(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】経皮投与デバイスの一実施形態について、経皮投与デバイスの全体構成を示す分解斜視図。
【
図2】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造を示す断面図。
【
図3】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造を示す平面図。
【
図4】一実施形態の経皮投与デバイスが皮膚に押し付けられた状態を模式的に示す図。
【
図5】一実施形態の経皮投与デバイスが皮膚に押し付けられた後、押圧力が弱められた状態を模式的に示す図。
【
図6】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図7】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図8】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図9】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図10】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図11】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図12】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図13】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図14】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図15】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図16】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図17】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図18】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図19】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図20】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図21】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図22】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図23】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図24】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図25】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図26】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図27】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図28】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図29】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図30】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図31】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図32】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図33】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図34】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図35】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図36】一実施形態の経皮投与デバイスにおける平面構造の他の例を示す平面図。
【
図37】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図38】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図39】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図40】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図41】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図42】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図43】一実施形態の経皮投与デバイスにおける断面構造の他の例を示す断面図。
【
図44】一実施形態の投与補助具の平面構造を示す平面図。
【
図45】一実施形態の投与補助具が薬剤の投与対象の肢体に装着された状態を模式的に示す図。
【
図46】一実施形態の投与補助具が薬剤の投与対象の肢体に装着された状態を模式的に示す図。
【
図47】一実施形態の薬剤投与器具の構成をシリンジとともに示す図。
【
図48】一実施形態の経皮投与デバイスをカバー部材が貼り付けられた状態で示す斜視図。
【
図49】一実施形態の薬剤投与器具を用いて薬剤が投与される手順を示す図であって、投与補助具が薬剤の投与対象に巻き付けられた状態を模式的に示す図。
【
図50】一実施形態の薬剤投与器具を用いて薬剤が投与される手順を示す図であって、経皮投与デバイスが皮膚に押し付けられた状態を模式的に示す図。
【
図51】一実施形態の薬剤投与器具を用いて薬剤が投与される手順を示す図であって、経皮投与デバイスが皮膚に押し付けられた後、押圧力が弱められた状態を模式的に示す図。
【
図52】一実施形態の薬剤投与器具を用いて薬剤が投与される手順を示す図であって、薬剤の投与後に薬剤の投与部位が保護された状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図52を参照して、経皮投与デバイスおよび薬剤投与器具の一実施形態について説明する。
