特許第6884903号(P6884903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6884903
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   G10K15/04 302D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-59920(P2020-59920)
(22)【出願日】2020年3月30日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】武士田 紗代
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−160256(JP,A)
【文献】 特開平11−282483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/00−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ楽曲の伴奏データに基づいて生成された伴奏音信号と、マイクロフォンから入力される音声信号とを出力するカラオケ装置であって、
カラオケ楽曲の歌詞データに含まれる歌詞文字と発音期間が時系列に沿って対応付けられた発音タイミングデータを記憶した記憶部と、
カラオケ楽曲の発音タイミングデータに基づき、所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間を時系列に沿って特定する特定部と、
カラオケ楽曲の演奏中に、前記マイクロフォンから入力される音声信号にエコーを付加するエコー付加部と、を備え、
前記エコー付加部は、特定歌詞文字の発音期間中に前記マイクロフォンから入力される音声信号のエコーレベルを抑制することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項2】
前記エコー付加部は、子音の種別に応じて特定歌詞文字の発音期間を変更することを特徴とする請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項3】
カラオケ楽曲の進行に対する歌唱の先行又は遅れに関する歌唱タイミングデータを取得する取得部を備え、
前記エコー付加部は、歌唱タイミングデータに基づいて特定歌詞文字の発音期間の時間軸上の位置を変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置は、伴奏データに基づいて生成される伴奏音信号とマイクロフォンから入力される音声信号をミキシングしてスピーカから出力している。カラオケ装置は、音声信号にエコーを付加して伴奏信号とミキシングする音響処理機能を備えている。音声信号にエコーが付加されることで、残響による余韻が歌唱音声に加わり、利用者は上手く歌っている気分になって気持ちよくカラオケを楽しむことができる。通常、エコーレベルはカラオケ装置のフロントパネルの調整ツマミ等によって手動調整されるが、最適なエコーレベルに手動調整することは困難である。
【0003】
そこで、カラオケ楽曲の歌唱時の様々な条件に応じて、自動的にエコーレベルを調整するカラオケ装置が提案されている(例えば、特許文献1−3参照)。特許文献1には、演奏曲のテンポに応じて自動的に音声信号に対する残響時間を最適化するカラオケ装置が開示されている。また、特許文献2には、演奏曲の音量に応じて自動的に音声信号に対する残響処理を変化させるカラオケ装置が開示されている。さらに、特許文献3には、利用者の歌唱ピッチと演奏曲の基準ピッチの差分に基づいてエコーレベルを制御するカラオケ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−308988号公報
【特許文献2】特開平09−062284号公報
【特許文献3】特開平10−069285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エコーレベルを上げた場合に、サ行の音である摩擦音やパ行の音である破裂音等が歌唱音声に含まれていると、歌唱音声から歌詞を聞き取り難くなる場合がある。