特許第6885047号(P6885047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885047
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】蓄電素子、及び、蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20210531BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20210531BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20210531BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20210531BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20210531BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20210531BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20210531BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20210531BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20210531BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20210531BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M2/26 A
   H01M2/34 B
   H01M10/04 Z
   H01M4/66 A
   H01M4/04 A
   H01G11/26
   H01G11/86
   !H01M4/13
   !H01M10/058
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-240452(P2016-240452)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2017-130439(P2017-130439A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-8303(P2016-8303)
(32)【優先日】2016年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−087917(JP,A)
【文献】 特開2012−003881(JP,A)
【文献】 特開2009−245683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02
H01G 11/26
H01G 11/86
H01M 4/04
H01M 4/66
H01M 10/04
H01M 50/531
H01M 50/572
H01M 4/13
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板と正極板とを有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記負極板は、
基材層と、前記基材層上に一部または全部が露出した状態で形成された活物質層とを有し、
前記負極板の周縁部は、
前記蓄電素子の集電体に接続される第1の辺に配置され、前記活物質層が形成されていない非形成部と、
前記第1の辺と異なる第2の辺に配置され、前記活物質層が露出していない非露出部とを有し、
前記非露出部は、前記活物質層が形成されていない部分により構成され、
前記非形成部は、前記負極板の両長辺のうちの一方の長辺に配置され、前記非露出部は、前記両長辺のうちの他方の長辺に配置されている
蓄電素子
【請求項2】
極板と正極板とを有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記負極板は、
基材層と、前記基材層上に一部または全部が露出した状態で形成された活物質層とを有し、
前記負極板の周縁部は、
前記蓄電素子の集電体に接続される第1の辺に配置され、前記活物質層が形成されていない非形成部と、
前記第1の辺と異なる第2の辺に配置され、前記活物質層が露出していない非露出部とを有し、
前記電極体は、前記負極板と前記正極板とが巻き芯に巻き付けられて形成され、
前記非露出部は、前記負極板の巻回方向の巻き始めの端部に配置され、前記巻き芯及び前記巻き芯から突出した突起部によって覆われた部分により構成されている
蓄電素子
【請求項3】
前記負極板は、短辺の長さが前記正極板の短辺の長さよりも大きい
請求項またはに記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記負極板は、両短辺及び両長辺を合わせた周長が前記正極板よりも大きい
請求項のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記基材層は、前記正極板の電位によって溶解する金属を含む
請求項のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
極板と正極板とを有する電極体を備える蓄電素子の製造方法であって、
前記負極板の基材層上に、一部または全部が露出した状態で活物質層を形成する負極板形成工程と、
前記負極板形成工程で形成された負極板と正極板とを積層して電極体を形成する電極体形成工程とを含み、
