特許第6884861号(P6884861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884861
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】付加製造システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/10 20170101AFI20210531BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20210531BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20210531BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20210531BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20210531BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20210531BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20210531BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20210531BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210531BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210531BHJP
【FI】
   B29C64/10
   B29C64/255
   B29C64/245
   B29C64/209
   B29C64/277
   B29C64/371
   B29C70/16
   B33Y40/10
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】37
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-525972(P2019-525972)
(86)(22)【出願日】2018年1月19日
(65)【公表番号】特表2020-505249(P2020-505249A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】US2018014483
(87)【国際公開番号】WO2018140320
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2020年11月30日
(31)【優先権主張番号】62/449,899
(32)【優先日】2017年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/874,036
(32)【優先日】2018年1月18日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519444409
【氏名又は名称】コンティニュアス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ケネス ライル
(72)【発明者】
【氏名】ストッケット,ライアン シー.
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05529471(US,A)
【文献】 特許第6061261(JP,B2)
【文献】 特開2016−159629(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0094734(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0202080(US,A1)
【文献】 特表2015−512816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドからマトリックスコーテッド連続補強材を構築面に吐出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に浸漬させることと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材の表面の樹脂を硬化エネルギーに露出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に浸漬させる前に、前記マトリックスコーテッド連続補強材中のマトリックスを硬化エネルギーに露出して、前記マトリックスを少なくとも部分的に硬化させることと