[経皮投与デバイスの構成]
図1〜
図3を参照して、経皮投与デバイスの構成について説明する。
図1が示すように、経皮投与デバイス10は、投与部の一例であるマイクロニードル20と、弾性部材30とを備えている。
【0019】
マイクロニードル20は、筒状の基体部21と、基体部21から突き出た突起部22とを備えている。弾性部材30は、環状を有し、突起部22を囲む位置に配置されている。
【0020】
図2が示すように、基体部21は、基体部21の有する2つの筒端の一方に、端面として支持面21Sを有している。基体部21の有する2つの筒端のうち、支持面21Sと反対側の筒端は開口されている。
【0021】
基体部21の外形は特に限定されず、基体部21は、円筒形状を有していてもよいし、角筒形状を有していてもよい。そして、支持面21Sは、基体部21の形状に応じた形状を有していればよい。また、基体部21は、2つの筒端の間に、外径が徐々に変化する部分や、外径が段階的に変化する部分を有していてもよい。
図1〜
図3に示す例では、基体部21は円筒形状を有し、支持面21Sは円形状を有している。
【0022】
突起部22は、支持面21Sから突き出ており、支持面21Sは、突起部22の基端を支持している。突起部22は、支持面21Sに対して、基体部21が筒状に延びる方向とは反対方向に延びている。突起部22の形状は、皮膚を刺すことが可能な形状であれば特に限定されず、突起部22は、円錐形状や角錐形状を有していてもよいし、円柱形状や多角柱形状を有していてもよい。
図1〜
図3に示す例では、突起部22は略円錐形状を有している。また、マイクロニードル20の備える突起部22の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
図1〜
図3に示す例では、マイクロニードル20は複数の突起部22を備えている。
【0023】
突起部22には、突起部22の延びる方向に突起部22を貫通する貫通孔23が形成されている。支持面21Sと対向する方向から見て、貫通孔23は、突起部22の中央に位置してもよいし、中央とは異なる位置に配置されていてもよい。貫通孔23は、基体部21における支持面21Sを有する側壁を貫通して基体部21の内部に達している。すなわち、貫通孔23は、基体部21の内部空間と連通しており、基体部21の内側面と貫通孔23を区画する面とは、薬剤の流路を形成している。薬剤の投与に際して、基体部21の内部空間に供給された薬剤は、貫通孔23を通り、突起部22の先端部分の開口から経皮投与デバイス10の外部へ出る。
弾性部材30は、粘着性を有する弾性体であり、支持面21Sにて突起部22の周囲を取り囲む位置に配置されている。
【0024】
突起部22の最大長Hは、突起部22の延びる方向、すなわち、支持面21Sと直交する方向における突起部22の最大の長さであって、すなわち、支持面21Sから突起部22の先端までの長さである。弾性部材30の最大長Tは、突起部22の延びる方向における弾性部材30の最大の長さであって、すなわち、支持面21Sから弾性部材30の先端までの長さである。
図1〜
図3に示す例では、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さは、弾性部材30のなかで一定である。突起部22の最大長Hは、例えば、100μm以上3000μm以下の範囲内の長さであり、弾性部材30の最大長Tは、例えば、50μm以上2500μm以下の範囲内の長さである。
【0025】
突起部22の最大長Hは、弾性部材30の最大長Tよりも大きいことが好ましい。すなわち、支持面21Sに沿った方向から見て、突起部22の先端は、弾性部材30よりも飛び出ていることが好ましい。こうした構成であれば、薬剤の投与に際して、弾性部材30よりも先に突起部22の先端が投与対象の皮膚に接触するため、突起部22が皮膚に刺さりやすい。
【0026】
突起部22の最大長Hは、皮膚の断面方向における薬剤の投与位置、すなわち、皮膚に薬剤が投与されているときに突起部22の先端が位置すべき深さや、弾性部材30の最大長Tおよび弾性率に応じて設定される。また、弾性部材30の最大長Tは、弾性部材30の弾性率や、突起部22の最大長H、皮膚の断面方向における薬剤の投与位置に応じて設定される。
【0027】
突起部22の最大幅Dは、基体部21の支持面21Sに沿った方向における突起部22の長さの最大値である。例えば、突起部22が円錐形状を有するとき、突起部22の底部によって区画された円の直径が、突起部22の最大幅Dである。突起部22の最大幅Dは、例えば、100μm以上1000μm以下の範囲内の長さであり、突起部22の最大幅Dに対する最大長Hの比であるアスペクト比A(A=H/D)は、1以上10以下であることが好ましい。
【0028】
図3は、支持面21Sと対向する方向から経皮投与デバイス10を見た図であって、弾性部材30を、ドットを付して示している。
図3が示すように、弾性部材30は、支持面21Sの外縁に沿って配置され、複数の突起部22からなる集合を取り囲んでいる。
【0029】
[経皮投与デバイスを用いた薬剤の投与]
図4および
図5を参照して、経皮投与デバイス10を用いた薬剤の投与の手順について説明する。
図4が示すように、突起部22の先端が皮膚Skの表面に向けられて、経皮投与デバイス10が皮膚Skに押し付けられる。この際、経皮投与デバイス10には、突起部22が皮膚の角質層を貫通する程度の力が加えられる。これによって、突起部22は角質層を貫通して皮膚Skに刺さり、弾性部材30は押圧力を受けて突起部22の延びる方向に圧縮される。このとき、弾性部材30は支持面21Sと皮膚Skの表面との間に挟まれ、弾性部材30は皮膚Skの表面に接触している。
【0030】
図5が示すように、突起部22が皮膚Skに刺さると、経皮投与デバイス10に加えられている押圧が解除される。これにより、弾性部材30が復元し、弾性部材30の大きさは、押圧を受ける前の通常状態まで戻り、弾性部材30の厚みの増加に伴って、基体部21は皮膚Skの表面から離れる方向に動く。それとともに、突起部22の位置も皮膚Skの表面に向けて戻り、突起部22のなかで皮膚Skに刺さっている部分の長さは短くなる。このとき、弾性部材30はその粘着力によって皮膚Skの表面に貼り付いているため、突起部22が皮膚Skから抜け出たり突起部22が皮膚Skの中で傾いたりすることが抑えられる。
【0031】
これにより、皮膚Skに対する押圧が解除されるため、皮膚Skの潰れが解消され、その結果、皮内へ薬剤が浸透しやすくなる。このように、押圧が解除された状態で、薬剤が投与される。薬剤は、外部から基体部21の内部空間に供給され、基体部21と貫通孔23を通って突起部22の先端から出て、皮内に拡散される。