前記負極板形成工程では、前記蓄電素子の集電体に接続される第1の辺に配置され、前記活物質層が形成されていない非形成部と、前記第1の辺と異なる第2の辺に配置され、前記活物質層が露出していない非露出部とを周縁部に有する負極板を形成し、
前記負極板形成工程では、前記非露出部を、前記活物質層が形成されていない部分により構成し、かつ、前記非形成部を、前記負極板の両長辺のうちの一方の長辺に配置し、前記非露出部を、前記両長辺のうちの他方の長辺に配置する
蓄電素子の製造方法。
【請求項7】
極板と正極板とを有する電極体を備える蓄電素子の製造方法であって、
前記負極板の基材層上に、一部または全部が露出した状態で活物質層を形成する負極板形成工程と、
前記負極板形成工程で形成された負極板と正極板とを積層して電極体を形成する電極体形成工程とを含み、
前記負極板形成工程では、前記蓄電素子の集電体に接続される第1の辺に配置され、前記活物質層が形成されていない非形成部と、前記第1の辺と異なる第2の辺に配置され、前記活物質層が露出していない非露出部とを周縁部に有する負極板を形成し、
前記電極体形成工程では、前記負極板と前記正極板とを巻き芯に巻き付けて前記電極体を形成し、
前記負極板形成工程では、前記非露出部を、前記負極板の巻回方向の巻き始めの端部に配置し、前記非露出部を、前記巻き芯及び前記巻き芯から突出した突起部によって覆われた部分により構成する
蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極板、正極板と負極板とを有する電極体を備える蓄電素子、負極板の製造方法、及び、蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境問題への取り組みとして、ガソリン自動車から電気自動車への転換が重要になってきている。このため、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を動力源に用いた電気自動車の開発が進められている。
【0003】
従来、蓄電素子の電極として、例えば、基材層の連続体に対して活物質層を形成した後に、これを所定の長さに裁断(スリット)することによって製造された電極を用いる構成が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−163942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように基材層と活物質層とを共に裁断した電極を用いた場合、電極の裁断端部(スリット端部)の一部が脱落して不純物として混入する(コンタミネーション、以下「コンタミ」と記載する)ことによる種々の不具合が生じる場合がある。このような不具合としては、例えば、容量低下及び抵抗上昇等の性能低下、また、内部短絡等が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、コンタミの発生を抑制できる負極板、蓄電素子、負極板の製造方法、及び、蓄電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る負極板は、蓄電素子の電極体に備えられる負極板であって、基材層と、前記基材層上に一部または全部が露出した状態で形成された活物質層とを有し、前記負極板の周縁部は、前記蓄電素子の集電体に接続される第1の辺に配置され、前記活物質層が形成されていない非形成部と、前記第1の辺と異なる第2の辺に配置され、前記活物質層が露出していない非露出部とを有する。
【0008】
ここで、正極板及び負極板が積層された電極体では、電極体が蓄電素子の容器の内壁によって圧迫されることにより、正極板及び負極板の互いに対向する部分同士が圧迫される。よって、対向する部分では、圧迫によって基材層の切り粉(切削粉)や活物質層の浮き上がりを抑制できるので、コンタミの要因を抑制できる。一般的に負極板の裁断端部の一部が脱落した場合には内部短絡等の不具合が生じやすい。したがって、蓄電素子におけるコンタミの発生を抑制するためには、特に負極板に起因するコンタミの発生を抑制することが効果的である。
【0009】
そこで、本態様に係る負極板によれば、活物質層が露出していない非露出部を周縁部に有しているため、負極板の周縁部における活物質の脱落を抑制でき、コンタミの発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、上記の負極板と正極板とを有する電極体を備える。
【0011】
この構成によれば、活物質層が露出していない非露出部を負極板の周縁部に配置することにより、負極板の裁断端部の一部の脱落を抑制できるので、コンタミの発生を抑制できる。
【0012】
また、前記非露出部は、前記基材層に取り付けられた被覆材により当該基材層が覆われ
た部分、及び、前記活物質層が形成されていない部分の少なくとも一方により構成されていることにしてもよい。
【0013】
ここで、基材層に取り付けられていない被覆材により当該基材層が覆われている場合には、被覆材と共に基材層の端部が脱落する虞がある。つまり、被覆材と共に基材層が脱落することによりコンタミが発生する虞がある。このため、被覆材を基材層に取り付けることで当該被覆材の脱落を抑制して基材層の脱落をより確実に抑制することで、コンタミの発生をより確実に抑制できる。
【0014】
また、負極板の周縁部に活物質層が配置されていない部分を配置することにより、活物質層が形成されていない部分を裁断して負極板を製造することができる。よって、コンタミの発生を抑制できる。
【0015】
また、前記非露出部は、前記負極板の短辺に配置されていることにしてもよい。
【0016】