を含む、複合構造物を付加製造する方法。
【請求項2】
前記マトリックスコーテッド連続補強材を前記樹脂の中に徐々に下げることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記マトリックスコーテッド連続補強材を徐々に下げる間、樹脂が前記構築面を通過することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記構築面を収容するバット内の樹脂の液位を徐々に上げることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記バットの内側で前記プリントヘッドを動かすことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記マトリックスコーテッド連続補強材の硬化層を前記樹脂の硬化層と交互に配置することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
プリントヘッドからマトリックスコーテッド連続補強材を構築面に吐出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に浸漬させることと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材の表面の樹脂を硬化エネルギーに露出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材の前記表面上のいずれかの樹脂の硬化前、前記マトリックスコーテッド連続補強材の全てを少なくとも部分的に硬化させることと
を含む、複合構造物を付加製造する方法。
【請求項8】
前記マトリックスコーテッド連続補強材の前記表面の樹脂を前記硬化エネルギーに露出することが、前記構築面を介して前記硬化エネルギーを向けることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂の表面に酸素防止バリアを形成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
マトリックスコーテッド連続補強材を構築面に吐出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に少なくとも部分的に浸漬させることと、
前記樹脂を硬化させることと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に少なくとも部分的に浸漬させる前に、前記マトリックスコーテッド連続補強材中のマトリックスを硬化エネルギーに露出して、前記マトリックスを少なくとも部分的に硬化させることと
を含む、複合構造物を付加製造する方法。
【請求項11】
前記マトリックスを硬化エネルギーに露出することが、前記マトリックスの中に光を向けることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックスコーテッド連続補強材を前記樹脂の中に徐々に下げることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスコーテッド連続補強材を徐々に下げる間、樹脂が前記構築面を通過することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記構築面を収容するバット内の樹脂の液位を徐々に上げることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックスコーテッド連続補強材の硬化層を前記樹脂の硬化層と交互に配置することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
マトリックスコーテッド連続補強材を構築面に吐出することと、
前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に少なくとも部分的に浸漬させることと、
前記樹脂を硬化させることと、
いずれかの樹脂の硬化前、前記マトリックスコーテッド連続補強材の全てを少なくとも部分的に硬化させることと
を含む、複合構造物を付加製造する方法。
【請求項17】
前記樹脂を硬化させることが、前記構築面を介して前記硬化エネルギーを向けることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化エネルギーが、UV光である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂の表面に酸素防止バリアを形成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
樹脂供給分を保持するように構成されたバットと、
