(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相補的な前記合わせ面の前記オフセットは、互いに重なり、両者間に間隙を規定し、該間隙は、前記分割モールドインサートが前記クリーニング構成であるかまたは成形構成であるかに関係無く実質的に一定であり、前記間隙は、ガスの内部通過を許容する一方で、溶融物の内部通過は防止する通気孔を規定する、請求項1〜7のいずれか1項の分割モールドインサート。
前記雄突出部の前記遮断面は環状であると共に丸い周縁部を有し、前記雄突出部はフレア状ベースを有し、前記オフセットは、前記遮断面の前記丸い周縁部と前記雄突出部の前記フレア状ベースとの間の前記雄突出部の外面において終端する、請求項1〜10のいずれか1項の分割モールドインサート。
前記隣接するモールドスタックコンポーネントはキャビティインサート(106)であり、前記雌レセプタクルは、前記キャビティインサートと関連付けられたキャビティフランジ(109)内に規定される、請求項13のモールドスタック。
各分割モールドインサート部分の前記合わせ面の前記内面領域および前記外面領域は、互いに異なる平面(P1、P2)を占有する、請求項13〜14のいずれか1項のモールドスタック。
各合わせ面の前記オフセットは、前記合わせ面の前記内面領域および前記外面領域によって占有される前記平面それぞれに対して直交している、請求項15のモールドスタック。
各相補的な前記合わせ面の前記オフセットは、互いに重なり、両者間に間隙を規定し、該間隙は、前記分割モールドインサートが前記クリーニング構成であるかまたは成形構成であるかに関係なく実質的に一定であり、前記間隙は、ガスの内部通過を許容する一方で、溶融物の内部通過は防止する通気孔を規定する、請求項13〜20のいずれか1項のモールドスタック。
前記分割モールドインサートの前記雄突出部の前記遮断面は、環状であると共に丸い周縁部を有し、前記雄突出部はフレア状ベースを有し、前記オフセットは、前記遮断面の前記丸い周縁部と、前記雄突出部の前記フレア状ベースとの間の前記雄突出部の外面において終端する、請求項13〜22のいずれか1項のモールドスタック。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の記載において、「上側」、「下側」、「上部」、「垂直」、「下方に」および「上方に」などの用語が図中のシステムコンポーネントについて用いられる場合、使用時におけるコンポーネントの特定の方向を必ず含むものとして理解されるべきではない。
【0025】
図1を参照して、単一のモールドスタック103の長手方向の断面図が図示される。例示的なモールドスタック103により、成形品が生成される。この成形品は、本例において
図2に示すプリフォーム101である。モールドスタック103は、モールド100内の多数の類似のモールドスタック(図示せず)のうちの1つであり得ることが理解される。モールド100は、単一の射出成形サイクル時において多数のプリフォームを単一のバッチとして集合的に成形し得る。モールド100は他のコンポーネントも含み得るが、
図1では簡潔さのために図示を省略している。
【0026】
図1のモールドスタック103は、生産または成形用の構成にある、すなわち、溶融物を成形用キャビティ105中に受容する、および
図2に示すプリフォーム101を形成するために適した構成にある。モールドスタック103は、以下に述べるような通気孔クリーニング構成(「残留物クリーニング構成」または単に「クリーニング構成」とも呼ばれる)を含む他の構成も有することが理解されるべきである。
【0027】
モールドスタック103は、キャビティインサート106(1つの形態のキャビティピース)と、ゲートインサート107と、キャビティフランジ109とを含む。キャビティフランジ109は、キャビティインサート106と関連付けられたものとしてみなされ、キャビティインサート106およびゲートインサート107をキャビティプレート中のボア(図示せず)中に保持するように機能する。代替的な実施形態では、キャビティインサート106およびキャビティフランジ109は、単一のコンポーネントであり得る。キャビティインサート106は、成形すべきプリフォーム101の本体113(
図2)の外部形状を規定する。プリフォーム101は、この場合、実質的に円筒状である。ゲートインサート107は、この場合実質的に円錐状である、成形すべきプリフォーム101の閉鎖端115(
図2)の外部形状を規定する。ゲートインサート107は、溶融した成形用材料を成形用キャビティ105中へ射出する際に通るゲート(開口)も規定する。
【0028】
明確さのために、コンポーネント106および107を「インサート」と呼ぶ理由としては、モールド製造およびサービス作業の促進のためにキャビティプレート中のボア(図示せず)へ挿入されるモジュール型コンポーネントとして設計されるからである。代替的な実施形態において、キャビティピース106およびゲートインサート107を例えばキャビティプレートと一体化してもよい。
【0029】
モールドスタック103は、成形すべきプリフォーム101の内面を規定するコアインサート110(1つの形態のコアピース)と、プリフォーム101の上部封止表面121(
図2)の一部を規定するように構成されたコアリング111と、ロックリング112とをさらに含む。コアリング111およびロックリング112は、コアインサート110をコアプレート(図示せず)と共に保持するように構成される。
