【文献】
BioMed Research International,2015年,Article ID 412946,http://dx.doi.org/10.1155/2015/412946
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症、例えば、レビー小体、脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害;又は大脳皮質基底核変性症;の治療もしくは予防方法に使用するための、ロゼブリア(Roseburia)属の細菌株を含む組成物。
組成物が、早期発症型のパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ルー・ゲーリック病、運動ニューロン疾患、プリオン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、認知症、原発性進行性失語、軽度認知障害、HIV関連認知障害、又は大脳皮質基底核変性症の治療または予防方法に使用するためのものである、請求項1または2に記載の組成物。
組成物が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ルー・ゲーリック病、運動ニューロン疾患、プリオン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、認知症、原発性進行性失語、軽度認知障害、HIV関連認知障害、又は大脳皮質基底核変性症の発症または進行の予防または遅延方法に使用するためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
脳卒中、例えば、脳虚血、限局性脳虚血、虚血性脳卒中または出血性脳卒中の治療方法に使用されるための、ロゼブリア(Roseburia)属の細菌株を含む組成物。
細菌株が、配列番号3に少なくとも96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有し、または前記細菌株が、配列番号3によって表される16s rRNA配列を有する、請求項6に記載の組成物。
組成物が、パーキンソン病の治療または予防方法に使用するための、ロゼブリア ホミニス(Roseburia hominis)種の細菌株を含む、請求項1に記載の組成物。
組成物が、パーキンソン病の治療または予防方法に使用するための、ロゼブリア インテスティナリス(Roseburia intestinalis)種の細菌株を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
細菌株が、受託番号NCIMB 42383として寄託されたロゼブリア ホミニス(Roseburia hominis)株である、請求項1〜4、及び8のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
細菌株
本発明の組成物は、Roseburia属の細菌株を含む。実施例は、この属の細菌が、神経変性障害の治療または予防に有用であることを示している。好ましい細菌株は、Roseburia hominis、Roseburia faecis及びRoseburia intestinalis種のものである。
【0027】
本発明において使用されるRoseburia種の例としては、Roseburia hominis、Roseburia cecicola、Roseburia faecis、Roseburia intestinalis、及びRoseburia inulinivoransが挙げられる。Roseburia細菌は、絶対嫌気性で、哺乳動物の腸に固有の僅かに湾曲した棒状の細胞である。それらは、Firmicutes phylum内の系統発生クラスターXIVaのものである。細菌は、酪酸産生であり、凹面に沿って、かつ、一端のクラスターに存在する多数の鞭毛を通じて積極的に運動する[23]。Roseburia hominis及びRoseburia intestinalisは、最近記載されている例である。
【0028】
Roseburia hominisの一例は、受託番号NCIMB 14029
T Roseburia hominis A2 183
T(DSM=16839
T)下で、Rowett Research Instituteによって、2004年10月21日に、National Collections of Industrial,Food and Marine Bacteria(NCIMB)(NCIMB Ltd,Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen,UK,AB21 9YA)でのブダペスト条約の条項下で寄託された株である。他の例示のRoseburia hominis株は、[24]に記載されている。Roseburia hominisの株の16S rRNA遺伝子配列に対するGenBank/EMBL/DDBJ受託番号は、AY804148及びAJ270482(配列番号1及び配列番号2と本明細書で開示される)である。
【0029】
Roseburia intestinalisの一例は、受託番号NCIMB 13810として寄託された株、Roseburia intestinalis L1−82
T(DSM=14610
T)である。別の例は、[24]に記載されるような、Roseburia intestinalis株である。参照文献[24]は、例示のRoseburia faecis及びRoseburia inulinivorans株も記載している。
【0030】
受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis細菌は、実施例で試験し、株433とも本明細書で呼ばれる。試験した433株に対する16S rRNA配列は、配列番号3で提供される。株433は、「Roseburia hominis 433」として、2015年3月12日にGT Biologics Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Cornhill Road,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって、国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB 42383が割り当てられた。GT Biologics Ltd.は、その後、4D Pharma Research Limitedへとその名称を変えた。
【0031】
WO2016/203221は、マウスへの株433の投与を記載し、腸(例えば、喘息及び関節炎)の外側の疾患プロセスに影響を及ぼし得ることを示す。株433は、本明細書に記載されている神経変性障害の治療において、腸の外側の疾患プロセスにも影響を及ぼす。
【0032】
株433のゲノム配列は、配列番号4で提供される。この配列は、PacBio RS IIプラットフォームを用いて生成した。
【0033】
受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis細菌は、実施例で試験し、株Aとも本明細書で呼ばれる。試験した株Aに対する16S rRNA配列は、配列番号5で提供される。株Aは、「Roseburia intestinalis」として、2018年3月3日に4D Pharma Research Limited(Life Sciences Innovation Building,Cornhill Road,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって、国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB 43043が割り当てられた。
【0034】
実施例は、試験し、株Bと呼ばれるRoseburia faecis細菌についても記載する。試験した株Bに対する16S rRNA配列は、配列番号6で提供される。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia hominisである。ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia intestinalisである。ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia faecisである。
【0036】
実施例で試験した株に近縁する細菌株はまた、IL−17またはTh17経路によって媒介される神経変性疾患及び状態の治療または予防に有効であると期待される。ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia hominisの細菌株の16S rRNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有する。本発明において使用される細菌株は、配列番号1、2、または3に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有するのが好ましい。配列同一性は、配列番号3に対してであるのが好ましい。本発明において使用される細菌株は、配列番号3によって表される16S rRNA配列を有するのが好ましい。
【0037】
他の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia intestinalisの細菌株の16S rRNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有する。本発明において使用される細菌株は、配列番号5に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有するのが好ましい。本発明において使用される細菌株は、配列番号5によって表される16S rRNA配列を有するのが好ましい。
【0038】
他の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、Roseburia faecisの細菌株の16S rRNA配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有する。本発明において使用される細菌株は、配列番号6に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16S rRNA配列を有するのが好ましい。本発明において使用される細菌株は、配列番号6によって表される16S rRNA配列を有するのが好ましい。
【0039】
受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌のバイオタイプである細菌株はまた、神経変性障害の治療または予防に有効であると期待される。バイオタイプは、同じかまたは非常に類似の生理学的及び生化学的特性を有する近縁株である。
【0040】
受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌のバイオタイプであり、かつ、本発明での使用に適している株は、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌に対する他のヌクレオチド配列をシーケンシングすることで同定され得る。例えば、実質的に全ゲノムは、配列決定され得、及び本発明において使用されるバイオタイプ株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%または99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有し得る。バイオタイプ株の同定に使用される他の適切な配列は、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)
5、またはREPを含んでいてよい[25]。バイオタイプ株は、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌の対応する配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有し得る。
【0041】
ある特定の実施形態では、本発明において使用される細菌株は、配列番号4に対する配列同一性を持つゲノムを有する。好ましい実施形態では、本発明において使用される細菌株は、配列番号4の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)にわたって、少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性)を持つゲノムを有する。例えば、本発明において使用される細菌株は、配列番号4の70%にわたって、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、または配列番号4の80%にわたって、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、または配列番号4の90%にわたって、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、または配列番号4の100%にわたって、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、または配列番号4の70%にわたって、配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、または配列番号4の80%にわたって、配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、または配列番号4の90%にわたって、配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、または配列番号4の100%にわたって、配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、または配列番号4の70%にわたって、配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、または配列番号4の80%にわたって、配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、または配列番号4の90%にわたって、配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、または配列番号4の100%にわたって、配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性を持つゲノムを有し得る。
【0042】
あるいは、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌のバイオタイプであり、本発明での使用に適している株は、受託番号NCIMB 42383またはNCIMB 43043の寄託及び制限断片分析及び/またはPCR分析を用いて、例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)−PCRフィンガープリンティング、またはタンパク質プロファイリング、または部分的16Sまたは23S rDNAシーケンシングを用いて同定され得る。好ましい実施形態では、かかる技術を使用して、他のRoseburia hominis、Roseburia faecis及びRoseburia intestinalis株を同定してもよい。
【0043】
ある特定の実施形態では、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌のバイオタイプであり、本発明での使用に適している株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析した場合、例えば、Sau3AI制限酵素を使用した場合、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌と同じパターンを提供する株である(例示の方法及びガイダンスについて、例えば、[26]を参照されたい)。あるいは、バイオタイプ株は、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0044】
本発明の組成物及び方法に有用である他のRoseburia株、例えば、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌のバイオタイプは、任意の適切な方法または戦略、例えば、実施例に記載のアッセイを用いて同定され得る。例えば、本発明において使用される株は、神経芽腫細胞で培養した後、サイトカインレベル、及び神経保護または神経増殖レベルを評価することで同定され得る。特に、受託番号42383またはNCIMB 43043として寄託された細菌に対して同様の増殖パターン、代謝型及び/または表面抗原を有する細菌株は、本発明で有用であり得る。有用な株は、NCIMB 42383またはNCIMB 43043株と同等の免疫調節活性を有する。特に、バイオタイプ株は、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカインレベルに対する同等の効果を引き出し、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。
【0045】