【0032】
こうした構成においては、突起部22の最大長Hは、突起部22の最大長Hと弾性部材30の最大長Tとの差、換言すれば、突起部22のなかで通常状態での弾性部材30よりも飛び出ている部分の長さが、投与対象の皮膚における表面から、薬剤の投与時に突起部22の先端が位置すべき部分までの長さとなるように設定される。
【0033】
なお、薬剤の投与は、弾性部材30が完全に復元してその大きさが通常状態まで戻っている状態で行われる必要はない。すなわち、突起部22を皮膚Skに刺すための押圧力によって弾性部材30が突起部22の延びる方向に最も圧縮されている状態、換言すれば、突起部22が皮膚Skに最も深く刺さっている状態での弾性部材30よりも、押圧力が弱まることに伴って弾性部材30が復元している状態であれば、通常状態よりも弾性部材30が圧縮されている状態で薬剤が投与されてもよい。こうした状態であっても、突起部22が皮膚Skに最も深く刺さっている状態と比較して、皮膚Skにかかる押圧力は弱まっているため、薬剤は皮内へ浸透しやすくなる。
【0034】
この場合、突起部22の最大長Hは、弾性部材30の最大長Tや弾性率、薬剤の投与部位における皮膚の硬さや弾性率、加えられる押圧力等を考慮して、薬剤が投与されている状態において、突起部22の先端が薬剤を投与すべき部位に位置するように、すなわち、突起部22のなかで弾性部材30よりも飛び出て皮膚に刺さっている部分の長さが、薬剤を投与すべき深さとなるように設定されればよい。
【0035】
[経皮投与デバイスの材料および製造方法]
上述の経皮投与デバイス10を構成する各部の材料および製造方法について説明する。
マイクロニードル20を構成する材料は特に限定されないが、材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、例えばナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン310、ナイロン12等のポリアミド、ブタジエン−スチレン共重合体等の樹脂が用いられる。マイクロニードル20を構成する材料は生体適合性を有することが好ましい。なお、マイクロニードル20は、内部の視認性を確保するために、透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0036】
マイクロニードル20は、全体が一体に形成されていてもよいし、複数の部材の組み付けによって形成されていてもよい。上述の材料を用いてマイクロニードル20を一体に形成するためには、例えば、射出成形、押出成形、インプリント、ホットエンボス、キャスティング等の公知の溶融成形加工技術を用いればよい。貫通孔23は、例えば、マイクロドリル、レーザ加工等の公知の微細加工技術によって形成することができる。
【0037】
また、溶融成形以外のマイクロニードル20の形成方法として、基板に孔を形成した後に、エッチングによって突起部22の外形形状を形成する方法が用いられてもよい。基板への孔の形成には、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザ加工、機械加工等の各種の公知技術を用いることができる。そして、突起部22の形成予定領域で中央部から周縁に向けて厚みが連続的に変化するエッチングマスクを用い、エッチングを行うことによって、基板に針状の構造体を形成する。
【0038】
この場合、マイクロニードル20を構成する材料はウェットエッチングやドライエッチング等のエッチングによって加工可能な材料であればよく、こうした材料としては、例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂やシリコン等が挙げられる。
【0039】
弾性部材30を構成する材料は、所望の弾性と粘着性とを実現可能な材料であれば特に限定されないが、例えば、ウレタンゲルが用いられることが好ましい。弾性部材30は、例えば、硬度(ショアA)が1以上5以下、30%圧縮強度(N/mm
2)が10以上100以下、圧縮弾性率(N/mm
2)が100以上500以下、180°ピール試験の粘着性(N/25mm)が2以上10以下であることが好ましく、弾性部材30の構成材料としてウレタンゲルを用いれば、こうした特性が好適に実現できる。こうしたウレタンゲルとしては、例えば、エクシール社製のゲルタックシートが用いられ、シートが円環状に打ち抜かれることによって弾性部材30が形成される。
【0040】
[弾性部材の形状および配置の変形例]
図6〜
図43を参照して、弾性部材30の形状および配置の変形例について説明する。なお、
図6〜
図36においては、弾性部材30をドットを付して示している。
上記形態の弾性部材30は、径方向の幅が一定である円環状を有しているが、弾性部材30は、複数の突起部22からなる集合を取り囲んでいればよく、支持面21Sと対向する方向から見て弾性部材30に囲まれる領域は円形でなくてもよい。
【0041】
例えば、弾性部材30が囲む領域は、
図6が示すように、略矩形状であってもよいし、
図7が示すように、突起部22の配置に応じて湾曲する縁部を有する形状であってもよい。要は、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は、その中央に、複数の突起部22が配置されている領域よりも大きい領域を区画していればよい。換言すれば、弾性部材30は、複数の突起部22が配置されている領域よりも大きな開口を有していればよい。
【0042】
また、上記各形態では、弾性部材30は、複数の突起部22の集合を取り囲んでいたが、
図8や
図9が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22を1つずつ個別に取り囲んでいてもよい。すなわち、弾性部材30は複数の突起部22の各々の配置位置に、各突起部22の配置されている領域よりも大きな開口を有していてもよい。
【0043】
弾性部材30が複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいる構成では、弾性部材30が複数の突起部22の集合を取り囲んでいる構成と比較して、支持面21Sにおいて弾性部材30が占有する面積を大きく確保しやすい。したがって、薬剤の投与に際して、皮膚に貼り付く弾性部材30の面積を大きく確保しやすいため、薬剤の投与中における皮膚に対する突起部22の位置の安定性が高められる。
【0044】