【0030】
モールドスタック103は、プリフォーム101(
図2)のネック仕上げ119を規定するための分割モールドインサート114をさらに含む。本実施形態の分割モールドインサート114は、一対の相補的な分割モールドインサート半部分116および118を含む。一対の相補的な分割モールドインサート半部分116および118は、例えばプリフォーム排出のために横方向(
図1における垂直方向)に分離可能である。
【0031】
モールドスタック103は、動作軸A(
図1)を有する。動作軸Aは、射出成形サイクルを通じたモールドの動作時においてモールド100の主要コンポーネントが沿って移動する軸としてみなされ得る。詳細には、コアインサート110、コアリング111、ロックリング112および分割モールドインサート114は、例えば、プリフォーム101の排出のためにモールドを開放する際または後続の射出成形サイクルのためにモールドを準備状態に閉鎖する際に、キャビティインサート106、ゲートインサート107およびキャビティフランジ109から離間するように動作軸Aに沿ってユニットとして移動することができ得る。さらに、分割モールドインサート114は、成形されたばかりのプリフォーム101のネック仕上げ119を支持しつつコア110に対して動作軸Aに沿って移動可能とすることによって、通常の成形動作におけるコアインサート110からのプリフォーム101の剥離を促進することができる。
【0032】
図1に示すモールドスタック103は、コアロック型のモールドスタックと呼ばれ得る。「コアロック」という用語は、クランプ圧力がモールドスタック103へ軸方向に印加されたときに、分割モールドインサート半部分116および118が、隣接するモールドスタックコンポーネント、この場合キャビティフランジ109およびロックリング112上に規定される雌レセプタクル内に密接に配置されることにより、横方向に(
図1中の垂直方向に)共に「ロックされる」設計を反映している。この関係を、
図3において、より詳細に示す。
【0033】
図3を参照して、モールドスタック103の一部の拡大断面立面図が示される。
図3は、例示的なコアロック型モールドスタック103が成形構成にあるときのコアリング111、分割モールドインサート114、キャビティフランジ109およびキャビティインサート106の間の相互作用を示す。明確さのために、
図3においてはコアインサート110を省略しているため、分割モールドインサート半部分116および118間の分割ライン143を視認することができる。
【0034】
図示のように、キャビティフランジ109により、概して円錐台状形状を有するテーパー状雌レセプタクル130が規定される。隣接する分割モールドインサート114は、相補的な形状(すなわち、概して円錐台状)のテーパー状の雄突出部132を有するため、分割モールドインサート114およびキャビティインサート106が
図3の合わされた成形構成にあるときに、テーパー状の雄突出部132をテーパー状雌レセプタクル130内に密接に受容することができる。
【0035】
雄突出部132は、遮断面142を有する。遮断面142は、本実施形態においては環状である。本実施形態において分割モールドインサート114に隣接するキャビティインサート106も、相補的な遮断面133を有する。説明されるように、モールドスタック103がクリーニング構成になると、これらの遮断面は、成形表面になる。
【0036】
図4および
図5を参照して、分割モールドインサート114が他のモールドスタックコンポーネントから分離されている様子の斜視図および平面図がそれぞれ図示されている。
図4および
図5それぞれにおいて、分割モールドインサート114が、その半部分116および118が合わされている成形構成にある状態で図示されている。
【0037】
図5に最も良く示されるように、分割モールドインサート114を2つの半部分116および118に分割する分割ライン143は、中央モールドキャビティ105に対して、近位部141、オフセット部145および遠位部147を有する。本実施形態において、分割ライン143の近位部141および遠位部147はそれぞれ、2つの半部分116および118の横方向分離の軸Lに対して直交している一方で、オフセット部145は軸Lに平行である。オフセット部145は、雄突出部132のテーパー状外面139において終端する(
図4を参照)。より詳細には、オフセット部145は、雄突出部132の円錐台状面139において終端する。オフセット部145は、以下に述べるように、分割モールドインサート半部分116および118がクリーニング構成において若干分離されたときに、それらの間においてフラッシングを制御できない事態を回避するために用いられる機構の1つである。
【0038】
分割モールドインサート114は、雄突出部132から反対側において、ロックリング112内に規定された相補的な雌シート(
図4、そして
図3も参照)と合わせられるテーパー状雄部164も有する。モールドキャビティ105を規定する、例えば、含まれる雄部132および164間に延びる分割モールドインサート114の中央部分は、分割モールドインサート114の本体としてみなされ得る。
【0039】
図6は、分割モールドインサート114の斜視図であり、各合わせ面190および192を視認できるように分割モールドインサート半部分116および118が方位付けられている。
