特許第6885035号(P6885035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6885035-蓄電デバイス用外装材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885035
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/10 20210101AFI20210531BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20210531BHJP
   B32B 7/10 20060101ALI20210531BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   B32B15/08 E
   B32B7/10
   B32B27/32 101
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-229076(P2016-229076)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-85294(P2018-85294A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】室井 勇輝
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−044806(JP,A)
【文献】 特開2016−171078(JP,A)
【文献】 特開2012−168327(JP,A)
【文献】 特開2000−194190(JP,A)
【文献】 特開平06−238830(JP,A)
【文献】 特開2015−088451(JP,A)
【文献】 特開2013−164530(JP,A)
【文献】 特開2007−073313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
B32B 7/10
B32B 15/08
B32B 27/32
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも易滑層、基材層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層をこの順に備え、
前記易滑層が、重量平均分子量が1500以上である高分子化合物からなる反応性滑剤を含有
前記反応性滑剤が、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基、アクリロイル基、ビニル基及びアリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有するシリコーン系滑剤であり、
前記易滑層の厚さが、20〜400nmである、蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記基材層が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔又はステンレス箔からなる、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記金属箔層が両面に腐食防止層を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記シーラント接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化するスマートフォン等の携帯機器の電池用外装材として、例えば、エポキシ系樹脂層、金属箔層、熱接着性樹脂層をこの順に備える積層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−176465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、外装材を薄膜化するために、基材層としてエポキシ系の塗工層をバリア層上に形成する一方で、成型加工性を向上させるため、内層側の熱接着性樹脂層(電池内容物と接する層)表面に滑剤を塗布している。しかしながら、内層への滑り性付与のみでは必要とされる成型加工量が得られないことが分かった。
【0005】
そこで、外層側の基材層にも滑り性を付与させるため、基材層を形成するための塗工液に滑剤を添加したところ、得られた基材層が脆くなり、外装材全体としての延伸性が著しく低下してしまう場合があることが分かった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、延伸性を維持しつつ、外層側に優れた滑り性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも易滑層、基材層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層をこの順に備え、易滑層が、重量平均分子量が1500以上である高分子化合物からなる滑剤を含有する、蓄電デバイス用外装材を提供する。
【0008】
本発明の外装材であれば、外装材の延伸性を維持できるとともに、外層側となる基材層表面に優れた滑り性を付与できる。
【0009】
本発明において、滑剤が反応性滑剤であることが好ましい。これにより、基材層表面により優れた滑り性を付与できるとともに、延伸性を維持し易くなる。
【0010】
本発明において、反応性滑剤が、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基、アクリロイル基、ビニル基及びアリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有するシリコーン系滑剤であることが好ましい。これにより、基材層表面により優れた滑り性を付与できるとともに延伸性を維持し易くなる。
【0011】
本発明において、基材層が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。これにより、電解液耐性をより向上し易くなる。
【0012】
本発明において、金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔又はステンレス箔からなることが好ましい。これにより、外装材の延伸性を維持し易くなる。
【0013】
本発明において、金属箔層が両面に腐食防止層を有することが好ましい。これにより、金属箔層の腐食を抑制し易くなる。
【0014】