このように非露出部が負極板の短辺に配置されていることにより、長手方向に沿って一様に活物質層が形成された負極板の連続体(以下、「負極母材」と記載する)を裁断することにより負極板を製造する場合であっても、コンタミの発生を抑制できる。
【0017】
また、前記非露出部は、前記基材層に取り付けられた被覆材により前記基材層が覆われた部分により構成され、前記負極板の両短辺に配置されていることにしてもよい。
【0018】
ここで、負極母材の長手方向において活物質層を間欠的に形成する、いわゆる間欠塗工は、製造上難しい場合がある。このため、負極板の短辺には、活物質層が形成されていない部分を設けにくい。そこで、負極板の両短辺に配置される非露出部を被覆材により基材層が覆われた構成とすることにより、両短辺のいずれにおいてもコンタミの要因を抑制できる。
【0019】
また、前記非露出部は、前記負極板の長辺に配置されていることにしてもよい。
【0020】
ここで、負極板の短辺と長辺とで、単位長さ当たりに発生する基材層の切り粉及び活物質層の脱落の量が同等の場合には、長辺における当該切り粉及び当該脱落が、コンタミの要因となりやすい。このため、負極板の長辺に非露出部を配置することで、コンタミの要因が生じやすい箇所において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0021】
また、前記非露出部は、前記活物質層が形成されていない部分により構成され、前記非形成部は、前記負極板の両長辺のうちの一方の長辺に配置され、前記非露出部は、前記両長辺のうちの他方の長辺に配置されていることにしてもよい。
【0022】
ここで、負極板の長辺に配置された非露出部が、例えば、被覆材により活物質層が覆われた部分により構成されている場合、負極板の両長辺の厚みが互いに異なり得る。このため、正極板及び負極板が巻回されることで形成された、いわゆる巻回型の電極体では、巻回時に負極板が蛇行することにより、巻回の精度が低下して歩留まりが悪化する虞がある。また、巻回型の電極体に限らず、負極板の両長辺の厚みが互いに異なることにより電極体の寸法管理が困難になるため、蓄電素子の容器内への電極体の収容が困難になる。そこで、負極板の長辺に配置された非露出部を活物質層が配置されていない部分により構成することで、電極体の寸法管理を容易にし、歩留まりを維持しつつ、コンタミの発生を抑制できる。
【0023】
また、前記負極板は、短辺の長さが前記正極板の短辺の長さよりも大きいことにしてもよい。
【0024】
ここで、正極板及び負極板が積層された電極体では、電極体が蓄電素子の容器の内壁によって圧迫されることにより、正極板及び負極板の互いに対向する部分同士が圧迫される。よって、対向する部分では、圧迫によって基材層の切り粉や活物質層の浮き上がりを抑制できる。ただし、負極板は短辺の長さが正極板よりも大きいため、負極板の短手方向両端部は正極板に対向せずに圧迫されにくい。よって、負極板の短手方向両端部で基材層の切り粉や活物質層の浮き上がりが生じやすくなり、コンタミが発生する虞がある。このため、負極板の長辺に非露出部を配置することにより、コンタミの要因が生じやすい箇所において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0025】
また、前記負極板は、両短辺及び両長辺を合わせた周長が前記正極板よりも大きいことにしてもよい。
【0026】
ここで、正極板及び負極板の各々の短辺及び長辺において、単位長さ当たりに発生する基材層の切り粉及び活物質層の脱落の量が同等の場合には、両短辺及び両長辺を合わせた周長が大きい電極によって、コンタミが発生しやすい。このため、正極板よりも周長が大きい負極板の周縁部に非露出部を配置することで、コンタミの要因が生じやすい電極において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0027】
また、前記基材層は、前記正極板の電位によって溶解する金属を含むことにしてもよい。
【0028】
ここで、負極板の基材層が正極板の電位によって溶解する金属を含む場合、負極板の基材層の切り粉が発生すると、当該切り粉が正極板で溶解してイオン化した後に負極板でデンドライト状に析出することによる内部短絡が発生する虞がある。このため、負極板の周縁部に非露出部を配置することにより、負極板の基材層の切り粉の発生を抑制できるので、負極板におけるデンドライト状の析出による内部短絡の発生を抑制できる。
【0029】
なお、本発明は、負極板、及び、蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該負極板の製造方法、及び、当該蓄電素子の製造方法としても実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、蓄電素子の電極体に備えられる負極板であって、コンタミの発生を抑制できる負極板等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の形態1に係る蓄電素子の外観を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る蓄電素子の容器内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る電極体の巻回状態を一部展開して示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る電極体の構成を示す上面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る電極体の構成を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る非露出部の構成を示す断面斜視図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る電極体を製造する工程及びその一部拡大図である。