図6は例示目的だけのためのものであり、分割モールドインサート半部分116および118は、この方位においては実際には用いられないことが理解される。
【0040】
相補的な合わせ面190および192はそれぞれ、オフセット202および222によって分離された内面領域200および220ならびに外面領域204および224を有する。本実施形態において、内面領域200および220は、第1の面P1を占有し、外面領域204および224は、異なる平面P2を占有する(
図5を参照)。オフセット202および222により、ステップまたはジョグが合わせ面内に規定される。このため、図示の合わせ面190および192は、オフセット合わせ面としてみなされ得る。
【0041】
より詳細には、第1の分割モールドインサート半部分116の合わせ面190により、(モールドキャビティ105の各側において)内面領域200、オフセット202および外面領域204(
図6を参照)が規定される。内面領域200は、モールドキャビティ105に隣接し、遮断面142において部分的に終端し、雄突出部132の外面139において部分的に終端する。外面領域204は、内面領域200からオフセット202の反対側にある。分割モールドインサート半部分116の外面領域204は内面領域200に対して突出しているため、
図6の分割モールドインサート半部分116は、突出する外面領域204によって横方向に境界付けられるスロットまたは凹部としてみなされ得る。
【0042】
図示の実施形態において、オフセット202はJ字型形状を有しており、第1の実質的に直線状の部分206および第2の曲線状の部分208によって特徴付けられる。本実施形態において、第1の部分206は細長く、モールドスタック103の動作軸Aに実質的に平行であり、第2の曲線状の部分208は、動作軸Aから離間するように逸れる。オフセット202の第2の部分208は、雄突出部132の外面139において終端する。詳細には、オフセット202は、雄突出部132の円錐台状外面139において、(雄突出部132の上部における)環状遮断面142の円形の周縁部と、(雄突出部132が分割モールドインサート114の残り部分と接続される)雄突出部132の底部におけるフレア状ベースとの間において終端する。
【0043】
第2の分割モールドインサート半部分118の相補的な合わせ面192により、(モールドキャビティ105の各側において)、モールドキャビティ105に隣接する内面領域220と、オフセット222と、内面領域220からオフセット222の反対側にある外面領域224とが同様に規定される。内面領域220は、遮断面142において部分的に終端し、雄突出部132の外面139において部分的に終端する。内面領域220は、外面領域224に対して突出する。よって、分割モールドインサート半部分118は、キー(2つの突出する内面領域220を集合的に示したもの)を規定するものとしてみなされ得、このキーは、他方の分割モールドインサート半部分116の外面領域204間に規定されたスロットに嵌合する。
【0044】
合わせ面192内のオフセット222は、分割モールドインサート半部分116のオフセット202のJ字型に対して相補的なJ字型を有する。そのため、オフセット222は、第1の実質的に直線状の部分226および第2の曲線状の部分228によって特徴付けられる。第1の部分226は細長く、モールドスタック103の動作軸Aに平行である。第2の曲線状の部分228は、軸Aから離間するように逸れ、雄突出部132の外面139において終端する。
【0045】
再び
図6を参照して、分割モールドインサート半部分118の内面領域220は、プリフォーム101のネック仕上げ119(レリーフ部)を規定するモールドキャビティ105の部分の近傍に通気孔230を含むことが分かる。通気孔230は、溶融物射出時に空気を通気することが意図されており、モールドキャビティ105のレリーフ領域中に空気が閉じ込められる可能性を低減させることを目的とする。空気閉じ込めがあると、プリフォーム101のネック仕上げ119中に欠陥が発生する原因となり得るため、概して望ましくいない。
【0046】
本実施形態において、例示的な通気孔230は蛇行形状を有しており、ネック仕上げ119の成形のための成形表面の外形に追随する。蛇行形状の平坦面は、若干凹状であるかまたは内面領域220の残り部分に対して窪んでいる。窪みの程度については、成形構成において内面領域220を他方の分割モールドインサート半部分116の平坦な相補的内面領域200(例えば、
図4および
図5に示される)と合わせるときに、空気の通過は許容するが溶融物の通過は(いかなる実質的な量においても)許容しない間隙が通気孔230によって規定されるように、意図的に選択される。溶融物を遮断しつつ空気を通過させる通気孔230に適した間隙の幅は、モールドスタック103中において用いられる溶融物の特性に依存することが理解される。例えば、用いられる成形材料がPETである場合、間隙は、30〜40ミクロンの範囲内であり得る。
【0047】
空気収集溝232は、通気孔230に隣接して配置される(
図6)。空気収集溝232は、モールドキャビティから通気孔230を介して通気された空気を収集する。本実施形態の空気収集溝232は、通気孔230よりもさらに高い範囲まで、内面領域220の残り部分に対して凹状であるかまたは窪んでいる。このような窪みにより、成形用キャビティ105から通気孔230を介した空気の退出が促進される。空気収集溝232は、相補的な合わせ面190の外面領域204中の別の溝234と共に整列され、大気へ通気するための出口へ空気を導く。