本発明において、シーラント接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。これにより、内層側の滑り性も得易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、延伸性を維持しつつ、外層側に優れた滑り性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用外装材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<蓄電デバイス用外装材>
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」と称する。)1を示す断面図である。
【0018】
本実施形態の外装材は、金属箔層の第一の面上に第一の腐食防止層、基材層及び易滑層をこの順に備え、金属箔層の第二の面上に第二の腐食防止層、シーラント接着層及びシーラント層をこの順に備えている。すなわち、図1に示すように、同外装材1は、バリア機能を発揮する金属箔層11と、金属箔層11の第一の面に順次形成された第一の腐食防止層12、基材層13及び易滑層14と、金属箔層11の第二の面に形成された第二の腐食防止層15と、第二の腐食防止層15上に順次形成されたシーラント接着層16及びシーラント層17とを備えている。外装材1を用いて蓄電デバイスを形成する際は、易滑層14が最外層となり、シーラント層17が最内層となる。
【0019】
[金属箔層]
金属箔層11としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス、ニッケル、鉄、マグネシウム、チタン等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性の面から、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔が好ましい。さらに、コストの面からアルミニウム箔がより好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
【0020】
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、外装材1は耐ピンホール性及び延展性により優れる。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば外装材1は柔軟性により優れる。
【0021】
金属箔層11の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、9〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
【0022】
[基材層]
基材層13は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性や、電解液が付着しても変質しない電解液耐性を外装材1に付与するとともに、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
【0023】
基材層13は樹脂で形成され、金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、好ましくは接着層を介さずに直接形成されている。なお、塗工により形成された基材層13を特に塗工層ということもできる。
【0024】
基材層13は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等の各種樹脂を使用して形成することができる。延伸性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂が好ましく、さらに、金属箔層11への延伸時追従性の点からポリエステル樹脂及びウレタン樹脂がより好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂としては、溶剤可溶型と水分散型がある。溶剤可溶型としては、例えば原料のポリアルコールであるエチレングリコール等の一部をシクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコールと置き換えることで得られるものが挙げられる。なお、溶剤可溶性という観点から、ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールの脱水縮合により得られるポリエチレンテレフタレートにおいて、エチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置き換えた非晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂は単独で又は組み合わせて使用することができる。水分散型としては、例えば2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなるアルコール成分とが重縮合して得られるポリエステルに、スルホン酸金属塩基、カルボキシル基、リン酸基等の親水性の極性基を導入し、水に分散させたものが挙げられる。
【0026】
ウレタン樹脂としては、例えば2液硬化型、水分散型等がある。2液硬化型としては、例えば分子内に水酸基を有するアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を主剤とし、分子内にイソシアネート基を有するTDI系、MDI系、XDI系、IPDI系、HDI系等のイソシアネートを硬化剤として添加し、塗液としたものが挙げられる。なお、当該塗液を塗工後、溶媒を除去し、水酸基とイソシアネートとの反応を促進するため、例えば60℃5日間のエージング処理を行うことで、塗工膜を得ることができる。水分散型としては、例えば分子内に水酸基を有するポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリオール成分と、分子内にイソシアネート基を有するTDI系、MDI系、XDI系、IPDI系、HDI系等のイソシアネートとの反応生成物に親水基を導入(自己乳化型)し、水に分散させたものが挙げられる。
【0027】
基材層13の厚さは、絶縁性と延伸性を維持するという点から、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。基材層13は、金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に直接形成され得るため、基材層13の厚さを20μm以下とすることで、従来の外装材よりも薄い構成とすることも容易である。
【0028】
[易滑層]