上記の特許文献1−3に記載のエコーレベルの制御では、歌唱音声に含まれる摩擦音や破裂音までは考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、歌唱音声から歌詞が聞き取り易くなるようにエコーレベルを自動的に調整することができるカラオケ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、カラオケ楽曲の伴奏データに基づいて生成された伴奏音信号と、マイクロフォンから入力される音声信号とを出力するカラオケ装置であって、カラオケ楽曲の歌詞データに含まれる歌詞文字と発音期間が時系列に沿って対応付けられた発音タイミングデータを記憶した記憶部と、カラオケ楽曲の発音タイミングデータに基づき、所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間を時系列に沿って特定する特定部と、カラオケ楽曲の演奏中に、前記マイクロフォンから入力される音声信号にエコーを付加するエコー付加部と、を備え、前記エコー付加部は、特定歌詞文字の発音期間中に前記マイクロフォンから入力される音声信号のエコーレベルを抑制するカラオケ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マイクロフォンから入力される音声信号にエコーが付加されて、利用者の歌唱音声を響かせることができる。カラオケ楽曲の歌唱中に摩擦音や破裂音等の所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間になると、マイクロフォンから入力された音声信号のエコーレベルが自動的に抑制される。よって、歌唱者はエコーレベルを上げた状態でも摩擦音や破裂音等の発音を気にすることなく歌唱でき、歌唱者以外の利用者は歌唱音声にエコーが効いていても歌唱音声から歌詞を聞き取り難くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態のカラオケシステムの構成図である。
図2】第1の実施形態のカラオケ装置の制御ブロック図である。
図3】第1の実施形態の音声タイミングデータの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態の特定歌詞文字テーブル及び発音期間テーブルの一例を示す図である。
図5】第1の実施形態のカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
図6】第3の実施形態のカラオケ装置の制御ブロック図である。
図7】第3の実施形態の歌唱タイミングデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
図1を参照して、第1の実施形態のカラオケシステム10について説明する。図1は、第1の実施形態のカラオケシステム10の構成図である。
【0011】
図1に示すように、カラオケシステム10は、利用者が予約したカラオケ楽曲の演奏に合わせて歌唱を楽しむためのシステムであり、カラオケ装置11と、モニタ12と、スピーカ13と、マイクロフォン14と、リモコン装置15とを備えている。モニタ12は、カラオケ装置11からの映像信号等に基づいて、カラオケ楽曲の演奏に合わせて背景映像と共に歌詞テロップを表示する。スピーカ13は、カラオケ装置11からの放音信号に基づいて、カラオケ楽曲の演奏音と共に利用者の歌唱音声を放音する。マイクロフォン14は、利用者の歌唱音声を音声信号に変換してカラオケ装置11に入力する。
【0012】
リモコン装置15は、タッチパネルを主体に構成されている。リモコン装置15は、検索メニュー、検索結果、音響設定等の各種情報をタッチパネルに表示すると共に、タッチパネルによって利用者の入力を受け付けている。リモコン装置15とカラオケ装置11は無線通信を介してペアリングされており、リモコン装置15とカラオケ装置11の間で各種情報が相互に送受信される。リモコン装置15は、利用者のタッチ操作に基づいて楽曲を検索する。タッチパネルに表示された転送ボタンのタッチによって、楽曲IDを含む予約楽曲情報がカラオケ装置11に送信される。
【0013】
カラオケ装置11は、リモコン装置15から受信した予約楽曲情報を記憶部21(図2参照)の予約管理テーブルに登録する。記憶部21には、楽曲ID毎に楽曲データ等のカラオケ歌唱に関する各種データが記憶されている。カラオケ装置11は、予約管理テーブルから登録順に予約楽曲情報を読み出し、この予約楽曲情報の楽曲IDに対応する楽曲データを記憶部21から読み出す。楽曲データには、カラオケ楽曲の伴奏音の元になる伴奏データ、歌唱の採点基準となるリファレンスデータ、モニタ12に表示される歌詞テロップの元になる歌詞データが含まれている。
【0014】
カラオケ装置11がカラオケ楽曲の演奏を開始すると、伴奏データに基づいて伴奏音信号が再生され、歌詞データ及び背景映像データに基づいて歌詞テロップと背景映像がモニタ12に表示される。また、カラオケ装置11では、音声信号にエコーを付加して伴奏信号とミキシングする音響処理が施される。そして、これら信号がミキサによって適切な比率でミキシングされて、ミキシング信号がアンプによって増幅されてスピーカ13から出力される。このように、利用者がカラオケ楽曲の演奏に合わせて歌唱すると、スピーカ13から伴奏音と共に歌唱音声が放音される。