また、本実施形態の経皮投与デバイス10を用いて薬剤の投与が行われる場合、弾性部材30が皮膚に貼り付いていることにより、皮膚が弾性部材30に軽く押さえられているため、皮膚が弛むことが抑えられ、突起部22が所望の深さまで刺さりやすい。弾性部材30が複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいる構成では、こうした皮膚の弛みを抑える効果を高く得られる。皮膚の弛みの程度は、肢体における薬剤の投与部位や、投与対象の年齢等によっても変わるため、投与対象の投与部位に応じて、弾性部材30が複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいる構成、もしくは、複数の突起部22の集合を取り囲んでいる構成が選択されるとともに、支持面21Sにおける弾性部材30の配置面積が設定されることが好ましい。
【0045】
なお、上記各形態では、支持面21Sの中央部分に1つの突起部22が位置し、この突起部22を囲む円環上に、複数の突起部22が配置されているが、支持面21Sの中央部には、突起部22が配置されていなくてもよい。
【0046】
例えば、
図10が示すように、支持面21Sの中央部には突起部22が配置されず、中央部を囲む外周部にて1つの環上に複数の突起部22が配置され、弾性部材30が複数の突起部22の集合を取り囲んでいてもよい。この場合、支持面21Sの中央部には、突起部22も弾性部材30も配置されていない。また例えば、
図11が示すように、支持面21Sの中央部には突起部22が配置されず、外周部にて1つの環上に複数の突起部22が配置され、弾性部材30が複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいてもよい。この場合、支持面21Sの中央部には、弾性部材30が配置されている。
【0047】
こうした構成によれば、支持面21Sにおける外周部のみに突起部22が配置されているため、支持面21Sの中央部と外周部とで、突起部22の穿刺に際してこれらの部位にかかる押圧力の大きさが異なっていたり、支持面21Sと対向する皮膚の弾性等の特性が異なっていたりしても、各突起部22が皮膚に刺さる深さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0048】
また、マイクロニードル20の備える突起部22が1つである場合、弾性部材30が囲む領域は、
図12や
図13が示すように、突起部22の1つのみを配置可能な大きさの領域であってもよいし、
図14が示すように、突起部22の1つのみを配置可能な大きさよりも大きな領域であってもよい。支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30が囲む領域は、
図12が示すように、突起部22と相似形状であってもよいし、
図13や
図14が示すように、相似形状とは異なる形状であってもよい。
上記各形態では、突起部22の形状が略円錐形状である構成を例示したが、突起部22が他の形状である場合にも、同様の弾性部材30が配置されればよい。
【0049】
例えば、突起部22が略四角錐形状である場合にも、弾性部材30は、
図15や
図16が示すように、複数の突起部22からなる集合を取り囲んでいてもよいし、
図17や
図18が示すように、複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいてもよい。
【0050】
また、弾性部材30が区画する領域が所定のマークや絵柄、文字等を構成していてもよい。
例えば、
図19〜
図21が示す例では、支持面21Sには、その中央部に1つの突起部22が配置され、この中央の突起部22を囲む円環上に、複数の突起部22が位置している。そして、弾性部材30が囲む領域は、中央の突起部22を囲んでいる突起部22の数と同じ数の突出した頂点を有する星形形状を有している。
【0051】
また例えば、
図22が示す例では、支持面21Sには、その外周部における1つの円環上に複数の突起部22が位置している。弾性部材30は、各突起部22の配置されている領域に三角形状の領域を区画して複数の突起部22を突起部22ごとに取り囲むとともに、その中央に形成された開口等によって、全体として太陽風の絵柄を構成している。
【0052】
また、支持面21Sには、特性の異なる二種類の弾性部材30である第1弾性部材31と第2弾性部材32とが配置されていてもよい。例えば、第1弾性部材31と第2弾性部材32とは、弾性率の大きさ、粘着性の強さ、および、弾性部材30の最大長Tの少なくとも1つが異なる。
【0053】
図23や
図24が示すように、例えば、第1弾性部材31は、支持面21Sの外縁に沿って配置されて複数の突起部22の集合を取り囲み、第2弾性部材32は、支持面21Sの中央に位置する突起部22を取り囲む位置に配置される。第1弾性部材31が囲む領域の形状と第2弾性部材32が囲む領域の形状とは、上記各形態における弾性部材30と同様に特に限定されない。
【0054】
第1弾性部材31と第2弾性部材32との特性は、例えば、突起部22が受ける押圧力の位置によるばらつきや、薬剤の投与部位内での皮膚の伸びやすさのばらつき等に応じて設定される。
【0055】
例えば、基体部21の形状や突起部22の配置等に起因して、支持面21Sの中央部に位置する突起部22よりも外周部に位置する突起部22の方が大きな押圧力を受ける場合がある。この場合には、支持面21Sの中央部に位置する突起部22よりも外周部に位置する突起部22の方が皮膚に深く刺さりやすい。そこで、支持面21Sの外周部に位置する第1弾性部材31を、支持面21Sの中央部に位置する第2弾性部材32よりも弾性率の大きい弾性体とし、相対的に大きな押圧力を受けて圧縮された第1弾性部材31の厚みと、相対的に小さな押圧力を受けて圧縮された第2弾性部材32の厚みとが同程度になるように、各弾性部材31,32の弾性率を調整する。これにより、突起部22の位置によって受ける押圧力の大きさに違いがある場合でも、各突起部22が皮膚に刺さる深さがばらつくことが抑えられる。
【0056】
また例えば、支持面21Sと対向する薬剤の投与部位においては、その中央部よりも外周部の方が皮膚が伸びやすく、押圧力を受けて中央部よりも外周部での皮膚の伸びが大きい状態で突起部22が刺さると、押圧力が弱められたときに中央部よりも外周部の方が皮膚に深く突起部22が刺さった状態となる場合がある。そこで、押圧力を受けて突起部22が皮膚に最も深く刺さった状態において、支持面21Sの外周部に位置する突起部22が支持面21Sの中央部に位置する突起部22よりも皮膚に浅く刺さるようにする。すなわち、第1弾性部材31を第2弾性部材32よりも弾性率の大きい弾性体とするか、もしくは、第1弾性部材31を第2弾性部材32よりも最大長Tの大きい弾性体として、押圧力を受けて突起部22が皮膚に最も深く刺さった状態において、第1弾性部材31の厚みが第2弾性部材32の厚みよりも大きくなるようにする。これにより、押圧力が弱められて皮膚の伸びが戻った状態において、各突起部22が皮膚に刺さる深さがばらつくことが抑えられる。