【0048】
ここまでの記載から明らかになるように、分割モールドインサート114のテーパー状雄部132の合わされた半部分が(例えば、
図3に示すような)テーパー状雌レセプタクル130内に完全に配置され、軸方向のクランプ力がモールドスタック103へ印加されると、成形用キャビティ105のネック仕上げ領域内において加圧溶融物による対向する外方の力が付加されるにも関わらず、分割モールドインサート半部分116および118が成形構成内において共に保持される。キャビティインサート106および分割モールドインサート114が
図3の成形構成にあるとき、そのそれぞれの遮断面133および142により、キャビティインサート106と分割モールドインサート114との間にパーティングラインが規定される。本明細書中に用いられる「パーティングライン」という用語は、2つのモールドスタックコンポーネント間の接合部を指し、溶融物の通過を防止するものであり、通気孔と対照的に、ガスの通過を意図しておらずまたガスの通過によらない。
【0049】
モールド100を複数の成形サイクルにわたって動作させた場合、分割モールドインサート半部分116および118間に規定された通気孔230内に残留物が蓄積し得る。この残留物は、例えば成形材料ダスト、汚染物質または他のパーティクルによって構成され得る。伝統的な成形システムの場合、通気孔残留物の除去は、成形システムの作動を停止させること、モールドスタックを開放させること、および影響を受ける通気孔表面を手動で掻きだす、かつ/またはクリーニングすることにより、行われ得る。このようなアプローチの有り得る不都合点としては、生産能力が相応に失われること、手作業が必要になること、およびモールド損傷の有意な危険性が挙げられる。
【0050】
このような伝統的なクリーニングの必要性を回避するために、上記した標準的な成形構成と、通気孔クリーニング(すなわち、単に「クリーニング」)構成との間において例示的なモールドスタック103を構成することができる。クリーニング構成においては、通常協働して両者間に通気孔を規定するモールドスタック表面は、溶融物が両者間に進入できるように互いに若干分離される。換言すると、クリーニングすべき通気孔は、成形用キャビティの延長部となるように再構成される。クリーニング構成においてモールドスタックと共に成形サイクルを行うと、成形用キャビティからの溶融物が「意図的フラッシング」として幅が広げられた通気孔へ進入する。通気孔内の残留物は、フラッシングに付着するかまたはフラッシングに組み込まれるため、一体化したフラッシングを備えた成形品が成形用キャビティから排出される際に除去することができる。このようなクリーニングサイクルは、所定の回数の成形サイクル後または所望に応じて、例えば所定の時間間隔で、必要に応じて実行されるようにスケジュールされ得る。
【0051】
図7〜
図11は、クリーニング構成における例示的なモールドスタック103またはそのコンポーネントを示す。より詳細には、
図7は、
図1と同様のモールドスタック103の断面立面図であるが、クリーニング構成においては、分割モールドインサート114をより良好に視認できるように、コアインサート110を省略している。
図8は、モールドスタック103の一部の、
図3と同様の、拡大断面立面図であり、クリーニング構成のときの分割モールドインサート114、キャビティフランジ109およびキャビティインサート106間の相互作用を示す。
図9および
図10はそれぞれ、クリーニング構成にある分割モールドインサート114の斜視図および平面図であり、他のモールドスタックコンポーネントから分離されている。
図11は、
図10の分割モールドインサート114がクリーニング構成にある状態を示す模式図であり、理解を容易にするため、特定の特徴部(例えば、間隙)を誇張して単純に図示している。
【0052】
図7および
図8を参照して、図中のモールドスタック103と、
図1および
図3に示すものとの違いとして、間隙G1およびG2が分割モールドインサート114の対向する側に導入されていることが分かる。第1の間隙G1は、分割モールドインサート114とコアリング111との間にある。第2の間隙G2は、分割モールドインサート114とキャビティインサート106との間にある。これらの間隙は、モールド100(図示せず)と関連付けられたシャットハイト調節機構によって導入され得る。
【0053】
図8のより詳細な図を参照して、間隙G2は、キャビティインサート106の遮断面133と、分割モールドインサート114の遮断面142との間に形成されることが分かる。間隙G2の範囲は、溶融物が遮断面133および142の間に進入するように十分である。そのため、
図8に示すモールドスタック103のクリーニング構成においては、間隙G2は、モールドキャビティ105の延長部として機能し、遮断面133および142は相応に成形表面として機能する。
【0054】
分割モールドインサート114のいずれかの側に間隙G1およびG2が存在するため、すなわち、テーパー状雄部132がテーパー状雌レセプタクル130から部分的に退避し、かつ/または対向するテーパー状雄部164がロックリング112のテーパー状雌レセプタクル166から部分的に退避するため、分割モールドインサート半部分116および118は、横方向に(