【0015】
図2から図4を参照して、カラオケ装置11の制御構成について説明する。図2は、第1の実施形態のカラオケ装置11の制御ブロック図である。図3は、第1の実施形態の音声タイミングデータの一例を示す図である。図4は、第1の実施形態の特定歌詞文字テーブル及び発音期間テーブルの一例を示す図である。なお、図2の制御ブロック図には、説明の便宜上、楽曲の演奏処理に関するブロックのみを図示している。
【0016】
図2に示すように、カラオケ装置11は、カラオケ楽曲の演奏処理に加えて、歌唱音声に対するエコーレベルを自動的に調整可能に構成されている。カラオケ装置11には、記憶部21と、生成部22と、特定部23と、音響処理部(エコー付加部)24とが設けられている。記憶部21には、予約楽曲情報が登録順に並べられた予約管理テーブル、楽曲IDに対応付けられた楽曲データ(伴奏データ、歌詞データ、リファレンスデータ)、利用者によって設定された音響パラメータが記憶されている。また、記憶部21には、後述するエコー制御に用いるデータとして、音声タイミングデータ、特定歌詞文字テーブルが記憶されている。
【0017】
生成部22は、予約されたカラオケ楽曲の演奏に先立ち、カラオケ楽曲の歌詞データに含まれる歌詞文字を当該歌詞文字の発音開始時刻及び発音終了時刻に対応付けた発音タイミングデータを生成して記憶部21に記憶させる。発音タイミングデータの生成については、例えば、特開2008−257206号公報に記載の公知技術が応用できる。より詳細には、リファレンスデータには音符毎にノートオン時刻、ノートオフ時刻、音高が設定され、歌詞データには歌詞文字毎に表示色の変更開始時刻が設定されている。生成部22は、歌詞文字の表示色の変更開始直後の所定期間(例えば、300msec)にノートオンになる音符を検索して、この音符を歌詞文字に対応付けて発音タイミングデータを生成すればよい。
【0018】
図3に示すように、発音タイミングデータには、発音開始時刻、発音終了時刻、歌詞文字が対応付けられている。発音開始時刻には、歌詞文字に対応したリファレンスデータの各音符のノートオン時刻が設定され、発音終了時刻には、この各音符のノートオフ時刻が設定されている。例えば、発音タイミングデータには、先頭データとして発音開始時刻「9000msec」、発音終了時刻「9749msec」、歌詞文字「あ」が設定され、次のデータとして発音開始時刻「9750msec」、発音終了時刻「9999msec」、歌詞文字「た」が設定されている。このようにして、カラオケ楽曲の開始から終了までの歌詞文字の発音タイミングが並べられている。
【0019】
なお、本実施形態では、生成部22が、カラオケ楽曲の演奏前に、リファレンスデータと歌詞データから発音タイミングデータを生成して記憶部21に記憶させる構成にしたが、生成部22が発音タイミングデータを生成しなくてもよい。記憶部21には、リファレンスデータ及び歌詞データ等と同様に、事前に発音タイミングデータが記憶されていてもよい。歌詞文字は仮名文字に限らず、ローマ字によって表記されてもよい。さらに、発音タイミングデータの発音開始時刻及び発音終了時刻はカラオケ楽曲のテンポに応じて自動的に可変されてもよい。
【0020】
特定部23は、発音タイミングデータに基づき、所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間を時系列に沿って特定する。本実施形態の特定歌詞文字は、歌唱音声にエコーを効かせたときに聞き取り難くなる歌詞文字であり、「さ」、「し」、「す」、「せ」、「そ」等の摩擦音と、「ぱ」、「ぴ」、「ぷ」、「ぺ」、「ぽ」等の破裂音を表す歌詞文字である。すなわち、本実施形態の所定の子音とは、歌詞文字をローマ字表記したときの「S」、「P」に対応する音である。これら所定の子音を含む特定歌詞文字は、図4Aに示す特定歌詞文字テーブルに記憶されている。
【0021】
特定部23は、発音タイミングデータの歌詞文字から特定歌詞文字テーブルの特定歌詞文字を検出して、この特定歌詞文字の発音開始時刻と発音終了時刻の差分から発音期間を算出する。そして、特定部23は、特定歌詞文字毎に発音開始時刻と発音期間を対応付けて発音期間テーブルとして任意の記憶領域に記憶する。例えば、図3に示す発音タイミングデータに特定歌詞文字「し」が含まれ、「し」の発音開始時刻と発音終了時刻から発音期間が算出される。そして、図4Bの発音期間テーブルに示すように、特定歌詞文字「し」の発音開始時刻「15000msec」、「17000msec」に発音期間「1499msec」、「749msec」が対応付けられる。