図8】本発明の実施の形態1の変形例1に係る非露出部の構成を示す断面斜視図である。
図9】本発明の実施の形態1の変形例2に係る電極体の構成を示す斜視図及びその一部拡大図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る電極体の巻回状態を一部展開して示す斜視図である。
図11】本発明の実施の形態2に係る電極体の構成を示す断面図である。
図12】本発明のその他の実施の形態に係る非露出部の構成を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る負極板、蓄電素子、負極板の製造方法、及び、蓄電素子の製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密には一致しない。
【0033】
(実施の形態1)
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る蓄電素子10の容器内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器100の本体111を分離した状態での構成を示す斜視図である。
【0035】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0036】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、図2に示すように、容器100内方には、正極集電体120と、負極集電体130と、電極体400とが収容されている。
【0037】
なお、上記の構成要素の他、正極集電体120及び負極集電体130の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するための安全弁、または、電極体400等を包み込む絶縁フィルムなどが配置されていてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0038】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0039】
電極体400は、正極板(以下、単に正極ともいう)と負極板(以下、単に負極ともいう)とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。電極体400の詳細な構成については、後述する。
【0040】
なお、図2では、電極体400の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、電極体400の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよいし、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した形状でもよい。
【0041】
正極端子200は、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
【0042】
正極集電体120は、電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子200と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体120は、電極体400の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0043】
負極集電体130は、電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子300と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体130は、電極体400の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0044】
具体的には、正極集電体120及び負極集電体130は、本体111の壁面から蓋体110に亘って当該壁面及び蓋体110に沿って屈曲状態で配置される金属製の板状部材である。また、正極集電体120及び負極集電体130は、蓋体110に固定的に接続されており、電極体400の正極及び負極にそれぞれ溶接などによって固定的に接続されている。これにより、電極体400は、容器100の内部において、正極集電体120及び負極集電体130により、蓋体110から吊り下げられた状態で保持される。
【0045】
次に、電極体400の構成について、図3図5を用いて詳細に説明する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電極体400の巻回状態を一部展開して示す斜視図である。
【0047】
また、図4は、本発明の実施の形態1に係る電極体400の構成を示す上面図である。具体的には、負極420の巻回方向の端部を拡大し、Z軸方向プラス側から見た図である。なお、同図は、説明の都合上、セパレータ430を透視した図となっており、正極410の正極活物質層が形成されている領域である形成部410cと、負極420の非露出部420b(後述する)及び負極活物質層が形成されている領域である形成部420cとに、ハッチングを施している。
【0048】
また、図5は、本発明の実施の形態1に係る電極体400の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、図4のA−A’断面で切断した場合の断面を示す図である。なお、図5では、巻回されることにより繰り返し積層された、複数組の正極410、負極420及びセパレータ430のうち1組のみを図示し、他の組についての図示は省略している。
