性である動物、ならびに/または異種核酸および/または遺伝子の単一コピーもしくは多コピーを有する動物が含まれる。
【0154】
バリアント:本明細書で使用される場合、参照実体とかなりの構造的同一性を示すが、参照実体と比較して、一つ以上の化学的部分の存在またはレベルにおいて、参照実体とは構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、「バリアント」は、その参照実体とは機能的にも異なる。一般的に、特定の実体が、参照実体の「バリアント」と正しくみなされるかどうかは、参照実体とのその構造同一性の程度に基づく。当業者であれば理解するように、すべての生物学的または化学的参照実体は特定の特徴的構造要素を持つ。「バリアント」は、定義によると、一つ以上のこのような特徴的構造要素を共有する別個の化学的実体である。数例ではあるが、ポリペプチドは特徴的な配列要素を有する場合があり、当該配列要素は、直線または三次元空間中に互いに対して相対的な指定位置を有し、および/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から構成される。またはポリペプチドは、直線または三次元空間中で互いに対し相対的な指定位置を有する複数のヌクレオチド残基から構成される特徴的な配列要素を有する場合がある。別の例では、「バリアントポリペプチド」は、アミノ酸配列の一つ以上の差異および/またはポリペプチド骨格に共有結合した化学的部分(例えば、炭化水素、脂質など)の一つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドとは異なる場合がある。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、参照ポリペプチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の全体的配列同一性を示す。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、少なくとも一つの特徴的配列要素を参照ポリペプチドと共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチドは一つ以上の生物活性を持つ。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を共有する。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を欠く。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドと比べて一つ以上の生物活性のレベル減少を示す。多くの実施形態で、特定位置での少数の配列変更がなければ対象のポリペプチドが親のものと同一のアミノ酸配列を持つ場合、対象のポリペプチドは親または参照ポリペプチドの「バリアント」であるとみなされる。一般的に、親と比べて、バリアントの残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、または2%未満が置換される。一部の実施形態では、「バリアント」は、親と比べて、例えば限定されないが10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個の置換残基を有する。しばしば、「バリアント」は、非常に少数の(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能残基(すなわち、特定の生物活性に参加する残基)を持つ。さらに、「バリアント」は一般的には例えば限定されないが5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を持ち、親と比べて付加または欠失を持たないことがよくある。さらに、任意の付加または欠失は一般的には、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満であり、通常は約5、約4、約3、または約2残基である。一部の実施形態では、親または参照ポリペプチドは自然界に存在するものである。当分野の当業者であれば理解するように、特に対象のポリペプチドが感染因子ペプチドである時、対象の特定ポリペプチドの複数のバリアントは、通常は自然界に見られる場合がある。
【0155】
ベクター:本明細書で使用される場合、それが関連している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一部の実施形態では、ベクターは、染色体外複製および/または、真核および/または原核細胞などの宿主細胞中でそれらが連結している核酸の発現能力がある。操作可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0156】
野生型:本明細書で使用される場合、(変異型、病的、変更などとは対照をなす)「正常」な状態または状況で自然界に存在する構造および/または活性を有する実体を指す。当業者であれば、野生型の遺伝子およびポリペプチドは複数の異なる形態(例えば、アレル)で存在することが多いことを理解するであろう。
特定の実施形態の詳細な説明
【0157】
ある態様において、本明細書において特にヒト可変ドメインをコードする、一部の実施形態においてはヒト定常ドメインをコードする異種遺伝物質を有する操作された非ヒト動物が提供され、当該異種遺伝物質は、ヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子配列(すなわち遺伝子セグメント)ならびに適切な再構成、およびヒト部分と非ヒト部分を有する抗体または実質的にヒトもしくは実質的にほぼヒトである配列を有する抗体の発現をもたらす他のヒト配列を含む。様々な実施形態において、提供される操作された非ヒト動物は異種遺伝物質を含有し、当該異種遺伝物質は、ヒトVλドメインとヒトまたは非ヒトCλドメインを有する軽鎖を含有する抗体が非ヒト動物の抗体レパートリー中で発現されるような方法で挿入される。さらに、提供される操作された非ヒト動物は異種遺伝物質を含有し、当該異種遺伝物質は、ヒトVλドメインとヒトまたは非ヒトCλドメインを有する軽鎖を含有する抗体が操作されたIgλ軽鎖座位から発現されるような方法で挿入され、当該軽鎖座位は非ヒト動物の生殖細胞ゲノム中にヒトおよび非ヒトIgλエンハンサー領域(または配列)を含む。
【0158】
任意の特定の説に拘束されることは望まないが、本明細書に記載される非ヒト動物の実施形態は、治療用抗体の産生を目的とした、ヒトVλドメインを含有する抗体発現を活用する改善インビボシステムを提供することが予期される。また、本明細書に記載される非ヒト動物の実施形態は、一部の実施形態において、偏った抗体反応(例えばκまたはλ軽鎖のいずれかが圧倒的な比率であることを特徴とする抗体反応)と関連した疾患標的に対するヒト抗体系治療剤(例えばヒトモノクローナル抗体、多特異性結合剤、scFv、融合ポリペプチドなど)の開発を目的とした、異種遺伝物質を含有するIgλ軽鎖座位の別の操作型を提供することも予期される。ゆえに本明細書に記載される非ヒト動物の実施形態は、非対称な抗体レパートリーおよび/または抗体反応を部分的には原因とする、貧弱な免疫原性と関連した標的(例えばウイルス)に対するヒト抗体の開発に特に有用である。
【0159】
特にある態様において本開示は操作されたIgλ軽鎖座位を含有する生殖細胞ゲノムを有する非ヒト動物(例えばラットまたはマウスなどの齧歯類)の産生を記載するものであり、一部の実施形態において当該軽鎖座位は、複数のヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子配列が非ヒトCλ領域に操作可能に連結されて導入されることが特徴であり、それによりヒトVλドメインとヒトまたは非ヒトCλドメインを含む軽鎖を含有する抗体の発現が生じる。本明細書に記載されるように、そのような操作Igλ軽鎖座位が作製されることで、ヒトVλドメインとヒトまたは非ヒトCλドメインを含む軽鎖を含有する抗体の発現が、非ヒト動物の生殖細胞ゲノム中の前記操作Igλ軽鎖座位から生じる。提供される非ヒト動物の生殖細胞ゲノムは一部の実施形態において(1)ヒト化IgHおよびIgκ座位または(2)ヒト化IgH座位および機能的にサイレンシングされた、または別手段で非機能的となったIgκ軽鎖座位をさらに含む。本明細書に記載されるように、提供される非ヒト動物はIgλ軽鎖を含有する抗体レパートリーを発現し、当該軽鎖はヒトVλドメインを含んでいる。
【0160】
一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は単一Igλ軽鎖座位内にヒトと非ヒトのIgλ軽鎖配列を含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物はIgλ軽鎖座位内にヒトIgλ軽鎖配列とネズミ科(例えばマウスまたはラット)Igλ軽鎖配列を含有する。本明細書に記載される非ヒト動物の多くの実施形態において、非ヒトIgλ軽鎖配列はネズミ科(例えばマウスまたはラット)の配列であるか、またはこれを含有する。
【0161】
一部の実施形態において、Igλ軽鎖配列は、ヒトおよび/またはネズミ科(例えばマウスまたはラット)起源のものである遺伝子間DNAを含む。一部の実施形態において、Igλ軽鎖配列は合成であり、およびヒトまたはネズミ科(例えばマウスまたはラット)起源の配列に基づいた遺伝子間DNAを含む。一部の実施形態において、前記遺伝子間DNAは、同じイムノグロブリン座位のものであり、その座位中で当該遺伝子間DNAはそのように配置され、挿入され、位置付けられ、または操作される(例えばIgλ軽鎖座位中のIgλ遺伝子間DNA)。一部のある実施形態において本明細書に記載される非ヒト動物は操作されたIgλ軽鎖座位を含有し、当該軽鎖座位は非ヒト起源のIgλ軽鎖配列(例えばマウスまたはラットのIgλ軽鎖配列)を含む遺伝子間DNAを含有する。
【0162】
様々な実施形態において、ヒト化IgH座位は複数のヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントを含有し、それらセグメントは非ヒトIgH定常領域(例えばIgM、IgGなどの一つ以上のIgH定常領域遺伝子を含む内因性非ヒトIgH定常領域)に操作可能に連結される。様々な実施形態において、ヒト化Igκ軽鎖座位は複数のヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントを含有し、それらセグメントは非ヒトIgκ定常領域に操作可能に連結される。一部のある実施形態において提供される非ヒト動物は、本明細書に提供される図面(例えば
図1、2、3および/または4を参照)に図示されるイムノグロブリン座位(またはアレル)を含む生殖細胞ゲノムを有する。そのような操作された非ヒト動物は、ヒト抗体およびヒト抗体断片、ならびに/または当該ヒト抗体およびヒト抗体断片をコードする核酸の供給源を提供し、ならびにヒト治療用抗体の産生を目的としたヒトVλ配列の活用に適した改善インビボシステムを提供する。
【0163】
本明細書に記載されるように、ある実施形態において、内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位で非ヒトイムノグロブリンλ軽鎖遺伝子セグメントの代わりに複数のヒトλ軽鎖遺伝子セグメント(例えばVλ、JλおよびCλ)を含有するゲノムを有する非ヒト動物が提供され、当該非ヒト動物は、ヒト可変領域遺伝子セグメントの間にヒト非コード遺伝子間DNAを含む。一部のある実施形態において、本明細書に提供される非ヒト動物は、ヒト重鎖可変領域遺伝子セグメント(すなわちV
H、D
HおよびJ
H)とκ軽鎖可変領域遺伝子セグメント(例えばVκおよびJκ)を、非ヒト重鎖可変領域遺伝子セグメント(すなわち V
H、D
HおよびJ
H)とκ軽鎖可変領域遺伝子セグメント(例えばVκおよびJκ)の代わりにそれぞれ内因性イムノグロブリン重鎖座位とκ軽鎖座位にさらに含むゲノムを有する。多くの実施形態において、ヒトイムノグロブリン遺伝子セグメント(重鎖および/または軽鎖)は、ヒト遺伝子間DNA(すなわちヒト非コードイムノグロブリン遺伝子間DNA)で操作される。当該ヒト遺伝子間DNAは前記遺伝子セグメントと天然に関連する(すなわち非コードゲノムDNAは、ヒト細胞のヒトイムノグロブリン座位に天然に存在する前記遺伝子セグメントと関連する)。かかる遺伝子間DNAとしては例えばプロモーター、リーダー配列および組み換えシグナル配列が挙げられ、それらにより抗体可変ドメインとの関連でヒト遺伝子セグメントの適切な組み換えと発現が可能となる。当業者であれば、非ヒトイムノグロブリン座位はそのような非コード遺伝子間DNAも含有すること、および本開示を読むことで他のヒトまたは非ヒト遺伝子間DNAをかかる操作イムノグロブリン座位の構築に利用し、非ヒト動物の抗体関連においてヒト可変ドメインを同じように発現させ得ることを理解する。かかる類似操作イムノグロブリン座位は、ヒト可変ドメインを含有する抗体発現を達成するために、所望される遺伝子セグメントのヒトコード配列(すなわちエクソン)、またはヒト遺伝子セグメントの組み合わせを含有することのみを必要とする。
【0164】
ある実施形態の様々な態様を以下の項において詳細に記載する。それら各々は、本明細書に記載される任意の態様または実施形態に適用することができる。項の使用は限定を目的としたものではなく、「または」の使用は、別段の記載がない限り「および/または」を意味する。
非ヒト動物における抗体レパートリー
【0165】
イムノグロブリン(抗体とも呼ばれる)は大きな(約150kD)、Y字型の糖たんぱく質であり、宿主免疫系のB細胞により産生され、外来性抗原(例えばウイルス、細菌など)を中和する。各イムノグロブリン(Ig)は、二つの同一の重鎖と二つの同一の軽鎖から構成され、それら各々が可変ドメインと定常ドメインの二つの構造的構成要素を有する。異なるB細胞により産生された抗体において重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインは異なっているが、単一のB細胞またはB細胞クローンから産生された抗体はすべて同一である。各抗体の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインはともに抗原結合領域(または抗原結合部位)を含む。イムノグロブリンは様々な型で存在し得、含有する重鎖定常領域(またはドメイン)に基づきアイソタイプまたはクラスと呼称される。同じアイソタイプの抗体のすべてにおいて重鎖定常ドメインは同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なっている。以下の表に、マウスおよび人類(ヒト)の九種の抗体アイソタイプを要約する。
【表C】
【0166】
他の種でも追加のアイソタイプが特定されている。アイソタイプは、別のアイソタイプで異なる構造的特徴を有することで、抗体に特殊化した生物特性を与え、動物の身体内の異なる場所(細胞、組織など)に存在している。初期にはB細胞はIgMとIgDを産生し、それらは同一の抗原結合領域を有する。活性化されるとB細胞はクラススイッチと呼称されるプロセスにより別のアイソタイプへと切り替える。クラススイッチにはB細胞により産生される抗体の定常ドメインの変化が含まれるが、可変ドメインは変わらず、それにより元々の抗体(B細胞)の抗原特異性は保存される。
【0167】
二つの別個の座位(IgκとIgλ)は、抗体軽鎖をコードする遺伝子セグメント含有し、アレル排除とアイソタイプ排除の両方を示す。κ
+とλ
+B細胞の発現比率は種により異なっている。例えばヒトは約60:40(κ:λ)の比率を示す。マウスとラットでは95:5(κ:λ)の比率が観察されている。興味深いことには、ネコにおいてκ:λの比率(5:95)が観察されており、マウスおよびラットとは対極的である。いくつかの研究により、これらの観察された比率の背景にある可能性の高い理由が説明されており、論理的根拠として座位の複雑性(すなわち遺伝子セグメントの数、特にV遺伝子セグメントの数)と遺伝子セグメントの再構成の効率の両方が提唱されている。ヒトイムノグロブリンλ軽鎖座位は1,000kbを越えて広がっており、およそ70個のVλ遺伝子セグメント(29〜33個が機能性)と七個のJλ−Cλ遺伝子セグメント対(4〜5個が機能性)を含有し、それらは三つのクラスターへと組織化されている(例えば米国特許第9,006,511号の
図1を参照)。発現抗体レパートリーで観察されたVλ領域の大部分は、最も近位のクラスター(すなわちクラスターA)内に含有される遺伝子セグメントによりコードされている。マウスイムノグロブリンλ軽鎖座位はヒトの座位とは大きく異なっており、系統に応じて数個のVλおよびJλ遺伝子セグメントを含有するのみであり、それらは二つの別個の遺伝子クラスターに組織化されている(例えば米国特許第9,006,511号の
図2を参照)。
【0168】
様々なヒト疾患の治療を目的とした治療用抗体の開発は、遺伝子操作された非ヒト動物系統の創生に大きく重きを置かれており、特にヒトイムノグロブリン遺伝子に相当する遺伝物質をゲノム中に様々な量で担持している遺伝子操作齧歯類系統に注力されている(例えばBruggemann,M.et al.,2015,Arch.Immunol.Ther.Exp.63:101−8に概説されている)。そのようなトランスジェニック齧歯類系統の作製において、初期の試みにはヒトイムノグロブリン座位部分の統合に焦点が当てられていた。これにより自身での遺伝子セグメントの組み換えと、全体的にヒトである重鎖および/または軽鎖の産生が行われ、一方で内因性のイムノグロブリン座位は不活化される(例えば、Bruggemann,M.et al.,1989,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.86:67−09−13;Bruggemann,M.et al.,1991,Eur.J.Immunol.21:1323−6;Taylor,L.D.et al.,1992,Nucl.Acids Res.20:6287−6295;Davies,N.P.et al.,1993,Biotechnol.11:911−4;Green,L.L.et al.,1994,Nat.Genet.7:13−21;Lonberg,N.et al.,1994,Nature 368:856−9;Taylor,L.D.et al.,1994,Int.Immunol.6:579−91;Wagner,S.D.et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:2672−81;Fishwild,D.M.et al.,1996,Nat.Biotechnol.14:845−51;Wagner,S.D.et al.,1996,Genomics 35:405−14;Mendez,M.J.et al.,1997,Nat.Genet.15:146−56;Green,L.L.et al.,1998,J.Exp.Med.188:483−95;Xian,J.et al.,1998,Transgenics 2:333−43;Little,M.et al.,2000,Immunol.Today 21:364−70;Kellermann,S.A.and L.L.Green,2002,Cur.Opin.Biotechnol.13:593−7を参照)。特にいくつかの試みにはヒトIgλ軽鎖配列の統合が含まれていた(例えば米国特許出願公開の2002/0088016 A1、2003/0217373 A1、および2011/0236378 A1;米国特許第6,998,514号および第7,435,871号;Nicholson,I.C.et al.,1999,J.Immunol.163:6898−906;Popov,A.V et al.,1999,J.Exp.Med.189(10):1611−19を参照)。そのような試みは、ヒトVλ、Jλ、およびCλ配列を含有する酵母人工染色体の無作為統合に焦点が当てられ、これにより完全ヒトλ軽鎖(すなわちヒト可変およびヒト定常)を発現するマウス系統が作られた。最近ではヒトVλ、JλおよびCλ配列も含有する構築物を使用した類似の試みも行われている(Osborn,M.J.et al.,2013,J.Immunol.190:1481−90;Lee,E−C.et al.,2014,Nat.Biotech.32(4):356−63)。
【0169】
さらに他の試みとしては、ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントを内因性齧歯類Ig軽鎖座位(κおよびλ)内に特異的に挿入し、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントを内因性Ig軽鎖定常領域に操作可能に連結させる試みが挙げられる(例えば米国特許第9,006,511号、第9,012,717号、第9,029,628号、第9,035,128号、第9,066,502号、第9,150,662号、および第9,163,092号を参照のこと。それらすべて参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。かかる動物において、クラスターAとBのヒトVλ遺伝子セグメントのすべて、およびヒトJλ遺伝子セグメントのいずれか一〜四個が、内因性IgκおよびIgλ軽鎖座位内に挿入された。結果としていくつかの異なるヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、遺伝子操作された齧歯類Ig軽鎖座位の両方で適切に再構成されて機能性ヒトVλドメインを形成し、それらは齧歯類抗体レパートリーの軽鎖中のCκおよびCλ領域の両方の状況下で発現されたことを示した(例えば米国特許第9,006,511号の表7と
図11〜13を参照)。特にヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントを担持する操作Igκ軽鎖座位を有するマウスは、脾臓部分において約1:1のκ:λの比率を示した(例えば米国特許第9,006,511号の表4を参照)。実際に両方とも操作されたマウス系統(すなわち操作Igκまたは操作Igλ軽鎖座位)は、ヒトVλドメインが、通常は軽鎖発現において大きな偏りを示す齧歯類中の内因性Ig軽鎖座位から発現され得たことを示した(上記を参照)。本発明は、他の操作Ig軽鎖座位構造は、非ヒト動物において治療標的に対する抗体レパートリー中のヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントの利用を、特に通常ヒトIgλ軽鎖座位と関連する(すなわちヒト細胞において存在する)複雑性と安定した品質を欠くIgλ軽鎖座位を含有する非ヒト動物(例えばマウスおよびラット)と比較して、最大化するよう作製され得るという認識に基づいている。そのように選択的に操作されたIg軽鎖座位構造は、その設計から生じる固有の抗体レパートリー能力を提供する。
【0170】
本開示は特に、その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性Igλ軽鎖座位を含有する非ヒト動物の作製に成功したことを記載するものであり、当該軽鎖座位は、複数のヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgλ軽鎖定常領域に操作可能に連結されている。特に本開示は、ヒト可変ドメインと非ヒト定常ドメインを有する抗体を発現する操作非ヒト動物の作製に成功したことを具体的に記載するものであり、それら抗体はヒトVλドメインを含有する軽鎖を含んでいる。本明細書に記載されるように、そのような軽鎖の発現は、前記複数のヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントを内因性Igλ軽鎖座位(またはアレル)に挿入することで達成される。また本明細書に記載されるように、提供される非ヒト動物は一部の実施形態において、内因性Vλドメインを含有する軽鎖の発現が(例えば遺伝子欠失により)不活化されるように操作される。ゆえに本開示は少なくとも一部の実施形態において、選択的に操作されたIgλ軽鎖座位を含有する操作された非ヒト動物を提供することによりヒト抗体産生のための改善されたインビボシステムの開発を包含するものであり、当該軽鎖座位はヒトVλドメインを含有する発現抗体レパートリーを生じさせる。
DNA挿入
【0171】
典型的にはヒトIgλ軽鎖配列(例えばVλ、Jλ、CλおよびIgλエンハンサー)またはその一部を含有するポリヌクレオチド分子は、宿主細胞中で当該ポリヌクレオチド分子を複製させるためのベクター、好ましくはDNAベクター内に挿入される。
【0172】
ヒトIgλ軽鎖配列は、公知の配列または供給源(例えばライブラリー)から直接クローニングすることができ、またはGeneBankまたは他の公的に利用可能なデータベース(例えばIMGT)から入手可能な公開配列に基づいてインシリコ設計された生殖細胞配列から合成することもできる。あるいは細菌人工染色体(BAC)ライブラリーも対象のイムノグロブリンDNA配列(例えばヒトVλ遺伝子セグメント、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対、ヒトEλ領域または配列、およびそれらの組み合わせ)を提供することができる。BACライブラリーは、100〜150kbの挿入サイズを含み得、300kbもの大きさの挿入を保有し得る(Shizuya,et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 89:8794−8797;Swiatek,et al.,1993,Genes and Development 7:2071−2084;Kim,et al.,1996,Genomics 34 213−218、これらの文献は参照によりその全体で本明細書に援用される)。例えば164〜196kbの平均挿入サイズを保有するヒトBACライブラリーが報告されている(Osoegawa,K.et al.,2001,Genome Res.11(3):483−96;Osoegawa,K.et al.,1998,Genomics 52:1−8,Article No.GE985423)。ヒトおよびマウスのゲノムBACライブラリーが構築されており、市販されている(例えば、Thermo Fisher社)。ゲノムBACライブラリーは、イムノグロブリンDNA配列ならびに転写制御領域の供給源として利用することもできる。
【0173】
あるいは、イムノグロブリンDNA配列は、酵母人工染色体(YAC)から単離、クローニング、および/または移転させてもよい。例えばヒトIgλ軽鎖座位のヌクレオチド配列が決定されている(例えばDunham,I.et al.,1999,Nature 402:489−95を参照)。さらに過去にYACを利用してヒトIgλ軽鎖座位導入遺伝子がアセンブリされている(例えばPopov,A.V.et al.,1996,Gene 177:195−201;Popov,A.V.et al.,1999,J.Exp.Med.189(10):1611−19を参照)。全Igλ軽鎖座位(ヒトまたは齧歯類)をクローニングして、いくつかのYAC内に含有させることができる。複数のYACが使用され、それらが重複相同性の領域を含有する場合、それらを酵母宿主株内で再結合させて、完全な座位または所望される座位部分(例えば標的化ベクターで標的化される領域)を提示する単一構築物を生成することができる。哺乳類選択カセットを用いた改良によりYACのアームをさらに改変し、当技術分野に公知の方法および/または本明細書に記載される方法により、構築物を胚性幹細胞または胚に導入することを補助してもよい。
【0174】
本明細書に記載される操作Igλ軽鎖座位の構築における使用のためのヒトIgλ軽鎖遺伝子セグメントのDNA配列およびアミノ酸配列は、公開データベース(例えばGeneBank、IMGTなど)および/または公開されている抗体配列から取得してもよい。ヒトIgλ軽鎖遺伝子セグメントを含有するDNA挿入は一部の実施形態において一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列(または領域)を含む。DNA挿入は一部の実施形態において一つ以上、例えば一つ、二つ、三つなどの配列因子を含むヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列(または領域)を含む。一部のある実施形態においてDNA挿入はヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列(または領域)を含み、この配列は三つの異なる配列因子を有するヒトEλとも呼称される。ゆえに一部の実施形態において本明細書に記載されるヒトEλはモジュール式であり、一つ以上の配列因子がエンハンサー配列(または領域)として共に機能する。一部のある実施形態においてヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含有するDNA挿入はヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含み、当該エンハンサー配列は非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば非ヒトIgλ軽鎖定常領域配列)に操作可能に連結されている。一部のある実施形態においてヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含有するDNA挿入はヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含み、当該エンハンサー配列は非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば非ヒトIgλ軽鎖定常領域配列)に操作可能に連結され、そして一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対、および/または一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントに操作可能に連結されている。一部のある実施形態においてヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含有するDNA挿入はヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含み、当該エンハンサー配列は非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば非ヒトIgλ軽鎖定常領域配列)、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結されている。
【0175】
DNA挿入は、当技術分野に公知の方法を使用して調製することができる。例えば、DNA挿入は、大きなプラスミドの一部として調製することができる。そのような調製により、当技術分野で公知のように、効率的な方法で正しい構築物のクローニングと選択が可能となる。本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列のすべてまたは一部を含有するDNA挿入は、プラスミド上の便利な制限酵素部位の間に位置づけることができ、それによって、所望される非ヒト動物内への組み込みのために、残りのプラスミド配列からそれらを簡便に単離することができる。
【0176】
プラスミドの調製と宿主生物体の形質転換とに使用される様々な方法が当技術分野に公知である。原核細胞及び真核細胞の両方に適した他の発現システム、ならびに一般的な組み換え法に関しては、Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Manipulation,5th Ed.,ed.By Old,R.W.and S.B.Primrose,Blackwell Science,Inc.,1994およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,J.et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989を参照のこと。
標的化ベクター
【0177】
標的化ベクターを利用してDNA挿入をゲノム標的座位に導入し、DNA挿入と、前記DNA挿入に隣接する相同アームを含ませることができる。標的化ベクターは直線型であっても環状型であってもよく、そして一本鎖または二本鎖であってもよい。標的化ベクターはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であってもよい。言及を容易にするために、本明細書において相同アームを5’および3’(すなわち上流および下流)相同アームと呼称する。この専門用語は、標的化ベクター内のDNA挿入に対する相同アームの相対位置に関連する。5’および3’相同アームは、標的化座位内の領域、または別の標的化ベクター内の領域に対応し、それらは本明細書においてそれぞれ「5’標的配列」および「3’標的配列」と呼称される。一部の実施形態において相同アームは5’標的配列または3’標的配列としても機能し得る。
【0178】
一部の実施形態において本明細書に記載される方法は互いに組み替えることができる標的化ベクターを二つ、三つまたはそれ以上利用する。様々な実施形態において、標的化ベクターは、本明細書の別の部分で記載される大型標的化ベクター(LTVEC)である。そのような実施形態において、第一、第二、および第三の標的化ベクター各々が5’および3’相同アームを含む。第一の標的化ベクターの3’相同アームは、第二の標的化ベクターの5’相同アームと重複する配列(すなわち重複配列)を含み、これが第一と第二のLTVECの間の相同組換えを可能とする。
【0179】