図8において垂直方向に)限られた範囲まで自由に分離することができ、これにより、その合わせ面190および192間に間隙G3が形成される。分離は、例えば加圧された溶融物がモールドキャビティ105中へ射出されるのに応答して行われ得る。キャビティフランジ109のテーパー状雌レセプタクル130は、テーパー状雄部132(
図8を参照)の関連付けられた半部分136および138を分離させる程度を制限することにより、分割モールドインサート半部分116および118を分離させる程度を制限することができる。
【0055】
図9および
図10を参照して、分割モールドインサート半部分116および118間の分割ライン143の近位部141がより幅広になることにより間隙G3が形成され、分割ライン143の遠位部147も同様に、より幅広になることにより間隙G3が形成されることが考えられ得る。
【0056】
図11は、分割モールドインサート114がクリーニング構成にあるときの単純化された模式図であり、
図10と同じ概略図および方位である。
図11は、分割モールドインサート114がクリーニング構成にあるときに、分割モールドインサート半部分116および118の相補的な合わせ面190および192の多様な特徴部がそれぞれどのように相互作用するかをより良く理解するためのものである。理解の促進のために、
図11の寸法は縮尺通りではなく、いくつかの特徴部(例えば、間隙のサイズ)は誇張されていることが理解される。
【0057】
図示のように、分割モールドインサート半部分114がクリーニング構成にあるとき、相補的な(対向する)内面領域200および220は分離されて、近位間隙G3を形成する。間隙G3の範囲は、例えば間隙G1および/またはG2を、溶融物の内部流入を可能にするために十分幅広になるように、シャットハイト調節機構を用いて適切に寸法決めすることにより、意図的に設定される。そのため、合わせ面190および192の分離された内面領域200および220それぞれにより、成形用キャビティ105の延長部170がキャビティ105の対向する側に規定される。
【0058】
また
図11に示すように、分割モールドインサート半部分114がクリーニング構成にあるとき、相補的な(対向する)外面領域204および224は、内面領域200および220と同じ範囲(G3)だけ分離される。その結果得られる遠位間隙172は、分割モールドインサート114(
図10)の周囲において境界付けられないため、遠位間隙に進入した溶融物が分割モールドインサート114から制御不能な様態でフラッシュする危険性が出てくる。遠位間隙172からの制御されないフラッシングに起因して発生し得る不都合点は、以下を含む:溶融した成形材料が無駄になること、適切な成形動作のためにクリーニングする必要のあるモールドスタック領域が汚損する危険性が増すこと、および隣接する成形品の「デイジーチェーニング」(それによる隣接するモールドスタックからのフラッシングが合流した結果、別個の物品として形成されることが意図される、隣接するプリフォームが意図に反して列またはチェーン状に接続される)危険性が増すこと。
【0059】
近位モールドキャビティ延長部170から溶融物が遠位間隙172に流入することを防止するために、オフセット202および222は協働して、溶融物障壁または「フェンス」を形成する。オフセット202および222は分離寸法L(
図11を参照)に対して直交ではなく平行であるため、分割モールドインサート半部分116および118をクリーニング構成に分離した場合も、相補的オフセット202および222は内面領域200および220ならびに外面領域204および224のようには分離しない。代わりに、オフセット202および222は、互いに対してスライドし、その分離距離Dに変化は無い。オフセット202および222間(すなわち、成形構成とクリーニング構成と間)において分離距離Dは実質的に一定であるため、モールドキャビティ延長部170から遠位間隙172中への溶融物流動が防止される。いくつかの実施形態において、分離距離Dを適切に寸法決めすることにより、溶融物ではなく空気がオフセット202および222間を通過することが可能になるため、モールドキャビティ105のいずれかの側部上にその長さ全体にわたって通気孔がオフセットにより集合的に規定される。しかしながら、これは必ず必要なわけではない。
【0060】
図12および
図13は、プリフォーム101’(すなわち、プリフォーム101+意図的フラッシング)をクリーニング構成にあるモールドスタック103を用いて射出成形する2つの段階を示す。
図12および
図13は、モールドスタック103の3つのコンポーネントとして、キャビティインサート106、キャビティフランジ109および分割モールドインサート半部分118を示す。第1の2つのコンポーネントを横断面で示し、キャビティインサート106の下部のみを視認することができる。後者のコンポーネント、すなわち分割モールドインサート半部分118は、全体的に図示しているが、相補的分割モールドインサート半部分116は図示されていない。明確さのために、コアインサート110は省略している。
【0061】
図12に示す第1の成形段階において、流入溶融物300が