【0022】
音響処理部24は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源、DSP(Digital Signal Processor)、ミキサ、アンプ(いずれも不図示)を含んでいる。MIDI音源によって記憶部21から伴奏データが読み出されて伴奏音信号が再生される。マイクロフォン14からDSPに音声信号が入力されると、DSPによって音声信号にエコーが付加されてミキサに出力される。そして、伴奏音信号と音声信号がミキサによって適切な比率でミキシングされて、このミキシング信号がアンプによって増幅されてスピーカ13(図1参照)から放音される。
【0023】
DSPは、カラオケ楽曲の演奏開始直後は、記憶部21の音響パラメータを参照して、音声信号に対するエコーレベルを調整している。また、DSPは、カラオケ楽曲の演奏開始からの経過時間を計時している。DSPは、発音期間テーブル(図4B参照)に記憶された発音開始時刻が到来したときに、発音開始時刻に対応付けられた発音期間中にマイクロフォン14から入力される音声信号のエコーレベルを抑制する。具体的には、DSPは、エコーレベルを初期設定に戻したり、現在のエコーレベルに対して所定割合(例えば、40%)減少させたエコーレベルに変更する。
【0024】
カラオケ装置11の各部の処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
【0025】
続いて、図5を参照して、カラオケ装置11の処理動作について説明する。図5は、第1の実施形態のカラオケ装置11の処理を示すフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートは一例を示すものであり、カラオケ装置11の処理動作はこのフローチャートに限定されない。また、図5では、図2の符号を適宜使用して説明する。
【0026】
図5に示すように、カラオケ装置11によって予約管理テーブルから登録順に予約楽曲情報が読み出される(ステップS01)。次に、予約楽曲情報に含まれる楽曲IDに基づいて、記憶部21から伴奏データ、リファレンスデータ、歌詞データ、背景映像データが読み出される(ステップS02)。次に、生成部22によってリファレンスデータの各音符と歌詞データの歌詞文字が対応付けられて音声タイミングデータが生成される(ステップS03)。上記したように、音声タイミングデータは、発音開始時刻、発音終了時刻、歌詞文字が対応付けられたデータである。
【0027】
次に、特定部23によって発音タイミングデータから所定の子音を含む特定歌詞文字が検索され(ステップS04)、特定歌詞文字の発音開始時刻と発音終了時刻の差分から発音期間が特定される(ステップS05)。このとき、特定部23によって特定歌詞文字の発音期間が特定される度に、特定歌詞文字の発音開始時刻と発音期間が順番に記憶されて発音期間テーブルが生成される。次に、音響処理部24のMIDI音源によって伴奏音信号が再生されてカラオケ楽曲の演奏が開始される(ステップS06)。このとき、利用者によって事前に設定された音響パラメータに基づいてエコーレベルが調整されている。
【0028】
カラオケ楽曲の演奏開始から経過時間が計時されて、発音期間テーブルの発音開始時刻が経過したか否かが監視される(ステップS07)。発音期間テーブルの発音開始時刻が経過すると(ステップS07でYes)、音響処理部24のDSPによって音声信号に付加されたエコーレベルが抑制される(ステップS08)。この発音開始時刻に破裂音や摩擦音等の特定歌詞文字の歌唱音声がマイクロフォン14から入力されるが、エコーレベルの抑制によって歌唱音声にエコーが悪影響を及ぼすことがない。発音期間テーブルの発音開始時刻から発音期間が経過するまで、音声信号に対するエコーレベルが抑制される(ステップS09でNo)。
【0029】
発音期間テーブルの発音開始時刻から発音期間が経過すると(ステップS09でYes)、エコーレベルの抑制解除によってエコーレベルが元に戻されて(ステップS10)、カラオケ楽曲の演奏終了か否かが判定される(ステップS11)。カラオケ楽曲の演奏が継続する場合に(ステップS11でNo)、カラオケ楽曲の演奏が終了するまでステップS07からステップS10の処理が繰り返されて、特定歌詞文字の発音期間中にマイクロフォン14から入力された音声信号のエコーレベルが抑制される。カラオケ楽曲の演奏が終了すると(ステップS11でYes)、演奏済みの予約楽曲情報が予約管理テーブルから削除される(ステップS12)。
【0030】