特に好ましい本発明の株は、受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株である。これは、実施例で試験した例示の433株であり、疾患の治療に有効であることを示す。従って、本発明は、受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株またはその派生物の細胞、例えば、単離細胞を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株またはその派生物の細胞を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。また、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株またはその派生物の細胞を提供する。
【0046】
特に好ましい本発明の株は、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株である。これは、実施例で試験した例示の株Aであり、疾患の治療に有効であることを示す。従って、本発明は、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株またはその派生物の細胞、例えば、単離細胞を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株またはその派生物の細胞を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。また、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株またはその派生物の細胞を提供する。
【0047】
受託番号NCIMB 42383またはNCIMB 43043として寄託された株の派生物は、娘株(後代)、またはオリジナル株から培養(サブクローン)された株であり得る。本発明の株の派生物は、生物活性を除去することなく、例えば、遺伝子レベルで修飾してもよい。特に、本発明の株の派生物は、治療的に活性である。派生株は、元のNCIMB 42383またはNCIMB 43043株と同等の免疫調節活性を有する。特に、派生株は、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカインレベルに対する同等の効果を引き出し、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。NCIMB 42383またはNCIMB 43043株の派生物は、概して、NCIMB 42383またはNCIMB 43043株のバイオタイプである。
【0048】
受託番号NCIMB 42383として寄託されたRoseburia hominis株の細胞への言及は、受託番号NCIMB 42383として寄託された株と同じ安全性及び治療効果特性を有する任意の細胞を包含し、かかる細胞は、本発明に包含される。
【0049】
受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株の細胞への言及は、受託番号NCIMB 43043として寄託された株と同じ安全性及び治療効果特性を有する任意の細胞を包含し、かかる細胞は、本発明に包含される。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生きており、腸に部分的または全体的に定着することができる。
【0051】
本発明は、受託番号NCIMB 42761として寄託されたEnterococcus gallinarum株またはその派生物の細胞、例えば、単離細胞をさらに提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 42761として寄託されたRoseburia intestinalis株またはその派生物の細胞を含む組成物を提供する。また、本発明は、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。また、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株またはその派生物の細胞を提供する。受託番号NCIMB 43043として寄託された株の派生物は、娘株(後代)、またはオリジナル株から培養(サブクローン)された株であり得る。
【0052】
本発明の株の派生物は、生物活性を除去することなく、例えば、遺伝子レベルで修飾してもよい。特に、本発明の株の派生物は、治療的に活性である。派生株は、元のNCIMB 42761株株と同等の免疫調節活性を有する。特に、派生株は、実施例に示す効果に対して、神経変性疾患モデルに対する同等の効果、サイトカインレベルに対する同等の効果を引き出し、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを用いて同定され得る。NCIMB 43043株の派生物は、概して、NCIMB 43043株のバイオタイプである。
【0053】
受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株の細胞への言及は、受託番号NCIMB 43043として寄託された株と同じ安全性及び治療効果特性を有する任意の細胞を包含し、かかる細胞は、本発明に包含される。従って、いくつかの実施形態では、受託番号NCIMB 43043として寄託されたRoseburia intestinalis株の細胞への言及は、NCIMB 43043として寄託された株Aのみを指し、NCIMB 43043として寄託されなかった細菌株を指さない。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生きており、腸に部分的または全体的に定着することができる。
【0055】
治療用途
実施例に示すように、本発明の細菌組成物は、神経変性障害の治療に有効である。特に、本発明の組成物による治療は、神経増殖を増加させ、ドーパミン作動性ニューロンを破壊する作用物質に対する神経保護物質として作用する。従って、本発明の組成物は、ニューロン死の結果である神経変性障害の治療または予防に有用であり得る。
【0056】
本発明の組成物は、サイトカイン産生、例えば、IL−1β、IL−1α、IL−18、TNFα及びIL−6を活性化させる、NFκBプロモーターの活性化を減少させることができる。細胞を変異体α−シヌクレインで治療することは、家族性パーキンソンに対するモデルである。アデニンからトレオニンへの53位での点突然変異は、α−シヌクレインミスフォールディングをもたらす。その後、誤って折り畳まれたα−シヌクレインは、不溶性繊維に凝集して、レビー小体を形成する。従って、本発明の組成物は、神経炎症、タンパク質ミスフォールディング及び/または環境暴露の結果である神経変性障害の治療または予防に有用であり得る。本発明の組成物は、家族性パーキンソンの治療に使用することができる。NFκBプロモーターの活性化は、TLR4リガンドを介して媒介される。TLR4は、マウスモデルMPTPにおいて細胞死を媒介することが知られ、パーキンソン病を模擬する。本発明の組成物を使用して、TLR4シグナル伝達がNFκBプロモーターを活性化する能力を阻害することができる。PDに対して特に関連のあるもので、TLR2及びTLR4の両方は、PD患者の脳で上方制御されることが分かった[27]。さらに、α−synは、TLR2のリガンドとして記載されており[28]、HEK−TLR4細胞を用いて、α−synがTLR4のリガンドでもあることを実証した。
【0057】
本発明の組成物は、リポ多糖(LPS)によって誘発することができる、炎症性サイトカイン、例えば、IL−6の分泌を減少させる。LPSによる細胞の処理は、環境因子に起因するパーキンソン病を模擬する。本発明の組成物を使用して、IL−6分泌を減少させることができる。本発明の組成物は、環境性パーキンソン病の治療に使用することができる。
【0058】
本発明の組成物によって治療される神経変性疾患の例としては、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症、例えば、レビー小体、脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害及び大脳皮質基底核変性症が挙げられる。本発明の組成物によって治療されるさらなる神経変性疾患は、進行性炎症性ニューロパチーである。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、高齢患者で発症する神経変性障害の治療に有効であり得る。実施例は、本発明の組成物が、65歳以上の患者で圧倒的に診断されるパーキンソン病を治療することができることを示す。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、65歳以上の患者を治療するものである。他のある特定の実施形態では、患者は、40〜65歳である。他の実施形態では、患者は、40歳を超える。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、老齢に関連する疾患、例えば、50歳後に診断された疾患の治療に使用される。
【0060】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、タンパク質、特に、誤って折り畳まれたタンパク質の蓄積によって媒介または特徴付けられる神経変性障害の治療に使用される。
【0061】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、灰白質のニューロン損失に関連する神経変性障害の治療に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、白質病変に関連しない神経変性障害を治療するものである。
【0062】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、永続的症状に関連する神経変性障害の治療に使用される。
【0063】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、自己免疫障害でない神経変性障害の治療に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症でない神経変性障害の治療に使用される。
【0064】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、特に、神経変性障害の治療において、ニューロン死の低減に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、特に、神経変性障害の治療において、ニューロンの保護に使用される。
【0065】
本発明の組成物の神経保護特性は、実施例に示すように、組成物が、神経変性障害の発症または進行の予防または遅延に特に有効であり得ることを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の発症または進行の遅延に使用される。
【0066】
微生物叢−腸−脳軸の調節
腸と脳の間の通信(微生物叢−腸−脳軸)は、双方向神経液性通信システムを介して生じる。腸に住む微生物叢が、脳の発達を調節し、微生物叢−腸−脳軸を介して行動表現型を産生できることが最近のエビデンスにより示されている。実際、多くの論評が、中枢神経系機能性の維持における微生物叢−腸−脳軸の役割を示唆し、中枢神経系障害及び状態の発症における微生物叢−腸−脳軸の機能不全を含意する[17]、[20]、[29]。
【0067】
脳と腸の間の双方向通信(すなわち、腸−脳軸)は、中枢神経系、神経内分泌及び神経免疫系、例えば、視床下部−下垂体−副腎皮質(HPA)軸、自律神経系(ANS)の交感神経及び副交感神経アーム、例えば、腸管神経系(ENS)及び迷走神経、及び腸内微生物叢を含む。
【0068】
実施例に示すように、本発明の組成物は、微生物叢−腸−脳軸を調節し、神経変性障害に関連する細胞死を減少させることができる。したがって、本発明の組成物は、神経変性障害、特に、微生物叢−腸−脳軸の機能不全に関連するこれらの障害及び状態の治療または予防に有用であり得る。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群;多発性硬化症;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患;プリオン病;脊髄小脳変性症;脊髄性筋萎縮症;認知症;例えば、レビー小体;脳血管性及び前頭側頭型認知症;原発性進行性失語;軽度認知障害;HIV関連認知障害、及び大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される疾患または状態の治療または予防に有用であり得る。
【0070】
本発明の組成物は、慢性疾患の治療または予防、他の治療法(例えば、レボドパ、ドーパミン作動薬、MAO−B阻害剤、COMT阻害剤、グルタミン酸拮抗薬、及び/または抗コリン薬による治療)に反応しなかった患者における疾患の治療または予防、及び/または微生物叢−腸−脳軸の機能不全に関連する組織の損傷及び症状の治療または予防に特に有用であり得る。
【0071】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、CNSを調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、自律神経系(ANS)を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腸管神経系(ENS)を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、視床下部、下垂体、副腎皮質(HPA)軸を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経内分泌経路を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経免疫経路を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、CNS、ANS、ENS、HPA軸及び/または神経内分泌及び神経免疫経路を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の代謝産物及び/または腸透過性のレベルを調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性システムを調節する。
【0072】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、神経系によって調節される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、中枢神経系のシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、感覚ニューロンにおけるシグナル伝達を調節する。他の実施形態では、本発明の組成物は、運動ニューロンにおけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ANSにおけるシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態では、ANSは、副交感神経系である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、迷走神経のシグナル伝達を調節する。他の実施形態では、ANSは、交感神経系である。他の実施形態では、本発明の組成物は、腸管神経系におけるシグナル伝達を調節する。ある特定の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、胃腸管の管腔内容物に直接反応する。他の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、管腔内細菌によって産生された神経化学物質に間接的に反応する。他の実施形態では、ANS及びENSニューロンのシグナル伝達は、管腔内細菌または腸内分泌細胞によって産生された神経化学物質に反応する。ある特定の好ましい実施形態では、ENSのニューロンは、CNSの機能に影響を及ぼす迷走神経求心性を活性化する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腸クロム親和性細胞の活性を調節する。
【0073】
神経変性疾患
タウオパチーは、ヒト脳内の神経原線維またはグリア原線維のもつれにおけるタウタンパク質の病理学的凝集に関連する神経変性疾患である。アルツハイマー病は、タウ病理学の一例である。シヌクレイノパチー(α−シヌクレイノパチーとも呼ばれる)は、ニューロン、神経線維またはグリア細胞におけるα−シヌクレインの凝集の異常蓄積によって特徴付けられた神経変性疾患である。パーキンソン病は、シヌクレイノ病理学の一例である。
【0074】
これらの2つの病理学の間には、臨床的及び病理学的な重複が存在する。パーキンソン病患者は、認知症を頻繁に有し、アルツハイマー病患者は、パーキンソニズムが現れることが多い[30]。例えば、進行性核上性麻痺(スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群としても知られる)は、タウ病理学を有するが、際立ったパーキンソニズムももたらす[31]。パーキンソニズムを引き起こすことで知られるLRRK2の突然変異は、シヌクレイン、タウのどちらもないか、または両方のタンパク質の蓄積に関連する[32]。
【0075】