【0057】
なお、こうした支持面21Sの中央部と外周部とでの突起部22の配置位置の違いによる突起部22の皮膚に刺さる深さのばらつきを抑えるための構成としては、上述のように特性の異なる二種類の弾性部材30を配置する構成の他に、先の
図10や
図11に示したように、支持面21Sの外周部のみに突起部22が配置された構成も好適に利用できる。
【0058】
また、第1弾性部材31と第2弾性部材32との粘着性を異ならせることによって、支持面21S内での位置に応じて、経皮投与デバイス10が皮膚に貼り付く強さを調整してもよい。例えば、投与部位のなかで外側に位置する部分ほど、弾性部材が剥がれやすくなる傾向がある。これに対し、第1弾性部材31の粘着性が、第2弾性部材32の粘着性よりも大きい構成であれば、支持面21Sの中央部と対向する部分よりも、支持面21Sの外周部と対向する部分にて、皮膚に経皮投与デバイス10が強く貼り付くため、薬剤の投与前および投与中において、経皮投与デバイス10が皮膚から剥がれることが抑えられる。
【0059】
第1弾性部材31と第2弾性部材32との各々の形状や数は、第1弾性部材31と第2弾性部材32との間で異ならせる特性およびその目的に応じて設定されればよい。また、上記例以外にも、例えば、支持面21S内の位置によって突起部22の皮膚に刺さる深さを変えたい場合や、支持面21S内の位置によって突起部22の最大長Hが異なる場合等にも、目的に応じて、特性の異なる二種類の弾性部材30が用いられてもよい。さらに、支持面21Sには、特性の異なる三種類以上の弾性部材30が配置されてもよい。なお、支持面21Sに配置された複数の弾性部材30は、弾性率の大きさ、粘着性の強さ、および、弾性部材30の最大長Tのうちの2つ以上が異なる弾性部材30であってもよい。
【0060】
また、弾性部材30は、支持面21Sに位置していれば、単独で突起部22を取り囲んでいなくてもよいし、支持面21Sの外縁に沿って配置されていなくてもよい。
【0061】
例えば、
図25や
図26が示すように、支持面21Sに複数の弾性部材30が配置され、弾性部材30は、複数の突起部22の間の領域に位置していてもよい。支持面21Sにて複数の突起部22が支持面21Sの中央部を中心として均等に並んでいる場合には、複数の弾性部材30も、支持面21Sの中央部を中心として均等に並んでいることが好ましい。弾性部材30の形状や数は、複数の突起部22の配置態様に応じて適宜設定されればよい。
【0062】
また、弾性部材30が単独で突起部22を取り囲んでいない場合においても、支持面21Sには、特性の異なる二種類以上の弾性部材30が配置されていてもよい。
【0063】
例えば、
図27や
図28が示すように、支持面21Sの外周部に複数の第1弾性部材31が配置され、第1弾性部材31が配置されている領域よりも内側の領域に、複数の第2弾性部材32が配置される。
【0064】
上記各形態では、支持面21Sの形状が円形状である構成を例示したが、基体部21の形状に応じて、支持面21Sは、矩形形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。支持面21Sの形状に関わらず、弾性部材30は上記形態と同様に配置されればよい。
【0065】
例えば、
図29〜
図36は、支持面21Sが楕円形状を有する例を示す。
図29や
図30が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22からなる集合を取り囲んでいてもよいし、
図31や
図32が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22を1つずつ取り囲んでいてもよい。また例えば、
図33〜36が示すように、弾性部材30は、単独で突起部22を取り囲んでおらず、支持面21Sに複数の弾性部材30が配置されていてもよい。
図33や
図34が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22の間に配置されていてもよいし、
図35や
図36が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22の周りに配置されていてもよい。また例えば、支持面21Sには、特性の異なる二種類の弾性部材30が配置されていてもよい。
【0066】
なお、
図29〜
図36では、突起部22の形状が略四角錐形状である構成を例示したが、支持面21Sの形状に関わらず、突起部22の形状は、上述のように、皮膚を刺すことの可能な形状であればよい。
【0067】
また、先の
図1〜
図3を参照して説明した形態では、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さは、弾性部材30のなかで一定であるが、弾性部材30の長さは、弾性部材30のなかで変化していてもよい。すなわち、弾性部材30は、弾性部材30の長さが各々で異なる複数の部位を有していてもよい。
【0068】
例えば、
図37や
図38が示すように、弾性部材30は、複数の突起部22の集合を取り囲む環状を有し、径方向の外側から内側に向かって、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが徐々に小さくなる部分を有していてもよい。換言すれば、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は、弾性部材30の内周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面を有していてもよい。
【0069】
こうした構成によれば、例えば、以下の効果が得られる。すなわち、経皮投与デバイス10が皮膚に押し付けられた後、その押圧力が弱められたときに、弾性部材30の傾斜面に皮膚の表面が貼り付くことにより、傾斜面と突起部22との間の空間に皮膚が入るように皮膚が持ち上げられる。したがって、突起部22の周囲で皮膚が持ち上げられるため、薬剤の漏れや経皮投与デバイス10が皮膚から剥がれることが抑えられる。
【0070】
突起部22の延びる方向に対する傾斜面の傾斜角度は投与部位における皮膚の伸びやすさ等に応じて適宜設定されればよい。また、傾斜面は、例えば、
図37に示す例のように平面であってもよいし、
図38に示す例のように曲面であってもよい。また、
図37および