【0049】
図3図5に示すように、電極体400は、正極410と負極420と2つのセパレータ430とが、セパレータ430、負極420、セパレータ430及び正極410の順に
配置されるようにして、巻回されて形成されている。
【0050】
正極410は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる長尺帯状の導電性の正極集電箔の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。具体的には、図5に示すように、正極410は、正極基材層411と、正極活物質層412及び413とを有する。
【0051】
正極基材層411は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の導電性の集電箔である。
【0052】
正極活物質層412及び413は、正極基材層411上に一部または全部が露出(本実施の形態では、全部が露出)した状態で形成された活物質層である。
【0053】
具体的には、正極活物質層412は、正極基材層411の内周側(図5のZ軸方向マイナス側)に配置される活物質層であり、正極活物質層413は、正極基材層411の外周側(図5のY軸方向マイナス側)に配置される活物質層である。
【0054】
ここで、正極活物質層412及び413は、正極活物質とバインダと導電助剤とを含有する。正極活物質層412及び413に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、LiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiCo(1−y)、LiNiMnCo(1−y−z)、LiNiMn(2−y)など)、あるいは、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOFなど)から選択することができる。また、これらの化合物中の元素またはポリアニオンは一部他の元素またはアニオン種で置換されていてもよく、表面にZrO、MgO、Alなどの金属酸化物や炭素を被覆されていてもよい。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料などの導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
負極420は、銅または銅合金からなる長尺帯状の導電性の負極集電箔の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。具体的には、図5に示すように、負極420は、負極基材層421と、負極活物質層422及び423とを有する。
【0056】
負極基材層421は、例えば、銅または銅合金などからなる長尺帯状の導電性の集電箔である。
【0057】
負極活物質層422及び423は、負極基材層421上に一部または全部が露出した状態で形成された活物質層である。つまり、負極活物質層422及び423は、負極基材層421上に少なくとも一部が露出した状態で形成されている。具体的には、負極活物質層422は、負極基材層421の内周側(図5のZ軸方向マイナス側)に配置される活物質層であり、負極活物質層423は、負極基材層421の外周側(図5のZ軸方向プラス側)に配置される活物質層である。
【0058】
ここで、負極活物質層422及び423は、負極活物質とバインダと導電助剤とを含有する。負極活物質層422及び423に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金などのリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン、コークス等)、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボンなど)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12など)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0059】
また、負極活物質層422及び423に用いられるバインダとしては、正極活物質層412及び413に用いられるバインダと同じものを適用することができる。
【0060】
セパレータ430は、樹脂からなる微多孔性のシートであり、有機溶媒と電解質塩とを含む電解液が含浸されている。ここで、セパレータ430としては、有機溶剤に不溶な織布、不織布、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂微多孔膜が用いられ、材料、重量平均分子量や空孔率の異なる複数の微多孔膜が積層してなるものや、これらの微多孔膜に各種の可塑剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤を適量含有しているものや片面及び両面にシリカなどの無機酸化物を塗布したものであってもよい。特に、合成樹脂微多孔膜を好適に用いることができる。中でもポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、アラミドやポリイミドと複合化させたポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、または、これらを複合した微多孔膜などのポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗などの面で好適に用いられる。
【0061】