レビー小体病(LBD)は、高齢者における認知症の最も一般的な原因のうちの1つである神経変性疾患である。LBDは、タウ病理学とシヌクレイン病理学の間の連続体の存在を例示する。LBDは、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、及びアルツハイマー病と臨床的及び病理学的な特徴を共有する[30]。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、タウオパチー及び/またはシヌクレイノパチーの治療または予防に有用であり得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、タウオパチーの治療または予防に有用であり得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、シヌクレイノパチーの治療または予防に有用であり得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズム;アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群;及び認知症;例えば、レビー小体;脳血管性及び前頭側頭型認知症からなる群から選択される疾患または状態の治療または予防に有用であり得る。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病、例えば、進行性核上性麻痺、進行性核上性麻痺、スティール・リチャードソン・オルシェフスキー症候群、正常圧水頭症、脳血管性または動脈硬化性パーキンソニズム及び薬物誘発性パーキンソニズムの治療または予防に有用であり得る。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病、例えば、ベンソン症候群の治療または予防に有用であり得る。さらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、認知症;例えば、レビー小体;脳血管性及び前頭側頭型認知症の治療または予防に有用であり得る。
【0078】
パーキンソン病
パーキンソン病は、神経細胞の異種集団(ドーパミン産生細胞)の変性によって神経病理学的に特徴付けられた一般的な神経変性疾患である。パーキンソン病の臨床診断には、運動緩慢、及び以下の中核症状:安静時振戦;筋硬直及び姿勢反射障害のうちの少なくとも1つを必要とする。疾患の進行中に提示または発症し得る他の兆候及び症状は、自律神経障害(唾液漏、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、多汗症)、睡眠障害及び嗅覚または温度覚の乱れである。パーキンソン病は、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続し得る神経変性疾患である。従って、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の治療または予防に使用される。
【0079】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、パーキンソン病の治療または予防方法に使用される、Roseburia属の細菌株を含む、組成物を提供する。Roseburia属の細菌株を含む組成物は、パーキンソン病のモデルにおける運動及び認知機能を改善し得る。Roseburia株による治療は、中枢、自律、及び腸管神経系におけるシグナル伝達を調節し得る;HPA軸経路の活性を調節し得る;神経内分泌及び/または神経免疫経路を調節し得る;対象の代謝産物、炎症マーカー、及び/または腸透過性のレベルを調節し得る、これらは全て、パーキンソン病の神経病理学に関与している。好ましい実施形態では、本発明は、パーキンソン病の治療または予防方法に使用される、Roseburia hominis種の細菌株を含む組成物を提供する。Roseburia hominisを用いる組成物は、パーキンソン病の治療に特に有効であり得る。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の症状のうちの1つ以上を予防、減少、または軽減する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の1または2以上の中核症状を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における運動緩慢を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における安静時振戦;筋硬直及び/または姿勢反射障害を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、自律神経障害(唾液漏、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、多汗症)、睡眠障害及び嗅覚または温度覚の乱れから選択される、パーキンソン病の進行に関連する1または2以上の症状を予防、減少、または軽減する。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病と共存するうつ症状を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、言語記憶及び/または遂行機能を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、注意、作動記憶、言語流暢性及び/または不安を改善する。
【0082】
他の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病と共存する認知機能不全を予防、減少、または軽減する。
【0083】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の進行を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、後の運動合併症を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、後の運動症状の変動を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ニューロンの欠損を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン型認知症(PDD)の症状を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、遂行機能、注意及び/または作動記憶の障害を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達障害を予防、減少、または軽減する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断尺度に従って、パーキンソン病の症状を改善する。ある特定の実施形態では、パーキンソン病における運動機能の症状の改善を評価する検査は、統一パーキンソン病評価尺度である。特に、UPDRS IIは、日常生活の活動を考慮し、UPDRS IIIは、運動検査を考慮する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症候性または診断検査及び/または尺度に従って、PDDに関連する症状を改善する。ある特定の実施形態では、検査または尺度は、ホプキンズ言語学習検査−改訂版(HVLT−R);デリスカプラン実行機能システム(D−KEFS)色単語緩衝試験;ハミルトンうつ病評価尺度(HAM−D 17;うつ病);ハミルトン不安評価尺度(HAM−A;不安)及び統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS;PD症状の重篤度)から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神及び神経障害を評価するための臨床包括的印象−包括的改善(CGI−I)尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病を有する対象の包括的、社会的、及び職業的障害に対して肯定的効果を示す。
【0087】
アルツハイマー病及び認知症
DSM−5では、用語「認知症」は、用語「重度神経認知障害」及び「軽度神経認知障害」と置き換えられた。神経認知障害は、異種クラスの精神疾患である。最も一般的な神経認知障害は、アルツハイマー病、続いて、脳血管性認知症、またはその2つの混合形態である。他の形態の神経変性障害(例えば、レビー小体病、前頭側頭型認知症、パーキンソン型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)は、認知症に伴う。
【0088】
また、アルツハイマー病及び認知症は、ニューロンの欠損によって特徴付けられるため、本発明の組成物の実施例に示す神経保護及び神経増殖効果は、それらが、これらの状態の治療または予防に有用であり得ることを示す。
【0089】
DSM−5下の認知症に対する症状の基準は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域におけるパフォーマンスの前のレベルからの著しい認知機能低下のエビデンスである。認知欠損は、日常活動の独立性に干渉しなければならない。加えて、認知欠損は、譫妄の状況の中で排他的には生じず、かつ、別の精神障害(例えば、MDDまたは統合失調症)によって良く説明されない。
【0090】
一次症状に加えて、神経変性障害を有する対象は、動揺、攻撃性、うつ病、不安、無気力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れを含む行動及び精神症状を示す。
【0091】
神経変性障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続し得る。従って、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経変性障害の治療または予防に使用される。好ましい実施形態では、神経変性障害は、アルツハイマー病である。他の実施形態では、神経変性障害は、脳血管性認知症;混合型アルツハイマー病及び脳血管性認知症;レビー小体病;前頭側頭型認知症;パーキンソン型認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群から選択される。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象における神経変性障害の症状のうちの1つ以上を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における認知機能低下の発生を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域における神経変性障害を有する対象のパフォーマンスのレベルを改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、動揺、攻撃性、うつ病、不安、無気力、精神病及び睡眠覚醒サイクルの乱れから選択される神経変性障害に関連する1または2以上の行動及び精神症状の発生を予防、減少、または軽減する。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、前臨床段階において疑われる病原性メカニズムに介入することで、症候性疾患を予防、減少、または軽減する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、症状進行の減速または停止による疾患緩和を改善する。いくつかの実施形態では、症状進行の減速または停止は、基になる神経病理学的プロセスを遅延するエビデンスと相関する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、強化認知及び機能改善を含む、神経変性障害の症状を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、認知症(BPSD)の行動及び精神症状を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を有する対象が日常活動に着手する能力を改善する。
【0094】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能の両方を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知エンドポイントを改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における機能的エンドポイントを改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における認知及び機能的エンドポイントを改善する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病を有する対象における全体臨床反応(グローバルエンドポイント)を改善する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症候性または診断検査に従って、神経変性障害の症状を改善する。ある特定の実施形態では、アルツハイマー病(及び他の神経変性障害)の症状の改善を評価する検査は、客観的認知、日常生活動作、変化の総合評価、健康に関連した生活の質の検査、及び神経変性障害の行動及び精神症状を評価する検査から選択される。
【0096】
ある特定の実施形態では、症状の改善の評価のための客観的認知検査は、アルツハイマー病評価尺度−認知副尺度(ADAS−cog)、及び古典的なADAS尺度を使用する。ある特定の実施形態では、認知の症状の改善は、アルツハイマー病で使用される神経生理学的試験用バッテリー(NTB)を用いて評価される。
【0097】
いくつかの実施形態では、変化の総合評価検査は、精神及び神経障害を評価するための臨床包括的印象−包括的改善(CGI−I)尺度を使用する。いくつかの実施形態では、包括的尺度は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC plus)である。いくつかの実施形態では、包括的尺度は、アルツハイマー病共同研究ユニットによる変化に対する臨床医の包括的印象(ADCS−CGIC)である。
【0098】
ある特定の実施形態では、健康に関連した生活の質の尺度は、アルツハイマー病関連QOL(ADRQL)及びQOL−アルツハイマー病(QOL−AD)である。
【0099】
ある特定の実施形態では、神経変性障害の行動及び精神症状を評価する検査は、アルツハイマー病評価尺度(BEHAVE−AD);認知症の行動評価尺度(BRSD);神経精神症状評価表(NPI);及びコーエン・マンスフィールド激越評価表(CMAI)における行動病理学から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を治療する別の治療法と併用する場合に、神経変性障害の予防、減少、または軽減に特に有効である。ある特定の実施形態では、かかる治療法には、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))及びリバスチグミン(Exelon(登録商標))、及びメマンチンが含まれる。
【0101】
神経化学的因子、神経ペプチド及び神経伝達物質及び微生物叢−腸−脳軸
上に概説されたように、微生物叢−腸−脳軸は、多くの異なる生理系によって調節される。微生物叢−腸−脳軸は、多くのシグナル伝達分子によって調節される。これらのシグナル伝達分子レベルの変化は、神経変性疾患をもたらす。本発明者らによって行われた実験は、Roseburia種、特に、Roseburia hominisの投与が、インドール及びキヌレニンのレベルを調節することができることを示唆する。これらの代謝産物の調節異常は、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病をもたらし得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳内モノアミン及びそれらの代謝産物のレベルを調節する。好ましい実施形態では、代謝産物は、キヌレニンである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、キヌレニンを調節する。これは、トリプトファン代謝の主要経路であり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)産生への経路として機能する。キヌレニンは代謝されて、神経活性化合物、例えば、キヌレン酸(KYNA)及び3−ヒドロキシ−1−キヌレニン(3−OH−1−KYN)になり、さらなるステップで、キノリン酸(QUIN)になることができる。キヌレニン経路の調節異常は、免疫系の活性化、及び潜在的に神経毒性な化合物の蓄積をもたらし得る。キヌレニン代謝の変化は、パーキンソン病の発症に関与し得る。キヌレニンレベルは、PDを有する患者の前頭皮質、被殻、及び黒質緻密部において減少することが示されている[33]。従って、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の治療におけるキヌレニンレベルの増加に使用される。
【0103】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の組成物は、キヌレニンレベルを増加させることができる。キヌレニンレベルの増加は、ヒトドーパミン作動性神経芽腫細胞株におけるMPP+誘発ニューロン細胞死をインビトロで減衰することが示されている[34]。ある特定の実施形態では、キヌレニン及びキヌレン酸は、GIアリール炭化水素受容体(Ahr)及びGPR35受容体を活性化することができる。Ahr受容体の活性化は、IL−22産生を誘発し、局所炎症を阻害することができる。GPR35の活性化は、イノシトール三リン酸の産生、及びCa2+動員を誘発する。