図38では、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さは、弾性部材30の径方向の外側から内側に向かって、一定に推移した後、徐々に小さくなる。すなわち、支持面21Sと対向する方向から見える弾性部材30は、支持面21Sと平行な平面と上記傾斜面とから構成されるが、弾性部材30はこうした平面を有していなくともよく、弾性部材30の長さは、その径方向の外側から内側に向かって、常に徐々に小さくなってもよい。
【0071】
また、突起部22の延びる方向に、複数の弾性部材30が積層されていてもよい。例えば、
図39が示す例では、支持面21Sに近い位置から順に、各々が環状であって複数の突起部22の集合を取り囲む弾性部材30である第1弾性部材33、第2弾性部材34、第3弾性部材35が並んでいる。そして、支持面21Sと対向する方向から見て、各弾性部材33,34,35の外周縁は一致しており、各弾性部材33,34,35の内周縁は、支持面21Sに近い弾性部材30ほど、内側に位置している。すなわち、支持面21Sと対向する方向から見て、径方向の外側から順に、第3弾性部材35の内周縁、第2弾性部材34の内周縁、第1弾性部材33の内周縁が位置している。
【0072】
こうした構成によっても、先の
図37や
図38に示したように、弾性部材30が、径方向の外側から内側に向かって、突起部22の延びる方向における長さが徐々に小さくなる部分を有する構成と同様の効果が得られる。また、複数の弾性部材30に、弾性率や粘着性等の特性が互いに異なる弾性部材30が含まれていてもよい。こうした構成によれば、経皮投与デバイス10が皮膚に押し付けられたときの弾性部材30の積層体における圧縮形状や皮膚への貼り付き方を細かく調整することができる。
【0073】
また、
図40が示すように、弾性部材30は、径方向の内側から外側に向かって、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが徐々に小さくなる部分を有していてもよい。換言すれば、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は、弾性部材30の外周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面を有していてもよい。
【0074】
こうした構成によれば、例えば、以下の効果が得られる。すなわち、弾性部材30の外周縁付近では、弾性部材30による皮膚の圧迫が弱められるため、投与部位のなかで皮膚が伸びやすい外周部にて皮膚が過度に延びることが抑えられ、投与部位内において皮膚の伸びの程度がばらつくことが抑えられる。
【0075】
なお、突起部22の延びる方向に対する傾斜面の傾斜角度は投与部位における皮膚の伸びやすさ等に応じて適宜設定されればよいし、傾斜面は平面であっても曲面であってもよい。また、弾性部材30は、
図40に示す例のように、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが一定である部分を有していてもよいし、有していなくてもよい。すなわち、支持面21Sと対向する方向から見える弾性部材30は、支持面21Sと平行な平面と上記傾斜面とから構成されてもよいし、弾性部材30はこうした平面を有していなくともよく、弾性部材30の長さは、その径方向の内側から外側に向かって、常に徐々に小さくなってもよい。
【0076】
また、
図41が示すように、弾性部材30は、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが、径方向の外側から内側に向かって徐々に小さくなる部分と、径方向の内側から外側に向かって徐々に小さくなる部分とを有していてもよい。換言すれば、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は、弾性部材30の内周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面と、弾性部材30の外周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面とを有していてもよい。
図41に示す例では、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さは、弾性部材30の径方向の外側から内側に向かって、徐々に大きくなった後、一定に推移し、その後、徐々に小さくなっている。なお、弾性部材30は、弾性部材30の長さが一定である部分を有していなくてもよく、すなわち、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は、支持面21Sと平行な平面を有していなくてもよい。
【0077】
また、
図42や
図43が示すように、弾性部材30が、支持面21Sと対向する位置に傾斜面を有することによって、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが、径方向の外側から内側に向かって徐々に小さくなる部分や径方向の内側から外側に向かって徐々に小さくなる部分が形成されていてもよい。
図42や
図43が示す例では、弾性部材30は、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30の内周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面と、弾性部材30の外周縁に向けて支持面21Sに近づく傾斜面とを有するとともに、支持面21Sと対向する位置に、弾性部材30の内周縁に向けて支持面21Sから離れる傾斜面と、弾性部材30の外周縁に向けて支持面21Sから離れる傾斜面とを有する。
【0078】
これらの傾斜面は、突起部22の延びる方向に沿った断面において、
図42が示すように、突起部22の延びる方向に沿った直線およびこの方向と直交する方向に沿った直線の各々に対して線対称に配置されていてもよいし、
図43が示すように、これらの直線の各々に対して非対称に配置されていてもよい。
また、これら
図42や
図43に示す例のように、支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30は支持面21Sの外縁からはみ出していてもよい。
【0079】
[薬剤投与器具の構成]
図44〜
図47を参照して、薬剤投与器具の構成について説明する。薬剤投与器具は、上述の経皮投与デバイス10と薬剤の投与対象に巻きつけられる投与補助具とを含んで構成される。
図44〜
図46を参照して、投与補助具の構成について説明する。
【0080】
図44が示すように、投与補助具50は、帯状に延びるバンド部51と、バンド部51の延びる方向における両端部を互いに固定可能に構成された固定部52と、薬剤の投与位置を規定する投与位置規定部53とを備えている。
【0081】