易滑層14は外装材の最外層に設けられ、成型加工に必要な滑り性を外装材1に付与する役割を果たす。基材層13中に滑剤を添加せず、別途易滑層14を設けることによって、基材層13の延伸性を劣化させずに外装材表面に滑り性を付与することができる。本実施形態においては、易滑層14が基材層13の全面を連続的に覆っている態様、あるいは部分的に覆っている態様のいずれも含み得る。例えば、易滑層14の構成成分が微粒子の形態をとって基材層13上に付着している態様は、厳密には基材層13の全面を隙無く連続的に覆っているわけではない(部分的に覆っている)が、本実施形態においては、そのような態様も易滑層14を構成するものとして定義する。
【0029】
易滑層14は、重量平均分子量が1500以上、好ましくは2500以上、より好ましくは4000以上である高分子化合物からなる滑剤を含有する。滑剤の重量平均分子量が1500未満の場合では、基材層13中に滑剤が埋没し、滑り性が得られない虞がある。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、塗工適性の観点から、10000以下とすることができる。
【0030】
重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーや沈降平衡法により測定することができる。
【0031】
滑剤(高分子化合物)としては、ポリオレフィンワックス、ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、より滑り性を得易いことからポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0032】
滑剤としては、さらに、基材層13を構成する樹脂と反応する、又は水素結合等により基材層13を構成する樹脂と相互作用できる有機基を含む、反応性滑剤であることが好ましい。反応性滑剤を使用することにより、滑剤が基材層13中に埋もれ難く、より滑り性を付与させることができる。
【0033】
反応性滑剤としては、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基、アミノ基、アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の官能基(反応性基)を有するシリコーン系滑剤(ポリジメチルシロキサン)が挙げられる。どのような反応性滑剤を使用するかは、基材層13に用いる樹脂との反応性の観点から、適宜選択することができる。
【0034】
易滑層14における、滑剤の量(塗布量)は5〜600mg/mとすることができ、10〜500mg/mであってもよい。滑剤の量が5mg/m以上であることにより、十分な滑り性を発現し易くなり、一方、600mg/m以下であることにより、製造装置や部品の汚染を防ぎ易くなる。なお、易滑層14における滑剤の量は、例えば滑剤が溶解する溶剤による易滑層の拭き取り前後の重量差を用いて測定することができる。
【0035】
易滑層14の厚さは、十分な滑り性の発現の観点から、10〜500nmであることが好ましく、20〜400nmであることがより好ましい。
【0036】
易滑層14は、その他の成分として難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等を含んでいてもよい。ただし、易滑層14の主成分はあくまでも滑剤であり、その他の成分は、含まれ得るとしても少量である。滑剤の含有量は、易滑層14の全質量を基準として、少なくとも90質量%以上とすることができ、100質量%(すなわち、易滑層が滑剤からなる)であってもよい。
【0037】
[腐食防止層]
第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層15(以下、「腐食防止層」という)は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層11の腐食を抑制する役割を果たす。また、基材層13と金属箔層11、及び金属箔層11とシーラント接着層16との密着力を高める役割を果たす。
【0038】
腐食防止層としては、塗布型又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜や、金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層が挙げられる。このような塗膜あるいは層は、酸に対する腐食防止効果に優れる。塗膜としては、例えば、酸化セリウム、リン酸塩及び各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物及び各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理塗膜等が挙げられる。なお、金属箔層11の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上述したものには限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。一方、金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層としては、使用される金属箔層11に応じた層が挙げられる。例えば金属箔層11としてアルミニウム箔が用いられた場合は、酸化アルミニウム層が腐食防止層として機能する。これらの腐食防止層は、単層で又は複数層組み合わせて使用することができる。また、第一の腐食防止層12と第二の腐食防止層15は同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。さらに、腐食防止層には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0039】
腐食防止層の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20〜500nmがより好ましい。
【0040】
[シーラント接着層]
シーラント接着層16は、第二の腐食防止層15が形成された金属箔層11とシーラント層17とを接着する層である。外装材1は、シーラント接着層16を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成との大きく二つに分けられる。
【0041】