このように、電極体400は、正極410と負極420とが巻回されて積層されることにより形成されている。
【0062】
ここで、正極410は、正極集電体120と接続される部分であるX軸方向マイナス側の端部(正極活物質層412及び413が形成されていない正極基材層411の端部)である非形成部410aが、セパレータ430から突出して配置され、当該突出している部分で正極集電体120と電気的及び機械的に接続されている。つまり、正極410の周縁部は、正極集電体120に接続される辺に配置された、正極活物質層412及び413が形成されていない非形成部410aを有する。
【0063】
具体的には、負極420は、負極集電体130と接続される部分であるX軸方向プラス側の端部(負極活物質層422及び423が形成されていない負極基材層421の端部)である非形成部420aが、セパレータ430から突出して配置され、当該突出している部分で負極集電体130と電気的及び機械的に接続されている。つまり、負極420の周縁部は、負極集電体130に接続される辺に配置された、負極活物質層422及び423が形成されていない非形成部420aを有する。
【0064】
また、負極420は、巻回方向の端部であるY軸方向プラス側の端部が正極410から突出して配置され、この突出した部分に、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420bを有する。
【0065】
ここで、負極420の厚み方向から見て(Z軸方向から見て)、負極活物質層422及び423は、正極活物質層412及び413よりも大きく配置される。つまり、当該厚み方向から見て、正極活物質層412及び413は負極活物質層422及び423に内包されるように配置される。
【0066】
このため、負極420は、短辺の長さ(X軸方向の長さ)が正極410の短辺の長さよりも大きく、かつ、長辺の長さ(図4のY軸方向の長さ)も正極410の長辺の長さよりも大きい。つまり、負極420は、両短辺(巻回方向の両端の辺)及び両長辺(巻回軸方向の両端の辺)を合わせた周長が正極410よりも大きく形成されている。ここで、短辺及び長辺は、負極420の巻回前の状態における短辺及び長辺を指す。すなわち、短辺とは、負極420の巻回後の状態における最内周端部の辺または最外周端部の辺である。また、長辺とは、負極420の巻回後の状態における巻回軸方向の一方の端部の辺または他方の端部の辺である。
【0067】
このように、負極420の周縁部は、負極集電体130に接続される辺(第1の辺)に配置され、負極活物質層422及び423が形成されていない非形成部420aと、負極集電体130に接続される辺と異なる辺(第2の辺)に配置され、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420bとを有する。具体的には、非形成部420aは、長尺帯状の負極420の長辺に配置され、非露出部420bは、当該負極420の短辺に配置されている。
【0068】
ここで、「露出」とは、電極体400の巻回状態を展開して負極420を単体で見た場合に、外方から見える状態(表面上に出てきている状態)をいう。また、「露出していない」とは、負極420の厚み方向及び当該厚み方向に直交する方向のいずれかに露出していないことを指す。つまり、「露出していない」とは、電極体400の巻回状態を展開して負極420を単体で見た場合でも、負極420の表面上に現れず、外方から見えない状態をいう。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態1に係る非露出部420bの構成を示す断面斜視図である。具体的には、同図は、図4のB−B’線における負極420の断面斜視図である。
【0070】
同図に示すように、本実施の形態において、非露出部420bは、負極基材層421に取り付けられた被覆材425により負極活物質層422及び423が覆われた被覆部分である。つまり、非露出部420bは、負極420の巻回方向の巻き終わりの端部に沿って、X軸方向に延設された被覆材425を有する。このように、負極活物質層422及び423は、被覆材425で覆われた部分以外の部分が露出した状態で配置されているため、負極基材層421上に一部が露出した状態で形成されていると言える。
【0071】
被覆材425は、負極基材層421に取り付けられ、かつ、負極活物質層422及び423を覆う部材であり、例えば、負極基材層421に接着しつつ負極活物質層422及び423を覆うテープである。本実施の形態では、被覆材425は、負極420の長手方向の端部を被覆するように、当該端部の両面(Z軸方向両側の面)及び当該端部の端面(Y軸方向プラス側の面)に配置されている。具体的には、被覆材425は、X軸方向に延びる長尺帯状のテープであり、負極基材層421の端面(Y軸方向プラス側の面)に取り付けられている。
【0072】
ここで、「取り付けられる」とは、分離不能に接続されることを指し、具体的には、接着又は接合されることを指す。すなわち、被覆材425の一部は、負極基材層421に当接している。
【0073】
被覆材425としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂によって形成されたテープを用いることができる。なお、被覆材425の材質は、これに限らず、電解液に不溶性を有し、負極420と反応しない材質であればどのような材質で形成されていてもかまわない。
【0074】
このように、負極420の周縁部は、負極集電体130に接続される第1の辺(本実施の形態では長辺)と異なる第2の辺(本実施の形態では短辺)に配置された非露出部420bを有する。この構成により、本実施の形態に係る蓄電素子10は、コンタミの発生を抑制することができる。
【0075】