バンド部51は、薬剤の投与対象の肢体に巻きつけることの可能な可撓性を有する。バンド部51を構成する材料は、こうした可撓性を実現可能な材料であれば特に限定されず、材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、バンド部51は、バンド部51の巻き付いている部分の皮膚を視認可能な程度の透明性を有することが好ましい。これにより、投与補助具50の外側から皮膚の各部位を視認することができるため、投与補助具50を肢体に固定する際における薬剤の投与予定位置の確認や、薬剤が投与された位置の確認等が容易である。バンド部51の長さは、薬剤の投与部位が位置する肢体の部分に応じた長さであればよい。
【0082】
固定部52は、バンド部51の延びる方向における2つの端部を互いに固定するための構造を有する。例えば、固定部52は、2つの固定部52a,52bから構成された面ファスナーであって、面ファスナーの雄側である固定部52aは、バンド部51の表面における上記2つの端部の一方に位置し、面ファスナーの雌側である固定部52bは、バンド部51の裏面における上記2つの端部の他方に位置する。なお、面ファスナーに限らず、固定部52は、例えば、スナップボタン、ボタンとボタン孔、クリップ、バンド部51の2つの端部を通して留める枠状の部材であってもよい。
【0083】
投与位置規定部53は、バンド部51の延びる方向における中央部に設けられた開口部54と開口部54を塞ぐように開閉可能に設けられた蓋部55とから構成される。開口部54は、経皮投与デバイス10の支持面21Sを挿入可能な大きさを有しており、例えば、支持面21Sとほぼ等しい大きさを有する。
【0084】
開口部54の周囲には、蓋部55を閉じた状態でバンド部51に固定するための構造が設けられている。また、蓋部55は、蓋部55が閉じられたときに開口部54内で皮膚と対向する位置に、薬剤の投与部位を保護するとともに投与された薬剤が皮膚の表面に漏れ出ることを抑える保護部56を備えている。
【0085】
保護部56は、例えば、ガーゼやスポンジのように通気性と吸湿性を有するパッド部材とパッド部材を皮膚に押し付けるための板状の補助部材とから構成される。パッド部材としてスポンジが用いられる場合、スポンジの吸水膨潤率は100%以上であることが好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。また、乾燥時におけるスポンジの厚さは0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがさらに好ましい。スポンジは、生体親和性がある材質を有することが好ましく、こうしたスポンジとしては、セルローススポンジが容易に入手できるため好ましい。なお、パッド部材が投与された薬剤を過剰に吸い取ることを抑えるために、撥水性を有するシート等が保護部56に含まれていてもよい。
【0086】
図45や
図46が示すように、肢体Liである手首や腕の外側を1周するように、バンド部51が肢体Liに巻きつけられ、固定部52aが固定部52bに重ねられてこれらの固定部52a,52bが互いに固定されることによって、投与補助具50が肢体Liに固定される。このとき、投与位置規定部53の開口部54が薬剤を投与する予定の位置に配置されるように、肢体Liに対するバンド部51の位置が決定される。
図47が示すように、薬剤投与器具40は、経皮投与デバイス10と投与補助具50とから構成される。
【0087】
薬剤投与器具40が薬剤の投与に用いられるとき、経皮投与デバイス10の基体部21における支持面21Sと反対側の筒端には、シリンジ60の外筒61の先端部が接続される。基体部21の筒端には、外筒61の先端部を接続するための構造が設けられていればよい。
【0088】
経皮投与デバイス10は、支持面21Sを開口部54に向けて開口部54に挿入され、突起部22が皮膚に刺される。シリンジ60のピストン62が押下されることによって、外筒61内に収容されている薬剤が基体部21の内部に供給され、さらに、薬剤は貫通孔23を通って突起部22の先端から出る。シリンジ60の外筒61は透明もしくは半透明であって、外筒61には薬剤の充填量を示す目盛りが付されているため、外筒61内に充填されている薬剤の量を外部から確認することが可能であり、所望の量の薬剤を正確に投与しやすい。
【0089】
なお、基体部21に薬剤を供給するための器具は、シリンジ60に限られず、加圧によって薬剤を基体部21の内部および貫通孔23に流して突起部22の先端から放出させることのできる器具であればよい。
【0090】
なお、
図48が示すように、薬剤の投与に用いられる前、すなわち、シリンジ60に組み付けられて投与補助具50の開口部54に挿入される前の経皮投与デバイス10は、カバー部材70によって保護されていることが好ましい。カバー部材70は、弾性部材30の有する面のうち支持面21Sに接する面とは反対側の面と、突起部22のなかで弾性部材30から飛び出ている部分とを覆う形状を有し、弾性部材30に剥離可能に貼り付けられている。
【0091】
例えば、カバー部材70は、突起部22のなかで弾性部材30から飛び出ている部分を囲む凹部と、凹部の端部から張り出して弾性部材30の支持面21Sに接する面とは反対側の面に貼り付けられる部分とから構成される。また、カバー部材70は、カバー部材70を弾性部材30から剥離する際に使用者が指で摘むことのできる部分を有していると、カバー部材70の剥離が容易であるため好ましい。
【0092】
カバー部材70を構成する材料は特に限定されないが、材料としては、射出成形加工もしくはプレス加工による成形を容易に行うことのできる樹脂が好ましい。また、カバー部材70が、透明もしくは半透明であれば、カバー部材の70の内部を外から視認できるため好ましい。また、カバー部材70は、空気や水蒸気の透過性が小さく、長期にわたって経皮投与デバイス10を安定に保護できることが好ましい。こうしたカバー部材70を実現可能な材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が用いられることが好ましく、特に、PETは、γ線や電子線照射滅菌による劣化や発臭が少ないため好ましい。
【0093】
カバー部材70に覆われた状態で経皮投与デバイス10が保管されることによって、弾性部材30のなかで皮膚に貼り付けられる面の粘着性の低下が抑えられるとともに、突起部22が外部の物品等と接触して変形することが抑えられる。
【0094】
[薬剤投与器具を用いた薬剤の投与]
図49〜
図52を参照して、薬剤投与器具40を用いた薬剤の投与の手順について説明する。
薬剤投与器具40の使用者は、開口部54が薬剤を投与する予定の位置に配置されるように、投与補助具50を投与対象の肢体に固定する。このとき、