二重標的化方法の場合、第一の標的化ベクターの5’相同アームと第二の標的化ベクターの3’相同アームは、標的ゲノム座位内の対応するセグメント(すなわち標的配列)に対し相同であり、このことが第一および第二の標的化ベクターと、対応するゲノムセグメントの相同組換えを促進し、標的ゲノム座位を改変する。
【0180】
三重標的化方法の場合、第二の標的化ベクターの3’相同アームは、第三の標的化ベクターの5’相同アームと重複する配列(すなわち重複配列)を含み、これが第二と第三のLTVECの間の相同組換えを可能とする。第一の標的化ベクターの5’相同アームと第三の標的化ベクターの3’相同アームは、標的ゲノム座位内の対応するセグメント(すなわち標的配列)に対し相同であり、このことが第一および第三の標的化ベクターと、対応するゲノムセグメントの相同組換えを促進し、標的ゲノム座位を改変する。
【0181】
相同アームと標的配列または二つの相同アームは、その二つの領域が充分なレベルの配列相同性を互いに共有し、相同組換え反応の基質として作用する場合に、互いに「対応する」または「対応している」。「相同」という用語は、対応する配列と同一であるか、または配列同一性を共有するDNA配列を含む。所与の標的配列と、標的化ベクター中に存在する対応する相同アーム(すなわち重複配列)、または二つの相同アームの間の配列同一性は、相同組換えが発生し得る任意の程度の配列同一性であってもよい。一例であるが、標的化ベクターの相同アーム(またはその断片)と別の標的化ベクターの標的配列または標的ゲノム座位の標的配列(またはその断片)により共有される配列同一性の量は、例えば限定されないが少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性であってもよく、それにより当該配列は相同組換えを受ける。
【0182】
さらに相同アームと対応する標的配列の間の対応する相同領域は、標的ゲノム座位で相同組換えを促進するために充分である任意の長さの領域であってもよい。例えば所与の相同アームおよび/または対応する標的配列は、例えば限定されないが少なくとも約5〜10kb、5〜15kb、5〜20kb、5〜25kb、5〜30kb、5〜35kb、5〜40kb、5〜45kb、5〜50kb、5〜55kb、5〜60kb、5〜65kb、5〜70kb、5〜75kb、5〜80kb、5〜85kb、5〜90kb、5〜95kb、5〜100kb、100〜200kb、または200〜300kbの長さかそれ以上(例えば本明細書の別の箇所で記載される)である対応する相同領域を含んでもよく、それにより相同アームは、細胞の標的ゲノム座位内または別の標的化ベクター内の対応する標的配列との相同組換えを受けるのに充分な相同性を有する。一部の実施形態において所与の相同アームおよび/または対応する標的配列は、例えば限定されないが少なくとも約10〜100kb、15〜100kb、20〜100kb、25〜100kb、30〜100kb、35〜100kb、40〜100kb、45〜100kb、50〜100kb、55〜100kb、60〜100kb、65〜100kb、70〜100kb、75〜100kb、80〜100kb、85〜100kb、90〜100kb、または95〜100kbの長さかそれ以上(例えば本明細書の別の箇所で記載される)である対応する相同領域を含み、それにより相同アームは、細胞の標的ゲノム座位内または別の標的化ベクター内の対応する標的配列との相同組換えを受けるのに充分な相同性を有する。
【0183】
第一の標的化ベクターの3’相同アームおよび第二の標的化ベクターの5’相同アームの重複配列、または第二の標的化ベクターの3’相同アームおよび第三の標的化ベクターの5’相同アームの重複配列は、前記標的化ベクター間での相同組換えが促進されるのに充分である任意の長さであってもよい。例えば相同アームの所与の重複配列は、少なくとも約1〜5kb、5〜10kb、5〜15kb、5〜20kb、5〜25kb、5〜30kb、5〜35kb、5〜40kb、5〜45kb、5〜50kb、5〜55kb、5〜60kb、5〜65kb、5〜70kb、5〜75kb、5〜80kb、5〜85kb、5〜90kb、5〜95kb、5〜100kb、100〜200kb、または200〜300kbの長さかそれ以上である対応する重複領域を含んでもよく、それにより相同アームの重複領域は、別の標的化ベクター内の対応する重複配列との相同組換えを受けるのに充分な相同性を有する。一部の実施形態において、相同アームの所与の重複配列は、少なくとも約1〜100kb、5〜100kb、10〜100kb、15〜100kb、20〜100kb、25〜100kb、30〜100kb、35〜100kb、40〜100kb、45〜100kb、50〜100kb、55〜100kb、60〜100kb、65〜100kb、70〜100kb、75〜100kb、80〜100kb、85〜100kb、90〜100kb、または95〜100kbの長さかそれ以上である重複領域を含み、それにより相同アームの重複領域は、別の標的化ベクター内の対応する重複配列との相同組換えを受けるのに充分な相同性を有する。一部の実施形態において、重複配列は、1kb以上〜5kb以下である。一部の実施形態において、重複配列は、約1kb以上〜約70kb以下である。一部の実施形態において、重複配列は、約10kb以上〜約70kb以下である。一部の実施形態において、重複配列は、約10kb以上〜約50kb以下である。一部の実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。一部の実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。例えば重複配列は、約1kb以上〜約5kb以下、約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約15kb以下、約15kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約25kb以下、約25kb以上〜約30kb以下、約30kb以上〜約35kb以下、約35kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約45kb以下、約45kb以上〜約50kb以下、約50kb以上〜約60kb以下、約60kb以上〜約70kb以下、約70kb以上〜約80kb以下、約80kb以上〜約90kb以下、約90kb以上〜約100kb以下、約100kb以上〜約120kb以下、約120kb以上〜約140kb以下、約140kb以上〜約160kb以下、約160kb以上〜約180kb以下、約180kb以上〜約200kb以下、約200kb以上〜約220kb以下、約220kb以上〜約240kb以下、約240kb以上〜約260kb以下、約260kb以上〜約280kb以下、または約280kb以上〜約300kb以下であってもよい。一例であるが、重複配列は、約20kb以上〜約60kb以下であってもよい。あるいは重複配列は、少なくとも1kb、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも120kb、少なくとも140kb、少なくとも160kb、少なくとも180kb、少なくとも200kb、少なくとも220kb、少なくとも240kb、少なくとも260kb、少なくとも280kb、または少なくとも300kbであってもよい。
【0184】
相同アームは一部の実施形態においては、細胞由来である座位(例えば標的とされる座位)に対応してもよく、あるいは相同アームは細胞ゲノム内に統合された例えば導入遺伝子、発現カセット、または異種もしくは外因性DNA領域などの異種または外来性DNAセグメントの領域に対応してもよい。あるいは相同アームは一部の実施形態においては細胞中の標的化ベクター上の領域に対応してもよい。一部の実施形態において、標的化ベクターの相同アームは、酵母人工染色体(YAC)の領域、細菌人工染色体(BAC)の領域、ヒト人工染色体の領域、または適切な宿主細胞中に含有される任意の他の操作された領域に対応してもよい。またさらに、標的化ベクターの相同アームは、BACライブラリー、コスミドライブラリー、もしくはP1ファージライブラリーの領域に対応するか、またはそれらから誘導されてもよい。一部のある実施形態において標的化ベクターの相同アームは、原核細胞、酵母、鳥類(例えばニワトリ)、非ヒト哺乳類、齧歯類、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル)、家畜、農業用哺乳類、または任意の他の対象生物に由来する、それらに対して異種である、またはそれらに対して外因性である座位に対応する。一部の実施形態において、相同アームは、従来的な方法では標的とすることができない細胞の座位、または不正確になら標的とされることができるか、もしくはヌクレアーゼ物質(例えばCasタンパク質)により誘導されるニックまたは二本鎖切断が無い状況下で著しく低い効率でのみ、標的とされることができる細胞の座位に対応する。一部の実施形態において、相同アームは合成DNAから誘導される。
【0185】
一部の実施形態において、標的化ベクターの5’または3’の相同アームの内の一つは、標的とされるゲノム座位に対応し、当該5’または3’の相同アームのうちの他方は、別の標的化ベクター上の領域に対応する。
【0186】
一部の実施形態において、標的化ベクターの5’および3’の相同アームは、標的とされるゲノムに対応する。あるいは相同アームは関連ゲノムに由来してもよい。例えば標的とされるゲノムは第一のマウス系統のゲノムであり、標的化アームは第二のマウス系統のゲノム由来であり、この場合において当該第一系統と第二系統は異なっている。ある実施形態において、相同アームは同じ動物のゲノム由来であるか、または同じ系統のゲノム由来である。例えば標的とされるゲノムは第一のマウス系統のゲノムであり、標的化アームは同じマウスまたは同じマウス系統のマウスゲノム由来である。
【0187】
標的化ベクターの相同アームは、対応する標的配列との相同組み換え事象を促進するために充分である任意の長さであってもよく、例えば少なくとも1kb以上〜5kb以下、5kb以上〜10kb以下、5kb以上〜15kb以下、5kb以上〜20kb以下、5kb以上〜25kb以下、5kb以上〜30kb以下、5kb以上〜35kb以下、5kb以上〜40kb以下、5kb以上〜45kb以下、5kb以上〜50kb以下、5kb以上〜55kb以下、5kb以上〜60kb以下、5kb以上〜65kb以下、5kb以上〜70kb以下、5kb以上〜75kb以下、5kb以上〜80kb以下、5kb以上〜85kb以下、5kb以上〜90kb以下、5kb以上〜95kb以下、5kb以上〜100kb以下、100kb以上〜200kb以下、または200kb以上〜300kb以下の長さ、またはそれ以上を含む任意の長さであってもよい。一部の実施形態において、標的化ベクターの相同アームは、少なくとも1kb以上〜100kb以下、5kb以上〜100kb以下、10kb以上〜100kb以下、15kb以上〜100kb以下、20kb以上〜100kb以下、25kb以上〜100kb以下、30kb以上〜100kb以下、35kb以上〜100kb以下、40kb以上〜100kb以下、45kb以上〜100kb以下、50kb以上〜100kb以下、55kb以上〜100kb以下、60kb以上〜100kb以下、65kb以上〜100kb以下、70kb以上〜100kb以下、75kb以上〜100kb以下、80kb以上〜100kb以下、85kb以上〜100kb以下、90kb以上〜100kb以下、または95kb以上〜100kb以下の長さ、またはそれ以上である対応する標的配列との相同組み換え事象を促進するために充分である長さを有する。本明細書において記載されるように、大型標的化ベクターは、より長い標的化アームを採用することができる。
【0188】
ヌクレアーゼ物質(例えばCRISPR/Casシステム)を標的化ベクターと組み合わせて採用し、標的座位(例えばIgλ軽鎖座位)の改変を促進することができる。そのようなヌクレアーゼ物質は、標的化ベクターと標的座位の間の相同組換えを促進し得る。ヌクレアーゼ物質を標的化ベクターと組み合わせて採用した場合、その標的化ベクターは、ヌクレアーゼ切断部位に充分に近接して配置された5’および3’の標的配列に対応する5’および3’の相同アームを含み、それにより当該ヌクレアーゼ切断部位でのニックまたは二本鎖切断時に、標的配列と相同アームの間の相同組換え事象の発生を促進させることができる。「ヌクレアーゼ切断部位」という用語は、ニックまたは二本鎖切断がヌクレアーゼ物質により生じるDNA配列を含む(例えばCas9切断部位)。標的化ベクターの5’および3’の相同アームに対応する標的座位内の標的配列は、その距離が、認識部位でのニックまたは二本鎖切断時に5’および3’の標的配列と相同アームの間の相同組換え事象の発生を促進するものであれば、ヌクレアーゼ切断部位に対し「充分に近接して配置」されている。ゆえにある実施形態において、標的化ベクターの5’および/または3’の相同アームに対応する標的配列は、所与の認識部位から1ヌクレオチド以内であるか、所与の認識から少なくとも10ヌクレオチド〜約14kb以内である。一部の実施形態において、ヌクレアーゼ切断部位は、標的配列の内の少なくとも一つ、または両方に対し、すぐに隣接している。
【0189】
標的化ベクターの相同アームに対応する標的配列とヌクレアーゼ切断部位の空間的関連性は変化し得る。例えば標的配列はヌクレアーゼ切断部位に対し5’側に配置されてもよく、標的配列は認識部位に対し3’側に配置されてもよく、または標的配列はヌクレアーゼ切断部位に隣接してもよい。
【0190】
標的化ベクター(例えば大型標的化ベクターを含む)をヌクレアーゼ物質と組み合わせて使用することで、標的化ベクター単独で使用したときと比較して標的化効率を上昇させることができる。例えば標的化ベクターをヌクレアーゼ物質と組み合わせて使用する場合、標的化ベクターの標的化効率は、標的化ベクター単独での使用と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、またはこれら整数値から成り立つ範囲以内、例えば2〜10倍まで上昇させることができる。
【0191】
一部の標的化ベクターは、「大型標的化ベクター」または「LTVEC」であり、それらは細胞中で相同組換えを行うことを目的とした他の方法で一般的に使用される核酸配列よりも大きい核酸配列に対応する、または当該核酸配列に由来する相同アームを含有する標的化ベクターを含む。LTVECは、例えば少なくとも10kbの長さであってもよく、または5’相同アームと3’相同アームの総計が例えば少なくとも10kbであってもよい。LTVECは、細胞中で相同組換えを行うことを目的とした他の方法で一般的に使用されるものよりも大きいDNA挿入含む標的化ベクターも含む。例えばLTVECは、従来のプラスミド系標的化ベクターではサイズ制限の問題で適合させることができない大きな座位の改変を可能にする。例えば標的とされる座位は、従来的な方法では標的とすることができない細胞の座位、または不正確になら標的とされることができるか、もしくはヌクレアーゼ物質(例えばCasタンパク質)により誘導されるニックまたは二本鎖切断が無い状況下で著しく低い効率でのみ、標的とされることができる細胞の座位であってもよい(すなわち5’および3’の相同アームは、それら座位に対応することができる)。
【0192】
一部の実施形態において本明細書に記載される方法は、互いにおよび標的ゲノム座位と組み替えることができる二つまたは三つのLTVECを、三方または四方の組み換え事象で採用する。かかる方法により、単一のLTVECを使用しては達成することができない大きな座位の改変が可能となる。
【0193】
LTVECの例としては、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体、または酵母人工染色体(YAC)から誘導されたベクターが挙げられる。LTVECおよびその作製方法の例は、例えば米国特許第6,586,251号、第6,596,541号および第7,105,348号、ならびに国際特許出願公開2002/036789に記載されており、それら各々は参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。LTVECは、直線型であってもよく、または環状型であってもよい。
【0194】
LTVECは、例えば約20kb以上〜約300kb以下、約20kb以上〜約50kb以下、約50kb以上〜約75kb以下、約75kb以上〜約100kb以下、約100kb〜125kb以下、約125kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約175kb以下、約175kb以上〜約200kb以下、約200kb以上〜約225kb以下、約225kb以上〜約250kb以下、約250kb以上〜約275kb以下、または約275kb以上〜約300kb以下を含む任意の長さのものであってもよい。あるいはLTVECは、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、または少なくとも500kbまたはそれ以上であってもよい。LTVECの大きさは一部の実施形態において大きすぎるために従来的なアッセイ法、例えばサザンブロッティングやロングレンジ(例えば1kb〜5kb)PCRなどでは標的化事象のスクリーニングを行うことができない。
【0195】
一部の実施形態においてLTVECは、約5kb以上〜約200kb以下、約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約30kb以下、約30kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約50kb以下、約60kb以上〜約70kb以下、約80kb以上〜約90kb以下、約90kb以上〜約100kb以下、約100kb以上〜約110kb以下、約120kb以上〜約130kb以下、約130kb以上〜約140kb以下、約140kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約160kb以下、約160kb以上〜約170kb以下、約170kb以上〜約180kb以下、約180kb以上〜約190kb以下、または約190kb以上〜約200kb以下の範囲のDNA挿入を含む。一部の実施形態においてDNA挿入は、例えば約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約60kb以下、約60kb以上〜約80kb以下、約80kb以上〜約100kb以下、約100kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約200kb以下、約200kb以上〜約250kb以下、約250kb以上〜約300kb以下、約300kb以上〜約350kb以下、または約350kb以上〜約400kb以下の範囲であってもよい。一部の実施形態においてLTVECは、例えば約400kb以上〜約450kb以下、約450kb以上〜約500kb以下、約500kb以上〜約550kb以下、約550kb以上〜約600kb以下、約600kb以上〜約650kb以下、約650kb以上〜約700kb以下、約700kb以上〜約750kb以下、または約750kb以上〜約800kbの範囲のDNA挿入を含む。
【0196】
一部の実施形態において、LTVECの5’相同アームと3’相同アームの総計は、少なくとも10kbである。一部の実施形態において、LTVECの5’相同アームは、約1kb以上〜約100kb以下の範囲であり、および/またはLTVECの3’相同アームは、約1kb以上〜約100kb以下の範囲である。5’および3’の相同アームの総計は、例えば約1kb以上〜約5kb以下、約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約30kb以下、約30kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約50kb以下、約50kb以上〜約60kb以下、約60kb以上〜約70kb以下、約70kb以上〜約80kb以下、約80kb以上〜約90kb以下、約90kb以上〜約100kb以下、約100kb以上〜約110kb以下、約110kb以上〜約120kb以下、約120kb以上〜約130kb以下、約130kb以上〜約140kb以下、約140kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約160kb以下、約160kb以上〜約170kb以下、約170kb以上〜約180kb以下、約180kb以上〜約190kb以下、または約190kb以上〜約200kb以下であってもよい。あるいは各相同アームは一部の実施形態において、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、または少なくとも200kbであってもよい。同様に5’および3’の相同アームの総計は一部の実施形態において、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、または少なくとも200kbであってもよい。
【0197】
一部の実施形態においてLTVECとDNA挿入は標的座位で約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約60kb以下、約60kb以上〜約80kb以下、約80kb以上〜約100kb以下、または約100kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約200kb以下、約200kb以上〜約300kb以下、約300kb以上〜約400kb以下、約400kb以上〜約500kb以下、約500kb以上〜約600kb以下、約600kb以上〜約700kb以下、約700kb以上〜約800kb以下、または約500kb以上〜約1Mb以下、約1Mb以上〜約1.5Mb以下、約1.5Mb以上〜約2Mb以下、約2Mb以上〜約2.5Mb以下、または約2.5Mb以上〜約3Mb以下の内因性配列の欠失が可能となるよう設計される。あるいは欠失は約3Mb以上〜約4Mb以下、約4Mb以上〜約5Mb以下、約5Mb以上〜約10Mb以下、約10Mb以上〜約20Mb以下、約20Mb以上〜約30Mb以下、約30Mb以上〜約40Mb以下、約40Mb以上〜約50Mb以下、約50Mb以上〜約60Mb以下、約60Mb以上〜約70Mb以下、約70Mb以上〜約80Mb以下、約80Mb以上〜約90Mb以下、または約90Mb以上〜約100Mb以下であってもよい。あるいは欠失は、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、または少なくとも500kbまたはそれ以上であってもよい。
【0198】
一部の実施形態においてLTVECとDNA挿入は、例えば約5kb以上〜約10kb以下、約10kb以上〜約20kb以下、約20kb以上〜約40kb以下、約40kb以上〜約60kb以下、約60kb以上〜約80kb以下、約80kb以上〜約100kb以下、約100kb以上〜約150kb以下、約150kb以上〜約200kb以下、約200kb以上〜約250kb以下、約250kb以上〜約300kb以下、約300kb以上〜約350kb以下、または約350kb以上〜約400kb以下の範囲の外因性核酸配列の標的座位内への挿入が可能となるように設計される。あるいは挿入は一部の実施形態において、約400kb以上〜約450kb以下、約450kb以上〜約500kb以下、約500kb以上〜約550kb以下、約550kb以上〜約600kb以下、約600kb以上〜約650kb以下、約650kb以上〜約700kb以下、約700kb以上〜約750kb以下、または約750kb以上〜約800kbの範囲であってもよい。あるいは挿入は一部の実施形態において、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450 kb、または少なくとも500kbまたはそれ以上であってもよい。
【0199】
さらに別の例において、DNA挿入および/または変えられる、欠失される、標的とされる、改変される、操作されるなどの内因性座位の領域は、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、もしくは900ヌクレオチド、または少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb、17kb、18kb、19kb、20kbもしくはそれ以上である。一部の実施形態において、DNA挿入および/または変えられる、欠失される、標的とされる、改変される、操作されるなどの内因性座位の領域は、ヌクレオチド〜20kb、200ヌクレオチド〜20kb、300ヌクレオチド〜20kb、400ヌクレオチド〜20kb、500ヌクレオチド〜20kb、600ヌクレオチド〜20kb、700ヌクレオチド〜20kb、800ヌクレオチド〜20kb、900ヌクレオチド〜20kb、1kb〜20kb、2kb〜20kb、3kb〜20kb、4kb〜20kb、5kb〜20kb、6kb〜20kb、7kb〜20kb、8kb〜20kb、9kb〜20kb、10kb〜20kb、11kb〜20kb、12kb〜20kb、13kb〜20kb、14kb〜20kb、15kb〜20kb、16kb〜20kb、17kb〜20kb、18kb〜20kb、または19kb〜20kbである。一部の実施形態において、DNA挿入および/または変えられる、欠失される、標的とされる、改変される、操作されるなどの内因性座位の領域は、100ヌクレオチド〜19kb、100ヌクレオチド〜18kb、100ヌクレオチド〜17kb、100ヌクレオチド〜16kb、100ヌクレオチド〜15kb、100ヌクレオチド〜14kb、100ヌクレオチド〜13kb、100ヌクレオチド〜12kb、100ヌクレオチド〜11kb、100ヌクレオチド〜10kb、100ヌクレオチド〜9kb、100ヌクレオチド〜8kb、100ヌクレオチド〜7kb、100ヌクレオチド〜6kb、100ヌクレオチド〜5kb、100ヌクレオチド〜4kb、100ヌクレオチド〜3kb、100ヌクレオチド〜2kb、100ヌクレオチド〜1kb、100ヌクレオチド〜900ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜800ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜700ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜600ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜500ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜400ヌクレオチド、100ヌクレオチド〜300ヌクレオチド、または100ヌクレオチド〜200ヌクレオチドである。一部の実施形態において、DNA挿入、および/または変えられる、欠失される、標的とされる、改変される、操作されるなどの内因性座位の領域は、200ヌクレオチド〜19kb、300ヌクレオチド〜18kb、400ヌクレオチド〜17kb、500ヌクレオチド〜16kb、600ヌクレオチド〜15kb、700ヌクレオチド〜14kb、800ヌクレオチド〜13kb、900ヌクレオチド〜12kb、1kb〜11kb、2kb〜10kb、3kb〜9kb、4kb〜8kb、5kb〜7kb、または5kb〜6kbである。
提供される非ヒト動物
【0200】
ある態様において、ヒトIgλ軽鎖配列のすべてまたは一部を含む軽鎖を含有する抗体を発現する非ヒト動物が提供され、当該軽鎖はヒトIgλ軽鎖座位の少なくとも一部に相当する遺伝物質の統合から生じたものであり、当該軽鎖座位は少なくともヒトVλドメイン(すなわち再構成されたヒトVλ−Jλ配列)を、非ヒト動物の生殖細胞ゲノム中の対応する非ヒトIgλ軽鎖配列の代わりにコードしている。本明細書に記述される適切な例としては、限定されないが齧歯類、特にラットまたはマウスが挙げられる。
【0201】
ヒトIgλ軽鎖配列は一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖座位由来の遺伝物質を含み、この場合において当該ヒトIgλ軽鎖配列は、ヒトIgλ軽鎖座位由来の遺伝物質のコード部分を含むイムノグロブリン軽鎖をコードする。一部の実施形態において本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列は、少なくとも一つのヒトVλ遺伝子セグメントおよび少なくとも一つのヒトJλ遺伝子セグメント、ならびに前記少なくとも一つのヒトVλ遺伝子セグメントと前記少なくとも一つのヒトJλ遺伝子セグメントの再構成を促進し、ヒトVλドメインをコードする機能的な再構成ヒトVλ−Jλ配列を形成させるために必要な配列(例えば組み換えシグナル配列)を一つ以上含む。多くの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、複数のヒトVλ遺伝子セグメントと、前記ヒトVλ遺伝子セグメントと少なくとも一つのヒトJλ遺伝子セグメントの再構成を促進するために必要な配列を一つ以上含む。多くの実施形態において、本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列は、(例えば細菌人工染色体から単離された、および/またはクローニングされた)ヒトIgλ軽鎖座位のゲノム配列であり、複数のヒトVλ遺伝子セグメントを生殖細胞構造中に含有する。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、生殖細胞構造中にヒトVλ、JλおよびCλ配列を含む(すなわち前記ヒトVλ、JλおよびCλ配列は、ヒト細胞のIgλ軽鎖座位中に存在する)。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、図面(例えば
図1〜4を参照)中にあるヒト配列であるか、またはこれを含む。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、Igλ軽鎖ポリペプチドのすべてまたは一部をコードし、当該Igλ軽鎖ポリペプチドは、イムノグロブリン、特にヒトB細胞より発現されるイムノグロブリン中に存在する。前記ヒトIgλ軽鎖配列を、対応する非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば内因性齧歯類Igλ軽鎖座位)の代わりに含有する非ヒト動物、非ヒト胚、および細胞を作製するための非ヒト動物、胚、細胞、および標的化構築物も提供される。
【0202】
一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、非ヒト動物の生殖細胞ゲノム内に、対応する非ヒトIgλ軽鎖配列の代わりに挿入される。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば非ヒトIgλ軽鎖定常領域配列)の上流に挿入される。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖配列の真ん中に挿入され、それにより前記ヒトIgλ軽鎖配列は、非ヒトIgλ軽鎖配列と並列する(例えば
図1、2、3および/または4を参照)。
【0203】
一部の実施形態において、非ヒトIgλ軽鎖座位の一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖配列(またはその一部)は欠失されない。一部の実施形態において、非ヒトIgλ軽鎖座位の一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば、Vλ、Jλ、および/またはCλ)が、特に本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列(例えば、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメント、またはそれらの組み合わせ)を用いて変えられ、移動され、破壊され、欠失され、または置き換えられ、それらヒト軽鎖配列は、非ヒトIgλ軽鎖定常領域、ならびに非ヒトIgλ軽鎖座位の一つ以上のエンハンサーおよび/または制御因子に操作可能に連結される。一部の実施形態において、非ヒトIgλ軽鎖座位のすべて、または実質的にすべてが、一つ以上のヒトIgλ軽鎖配列(本明細書に記載される)と置き換えられ、当該一つ以上のヒト軽鎖配列は、非ヒトIgλ軽鎖定常領域ならびに非ヒトIgλ軽鎖座位の一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖エンハンサーおよび/または制御因子に操作可能に連結されている。一部のある実施形態において、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖定常領域遺伝子は、本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列を含む非ヒト動物において欠失されず、または置換されない。非限定的な一例であるが、ヒトIgλ軽鎖配列の挿入が非ヒトIgλ軽鎖座位内に挿入される例において、前記挿入は、挿入点近くの非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば非ヒトIgλ軽鎖定常領域および/または非ヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域もしくは配列)の完全性が維持されるように行われる。ゆえにそのような非ヒト動物は野生型のIgλ軽鎖定常領域を有する。一部の実施形態において、本明細書に記載される一つ以上のヒトIgλ軽鎖配列を用いて変えられる、移動される、破壊される、欠失される、置き換えられる、または操作される非ヒトIgλ軽鎖座位は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)のIgλ軽鎖座位である。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、前記非ヒトIgλ軽鎖座位の2コピーの非ヒトIgλ軽鎖座位のうちの1コピー(すなわちアレル)内に挿入され、それによりヒトIgλ軽鎖配列に関しヘテロ接合性の非ヒト動物が誕生する。一部の実施形態において、Igλ軽鎖座位に関しホモ接合性の非ヒト動物が提供され、当該軽鎖座位は本明細書に記載されるヒトIgλ軽鎖配列を含む。
