【課題を解決するための手段】
【0025】
この問題は、次のステップを含む炭素及び/又は炭素含有化合物の不純物を含有するSi
mgを分類する方法によって解決される:
a)700℃までの温度でO
2と反応する遊離炭素の割合を決定するステップ、並びに
b)クロロシランを生成する方法に、遊離炭素の割合が150ppmw以下であるSi
mgを割り当てるステップ、及び/若しくは提供するステップ、並びに/又はメチルクロロシランを生成する方法に遊離炭素の割合が150ppmwを超えるSi
mgを割り当てるステップ及び/若しくは提供するステップ。
【0026】
遊離炭素の割合が≦80ppmw、好ましくは≦30ppmw、特に好ましくは≦10ppmwであるSi
mgが、クロロシランを生成する方法に割り当てられ、及び/又は遊離炭素の割合が>80ppmw、好ましくは>30ppmw、特に好ましくは>10ppmwであるSi
mgがメチルクロロシランを生成する方法に割り当てられる場合が好ましい。
【0027】
本発明の文脈において、「遊離炭素」は、好ましくはLECO RC−612自動燃焼装置を使用して、700℃までの温度でO
2と反応する、分類されるSi
mgの炭素の割合を意味すると理解されるべきである(DIN 19539も参照)。遊離炭素は、典型的には、有機炭素である(例えば、油、脂肪)。
【0028】
対照的に、「表面炭素」は、Si
mgの表面上に存在する総炭素を意味すると理解されるべきである。これは、遊離炭素だけでなく、主に無機炭素、例えばSiCである700℃以上でO
2と反応する炭素も含む。
【0029】
また、「総炭素」という用語には、遊離炭素及び表面炭素だけでなく、Si
mgの内部に存在する炭素(バルク炭素)も含まれる。
【0030】
特に100℃〜700℃の温度範囲でO
2と反応する遊離炭素の割合が、クロロシラン生成の反応条件下(特にLTC及び塩化水素化による)で不活性な挙動を示さず、むしろ副産物の形成をもたらすことが見出された。これらは、困難な場合にのみ、目的のクロロシラン、特にTCSから分離することができる。対照的に、700℃以上でO
2と反応する無機炭素は、クロロシラン生成のための方法で不活性な挙動を示す。さらに、遊離炭素の割合が、クロロシランを生成する方法で形成される炭素含有副産物の量に比例するため遊離炭素含有量を使用して、Si
mgの定性的な等級付けが行われ得ることが見出された。例えば、遊離炭素の割合が10ppmw以下であるSi
mgは、クロロシラン生成において少量の副産物のみが予想されるため、品質グレード1を取得する(表4を参照)。
【0031】
代替的に又は追加的に、ステップa)による700℃での遊離炭素の割合の静的決定が360℃〜400℃、480℃〜550℃及び610℃〜670℃の温度範囲の少なくとも1つについて温度分別方式でも行われ得る。それぞれの温度範囲で決定された遊離炭素の割合は、クロロシランを生成する方法で形成されるそれぞれの温度範囲を特徴とする少なくとも1つの副産物の量と相関している。次いで、Si
mgは、この相関関係に従ってその品質に関して評価され得る。温度範囲の遊離炭素の同意を示すために、100℃〜700℃の温度勾配を通過し(温度ランプ、動的決定)、温度に対して決定された遊離炭素の量をプロットすることが好ましい(サーモグラム)。
【0032】
3つの温度範囲のそれぞれで決定された遊離炭素量から、それぞれの場合にクロロシラン生成中に形成された少なくとも1つの副産物の量を推定することが可能であることが認識された。各温度範囲には、対応する温度範囲で決定された遊離炭素の割合が高くなるほど濃度が増加する少なくとも1つの副産物を割り当てられ得る。相関は、特に比較/参照データに基づいて実行され得る。
【0033】
360℃〜400℃の温度範囲で決定された遊離炭素の割合がイソペンタンの量と相関する場合、480℃〜550℃の温度範囲で決定された割合は、MTCSの量と相関し、610℃〜650℃の温度範囲で決定された割合は、MDCSの量と相関することが好ましい。
【0034】
これらの3つの副産物は、クロロシランの生成で発生する典型的な化合物であり、そのそれぞれが所望の生成物、特にTCSと類似の沸点を有し、したがって、多大なコストでのみ分離することができる。
【0035】
次いで、Si
mgは、任意に相関に従ってクロロシランを生成するための異なる方法に割り当てられてもよい。この割り当ては、特に、例えばLTC及び塩化水素化が実行される好ましい反応温度に基づいてもよい。例えば、MDCSの高い割合(610℃〜650℃の温度範囲で高い遊離炭素の割合に相当する)が、分類されたSi
mgで予想される場合、一般に低温で進行する塩化水素化にSi
mgを供給することが好ましくなり得る。
【0036】
したがって、処理されるSi