前記バットの内側に配置された構築面と、
プリントヘッドと、
エネルギー源と、
硬化促進装置と、
前記プリントヘッド、前記エネルギー源、及び前記硬化促進装置と通信するプロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記プリントヘッドを作動させてマトリックスコーテッド連続補強材を前記バットの内側の前記構築面に吐出し、
前記硬化促進装置を作動させて、前記マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に浸漬させる前に、前記マトリックスコーテッド連続補強材中のマトリックスを前記硬化促進装置からの硬化エネルギーに露出し、
前記吐出されたマトリックスコーテッド連続補強材を前記樹脂に浸漬させ、
前記エネルギー源を作動させて前記マトリックスコーテッド連続補強材の表面上の前記樹脂を硬化エネルギーに露出するように構成される、付加製造システム。
【請求項21】
前記構築面に接続された昇降機をさらに含み、前記プロセッサが、前記昇降機を作動させて前記マトリックスコーテッド連続補強材を前記樹脂供給分の中に徐々に下げるようにさらに構成される、請求項20に記載の付加製造システム。
【請求項22】
前記マトリックスコーテッド連続補強材を徐々に下げる間、前記構築面より下の前記バットの部分から前記構築面より上の前記バットの部分へ樹脂を通過させるために前記構築面が穿孔される、請求項21に記載の付加製造システム。
【請求項23】
前記マトリックスコーテッド連続補強材の吐出後、前記バットの内側の前記樹脂供給分の液位を徐々に上げるために移動可能である弁をさらに含み、前記プロセッサが、前記弁と通信し、かつ、前記弁を作動させて前記吐出されたマトリックスコーテッド連続補強材を前記樹脂に浸漬させるように構成される、請求項20に記載の付加製造システム。
【請求項24】
前記バットの内側で前記プリントヘッドを動かすように構成された支持体をさらに含み、前記プロセッサが、前記支持体と通信し、かつ、前記支持体を作動させて、前記マトリックスコーテッド連続補強材の前記構築面への吐出中に前記プリントヘッドを移動させるように構成される、請求項20に記載の付加製造システム。
【請求項25】
前記プロセッサが、前記マトリックスコーテッド連続補強材の硬化層が前記樹脂の硬化層と交互に配置されることを引き起こすようにさらに構成される、請求項24に記載の付加製造システム。
【請求項26】
前記プロセッサが、前記マトリックスコーテッド連続補強材の前記表面上の前記樹脂の硬化前に、前記マトリックスコーテッド連続補強材の全ての層が硬化されることを引き起こすようにさらに構成される、請求項24に記載の付加製造システム。
【請求項27】
前記エネルギー源が、オーバーヘッドUVプロジェクタ、レーザ、及び電子ビーム発生器の少なくとも1つである、請求項20に記載の付加製造システム。
【請求項28】
前記構築面が少なくとも部分的に透明であり、
前記付加製造システムが、前記マトリックスコーテッド連続補強材の表面上の樹脂を前記構築面を介して硬化エネルギーに露出するように構成された第2のエネルギー源をさらに含む、
請求項27に記載の付加製造システム。
【請求項29】
前記バットの内側の前記樹脂の表面に酸素防止バリアを形成するように構成されたガス供給部をさらに含む、請求項20に記載の付加製造システム。
【請求項30】
樹脂を保持するように構成された構築容積と、
プリントヘッドと、
支持体と、
少なくとも1つのエネルギー源と、
前記プリントヘッド及び前記少なくとも1つのエネルギー源と通信するプロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記プリントヘッドを作動させて、マトリックスで少なくとも部分的にコーティングされた連続補強材を前記構築容積の中に吐出し、
前記少なくとも1つのエネルギー源を作動させて前記マトリックスを少なくとも部分的に硬化させ、
前記連続補強材及び前記少なくとも部分的に硬化したマトリックスを前記樹脂に少なくとも部分的に浸漬させるように構成される、付加製造システム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのエネルギー源が、
前記マトリックスを第1の硬化エネルギーに露出するように構成された第1のエネルギー源と、
第2のエネルギー源であって、前記プロセッサが、第2のエネルギー源とさらに通信し、かつ、前記第1のエネルギー源の作動後に前記第2のエネルギー源を作動させて、前記マトリックスが少なくとも部分的に硬化した後に前記構築容積内の前記樹脂を第2の硬化エネルギーに露出するように構成される、第2のエネルギー源と
を含む、請求項30に記載の付加製造システム。
【請求項32】
樹脂供給分を保持するように構成されたバットと、