図12中を上から下に流れると、キャビティインサート106の領域内のモールドキャビティ105の円筒状上部を充填する。溶融物300は、キャビティインサート106の下方を向く環状遮断面133と、分割モールドインサート半部分118の上方を向く環状遮断面142との間に形成された環状間隙G2にさらに進入する。間隙G2は、キャビティフランジ109のテーパー状雌レセプタクル130(
図8も参照)によって周状に境界付けられる。雄突出部132の外面139は、テーパー状雌レセプタクル130と協働して、環状間隙G2の周囲の下側において溶融物障壁を提供する(
図12を参照)。そのため、さらなる放射状の溶融物流れが排除される。間隙G2内の溶融物により、環状フランジ302が相応に形成される。環状フランジ302は、プリフォーム101’から延び、かつプリフォーム101’と一体化される。
【0062】
フランジ302の下方において、溶融物300は、分割モールドインサート114(そのうち分割モールドインサート半部分118のみが
図12に図示されている)内に下方に連続して流動する。分割モールドインサート半部分116および118は
図7〜
図11に示すように分離されているため、一部の溶融物300は、分割モールドインサート半部分118の内面領域220と分割モールドインサート半部分116の内面領域200(
図11を参照)との間に規定されたモールドキャビティ延長部170中に横方向に流入し始める。
【0063】
モールドキャビティ延長部170内の溶融物が分割モールドインサート半部分116(例えば
図11を参照)のオフセット202と分割モールドインサート半部分118のオフセット222との間の界面によって形成された「フェンス」に到達すると、この界面がフェンスとして機能することにより、オフセット202および222間への溶融物の流入を遮断する。代わりに、雄突出部132の外面139およびキャビティフランジ109のテーパー状雌シート130によって集合的に形成された溶融物障壁へ溶融物を(
図12中の矢印Bによって示すように)誘導することができる。
【0064】
図13に示す第2の成形段階において、プリフォーム101’が完全に形成される。モールドキャビティ105のいずれかの側の内面領域200および220間のモールドキャビティ延長部170に溶融物が全体的に充填されると、ウイング304(意図的フラッシング)が形成される。ウイング304の厚さは、間隙G3の幅によって決定される。ウイング304は、本実施形態において環状フランジ302と一体化され、その上端において外方にフレア状にされる。このフレア形状は、オフセット202および222がモールドキャビティ105から離間するように外方に逸れ、雄突出部132の外面139へ向かうためである。
【0065】
通気孔230上に蓄積するであろういかなる残留物も、プリフォーム101’の排出において除去されるウイング304中へ組み込まれ得る。これにより、通気孔クリーニングの目的を達成することができる。この排出時において、プリフォーム101’は、
図14の斜視図に示す外観を有し得る。明確さのため、通気孔230および溝232から得られるレリーフ特徴部は、例示的プリフォーム101’の成形材料が半透明性であるため、
図14に示すようにウイング304の下側に配置され、
図14中のウイング304の反対側から視認することができる。
【0066】
分割モールドインサート114の合わせ面190および192の上記構成によって回避することができる、制御されないフラッシングの種類を図示するために、分割モールドインサート314の代替的な実施形態を
図6と同様の斜視図である
図15に示す。
【0067】
図15に示す分割モールドインサート314は、ほとんどの点において、上記した分割モールドインサート114に類似する。分割モールドインサート314は、2つの半部分316および318に分割される。これら2つの半部分316および318はそれぞれ、各オフセット合わせ面390および392を有する。合わせ面390および392は、相補的である。
【0068】
第1の分割モールドインサート半部分316の合わせ面390により、モールドキャビティ305の各側において、内面領域400、オフセット402および外面領域404が規定される。内面領域400は、モールドキャビティ305に隣接し、遮断面342において部分的に終端し、遮断面342に隣接する丸い移行領域343において部分的に終端する。外面領域404は、内面領域400からオフセット402の反対側上にあり、雄突出部332の外面339において部分的に終端し、遮断面342に隣接する丸い周縁部343において部分的に終端する。外面領域404は、内面領域400に対して突出する。
【0069】
第2の分割モールドインサート半部分318の相補的な合わせ面392は、モールドキャビティ305の各側において、モールドキャビティ305に隣接する内面領域420と、オフセット422と、内面領域420からのオフセット422の反対側にある外面領域424とを同様に規定する。
【0070】
とりわけ、分割モールドインサートの本実施形態のオフセット402および422は実質的に直線状であり、雄突出部332の外面339(
図15を参照、