以上、第1の実施形態によれば、マイクロフォン14から入力される音声信号にエコーが付加されて、利用者の歌唱音声を響かせることができる。カラオケ楽曲の歌唱中に摩擦音や破裂音等の所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間になると、マイクロフォン14から入力された音声信号のエコーレベルが自動的に抑制される。よって、歌唱者はエコーレベルを上げた状態でも摩擦音や破裂音等の発音を気にすることなく歌唱でき、歌唱者以外の利用者は歌唱音声にエコーが効いていても歌唱音声から歌詞を聞き取り難くなることがない。
【0031】
<第2の実施形態>
特定歌詞文字の発音期間には、所定の子音の発音期間だけでなく、母音の発音期間も含まれている。音響処理部24(DSP)は、所定の子音の発音期間のみをエコーレベルの抑制対象にするために、所定の子音の種別に基づいて特定歌詞文字の発音期間を変更してもよい。例えば、特定歌詞文字「ぱ」は子音「P」と母音「A」から成り、特定歌詞文字「す」は子音「S」と母音「U」から成っている。通常の歌唱において子音「P」の発音期間は子音「S」の発音期間よりも短いため、特定歌詞文字「ぱ」の発音期間を「25msec」、特定歌詞文字「す」の発音期間を「100mesc」としてもよい。また、このような特定歌詞文字と発音期間が対応付けられたテーブルが用意されてもよい。
【0032】
以上、第2の実施形態によれば、子音の種別に応じた発音期間に変更して、エコーレベルの抑制期間を適切に調整することができる。例えば、特定歌詞文字「ぱ」の発音時には、発音開始からエコーが抑制されて、子音「P」から母音「A」に発音が変化している最中にエコーの抑制が解除される。これにより、エコーレベルの抑制期間を最小限に抑えることができる。
【0033】
<第3の実施形態>
利用者によっては、カラオケ楽曲の歌唱時に「ハシリ」や「タメ」の歌唱傾向がある。このため、第3の実施形態では、利用者の歌唱傾向を考慮して、エコーの抑制タイミングが変更される。以下、第3の実施形態のカラオケ装置31について説明する。図6は、第3の実施形態のカラオケ装置31の制御ブロック図である。図7は、第3の実施形態の歌唱タイミングデータの一例を示す図である。第3の実施形態のカラオケ装置31は、エコーの抑制タイミングが変更可能な点で第1の実施形態のカラオケ装置11と相違する。したがって、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様な構成については説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、第3の実施形態のカラオケ装置31は、第1の実施形態のカラオケ装置11(図1参照)と略同様であり、歌唱音声に対するエコーレベルを自動的に調整可能に構成されている。カラオケ装置31にはネットワーク32を介してサーバ装置33が接続されており、サーバ装置33の利用者データベースによってカラオケ装置31の利用者が管理されている。利用者データベースには、利用者ID毎に後述する歌唱タイミングデータ(図7参照)が登録されている。カラオケ装置31には、取得部45と、記憶部41と、生成部42と、特定部43と、音響処理部44とが設けられている。
【0035】
歌唱タイミングデータは、利用者毎のカラオケ楽曲の進行に対する歌唱の先行又は遅れに関する歌唱傾向を示している。歌唱タイミングデータの生成については、例えば、特開2013−195738号公報に記載の公知技術が応用できる。具体的には、カラオケ楽曲の演奏に合わせて、マイクロフォン14(図1参照)から音声信号が入力されると、カラオケ装置31によって音声信号の音高が検出される。そして、リファレンスデータの各音符の音高を基準とした所定の音高範囲に音声信号の音高が入ったときに、利用者が歌唱を開始したと見做されて、この歌唱開始時刻がリファレンスデータの音符毎に記録される。
【0036】
カラオケ楽曲の歌唱終了後に、各音符のノートオン時刻と利用者の歌唱開始時刻の差分によって、利用者の「ハシリ」や「タメ」の歌唱傾向が判断される。例えば、リファレンスデータ全体の音符に対して、ノートオン時刻よりも歌唱開始時刻が早い音符が占める割合が30%を超えていれば「ハシリ」の歌唱傾向があると判断される。リファレンスデータ全体の音符に対して、ノートオン時刻よりも歌唱開始時刻が遅い音符が占める割合が30%を超えていれば「タメ」の歌唱傾向があると判断される。「ハシリ」や「タメ」がある場合、歌唱タイミングデータとして歌唱した楽曲IDと共に歌唱傾向がカラオケ装置31からサーバ装置33に送信される。
【0037】