プリントヘッドと、
少なくとも1つのエネルギー源と、
前記プリントヘッド及び前記少なくとも1つのエネルギー源と通信するプロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記プリントヘッドを作動させて構造骨格を前記バットの中に吐出し、
前記少なくとも1つのエネルギー源を作動させて、前記バット内の前記構造骨格の形状を保持するのに十分な前記構造骨格内のマトリックスを硬化させ、
その後、前記樹脂供給分を作動させて前記構造骨格を樹脂に少なくとも部分的に浸漬させ、
前記少なくとも1つのエネルギー源を作動させて前記構造骨格上の前記樹脂のコーティングを硬化させるように構成される、付加製造システム。
【請求項33】
前記構造骨格が、マトリックスでコーティングされた連続補強材から形成される、請求項32に記載の付加製造システム。
【請求項34】
前記少なくとも1つのエネルギー源が、少なくとも、前記マトリックスを硬化させるように構成された硬化促進装置を含む、請求項33に記載の付加製造システム。
【請求項35】
前記少なくとも1つのエネルギー源が、前記樹脂を硬化させるように構成された第2のエネルギー源をさらに含む、請求項33に記載の付加製造システム。
【請求項36】
前記樹脂が、フォトポリマーである、請求項33に記載の付加製造システム。
【請求項37】
前記マトリックスが、フォトポリマーである、請求項36に記載の付加製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2017年1月24日に出願された米国仮特許出願第62/449,899号を基礎とし、それに基づく優先権の利益を主張する。この仮特許出願の内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は概して製造システムに関し、詳細には複合構造物を付加製造するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 付加製造の多くの異なるプロセスが、機械構成要素を製造するために共通に使用されている。これらのプロセスは、とりわけ、連続繊維3D印刷(CF3D(商標))及び光造形(SLA)を含み得る。
【0004】
[0004] CF3D(商標)は、可動プリントヘッドから吐出される材料内に埋め込まれた連続繊維の使用を伴う。マトリックスがプリントヘッドに供給され、同時に同じヘッドを同じく通過する1つ又は複数の連続繊維と共に吐出される(例えば、押し出される及び/又は引き抜かれる)。マトリックスは、伝統的な熱可塑性樹脂、粉末金属、液体樹脂(例えば、UV硬化型及び/又は二液型樹脂)、或いはこれら及び他の公知のマトリックスのいずれかの組み合わせであり得る。プリントヘッドを出ると、硬化促進装置(例えば、UV照明、超音波エミッタ、熱源、触媒供給部等)が作動されて、マトリックスの硬化を開始及び/又は完了させる。この硬化はほとんど即時に起こり、支持されていない構造物を自由空間で製造することを可能にする。そして、繊維、特に連続繊維が構造物内に埋め込まれている場合、構造物の強度はマトリックスに依存する強度を超えて増大する可能性がある。この技術の一例は、2016年12月6日にTylerに発行された米国特許第9,511,543号(「’543号特許」)に開示されている。
【0005】
[0005] SLAはまた、発光装置(例えばUV光プロジェクタ、電子ビームエミッタ又はレーザ)の使用を伴う。発光装置はコンピュータ制御され、部品の輪郭に対応する特定のパターン内でバット内の樹脂の層を選択的に活性化する。樹脂(例えば液体光重合樹脂)は活性化されると固化し、タンク内の後続の樹脂層が新たなパターン内でそれらを活性化される。これは、部品がバットから徐々に上昇されるか、又はバット内にさらに下降されながら、全ての構成要素の層が作製されるまで連続し得る。SLAによって製造される部品は高解像度の表面仕上げを有し得る。
【0006】
[0006] CF3D(商標)及びSLAによって作製された部品はいくつかの望ましい特徴(例えばそれぞれ高強度及び高解像度)を有し得るが、どちらのプロセスも単独では両方のプロセスの全ての望ましい特徴を提供することができない可能性がある。開示されたシステムは、上記の問題及び/又は従来技術の他の問題の1つ又は複数に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
[0007] 一態様において、本開示は、付加製造システムに向けられる。付加製造システムは、樹脂供給分(a supply of resin)を保持するように構成されたバットと、バットの内側に配置された構築面とを含み得る。システムはまた、マトリックスコーテッド連続補強材を構築面に吐出するように構成されたプリントヘッドと、マトリックスコーテッド連続補強材の表面上の樹脂を硬化エネルギーに露出するように構成されたエネルギー源とを含み得る。