図16の分割モールドインサート314の拡大斜視図も参照)においてではなく、遮断面342と外面339との間の移行領域343において終端する。その結果、溶融物がモールドキャビティ305から、またはモールドキャビティ延長部370(すなわち、分割モールドインサート314がクリーニング構成にあるときに対向する内面領域400および420間に形成される間隙)から遮断面342上に流動し、遠位間隙372(すなわち、分割モールドインサート314がクリーニング構成にあるときに対向する外面領域404および424間に形成された間隙)中に流入することが可能になる。換言すると、オフセット402および422は、雄突出部332の外面339内ではなく移行領域343内において終端するため、遠位間隙372の最も内側の範囲は、遮断面342と、隣接するキャビティインサート(図示せず)の遮断面との間の間隙からの溶融物流入に対して開放される。これは、遠位間隙172が雄突出部132の外面139内において全体的に終端しているために、遠位間隙172への溶融物進入が遮断される(例えば
図11を参照)上記の実施形態とは対照的である。
【0071】
よって、上記した分割モールドインサート114の代わりにモールドスタック103にある
図16の分割モールドインサート314を用いることにより、分割モールドインサートが通気孔クリーニング構成にあるときに遠位間隙372中における制御されないフラッシングの不利点に繋がり得る。多数のモールドスタック103がマルチスタックモールドにおいて近密に配置された場合、隣接するプリフォームのデイジーチェーニングは、例えば
図17の斜視図に示すように相互接続されたプリフォームのアレイ450になる。例えば分割モールドインサートの通気孔クリーニング構成は業界において比較的新規であるため、かつ/または通気孔クリーニングは比較的低頻度で行われ得るため、このような危険の可能性は、当業者に深く理解されていない場合がある。デイジーチェーニングの不利点として、完全に排出することができないクリーニング部分またはクリーニング部分の部分的排出に起因する成形サイクルの予期せぬ中断、マシンの部品検出センサーが騙されること、モールドが分割モールドインサート間、またはその周囲の他の領域間に残ったままの成形品の部分と密接するのを可能にすること、その結果適切な成形動作のためにクリーニングすべきモールドスタックまたは他のモールド領域が汚染されることを挙げることができる。他の危険性を挙げると、通常の(製造)成形サイクル時にスタックまたはモールドコンポーネントがプラスチック閉じ込めによって部分的に開いたままになった場合に成形品101の意図せぬ「フラッシング」が発生すること、または過度の局所的装填に起因して、スタックを含む複数のモールドコンポーネントのうちのいずれか1つに損傷が発生し得ることがある。
【0072】
多様な代替的な実施形態が可能である。
【0073】
図1および
図3〜
図13の分割モールドインサート114において、相補的な合わせ面190および192におけるオフセット202および222はJ字型である(例えば
図6を参照)。他の分割モールドインサートの実施形態のオフセットにおいては他の形状が用いられ得ることが理解される。
【0074】
例えば、
図18に示す分割モールドインサート514の代替的な実施形態において、オフセットは実質的にL字型形状である。分割モールドインサートは、例えばモールドスタック103内の分割モールドインサート114と代替可能とすることができる。
【0075】
図18において、分割モールドインサート514の斜視図が示される。2つの半部分516および518は、その各合わせ面590および592が視認できるように方向付けられる。第1の分割モールドインサート半部分516の合わせ面590により、モールドキャビティ505の各側において、内面領域600、オフセット602および外面領域604が規定される。内面領域600は、モールドキャビティ505に隣接し、遮断面542において部分的に終端し、テーパー状の雄突出部532の外面539において部分的に終端する。外面領域604は、内面領域600からオフセット602の反対側上にあり、雄突出部532の外面539において(少なくとも部分的に)終端する。外面領域604は、内面領域600に対して突出する。
【0076】
第2の分割モールドインサート半部分518の相補的な合わせ面592により、モールドキャビティ505の各側において、モールドキャビティ505に隣接する内面領域620と、オフセット622と、内面領域620からオフセット622の反対側にある外面領域624とが同様に規定される。
【0077】
とりわけ、本実施形態のオフセット602および622はそれぞれ、第1のより長尺の直線状の部分606および626と、より長尺の部分606から直交して延びる第2のより短尺の直線状の部分608および628とにより特徴付けられたL字型形状を有する。本実施形態において、第1の部分606は、モールドスタック103の動作軸Aに対して実質的に平行である。モールドスタック103は、モールドキャビティ505の中間部を通じて(
図6のモールドキャビティ105を通じて延びる軸Aと同様に)延びる。オフセット602および622の第2の部分608および628は、軸Aに対して実質的に直交(遮断面542に対して実質的に平行)であり、雄突出部532の外面539において終端する。
【0078】
図19に示す分割モールドインサート714のさらなる代替的な実施形態において、オフセットの部分は、約170度の鈍角で若干屈曲される。分割モールドインサート714も、モールドスタック103内の分割モールドインサート114と同様に代替可能とすることができる。
【0079】