【0204】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作された非ヒトIgλ軽鎖座位は、ヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgλ軽鎖定常領域ならびに一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖エンハンサーおよび/または制御因子に操作可能に連結される。一部の実施形態において、本明細書に記載される操作された非ヒトIgλ軽鎖座位は、ヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgλ軽鎖定常領域、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖エンハンサーおよび/または制御因子、ならびに一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサーおよび/または制御因子に操作可能に連結される。
【0205】
一部の実施形態において、非ヒト動物は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含有し、当該軽鎖座位はそのゲノム内に無作為に統合されている(例えば無作為に統合されたヒトIgλ軽鎖配列の一部として)。ゆえにそのような非ヒト動物は、複数のヒトVλ、Jλおよび/またはCλ遺伝子セグメントを含有するヒトIgλ軽鎖導入遺伝子を有するとして記載されることができ、それらセグメントは、前記ヒトVλ、Jλおよび/またはCλ遺伝子セグメントが再構成することができ、そして非ヒト動物の発現レパートリーにおいて抗体のIgλ軽鎖のすべてまたは一部をコードすることができるように構成される。本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位または導入遺伝子は、例えば、PCR、ウェスタンブロット、サザンブロット、制限酵素断片長多型(RFLP)、またはアレルの獲得もしくは欠失アッセイを含む、様々な方法を使用して検出されることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位に関してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位に関してヘミ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位または導入遺伝子の一つ以上のコピーを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、図面(例えば
図1、2、3および/または4を参照)に図示されるIgλ軽鎖座位を含む。
【0206】
一部の実施形態では、その生殖細胞ゲノムが操作されたIgλ軽鎖座位を含む非ヒト動物の作製のための組成物および方法が提供され、当該軽鎖座位は、一つ以上のヒトIgλ軽鎖配列(例えばヒトVλ、Jλおよび/またはCλ遺伝子セグメント)を、非ヒトIgλ軽鎖配列の代わりに含み、当該ヒト軽鎖配列は、特定の多型のヒトVλ、Jλおよび/またはCλセグメントを含む配列をコードするヒトIgλ軽鎖を含み、非ヒトIgλ軽鎖定常領域に操作可能に連結されたヒトVλ、JλおよびCλセグメントを含有するIgλ軽鎖座位からアセンブリされる、ヒト可変ドメインとヒトまたは非ヒト定常ドメインを含有するIgλ軽鎖を含む抗体を発現する非ヒト動物の作製のための組成物および方法を含む。一部の実施形態では、かかる抗体を内因性エンハンサーおよび/または内因性制御配列の制御下で発現する非ヒト動物を作製するための組成物および方法も提供されている。一部の実施形態では、かかる抗体を異種エンハンサーおよび/または異種制御配列の制御下で発現する非ヒト動物を作製するための組成物および方法も提供されている。
【0207】
ある実施形態において、本明細書に記載される方法は、ヒトIgλ軽鎖のすべてまたは一部をコードする配列を、非ヒトIgλ軽鎖定常領域(例えばネズミ科Cλ領域)の上流に挿入し、それにより抗体が発現されることを含み、当該抗体は、少なくともヒトVλドメインを含有する軽鎖、一部の実施形態ではヒトVλおよびCλドメインを含有する軽鎖の存在が特徴であり、そして非ヒト動物のB細胞表面上と血清中の両方で発現される。
【0208】
一部の実施形態では、方法は、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質の連続挿入を含む。一部の実施形態では、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質は、合成またはゲノムであってもよい(例えば、細菌人工染色体からクローニングされたもの)。一部の実施形態では、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質は、公開されたソースから、および/または細菌人工染色体から設計されてもよく、それにより前記遺伝物質がヒトVλ、Jλおよび/またはCλセグメントを含有し、それらセグメントは、ヒトIgλ軽鎖座位において存在する方向とは異なるが、しかし前記物質が未だ前記ヒトVλ、Jλおよび/またはCλセグメントが再構成され、機能性Igλ軽鎖が変わらずコードされるような方向にある。一例であるが、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質は、ヒトIgλ軽鎖配列を構築するための本明細書に提供されるガイダンスを使用して設計されてもよく、当該ヒト軽鎖配列はヒトVλ、Jλおよび/またはCλセグメントを含有し、それらセグメントは、ヒト細胞のヒトIgλ軽鎖座位において存在するものとは異なる順序および/または構成にある。そのような例において、ヒトVλ、Jλおよび/またはCλセグメントの内容は、ヒト細胞中の対応するセグメントと等しいであろう。しかしその順序と構成は異なっているであろう。本明細書に記載される非ヒト動物の作製を目的としてヒトIgλ軽鎖座位を構築するとき、必須の組み換えシグナル配列を設定し、それにより当該ヒト配列が正しく再構成され、機能性Igλ軽鎖が形成され得る。適切な組み換えに必要なヒトIgλ軽鎖セグメントおよび配列の生殖細胞配置に関するガイダンスは、Molecular Biology of B Cells,London:Elsevier Academic Press,2004,Ed.Honjo,T.,Alt,F.W.,Neuberger,M.Chapters 4(pp.37−59)および5(61−82)に見出すことができ、それらはその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
一部の実施形態では、連続挿入は、単一ES細胞クローンにおける異種遺伝物質部分の複数回挿入を含む。一部の実施形態では、連続挿入は、継代ES細胞クローンにおける異種遺伝物質部分の順次挿入を含む。
【0210】
一部の実施形態では、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域下流の約11,822bpのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)を含んでいる。一部のある実施形態において、方法は、三つのヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)を含む約11,822bpのDNAの挿入を含み、前記三つのヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)は、前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ領域の下流に挿入される。
【0211】
一部の実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の上流の約125,473bpのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ3−10、Vλ3−9、Vλ2−8、Vλ4−3、Vλ3−1、ヒトJλ−Cλセグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、およびヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7を含む。一部のある実施形態において、方法は、一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)を含む約11,822bpのDNAの挿入を含み、前記一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)は、前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の下流に挿入される。
【0212】
一部の実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の上流の約171,458bpのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ2−11、Vλ3−12、Vλ2−14、Vλ3−16、Vλ3−19、Vλ3−21、Vλ3−22、Vλ2−23、Vλ3−25、およびVλ3−27を含む。一部のある実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結されたヒトVλ3−10遺伝子セグメントの上流の約171,458bpのDNAの挿入を含み、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ2−11、Vλ3−12、Vλ2−14、Vλ3−16、Vλ3−19、Vλ3−21、Vλ3−22、Vλ2−23、Vλ3−25、およびVλ3−27を含む。
【0213】
一部の実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の上流の約121,188bpのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ3−27、Vλ1−36、Vλ5−37、Vλ5−39、Vλ1−40、Vλ7−43、Vλ1−44、Vλ5−45、Vλ7−46、Vλ1−47、Vλ9−49、Vλ1−51およびVλ5−52を含む。一部のある実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結されたヒトVλ3−27遺伝子セグメントの上流の約121,188bpのDNAの挿入を含み、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ3−27、Vλ1−36、Vλ5−37、Vλ5−39、Vλ1−40、Vλ7−43、Vλ1−44、Vλ5−45、Vλ7−46、Vλ1−47、Vλ9−49、Vλ1−51、およびVλ5−52を含む。
【0214】
一部の実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の上流の約121,188bpのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ3−27、Vλ1−36、Vλ5−37、Vλ5−39、Vλ1−40、Vλ7−43、Vλ1−44、Vλ5−45、Vλ7−46、Vλ1−47、Vλ9−49、Vλ1−51およびVλ5−52を含み、そして当該DNAは、マウスVλ2遺伝子セグメントの5’側の配列を含む相同アームを含む。一部のある実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結されたヒトVλ3−27遺伝子セグメントの上流の約121,188bpのDNAの挿入を含み、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ3−27、Vλ1−36、Vλ5−37、Vλ5−39、Vλ1−40、Vλ7−43、Vλ1−44、Vλ5−45、Vλ7−46、Vλ1−47、Vλ9−49、Vλ1−51、およびVλ5−52を含み、そして当該DNAは、マウスVλ2遺伝子セグメントの5’側の配列を含む相同アームを含み、それにより前記DNA断片との相同組換えが行われたときに、マウスIgλゲノム配列(例えばIgλ軽鎖座位)の欠失が誘導される。
【0215】
追加のヒトVλ、Jλ,および/またはCλ遺伝子セグメントの挿入は、本明細書に記載される方法を使用して実施することができ、それにより操作Igλ軽鎖座位の多様性のさらなる追補が行われる。例えば一部の実施形態において、方法は、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域の上流の約300kbのDNAの挿入を含み、それにより前記DNAは前記ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ10−54、Vλ6−57、Vλ4−60、Vλ8−61、およびVλ4−69を含む。そのような実施形態において、前記DNAは、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)Cλ1領域に操作可能に連結されたヒトVλ5−52遺伝子セグメントの上流に挿入され、当該DNAは、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ10−54、Vλ6−57、Vλ4−60、Vλ8−61、およびVλ4−69を含む。一部のある実施形態において、前記DNAは、ヒトVpreB遺伝子を含む。上述の追加ヒトVλセグメントは、市販のBACクローンから直接クローニングされ、本明細書に記載される、または当分野において他に公知の組み換え技術を使用して、より小さなDNA断片中に配置されてもよい。あるいは上述の追加ヒトVλ遺伝子セグメントは、DNA断片内に合成され、上述の操作Igλ軽鎖座位に付加されることもできる。同様に追加ヒトJλおよび/またはCλ遺伝子セグメントは、市販のBACクローンから取得され、または公開配列から直接合成されてもよい。さらに本明細書に記載されるように、内因性Igλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)が、操作Igλ軽鎖座位から削除されてもよい。本明細書に記載される非ヒト動物の操作Igλ軽鎖座位を示す例図を、
図1、2、3、および4のいずれか一つに記載する。
【0216】
適切である場合には、Igλ軽鎖のすべてまたは一部をコードするヒトIgλ軽鎖配列(すなわちヒトVλ、Jλ、および/またはCλ遺伝子セグメントを含む配列)は、非ヒト動物における発現に最適化されたコドンを含むよう別個に改変されてもよい(例えば米国特許第5,670,356号および第5,874,304号を参照)。コドン最適化配列は合成配列であり、非コドン最適化親ポリヌクレオチドによってコードされる同一ポリペプチド(または全長ポリペプチドと実質的に同じ活性を有する全長ポリペプチドの生物活性断片)をコードすることが好ましい。一部の実施形態では、Igλ軽鎖の全部または一部をコードするヒトIgλ軽鎖配列は、特定の細胞型(例えば齧歯類細胞)に対してコドン使用頻度を最適化するために変更された配列を別個に含んでもよい。例えば、非ヒト動物(たとえば齧歯類)のゲノム内に挿入される各ヌクレオチド配列のコドンは、その非ヒト動物の細胞中での発現に対し最適化されていてもよい。このような配列はコドン最適化配列として記述される場合がある。
【0217】
一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖のすべてまたは一部をコードするヌクレオチド配列の挿入は、本明細書に記載される非ヒト動物の生殖細胞ゲノムの最小限の改変を利用し、それによりすべてまたは一部がヒトである軽鎖を含む抗体の発現が生じる。ノックアウトおよびノックインを含む遺伝子操作された非ヒト動物を生成する方法は、当技術分野に公知である(例えば、Gene Targeting:A Practical Approach,Joyner,ed.,Oxford University Press,Inc.,2000を参照のこと)。例えば、トランスジェニック齧歯類の生成には、任意選択的に、一つ以上の内因性齧歯類遺伝子(または遺伝子セグメント)の遺伝子座位の破壊と、一部の実施形態では内因性齧歯類遺伝子(または遺伝子セグメント)と同じ位置での、その齧歯類ゲノムへの一つ以上の異種遺伝子(または遺伝子セグメントもしくはヌクレオチド配列)の導入とが含まれていてもよい。一部の実施形態において、ヒトIgλ軽鎖のすべてまたは一部をコードするヌクレオチド配列は、齧歯類の生殖細胞ゲノムにおいて無作為に挿入されたIgλ軽鎖導入遺伝子のネズミ科(例えばマウスまたはラット)Igλ軽鎖定常領域遺伝子の上流に導入される。一部の実施形態において、人Igλ軽鎖のすべてまたは一部をコードするヌクレオチド配列は、齧歯類の生殖細胞ゲノムの内因性Igλ軽鎖座位のネズミ科(例えばマウスまたはラット)Igλ軽鎖座位定常領域遺伝子の上流に導入される。一部のある実施形態において、内因性Igλ軽鎖座位は、ヒトIgλ遺伝子セグメント(例えばVλ、Jλおよび/またはCλ)を含有するよう変えられ、改変され、または操作され、当該セグメントは齧歯類Cλ1領域に操作可能に連結される。
【0218】
操作されたIgλ軽鎖座位例の略図(正確な縮尺ではない)を
図1〜4に提供する。特に
図1および
図3は、操作されたIgλ軽鎖座位を構築するための戦略の例を明記しており、当該軽鎖座位は複数のヒトVλ、Jλ、および/またはCλセグメントを含有するヌクレオチド配列の挿入を特徴とする。
図1に図示されるように、ヒトEλ配列(または領域)を含有するDNA断片は、相同組換えを介して齧歯類Cλ領域の下流に挿入される。このDNA断片は、ヒトEλ配列の3’側に配置されたネオマイシン選択カセット(例えばloxP組み換え認識部位に隣接されるネオマイシン抵抗性遺伝子[NEO
R])を含有し、この断片は、齧歯類Cλ1領域の下流(または3’側)に操作された三つのヒトEλ因子を含有する。また
図1には、ヒトVλセグメント、ヒトJλ−Cλセグメント対のセット(例えばヒトJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cl3、Jλ6−Cλ6)、およびヒトJλ7セグメントの第一の部分を含有するDNA断片が、相同組換えを介して齧歯類Cλ1領域の上流に挿入されていることが図示される。図示されるように、ハイグロマイシン選択カセット(例えばFrt組み換え認識部位に隣接されるハイグロマイシン抵抗性遺伝子[HYG
R]が、標的化ベクターの5’末端上、およびその標的化ベクターに含有されるヒトIgλ軽鎖配列の上流に配置されている。ハイグロマイシン選択カセットは、以下の実施例の項に記載される次の標的化ベクターを用いた相同組換えを介して除去される。次いで標的化ベクターは、齧歯類の胚性幹(ES)細胞内にエレクトロポレーションされ、その生殖細胞ゲノムが、操作されたIgλ軽鎖座位を含む齧歯類が産生される。陽性齧歯類ES細胞クローンが確認されたら、その他の図示される標的化ベクターを連続的にエレクトロポレーションして、各工程で操作Igλ軽鎖座位の構築が完了したことを確認する(
図2を参照)。最後の標的化ベクターは、相同組換えを介した内因性Igλ軽鎖セグメントの削除を誘導する相同アームを伴って(6680標的化ベクター)、または伴わずに(6597標的化ベクター)設計されており、それにより二つの操作Igλ軽鎖アレルが生じる可能性がある(
図2)。さらに望ましい場合にはリコンビナーゼ介在性削除を介して任意の残りの選択カセットを削除してもよい。ガイドRNA(gRNA)を使用して追加のヒトVλ遺伝子セグメントを操作Igλ軽鎖座位に挿入するための別の戦略を
図3に明記する。
【0219】
ヒトIgλ軽鎖配列がBACクローンの非ヒトIgλ軽鎖定常領域の上流に挿入されると、Igλ軽鎖座位内への統合用の標的化ベクターが生成される。標的化ベクター生成用の、ヒトIgλ軽鎖配列を有する標的BACクローンは、ネズミ科(例えばマウスまたはラット)起源の5’および/または3’隣接ゲノムDNAを含有してもよい。あるいは、またはさらに、標的化ベクター生成用の、ヒトIgλ軽鎖配列を有する標的BACクローンは、ヒト起源の5’および/または3’隣接ゲノムDNAを含有してもよく、それによりヒトIgλ軽鎖配列との重複領域が生成される。この方法では、複数の操作BACクローンの連続標的化が可能である(例えば
図1を参照)。最後の標的化ベクターは、非ヒト細胞(例えば齧歯類胚性幹細胞)のゲノム中のIgλ軽鎖座位内に組み込まれる。一部の実施形態において、本明細書に記載される標的化ベクターは、非ヒト細胞の生殖細胞ゲノムのIgλ軽鎖座位内に組み込まれ、当該細胞は一つ以上のIgH定常領域遺伝子と操作可能に連結されたヒトV
H、D
H、およびJ
HゲノムDNA(例えば複数のV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントを含有する)、ならびに/またはIgκ定常領域遺伝子に操作可能に連結されたヒトVκおよびJκゲノムDNA(例えば複数のヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントを含有する)をさらに含有する(例えば米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、および第8,791,323号を参照のこと。それらは参照により本明細書にその全体で組み込まれる)。
【0220】
標的化ベクターは、エレクトロポレーションにより齧歯類(例えばマウス)胚性幹細胞内に導入され、それにより当該標的化ベクター中に含有される配列は、当該齧歯類胚性幹細胞のゲノム内に挿入され、非ヒト細胞または非ヒト動物(例えばマウス)が、ヒトIgλ軽鎖のすべてまたは一部を有する抗体を発現する能力を生じさせる。本明細書に記載されるように、操作されたIgλ軽鎖座位(例えば、本明細書に記載される内因性齧歯類Cλ領域に操作可能に連結されたヒトIgλ軽鎖配列を含有する内因性Igλ軽鎖座位)が齧歯類ゲノムの生殖細胞中に生成されたトランスジェニック齧歯類が作製される。齧歯類B細胞の表面上、および前記齧歯類の血清中に抗体が発現され、当該抗体は、ヒトVλドメインを、一部の実施形態においてはヒトVλおよびCλドメインを有する軽鎖により特徴付けられる。齧歯類ゲノムの生殖細胞中の内因性Igλ軽鎖座位が標的化ベクターの標的とされない場合、操作されるIgλ軽鎖座位は、内因性齧歯類Igλ軽鎖座位以外の位置に挿入されることが好ましい(例えば無作為挿入される導入遺伝子など)。
【0221】
上述の非ヒト動物において操作されたIgλ軽鎖座位を生成することにより、ヒトVλドメイン、及び一部の実施形態においてはヒトVλおよびCλドメインを有する当該操作されたIgλ軽鎖座位から発現されたIgλ軽鎖を含む抗体を産生する操作齧歯類系統が提供される。IgH定常領域遺伝子に操作可能に連結された複数のヒトV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメントを含む、操作されたIgH座位の存在を活用することで、ヒト抗体系治療剤の開発用の抗体および抗体構成要素を産生する操作された齧歯類系統が生成される。ゆえに単一操作された齧歯類系統は、ヒト疾患を治療するための新たな抗体系医薬の開発用にヒトVλドメインを活用する代替的インビボシステムを提供する能力を有することが理解される。
【0222】
一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物ゲノムは、米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、および第8,791,323号に記載されるような一つ以上のヒトイムノグロブリン重鎖および/または軽鎖可変領域を(例えば交配または複数遺伝子標的化戦略を介して)さらに含有する。それら特許はすべてその全体で参照により本明細書に組み込まれる。あるいは本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位は、ヒト化IgHおよび/またはIgκ座位を含む胚性幹細胞内に操作されてることができ、または本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含む非ヒト動物は、ヒト化IgHおよび/またはIgκ座位を含む別の非ヒト動物と交配されてもよい。かかるヒト化IgHおよび/またはIgκ座位を含む様々な動物が公知であり、例えばVELOCIMMUNE(登録商標)系統(例えば、米国特許第8,502,018号および/または第8,642,835号を参照。これらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)、XENOMOUSE
TM系統(例えば、Mendez,M.J.et al.,1997,Nat.Genetics 15(2):146−56 and Jakobovits,A.et al.,1995,Ann.NY Acad.Sci.764:525−35を参照)がある。本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位のホモ接合性は、その後に交配を行うことにより実現することができる。あるいは無作為挿入された操作Igλ軽鎖導入遺伝子(上述)の場合には、特に導入遺伝子からのヒトVλドメインの発現に基づいて齧歯類系統を選択することができる。
【0223】
あるいは、および/またはさらに一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物の生殖細胞ゲノムは、削除された、不活化された、機能的にサイレンシングされた、または別手段により非機能性の内因性Igκ軽鎖座位をさらに含む。遺伝子もしくは遺伝子座位を削除する、または非機能性にさせる遺伝子改変は、本明細書に記載される方法を使用して、および/または当分野に公知の方法を使用して実施してもよい。
【0224】
トランスジェニック創始非ヒト動物は、その生殖細胞ゲノム中の操作されたIgλ軽鎖座位の存在に基づいて、および/または非ヒト動物の組織もしくは細胞におけるヒトIgλ軽鎖配列のすべてまたは一部を有する抗体の発現に基づいて、特定されることができる。次いでトランスジェニック創始非ヒト動物を使用して、操作されたIgλ軽鎖座位を担持する別の非ヒト動物と交配させ、それによって各々が1コピー以上の操作されたIgλ軽鎖座位を担持する非ヒト動物群を作製することができる。また、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を担持するトランスジェニック非ヒト動物を、所望される他の導入遺伝子(例えばヒトイムノグロブリン遺伝子)を担持する他のトランスジェニック非ヒト動物とさらに交配させることもできる。
【0225】
一部の実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物は、導入遺伝子または統合された配列の制御発現、有向性発現、誘導性発現および/または細胞型特異的発現を可能とする選択システムを含有するように作製されてもよい。例えば本明細書に記載される非ヒト動物を操作して、条件付きで発現される抗体のヒトIgλ軽鎖をすべてまたは一部コードする配列を含有させてもよい(例えば、Rajewski,K.et al.,1996,J.Clin.Invest.98(3):600−3に概説される)。システムの例としては、バクテリオファージP1のCre/loxPリコンビナーゼシステム(例えば、Lakso,M.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:6232−6を参照のこと)及び出芽酵母のFLP/Frtリコンビナーゼシステム(O’Gorman,S.et al,1991,Science 251:1351−5)が挙げられる。こうした動物は、例えば、一方は選択された改変(例えば、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位)を含む導入遺伝子を含有し、他方はリコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼ)をコードする導入遺伝子を含有する、二種のトランスジェニック動物を交配させることによって、「二重」のトランスジェニック動物を構築することにより提供され得る。
【0226】
本明細書に記載の非ヒト動物は、多くの場合、当該非ヒト動物の使用目的に応じて、追加のヒト遺伝子、ヒト化遺伝子または別手段で操作された遺伝子を含むように、上述のように調製されるかまたは当技術分野に公知の方法用いて調製されてもよい。かかるヒト遺伝子、ヒト化遺伝子、または別手段で操作された遺伝子の遺伝物質は、上述の遺伝的改変または変化を有する細胞(例えば胚性幹細胞)のゲノムのさらなる改変を介して、または所望される他の遺伝子改変系統もしくは遺伝子操作系統を用いた当技術分野に公知の交配技術を介して、導入されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、トランスジェニックヒトIgHおよび/もしくはIgκ軽鎖遺伝子または遺伝子セグメントをさらに含有するように調製される(例えば、Murphy,A.J.et al.,(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5153−5158;米国特許第8,502,018号、米国特許第8,642,835号、米国特許第8,697,940号、米国特許第8,791,323号、および米国特許出願公開2013/0096287A1を参照。それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。
【0227】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、本明細書に記述される標的化ベクターを、改変された系統由来の細胞内へと導入することにより作製されてもよい。一例を挙げると、上述の標的化ベクターは、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに導入されてもよい。VELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、完全ヒト可変ドメインとマウス定常ドメインを有する抗体を発現する。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ヒトイムノグロブリン遺伝子(可変領域遺伝子および/または定常領域遺伝子)をさらに備えるように作製される。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位と、異種(例えばヒト)由来の遺伝物質を含み、この場合において当該遺伝物質は、一つ以上のヒト重鎖および/またはIgκ軽鎖の可変ドメインのすべてまたは一部をコードする。
【0228】
例えば、本明細書に記載されるように、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含む非ヒト動物は、以下の文献に記載される一つ以上の改変を(例えば、交配または複数遺伝子標的化戦略を介して)さらに含んでもよい:Murphy,A.J.et al.,(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5153−8;Macdonald,L.E.et al.,2014,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(14):5147−52、米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号および第8,791,323号。これらすべてはその全体で参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含む齧歯類は、ヒト化IgHおよび/またはIgκ軽鎖の可変領域座位を含む齧歯類と交配される(例えば米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、および/または第8,791,323号を参照。それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。一部の実施形態では、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含む齧歯類は、ヒト化IgH可変領域座位(例えば米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、および/または第8,791,323号を参照。それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)、および不活化内因性Igκ軽鎖座位(例えば米国特許第9,006,511号、第9,012,717号、第9,029,628号、第9,035,128号、第9,066,502号、第9,150,662号、および第9,163,092号を参照。それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)を含む齧歯類と交配される。
【0229】