【0104】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、インドールのレベルを調節する。好ましい実施形態では、代謝産物は、キヌレニンである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、トリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニンを調節する。
【0105】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、神経化学的因子、神経ペプチド、及び神経伝達物質のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経化学的因子、神経ペプチド、及び神経伝達物質のレベルを調節する。したがって、ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、CNS生化学を直接変える。
【0106】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、γ−アミノ酪酸(GABA)のレベルによって調節される。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを調節する。GABAは、ニューロン興奮性を減少させる抑制性神経伝達物質である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを増加させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABAレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、GABA作動性神経伝達を変更する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、中枢神経系の異なる領域におけるGABA転写レベルを調節する。ある特定の実施形態では、由来GABAは、血液脳関門を交差し、神経伝達に直接影響を与える。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、海馬、扁桃体及び/または青斑核におけるGABAの減少をもたらす。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、皮質領域におけるGABAの増加をもたらす。
【0107】
免疫応答
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、免疫応答及び炎症性因子及びマーカーの変更によって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、免疫応答を調節し得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、循環神経免疫シグナル伝達分子の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、炎症性サイトカイン産生及び炎症を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症状態を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、IL−6産生及び分泌を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、NFκBプロモーターの活性化を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、強力な炎症誘発性エンドトキシンリポ多糖(LPS)によるIL−6産生の活性化を調節することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、LPS及びα−シヌクレイン変異タンパク質、例えば、A53TによるNFκBプロモーターの活性化を調節することができる。サイトカインの循環レベルの増加は、様々な神経変性障害、例えば、パーキンソン病、認知症及びアルツハイマー病に密接に関連する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の治療において、IL−6レベル及び/またはNFκBレベルの低減に使用される。
【0108】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、代謝産物のレベルによって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、微生物叢代謝産物の全身レベルを調節する。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、短鎖脂肪酸(SCFA)のレベルを調節する。ある特定の実施形態では、SCFAのレベルは、増加または減少する。いくつかの実施形態では、SCFAは、酪酸(BA)(または酪酸)である。いくつかの実施形態では、SCFAは、プロピオン酸(PPA)である。いくつかの実施形態では、SCFAは、酢酸である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、SCFAが血液脳関門を交差する能力を調節する。
【0109】
ヒストンアセチル化及び脱アセチル化は、遺伝子発現の重要なエピジェネティック調節因子である。ヒストンアセチル化及び脱アセチル化の不均衡は、アポトーシスをもたらし得る。かかるヒストン脱アセチル化酵素の調節異常は、加齢による神経変性疾患に関連する病因、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び認知機能低下に関与していた[35]。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を調節することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を減少することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストンアセチラーゼ活性を減少することができる。
【0110】
神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病及び筋萎縮性側索硬化症を有する患者は、高レベルの脂質過酸化を示す。脂質は、活性酸素種による酸化に対して脆弱であり、脳は、多価不飽和脂肪酸が豊富である。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脂質過酸化を調節することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脂質過酸化を減少することができる。活性酸素種に起因する酸化的損傷の減少を使用して、早期の神経変性疾患を標的にすることができる。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、早期の神経変性の治療に使用される。また、したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の発症の予防に使用される。かかる実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害を発症するリスクがあると同定された患者に使用されてよい。
【0111】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、腸透過性のレベルによって調節される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管上皮の完全性を変更する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の透過性を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の防御機能及び完全性を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管運動性を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管内腔から血流への代謝産物及び炎症性シグナル伝達分子の転座を調節する。
【0112】
微生物叢−腸−脳軸のシグナル伝達は、胃腸管中の微生物叢組成物によって調節される。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管の微生物叢組成物を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、毒性代謝産物(例えば、LPS)の微生物叢及び関連の増加を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管中のClostridiumのレベルを調節する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、胃腸管中のClostridiumのレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Campylobacter jejuniのレベルを減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、有害な嫌気性細菌の増殖、及びこれらの細菌によって産生された神経毒の産生を調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Lactobacillus及び/またはBifidobacteriumの微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Sutterella、Prevotella、Ruminococcus属及び/またはAlcaligenaceaeファミリーの微生物叢レベルを調節する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、Lactobacillus plantarum及び/またはSaccharomyces boulardiiのレベルを増加させる。
【0113】
脳損傷
実施例は、本発明の組成物が、神経保護であり、HDAC阻害活性を有することを示している。HDAC2は、脳卒中からの機能回復の重要な標的であり[36]、HDAC阻害は、白質傷害を予防することができるため[37]、本発明の組成物は、脳損傷の治療に有用であり得る。
【0114】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、脳損傷は、外傷性脳損傷である。いくつかの実施形態では、脳損傷は、後天性脳損傷である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、外傷がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳出血がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳炎がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳低酸素症がもたらす脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳無酸素症がもたらす脳損傷の治療に使用される。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の治療に使用される。実施例に示す効果は、脳卒中の治療に特に関連する。脳卒中は、脳の少なくとも一部への血流が遮断されると発生する。脳組織に酸素及び栄養素を提供し、脳組織から老廃物を除去するための血液の十分な供給がなくなると、脳細胞は、急速に死に始める。脳卒中の症状は、不十分な血流の影響を受ける脳の領域に依存する。症状には、麻痺、痺れまたは筋肉の衰弱、平衡感覚障害、眩暈、突然の激しい頭痛、発語障害、記憶喪、推論能力の喪失、突然の意識混濁、視力障害、昏睡または死さえが含まれる。脳卒中は、脳発作または脳血管障害(CVA)とも呼ばれる。十分な血流が短時間で回復すれば、脳卒中の症状は短い。しかしながら、不十分な血流がかなりの期間続くと、症状は永続的になり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、脳虚血である。脳虚血は、代謝要求を満たすための脳の組織への血流が不十分な場合に生じる。いくつかの実施形態では、脳虚血は、限局性脳虚血、すなわち、脳の特定領域に限局している。いくつかの実施形態では、脳虚血は、広範囲の脳虚血、すなわち、脳組織の広域を包含している。局所脳虚血は、脳血管が部分的または完全に閉塞され、脳の特定領域への血流が低下している場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、限局性脳虚血は、虚血性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、血栓性、すなわち、脳血管で発症し、血流を制限または遮断する血栓または血餅に起因する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、血栓性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、塞栓性、すなわち、血流を介して移動し、その起点から離れた部位で血流を制限または遮断する塞栓または付着していない塊に起因する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は、塞栓性脳卒中である。広範囲の脳虚血は、脳全体への血流が遮断または減少している場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、広範囲の脳虚血は、低灌流に起因する、すなわち、発作による。いくつかの実施形態では、広範囲の脳虚血は、心停止の結果である。
【0117】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳虚血を罹患しているを罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、限局性脳虚血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、虚血性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、血栓性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、塞栓性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、広範囲の脳虚血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、低灌流を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、心停止を罹患している。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、限局性脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、虚血性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、血栓性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、塞栓性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、広範囲の脳虚血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、低灌流の治療に使用される。
【0119】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、出血性脳卒中である。出血性脳卒中は、脳内または脳周囲の出血に起因し、脳の細胞及び組織への腫れ、圧力及び損傷をもたらす。出血性脳卒中は、概して、弱くなった血管が破裂し、脳周囲に出血した結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳内出血、すなわち、脳組織自体内の出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、実質内出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、脳室内出血に起因する。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、くも膜下出血、すなわち、脳組織の外で発生するが、まだ頭蓋内の出血である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳アミロイド血管症の結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動脈瘤の結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動静脈奇形(AVM)の結果である。