【0008】
[0008] 別の態様において、本開示は、複合構造物を付加製造する方法に向けられる。方法は、プリントヘッドからマトリックスコーテッド連続補強材を構築面上に吐出することと、マトリックスコーテッド連続補強材を樹脂に浸漬させることとを含み得る。方法はまた、マトリックスコーテッド連続補強材の表面の樹脂を硬化エネルギーに露出することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
図1】[0009]例示的な開示された付加製造システムを説明する図である。
図2】[0010]別の例示的な開示された付加製造システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な記載
[0011] 図1は、任意の所望の断面形状(例えば、円形、多角形等)を有する複合構造物12を連続的に製造するために使用することができる例示的なシステム10を示している。システム10は、少なくともバット14、支持体16、ヘッド18、及びエネルギー源20を含み得る。バット14は、樹脂(例えば、フォトポリマー樹脂)の供給分を保持するように構成された容器であり得、その樹脂から構造物12の少なくとも一部(例えば表面コーティング)が製造される。ヘッド18は、バット14内に構造物12の少なくとも一部(例えば内部骨格)を作製するために、支持体16に結合されて支持体16によって移動されてもよい。図1の開示される実施形態では、支持体16は、構造物12を作製する間、ヘッド18を複数の方向に移動することができるロボットアームである。エネルギー源20は、ヘッド18によって作製された構造骨格をコーティングするバット14内の樹脂を選択的に露出し、それによって樹脂を硬化させて骨格上に硬化コーティングを形成させるように構成することができる。
【0011】
[0012] ヘッド18自体は、マトリックスを受け取るか、又は別の方法で含有するように構成することができる。マトリックスは、硬化性である任意の種類の材料(例えば、ゼロ揮発性有機化合物樹脂などの液体樹脂;粉末金属;その他)を含み得る。例示的なマトリックスとしては、熱硬化性樹脂、一液型又は多液型エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、カチオン性エポキシ、アクリル化エポキシ、ウレタン、エステル、熱可塑性樹脂、フォトポリマー、ポリエポキシド、チオール、アルケン、チオール−エンなどが挙げられる。一実施形態では、ヘッド18内のマトリックスは、例えば対応する導管(図示せず)を介してヘッド18に流体接続されている外部装置(例えば押出機又は別の種類のポンプ、図示せず)によって加圧することができる。しかしながら、別の実施形態では、マトリックス圧力は、同様の種類の装置によってヘッド18の完全に内側で発生させることができる。さらに他の実施形態では、マトリックスは、ヘッド18を通して重力供給される、及び/又はヘッド18内で混合することができる。いくつかの例では、早期硬化を防ぐためにヘッド18内のマトリックスは低温及び/又は暗所に保つ必要があり得;他の例では、同じ理由からマトリックスは高温に保つ必要があり得る。いずれの状況においても、ヘッド18は、これらの要求を満たすために特別に構成されてもよい(例えば、断熱、冷却、及び/又は加温されてもよい)。
【0012】
[0013] マトリックスは、任意の数の連続補強材(例えば、別個の繊維、トウ、ロービング、リボン及び/又はシート状の材料)を被覆、封入、又は別の方法で少なくとも部分的に取り囲むために使用されてもよく、補強材と一緒に複合構造物12の少なくとも一部(例えば壁)を構成してもよい。補強材は、ヘッド18内に(例えば、別個の内部スプール(図示せず)上に)格納されてもよいし、別の方法でヘッド18に通されてもよい(例えば外部スプールから供給されてもよい)。複数の補強材が同時に使用される場合、補強材は同じ種類のもので同じ直径及び断面形状(例えば円形、正方形、平坦等)を有してもよく、又は異なる直径及び/又は断面形状を有する異なる種類のものであってもよい。補強材は、例えば、炭素繊維、植物繊維、木質繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、金属ワイヤ、光学チューブ等を含むことができる。「補強材」という用語は、ヘッド18から吐出されるマトリックス中に少なくとも部分的に封入されることができる連続材料の構造的及び非構造的タイプの両方を包含することを意味することに留意されたい。
【0013】