マウスでの操作Igλ軽鎖座位の構築を記載する実施形態(すなわち、マウスCλ領域と操作可能に連結された複数のヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントの存在により特徴付けられる操作Igλ軽鎖座位を有し、それによりヒトIgλ軽鎖を含有する抗体が発現されるマウス)が本明細書において詳細に検討されているが、操作Igλ軽鎖座位を含む他の非ヒト動物も提供される。そのような非ヒト動物としては、本明細書に記載される抗体を発現するよう遺伝子改変され得る非ヒト動物のいずれか、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌牛、未去勢オスウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)などの哺乳類が挙げられる。例えば、好適な遺伝子改変可能ES細胞が直ちに利用可能でない非ヒト動物については、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作るために他の方法が採用される。このような方法には、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または人工多能性細胞)を改変すること、および体細胞核移植(SCNT)を利用して好適な細胞、例えば除核卵母細胞、に遺伝子改変されたゲノムを導入すること、および改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物に懐胎させることが挙げられる。
【0230】
非ヒト動物の生殖細胞ゲノム(例えば、ブタ、雌牛、齧歯類、ニワトリなどのゲノム)を改変する方法としては、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator−like effector nuclease、TALEN)、またはCasタンパク質(すなわち、CRISPR/Casシステム)を利用して本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位を含ませる方法が挙げられる。非ヒト動物の生殖細胞ゲノムの改変方法に関するガイダンスは、例えば米国特許出願14/747,461(2015年6月23日出願)、14/948,221(2015年11月20日出願)、および14/974,623(2015年12月18日出願)に見出すことができ、これら3出願はすべて参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0231】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、例えばトビネズミ上科またはネズミ上科の小さな哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される遺伝的に改変された動物は、齧歯類である。一部の実施形態では、本明細書に記載される齧歯類はマウス、ラット、ハムスターから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変動物は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウス及びラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、及びメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、及び高原モグラネズミ)から選択された科からのものである。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変マウスは、ネズミ科のメンバーからのものである。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、齧歯類である。一部のある実施形態では、本明細書に記載される齧歯類は、マウスおよびラットから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、マウスである。
【0232】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL系のマウスである齧歯類である。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系から成る群から選択される129系である(例えば、Festing et al.,1999,Mammalian Genome 10:836;Auerbach,W.et al.,2000,Biotechniques 29(5):1024−1028,1030,1032を参照)。一部のある実施形態では、本明細書に記載される遺伝子改変マウスは、前述の129系と前述のC57BL/6系との混合である。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、前述の129系の混合、または前述のBL/6系の混合である。一部の実施形態では、本明細書に記述された混合の129系は129S6(129/SvEvTac)系である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、例えばBALB/c系などのBALB系である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるマウスは、BALB系統及び前述の別系統の混合である。
【0233】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物は、ラットである。一部のある実施形態では、本明細書に記載されるラットは、ウィスターラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、フィッシャー系統、F344、F6、及びDark Agoutiから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記述されたラット系は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー、F344、F6、およびDark Agoutiから成る群から選択された二つ以上の系の混合である。
【0234】
ラット多能性細胞および/または分化全能性細胞は、たとえばACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはたとえばFisher F344もしくはFisher F6などのFischerラット系統をはじめとする任意のラット系統由来であってもよい。ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、上記の二つ以上の系統の混合から誘導された系統から取得されたものであってもよい。例えば、ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、DA系統またはACI系統由来のものであってもよい。ACIラット系統は、黒アグーチを有し、腹部と足は白色で、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該系統は、Harlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。ACIラット由来のラットES細胞株の例は、ACI.G1ラットES細胞である。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチの毛色を有し、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該ラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。DAラット由来のラットES細胞株の例は、DA.2BラットES細胞株と、DA.2CラットES細胞株である。一部の実施形態において、ラット多能性細胞および/または分化全能性細胞は、近交系ラット系統由来である(例えば2014年8月21日に公開された米国特許出願公開2014−0235933A1を参照。当該出願は参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。
具体的な例示的実施形態−操作されたIgH座位
【0235】
一部の実施形態において、提供される非ヒト動物は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含み、そして複数のヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントの存在により特徴付けられる操作されたIgH座位(またはアレル)をさらに含み、それらセグメントは、生殖細胞構造中に配置され、非ヒトIgH定常領域、エンハンサーおよび制御領域に操作可能に連結される。一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgH座位(またはアレル)は、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgH定常領域に操作可能に連結される。
【0236】
一部の実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、5、10、15、20、25、30、35、40個またはそれ以上(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52個など)のヒトV
H遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgH座位の、両端を含むヒトV
H3−74とヒトV
H6−1遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトV
H遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、少なくともヒトV
H遺伝子セグメントのV
H3−74、V
H3−73、V
H3−72、V
H2−70、V
H1−69、V
H3−66、V
H3−64、V
H4−61、V
H4−59、V
H1−58、V
H3−53、V
H5−51、V
H3−49、V
H3−48、V
H1−46、V
H1−45、V
H3−43、V
H4−39、V
H4−34、V
H3−33、V
H4−31、V
H3−30、V
H4−28、V
H2−26、V
H1−24、V
H3−23、V
H3−21、V
H3−20、V
H1−18、V
H3−15、V
H3−13、V
H3−11、V
H3−9、V
H1−8、V
H3−7、V
H2−5、V
H7−4−1、V
H4−4、V
H1−3、V
H1−2、およびV
H6−1を含む。
【0237】
一部の実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、5、10、15、20、25個またはそれ以上(例えば、26、27個など)のヒトD
H遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgH座位の、両端を含むヒトD
H1−1とD
H7−27遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトD
H遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、少なくともヒトD
H遺伝子セグメントのD
H1−1、D
H2−2、D
H3−3、D
H4−4、D
H5−5、D
H6−6、D
H1−7、D
H2−8、D
H3−9、D
H3−10、D
H5−12、D
H6−13、D
H2−15、D
H3−16、D
H4−17、D
H6−19、D
H1−20、D
H2−21、D
H3−22、D
H6−25、D
H1−26、およびD
H7−27を含む。
【0238】
一部の実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上の機能性ヒトJ
H遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgH座位の、両端を含むヒトJ
H1とヒトJ
H6遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトJ
H遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgH座位(またはアレル)は、少なくともヒトJ
H遺伝子セグメントのJ
H1、J
H2、J
H3、J
H4、J
H5、およびJ
H6を含む。
【0239】
一部のある実施形態において、非ヒトIgH定常領域は、例えばイムノグロブリンM(IgM)、イムノグロブリンD(IgD)、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンE(IgE)およびイムノグロブリンA(IgA)などの一つ以上の非ヒトIgH定常領域遺伝子を含む。一部のある実施形態において、非ヒトIgH定常領域は、齧歯類IgM、齧歯類IgD、齧歯類IgG3、齧歯類IgG1、齧歯類IgG2b、齧歯類IgG2a、齧歯類IgE、および齧歯類IgAの定常領域遺伝子を含む。一部の実施形態において、前記ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgHエンハンサー(すなわちエンハンサー配列またはエンハンサー領域)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgH制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgHエンハンサー(またはエンハンサー配列)と一つ以上の非ヒトIgH制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。
【0240】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgH座位は、内因性Adam6遺伝子を含有しない。一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgH座位は、同種の野生型非ヒト動物の生殖細胞ゲノム中に存在する位置と同じ生殖細胞ゲノム位置に内因性Adam6遺伝子(またはAdam6コード配列)を含有しない。一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgH座位は、ヒトAdam6偽遺伝子を含有しない。一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgH座位は、一つ以上の非ヒト(例えば齧歯類)Adam6ポリペプチドをコードする少なくとも一つのヌクレオチド配列の挿入を含む。前記挿入は、本明細書に記載される操作されたイムノグロブリン重鎖座位の外側(例えば最も5’側のV
H遺伝子セグメントの上流)、操作されたIgH座位の内、または非ヒト動物、細胞もしくは組織の生殖細胞ゲノム中の別の場所(例えば無作為に導入された非ヒトAdam6をコードする配列)であってもよい。
【0241】
様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、抗体分子中に内因性非ヒトV
H領域のすべてまたは一部を検出可能な程度に発現しない。様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、抗体分子中に内因性非ヒトV
H領域(例えば、V
H、D
Hおよび/またはJ
H)のすべてまたは一部をコードする一つ以上のヌクレオチド配列を含有しない(または欠く、またはそれの欠失を含有する)。様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、内因性非ヒトV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメントのすべてまたは一部の欠失を含む生殖細胞ゲノムを有する。様々な実施形態において、提供される非ヒト動物は、繁殖可能である。
【0242】
かかる操作されたIgH座位(またはアレル)を担持する標的化ベクター、非ヒト細胞および動物の作製に関するガイダンスは、例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号に見出すことができ、それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。当分野の当業者であれば、非ヒト(例えば哺乳類)のそのような遺伝子操作および/または処置を実現するための、または非ヒト動物の生殖細胞ゲノム内への導入用にそのような配列を別手段で調製、提供または製造するための当分野に公知の様々な技術を認識する。
具体的な例示的実施形態−操作されたIgκ軽鎖座位
【0243】
一部の実施形態において、提供された非ヒト動物は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含み、そして複数のヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントの存在により特徴付けられる操作されたIgκ座位(またはアレル)をさらに含み、それらセグメントは、生殖細胞構造中に配置され、非ヒトIgκ軽鎖定常領域、Igκエンハンサーおよび制御領域に操作可能に連結される。一部の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントおよび一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgκ定常領域(Cκ)に操作可能に連結される。
【0244】
一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgκ軽鎖座位の遠位の可変クラスター(または遠位アーム、または遠位重複)中に存在する少なくともヒトVκ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgκ軽鎖座位の近位の可変クラスター(または近位アーム、または近位重複)中に存在する少なくともヒトVκ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgκ軽鎖座位の遠位および近位の可変クラスター中に存在するヒトVκ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgκ座位の、両端を含むヒトVκ2−40(またはVκ3D−7)とヒトVκ4−1遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトVκ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。
【0245】
一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、5、10、15、20、25、30、35個またはそれ以上(例えば、36、37、38、39、40個など)のヒトκ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、ヒトVκ遺伝子セグメントのVκ3D−7、Vκ1D−8、Vκ1D−43、Vκ3D−11、Vκ1D−12、Vκ1D−13、Vκ3D−15、Vκ1D−16、Vκ1D−17、Vκ3D−20、Vκ6D−21、Vκ2D−26、Vκ2D−28、Vκ2D−29、Vκ2D−30、Vκ1D−33、Vκ1D−39、Vκ2D−40、Vκ2−40、Vκ1−39、Vκ1−33、Vκ2−30、Vκ2−28、Vκ1−27、Vκ2−24、Vκ6−21、Vκ3−20、Vκ1−17、Vκ1−16、Vκ3−15、Vκ1−12、Vκ3−11、Vκ1−9、Vκ1−8、Vκ1−6、Vκ1−5、Vκ5−2、およびVκ4−1を含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくともヒトVκ遺伝子セグメントのVκ3D−7、Vκ1D−8、Vκ1D−43、Vκ3D−11、Vκ1D−12、Vκ1D−13、Vκ3D−15、Vκ1D−16、Vκ1D−17、Vκ3D−20、Vκ6D−21、Vκ2D−26、Vκ2D−28、Vκ2D−29、Vκ2D−30、Vκ1D−33、Vκ1D−39、およびVκ2D−40を含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくともヒトVκ遺伝子セグメントのVκ2−40、Vκ1−39、Vκ1−33、Vκ2−30、Vκ2−28、Vκ1−27、Vκ2−24、Vκ6−21、Vκ3−20、Vκ1−17、Vκ1−16、Vκ3−15、Vκ1−12、Vκ3−11、Vκ1−9、Vκ1−8、Vκ1−6、Vκ1−5、Vκ5−2、およびVκ4−1を含む。
【0246】
一部の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、1、2、3、4、5個またはそれ以上の機能性ヒトJκ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgκ軽鎖座位の、両端を含むヒトJκ1とヒトJκ5遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトJκ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくともヒトJκ遺伝子セグメントのJκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4およびJκ5を含む。
【0247】
一部の実施形態において、前記ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgκエンハンサー(すなわちエンハンサー配列またはエンハンサー領域)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgκ軽鎖制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgκ軽鎖エンハンサー(またはエンハンサー配列もしくはエンハンサー領域)と一つ以上の非ヒトIgκ軽鎖制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。
【0248】
一部の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCκ領域は、齧歯類Cκ領域、例えばマウスCκ領域またはラットCκ領域を含む。一部のある実施形態において、操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCκ領域は、129系、BALB/c系、C57BL/6系、129xC57BL/6系の混合系、またはその組み合わせを含む遺伝的背景に由来するマウスCκ領域であるか、またはそれを含む。
【0249】
一部の実施形態において、提供される非ヒト動物は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を含み、不活化されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)をさらに含む。
【0250】
様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、抗体分子中に内因性非ヒトVκ領域のすべてまたは一部を検出可能な程度に発現しない。様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、抗体分子中に内因性非ヒトVκ領域のすべてまたは一部をコードする一つ以上のヌクレオチド配列を含有しない(または欠く、またはそれの欠失を含有する)。様々な実施形態において、本明細書に記載される提供される非ヒト動物、非ヒト細胞、または非ヒト組織は、内因性非ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントのすべてまたは一部の欠失を含む生殖細胞ゲノムを有する。
【0251】
かかる操作されたIgκ軽鎖座位(またはアレル)を担持する標的化ベクター、非ヒト細胞および動物の作製に関するガイダンスは、例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号に見出すことができ、それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。当分野の当業者であれば、非ヒト(例えば哺乳類)のそのような遺伝子操作および/または処置を実現するための、または非ヒト動物の生殖細胞ゲノム内への導入用にそのような配列を別手段で調製、提供または製造するための当分野に公知の様々な技術を認識する。
具体的な例示的実施形態−操作されたIgλ軽鎖座位
【0252】
一部の実施形態において、提供される非ヒト動物は、操作されたIgλ軽鎖座位を含み、当該軽鎖座位は、複数のヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントの存在により特徴付けられ、それらセグメントは、生殖細胞構造中に配置され、そして非ヒトCλ遺伝子セグメント(またはCλ領域遺伝子)の上流に挿入され、および操作可能に連結される。本明細書に記載されるように、かかる操作されたIgλ軽鎖座位は、一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(またはエンハンサー配列)をさらに含む。一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントを含み、それらセグメントは非ヒトIgλ軽鎖定常(Cλ)領域に操作可能に連結される。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、ヒトIgλ軽鎖座位の少なくともクラスターAに存在する、一部の実施形態においては、ヒトIgλ軽鎖座位のクラスターAとクラスターBに存在する、一部のある実施形態においては、ヒトIgλ軽鎖座位のクラスターA、クラスターBおよびクラスターCに存在する、ヒトVλ遺伝子セグメントを含む。
【0253】
一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、5、10、15、20、25、30個またはそれ以上(例えば、31、32、33、34、35個など)のヒトVλ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgλ座位の、両端を含むヒトVλ4−69とヒトVλ3−1遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトVλ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgλ座位の、両端を含むヒトVλ5−52とヒトVλ3−1遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトVλ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgλ座位の、両端を含むヒトVλ3−27とヒトVλ3−1遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトVλ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ4−69、Vλ8−61、Vλ4−60、Vλ6−57、Vλ10−54、Vλ5−52、Vλ1−51、Vλ9−49、Vλ1−47、Vλ7−46、Vλ5−45、Vλ1−44、Vλ7−43、Vλ1−40、Vλ5−39、Vλ5−37、Vλ1−36、Vλ3−27、Vλ3−25、Vλ2−23、Vλ3−22、Vλ3−21、Vλ3−19、Vλ2−18、Vλ3−16、Vλ2−14、Vλ3−12、Vλ2−11、Vλ3−10、Vλ3−9、Vλ2−8、Vλ4−3およびVλ3−1を含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくとも機能性ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40と、Vλ3−27〜Vλ3−1を含む。
【0254】
一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上の機能性ヒトJλ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgλ軽鎖座位の、両端を含むヒトJλ1とヒトJλ7遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトJλ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくともヒトJλ遺伝子セグメントのJλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6およびJλ7を含む。
【0255】
一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上の機能性ヒトCλ遺伝子セグメントを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、自然界で存在するヒトIgλ軽鎖座位の、両端を含むヒトCλ1とヒトCλ7遺伝子セグメントの間に存在する機能性ヒトCλ遺伝子セグメントのすべて、または実質的にすべてを含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくともヒトCλ遺伝子セグメントのCλ1、Cλ2、Cλ3、およびCλ6を含む。
【0256】
一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、野生型Igλ軽鎖座位(またはアレル)に存在するものと同じ非ヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(またはエンハンサー配列)を含有しない。一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、少なくとも一つの非ヒトIgλ軽鎖エンハンサー領域(またはエンハンサー配列)のすべてまたは一部(例えばIgλエンハンサー2−4またはEλ2−4)を欠く。
【0257】
一部の実施形態において、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖エンハンサー(すなわちエンハンサー配列またはエンハンサー領域)と一つ以上のヒトIgλ軽鎖制御領域(すなわちエンハンサー配列またはエンハンサー領域)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。一部の実施形態において、前記ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖エンハンサー(またはエンハンサー配列もしくはエンハンサー領域)、一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー(すなわちエンハンサー配列またはエンハンサー領域)、および一つ以上の非ヒトIgλ軽鎖制御領域(または制御配列)に操作可能に連結される。
【0258】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、ヒトVpreB遺伝子(またはヒトVpreB遺伝子コード配列)を含有しない。
【0259】
一部の実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、齧歯類Cλ領域、例えばマウスCλ領域またはラットCλ領域を含む。一部のある実施形態において、操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、129系、BALB/c系、C57BL/6系、129xC57BL/6系の混合系、またはその組み合わせを含む遺伝的背景に由来するマウスCλ領域であるか、またはそれを含む。
【0260】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、配列番号1(マウスCλ1)、配列番号3(マウスCλ2)または配列番号5(マウスCλ3)に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、配列番号1(マウスCλ1)、配列番号3(マウスCλ2)または配列番号5(マウスCλ3)に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、マウスCλ1領域の配列であるか、またはそれを含む。
【0261】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、配列番号2(マウスCλ1)、配列番号4(マウスCλ2)または配列番号6(マウスCλ3)に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、配列番号2(マウスCλ1)、配列番号4(マウスCλ2)または配列番号6(マウスCλ3)に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、マウスCλ1領域のポリペプチドであるか、またはそれを含む。
【0262】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、配列番号7(ラットCλ1)、配列番号9(ラットCλ2)、配列番号11(ラットCλ3)または配列番号13(ラットCλ4)に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、配列番号7(ラットCλ1)、配列番号9(ラットCλ2)、配列番号11(ラットCλ3)または配列番号13(ラットCλ4)に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)の非ヒトCλ領域は、ラットCλ1領域の配列であるか、またはそれを含む。