【0120】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、出血性脳卒中を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、実質内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳室内出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、くも膜下出血を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳アミロイド血管症を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳動脈瘤を罹患している。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳AVMを罹患している。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、出血性脳卒中の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、実質内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳室内出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、くも膜下出血の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳アミロイド血管症の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳動脈瘤の治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳AVMの治療に使用される。
【0122】
中断期間後の脳への十分な血流の回復は、脳卒中に関連する症状の軽減に有効であるが、逆説的に、脳組織へのさらなる損傷をもたらし得る。中断期間中、患部組織は、酸素及び栄養素の欠如に苦しみ、血流の突然の回復は、酸化ストレスの誘発を通じて、炎症及び酸化的損傷をもたらし得る。これは、再灌流障害として知られ、脳卒中の後だけでなく、心臓発作の後でも十分に立証されており、すなわち、虚血もしくは酸欠の期間後に血液供給が組織に戻る場合の他の組織損傷である。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳卒中がもたらす再灌流障害を罹患している。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中がもたらす再灌流障害の治療に使用される。
【0123】
一過性脳虚血発作(TIA)は、軽度の脳卒中としばしば呼ばれ、より重篤な脳卒中に対する認識された警告サインである。従って、1または2以上のTIAを罹患している対象は、脳卒中のリスクがより高い。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、TIAを罹患している。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAの治療に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAを罹患している対象における脳損傷の治療に使用される。
【0124】
高血圧、高血中コレステロール、脳卒中の家族歴、心臓病、糖尿病、脳動脈瘤、動静脈奇形、鎌状赤血球症、血管炎、出血障害、非ステロイド性抗炎症薬の使用(NSAID)、たばこの喫煙、大量のアルコール飲酒、違法薬物使用、肥満、身体活動不足、及び不健康な食事は全て、脳卒中のリスク因子であると考えられる。特に、血圧の低減が、虚血性及び出血性脳卒中の両方を予防することが決定的に示されている[38、39]。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の少なくとも1つのリスク因子を有する対象における脳損傷の治療に使用される。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の2つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の3つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の4つのリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の5つ以上のリスク因子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血圧を有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血中コレステロールを有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の家族歴を有する。いくつかの実施形態では、対象は、心臓病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳動脈瘤を有する。いくつかの実施形態では、対象は、動静脈奇形を有する。いくつかの実施形態では、対象は、血管炎を有する。いくつかの実施形態では、対象は、鎌状赤血球症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、出血障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、非ステロイド性抗炎症薬の使用歴(NSAID)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、たばこを喫煙する。いくつかの実施形態では、対象は、大量のアルコールを飲酒する。いくつかの実施形態では、対象は、違法薬物を使用する。いくつかの実施形態では、対象は、肥満である。いくつかの実施形態では、対象は、体重過剰である。いくつかの実施形態では、対象は、身体活動不足を有する。いくつかの実施形態では、対象は、不健康な食事を有する。
【0125】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用であり得ることを示す。従って、本発明の組成物は、脳損傷、例えば、脳卒中のリスクがある対象に投与した場合、脳損傷の治療に特に有用であり得る。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、潜在的な脳損傷、好ましくは、脳卒中に起因する損傷の低減に使用される。組成物は、潜在的な脳損傷が発生する前に投与した場合、特に、脳損傷のリスクがあると同定された患者に投与した場合に起因した損傷を低下させ得る。
【0127】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用であり得ることを示す。従って、本発明の組成物は、脳損傷、例えば、脳卒中の後に対象に投与した場合の脳損傷の治療に特に有用であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動障害の低減によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動機能の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、筋力の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、記憶の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、社会的認識の改善によって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経学的機能の改善によって脳損傷を治療する。
【0129】
脳損傷の治療は、例えば、症状の重篤度の軽減を指し得る。また、脳損傷の治療は、脳卒中の後の神経学的障害の低減を指し得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、例えば、脳卒中のリスクがあると同定された患者において、脳卒中の発症に先立って対象に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、脳卒中が発生した後、例えば、回復中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の急性期(すなわち、脳卒中後の1週間まで)中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の亜急性期(すなわち、脳卒中後の1週間から3ヵ月まで)中に提供され得る。脳卒中の治療に使用される本発明の組成物は、回復の慢性期(脳卒中後の3ヵ月から)中に提供され得る。
【0130】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、二次的作用物質と併用される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、アスピリンまたは組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と併用される。他の二次的作用物質には、他の抗血小板物質(例えば、クロピドグレル)、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ワルファリン、アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバロキサバン)、抗高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬またはアルファ遮断薬)またはスタチンが含まれる。本発明の組成物は、二次的作用物質に対する患者の反応を改善し得る。
【0131】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織に対する虚血の影響を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する組織に対する損傷の量を減少させる。ある特定の実施形態では、虚血によって損傷した組織は、脳組織である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死または壊死細胞数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、アポトーシスまたはアポトーシス細胞数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死及びアポトーシス細胞の数を減少させる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織の回復を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランスの速度を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランスの有効性を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織内の細胞の置換及び/または再生を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織内の細胞の置換及び/または再生を改善する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、(例えば、生検時に)組織の全体組織構造を改善する。
【0132】
投与の形態
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にするために胃腸管に投与されるべきである。概して、本発明の組成物は、経口で投与されるが、これらは、経直腸的に、鼻腔内に、または頬側もしくは舌下経路を介して投与されてよい。
【0133】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、泡として、スプレーまたはゲルとして投与されてよい。
【0134】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、坐薬、例えば、肛門坐薬として、例えば、カカオ脂(ココアバター)、合成硬質脂肪(例えば、坐剤用基材、ウィテップゾール)、グリセロ−ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石鹸グリセリン組成物の形態で投与されてよい。
【0135】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、チューブ、例えば、鼻腔栄養チューブ、経口胃チューブ、胃チューブ、経空腸チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、またはポート、例えば、胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを付与する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
【0136】
本発明の組成物は、一度で投与されてよく、または治療レジメンの部分として逐次的に投与されてよい。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、連日投与されるべきである。
【0137】
本発明のある特定の実施形態では、本発明による治療は、患者の腸内微生物叢のアセスメントを伴う。治療は、本発明の株の送達及び/またはそれによる部分的もしくは全体的定着が達成されず、その結果、効能が観察されないことになるとき、繰り返されてよく、あるいは、治療は、送達及び/または部分的もしくは全体的定着が成功裏でありかつ効能が観察されるときに中止されてよい。
【0138】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、妊娠した動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに、その子宮内の胎児及び/または生まれた後の小児において発症する炎症性または自己免疫疾患を予防するために投与されてよい。
【0139】
本発明の組成物は、神経変性疾患と診断された、あるいは神経変性疾患のリスクがあると同定された患者に投与されてよい。組成物は、健常な患者における神経変性疾患の発症を予防するための予防対策として投与されてもよい。
【0140】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与されてよい。例えば、患者は、Roseburia、特に、Roseburia hominisによる定着が縮小しているか、または定着がないかであり得る。
【0141】
本発明の組成物は、食品、例えば、栄養補助食品として投与されてよい。
【0142】
概して、本発明の組成物は、ヒトの治療のためのものであるが、単胃哺乳動物、例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギを含めた動物を治療するのに使用されてよい。本発明の組成物は、動物の成長及びパフォーマンスを向上させるのに有用であり得る。動物に投与されるとき、経口胃管栄養法が使用されてよい。
【0143】
組成物
概して、本発明の組成物は、細菌を含む。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、凍結乾燥形態で調合される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルを含んでいてよい。
【0144】
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、確立された手順であり、関連のガイダンスは、例えば、参照文献[40〜42]において入手可能である。
【0145】
あるいは、本発明の組成物は、生きている、活性な細菌培養物を含んでいてよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、不活性化されていない、例えば、熱不活性化されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、例えば、熱殺傷されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、弱毒化されていない、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、不活性化されていない及び/または弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、生存可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における細菌株は生存可能であり、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0147】
いくつかの実施形態では、組成物は、生きている細菌株と殺傷されている細菌株との混合物を含む。
【0148】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化されている。カプセル化は、目標箇所に送達するまで、例えば、pHの変化によって引き起こされる場合がある化学的または物理的刺激、例えば、圧力、酵素活性または物理的崩壊による破断を通しての劣化から組成物を保護する。いずれの適切なカプセル化方法が使用されてもよい。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリクス内への取り込み、固体担体表面への付着または吸着、凝集によるまたは架橋剤を用いた自己会合、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの後の機械的拘束が挙げられる。本発明の組成物を調製するのに有用であり得るカプセル化についてのガイダンスは、例えば、参照文献[43]及び[44]において入手可能である。
【0149】