熱ラミネート構成の場合、シーラント接着層16を形成する接着成分としては、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されたものであることから、例えばシーラント層17としてポリオレフィン系樹脂フィルム等で形成した無極性の層を用い、また第二の腐食防止層15として極性を有する層を用いた場合、これらの両方の層に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生してもシーラント接着層16の劣化による密着力の低下を防止し易い。なお、シーラント接着層16に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0042】
酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
【0043】
熱ラミネート構成の場合、シーラント接着層16は、前記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成することができる。
【0044】
ドライラミネート構成の場合、シーラント接着層16の接着成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。ただし、当該ポリウレタン系接着剤はエステル基やウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているため、より高い信頼性が求められる用途には熱ラミネート構成が好ましい。
【0045】
ドライラミネート構成のシーラント接着層16は、接着成分を第二の腐食防止層15上に塗工後、乾燥することで形成することができる。なお、ポリウレタン系接着剤を用いるのであれば、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
【0046】
シーラント接着層16の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、2〜50μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
【0047】
なお、シーラント接着層16がドライラミネート構成の場合、シーラント層17に含有された滑剤やシーラント層17の上に塗布された滑剤がシーラント接着層16にトラップされ、シーラント層17の滑り性が低下する傾向がある。そのため、シーラント層17の滑り性維持の点から、シーラント接着層16は酸変性ポリオレフィン樹脂を押出し装置にて形成し、熱ラミネートで積層することが好ましい。
【0048】
[シーラント層]
シーラント層17は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層17としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸を用いてグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、例えば、シーラント接着層16の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0051】
シーラント層17は、単層フィルムでも多層フィルムでもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
【0052】
また、シーラント層17には、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が配合されてもよい。
【0053】
シーラント層17の厚さは、絶縁性の確保という観点から、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0054】
外装材1としては、ドライラミネーションによってシーラント層17が積層されたものでもよいが、シーラント層17の滑り性の点から、シーラント接着層16を酸変性ポリオレフィン系樹脂とし、サンドイッチラミネーション、又は共押出し法によって、シーラント層17が積層されたものであることが好ましい。
【0055】
<蓄電デバイス用外装材の製造方法>
以下、本実施形態の外装材1の製造方法について説明する。具体的には、同製造方法として下記工程(1)〜(4)を有する方法が挙げられるが、下記内容は一例であり、外装材1の製造方法は下記の内容に限定されない。
【0056】
工程1:金属箔層11の両面(第一の面及び第二の面)に、第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層15を形成する工程。
【0057】
工程2:金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、基材層用原料(樹脂材料)を用いて基材層13を形成する工程。
【0058】
工程3:金属箔層11の第二の面に形成された第二の腐食防止層15上に、シーラント接着層16を介してシーラント層17を貼り合わせる工程。
【0059】
工程4:基材層13の金属箔層11とは反対の面に易滑層14を形成する工程。
【0060】
(工程1)
金属箔層11の両面に、例えば腐食防止処理剤を塗布し、これを乾燥して第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層15を形成する。腐食防止処理剤としては、前記したセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。あるいは、金属箔層11の表面を酸化処理することにより、金属箔層11の両面に金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層(第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層15)を形成する。なお、金属箔層11の一方の面を腐食防止処理剤により処理し、他方の面を酸化処理してもよい。
【0061】
(工程2)
金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、基材層となる基材層用原料(樹脂材料)を塗布し、これを乾燥して基材層13を形成する。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。塗工後は、例えば60℃にて7日間のエージング処理で硬化促進を得ることができる。
【0062】
(工程3)
基材層13、第一の腐食防止層12、金属箔層11及び第二の腐食防止層15がこの順に積層された積層体の、第二の腐食防止層15上にシーラント接着層16を形成し、積層体とシーラント層17を形成する樹脂フィルムを貼り合わせる。この際、シーラント接着層16及びシーラント層17を共押出ししすることで積層体に積層することもできる。
【0063】