利用者がカラオケ楽曲を歌唱する度に、カラオケ装置31からサーバ装置33に歌唱タイミングデータが送信されて、サーバ装置33の利用者データベースに歌唱タイミングデータが蓄積される。図7に示すように、利用者データベースには、利用者ID毎に楽曲IDと歌唱傾向が対応付けられた歌唱タイミングデータが記憶されている。例えば、利用者ID「AAAAA」は、楽曲ID「1234−02」に歌唱傾向「ハシリ」が対応付けられ、楽曲ID「2211−11」に「ハシリ」や「タメ」が無いことを示す「−」が対応付けられ、楽曲ID「3265−23」に歌唱傾向「ハシリ」が対応付けられている。
【0038】
取得部45は、歌唱する利用者の歌唱タイミングデータをサーバ装置33から取得して任意の記憶領域に記憶する。具体的には、利用者が入力した利用者IDがログイン情報として取得部45からサーバ装置33に送信され、サーバ装置33によって利用者データベースから利用者IDが検索される。サーバ装置33によって利用者IDが検出されると、利用者IDに対応付けられた歌唱タイミングデータがサーバ装置33からカラオケ装置31に返信される。また、サーバ装置33によって利用者IDがログイン利用者(歌唱者)の識別情報として管理される。
【0039】
音響処理部44のDSPは、ログイン利用者がカラオケ楽曲を歌唱する際に、歌唱タイミングデータに基づいて特定歌詞文字の発音期間の時間軸上の位置を変更する。具体的には、歌唱傾向が「ハシリ」である場合には、発音期間テーブル(図4B参照)の発音開始時刻から200msec減算した時刻に発音開始時刻が変更される。歌唱傾向が「タメ」である場合には、発音期間テーブルの発音開始時刻に200msec加算した時刻に発音開始時刻が変更される。そして、変更後の発音開始時刻から発音期間が経過するまで、DSPによってマイクロフォン14から入力された音声信号のエコーレベルが抑制される。
【0040】
以上、第3の実施形態によれば、利用者に「ハシリ」や「タメ」の歌唱傾向がある場合でも、特定歌詞文字の歌唱音声に対するエコーを抑制することができる。よって、利用者の歌唱に「ハシリ」がある場合でも、特定歌詞文字の歌唱音声に対するエコーの抑制タイミングの遅れが防止され、利用者の歌唱に「タメ」がある場合でも、特定歌詞文字の歌唱音声に対するエコーの抑制タイミングの先行が防止される。
【0041】
なお、各実施形態では、発音タイミングデータには、発音期間として発音開始時刻と発音終了時刻が含まれているが、発音期間として発音開始時刻と発音終了時刻の差分が含まれていてもよい。すなわち、生成部22による発音タイミングデータの生成時に発音開始時刻と発音終了時刻の差分が算出されてもよい。
【0042】
また、各実施形態では、所定の子音を含む特定歌詞文字として破裂音及び摩擦音を表した歌詞文字を例示したが、特定歌詞文字は適宜変更が可能である。また、所定の子音は、「P」及び「S」に限定されず、適宜変更が可能である。
【0043】
また、各実施形態では、カラオケ装置11、31がカラオケコマンダである一例について説明したが、カラオケ装置11、31はネットワークを介してサーバに接続された携帯電話等の携帯機器によって構成されてもよい。
【0044】
また、上記した各実施形態及び変形例において、カラオケ装置11、31に対してプログラムをインストールすることによって、カラオケ装置11、31にエコーレベルの抑制機能が追加されてもよい。このプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0045】
また、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0046】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0047】
11、31:カラオケ装置
14 :マイクロフォン
21、41:記憶部
23、43:特定部
24、44:音響処理部(エコー付加部)
45 :取得部
【要約】
【課題】歌唱音声から歌詞が聞き取り易くなるようにエコーレベルを自動的に調整することができるカラオケ装置を提供する。
【解決手段】カラオケ装置(11)は、カラオケ楽曲の伴奏データに基づいて生成された伴奏音信号と、マイクロフォンから入力される音声信号とを出力している。カラオケ装置は、カラオケ楽曲の歌詞データに含まれる歌詞文字と発音期間が時系列に沿って対応付けられた発音タイミングデータを記憶した記憶部(21)と、カラオケ楽曲の発音タイミングデータに基づき、所定の子音を含む特定歌詞文字の発音期間を時系列に沿って特定する特定部(23)と、カラオケ楽曲の演奏中に、マイクロフォンから入力される音声信号にエコーを付加するエコー付加部(24)とを備えている。エコー付加部は、特定歌詞文字の発音期間中にマイクロフォンから入力される音声信号のエコーレベルを抑制する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7