組成物は、経口で投与されてよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。カプセル化された製品が好ましい、なぜなら、Roseburiaが嫌気性生物であるからである。他の成分(例えば、ビタミンCなど)が、インビボでの送達及び/または部分的もしくは全体的定着並びに生存を改善するように脱酸素剤及びプレバイオティック基質として含まれていてよい。あるいは、本発明のプロバイオティック組成物は、食品もしくは栄養製品、例えば、ミルクもしくはホエイベースの発酵乳製品として、または医薬製品として経口で投与されてよい。
【0150】
組成物は、プロバイオティックとして調合されてよい。
【0151】
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株を含む。治療有効量の細菌株は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または部分的もしくは全体的定着を結果として生じさせるのに十分であり得る。
【0152】
例えば、ヒト成人への細菌の好適な1日量は、約1×10
3〜約1×10
11個のコロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10
7〜約1×10
10CFU;別の例において、約1×10
6〜約1×10
10CFUであってよい。
【0153】
ある特定の実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約1×10
6〜約1×10
11CFU/g;例えば約1×10
8〜約1×10
10CFU/gの量で細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g及び10gであってよい。
【0154】
典型的には、プロバイオティック、例えば本発明の組成物は、少なくとも1つの好適なプレバイオティック化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管において分解または吸収されない、非消化性炭水化物、例えば、オリゴ−もしくは多糖、または糖アルコールである。公知のプレバイオティクスとして、市販品、例えば、イヌリン及びトランスガラクト−オリゴ糖が挙げられる。
【0155】
ある特定の実施形態では、本発明のプロバイオティック組成物は、組成物の合計重量に対して約1〜約30重量%(例えば、5〜20重量%)の量でプレバイオティック化合物を含む。炭水化物は、フラクト−オリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクト−オリゴ糖、インスリン、イソマルト−オリゴ糖、ペクチン、キシロ−オリゴ糖(またはXOS)、キトサン−オリゴ糖(またはCOS)、β−グルカン、アラビアガム変性及び耐性デンプン、ポリデキストロース、D−タガトース、アカシアファイバ、イナゴマメ、オート麦、並びにシトラスファイバからなる群から選択されてよい。一態様では、プレバイオティクスは、短鎖フラクト−オリゴ糖(簡潔のために、以下本明細書においてFOSs−c.cと示す)であり;前記FOSs−c.c.は消化性炭水化物ではなく、テンサイ糖の転換によって一般に得られ、3つのグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含んでいる。
【0156】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性障害の治療または予防のための別の治療用化合物と併用される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経保護または神経増殖を調節する栄養補助食品と共に投与される。好ましい実施形態では、栄養補助食品は、栄養ビタミン類を含むかまたはそれらからなる。ある特定の実施形態では、ビタミン類は、ビタミンB6、マグネシウム、ジメチルグリシン(ビタミンB16)、及びビタミンCである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、別のプロバイオティックと組み合わせて投与される。
【0157】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患に対する第2剤の効果の増強に使用される。本発明の組成物の免疫調節効果は、従来の治療、例えば、レボドパ、ドーパミン作動薬、MAO−B阻害剤、COMT阻害剤、グルタミン酸拮抗薬、または抗コリン薬(これらは、本発明の組成物と組み合わせて(逐次または同時に)投与される例示の二次的作用物質である)の影響を脳により受けやすくさせ得る。
【0158】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体を含んでいてよい。かかる好適な賦形剤の例は、参照文献[45]において見出され得る。治療的使用のための許容される担体または希釈剤は、薬剤分野において周知されており、例えば、参照文献[46]において記載されている。好適な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準の薬務に関して選択され得る。医薬組成物は、上記担体、賦形剤または希釈剤として、またはこれに加えて、いずれの好適な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β−ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ガム、例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、及びさらなる香味剤が、医薬組成物において付与されていてよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤が使用されてもよい。
【0159】
本発明の組成物は、食品として調合されてよい。例えば、食品は、例えば、栄養補助食品において、本発明の治療効果に加えて、栄養的利益を付与してよい。同様に、食品は、本発明の組成物の風味を向上するように、または組成物を、医薬組成物よりもむしろ、一般食料とより類似することによって、消費するのにより魅力的であるようにするように調合されてよい。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として調合される。用語「ミルクベースの製品」は、変動する脂肪分を有する、いずれの液体または半固体のミルク−またはホエイベースの製品も意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、いずれの処理もしていない粉ミルク及びホエイからの還元ミルク、または加工品、例えば、ヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であり得る。別の重要な群としては、ミルク飲料、例えば、ホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;ミルク含有食品、例えば、スイーツが挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia属の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburiaの1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia hominis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia hominis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia intestinalis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia intestinalis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0163】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia faecis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia faecis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他の種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia hominis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia hominis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia intestinalis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia intestinalis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、Roseburia faecis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia faecis種の1または2以上の細菌株を含み、いずれの他のRoseburia種からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別のRoseburia種からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0167】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、単一細菌株または種を含有し、いずれの他の細菌株または種を含有しない。かかる組成物は、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の他の細菌株または種を含んでいてよい。かかる組成物は、他の生物種を実質的に含まない培養であってもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia属の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia hominis種の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia intestinalis種の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明は、Roseburia faecis種の単一細菌株を含み、いずれの他の株からの細菌を含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の株からの細菌を含む、治療に使用される組成物を提供する。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1を超える細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45を超える株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3未満の株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同種内からの1〜40、1〜30、1〜20、1〜19、1〜18、1〜15、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜50、2〜40、2〜30、2〜20、2〜15、2〜10、2〜5、6〜30、6〜15、16〜25、または31〜50株を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。本発明は、上記のいずれの組み合わせも含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、組成物は、微生物共同体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、微生物共同体の一部としてRoseburia細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Roseburia細菌株は、腸においてインビボで生きることができる、他の属からの1または2以上の(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15または20の)他の細菌株と組み合わせて存在する。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、異なる属からの細菌株と組み合わせたRoseburiaの細菌株を含む。いくつかの実施形態では、微生物共同体は、単一の生物、例えば、ヒトの糞便試料から得られた2以上の細菌株を含む。いくつかの実施形態では、微生物共同体は、本来は一緒には見られない。例えば、いくつかの実施形態では、微生物共同体は、少なくとも2の異なる生物の糞便試料から得られた細菌株を含む。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、同種、例えば、2の異なるヒトからのものである。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、ヒト乳児及びヒト成人である。いくつかの実施形態では、2の異なる生物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物である。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、株MRx0001と同じ安全性及び治療効果特性を有するが、MRx0001ではない、またはRoseburia hominisでもない細菌株をさらに含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、株Aと同じ安全性及び治療効果特性を有するが、株Aではない、またはRoseburia hominisでもない細菌株をさらに含む。
【0176】
本発明の組成物が1を超える細菌株、種または属を含むいくつかの実施形態では、個々の細菌株、種または属は、別々、同時または逐次投与用であってよい。例えば、組成物は、1を超える細菌株、種もしくは属の全てを含んでいてよく、または細菌株、種もしくは属は、別々に貯蔵されてよく、また、別々に、同時にもしくは逐次的に投与されてよい。いくつかの実施形態では、1を超える細菌株、種または属は、別々に貯蔵されているが、使用前に一緒に混合される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本発明において使用される細菌株は、ヒト成人の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態では、細菌株の全てがヒト成人の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量でのみ存在する。細菌は、ヒト成人の糞便から得られ、本発明の組成物において使用された後に培養されてよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、本発明において使用される細菌株は、ヒト幼児の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態では、細菌株の全てがヒト幼児の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量でのみ存在する。細菌は、ヒト幼児の糞便から得られ、本発明の組成物において使用される前に培養されてよい。
【0179】
上述のように、いくつかの実施形態では、1または2以上のRoseburia細菌株は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。いくつかの実施形態では、組成物における細菌株(複数可)は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。
【0180】
本発明による使用のための組成物は、販売承認を必要としてもしなくてもよい。
【0181】
ある特定の実施形態では、本発明は、前記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、前記細菌株が噴霧乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生きている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存可能でありかつ腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。
【0182】
いくつかの場合では、凍結乾燥されている細菌株は、投与前に再構成される。いくつかの場合では、再構成は、本明細書に記載されている希釈剤の使用による。
【0183】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含んでいてよい。
【0184】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株;及び薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物であって、細菌株が、それを必要とする対象に投与した場合、神経変性障害の治療に十分な量である、医薬組成物を提供する。
【0185】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株;及び薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物であって、細菌株が、神経変性障害の治療または予防に十分な量である、医薬組成物を提供する。