基材層13の金属箔層11とは反対の面上に、易滑層となる滑剤を含む原料を塗布し、これを乾燥して易滑層14を形成する。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。
【0064】
以上説明した工程(1)〜(4)により、外装材1が得られる。なお、外装材1の製造方法の工程順序は、工程(1)〜(4)を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程(3)を行ってから工程(2)を行ってもよく、また工程(4)を行ってから工程(3)を行ってもよい。
【0065】
このようにして得られた外装材1を2枚用意してシーラント層17同士を対向させ、あるいは1枚の外装材1を折り返してシーラント層17同士を対向させ、内部に発電要素や端子となるタブ部材等を配置し、周縁をヒートシールにより接合することで、外装材1を用いた蓄電デバイスのセルが完成する。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0067】
[使用材料]
実施例及び比較例の外装材の作製に使用した材料を以下に示す。
【0068】
(易滑層)
滑剤A−1:水酸基含有ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量8000)
滑剤A−2:グリシジル基含有ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量3500)
滑剤A−3:カルボキシル基含有ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量10000)
滑剤A−4:アミノ基含有ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量6000)
滑剤A−5:ポリエチレンワックス(重量平均分子量6000)
滑剤A−6:ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1500)
滑剤A−7:ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量20000)
滑剤A−8:エルカ酸アミド(重量平均分子量338)
滑剤A−9:エチレンビスステアリン酸アミド(重量平均分子量593)
【0069】
(基材層)
基材層用原料B−1:水分散型ポリウレタン樹脂
基材層用原料B−2:2液硬化型ポリウレタン樹脂
基材層用原料B−3:水分散型ポリエステル樹脂
基材層用原料B−4:溶剤可溶型ポリエステル樹脂
基材層用原料B−5:ポリジメチルシロキサンを2質量%含む水分散型ポリウレタン樹脂
【0070】
(基材層側腐食防止層:第一の腐食防止層)
腐食防止層C−1:酸化セリウム層(層厚100nm)
腐食防止層C−2:酸化クロム層(層厚100nm)
腐食防止層C−3:酸化アルミ層(層厚100nm)
【0071】
(金属箔層)
金属箔D−1:軟質アルミニウム箔8021材(東洋アルミニウム社製、厚さ30μm)
金属箔D−2:銅箔(JX金属社製、厚さ30μm)
金属箔D−3:ステンレス箔(日本金属社製、厚さ30μm)
【0072】
(シーラント層側腐食防止層:第二の腐食防止層)
腐食防止層E−1:酸化セリウム層(層厚100nm)
【0073】
(シーラント接着層)
接着樹脂F−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製、層厚10μm)
【0074】
(シーラント層)
熱融着樹脂G−1:ポリプロピレン系樹脂(商品名「プライムポリプロ」、プライムポリマー社製、層厚20μm)
【0075】
(外装材の作製)
金属箔D−1、D−2又はD−3の一方の面に腐食防止層E−1をダイレクトグラビア塗工にて形成した。次に腐食防止層E−1が形成されていない金属箔D−1、D−2又はD−3の他方の面に、腐食防止層C−1、C−2又はC−3をダイレクトグラビア塗工にて形成した。得られた積層体のうち、金属箔D−1、D−2又はD−3において腐食防止層C−1、C−2又はC−3を形成した面に、それぞれ基材層用原料B−1〜B−5のいずれかを厚さ10μmとなるように塗工し、基材層(塗工層)を形成した。
【0076】
次に、得られた各実施例及び比較例の積層体の腐食防止層E−1側に、押出し装置にて接着樹脂F−1と熱融着樹脂G−1を共押出して接着層とシーラント層を形成した。
【0077】
その後、得られた各実施例及び比較例の積層体の基材層側に、滑剤A−1〜A−9を含む原料のいずれかをダイレクトグラビア塗工にて、塗布量(固形分)が50mg/mとなるように塗布し、乾燥させることで易滑層を形成した。以上の工程を経て、各実施例及び比較例の外装材を作製した。
【0078】
[各種評価]
以下の方法に従って各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
[延伸性の評価]
各例で得られた外装材を、JIS K7127 type−5の形状に打ち抜き、引張試験機にて引張試験(チャック間距離50mm、標点間距離25mm、引張速度50mm/min)を行った。得られた延伸率について、以下の基準に従って評価した。
「A」:延伸率が15%以上。
「B」:延伸率が10%以上、15%未満。
「C」:延伸率が10%未満。
【0080】
[滑り性の評価]
各例で得られた外装材を幅60mm、長さ120mmにカットし、測定用おもり(幅60mm、長さ100mm)に易滑層(基材層)面が外側になるよう取り付けた。また、測定機本体側の試料として、外装材を幅85mm、長さ250mmにカットし、測定機本体へ易滑層(基材層)面が外側になるよう取り付けた。測定機には摩擦測定機AN−S2(東洋精機製作所社製)を用いた。測定機本体へ取り付けた外装材の易滑層(基材層)とおもりに取り付けた外装材の易滑層(基材層)が接するようにおもりを設置し、測定機の測定台を傾斜させ、おもりが滑り出す角度(弧度法)の正接を静摩擦係数とし評価した(JIS P8147 傾斜法)。得られた静摩擦係数について、以下の基準に従って評価した。
「A」:静摩擦係数が0.30未満。
「B」:静摩擦係数が0.30以上、0.40未満。
「C」:静摩擦係数が0.40以上。
【0081】
【表1】
【0082】
本発明の構成を有する実施例では、十分な延伸性を維持しつつ、外層側(基材層側)に優れた滑り性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することができた。
【符号の説明】
【0083】
1…蓄電デバイス用外装材(外装材)、11…金属箔層、12…第一の腐食防止層、13…基材層、14…易滑層、15…第二の腐食防止層、16…シーラント接着層、17…シーラント層。
図1