この理由について、以下の電極体400を製造する工程の説明においてコンタミが発生する要因について述べた後に、説明する。なお、以下では、負極板420の製造方法、及び、蓄電素子10の製造方法について説明する。つまり、負極板420の製造方法は、負極基材層421上に、一部または全部が露出した状態で負極活物質層422、423を形成する負極板形成工程を含む。そして、当該負極板形成工程では、蓄電素子10の負極集電体130に接続される第1の辺に配置され、負極活物質層422、423が形成されていない非形成部420aと、第1の辺と異なる第2の辺に配置され、負極活物質層422、423が露出していない非露出部420bとを周縁部に有する負極板420を形成する。また、蓄電素子10の製造方法は、当該負極板420の製造方法に含まれる負極板形成工程と、当該負極板形成工程で形成された負極板420と正極板410とを積層して電極体400を形成する電極体形成工程とを含む。
【0076】
図7は、本発明の実施の形態1に係る電極体400を製造する工程を示す模式図及び当該模式図の一部拡大図である。具体的には、同図の(a)は、電極体400を製造する工程のうち、裁断工程(スリット工程)及び巻回工程を示す模式図であり、同図の(b)は、(a)に示す負極420の裁断工程を模式的に示す図である。なお、同図では、2つのセパレータ430のうち1つのみを図示し、他の1つについては同様であるため、図示を省略している。
【0077】
同図に示すように、裁断工程では、カッター21〜23によって、正極410の連続体(以下、「正極母材」と記載する)、負極420の連続体(以下、「負極母材」と記載する)、及び、セパレータ430の連続体(以下、「セパレータ母材」と記載する)の各々が所定の長さに裁断(スリット)される。具体的には、裁断工程では、巻回軸方向(X軸方向)に所定の長さ(所定の幅)に形成された、正極母材、負極母材、及び、セパレータ母材を、巻回方向(Y軸方向)に所定の長さに裁断することにより、巻回方向に所定の長さを有する正極410、負極420及びセパレータ430を形成する。
【0078】
その後、巻回工程において、裁断工程で所定の長さに形成された正極410、負極420及びセパレータ430を巻回し、さらに、負極420の巻き終わりの端部に被覆材425を設けることにより、電極体400を形成する。なお、この被覆材425の取り付けは、巻回後に被覆材425を接着することで行ってもかまわない。
【0079】
ここで、裁断工程では、カッター21及び22は、正極410及び負極420の活物質層と基材層とを共に裁断する。つまり、カッター21及び22は、非形成部410a及び非形成部420aを除いて一様に活物質層が塗工された正極母材及び負極母材を裁断する。
【0080】
例えば、同図の(b)に示すように、カッター22は、両面に負極活物質層422及び423が形成された負極基材層421を、負極活物質層422及び423と共に裁断することにより、巻回方向に所定の長さを有する負極420を形成する。
【0081】
このように、活物質層と基材層とを共に裁断する場合、カッター21及び22により裁断された部分である正極410の巻回方向の端部、及び、負極420の巻回方向の端部において、次のような問題が生じる場合がある。
【0082】
すなわち、当該端部(以下、「裁断端部」と記載する)では、裁断時に付与される応力等のストレスにより、活物質層が基材層から浮き上がったり、活物質層と基材層との剥離強度が低下したりする場合がある。この場合、容器100に電極体400を収容した後に、裁断端部の活物質層が脱落してセパレータ430を貫通することで、内部短絡等の不具合が発生する虞がある。
【0083】
また、裁断端部では、カッター21及び22によって基材層が活物質層と共に裁断されることによる、基材層の金属のダレやバリ等が発生する場合がある。この場合、容器100に電極体400を収容した後に、金属のダレやバリ等が脱落して、切り粉と呼ばれる微小な金属カスとなることで、内部短絡等の不具合が発生する虞がある。
【0084】
また、一般的に、活物質層は、セラック状の比較的かたい材料が活物質として用いられ、基材層よりも厚く形成される。このため、基材層と活物質層とを共に裁断するカッター21及び22には、摩耗や欠けが生じやすくなる。摩耗や欠けが生じたカッター21及び22によって裁断された基材層には金属のダレやバリ等が発生しやすくなるので、コンタミが発生しやすくなる。
【0085】
ここで、切り粉によるコンタミの発生は、特に負極420の負極基材層421に起因する切り粉で問題となる。
【0086】
具体的には、負極基材層421は、例えば、上述したように銅または銅合金などからな
る。これは当該負極基材層421に求められる要件(例えば、リチウム金属と合金を形成せず、かつ、高い電気伝導性を有する等)によって決定される。
【0087】
このとき、銅は、正極410の電位(例えば、4V vs.Li/Li)によって溶解するため、負極420で銅の切り粉が発生して当該切り粉が正極410までで溶解してイオン化する。その後、当該イオンが負極420に到達した場合には、負極420において銅がデンドライト状(樹枝形状)に析出してセパレータ430を貫通することで、内部短絡等の不具合が発生する虞がある。
【0088】
なお、このような負極420におけるデンドライト状の析出によるコンタミの発生は、負極基材層421に銅又は銅合金を用いた場合に限らず、正極410の電位によって溶解する金属であれば、いずれの金属でも発生し得る。
【0089】
また、正極410及び負極420のいずれにおいても、活物質層に含まれる活物質の硬度が高いほど、活物質層を裁断することによりカッター21及び22が磨耗しやすい。つまり、カッター21及び22の切れ味が低下しやすい。このような切れ味の低下したカッター21及び22によって基材層を裁断した場合には、裁断端部の基材層において、金属のダレやバリ等が一層発生しやすくなる。