【0186】
ある特定の実施形態では、本発明は、上記医薬組成物であって、細菌株の量が、組成物の重量に対してグラム当たり約1×10
3〜約1×10
11個のコロニー形成単位である、上記医薬組成物を提供する。
【0187】
ある特定の実施形態では、本発明は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0188】
ある特定の実施形態では、本発明は、経口、直腸、皮下、鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0189】
ある特定の実施形態では、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0190】
ある特定の実施形態では、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0191】
ある特定の実施形態では、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β−ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0192】
ある特定の実施形態では、本発明は、防腐剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0193】
ある特定の実施形態では、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0194】
ある特定の実施形態では、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。
【0195】
ある特定の実施形態では、本発明は、組成物が約4℃または約25℃で密閉容器に貯蔵されて容器が50%の相対湿度を有する雰囲気に置かれているとき、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の期間の後に残存している、上記医薬組成物を提供する。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含む密閉容器において提供される。いくつかの実施形態では、密閉容器は、サチェまたはボトルである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含むシリンジにおいて提供される。
【0197】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態では、医薬製剤として提供されてよい。例えば、組成物は、錠剤またはカプセルとして提供されてよい。いくつかの実施形態では、カプセルは、ゼラチンカプセル(「gel−cap」)である。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、経口投与される。経口投与は、嚥下を含んでいてよく、その結果、化合物が、胃腸管に入ることになり、及び/または頬側、舌側、もしくは舌下投与によって化合物が口から直接血流に入ることになる。
【0199】
経口投与に好適な医薬製剤としては、固体プラグ、固体微粒子状物、半固体及び液体(多相及び分散系を含む)、例えば、錠剤;多−またはナノ−粒子状物を含有する軟質または硬質カプセル、液体(例えば、水溶液)、エマルジョンまたは粉末;ロゼンジ(液体が充填されたものを含む);咀嚼剤;ゲル;急速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;並びに頬側/粘膜接着パッチが挙げられる。
【0200】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による腸への本発明の組成物の送達に好適である胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性)である。腸溶性製剤は、組成物の細菌または別の成分が酸感受性である、例えば、胃条件下で分解しやすいとき、特に有用であり得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶性コーティングされた剤形である。例えば、製剤は、腸溶性コーティングされた錠剤または腸溶性コーティングされたカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、経口送達のための従来の腸溶性コーティング、例えば、錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。製剤は、フィルムコーティング、例えば、腸溶性ポリマー、例えば、酸不溶性ポリマーの薄膜層を含んでいてよい。
【0202】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要としない胃耐性である。そのため、いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態では、熱ゲル化材料は、セルロース系材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態では、カプセルは、いずれのフィルム形成ポリマーも含有しないシェルを含む。いくつかの実施形態では、カプセルは、シェルを含み、シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、いずれのフィルム形成ポリマーも含まない(例えば、[47]を参照されたい)。いくつかの実施形態では、製剤は、本質的に腸溶性のカプセル(例えば、Capsugel製Vcaps(登録商標))である。
【0203】
いくつかの実施形態では、製剤は、軟質カプセルである。軟質カプセルは、カプセルシェルに存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールなどの添加のおかげで、ある特定の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチンまたはデンプンベースで製造され得る。ゼラチンベースの軟質カプセルは、様々な供給者から市販されている。例えば、経口または経直腸などの投与方法に応じて、軟質カプセルは、様々な形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長方形または魚雷型であり得る。軟質カプセルは、従来のプロセス、例えば、Schererプロセス、Accogelプロセスまたは液滴もしくは発泡プロセスなどによって製造され得る。
【0204】
培養方法
本発明において使用される細菌株は、例えば、参照文献[48〜50]に詳述されている標準の微生物学的技術を使用して培養され得る。
【0205】
培養に使用される固体または液体培地は、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地として(100ml当たりの近似値):Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO
3(0.4g)、システイン(0.1g)、K
2HPO
4(0.045g)、KH
2PO
4(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NH
4)
2SO
4(0.09g)、MgSO
4・7H
2O(0.009g)、CaCl
2(0.009g)、レザズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p−アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)を挙げることができる。
【0206】
ワクチン組成物に使用される細菌株
本発明者らは、本発明の細菌株が、神経変性障害の治療または予防に有用であることを確認した。これは、本発明の細菌株が宿主免疫系に対して有する効果の結果である可能性が高い。従って、本発明の組成物は、ワクチン組成物として投与した場合、神経変性障害の予防にも有用であり得る。ある特定のかかる実施形態では、本発明の細菌株は、殺傷、不活性化、または弱毒化されてよい。ある特定のかかる実施形態では、組成物は、ワクチンアジュバントを含んでよい。ある特定の実施形態では、組成物は、注射を介して、例えば、皮下注射を介して投与される。
【0207】
総則
本発明の実施は、別途示さない限り、当業者の範囲内の、化学、生化学、分子生物、免疫学及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参照文献[51]及び[52〜58]などを参照されたい。
【0208】
用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」及び「consisting(からなる)」を包含し、例えば、組成物がXを「comprising(含む)」は、Xから排他的になってもよく、またはさらなる何か、例えば、X+Yを含んでいてもよい。
【0209】
数値xに関係する用語「約」は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0210】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0211】
2つのヌクレオチド配列間の百分率の配列同一性への言及は、整列している場合、ヌクレオチドの百分率が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性または配列同一性は、当該技術分野において公知のソフトウエアプログラム、例えば、参照文献[59]のセクション7.7.18に記載されているものを使用して決定され得る。好ましいアラインメントは、12のギャップオープンペナルティ及び2のギャップエクステンションペナルティ、62のBLOSUMマトリクスによるアフィンギャップ検索を使用してSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参照文献[60]に開示されている。
【0212】
特に記述されていない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、方法の開始及び終了時にさらなるステップを含んでいてよく、またはさらなる介在するステップを含んでいてよい。また、ステップは、適切な場合、組み合わされ、省略され、または代替の順序で実施されてよい。
【0213】
本発明の様々な実施形態は本明細書に記載されている。各実施形態では特定されている特徴は、他の特定されている特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を付与してよいことが理解されよう。特に、好適な、典型的なまたは好ましいとして本明細書において強調されている実施形態は、互いに組み合わされてよい(これらが互いに排他的であるときを除く)。
【実施例】
【0214】
本発明を実施するための形態
実施例1−細菌接種原がIL−6分泌を減少させる効能。
概要
炎症性サイトカインの活性化は、神経変性疾患におけるニューロン損傷に関連していた。リポ多糖(LPS)は、炎症性サイトカインIL−6の公知の刺激因子である。ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、LPSと組み合わせて、本発明による細菌株を含む組成物で処理し、IL−6のレベルを調節するそれらの能力を観察した。
【0215】
材料及び方法
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
【0216】
細胞株
MG U373は、悪性腫瘍由来のヒト膠芽腫星状細胞腫であり、Sigma−Aldrich(カタログ番号08061901−1VL)から購入した。MG U373ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL−Glut、1×MEM非必須アミノ酸溶液、及び1×ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M−2279)中で増殖させた。
【0217】
方法
増殖させた後、MG U373細胞を、100,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。細胞を、LPS(1ug/mL)のみまたはMRx0001からの10%の細菌上清と共に、24時間処理した。細胞を未処置培地でインキュベートした対照でも行った。細胞を、MRx0001またはYCFAのみからの10%の細菌上清と共に、24時間処理した。細胞を未処置培地でインキュベートした対照でも行った。その後、無細胞上清を回収し、4℃にて3分間、10,000gで遠心分離した。IL−6は、製造者の指示に従って、Peprotech製のヒトIL−6 ELISAキット(カタログ番号900−K16)を用いて測定した。
【0218】
結果
これらの実験の結果を
図1及び
図9に示す。LPS及び細菌株による神経芽腫細胞の処置は、LPSで処置しなかった対照細胞と同じレベルに、IL−6の分泌レベルの減少をもたらした(
図1)。Roseburia hominisによる神経芽腫細胞の処置は、対照で処置した細胞で観察されたレベルを下回る、IL−6の分泌レベルの減少をもたらした(
図9)。
【0219】
実施例2−細菌接種原がNFκB活性化を減少させる効能
概要
NFκBプロモーターの活性化は、IL−1β、IL−1α、IL−18、TNFα及びIL−6を含む炎症性サイトカインの産生をもたらす。NFκBプロモーターは、TLR4リガンドを刺激することで、α−シヌクレイン及びLPSによって活性化することができる。α−シヌクレインの突然変異、例えば、α−シヌクレインA53Tは、家族性パーキンソンに関与している。LPSによる神経細胞の処置は、環境因子に起因するパーキンソン病を模擬する。本発明による細菌株を含む組成物がNFκBプロモーターの活性化を阻害する能力を調査した。
【0220】
材料及び方法
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
【0221】
細胞株
ヒトHekブルーTLR4は、InvivoGen(カタログ番号hkb−htlr4)から購入した。ヒトHekブルーTLR4を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL−Glut、ノルモシン及び1×HEKブルー選択溶液を補充したDMEM高グルコース(Sigma Aldrich、カタログ番号D−6171)中で増殖させた。
【0222】
方法
増殖させた後、ヒトHekブルー細胞を、25,000個の細胞/ウェルで4連で96ウェルプレートに播種した。一組の細胞を、α−シヌクレイン A53T(1ug/mL)のみ、またはMRx0001由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。第2組の細胞を、LPS(10ng/mL、Salmonella enterica血清型Typhimurium由来、Sigma Aldrich、カタログ番号L6143)のみ、またはMRx0001由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。その後、細胞をスピンダウンし、20ulの上清を200ulのQuanti Blue試薬(InvivoGen、カタログ番号rep−qb2)と混合し、2時間インキュベートし、吸光度を655nmで読み取った。
【0223】
結果
これらの実験の結果を
図2及び3に示す。
図2は、α−シヌクレインによるNFκBプロモーターの活性化が、MRx0001によって阻害されることを示す。
図3は、LPSによるNFκBプロモーターの活性化が、MRx0001によって阻害されることを示す。
【0224】
実施例3−細菌接種原が抗酸化能力を変更する効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物が抗酸化能力を変更する能力を調査した。細菌株の抗酸化能力は、周知のABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))アッセイを用いて確立した。
【0225】
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
【0226】
方法
細菌細胞(10
6個またはそれ以上)を回収し、遠心分離した。それらを、アッセイ緩衝液(ペレット体積の3倍を用いて)中で再懸濁した。懸濁液を氷上で5分間超音波処理した後、12,000×gで10分間スピンダウンした。上清を除去し、製造者の指示に従って、Sigma Aldrichが製造したABTSアッセイキット(コードCS0790)を用いて測定した。
【0227】
結果
これらの実験の結果を
図4に示す。
図4は、MRx0001が、Troloxと比較して、おおよそ1mMの抗酸化能力を有することを示す。
【0228】
実施例4−細菌接種原が脂質過酸化レベルを変更する効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物が脂質過酸化レベルを変更する能力を調査した。チオバルビツール酸反応物質アッセイ(TBAR)を使用して、脂質過酸化の副生成物を測定した。
【0229】
材料及び方法
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
【0230】
方法
細菌細胞(10
6個またはそれ以上)を回収し、遠心分離し、洗浄工程を等張食塩水で行った後、ペレットを塩化カリウムアッセイ緩衝液中で再懸濁した。懸濁液を氷上で10分間超音波処理した後、10,000×gで10分間スピンダウンした。上清を除去し、脂質過酸化レベルを、チオバルビツール酸反応物質アッセイを用いて評価した。
【0231】