mgを仮にクロロシラン生成に供給するかどうかの選択に加えて、クロロシラン生成の異なる方法を区別することも可能である。予想される副産物の量を推定することも可能であり、それによりクロロシランの精製を最適化することが可能になる。
【0037】
クロロシランを生成する方法が塩化水素化又はLTCである場合が好ましい。
【0038】
塩化水素化は、好ましくは280℃〜400℃、特に好ましくは320℃〜380℃、特に340℃〜360℃の温度範囲で進行する。LTCは、好ましくは350℃〜850℃、特に好ましくは400℃〜750℃、特に500℃〜700℃の温度範囲で進行する。
【0039】
生成されたクロロシランは、特に一般式H
nSiCl
4−n及び/又はH
mCl
6−mSi
2(式中、n=1〜4及びm=0〜4)のクロロシランである。クロロシランが、TCS、ジクロロシラン、モノクロロシラン、Si
2Cl
6、HSi
2Cl
5及びそれらの混合物を含む群から選択される場合が好ましい。TCSが関係する場合が特に好ましい。
【0040】
メチルクロロシランを生成する方法は、典型的には250℃〜350℃の温度及び0.1〜0.5MPaの圧力で進行するミュラー・ロショー合成であることが好ましい。生成されたメチルクロロシランが、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、MDCS、MTCS及びそれらの混合物を含む群から選択される場合が好ましい。ジメチルジクロロシランが特に関係する。
【0041】
本発明による方法のためのSi
mgが1〜1000μm、好ましくは50〜500μm、特に好ましくは100〜200μmの粒径を有する場合が好ましい。
【0042】
Si
mgサンプルの遊離炭素の割合の決定:
遊離炭素の割合の決定からの結果により、クロロシラン、特にTCSの合成に特に有利なSi
mg出発原料を特定することにより、選択することが可能になる。本発明による方法の特定の利点は、炭素含有副産物の形成を回避し、それに付随して、クロロシラン生成の下流に配列された蒸留方法への負荷が減少することである。特に有利には、本方法は、副産物の形成が増加するいかなる危険も伴わずに、クロロシラン生成のために、無機炭素(>700℃の温度でO
2と反応する)で重度に汚染されたSi
mgでさえ選択することを可能にする。したがって、例えば、本発明による方法が、遊離炭素含有量がわずか150ppmw以下であると決定した場合、総炭素含有量が過度に高いため、これまでクロロシラン生成から除外されていたSi
mgバッチは、それでもクロロシラン生成に使用され得る(表4を参照)。加えて、動作監視における総炭素含有量の決定が省かれ得、すなわち、LECO C−200などの第2の分析機器が廃止され得る。また、抽出に続いてこれまで慣習的に行われてきたNMR及びIR分光法によるSi
mg表面からの炭素含有化合物の高価な分析を省くことも可能である。
【0043】
遊離炭素含有量を決定するためには、LECO RC−612炭素分析装置を使用することが好ましい。LECO RC−612では、総炭素を決定することはシステム上不可能であり、代わりに表面炭素のみを決定することができる。LECO RC−612では、原則として純粋なSi
mgサンプル(添加剤なし)が加熱され、Si
mg粒子の表面に配置された炭素のみがO
2流で燃焼し、形成されたCO
2がIR測定セルによって定量的に捕捉される。
【0044】
表面炭素の含有量(又は遊離炭素の含有量)の決定中、選択した測定温度で反応する表面炭素汚染は、O
2流で完全に酸化されてCO
2になる。O
2は、キャリアガス及び燃焼ガスの両方として機能する。このようにして得られた測定ガス中のCO
2濃度は、分析機器に統合されたIRフロースルーセルによって標準的な方式で決定される。結果は、サンプルの質量に基づいて、表面炭素(又は遊離炭素)の質量分率として計算される。
【0045】
分析機器は、典型的には、O
2予備精製用のユニットが追加で取り付けられている。このユニットは、O
2内の任意の微量の炭化水素を600℃の酸化銅で触媒的に酸化し、Si
mgサンプルと接触する前にCO
2を得て、好適な吸収媒体(例えばマグネシウム過塩素酸塩及び水酸化ナトリウム)によって、得られたCO
2及び存在するあらゆる水をO
2から完全に除去する。この予備精製により、純度が>99.5%である技術的なO
2の使用が可能になる(O
2品質2.5)。品質5.0(>99.999%)のより純粋なO
2を使用した試験では、一般により良い結果は得られない。
【0046】
予備精製後、O
2は水平加熱石英管に導かれる。石英管は、大気に開放されたシステムを形成する。空気の侵入は、予備精製されたO
2の第1の永久パージ流によって防止される。予備精製されたO
2の第2の流れは、第1の流れとは反対方向に導かれ、石英製のサンプルボートに配列されたSi
mgサンプル上の測定位置を通過する。測定位置で優先されるのは、Si