[0014] 補強材は、自由に、補強材がヘッド18の内側にある間、補強材がヘッド18に受け渡される間(例えばプリプレグ材料として)、及び/又は補強材がヘッド18から吐出される間、マトリックスに露出される(例えば、コーティングされる)ことができる。マトリックス、乾燥補強材、及び/又はマトリックスに予め露出されている補強材(例えば、湿潤補強材)は、当業者に明らかな任意の方法でヘッド18内に搬送されてもよい。
【0014】
[0015] マトリックス及び補強材は、少なくとも2つの異なる動作モードを介してヘッド18から吐出されてもよい。第1の動作モードでは、ヘッド18が構造物12の3次元形状を作り出すように支持体16によって動かされるときに、マトリックス及び補強材がヘッド18から押し出される(例えば、圧力及び/又は機械的な力の下で押される)。第2の動作モードでは、少なくとも補強材がヘッド18から引っ張られ、その結果、吐出中に補強材に引張応力が生じる。この動作モードでは、マトリックスは補強材に固着し、それによって補強材と共にヘッド18から引っ張られてもよく、及び/又はマトリックスは引っ張られる補強材と共に加圧下にヘッド18から吐出されてもよい。マトリックスがヘッド18から引っ張られている第2の動作モードでは、結果として生じる補強材の張力は、構造物12の強度を向上し得る一方、より長い長さの支持されていない材料がより真っ直ぐな軌道を有することも可能にする(すなわち、張力は構造物12に自立型の支持を提供するように重力に抗して作用し得る)。
【0015】
[0016] ヘッド18が構築面22から離れる方に移動する結果として、補強材はヘッド18から引っ張られ得る。特に、構造物形成の開始時に、ある長さのマトリックス含浸補強材がヘッド18から引っ張られ及び/又は押され、バット14内の構築面22に堆積され、そして硬化され、その結果、吐出された材料は構築面22に付着する。その後、ヘッド18は構築面22から離れる方に移動され得、相対移動により補強材がヘッド18から引っ張られ得る。必要に応じて、ヘッド18を通過する補強材の移動を(例えば、内部送り機構を介して)補助できることに留意されたい。しかしながら、ヘッド18からの補強材の吐出速度は、主にヘッド18と構築面22との間の相対運動の結果であり得、その結果、補強材内に張力が生じる。構築面22から離れる方にヘッド18を移動させる代わりに又はそれに加えて、構築面22をヘッド18から離れる方に移動させることができると考えられる。
【0016】
[0017] 1つ又は複数の硬化促進装置(例えば、1つ又は複数の光源、超音波エミッタ、レーザ、ヒータ、触媒ディスペンサ、マイクロ波発生器等)24をヘッド18に近接して(例えば、その上に、及び/又はそれに追従するように)取り付けることができ、マトリックスがヘッド18から吐出されるときにマトリックスの硬化速度及び/又は質を高めるように構成することができる。硬化促進装置24は、構造物12の形成中に、構造物12の内面及び/又は外面をエネルギー(例えば、光エネルギー、電磁放射、振動、熱、化学触媒又は硬化剤等)に選択的に露出させるように制御することができる。エネルギーは、マトリックスがヘッド18から吐出されるときにマトリックス内で起こる化学反応の速度を高め得る、材料を焼結させ得る、材料を固め得る、又は別の方法で材料を硬化させ得る。
【0017】
[0018] ヘッド18によって構造物12を作製する間、内部骨格はバット14の樹脂に少しずつ浸漬され得る。例えば、構造物12の各水平層の作製後、バット14内の樹脂の液位は、新しい層の高さだけ上昇され得る。バット14内の樹脂の液位は、追加の樹脂が供給源28からバット14に入ることを選択的に許容することによって(例えば、弁26を開閉することによって)調節され得る。
【0018】
[0019] バット14内の樹脂液位を上昇させた後、エネルギー源20を選択的に調節して、構造物12の新しい層をコーティングする樹脂を硬化させることができる。エネルギー源20は、例えばUV光プロジェクタ、レーザ、電子ビームエミッタ、及び/又はヘッド18によって作製されたばかりの構造物12の新しい層のみの選択表面を露光するように制御される別の光源であり得る。
【0019】
[0020] エネルギー源20及び硬化促進装置24は、必要に応じて、同じ種類及び大きさの硬化エネルギー、又は異なる種類及び大きさの硬化エネルギーを生成し得ることに留意されたい。例示的な一実施形態では、エネルギー源20は、約430〜470nmの波長を有する光エネルギーをバット14内の特定の点に集束させてバット14内の樹脂のほぼ瞬間的な凝固及び硬化を引き起こすレーザ(例えば少なくとも3つの異なる青色レーザ)のアレイである。この同じ実施形態において、1つ又は複数のUV照明が、約365〜405nmの波長を有する光にマトリックスを露光するために、硬化促進装置24として機能し得る。他の実施形態では、必要に応じて、音響エネルギー、熱、及び/又は光の組み合わせを一緒に使用することができる。