【0263】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、配列番号8(ラットCλ1)、配列番号10(ラットCλ2)、配列番号12(ラットCλ3)または配列番号14(ラットCλ4)に対し、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、配列番号8(ラットCλ1)、配列番号10(ラットCλ2)、配列番号12(ラットCλ3)または配列番号14(ラットCλ4)に対し、実質的に同一であるか、または同一である配列を含む。一部のある実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)に位置付けられた配列によりコードされる非ヒトCλ領域は、ラットCλ1領域のポリペプチドであるか、またはそれを含む。
【0264】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、ヒトIgλ軽鎖配列(ゲノムまたは合成)に対応するヒト遺伝物質を、非ヒトIgλ軽鎖配列の代わりに内因性座位で挿入することから生じる一つ以上の固有のヌクレオチド配列接合部の存在により特徴付けられる。ヌクレオチド配列接合部の例を、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、および配列番号129に明記する。
【0265】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、および配列番号129のうちの一つ以上を含む。
【0266】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号120、配列番号121、配列番号122、および配列番号123を含む。
【0267】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、および配列番号123を含む。
【0268】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号128、および配列番号129を含む。
【0269】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号126、および配列番号127を含む。
【0270】
一部の実施形態において、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位(またはアレル)は、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、および配列番号125を含む。
【0271】
ヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントに関するガイダンスは、例えばLefranc,M.P.,2000,Nomenclature of the human immunoglobulin lambda(IGL)genes,Current Protocols in Immunology,No.Supplement,40:A.1p.1−A.1p.37に見いだされる。特に本開示は、ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントがIgλ軽鎖座位(またはアレル)に存在することで、提供される非ヒト動物の軽鎖レパートリーの多様性が、かかる操作されたIgλ軽鎖アレルを含まない非ヒト動物の発現抗体レパートリー中の軽鎖の多様性と比較して増加していることを示す。
方法
【0272】
ある態様において、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト抗体の作製、および/またはヒト抗体をコードする核酸配列の作製に利用することができ、当該ヒト抗体は、本明細書に記載される非ヒト動物の細胞の遺伝物質によってコードされる核酸配列由来の可変ドメインを含む。例えば、本明細書に記載の非ヒト動物は、当該非ヒト動物が対象抗原に対し免疫反応を生じさせる条件下、および充分な時間、前記対象抗原で免疫化される。抗体は、そのように免疫化された非ヒト動物(または一つ以上の細胞、例えば、一つ以上のB細胞)から単離され、例えば、親和性、特異性、エピトープマッピング、リガンド−受容体相互作用の阻害能力、受容体活性の阻害能力などを測定する、種々のアッセイを用いて特徴付けられる。種々の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物によって産生される抗体は、非ヒト動物から単離された一つ以上のヒト可変領域ヌクレオチド配列由来である一つ以上のヒト可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗薬剤抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体)が、本明細書に記載の非ヒト動物に生じ得る。
【0273】
一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物は、様々なアッセイに有用なヒト抗体を産生するための、改良されたインビボシステムと生物学的物質(例えば、細胞)の供給源とを提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、対象ポリペプチド(例えば膜貫通ポリペプチドまたは分泌ポリペプチド)を標的とする治療剤、および/または前記対象ポリペプチドと関連する一つ以上の活性を調節する治療剤、および/または前記対象ポリペプチドと他の結合パートナー(例えばリガンドまたは受容体ポリペプチド)の相互作用を調節する治療剤が開発される。例えば様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上の受容体ポリペプチドを標的とする治療剤、受容体ポリペプチドを調節する治療剤、および/または受容体ポリペプチドと他の結合パートナーとの相互作用を調節する治療剤が開発される。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上の対象ポリペプチドに結合する治療剤候補物質(例えば抗体、siRNAなど)が特定、スクリーニング、および/または開発される。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上の対象ポリペプチド活性を阻害する、または一つ以上の対象受容体ポリペプチドの活性を阻害する、治療剤候補物質(例えば抗体、siRNAなど)がスクリーニングされ、および開発される。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上の対象ポリペプチドのアンタゴニストおよび/またはアゴニストの結合プロファイルが決定される。一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上の対象ポリペプチドに結合する一つ以上の治療用抗体候補のエピトープが決定される。
【0274】
様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、一つ以上のヒト抗体候補の薬物動態プロファイルが決定される。様々な実施形態において、本明細書に記載の一つ以上の非ヒト動物及び一つ以上の対照または参照の非ヒト動物がそれぞれ、一つ以上のヒト抗体候補に様々な投与量(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/mg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kgまたはそれ以上)で曝露される。候補治療薬抗体は、経口および非経口投与経路を含む、任意の望ましい投与経路で投薬される場合がある。非経口経路は、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路は、例えば、経口、経鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射による場合もある。非ヒト動物(ヒト化および対照)から血液が様々な時点(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または最大30日またはそれ以上の日数)で単離される。様々なアッセイは、総IgG、抗治療抗体反応、凝集などを含むがこれらに限定されない、本明細書に記述された非ヒト動物から取得されたサンプルを使用して、投与された候補治療抗体の薬物動態プロファイルを決定するために実施される場合がある。
【0275】
様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、対象ポリペプチドの活性を阻害または調節する治療効果、および細胞変化の結果としての遺伝子発現または受容体ポリペプチドとの関連では当該非ヒト動物の細胞表面上の受容体ポリペプチドの密度に対する効果が測定される。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物またはそれらから単離された細胞が治療剤候補物質に暴露され、当該候補物質は、対象ポリペプチドに結合し、その一定期間後、前記対象ポリペプチドと関連した特定の細胞プロセス、例えばリガンド−受容体相互作用またはシグナル伝達に対する効果が分析される。
【0276】
ある態様において、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト抗体可変ドメインを発現する。従って、細胞、細胞株および細胞培養物は、例えばアンタゴニストもしくはアゴニストの結合または機能に関するアッセイを行うなどの結合アッセイおよび機能性アッセイにおける使用のためのヒト抗体可変ドメインの供給源として利用されるよう作製されることができ、この場合において当該アンタゴニストまたはアゴニストは、対象のヒト抗原に特異的であり、またはリガンド−受容体相互作用(結合)で機能するエピトープに特異的である。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物から単離された細胞を使用して、治療用候補物質の抗体またはsiRNAによって結合されたエピトープを決定することができる。
【0277】
提供される非ヒト動物由来の細胞は、その場限りで単離して使用するか、または多世代にわたって培養物中で維持することができる。様々な実施形態において、提供される非ヒト動物からの細胞は(例えば、ウイルスの使用によって)不死化され、培養物中(例えば、連続培養物中)で無期限に維持される。
【0278】
一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物は、対象ポリペプチドに結合するヒト抗体可変ドメインのバリアント(例えばヒトVλドメインバリアント)作製のためのインビボシステムを提供する。こうしたバリアントには、望ましい機能性、特に対象ポリペプチドの二種以上のバリアントに共有される共通エピトープに対する交差反応性が低いなどの機能性を有するヒト抗体可変ドメインを含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を利用して、望ましい、または改善された機能性に関してスクリーニングされる、一連のバリアント可変ドメインを含有するヒト抗体可変ドメインパネルが作製される。
【0279】
ある態様において、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト抗体可変領域ライブラリー(例えばヒトVλドメインライブラリー)を作製するためのインビボシステムを提供する。そのようなライブラリーは、望まれるエフェクター機能に基づいて、異なるFc領域上に移植され得る重鎖および/または軽鎖可変領域配列の供給源を提供するものであり、当分野に公知の技術(例えば部位特異的突然変異誘導、エラープローンPCRなど)を使用した可変領域配列のアフィニティ成熟のための供給源として使用され、および/または例えばキメラ抗原受容体(すなわち抗体構成要素を使用して操作された分子、例えばscFv)、多特異性結合物質(例えば二特異性結合物質)および融合タンパク質(例えば単一ドメイン抗体、scFvなど)といった抗体系治療用分子の作製のための抗体構成要素の供給源として使用される。
【0280】
一部の態様において、本明細書に記載の非ヒト動物は、薬剤またはワクチンの分析および検査のためのインビボシステムを提供する。様々な実施形態において、候補薬剤またはワクチンが本明細書に記載の一つ以上の非ヒト動物に送達され、その後、当該非ヒト動物をモニターして、薬剤もしくはワクチンに対する免疫反応、薬剤もしくはワクチンの安全性プロファイル、または疾患もしくは症状に対する効果および/もしくは疾患もしくは症状の一つ以上の兆候に対する効果のうちの一つ以上を算出してもよい。安全性プロファイルを算出するために使用される例示的方法には、毒性、至適用量濃度、抗体(すなわち抗薬剤)反応、薬剤またはワクチンの有効性、および潜在的リスク因子の測定が含まれる。このような薬剤またはワクチンはこのような非ヒト動物で改善および/または開発される場合がある。
【0281】
ワクチンの有効性は、数多くの方法で算出され得る。簡潔に述べると、本明細書に記載の非ヒト動物は当技術分野で公知の方法を使用して免疫化され、その後ワクチンに曝露されるか、またはすでに感染した非ヒト動物にワクチンが投与される。ワクチンに対する非ヒト動物の応答を、その非ヒト動物(またはそれらから単離された細胞)のモニタリングを行うことにより、および/またはそれらに対して一つ以上のアッセイを行うことにより測定して、ワクチンの有効性を決定することができる。ワクチンに対する非ヒト動物の応答は、続いて、当技術分野に公知の、および/または本明細書に記載の一つ以上の手段を使用して、対照動物と比較される。
【0282】
ワクチンの有効性は、ウイルス中和アッセイによりさらに算出されてもよい。簡潔に述べると、本明細書に記載の非ヒト動物を免疫化し、免疫後の様々な日数で血清を採取する。血清の連続希釈物をウイルスとプレインキュベートし、その間に、そのウイルスに特異的な血清中の抗体が、ウイルスに結合することになる。続いて、ウイルス/血清の混合物を許容細胞に添加して、プラークアッセイまたはマイクロ中和アッセイにより感染性を算出する。血清中の抗体がウイルスを中和する場合、対照群と比較して、プラーク数が少ないか、または相対ルシフェラーゼ単位が低くなる。
【0283】
一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物は、ヒト抗体可変ドメインを産生する。したがって診断応用(例えば免疫学的、血清学的、微生物学的、細胞病態学的応用など)における使用のためのヒト抗体の産生用のインビボシステムを提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物を使用して、例えば病理学的変化の指標となる特定の細胞表面マーカーの発現などの細胞変化の特定のための関連抗原性部位に結合するヒト抗体可変ドメインを産生させてもよい。そのような抗体は、様々な化学実体(例えば放射性トレーサー)と複合体化することができ、そして望ましい場合には様々なインビボおよび/またはインビトロのシステムで利用することができる。
【0284】
一部の実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物は、腫瘍および/または感染性疾患における使用のためのヒト抗体の開発および選別のための改善インビボシステムを提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載の非ヒト動物および対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載の遺伝子改変とは異なる遺伝子改変を有するもの、または遺伝子改変を有さないもの(すなわち野生型)など)に腫瘍(または腫瘍細胞)を移植し、またはウイルス(例えばインフルエンザ、HIV、HCV、HPVなど)に感染させてもよい。移殖または感染させた後、非ヒト動物に候補治療物質を投与してもよい。腫瘍またはウイルスは、非ヒト動物内の一つ以上の場所に定着するのに十分な時間が与えられた後に、候補治療物質を投与されてもよい。あるいは、および/またはさらに、免疫反応をそのような非ヒト動物においてモニタリングしてもよく、それにより治療剤として開発され得る可能性のあるヒト抗体を特徴解析し、選択してもよい。
キット
【0285】
一部の態様において本発明はさらに、本明細書に記載される、少なくとも一つの非ヒト動物、非ヒト細胞、DNA断片、標的化ベクター、またはそれらの任意の組み合わせで満たされた容器を一つ以上備えたパックまたはキットを提供する。キットは、任意の適用可能な方法(例えば調査方法)において使用されてもよい。医薬品および生物製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定されたフォームの通知書を任意でかかる容器に関連づけてもよく、その通知書は、(a)ヒト投与に関する製造、使用または販売に関する当局による承認、(b)使用に関する説明書、および/または(c)二つ以上の実体およびそれらの組み合わせの間の物質ならびに/または生物製品(例えば本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト細胞)の移送を支配する契約書、を反映している。
【0286】
ある実施形態の他の特徴は以下の例示的な実施形態の記述の過程で明らかになるはずであり、該例示的な実施形態は、例示のために与えられ、その限定を意図するものではない。
追加の例示的実施形態
【0287】
例示的実施形態1において、その生殖細胞ゲノムが内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類が本明細書において提供され、当該軽鎖座位は、(a)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含み、この場合において(a)と(b)は(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびこの場合において当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位はさらに、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)を含む。
【0288】
例示的実施形態2において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が二つの齧歯類Eλを含む、実施形態1に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0289】
例示的実施形態3において、当該二つの齧歯類Eλが、マウスEλおよびマウスEλ3−1である、実施形態2に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0290】
例示的実施形態4において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が三つのヒトEλを含む、実施形態1〜3のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0291】
例示的実施形態5において、その生殖細胞ゲノムが、(i)一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または(ii)一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む、実施形態1〜4のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0292】
例示的実施形態6において、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入は、齧歯類のV
H、D
H遺伝子セグメントを置換する、実施形態5に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0293】
例示的実施形態7において、当該挿入は、ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメント、ならびにその組み合わせの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態6に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0294】
例示的実施形態8において、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入は、齧歯類のVκおよびJκ遺伝子セグメントを置換する、実施形態5または6に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0295】
例示的実施形態9において、当該挿入は、ヒトVκ、およびJκ遺伝子セグメント、ならびにその組み合わせの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態8に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0296】
例示的実施形態10において、当該齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域が、内因性齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域である、実施形態5〜8のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0297】
例示的実施形態11において、当該齧歯類Cκ領域が内因性齧歯類Cκ領域である、実施形態5〜10のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0298】
例示的実施形態12において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性VλおよびJλ遺伝子セグメントのすべてまたは一部の欠失を含む、実施形態1〜9のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0299】
例示的実施形態13において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、Vλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2遺伝子セグメントとVλ1−Jλ3−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む、実施形態12に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0300】
例示的実施形態14において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、Vλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2−Jλ4P−Cλ4P遺伝子セグメントとVλ1−Jλ3−Jλ3P−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む、実施形態12に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0301】
例示的実施形態15において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントがマウスCλ1遺伝子セグメントである、実施形態1〜14のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0302】
例示的実施形態16において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が齧歯類Eλ2−4の欠失を含む、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0303】
例示的実施形態17において、当該齧歯類が、内因性イムノグロブリンλ軽鎖を検出可能な程度に発現しない、実施形態1〜16のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0304】
例示的実施形態18において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、ヒトV
H遺伝子セグメントのV
H3−74〜V
H6−1、ヒトD
H遺伝子セグメントのD
H1−1〜D
H7−27、およびヒトJ
H遺伝子セグメントのJ
H1〜J
H6の挿入を含む、実施形態5〜17のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0305】
例示的実施形態19において、当該挿入は、ヒトV
H3−74〜V
H6−1の間に自然に存在するヒト非コードDNA、ヒトD
H1−1〜D
H7−27の間に自然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJ
H1〜J
H6の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態18に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0306】
例示的実施形態20において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトイムノグロブリンκ軽鎖座位の近位Vκ重複のすべてまたは一部の挿入を含む、実施形態5〜19のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0307】
例示的実施形態21において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトVκ遺伝子セグメントのVκ2−40〜Vκ4−1、およびヒトJκ遺伝子セグメントのJκ1−Jκ5の挿入を含む、実施形態20に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0308】
例示的実施形態22において、当該挿入が、ヒトVκ2−40〜Vκ4−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJκ1−Jκ5の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態21に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0309】
例示的実施形態23において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、少なくともヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、ヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7、ならびに齧歯類Cλ1遺伝子セグメントの挿入を含む、実施形態1〜22のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0310】
例示的実施形態24において、当該挿入は、ヒトVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の上流(または5’側)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態23に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0311】
例示的実施形態25において、当該イムノグロブリン重鎖座位が、内因性齧歯類Adam6遺伝子を欠く、実施形態5〜24のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0312】
例示的実施形態26において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む、実施形態5〜25のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0313】
例示的実施形態27において、当該一つ以上のヌクレオチド配列が、第一および第二のヒトV
H遺伝子セグメントの間に挿入される、実施形態26に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0314】
例示的実施形態28において、当該一つ以上のヌクレオチド配列が、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに挿入される、実施形態26に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0315】
例示的実施形態29において、当該第一のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H1−2であり、第二のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H6−1である、実施形態27に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0316】
例示的実施形態30において、当該一つ以上のヌクレオチド配列が、ヒトV
H遺伝子セグメントとヒトD
H遺伝子セグメントの間に挿入される、実施形態26に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0317】
例示的実施形態31において、当該齧歯類が、内因性イムノグロブリン重鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である、実施形態5〜30のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0318】
例示的実施形態32において、当該齧歯類が、内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である、実施形態5〜31のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0319】
例示的実施形態33において、当該齧歯類が、内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である、実施形態1〜32のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0320】
例示的実施形態34において、当該齧歯類がラットまたはマウスである、実施形態1〜33のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0321】
例示的実施形態35において、その生殖細胞ゲノムが、以下を含む内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む、単離齧歯類細胞が本明細書において提供される:(a)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントであって、(i)ここで(a)と(b)は、(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして(ii)当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含む。
【0322】
例示的実施形態36において、実施形態35に記載の齧歯類細胞から作製された不死化細胞が本明細書において提供される。
【0323】
例示的実施形態37において、当該齧歯類細胞が、齧歯類胚性幹細胞である、実施形態35に記載の単離齧歯類細胞が本明細書において提供される。
【0324】
例示的実施形態38において、実施形態35の齧歯類胚性幹細胞から作製された齧歯類胚が本明細書において提供される。
【0325】
例示的実施形態39において、その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類の作製方法が本明細書において提供され、当該方法は、(a)DNA断片を齧歯類胚性幹細胞内に導入することであって、前記DNA断片は、(i)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(ii)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(iii)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含むヌクレオチド配列を含み、ここで(i)〜(iii)は齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびここで当該ヌクレオチド配列は、一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含むこと、(b)(a)において作製された齧歯類胚性幹細胞を取得すること、および(c)(b)の齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作製すること、を含む。
【0326】
例示的実施形態40において、当該ヌクレオチド配列が、一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含む、実施形態39に記載の方法が本明細書において提供される。
【0327】