図49が示すように、蓋部55は開けられ、開口部54内には皮膚Skが露出している。経皮投与デバイス10には、薬剤Mが充填されたシリンジ60が接続され、使用者は、突起部22の先端を開口部54内に露出した皮膚Skに向けて、経皮投与デバイス10を開口部54に挿入して皮膚Skに押し付ける。
【0095】
図50が示すように、突起部22と弾性部材30と支持面21Sおよび支持面21Sの付近の基体部21とは、開口部54内に挿入され、突起部22は角質層を貫通して皮膚Skに刺さる。このとき、弾性部材30は押圧力を受けて突起部22の延びる方向に圧縮された状態で、皮膚Skの表面に接触する。使用者は、経皮投与デバイス10を皮膚Skに強く押し付けた後、その押圧力を弱める。
【0096】
図51が示すように、使用者が、経皮投与デバイス10に加えている押圧力を弱めると、弾性部材30が復元し、弾性部材30の厚みの増加に伴って、基体部21と突起部22とは皮膚Skの表面から離れる方向に動く。このとき、弾性部材30が皮膚Skの表面に貼り付いているため、突起部22が皮膚Skから抜け出たり突起部22が皮膚Skの中で傾いたりすることが抑えられる。
【0097】
これにより、皮膚Skに対する押圧が弱められ、この状態で、使用者はシリンジ60のピストン62を押圧する。その結果、シリンジ60から基体部21の内部空間に供給された薬剤Mは、基体部21の内部と貫通孔23とを通って突起部22の先端から出て、皮内に拡散される。皮膚Skに対する押圧が弱められていることにより、皮内に薬剤が拡散しやすくなっているため、薬剤を円滑に投与することができる。また、投与補助具50によって開口部54の位置に薬剤の投与予定位置が規定され、開口部54の位置に応じて突起部22を皮膚Skに刺すことによって薬剤の投与位置が決定できるため、薬剤を投与する位置の位置決めが容易である。また、薬剤の投与中にも突起部22および支持面21Sは開口部54内に位置するため、皮膚Skに対する経皮投与デバイス10の位置の安定性が高められる。
【0098】
図52が示すように、薬剤の投与が完了すると、使用者は、経皮投与デバイス10を開口部54から引き上げ、蓋部55を閉じる。これにより、保護部56が皮膚Skにおける薬剤の投与部位に接し、薬剤の投与部位が保護されるとともに、投与された薬剤が皮膚Skの表面に漏れ出ることが抑えられる。したがって、投与された薬剤の体内への浸透が補助される。
【0099】
なお、投与補助具50を利用せずに、経皮投与デバイス10を用いて薬剤の投与を行ってもよいが、上述のように、投与補助具50を利用することによって、容易に薬剤の投与を行うことができる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の経皮投与デバイスおよび薬剤投与器具によれば、以下の効果が得られる。
(1)支持面21Sに弾性部材30が配置されているため、投与対象の皮膚に突起部22が刺さる程度に、経皮投与デバイス10が皮膚に押し付けられたとき、支持面21Sと皮膚の表面との間で弾性部材30が圧縮された状態で弾性部材30が皮膚の表面に貼り付く。そして、経皮投与デバイス10に加えられている押圧力が弱められると、弾性部材30の形状が復元することに伴って、基体部21と突起部22とは皮膚の表面から離れる方向に動き、経皮投与デバイス10による皮膚に対する押圧が弱められる。このとき、弾性部材30が皮膚の表面に貼り付いているため、支持面21Sが皮膚の表面から過剰に離れること、ひいては、突起部22が皮膚から抜け出てしまうことが抑えられる。したがって、角質層を貫通するように力を加えて突起部22を皮膚に刺しつつも、刺さった突起部22が皮膚から抜け出ることを抑えながら皮膚への押圧を弱めて、皮内へ薬剤が浸透しやすくすることが可能であり、この状態で貫通孔23を通じて薬剤を投与することによって、薬剤の円滑な投与が可能である。
【0101】
(2)支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30が突起部22の周囲を取り囲んでいる構成では、突起部22の周囲を取り囲む位置で、経皮投与デバイス10が皮膚に貼り付くため、皮膚に対する突起部22の位置の安定性が高められる。
【0102】
(3)支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30が複数の突起部22からなる集合を取り囲んでいる構成では、弾性部材30が突起部22を1つずつ取り囲む構成と比較して、弾性部材30の形状が複雑になることや弾性部材30における形状の精度が得られがたくなることが抑えられるため、弾性部材30の形成が容易である。
【0103】
(4)支持面21Sと対向する方向から見て、弾性部材30が突起部22を1つずつ取り囲んでいる構成では、複数の突起部22からなる集合を1つの弾性部材30が取り囲む形態と比較して、支持面21Sにおいて弾性部材30が占有する面積を大きく確保しやすい。したがって、皮膚の表面に貼り付く弾性部材30の面積を大きく確保しやすいため、皮膚に対する突起部22の位置の安定性が高められる。
【0104】
(5)経皮投与デバイス10が複数の弾性部材30を備える構成では、弾性部材30の配置や弾性部材30の発揮する機能についての調整の自由度が高められる。
【0105】
(6)複数の弾性部材30に、弾性部材30の弾性率や、弾性部材30の有する粘着性や、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが異なる弾性部材が含まれる。こうした構成によれば、支持面21S内での位置による押圧力のばらつきや薬剤の投与部位内での皮膚の伸びやすさのばらつき等に応じて、突起部22における皮膚に刺さる長さを調整することや、支持面21S内での位置に応じて経皮投与デバイス10が皮膚に貼り付く強さを調整することができる。
【0106】
(7)弾性部材30が、突起部22の延びる方向における弾性部材30の長さが各々で異なる複数の部位を有する構成では、支持面21S内での位置に応じて皮膚に刺さる突起部22の長さや皮膚の伸びを調整したり、経皮投与デバイス10の皮膚への貼り付き方を調整したりすることができる。
【0107】
(8)経皮投与デバイス10を投与補助具50とともに用い、投与補助具50を薬剤の投与対象に巻き付けた後、開口部54に経皮投与デバイス10を挿入して突起部22を開口部54内の皮膚に刺し、薬剤を投与することによって、皮膚に対する経皮投与デバイス10の位置決め、すなわち、薬剤を投与する位置の位置決めを容易に行うことができる。また、薬剤の投与中における皮膚に対する経皮投与デバイス10の位置の安定性も高められる。さらに、薬剤の投与後に蓋部55によって開口部54を塞ぐことにより、投与された薬剤の体内への浸透が補助される。したがって、経皮投与デバイス10を用いた円滑な薬剤の投与を容易に進めることができる。