【0020】
[0021] いくつかの用途では、バット14からの硬化樹脂で新しい層をコーティングする前に、構造物12の複合材料の内側のマトリックスの酸素曝露を避けるように注意を払うべきである。これらの用途では、シールドガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素等などの不活性ガス)が、構造物12の上にバリア32を形成するのに十分な量で、ガス供給源30からバット14の中に向けられてもよい。
【0021】
[0022] 制御装置34を設け、支持体16、ヘッド18、エネルギー源20、硬化促進装置24、弁26、及び/又はガス供給源30と通信可能に結合することができる。制御装置34は、システム10の動作を制御するための手段を含む単一プロセッサ又は複数プロセッサを具現化し得る。制御装置34は、1つ又は複数の汎用又は専用プロセッサ又はマイクロプロセッサを含み得る。制御装置34は、例えば、設計限界、性能特性、動作命令、マトリックス特性、補強材特性、構造物12の特性、及びシステム10の各構成要素の対応するパラメータなどのデータを記憶するためのメモリをさらに含むか、又はそれに関連付けることができる。電源回路、信号調整回路、ソレノイド/モータドライバ回路、通信回路、及び他の適切な回路を含む他の様々な既知の回路を制御装置34に関連付けることができる。さらに、制御装置34は、有線及び/又は無線送信を介してシステム10の他の構成要素と通信することが可能であり得る。
【0022】
[0023] 1つ又は複数のマップを制御装置34のメモリに格納し、構造物12の作製中に使用することができる。これらのマップのそれぞれは、モデル、ルックアップテーブル、グラフ、及び/又は方程式の形態のデータの集合を含むことができる。開示された実施形態では、マップは、エネルギー源20、硬化促進装置24、関連するマトリックス及び樹脂、及び/又は関連する補強材の所望の特性を構造物12内の異なる位置で決定するために制御装置34によって使用される。特性は、とりわけ、構造物12内の特定の位置において吐出されるべき補強材、マトリックス、及び/又は樹脂の種類、量、及び/又は構成;所望の硬化の量、強度、形状、及び/又は位置;及び/又はエネルギー源20によって生成される任意の表面コーティングの位置及び厚さを含み得る。制御装置34は、次に、支持体16の動作(例えば、ヘッド18の位置及び/又は向き)、ヘッド18からの材料の吐出(材料の種類、材料の所望の性能、材料の架橋要件、吐出速度等)、エネルギー源20の動作、硬化促進装置24の動作、及び/又は弁26の動作を相関させることができ、その結果、構造物12が所望の方法で製造される。
【0023】
[0024] システム10の別の実施形態が図2に開示されている。図1の実施形態と同様に、図2のシステム10もまたバット14、支持体16、ヘッド18、及びエネルギー源20を含み得る。しかしながら、図1とは対照的に、図2のシステム10は、構築面22を移動するために接続されている追加の支持体36を含み得る。この実施形態では、バット14内の樹脂の液位は実質的に一定のままであり得、支持体36は、ヘッド18による構造物12の新しい各層の作製後に構築面22及び構造物12を徐々に樹脂の中に下げるために制御装置34によって選択的に起動され得る。支持体36は当技術分野で知られている任意の形態をとり得、例えば主ねじ40の端部に接続された外部モータ38と、主ねじ40の回転を構築面22の下降に変換する1つ又は複数のブラケット42とを有する昇降機の形態をとり得る。
【0024】
[0025] 一例では、構築面22は少なくとも部分的に透明及び/又は穿孔されていてもよい。部分的に透明な表面は、第2のエネルギー源20(例えば、構築面22の下に位置する供給源)からの硬化エネルギーが構築面22を通過して構造物12の下端部を露光することを可能にし得る。構築面22の穿孔特性は、構築面22を下降させる間に、樹脂がバット14のより下の部分からより上の部分へ、構築面22を介して流れることを可能にし得る。
【0025】
[0026] 同じく図1の実施形態とは対照的に、支持体16は異なる形態をとってもよい。例えば、支持体16は、バット14の上端に位置するガントリーを具現化することができる。この実施形態では、支持体16は、ヘッド18を専ら横方向(例えば、X方向及びY方向)に動かすように機能し得る。しかしながら、必要に応じて、支持体16は別の構成(例えば、ハイブリッドガントリー/アーム構成)を有することができると考えられる。
【0026】
産業上の利用可能性
[0027] 開示されたシステムは、任意の所望の断面サイズ、形状、長さ、密度、強度及び/又は表面質感を有する複合構造物を連続的に製造するために使用されてもよい。複合構造物は、それぞれが共通のマトリックス及び/又は樹脂でコーティングされている、同じ又は異なる種類、直径、形状、構造及び構成の任意の数の異なる補強材を含み得る。次にシステム10の動作を詳細に記載する。