例示的実施形態41において、その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類の作製方法が本明細書において提供され、当該操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、当該ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、齧歯類またはヒトCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含み、当該方法は、齧歯類の生殖細胞ゲノムを改変し、それにより当該ゲノムに操作されたイムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませること、ここで当該操作された座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、当該ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、齧歯類またはヒトCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含み、それにより前記齧歯類を作製すること、を含む。
【0328】
例示的実施形態42において、当該一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントが、Vλ5−52〜Vλ1−40および/またはVλ3−27〜Vλ3−1を含む、実施形態39または41に記載の方法が本明細書において提供される。
【0329】
例示的実施形態43において、当該一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントが、Vλ5−52〜Vλ1−40および/またはVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態42に記載の方法が本明細書において提供される。
【0330】
例示的実施形態44において、当該一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントと当該一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントは、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、およびヒトJλ7遺伝子セグメントを含む、実施形態39〜43のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0331】
例示的実施形態45において、当該ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、およびJλ6−Cλ6は、当該ヒトJλおよびCλ遺伝子セグメント対の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、および当該ヒトJλ7遺伝子セグメントは、ヒトJλ7の上流(または5’)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態44に記載の方法が本明細書において提供される。
【0332】
例示的実施形態46において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントがマウスCλ1遺伝子セグメントである、実施形態39〜45いずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0333】
例示的実施形態47において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が三つのヒトEλを含む、実施形態39〜46のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0334】
例示的実施形態48において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が二つの齧歯類Eλを含む、実施形態39〜46のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0335】
例示的実施形態49において、当該二つの齧歯類Eλが、マウスEλおよびマウスEλ3−1である、実施形態48に記載の方法が本明細書において提供される。
【0336】
例示的実施形態50において、当該DNA断片が、一つ以上の選択マーカーをさらに含む、実施形態38および42〜49のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0337】
例示的実施形態51において、当該DNA断片が、一つ以上の部位特異的組み換え部位をさらに含む、実施形態39および42〜50のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0338】
例示的実施形態52において、(a)の当該DNA断片が、その生殖細胞ゲノムが、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、を含む齧歯類胚性幹細胞へと導入される、実施形態39および42〜51のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0339】
例示的実施形態53において、当該(a)のDNA断片は、その生殖細胞ゲノムが、野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位、または野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位と野生型内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位、を含む齧歯類胚性幹細胞へと導入され、そしてこの場合において当該方法は、前記非ヒト胚性幹細胞から産生されたマウスと、第二のマウスを交配させる工程をさらに含む、実施形態39および42〜51のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される
【0340】
例示的実施形態54において、齧歯類の生殖細胞ゲノムを改変して、その生殖細胞ゲノムに操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませることが、その生殖細胞ゲノムが、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む齧歯類胚性幹細胞において実施される、実施形態47〜49のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0341】
例示的実施形態55において、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの当該挿入は、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態52または54に記載の方法が本明細書において提供される。
【0342】
例示的実施形態56において、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントおよび一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの当該挿入は、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、および一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態52または54に記載の方法が本明細書において提供される。
【0343】
例示的実施形態57において、非ヒト動物の生殖細胞ゲノムを改変し、その生殖細胞ゲノムに操作されたイムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませることが、その生殖細胞ゲノムが、野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位、または野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位と野生型内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位、を含む非ヒト胚性幹細胞において実施され、そしてこの場合において当該方法は、前記非ヒト胚性幹細胞から産生されたマウスと、第二のマウスを交配させる工程をさらに含む、実施形態41〜49のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0344】
例示的実施形態58において、当該第二のマウスが、野生型IgHおよびIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有する、実施形態53または57のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0345】
例示的実施形態59において、当該第二のマウスが、ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgHおよびIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有し、当該ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgH座位が、挿入された齧歯類Adam6コード配列を含有する、実施形態53または57のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0346】
例示的実施形態60において、当該第二のマウスが、ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgH座位と、ホモ接合性またはヘテロ接合性の不活化Igκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有する、実施形態53または57のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0347】
例示的実施形態61において、齧歯類において抗体を産生させる方法が本明細書において提供され、当該方法は、(1)対象抗原で齧歯類を免疫化する工程であって、当該齧歯類は、(ai)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含む内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む生殖細胞ゲノムを有し、この場合において(a)と(b)は(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびこの場合において当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位はさらに、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)を含む工程、(2)当該齧歯類が当該対象抗原に対する免疫反応を生じさせるのに十分な条件下で当該齧歯類を維持する工程、および(3)当該齧歯類または齧歯類細胞から、当該対象抗原に結合する抗体を回収する工程を含む。
【0348】
例示的実施形態62において、当該齧歯類が、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む生殖細胞ゲノムを有する、実施形態61に記載の方法が本明細書において提供される。
【0349】
例示的実施形態63において、当該齧歯類細胞が、B細胞である、実施形態61または62のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0350】
例示的実施形態64において、当該齧歯類細胞が、ハイブリドーマである、実施形態61または62のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0351】
例示的実施形態65において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の挿入を含む、実施形態61〜64のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0352】
例示的実施形態66において、当該挿入は、ヒトVλのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の上流(または5’側)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態65に記載の方法が本明細書において提供される。
【0353】
例示的実施形態67において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントがマウスCλ1遺伝子セグメントである、実施形態61〜66いずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0354】
例示的実施形態68において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、ヒトV
H遺伝子セグメントのV
H3−74〜V
H6−1、ヒトD
H遺伝子セグメントのD
H1−1〜D
H7−27、およびヒトJ
H遺伝子セグメントのJ
H1〜J
H6の挿入を含み、そして当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、内因性齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される、実施形態62〜67のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0355】
例示的実施形態69において、当該挿入は、ヒトV
H3−74〜V
H6−1の間に自然に存在するヒト非コードDNA、ヒトD
H1−1〜D
H7−27の間に自然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJ
H1〜J
H6の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態68に記載の方法が本明細書において提供される。
【0356】
例示的実施形態70において、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類V
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントを置き換える、実施形態68に記載の方法が本明細書において提供される。
【0357】
例示的実施形態71において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトVκ遺伝子セグメントのVκ2−40〜Vκ4−1、およびヒトJκ遺伝子セグメントのJκ1−Jκ5の挿入を含み、そして当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、内因性齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される、実施形態62〜70のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0358】
例示的実施形態72において、当該挿入が、ヒトVκ2−40〜Vκ4−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJκ1−Jκ5の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む、実施形態71に記載の方法が本明細書において提供される。
【0359】
例示的実施形態73において、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類VκおよびJκ遺伝子セグメントを置き換える、実施形態71に記載の方法が本明細書において提供される。
【0360】
例示的実施形態74において、当該齧歯類の生殖細胞ゲノムは、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む、実施形態61〜73のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0361】
例示的実施形態75において、当該イムノグロブリン重鎖座位が、内因性齧歯類Adam6遺伝子を欠く、実施形態62〜74のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0362】
例示的実施形態76において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む、実施形態75に記載の方法が本明細書において提供される。
【0363】
例示的実施形態77において、当該一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列が、第一および第二のヒトV
H遺伝子セグメントの間に挿入される、実施形態76に記載の方法が本明細書において提供される。
【0364】
例示的実施形態78において、当該第一のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H1−2であり、第二のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H6−1である、実施形態77に記載の方法が本明細書において提供される。
【0365】
例示的実施形態79において、当該一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列が、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりにに挿入される、実施形態76に記載の方法が本明細書において提供される。
【0366】
例示的実施形態80において、当該一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列が、ヒトV
H遺伝子セグメントとヒトD
H遺伝子セグメントの間に挿入される、実施形態76に記載の方法が本明細書において提供される。
【0367】
例示的実施形態81において、齧歯類または齧歯類細胞から回収された対象抗原に結合する抗体が、ヒト重鎖可変ドメインとヒトラムダ軽鎖可変ドメインを含む、実施形態61〜80のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0368】
例示的実施形態82において、当該ヒト重鎖可変ドメインは、再構成されたヒトV
H遺伝子セグメントを含み、当該セグメントは、V
H3−74、V
H3−73、V
H3−72、V
H2−70、V
H1−69、V
H3−66、V
H3−64、V
H4−61、V
H4−59、V
H1−58、V
H3−53、V
H5−51、V
H3−49、V
H3−48、V
H1−46、V
H1−45、V
H3−43、V
H4−39、V
H4−34、V
H3−33、V
H4−31、V
H3−30、V
H4−28、V
H2−26、V
H1−24、V
H3−23、V
H3−21、V
H3−20、V
H1−18、V
H3−15、V
H3−13、V
H3−11、V
H3−9、V
H1−8、V
H3−7、V
H2−5、V
H7−4−1、V
H4−4、V
H1−3、V
H1−2およびV
H6−1からなる群から選択される、実施形態81に記載の方法が本明細書において提供される。
【0369】
例示的実施形態83において、当該ヒトラムダ軽鎖可変ドメインは、再構成されたヒトVλ遺伝子セグメントを含み、当該セグメントは、Vλ4−69、Vλ8−61、Vλ4−60、Vλ6−57、Vλ10−54、Vλ5−52、Vλ1−51、Vλ9−49、Vλ1−47、Vλ7−46、Vλ5−45、Vλ1−44、Vλ7−43、Vλ1−40、Vλ5−39、Vλ5−37、Vλ1−36、Vλ3−27、Vλ3−25、Vλ2−23、Vλ3−22、Vλ3−21、Vλ3−19、Vλ2−18、Vλ3−16、Vλ2−14、Vλ3−12、Vλ2−11、Vλ3−10、Vλ3−9、Vλ2−8、Vλ4−3およびVλ3−1からなる群から選択される、実施形態81または82に記載の方法が本明細書において提供される。
【0370】
例示的実施形態84において、当該齧歯類がラットまたはマウスである、実施形態39〜83のいずれか一つに記載の方法が本明細書において提供される。
【0371】
例示的実施形態85において、その生殖細胞ゲノムが、以下を含むホモ接合性内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類が本明細書において提供される:(i)ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、(ii)ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6、(iii)ヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7、および(iv)三つのヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサーであって、(i)〜(iv)は互いに操作可能に連結され、そして(i)〜(iii)は齧歯類Cλ遺伝子セグメントの上流であり、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性齧歯類イムノグロブリンEλ2−4を欠き、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1はヒトVλ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、およびJλ6−Cλ6は、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、そしてヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7は、ヒトJλ7の上流(または5’)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0372】
例示的実施形態86において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントがマウスCλ1遺伝子セグメントである、実施形態85に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0373】
例示的実施形態87において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位が、内因性齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサーEλとEλ3−1をさらに含む、実施形態85または86に記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0374】
例示的実施形態88において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性齧歯類のVλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2−Jλ4P−Cλ4P遺伝子セグメントとVλ1−Jλ3−Jλ3P−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む、実施形態85〜87のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0375】
例示的実施形態89において、当該齧歯類がラットまたはマウスである、実施形態85〜88のいずれか一つに記載の齧歯類が本明細書において提供される。
【0376】
一部の実施形態において、その生殖細胞ゲノムが内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類が本明細書において提供され、当該軽鎖座位は、(a)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含み、この場合において(a)と(b)は(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびこの場合において当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位はさらに、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)を含む。
【0377】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、二つの齧歯類Eλを含む。
【0378】
一部の実施形態において、当該二つの齧歯類Eλは、マウスEλとマウスEλ3−1である。
【0379】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、三つのヒトEλを含む。
【0380】
一部の実施形態において、当該生殖細胞ゲノムは、(i)一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または(ii)一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む。
【0381】
一部の実施形態において、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入は、齧歯類V
H、D
H遺伝子セグメントを置き換える。
【0382】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメント、ならびにその組み合わせの間に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0383】
一部の実施形態において、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入は、齧歯類VκおよびJκ遺伝子セグメントを置き換える。
【0384】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメント、ならびにその組み合わせの間に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0385】
一部の実施形態において、当該齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域は、内因性齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域である。
【0386】
一部の実施形態において、当該齧歯類Cκ領域は、内因性齧歯類Cκ領域である。
【0387】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性VλおよびJλ遺伝子セグメントのすべてまたは一部の欠失を含む。
【0388】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、Vλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2遺伝子セグメントと、Vλ1−Jλ3−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む。
【0389】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、Vλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2−Jλ4P−Cλ4P遺伝子セグメントと、Vλ1−Jλ3−Jλ3P−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む。
【0390】
一部の実施形態において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントは、マウスCλ1遺伝子セグメントである。
【0391】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、齧歯類Eλ2−4の欠失を含む。
【0392】
一部の実施形態において、当該齧歯類は、内因性イムノグロブリンλ軽鎖を検出可能な程度に発現しない。
【0393】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、ヒトV
H遺伝子セグメントのV
H3−74からV
H6−1、ヒトD
H遺伝子セグメントのD
H1−1からD
H7−27、およびヒトJ
H遺伝子セグメントのJ
H1−J
H6の挿入を含む。
【0394】
一部の実施形態において、当該挿入は、ヒトV
H3−74〜V
H6−1の間に自然に存在するヒト非コードDNA、ヒトD
H1−1〜D
H7−27の間に自然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJ
H1〜J
H6の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0395】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトイムノグロブリン軽鎖κ座位の近位Vκ重複のすべてまたは一部の挿入を含む。
【0396】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトVκ遺伝子セグメントのVκ2−40からVκ4−1、およびヒトJκ遺伝子セグメントのJκ1−Jκ5の挿入を含む。
【0397】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトVκ2−40〜Vκ4−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJκ1−Jκ5の間に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0398】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、少なくともヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、ヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7、ならびに齧歯類Cλ1遺伝子セグメントの挿入を含む。
【0399】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の上流(または5’側)に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0400】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、内因性齧歯類Adam6遺伝子を欠く。
【0401】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む。
【0402】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヌクレオチド配列は、第一および第二のヒトV
H遺伝子セグメントの間に挿入される。
【0403】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに挿入される。
【0404】
一部の実施形態において、当該第一のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H1−2であり、当該第二のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H6−1である。
【0405】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV
H遺伝子セグメントとヒトD
H遺伝子セグメントの間に挿入される。
【0406】
一部の実施形態において、当該齧歯類は、内因性イムノグロブリン重鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である。
【0407】
一部の実施形態において、当該齧歯類は、内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である。
【0408】
一部の実施形態において、当該齧歯類は、内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である。
【0409】
一部の実施形態では、当該齧歯類はラットまたはマウスである。
【0410】
一部の実施形態において、その生殖細胞ゲノムが、以下を含む内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む、単離齧歯類細胞が本明細書において提供される:(a)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントであって、(i)ここで(a)と(b)は、(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして(ii)当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含む。
【0411】