結果
実験の結果を
図5に示す。
図5は、MRx0001が、おおよそ18%まで脂質過酸化を阻害することができることを示し、これは、陽性対照であるブチル化ヒドロキシトルエン(1%のw/v)の抗酸化能力よりも高い。
【0232】
実施例5−ヒストン脱アセチル化酵素活性に対する細菌接種原の効能
概要
本発明による細菌株を含む組成物がヒストン脱アセチル化酵素活性を変更する能力を調査した。ヒストン脱アセチル化酵素の調節異常は、加齢による神経変性疾患に関連する病因に関与していた。
【0233】
材料及び方法
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
【0234】
細胞株
細胞株HT−29を使用したのは、ヒストン脱アセチル化酵素が存在するからである。
【0235】
方法
定常期細菌培養の無細胞上清は、遠心分離、及び0.22uMのフィルターの濾過によって単離した。HT−29細胞をコンフルエンスの3日後に使用し、実験を開始する24時間前に1mLのDTSにステップダウンした。HT−29細胞を、DTSで希釈した10%の無細胞上清でチャレンジし、これを放置して、48時間インキュベートした。その後、ヌクレアーゼタンパク質を、Sigma Aldrichヌクレアーゼ抽出キットを用いて抽出し、HDAC活性測定前に試料を急速凍結した。HDAC活性は、Sigma Aldrich(UK)キットを用いて蛍光分析的に評価した。
【0236】
結果
実験の結果を
図6に示す。
図6は、MRx0001が、ヒストン脱アセチル化酵素活性のレベルを減少させることができることを示す。
【0237】
実施例6−細菌中のインドール産生レベル
概要
本発明の細菌がインドールを産生する能力を調査した。インドールは、炎症及び酸化ストレスの弱毒化に関与していた。
【0238】
材料及び方法
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
ATCC 11775は、インドールを産生することが知られる細菌基準株である。
【0239】
方法
定常期の無傷細菌細胞を、6mMのトリプトファンで48時間インキュベートした。酵素トリプトファナーゼを有する細菌種は、インドールを産生する基質として、トリプトファンを利用する。48時間のインキュベーション期間の後、上清を除去し、コバックの試薬に添加し、インドールを定量化した。標準、原液及び試薬は、社内で検証された標準化法を用いて調製した。
【0240】
結果
実験の結果を
図7に示す。
図7は、MRx0001が、おおよそ0.25mMの濃度で、トリプトファンからインドールを産生する能力を有することを示す。
【0241】
実施例7−細菌中のキヌレニン産生レベル
概要
本発明の細菌がキヌレニンを産生する能力を調査した。キヌレニン経路の調節異常は、免疫系の活性化及び潜在的に神経毒性な化合物の蓄積をもたらすことがある。キヌレニン代謝の変化は、パーキンソン病の発症に関与し得る。
【0242】
細菌株
Roseburia hominis MRx0001
DSM 17136は、キヌレニンを産生することが知られるBacteroides copricolaの株である。
【0243】
方法
定常期細菌培養の無細胞上清は、遠心分離、及び0.22uMのフィルターの濾過によって単離し、使用するまで凍結した。キヌレニン標準、原液及び試薬は、社内で検証された標準化法を用いて調製した。試料をトリクロロ酢酸で処理し、10,000×gで4℃にて10分間遠心分離した。上清を回収し、96ウェルプレートに分配した。エールリッヒ試薬をキヌレニン検出に使用し、1:1の比で添加した。
【0244】
結果
実験の結果を
図8に示す。
図8は、MRx0001が、おおよそ50μMの濃度で、キヌレニンを産生する能力を有することを示す。
【0245】
実施例8−安定性試験
本明細書に記載されている少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載されている組成物を、25℃または4℃の密閉容器に貯蔵し、容器を30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の相対湿度を有する雰囲気に置く。1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年後、標準のプロトコルによって決定されるコロニー形成単位で測定したとき、細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が残存する。
【0246】
実施例9−細菌接種原がIL−6分泌を減少させる効能。
概要
炎症性サイトカインの活性化は、神経変性疾患におけるニューロン損傷に関連していた。リポ多糖(LPS)は、炎症性サイトカインIL−6の公知の刺激因子である。ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、LPSと組み合わせて、本発明による細菌株を含む組成物で処理し、IL−6のレベルを調節するそれらの能力を観察した。
【0247】
材料及び方法
細菌株
Roseburia intestinalis株A
Roseburia faecis株B
【0248】
細胞株
MG U373は、悪性腫瘍由来のヒト膠芽腫星状細胞腫であり、Sigma−Aldrich(カタログ番号08061901−1VL)から購入した。MG U373ヒト膠芽腫星状細胞腫細胞を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL−Glut、1×MEM非必須アミノ酸溶液、及び1×ピルビン酸ナトリウムを補充したMEM(Sigma Aldrich、カタログ番号M−2279)中で増殖させた。
【0249】
方法
増殖させた後、MG U373細胞を、100,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。細胞を、以下の条件で24時間処理した:
・LPS(1ug/mL)
・株A由来の10%の細菌上清を有するLPS
・株B由来の10%の細菌上清を有するLPS
・YCFA培地を有するLPS
・YCFA
【0250】
細胞を未処置培地でインキュベートした対照でも行った。
【0251】
その後、無細胞上清を回収し、4℃にて3分間、10,000gで遠心分離した。IL−6は、製造者の指示に従って、Peprotech製のヒトIL−6 ELISAキット(カタログ番号900−K16)を用いて測定した。
【0252】
結果
これらの実験の結果を
図10及び12に示す。LPS及び細菌株A及びBによる神経芽腫細胞の処置は、LPSで処置しなかった対照細胞と同じレベルに、IL−6の分泌レベルの減少をもたらした(
図10A及び12A)。
【0253】
Roseburia intestinalis及びRoseburia faecisによる神経芽腫細胞の処置は、対照で処置した細胞で観察されたレベルを下回る、IL−6の分泌レベルの減少をもたらした(
図10B及び12B)。
【0254】
実施例10−細菌接種原がNFκB活性化を減少させる効能
概要
NFκBプロモーターの活性化は、IL−1β、IL−1α、IL−18、TNFα及びIL−6を含む炎症性サイトカインの産生をもたらす。NFκBプロモーターは、TLR4リガンドを刺激することで、α−シヌクレイン及びLPSによって活性化することができる。α−シヌクレインの突然変異、例えば、α−シヌクレインA53Tは、家族性パーキンソンに関与している。LPSによる神経細胞の処理は、環境因子に起因するパーキンソン病を模擬する。本発明による細菌株を含む組成物がNFκBプロモーターの活性化を阻害する能力を調査した。
【0255】
材料及び方法
細菌株
Roseburia intestinalis株A
Roseburia faecis株B
【0256】
細胞株
ヒトHekブルーTLR4は、InvivoGen(カタログ番号hkb−htlr4)から購入した。ヒトHekブルーTLR4を、10%のFBS、1%のPen Strep、4mMのL−Glut、ノルモシン及び1×HEKブルー選択溶液を補充したDMEM高グルコース(Sigma Aldrich、カタログ番号D−6171)中で増殖させた。
【0257】
方法
増殖させた後、ヒトHekブルー細胞を、25,000個の細胞/ウェルで4連で96ウェルプレートに播種した。一組の細胞を、α−シヌクレインA53T(1ug/mL)のみ、または株Aまたは株B由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。第2組の細胞を、LPS(10ng/mL、Salmonella enterica血清型Typhimurium由来、Sigma Aldrich、カタログ番号L6143)のみ、または株Aまたは株B由来の10%の細菌上清と共に22時間処理した。その後、細胞をスピンダウンし、20ulの上清を200ulのQuanti Blue試薬(InvivoGen、カタログ番号rep−qb2)と混合し、2時間インキュベートし、吸光度を655nmで読み取った。
【0258】
結果
これらの実験の結果を
図11及び13に示す。
【0259】
配列
配列番号1(Roseburia hominis株A2−181 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列−AY804148)
配列番号2(Roseburia hominis株A2−183 16S rRNA遺伝子、基準株A2−183T−AJ270482)
配列番号3(Roseburia hominis株433のコンセンサス16S rRNA配列)
配列番号5(コンセンサス16S rRNA配列、株A Roseburia intestinalis)
配列番号6(コンセンサス16S rRNA配列、株B Roseburia faecis)
【0260】
参照文献
[1]Spor et al.(2011)Nat Rev Microbiol.9(4):279−90.
[2]Eckburg et al.(2005)Science.10;308(5728):1635−8.
[3]Macpherson et al.(2001)Microbes Infect.3(12):1021−35
[4]Macpherson et al.(2002)Cell Mol Life Sci.59(12):2088−96.
[5]Mazmanian et al.(2005)Cell 15;122(1):107−18.
[6]Frank et al.(2007)PNAS 104(34):13780−5.
[7]Scanlan et al.(2006)J Clin Microbiol.44(11):3980−8.
[8]Kang et al.(2010)Inflamm Bowel Dis.16(12):2034−42.
[9]Machiels et al.(2013)Gut.63(8):1275−83.
[10]WO2013/050792
[11]WO03/046580
[12]WO2013/008039
[13]WO2014/167338
[14]Goldin and Gorbach(2008)Clin Infect Dis.46 Suppl 2:S96−100.
[15]Azad et al.(2013)BMJ.347:f6471.
[16]WO2013/050792
[17]Mayer et al(2014)The Journal of Neuroscience 34(46):15490−15496
[18]Cryan and Dinan(2015)Neuropsychopharmacology,40:241−2.
[19]Zhou and Foster(2015)Neuropsychiatric Disease and Treatment 11:715−723.
[20]Wang and Kasper(2014)Brain Behav Immun.38:1−12.
[21]WO2016/203221
[22]Chapter 38−Nonsteroidal anti−inflammatory drugs exposure and the central nervous system(2014)Handbook of Clinical Neurology 119,577−584
[23]Stanton and Savage(1983)Appl Environ Microbiol.45(5):1677−84
[24]Duncan et al.(2006)Int.J.Syst.Evol.Microbiol.56:2437−2441
[25]Masco et al.(2003)Systematic and Applied Microbiology,26:557−563.
[26]Srutkova et al.(2011)J.Microbiol.Methods,87(1):10−6.
[27]Pal R et al,Neurol Res 2016,38(12):1111−1122
[28]Daniele SG et al,Sci Signal 2015,8(376):ra45
[29]Wang et al.(2016)J Neurogastroenterol Motil 22:589−605.
[30]Foguem & Manckoundia(2018)Current Neurology and Neuroscience Reports,18:24
[31]Ludolph et al.(2009)Eur J Neurol.16(3):297−309.
[32]Galpern & Lang(2006)Neurological Progress 59(3)449−458
[33]Zadori et al(2012)Journal of Neural Transmission,119,2,275−283
[34]Lee et al(2008)European J.Cell Biology 87:389−397
[35]Pirooznia and Elefant(2013)Front Cell Neurosci.7:30.
[36]Tang,et al.(2017)J Am Heart Assoc,6(10).
[37]Wang et al.(2015)PNAS 112(9):2583−2858
[38]Psaty et al.(2003)JAMA,289(19):2534−44
[39]Lancet.(1995)346(8991−8992):1647−53
[40]Miyamoto−Shinohara et al.(2008)J.Gen.Appl.Microbiol.,54,9−24.
[41]Cryopreservation and Freeze−Drying Protocols,ed.by Day and McLellan,Humana Press.
[42]Leslie et al.(1995)Appl.Environ.Microbiol.61,3592−3597.
[43]Mitropoulou et al.(2013)J Nutr Metab.(2013)716861.
[44]Kailasapathy et al.(2002)Curr Issues Intest Microbiol.3(2):39−48.
[45]Handbook of Pharmaceutical Excipients,2nd Edition,(1994),Edited by A Wade and PJ Weller
[46]Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)
[47]US 2016/0067188
[48]Handbook of Microbiological Media,Fourth Edition(2010)Ronald Atlas,CRC Press.
[49]Maintaining Cultures for Biotechnology and Industry(1996)Jennie C.Hunter−Cevera,Academic Press
[50]Strobel(2009)Methods Mol Biol.581:247−61.
[51]Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th edition,ISBN:0683306472.
[52]Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,(Ream et al.,eds.,1998,Academic Press).
[53]Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.)
[54]Handbook of Experimental Immunology,Vols.I IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds,1986,Blackwell Scientific Publications)
[55]Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press).
[56]Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.ed.,CRC Press,1997)
[57]Ausubel et al.(eds)(2002)Short protocols in molecular biology,5th edition(Current Protocols).
[58]PCR(Introduction to Biotechniques Series),2nd ed.(Newton & Graham eds.,1997,Springer Verlag)
[59]Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30
[60]Smith & Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489.