mgサンプルの表面炭素が決定される選択された測定温度である。
【0047】
石英管を出た後、Si
mgサンプルの酸化生成物が濃縮された測定ガスは、850℃の燃焼後チャンバーに導かれ、その後酸化銅触媒上で750℃でCO
2に完全に酸化される。測定ガス中のCO
2含有量は、長さ17.78mm(0.7インチ;高セル)及び152.4mm(6インチ;低セル)の2つのフロースルーセルでの約2349cm
−1のIR分光法によって標準的な方式で決定される。測定ガスが煙突を介して分析機器から出る前に、O
2の予備精製でも使用される吸収媒体によってCO
2及び水が取り除かれる。2つのIRセルの較正は、高セルの炭酸カルシウム標準及び低セルの水性マンニトール標準を使用して行われる。セルの較正は、測定条件下で行われる。
【0048】
検出の分析限界は、SPCシステム(統計方法制御)を介したブランク値法に従って、1日の測定からのブランク値測定の測定結果から計算される。偏差があると、規定された限界を遵守するための手段が導入され得るように、ユーザーは警告を受ける。
【0049】
測定エラーを回避するために、測定手順は、純度クラス7(10 000;ISO 14644−1に準拠)の層流ボックスで実行することが好ましい。層流ボックスは、純度クラス8(100 000;ISO 14644−1に準拠)のクリーンルームにさらに配列されてもよい。
【0050】
LECO RC−612炭素分析装置は、一定の測定温度(統計的測定法)及び100℃〜1100℃の範囲の60〜120K*min
−1の定義済み温度ランプ(動的測定法)の両方で表面炭素を測定できる。特に統計的測定は、総表面炭素の定量的決定を達成しようとする。特に動的測定では、Si
mgの表面上の異なる炭素種を定性的に識別しようとする。2つの測定方法の測定条件を表1にまとめる。
【0051】
【表1】
【0052】
例えば、炭化水素又はポリマーなどの炭素化合物の分解挙動は、一般に酸化剤の存在及び濃度(例えばO
2による酸化分解)、熱の作用(熱分解)、光の作用(例えばUV光による光劣化)、化学組成(構造、架橋度、飽和度、結晶化度、配合)、並びにフィラー、重合触媒、安定剤、抑制剤及び難燃性添加剤の混合物などの要因に依存する。動的測定法では、炭素化合物の温度依存性の熱酸化分解が、Si
mg表面上の炭素種を識別するための原理として利用される。異なる炭素種は、特徴的なサーモグラムになる。サーモグラムで炭素種を区別するための基準は、初期温度(熱酸化分解の開始)並びに曲線形状(最大値の勾配、位置及び数)である。物質又は物質クラスによる炭素種の識別は、典型的には、参照サーモグラムとの比較によって行われる。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、塩化水素含有反応ガスとSi
mgを含有する粒子状接触塊との反応により、流動床反応器内でクロロシラン、特にTCSを生成する方法であって、Si
mgが記述の分類方法を事前に通過する、方法を提供する。
【0054】
本発明は、塩化水素含有反応ガスと、総炭素含有量が最大2500ppmw、好ましくは最大1500ppmw、特に好ましくは最大750ppmwであるSi
mgを含有する粒子状接触塊との反応により、流動床反応器内でクロロシラン、特にTCSを生成する方法であって、遊離炭素の割合が150ppmw以下である、方法をさらに提供する。本方法のためのSi
mgが400〜2500ppmwの総炭素含有量を有する場合が好ましい。
【0055】
そのような高い総炭素含有量を有するSi
mgのバッチは、これまで典型的にクロロシラン生成に供給されていなかった。しかしながら、本発明による選択方法により、そのようなバッチをクロロシラン生成に使用することが可能になる。これにより、Si
mgの価格は純度が高くなるに伴い上昇するため、特にコストの削減が可能になる。
【0056】
本方法は、好ましくは塩化水素化又はLTCである。
【0057】
記載された方法は、多結晶シリコンを生成するための統合システムに組み込まれることが好ましい。統合システムは、好ましくは次の方法を含む:
−本発明の方法によるSi
mgの分類及びクロロシラン生成の割り当て、
−塩化水素又はLTCによるクロロシラン、特にTCSの生成、
−半導体品質のTCSクロロシランを得るための生成されたクロロシランの精製、
−好ましくはシーメンス方法又はグラニュレート方法による多結晶シリコンの堆積。
【0058】
本発明は、クロロシラン、特にTCSを生成するための、総炭素含有量が最大2500ppmw、好ましくは最大1500ppmw、特に好ましくは最大750ppmwのSi
mgの使用であって、遊離炭素の割合が150ppmw以下である、使用をさらに提供する。
【0059】
クロロシラン生成のための、総炭素含有量が400〜2500ppmwのSi
mgを用いることが好ましい。