図19において、分割モールドインサート714の斜視図が示され、2つの半部分716および718は、その各合わせ面790および792が視認できるように方向付けられる。第1の分割モールドインサート半部分716の合わせ面790により、モールドキャビティ705の各側において、内面領域800と、オフセット802と、外面領域804とが規定される。内面領域800は、モールドキャビティ705に隣接し、遮断面742において部分的に終端し、テーパー状の雄突出部732の外面739において部分的に終端する。外面領域804は、内面領域800からオフセット802の反対側にあり、雄突出部732の外面739において(少なくとも部分的に)終端する。外面領域804は、内面領域800に対して突出する。
【0080】
第2の分割モールドインサート半部分718の相補的な合わせ面792も同様に、モールドキャビティ705の各側において、モールドキャビティ705に隣接する内面領域820と、オフセット822と、内面領域820からオフセット822の反対側にある外面領域824とを規定する。
【0081】
とりわけ、本実施形態のオフセット802および822はそれぞれ、第1のより長尺の直線状の部分806および826と、より長尺の部分806および826それぞれから鈍角にて延びる第2のより短尺の直線状の部分808および828とにより特徴付けられる。本実施形態において、各部分806および826ならびに808および828は、隣接する成形用キャビティ705の成形表面810の部分に対して実質的に平行である(本実施形態において、モールドキャビティ705の上部は、若干外方にフレア状である)。部分808および828も、モールドスタック103の動作軸Aに対して実質的に平行であり得る。オフセット802および822の第2の部分806および826は、雄突出部732の外面739において終端する。オフセット802および822の部分806および826は、部分808および828それぞれよりも長尺である必要はないことが理解される。代替的な実施形態において、前者の長さを後者の長さ以下にしてもよい。
【0082】
外面領域604、624、804および824間に形成された遠位間隙内における制御されないフラッシングを防止するための
図18および
図19の分割モールドインサート514および714の挙動は、分割モールドインサート114の挙動と類似する。詳細には、雄突出部532および732の外面539および739は、キャビティフランジ109のテーパー状雌レセプタクル130と協働して、溶融物障壁を提供する。分割モールドインサート半部分516および518ならびに716および718の対向する内面領域600および620ならびに内面領域800および820の間の溶融物が分割モールドインサート半部分516および518ならびに716および718それぞれのオフセット602および622ならびにオフセット802および822の間の界面によって形成された「フェンス」に到達すると、この界面がフェンスとして機能し、オフセット602および622ならびにオフセット802および822の間への溶融物流入を遮断する。その代わりに、溶融物は、溶融物障壁へ誘導され得る。
【0083】
上記したように、
図1および
図3〜
図13の例示的な分割モールドインサート114は、コアロック型モールドスタック103内において用いられるように設計される。上記した制御されないフラッシングを軽減するために、類似の分割モールドインサートを、例えばキャビティロック型モールドスタックである他の種類のモールドスタック(すなわち、分割インサートが雌テーパーを底部に有するもの)と共に用いてもよいことが理解されるであろう。
【0084】
上記の例は、プリフォームである物品の成形を示している。例えば薄壁の容器モールドである、レリーフ部を有する他の物品の成形に類似の技術を用いることが可能であることが理解される。レリーフ部は、例えば成形されたブリッジを有する不正防止バンドを備えた容器閉鎖部であり得る。
【0085】
上記の分割モールドインサートそれぞれを2つの半部分に分割されるものとして示しているが、分割モールドインサートの代替的な実施形態は、成形品排出の際に分離することが可能な、より多数の部分に分割されてもよい。
【0086】
上記した分割モールドインサート114、514および714の例において、内面領域200、220、600、620および800、820はそれぞれ、第1の面(例えば、分割モールドインサート114の場合は面P1)を占有し、外面領域204、224、604、624および804、824はそれぞれ、異なる平面(例えば、分割モールドインサート114の場合は面P2(
図5を参照))を占有する。いくつかの実施形態において、分割モールドインサート部分の内面領域および外面領域は、同一面を占有し得ることが理解される。このような実施形態においては、1つのオフセット(例えば、オフセット202、602および802)は舌部であり得、相補的オフセット(例えば、オフセット122、622および822)は溝部であり得る。
【0087】
本明細書中に開示される分割モールドインサートの実施形態の雄突出部は、円錐台状である。代替的な実施形態において、雄突出部は、他の形状を有し得る。テーパー状形状にすると、分割モールドインサートと、対応する雌レセプタクルを有する隣接するモールドスタックコンポーネントとの整列が促進され得る。しかしながら、いくつかの雄突出部の実施形態の形状を非テーパー状(例えば、円筒状)にすることも可能である。
【0088】
他の変更が、特許請求の範囲内において可能である。