一部の実施形態において、本明細書において提供される齧歯類細胞から作製された不死化細胞が本明細書において提供される。
【0412】
一部の実施形態において、当該齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。
【0413】
一部の実施形態において、本明細書において提供される齧歯類胚性幹細胞から作製された齧歯類胚が本明細書において提供される。
【0414】
一部の実施形態において、その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類の作製方法が本明細書において提供され、当該方法は、(a)DNA断片を齧歯類胚性幹細胞内に導入することであって、前記DNA断片は、(i)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(ii)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(iii)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含むヌクレオチド配列を含み、ここで(i)〜(iii)は齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびここで当該ヌクレオチド配列は、一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含むこと、(b)(a)において作製された齧歯類胚性幹細胞を取得すること、および(c)(b)の齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作製すること、を含む。
【0415】
一部の実施形態において、当該ヌクレオチド配列は、一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含む。
【0416】
一部の実施形態において、その生殖細胞ゲノムが、操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類の作製方法が本明細書において提供され、当該操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、当該ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、齧歯類またはヒトCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含み、当該方法は、齧歯類の生殖細胞ゲノムを改変し、それにより当該ゲノムに操作されたイムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませること、ここで当該操作された座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、当該ヒトVλおよびJλ遺伝子セグメントは、齧歯類またはヒトCλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含み、それにより前記齧歯類を作製すること、を含む。
【0417】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ5−52〜Vλ1−40および/またはVλ3−27〜Vλ3−1を含む。
【0418】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ5−52〜Vλ1−40および/またはVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0419】
一部の実施形態において、当該一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントと当該一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントは、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、およびヒトJλ7遺伝子セグメントを含む。
【0420】
一部の実施形態において、当該ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、およびJλ6−Cλ6は、当該ヒトJλおよびCλ遺伝子セグメント対の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、および当該ヒトJλ7遺伝子セグメントは、ヒトJλ7の上流(または5’)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0421】
一部の実施形態において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントは、マウスCλ1遺伝子セグメントである。
【0422】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、三つのヒトEλを含む。
【0423】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、二つの齧歯類Eλを含む。
【0424】
一部の実施形態において、当該二つの齧歯類Eλは、マウスEλとマウスEλ3−1である。
【0425】
一部の実施形態において、当該DNA断片は、一つ以上の選択マーカーをさらに含む。
【0426】
一部の実施形態において、当該DNA断片は、一つ以上の部位特異的組み換え部位をさらに含む。
【0427】
一部の実施形態において、(a)の当該DNA断片は、その生殖細胞ゲノムが、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、を含む齧歯類胚性幹細胞へと導入される。
【0428】
一部の実施形態において、当該(a)のDNA断片は、その生殖細胞ゲノムが、野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位、または野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位と野生型内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位、を含む齧歯類胚性幹細胞へと導入され、そしてこの場合において当該方法は、前記非ヒト胚性幹細胞から産生されたマウスと、第二のマウスを交配させる工程をさらに含む。
【0429】
一部の実施形態において、齧歯類の生殖細胞ゲノムを改変して、その生殖細胞ゲノムに操作された内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませることは、その生殖細胞ゲノムが、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む齧歯類胚性幹細胞において実施される。
【0430】
一部の実施形態において、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの当該挿入は、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0431】
一部の実施形態において、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントおよび一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの当該挿入は、一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNA、および一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0432】
一部の実施形態において、非ヒト動物の生殖細胞ゲノムを改変し、その生殖細胞ゲノムに操作されたイムノグロブリンλ軽鎖座位を含ませることは、その生殖細胞ゲノムが、野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位、または野生型内因性イムノグロブリン重鎖座位と野生型内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位、を含む非ヒト胚性幹細胞において実施され、そしてこの場合において当該方法は、前記非ヒト胚性幹細胞から産生されたマウスと、第二のマウスを交配させる工程をさらに含む。
【0433】
一部の実施形態において、当該第二のマウスは、野生型IgHおよびIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有する。
【0434】
一部の実施形態において、当該第二のマウスは、ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgHおよびIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有し、当該ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgH座位は、挿入された齧歯類Adam6コード配列を含有する。
【0435】
一部の実施形態において、当該第二のマウスは、ホモ接合性またはヘテロ接合性のヒト化IgH座位と、ホモ接合性またはヘテロ接合性の不活化Igκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有する。
【0436】
一部の実施形態において、齧歯類において抗体を産生させる方法が本明細書において提供され、当該方法は、(1)対象抗原で齧歯類を免疫化する工程であって、当該齧歯類は、(ai)一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、(b)一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および(c)一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントを含む内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む生殖細胞ゲノムを有し、この場合において(a)と(b)は(c)と齧歯類Cλ遺伝子セグメントに操作可能に連結され、およびこの場合において当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位はさらに、一つ以上の齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサー(Eλ)を含む工程、(2)当該齧歯類が当該対象抗原に対する免疫反応を生じさせるのに十分な条件下で当該齧歯類を維持する工程、および(3)当該齧歯類または齧歯類細胞から、当該対象抗原に結合する抗体を回収する工程を含む。
【0437】
一部の実施形態において、当該齧歯類は、一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、または一つ以上のヒトV
H遺伝子セグメント、一つ以上のヒトD
H遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトJ
H遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリン重鎖座位であって、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される座位、ならびに一つ以上のヒトVκ遺伝子セグメントと一つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントの挿入を含む内因性イムノグロブリンκ軽鎖座位であって、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される座位、をさらに含む生殖細胞ゲノムを有する。
【0438】
一部の実施形態において、当該齧歯類細胞は、B細胞である。
【0439】
一部の実施形態において、当該齧歯類細胞は、ハイブリドーマである。
【0440】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、Jλ6−Cλ6、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の挿入を含む。
【0441】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトVλVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6の間に天然に存在するヒト非コードDNA、ならびにヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7の上流(または5’側)に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0442】
一部の実施形態において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントは、マウスCλ1遺伝子セグメントである。
【0443】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、ヒトV
H遺伝子セグメントのV
H3−74〜V
H6−1、ヒトD
H遺伝子セグメントのD
H1−1〜D
H7−27、およびヒトJ
H遺伝子セグメントのJ
H1〜J
H6の挿入を含み、そして当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、内因性齧歯類イムノグロブリン重鎖定常領域に操作可能に連結される。
【0444】
一部の実施形態において、当該挿入は、ヒトV
H3−74〜V
H6−1の間に自然に存在するヒト非コードDNA、ヒトD
H1−1〜D
H7−27の間に自然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJ
H1〜J
H6の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0445】
一部の実施形態において、当該ヒトV
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントは、齧歯類V
H、D
H、およびJ
H遺伝子セグメントを置き換える。
【0446】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリンκ軽鎖座位は、ヒトVκ遺伝子セグメントのVκ2−40〜Vκ4−1、およびヒトJκ遺伝子セグメントのJκ1−Jκ5の挿入を含み、そして当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、内因性齧歯類イムノグロブリンCκ領域に操作可能に連結される。
【0447】
一部の実施形態において、当該挿入には、ヒトVκ2−40〜Vκ4−1の間に天然に存在するヒト非コードDNA、およびヒトJκ1−Jκ5の間に天然に存在するヒト非コードDNAが含まれる。
【0448】
一部の実施形態において、当該ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントは、齧歯類VκおよびJκ遺伝子セグメントを置き換える。
【0449】
一部の実施形態において、当該齧歯類の生殖細胞ゲノムは、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む。
【0450】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、内因性齧歯類Adam6遺伝子を欠く。
【0451】
一部の実施形態において、当該イムノグロブリン重鎖座位は、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする一つ以上のヌクレオチド配列の挿入をさらに含む。
【0452】
一部の実施形態において、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする当該一つ以上のヌクレオチド配列は、第一および第二のヒトV
H遺伝子セグメントの間に挿入される。
【0453】
一部の実施形態において、当該第一のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H1−2であり、当該第二のヒトV
H遺伝子セグメントは、ヒトV
H6−1である。
【0454】
一部の実施形態において、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする当該一つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに挿入される。
【0455】
一部の実施形態において、一つ以上の齧歯類Adam6ポリペプチドをコードする当該一つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV
H遺伝子セグメントとヒトD
H遺伝子セグメントの間に挿入される。
【0456】
一部の実施形態において、当該齧歯類または齧歯類細胞から回収された対象抗原に結合する抗体は、ヒト重鎖可変ドメインとヒトラムダ軽鎖可変ドメインを含む。
【0457】
一部の実施形態において、当該ヒト重鎖可変ドメインは、再構成されたヒトV
H遺伝子セグメントを含み、当該セグメントは、V
H3−74、V
H3−73、V
H3−72、V
H2−70、V
H1−69、V
H3−66、V
H3−64、V
H4−61、V
H4−59、V
H1−58、V
H3−53、V
H5−51、V
H3−49、V
H3−48、V
H1−46、V
H1−45、V
H3−43、V
H4−39、V
H4−34、V
H3−33、V
H4−31、V
H3−30、V
H4−28、V
H2−26、V
H1−24、V
H3−23、V
H3−21、V
H3−20、V
H1−18、V
H3−15、V
H3−13、V
H3−11、V
H3−9、V
H1−8、V
H3−7、V
H2−5、V
H7−4−1、V
H4−4、V
H1−3、V
H1−2およびV
H6−1からなる群から選択される。
【0458】
一部の実施形態において、当該ヒトラムダ軽鎖可変ドメインは、再構成されたヒトVλ遺伝子セグメントを含み、当該セグメントは、Vλ4−69、Vλ8−61、Vλ4−60、Vλ6−57、Vλ10−54、Vλ5−52、Vλ1−51、Vλ9−49、Vλ1−47、Vλ7−46、Vλ5−45、Vλ1−44、Vλ7−43、Vλ1−40、Vλ5−39、Vλ5−37、Vλ1−36、Vλ3−27、Vλ3−25、Vλ2−23、Vλ3−22、Vλ3−21、Vλ3−19、Vλ2−18、Vλ3−16、Vλ2−14、Vλ3−12、Vλ2−11、Vλ3−10、Vλ3−9、Vλ2−8、Vλ4−3およびVλ3−1からなる群から選択される。
【0459】
一部の実施形態では、当該齧歯類はマウスまたはラットである。
【0460】
一部の実施形態において、その生殖細胞ゲノムが、以下を含むホモ接合性内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位を含む齧歯類が本明細書において提供される:(i)ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1、(ii)ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3およびJλ6−Cλ6、(iii)ヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7、および(iv)三つのヒトイムノグロブリンλ軽鎖エンハンサーであって、(i)〜(iv)は互いに操作可能に連結され、そして(i)〜(iii)は齧歯類Cλ遺伝子セグメントの上流であり、そして当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性齧歯類イムノグロブリンEλ2−4を欠き、ヒトVλ遺伝子セグメントのVλ5−52〜Vλ1−40およびVλ3−27〜Vλ3−1はヒトVλ遺伝子セグメントの間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対のJλ1−Cλ1、Jλ2−Cλ2、Jλ3−Cλ3、およびJλ6−Cλ6は、ヒトJλ−Cλ遺伝子セグメント対の間に天然に存在するヒト非コードDNAを含み、そしてヒトJλ遺伝子セグメントのJλ7は、ヒトJλ7の上流(または5’)に天然に存在するヒト非コードDNAを含む。
【0461】
一部の実施形態において、当該齧歯類Cλ遺伝子セグメントは、マウスCλ1遺伝子セグメントである。
【0462】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性齧歯類イムノグロブリンλ軽鎖エンハンサーEλとEλ3−1をさらに含む。
【0463】
一部の実施形態において、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、内因性齧歯類のVλ2−Vλ3−Jλ2−Cλ2−Jλ4P−Cλ4P遺伝子セグメントと、Vλ1−Jλ3−Jλ3P−Cλ3−Jλ1遺伝子セグメントの欠失を含む。
【0464】
一部の実施形態では、当該齧歯類はラットまたはマウスである。
【実施例】
【0465】
以下の実施例は、本明細書に記載される方法および組成物をどのように作製し使用するかを当業者に説明するために提供されており、本開示の発明者が自身の発明としてみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。別段の示唆が無い限り、温度は摂氏で示され、圧力は大気圧またはその近くである。
実施例1.齧歯類Igλ軽鎖座位を操作するための標的化ベクターの構築
【0466】
本実施例は、齧歯類(例えば、マウス)などの非ヒト動物のゲノム内への挿入用に標的化ベクターを構築する方法の例を示したものである。本実施例に記載される方法は、その生殖細胞ゲノムが操作されたIgλ軽鎖座位を含む非ヒト動物の作製を示す。特に本実施例は、非ヒト動物において内因性Igλ軽鎖座位を操作するための一連の標的化ベクターの構築を示すものであり、これにより当該非ヒト動物は、ヒト可変ドメイン、および非ヒト、一部の実施形態ではヒトの定常ドメインを有するIgλ軽鎖を含む抗体を、当該非ヒト動物の生殖細胞ゲノム中の前記内因性Igλ軽鎖座位から発現させ、および/または産生する。以下に記載されるように、一連の標的化ベクターは、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質(すなわちヒトVλ、Jλ、CλおよびIgλエンハンサー配列)を様々な量で含有し、内因性齧歯類Igλ軽鎖座位に挿入される。特に前記遺伝物質は、齧歯類Cλ遺伝子(または遺伝子セグメント)の上流に挿入され、それによりヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントは、前記齧歯類Cλ遺伝子に操作可能に連結される。本実施例に記載される方法は、内因性齧歯類Igλ遺伝子セグメント(または配列)の保持および/または欠失をもたらす。操作された内因性Igλ軽鎖座位を構築するための一連の標的化ベクターの例示的略図を
図1〜4に明記する。
【0467】
様々な量のヒトVλ、Jλ、CλおよびIgλエンハンサー配列(または領域)を、齧歯類Igλ軽鎖座位への挿入のために含有する一連の標的化ベクターを、VELOCIGENE(登録商標)技術(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuela et al.,2003,Nature Biotech.21(6):652−9を参照のこと。これらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)と、当分野に公知の分子生物学技術を使用して作製した。本実施例に記述される方法を採用して、任意のヒトVλ、Jλ、CλおよびIgλエンハンサー配列、または望ましい場合には配列の組み合わせ(または配列断片)を活用することができる。表1は、
図1に図示される各標的化ベクターの簡潔な説明を記載する。
【0468】
簡潔に述べると、ヒト細菌人工染色体(BAC)クローンのCTD−2502m16からの約12kb(11,822bp)のヒトIgλゲノム配列を、マウスBACクローンのRP23−60e14にライゲートした。このマウスBACクローンを操作して、当該BACクローンを約90kbまで短縮させ、マウスCλ1遺伝子の下流に固有AsiSIおよびPI−SceI制限酵素認識部位を挿入し、元々のクロラムフェニコール抵抗性(CM
R)遺伝子を、スペクチノマイシン抵抗性(Spec
R)遺伝子と固有I−CeuI制限酵素部位とに、二回の連続的細菌相同組換え(BHR)工程により置き換え、その後、ヒトIgλゲノム配列とのライゲーションを行った。ヒトBACクローンのCTD−2502m16も、二回の連続的BHR工程により改変し、ネオマイシン選択カセットと固有PI−SceI制限酵素部位を用いて3’末端から約53kbのヒト配列を切り取り、そしてハイグロマイシンカセットと固有AsiSI制限酵素部位を用いて5’末端からCM
R遺伝子と約101.5kbのヒト配列を切り取った。それによりAsiSI部位とネオマイシン選択カセットがそれぞれモジュール式ヒトエンハンサー領域の2885bp上流、および約1418bp下流に配置された(例えばAsenbauer,H.and H.G.Klobeck,1996,Eur.J.Immunol.26(1):142−50を参照。本文献は参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。ヒトIgλゲノム配列は、モジュール式で、三つの配列要素を含有するヒトIgλエンハンサー(Eλ)領域(または配列)に対応する約7.5kb(
図1;Asenbauer,H.and H.G.Klobeck,1996,Eur.J.Immunol.26(1):142−50)、そして2.9kbと1.4kbのそれぞれ5’隣接配列と3’隣接配列、ならびにネオマイシン選択カセット(すなわちユビキチンプロモーターの転写制御下にあり、loxP部位に隣接するネオマイシン抵抗性遺伝子[NEO
R])を含有した。改変されたヒトおよびマウスのBACクローンを、AsiSIとPI−SceI部位で消化し、一緒にライゲーションを行った。操作されたマウスBACクローンへライゲーションした後、得られた標的化ベクターは、5’相同アームとして約39,166bpのマウス配列を含有し、そしてマウスIgλ遺伝子セグメントのVλ1、Jλ3、Jλ3P、Cλ3、Jλ1およびCλ1を含有した(6286標的化ベクター、
図1)。3’相同アーム(約30,395bp)は、マウスIgλエンハンサー(mEλ)を含有した。単純化のために、
図1の6286標的化ベクターの図において、マウス相同アームは示されていない。この標的化ベクターとの相同組換えにより、マウス配列が削除されることなく、三つのヒトIgλエンハンサー配列ならびに5’および3’の隣接配列の挿入が生じた。ネオマイシン選択カセットのリコンビナーゼ介在性削除は、ES細胞において、Creリコンビナーゼを一過性発現させることにより行われた(例えば、Lakso,M.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232−6;Orban,P.C.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:6861−5;Gu,H.et al.,1993,Cell 73(6):1155−64;Araki,K.et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:160−4;Dymecki,S.M.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(12):6191−6を参照。これらすべて参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)。
【0469】
第二の構築物(6571標的化ベクター)を操作して、五つの機能性ヒトVλ遺伝子セグメント群と、約125,473bpにわたるJλ−Cλクラスター(すなわちヒトJλ1−Cλ1−Jλ2−Cλ2−Jλ3−Cλ3−Jλ4−Cλ4−Jλ5−Cλ5−Jλ6−Cλ6−hJλ7)の実質的にすべてを含ませた。それらはヒトBACクローンのCTD−2079i4から取得された。標的化ベクターを構築するために、ヒトBACクローンのCTD−2079i4中のヒトCλ7遺伝子を、BHRによりマウスCλ1遺伝子および約1588bpの隣接配列と最初に置換した。それらはマウスBACクローンのRP23−60e14を鋳型として使用してPCRにより増幅させた。次いで、マウスBACクローンのRP23−60e14中のマウスCλ1遺伝子の5’側の配列に対応する約37,161bpのマウス配列を含有する5’相同アームを、マウスおよびヒトのBACクローンの両方にBHRにより別々に導入された固有I−CeuIおよびPI−SceI制限酵素認識部位を使用して、合成マウスCλ1遺伝子を含有する改変ヒトBACクローンのCTD−2079i4にライゲーションさせた。この5’相同アームは、マウスVλ1、Jλ3、Jλ3P、Cλ3、およびJλ1遺伝子セグメントを含有した(
図1)。3’相同アームは、6286標的化ベクターからのヒトEλの内の二つに対応する約9,189bpのヒト配列を含有した(
図1)。
【0470】
第三の構築物(6596標的化ベクター)を操作して、追加の11個の機能性ヒトVλ遺伝子セグメントを含有させた。この標的化ベクターは、BACクローンのRP11−761L13からの約171,458bpのヒト配列を含有した。設計により、この三つのヒトVλ遺伝子セグメントは、6571標的化ベクターとの3’重複相同性(約33,469bp)を提供するように含有された。上述のように、約37,161bpのマウス配列を含有する5’相同アームを、マウスおよびヒトのBACクローンの両方にBHRにより別々に導入された固有I−CeuIおよびAscI制限酵素認識部位を使用して、ヒトVλ遺伝子セグメントを含有するDNA断片の5’末端にライゲーションさせた。
【0471】
第四の構築物(6597標的化ベクター)を操作して、追加の九個の機能性ヒトVλ遺伝子セグメントを含有させた。この標的化ベクターは、二つのBACクローンのRP11−22L18とRP11−761L13からの約121,188bpのヒト配列を含有した。上述のように、このヒト配列の3’末端は追加のヒトVλ遺伝子セグメントを含有し、この遺伝子セグメントは、6596標的化ベクターとの3’重複相同性を提供した(約27,468bp)。6571および6596標的化ベクターに関し上に記載されるように、BACクローンRP23−60e14からのマウス配列を含有する約37,161bpの5’相同アームを、マウスおよびヒトのBACクローンの両方にBHRにより別々に導入された固有I−CeuIおよびAscI制限酵素認識部位を使用して、ヒト配列の5’末端にライゲーションさせた。
【0472】
同様に、第五の構築物(6680標的化ベクター)を操作して、6597標的化ベクターと同じ追加の九個の機能性ヒトVλ遺伝子セグメントを含有させたが、5’相同アームは、相同組換えを介したマウスIgλ軽鎖座位の削除が可能となるように変化させた。この5’相同アームはBACクローンのRP23−15m16からの約22,298bpを含有し、マウスおよびヒトのBACクローンの両方にBHRにより別々に導入された固有I−CeuIおよびAscI制限酵素認識部位を使用して、ヒト配列(約121,188bpの断片、上記)の5’末端にライゲーションされた。この5’相同アームは、マウスVλ2遺伝子セグメントの5’側のマウス配列を含有し、相同組換えが行われることで、マウスIgλ軽鎖座位を効率的に削除する。この標的化ベクターは、6597標的化ベクター(上述)と同じ3’重複相同性を含有した。
図2は、6597または6680標的化ベクターの挿入から生じた異なるアレルを図示する。
【0473】
同様に、追加の操作マウス系統を、CRISPR/Cas9システムを使用したガイドRNA(gRNA)を使用して補助することで、二つの異なる標的化ベクターをES細胞内に共エレクトロポレーションを行うことで作製した(
図3)。例えば、米国特許第9,228,208号(2016年1月5日登録)および米国特許出願公開2015−0159174A1(2014年10月15日出願)、2015−0376650A1(2015年6月5日出願)、2015−0376628A1(2015年6月23日出願)、2016−0060657A1(2015年10月30日出願)、2016−0145646A1(2015年11月20日出願)、および2016−0177339A1(2015年12月18日出願)を参照のこと。このES細胞は、6571標的化ベクター構築物の挿入に対しヘテロ接合性のゲノムを有した。
【0474】
簡潔に述べると、
図3に示されるように、短縮化された6596標的化ベクター(すなわち上述のように5’相同アームとカセットが無い)は、約33kb 3’相同アームを含有するよう設計され、当該相同アームは、6571標的化ベクター中の三つのヒトVλ遺伝子セグメントに対応する重複配列、11個の追加ヒトVλ遺伝子セグメントを含む約111kbの配列、そして単一のヒトVλ遺伝子セグメントを含有する約27kbの配列を含み、第二の標的化ベクターとの重複領域としての役割を果たす。第二の標的化ベクター(6680標的化ベクター)は、当該標的化ベクターの3’末端上に位置する同じ約27kbの重複領域配列、追加の九個のヒトVλ遺伝子セグメントを含む約94kbの配列、ネオマイシン選択カセット(例えばFrt組み換え認識部位に隣接されるユビキチンプロモーターの転写制御下にあるネオマイシン抵抗性遺伝子[NEO