【0027】
[0028] 製造イベントの開始時に、所望の構造物12に関する情報をシステム10に(例えば、システム10の動作を調整することを担当する制御装置34に)ローディングすることができる。この情報は、とりわけ、サイズ(例えば、直径、壁厚、長さ等)、外形(例えば、軌跡)、表面特徴(例えば、隆起部のサイズ、位置、厚さ、長さ;フランジのサイズ、位置、厚さ、長さ;その他)及び仕上げ、接続形状(例:カップリング、T継手、スプライス等の位置及びサイズ)、位置固有のマトリックス条件、位置固有の補強材条件等を含み得る。この情報は、代替的に又は追加的に、必要に応じて、製造イベント中の異なる時間に及び/又は連続的に、システム10にローディングできることに留意されたい。構成要素情報に基づいて、1つ又は複数の異なる補強材及び/又はマトリックスをヘッド18に選択的に導入及び/又は連続的に供給することができ、バット14を特定の量及び/又は種類の樹脂で満たすことができる。
【0028】
[0029] 補強材の導入は、補強材をプリントヘッド18に下向きに通すことによって行うことができる。マトリックスの導入は、ヘッド18にマトリックスを充填すること、及び/又は押出機(図示せず)をヘッド18に結合することを含み得る。次いで、制御装置34の調整により支持体16によってヘッド18を移動させて、マトリックスコーテッド補強材を対応する構築面22に対して又はその上に配置させてもよい。次いでヘッド18内の硬化促進装置24を選択的に起動して、補強材を取り囲むマトリックスを硬化させ、それによって補強材を構築面22に接合することができる。
【0029】
[0030] 次に、構成要素情報を使用してシステム10の動作を制御することができる。例えば、マトリックスコーテッド補強材を硬化エネルギーに露出する間に支持体16がヘッド18を所望の方法で選択的に移動する間、補強材を(マトリックスと共に)ヘッド18から引く及び/又は押すことができ、それにより、結果として得られる構造物12の軸は所望の軌道をたどる。
【0030】
[0031] いくつかの状況では、構造物12上の外側コーティングが有益であり得る。外側コーティングは、例えば、ヘッド18のみからのマトリックスコーテッド補強材の吐出によっては作り出すことができない所望の表面の質感(例えば、滑らかさ)、所望の特性(例えば、硬さ、導電性等)、又は所望の外観(例えば、光沢)を提供し得る。
【0031】
[0032] マトリックスコーテッド補強材の各層がヘッド18によって堆積され硬化されるにつれ、制御装置34は、(例えば、樹脂液位を上げることによって、又は構築面22を徐々に下げることによって)バット14からの樹脂で層が選択的にコーティングされることを引き起こし得る。その後、構造物12のちょうど浸漬された層の上に(例えば、構造物12の上、下、及び/又は側面から)パターン閃光を放つようにエネルギー源20の1つ又は複数を配置し、それにより浸漬された層の表面でバット14内の樹脂を凝固させることができる。
【0032】
[0033] ヘッド18が構造物12を形成する際に、上述の外側コーティングを層ごとに適用するのではなく、構造物12の全てを形成した後に外側コーティングを適用できると考えられる。例えば、完成した構造物12をバット14の中に(例えば一度に全部又は一度に1レベルずつ)下ろし、所望のパターン閃光を構造物12の完成した外面上で放ち、コーティングを形成することができる。パターン閃光は、必要に応じて、構造物12の完成した表面上に層ごとに放つか、又は一度に全て放つことができる。また、図1及び2のコーティングプロセスは、構造物12をコーティングすることを超えて使用されてもよいことに留意されたい。すなわち、これらのプロセスは、繊維補強なしの構造であるにもかかわらず、全く新しい特徴が構造物12から延びる及び/又は構造物12の上に構築されることを可能にし得る。さらに、所望であれば、マトリックスコーテッド補強材の層を、硬化樹脂のみの任意の数の隣接層と交互に配置することも可能であり得る。構造物12が所望の長さまで成長すると、構造物12を任意の所望の方法でヘッド18から切り離す(例えば切断する)ことができる。
【0033】
[0034] 当業者には明らかなように、開示された付加製造システムに様々な修正及び変更を加えることができる。本明細書の考察並びに開示された付加製造システムの実施から、他の実施形態が当業者には明らかであろう。明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、真の範囲は以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示される。
図1
図2