R])、そして22kbの5’マウスλ相同アームを含む。これら二つの標的化ベクターのエレクトロポレーションに採用されたES細胞は、6571標的化ベクターの挿入に対しヘテロ接合性のゲノムを有した(
図3)。これらES細胞は、一つのガイドRNA(gRNA)および二つのgRNAとともに上述の二つの標的化ベクターで共エレクトロポレーションされた。当該一つのガイドRNAは、ヌクレオチド配列CGACCTGATG CAGCTCTCGG(配列番号130)での6571標的化ベクターからのハイグロマイシン抵抗性遺伝子を標的としており、当該二つのgRNAは、マウスVλ2遺伝子セグメントの上流領域(すなわちマイナス鎖上のマウスVλ2遺伝子セグメントの3’側;gRNA1:GTACATCTTG TCTTCAACGT、配列番号139、マウスVλ2遺伝子の上流の約1000bp;gRNA2:GTCCATAATT AATGTAGTTA C、配列番号140、マウスVλ2の上流の約380bp)を標的とし、これらの配列での二本鎖切断を促進する。この二つの共エレクトロポレーションされる標的化ベクターは、相同組換えによってES細胞のゲノム内にハイグロマイシン配列で挿入され、ハイグロマイシン選択カセットを含有する領域と周辺領域を置換した。得られたES細胞は、操作された内因性Igλ座位を含有した。当該座位は、ヒトJλ−Cλクラスターに操作可能に連結された25個の機能性ヒトVλ遺伝子セグメント、ヒトJλ7遺伝子セグメントを含み、マウスCλ1遺伝子に操作可能に連結されたヒトイムノグロブリン可変領域を含む(
図3)。
【0475】
上述の標的化ベクターは、マウス胚性幹細胞(ES)内に導入され、操作されたIgλ軽鎖座位を確立させた。ES細胞ゲノム内に各標的化ベクターが挿入された後に陽性ES細胞クローンが確認され(以下を参照)、その後に次の標的化ベクターが挿入された。一部の例では、表現型解析のために中間系統が作製された。
【表1】
【0476】
上述の標的化ベクターの挿入後の、選択接合点にわたるヌクレオチド配列は、配列解析により確認された。
図1〜4に示される選択接合点を、以下に提示する。
【表D-1】
【表D-2】
【0477】
操作座位の構築、特に操作イムノグロブリン座位の構築において、本発明者らは、いくつかのヒトVλ遺伝子セグメントがあるハプロタイプから失われる場合があること、ゆえにヒトIgλ軽鎖座位にわたる選択BACクローンに提示されない場合があると認識した。一例ではあるが、ごく最近になって、これまでに報告されていたアレルと比較して、ヒトIgλ軽鎖座位のクラスターBには一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントの挿入/欠失が含有されるという証拠が報告された(例えば、ヒトVλ1−50、Vλ5−48、Vλ5−45およびVλ5−39:Moraes,J.C.and G.A.Passos,2003,Immunogenetics 55(1):10−5を参照)。ゆえに本発明者らは、標的化ベクター設計と構築に使用されている特定BACクローンにおいて失われているヒトVλ遺伝子セグメントを含ませる戦略を設計した。
【0478】
簡潔に述べると、ヒトBACクローンを、エンドシークエンスによりヒトIgλ軽鎖座位に対しマッピングした。特にGRCh37/hg19アセンブリ(UCSC Genome Browser,Human Feb.2009)を使用して、ヒトBACクローンのRP11−346I4、CTD−2523F21およびCTD−2523E22が、ヒトVλ7−46〜Vλ1−36を含むヒトIgλ軽鎖座位のクラスターB領域にわたることを特定した。例えば一つ以上の失われたヒトVλ遺伝子セグメント(例えばVλ5−39、Vλ5−37、および/またはVλ1−36)を、これら特定されたBACクローンのいずれか一つを使用して上述の標的化ベクター(6680または6889)に挿入し、挿入が望ましい一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメントを含有させた。例えばBACクローンのCTD−2523F21を、リコンビナーゼ認識部位(例えばlox2372)と、6597標的化ベクターとの重複配列を有する約27kbの3’相同アームに隣接する選択カセット(例えばユビキチンプロモーターの転写制御下にあるハイグロマイシン抵抗性遺伝子[HYG
R])と、3’を置換することにより改変する(上記を参照)。ヒトBACクローンの5’末端は、6680または6889標的化ベクターとの重複配列を有する5’相同アームとしての役割を果たし、それにより相同組換えが促進され、任意の失われたヒトVλ遺伝子セグメントと選択カセットの挿入が促進される。リコンビナーゼ(例えばCre)の一過性発現を行う任意の最終工程を利用して、選択カセットを除去してもよい。
実施例2.操作されたIgλ軽鎖座位を有する齧歯類の作製
【0479】
本実施例は、その生殖細胞ゲノムが、複数のヒトVλ、JλおよびCλ配列の挿入を含む内因性Igλ軽鎖座位を含む非ヒト動物(例えば齧歯類)の作製を示すものであり、当該ヒトVλ、JλおよびCλ配列は、齧歯類Cλ遺伝子(または遺伝子セグメント)に操作可能に連結され、当該内因性Igλ軽鎖座位は一つ以上のヒトIgλエンハンサー(Eλ)をさらに含む。一部の実施形態において、前記内因性Igλ軽鎖座位は、一つ以上の内因性Igλ軽鎖エンハンサー領域(または配列)の欠失を含む。かかる非ヒト動物は、一部の実施形態において、完全にヒトであるIgλ軽鎖(すなわちヒト可変ドメインと定常ドメイン)の発現を特徴とする。
【0480】
実施例1に記載される標的化ベクターの標的挿入は、ポリメラーゼ連鎖反応により確認された。標的BAC DNAを、ポリメラーゼ鎖反応により確認し、続いて、F1ハイブリッド(129S6SvEvTac/C57BL6NTac)マウス胚性幹(ES細胞)にエレクトロポレーションを介して導入した後に、選択培地で培養した。一部の実施形態において、一連の標的化ベクターのエレクトロポレーションに使用されるES細胞は、野生型IgHとIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有してもよく、ホモ接合性のヒト化IgH座位とIgκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有してもよく、ここで当該ホモ接合性ヒト化IgH座位は挿入された齧歯類Adam6コード配列を含有しており(例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号を参照。それらは参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)、またはホモ接合性のヒト化IgH(例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号を参照。上記)とホモ接合性の不活化Igκ座位を含む生殖細胞ゲノムを有してもよい。他の実施形態において、本明細書に記載される標的のES細胞を使用してマウス(以下を参照)を作製した後、本明細書に記載される操作されたヒトIgλ座位を含む得られたマウスを使用して、ヒト化IgHとIgκ座位を含むマウスと交配させ、ここで当該ヒト化IgHは挿入された齧歯類Adam6コード配列(例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号を参照、上記)を含み、またはヒト化IgH座位(例えば米国特許第8,642,835号および第8,697,940号を参照。上記)と不活化Igκ座位を含むマウスと交配させる。エレクトロポレーションを行った10日後に、薬剤抵抗性コロニーを摘まみ上げ、従前に記載されるように正しく標的化されたものをTAQMAN
TMと染色体分析によりスクリーニングした(Valenzuelaら、上記;Frendewey,D.et al.,2010,Methods Enzymol.476:295−307)。表2には、陽性ES細胞クローンのスクリーニングに使用されるプライマー/プローブの例が記載される。
【0481】
VELOCIMOUSE(登録商標)法(DeChiara,T.M.et al.,2010,Methods Enzymol.476:285−294;DeChiara,T.M.,2009,Methods Mol.Biol.530:311−324;Poueymirou et al.,2007,Nat.Biotechnol.25:91−99)を使用した。この方法において、標的のES細胞を非小型化8細胞期Swiss Webster胚に注入して、操作されたIgλ軽鎖座位アレルに対しヘテロ接合性の、健常な完全ES細胞由来F0世代マウスを作製した。F0世代のヘテロ接合性のマウスを、C57Bl6/NTacのマウスと交配させてF1ヘテロ接合体を作製し、このF1ヘテロ接合体同士を交雑させて、表現型解析用のF2世代動物を作製した。
【0482】
まとめると、本実施例は、その生殖細胞ゲノムが、操作されたIgλ軽鎖座位を含む齧歯類(例えばマウス)の作製を示すものであり、当該軽鎖座位は、複数のヒトVλ、JλおよびCλ配列の存在が特徴であり、それら配列は、齧歯類Cλ遺伝子に操作可能に連結されており、当該齧歯類の操作されたIgλ軽鎖座位は、内因性齧歯類軽鎖エンハンサー配列(または領域)とヒトIgλ軽鎖エンハンサー配列を含む。ヒトVλ、JλおよびCλ配列を内因性齧歯類Igλ軽鎖座位に挿入する本明細書に記載の戦略によって、ヒトまたは齧歯類Cλドメインのいずれかに融合されたヒトVλドメインを含有する抗体を発現する齧歯類の構築が可能となる。本明細書に記載されるように、かかるヒトVλドメインは、齧歯類生殖細胞ゲノム中の内因性Igλ軽鎖座位から発現される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
実施例3.操作されたIgλ軽鎖座位を有する齧歯類の表現型評価
【0483】
本実施例は、上述の内因性Igλ軽鎖座位を含有するよう操作された齧歯類(例えばマウス)中の様々な免疫細胞群の特徴解析を示す。特に本実施例は、本明細書に記載される操作された内因性Igλ軽鎖座位を有する齧歯類は、野生型同腹仔と類似したB細胞の発生を呈することを具体的に示すものである。特にヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質を様々な量で担持する、いくつかの操作齧歯類はそれぞれ、齧歯類B細胞表面上にヒト可変ドメインと、ヒトまたは齧歯類の定常ドメインを有するIgλ軽鎖を検出可能な程度に発現する。
【0484】
簡潔に述べると、
図4に提示されるIgλ軽鎖アレルに対しホモ接合性またはヘテロ接合性の選択操作マウスと、野生型同腹仔から脾臓と大腿骨を採取した。2.0%ウシ胎仔血清(FBS)を含む1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco社)を用いてフラッシュすることにより大腿骨から骨髄を採取した。脾臓および骨髄の調製物由来の赤血球を、ACK溶解緩衝液(Gibco社)で溶解させ、続いて2.0%のFBSを含む1×PBSで洗浄した。単離された細胞(1×10
6個)を、選択された抗体カクテルと共に4℃で30分間インキュベートした(表3を参照)。
【表3】
【0485】
染色後に細胞を洗浄し、2%のホルムアルデヒド中で固定した。データ取得は、BD FORTESSA
TMフローサイトメーター上で行われ、FLOWJO
TMソフトウェアを用いて分析された。代表的な結果を
図5〜13及び18〜21に記載する。
図4に提示される他の系統でも類似したデータが取得されたが、選択された指定系統のみを示している。
【0486】
結果から、ヒトIgλ軽鎖座位に対応する遺伝物質を異なる量で担持する各系統が、脾臓および骨髄分画において類似した免疫細胞群プロファイルを示したことが示される。特に
図5〜7に示されるデータから明らかであるように、操作マウスは、野生型同腹仔対照と類似した数のCD19
+脾臓B細胞、類似した脾臓の成熟または移行期B細胞群、類似した脾臓におけるκ利用、そして類似した辺縁体B細胞群および濾胞B細胞群を示した。さらに本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位を、追加のヒト化IgHおよびヒト化Igκ座位の存在下で含有するマウスは、ヒト化IgHおよびヒト化Igκ座位のみを含有するマウスと比較してB細胞の発生に大きな違いは示さなかった(例えば
図18Aおよび18Bを参照)。また
図8〜12に提示されるマウスにおいて示されるように、操作されたマウスは、野生型同腹仔対照と比較して類似したCD19
+、プロB細胞、プレB細胞、未成熟B細胞および成熟B細胞の数を有し、および骨髄において類似したκ利用を有していた。選択された操作系統(ホモ接合性−HO、ヘテロ接合性−HET)における軽鎖発現の、その野生型同腹仔対照との比較の要約を
図13に提示する。本明細書に記載される操作されたヒト化Igλ座位に対しホモ接合性であり、ヒト化IgHおよびIgκ座位に対してもホモ接合性であり、齧歯類Adam6コード配列に対してもホモ接合性であるマウスは、野生型マウスで知られている典型的なラムダの末梢利用(例えば脾臓で5%)と比較して、高いラムダ座位の利用(約40%)を示した(6680HO/VI HO/Adam6 HOおよび6689HO/VI HO/Adam6 HOのカラムを参照。
図13)。また少数群のマウスIgλ陽性B細胞がこれらマウスにおいて検出され(約3〜5%)、このことから、操作されたλ軽鎖座位内のマウスCλ遺伝子も、これらマウスの機能性λ軽鎖の状況下で発現されていることが確認される。
実施例4.操作されたIgλ軽鎖座位を有する齧歯類の抗体発現
【0487】
本実施例は、非ヒト動物からの抗体発現を示すものであり、当該抗体は、ヒトVλ領域と、ヒトまたは齧歯類のCλ領域の存在が特徴である軽鎖を含有し、当該軽鎖は、操作された内因性齧歯類Igλ軽鎖座位から発現される。特に本実施例は、その生殖細胞ゲノムが内因性Igλ軽鎖座位を含む非ヒト動物(例えば齧歯類)の血清中の抗体発現を示すものであり、当該軽鎖座位は、一つ以上のヒトVλ遺伝子セグメント、一つ以上のヒトJλ遺伝子セグメント、および一つ以上のヒトCλ遺伝子セグメントの挿入を含み、当該ヒトVλ、JλおよびCλ遺伝子セグメントは、齧歯類Cλ遺伝子に操作可能に連結され、当該内因性イムノグロブリンλ軽鎖座位は、一つ以上の齧歯類Igλ軽鎖エンハンサー(Eλ)と一つ以上のヒトIgλ軽鎖エンハンサー(Eλ)をさらに含む。
【0488】
簡潔に述べると、選択された操作マウス系統と野生型同腹仔から血液を採取した(実施例3を参照)。エッペンドルフチューブを使用して五分間、4℃、9000rcfで遠心した血液から血清を分離させた。集めた血清をイムノブロッティングに使用して、抗体のIg軽鎖発現を特定した。マウス血清はPBS(Ca2
+とMg2
+を含まない)中、1.5:10に希釈され、還元条件下、および非還元条件下で4〜20%のNovex Tris−Glycineゲル上で泳動された。メーカーの説明書に従い、ゲルをポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜へと移した。ブロットは、0.05%Tween−20を含むTris緩衝生理食塩水(TBST、Sigma社)中、5%無脂肪乳で一晩ブロッキングした。PVDF膜を、0.1%無脂肪乳のTBST溶液中、1:1000で希釈された異なる一次抗体(HRP結合マウス抗hIgλ(Southern Biotech社);HRP結合ヤギ抗mIgλ、Southern Biotech社)に1時間、室温で暴露した。ブロットは、一洗浄当たり十分間で四回洗浄し、メーカーの説明書に従いAmersham ECL Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare Life Sciences社)を用いて一分間発色させた。次いで、GE Healthcare ImageQuant LAS−4000 Cooled CCD Camera Gel Documentation Systemを使用してブロットを画像撮影した。20枚の画像が取得されるまで、または画像が完全に感光されるまで、どちらか最初の状態になるまで15秒間隔で画像を取得した。代表的な結果を
図14Aおよび14Bに記載する。この結果から、全ての操作された系統が、検出可能なレベルのヒトIgλ軽鎖を含有する抗体を血清中に発現したことが示された(
図14およびデータは示さず)。
実施例5.操作されたIgλ軽鎖座位を有する齧歯類におけるヒト遺伝子セグメントの利用
【0489】
本実施例は、本明細書に記載される内因性Igλ軽鎖座位を含有するよう操作された齧歯類(例えばマウス)で発現された抗体軽鎖におけるヒト遺伝子の利用を示す。上述の選択された操作齧歯類系統におけるヒトIgλ遺伝子セグメントの利用は、次世代シークエンサー抗体レパートリー分析により決定された。
【0490】
簡潔に述べると、マウスCλ1遺伝子の上流の25個の機能性ヒトVλ遺伝子セグメント、4個の機能性ヒトJλ−Cλクラスター、およびヒトJλ7遺伝子セグメントの挿入、およびマウスCλ1遺伝子と内因性マウスIgλエンハンサー3.1の間に挿入されたヒトIgλエンハンサーに対してヘテロ接合性のマウスから脾臓細胞が採取された(6889ヘテロ接合性マウス、
図4)。B細胞は、抗マウスCD19磁気ビーズとMACSカラム(Miltenyi Biotech社)により総脾臓細胞から陽性に富化された。総RNAは、RNeasy Plusキット(Qiagen社)を使用して脾臓B細胞から単離された。
【0491】
オリゴ−dTプライマーを用いた逆転写の後、遺伝子特異的PCRが行われ、ヒトIgλ定常領域配列(Cλ1、Cλ2、Cλ3およびCλ6)を含有するcDNA、ならびにマウスCλ1配列を含有するcDNAが、SMARTer(商標) RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社)を使用して作製された。逆転写が行われている間に、特異的DNA配列(PIIA:5’−CCCATGTACT CTGCGTTGAT ACCACTGCTT−3’、配列番号133)を新たに合成されたcDNAの3’末端に付加させた。NucleoSpin Gel and PCR Clean−Up Kit(Clontech社)によりcDNAを精製して、その後、ヒトCλ特異的プライマー(5’−CACYAGTGTG GCCTTGTTGG CTTG−3’、配列番号131)、およびマウスCλ1特異的プライマー(5’−CACCAGTGTG GCCTTGTTAG TCTC−3’、配列番号132)と対形成された、PIIAに対し逆相補的なプライマー(5’−AAGCAGTGGT ATCAACGCAG AGTACAT−3’)を使用してさらに増幅された。
【0492】
次いで精製された増幅物を、PIIA特異的プライマー(5’−GTGACTGGAG TTCAGACGTG TGCTCTTCCG ATCTAAGCAG TGGTATCAAC GCAGAGT−3’、配列番号134)、およびネステッドヒトCλ特異的プライマー(5’−ACACTCTTTC CCTACACGAC GCTCTTCCGA TCTCAGAGGA GGGCGGGAAC AGAGTG−3’、配列番号135)またはネステッドマウスCλ1特異的プライマー(5’−ACACTCTTTC CCTACACGAC GCTCTTCCGA TCTAAGGTGG AAACAGGGTG ACTGATG−3’、配列番号136)を使用したPCRにより増幅させた。450〜690bpの間のPCR産物をPippin Prep(SAGE Science社)により単離し、回収した。これらの断片を、以下のプライマーを使用したPCRによりさらに増幅させた:5’−AATGATACGG CGACCACCGA GATCTACACX XXXXXACACT CTTTCCCTAC ACGACGCTCT TCCGATC−3’、配列番号137、および5’−CAAGCAGAAG ACGGCATACG AGATXXXXXG TGACTGGAGT TCAGACGTGT GCTCTTCCGA TCT−3’、配列番号138(“XXXXXX”は、6bpのインデックス配列であり、配列解析を行うためのサンプルの多重化を可能にする)。約490bp〜710bpのPCR産物をPippin Prepにより単離、回収して、次いでKAPA Library Quantification Kit(KAPA Biosystems社)を使用したqPCRにより定量した。その後、配列解析のためにMiSeqシーケンサー(Illumina社)にローディングした(v3、600サイクル)。
【0493】
バイオインフォマティクス分析を行うために、得られたIllumina配列を逆多重化し、品質向上のためにトリミングした。その後、igblastのローカルインストールを使用して、重複ペアエンドリードをアセンブリし、アノテーションを行った(NCBI、v2.2.25+)。リードを、ヒトおよびマウス両方の生殖細胞VλセグメントならびにJλセグメントのデータベースにアラインメントし、ベストヒットに対しソーティングを行った。同一スコアの複数のベストヒットが検出された場合には配列は不明瞭として示され、分析から取り除かれた。パール(perl)スクリプトのセットを開発して、mysqlデータベースの結果とスコアを分析した。代表的な結果を
図15A(ヒトCλ−プライム)および15B(マウスCλ−プライム)に記載する。
【0494】
別の実験において、6889標的化ベクター(6889HO/VI HO/Adam6 HO、上述)の挿入に対してホモ接合性のマウス(n=3)から回収された脾臓B細胞を、次世代シーケンス抗体のレパートリー分析(上述)によりヒトIgλ遺伝子セグメントの利用に対し分析した。脾臓B細胞から単離されたmRNAは、マウスmCλ(n=3)およびヒトhCλ(n=3)の定常領域に対するプライマーを使用した5’RACEにより増幅され、MiSeqを使用して配列解析された。代表的な結果を
図15C(ヒトCλ−プライム)および15D(マウスCλ−プライム)に記載する。
【0495】
6889標的化ベクター(すなわち二つの標的化ベクターとgRNAの共エレクトロポレーション)を使用して作製されたマウスは、25個すべての機能性ヒトVλ遺伝子セグメントの発現を示した。さらにこれらマウスのB細胞からのヒトVλ遺伝子セグメントの発現は、単離B細胞において、ヒト臍帯血で観察されるヒトVλ遺伝子セグメントと比較して類似した頻度を示した。まとめると、本実施例は、本明細書に記載される操作されたIgλ軽鎖座位をその生殖細胞ゲノム中に含有する齧歯類は、B細胞において、ヒトIgλ配列を含有するIgλ軽鎖を発現することを示す。さらに、そのようなヒトIgλ配列は、マウスまたはヒトのCλドメインを含有する軽鎖において容易に識別され得る。
実施例6.操作された齧歯類における抗体の産生
【0496】
本実施例は、上述の操作された内因性Igλ軽鎖座位を含む齧歯類における抗体の産生を、対象抗原(例えば単回膜貫通タンパク質または複数回膜貫通タンパク質など)を使用して示すものである。本実施例に記載される方法、または当技術分野で公知の免疫化の方法を使用して、本明細書に記載の操作された内因性Igλ軽鎖座位を含有する齧歯類を、ポリペプチドまたはその断片(例えば、所望のエピトープ由来のペプチド)で、または望ましい場合にはポリペプチドまたはその断片の組み合わせで、免疫化することができる。
【0497】
本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位とヒト化IgH座位(上述)を有するマウスのコホート、または本明細書に記載の操作されたIgλ軽鎖座位とヒト化IgHおよびIgκ軽鎖座位(上述)を有するマウスのコホートに、当分野に公知の免疫化方法を使用して対象抗原をチャレンジした。抗体免疫反応を、ELISA免疫アッセイ(すなわち血清力価)でモニターする。望ましい免疫反応が得られた場合、脾臓細胞(および/または他のリンパ組織)を採取し、マウスミエローマ細胞と融合させ、それらの活性を保持させ、不死化ハイブリドーマ細胞株を形成させる。ハイブリドーマ細胞株を(例えば、ELISAアッセイにより)スクリーニングし、選択して、抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定する。ハイブリドーマは、所望される相対結合親和性とアイソタイプに関してさらに特徴付けされてもよい。この技術と上記の免疫原を使用して、数種の抗原特異的キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインと齧歯類定常ドメインを保有する抗体)が取得される。
【0498】
完全ヒト抗体の調製を目的として、重鎖と軽鎖の可変ドメインをコードするDNAを単離して、当該重鎖と軽鎖の望ましいアイソタイプ(定常ドメイン)に連結してもよい。かかる抗体タンパク質を、CHO細胞などの細胞中で産生することができる。続いて、完全ヒト抗体を、相対結合親和性および/または対象の抗原の中和活性に関して特徴付ける。
【0499】
抗原特異的キメラ抗体、または軽鎖と重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。最初に、ヒト可変ドメインと齧歯類定常ドメインを有する高親和性のキメラ抗体を単離し、親和性、選択性、エピトープなどの望ましい特性に関して特徴解析し、選択する。齧歯類定常ドメインを所望のヒト定常ドメインで置換し、完全ヒト抗体を作製する。特定の用途に従い選択される定常ドメインは変化し得るが、可変ドメイン中には高親和性の抗原結合性と標的特異性の特徴が存在する。また、例えばその全体で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,582,298号に記載されるように、ミエローマ細胞との融合を行うことなく、抗原陽性B細胞(免疫化マウス由来)からも抗原特異的抗体は直接単離される。この方法を使用して、数種の完全ヒト抗原特異的抗体(すなわち、ヒト可変ドメインとヒト定常ドメインとを保有する抗体)を作製する。
【0500】
一つの実験において、6597het(n=6)および6680het(n=6)のマウスが、受容体ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)を用いた足蹠投与を介して免疫化され、操作マウスにおける免疫反応が決定された。
【0501】
簡潔に述べると、マウスは2.35μgの抗原(受容体ポリペプチドのECD)と10μgのCpGアジュバント(Invivogen ODN1826)で抗原刺激された。マウスは2.35μgの抗原(受容体ポリペプチドのECD)、10μgのCpGアジュバント、および25μgのAdju−Phos(Brenntag社)で七回追加刺激された。最後の注射から二日後、選択された操作マウス系統と対照から血液を採取した。Mictrotainerキャピラリー血液採取管(BD社、カタログ番号365967)を使用して五分間、4℃、9000rcfで遠心を行い、血液から血清を分離させた。血清ELISAアッセイを実施して、総IgG(
図16A)、抗原特異的IgG(
図16B)、mIgκ(
図17C)、mIgλ(
図17B)およびhIgλ(
図17A)の力価を決定した。
【0502】
総IgG ELISAアッセイに関しては、Maxisorpプレート(Nunc社)を、1ウェル当たり、1μg/mLのヤギ抗マウスIgG+IgM+IgA H&L(Abcam社)のDPBS溶液(CaとMgを含む)でコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートをPBS−T(CaまたはMgを含まず、0.1%Tween−20を含むPBS)中で四回洗浄し、1%BSAを含むPBS−Tで一時間、室温でブロッキングした。0.1%のBSAを含むPBS−T中で血清を十倍に希釈し(1:100で開始し、1:10
9で終了)、マウスIgG標準物(Sigma社)は0.1%BSAを含むPBS−T中で三倍に希釈された(1μg/mLで開始し、0.05ng/mLで終了)。それぞれ標準物とサンプル希釈物の100μlをプレートに添加し、室温で一時間インキュベートし、その後、PBS−T中で四回点状した。1:2500に希釈されたヤギ抗マウスIgGヒトads−HRP(Southern Biotech社)の100μlを各ウェルに加え、プレートを一時間インキュベートした。プレートをPBS−T中で四回洗浄し、100μlのTMB基質試薬(BD Bioscience社)を各ウェルに十分間添加した。1ウェル当たり100μlの1N 硫酸を用いて反応を停止させ、450nmで吸着を測定した。GraphPad Prismでデータを分析し、四パラメータ曲線に適合させた。
【0503】
抗原特異的ELISAアッセイに関しては、Maxisorpプレート(Nunc社)を、1ウェル当たり、1μg/mLの抗原のDPBS溶液(CaとMgを含む)でコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートをPBS−T中で四回洗浄し、PBS−T中、1:2に希釈されたSea Block(ThermoFisher社)にて室温で一時間ブロッキングした。PBS−T中、1:5に希釈されたSea Blockにて血清を希釈した(上述)。各サンプル希釈物を各プレートに加え、一時間、室温でインキュベートした。次いでプレートをPBS−T中、四回洗浄した。1:2500に希釈されたヤギ抗マウスIgGヒトads−HRP(Southern Biotech社)、1:4000に希釈されたヤギ抗mIgκ−HRP(Southern Biotech社)、1:4000に希釈されたヤギ抗mIgλ−HRP(Southern Biotech社)、または1:4000に希釈されたヤギ抗hIgλマウスads−HRP(Southern Biotech社)のいずれか100μlを各ウェルに添加し、プレートを一時間インキュベートした。プレートをPBS−T中四回洗浄し、上述のように発色させた。代表的な結果を
図16と
図17に記載する。
【0504】
まとめると、本実施例は、本明細書に記載されるIgλ軽鎖座位を含有するように操作された齧歯類は、対象抗原を用いた免疫化に対し、強い抗体反応を生じさせることを示す。さらにかかる操作された齧歯類は、野生型対照と同等の総IgG値および抗原特異的IgG値を示した。このことから、これら操作された動物における安定した免疫反応能力が確認される。実際に、免疫時のhIgλ力価は、mIgλ力価よりも高かった(
図17Aおよび17B)。ゆえに本明細書に記載の操作された齧歯類は、ヒト抗体系治療剤、特にヒトIgλ軽鎖配列を利用するヒト抗体系治療剤の開発用の抗体作製に対し、改善されたインビボシステムを提供する。
均等
【0505】
当分野の当業者には、本開示の様々な変更、改変および改善が、当分野の当業者には容易に気が付くと認識されるはずである。そのような変更、改変および改善は、本開示の一部であることが意図され、そして本発明の主旨および範囲の内にあることが意図される。従って、前述の説明および図面は例示のみを目的としており、本開示に記載される任意の発明は、以下の請求項によりさらに詳細に記載される。
【0506】
請求項で請求項を変更するための「第一の」、「第二の」、「第三の」などの順序の用語の使用は、それ自体は一つの請求項要素の別の要素に対する優位性、先行、もしくは順序、または方法の行為が実施される時間的順序を暗示せず、特定の名称を持つ一つの請求項要素を(順序の用語の使用以外は)同じ名称を持つ別の要素から区別して請求項要素を区別するための標識としてのみ使用される。
【0507】
本明細書および本特許請求の範囲において、「a」および「an」という冠詞は、そうではないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の一つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記述は、そうではないことが示されるかまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、一つ、二つ以上、または群のすべての要素が、所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する場合に満足される。本発明は、群の正確に一つの要素が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、二つ以上、または群の要素全体が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態も含む。さらに、本発明は、別途指定されない限り、または矛盾または不一致が起こることが当業者には明らかでない限り、変形、組み合わせ、および記載された請求項の一つ以上からの一つ以上の限定、要素、句、記述用語などが、同じ基礎請求項に依存する別の請求項(または関連する任意のその他の請求項)に導入される並べ替えすべてを網羅することを理解すべきである。記載されたような要素が存在する場合(例えば、マーカッシュ群または類似の形式で)、要素の各サブグループも開示され、任意の要素を群から除去することができる。当然のことながら、一般的に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明のある実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などから成る、または実質的にそれらから成る。簡潔にするために、これらの実施形態はすべての場合において、多くの言葉では本明細書に特に記述されていない。これも当然のことながら、本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、請求項から明示的に除外される可能性がある。
【0508】
当業者であれば、本明細書に記載されるアッセイまたは他のプロセスで得られた値に起因する一般的な標準偏差または誤差を理解するであろう。本発明の背景を説明し、その実践に関して追加的詳細を提供するために本明細書において言及される出版物、ウェブサイトおよびその他の参考資料は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。