【0090】
特に、負極420では、負極活物質層422及び423に含まれる負極活物質としてハードカーボン及びコークス等の硬度の高い非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いる場合がある。この場合、カッター22の切れ味の低下が顕著となり、裁断端部の負極基材層421において、金属のダレやバリ等が特に発生しやすい。よって、この場合、特に負極420に起因するコンタミが発生しやすい。
【0091】
また、正極410及び負極420が積層された電極体400では、電極体400が蓄電素子10の容器100の内壁によって圧迫されることにより、正極410及び負極420の互いに対向する部分同士が圧迫される。よって、対向する部分では、圧迫によって基材層の切り粉や活物質層の浮き上がりを抑制できるので、コンタミの要因を抑制できる。しかし、負極420は正極410よりも大きいため、負極420の周縁部は圧迫されにくく、コンタミの要因の抑制が困難である。
【0092】
したがって、蓄電素子10におけるコンタミの発生を抑制するためには、特に負極420に起因するコンタミの発生を抑制することが効果的である。
【0093】
そこで、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420bを負極420の周縁部に配置することにより、負極420の周縁部の脱落を抑制できるので、コンタミの発生を抑制できる。具体的には、負極420の製造工程において負極基材層421と負極活物質層422及び423とが共に裁断される場合、裁断部分において負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりが生じる虞がある。これらは、上記コンタミを引き起こす要因となる。このため、負極420の周縁部に負極活物質層422及び423が配置されている場合、つまり製造工程において負極基材層421と負極活物質層422及び423とが共に裁断された場合には、当該周縁部における活物質を覆うことにより、上記コンタミの要因を抑制できる。また、負極420の周縁部に負極活物質層422及び423が配置されていない場合、つまり製造工程において負極基材層421のみが裁断された場合には、裁断時において生じるコンタミの要因を抑制できる。このように、本実施の形態では、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420bを負極420の周縁部に配置することにより、コンタミの発生を抑制することができる。
【0094】
また、非露出部420bは、負極基材層421に取り付けられた被覆材425により負極活物質層422及び423が覆われた部分(被覆部分)である。
【0095】
ここで、負極基材層421に取り付けられていない被覆材により負極活物質層422及び423が覆われている場合には、負極活物質層422及び423ごと被覆材が脱落する虞がある。つまり、被覆材と共に負極活物質層422及び423が脱落することによりコンタミが発生する虞がある。このため、本実施の形態では、被覆材425を負極基材層421に取り付けることで当該被覆材425の脱落を抑制して負極活物質層422及び423の脱落をより確実に抑制することで、コンタミの発生をより確実に抑制できる。
【0096】
また、非露出部420bが負極420の短辺に配置されていることにより、長手方向に沿って一様に負極活物質層422及び423が形成された負極母材を裁断することにより負極420を製造する場合であっても、コンタミの発生を抑制できる。
【0097】
具体的には、所定方向に沿って負極活物質層422及び423が一様に形成され、当該所定方向に直交する方向において、負極活物質層422及び423がストライプ状に形成された負極基材層421である負極母材(ストライプ塗工された負極母材)を用いて負極420を形成する場合、当該負極母材を当該所定方向に沿って裁断した後に、裁断後の負極母材を当該所定方向において所定の長さとなるようにカッター22で裁断することにより、各負極420を形成する。つまり、図7において、電極体400に向けて所定の速度で送られる負極母材を所定の時間間隔でカッター22によって裁断することで各負極420を形成する。よって、カッター22を移動させることなく裁断するため、負極420の製造に要する時間を短縮化することができる。
【0098】
このとき、カッター22は、負極基材層421と負極活物質層422及び423とを共に裁断するが、例えば、裁断工程の後に、負極420端部を被覆して非露出部420bを負極420の周縁部に配置することにより、被覆によって負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりを抑制できる。よって、ストライプ塗工された負極母材を用いた場合であっても、上記コンタミの発生を抑制できる。
【0099】
また、正極410及び負極420の各々の短辺及び長辺において、単位長さ当たりに発生する負極基材層421の切り粉及び負極活物質層422及び423の脱落の量が同等の場合には、両短辺及び両長辺を合わせた周長が大きい電極によって、コンタミが発生しやすい。このため、正極410よりも周長が大きい負極420の周縁部に非露出部420bを配置することで、コンタミの要因が生じやすい電極において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0100】
また、負極基材層421が、正極410の電位によって溶解する金属を含む場合、負極基材層421の切り粉が発生すると、当該切り粉が正極410で溶解してイオン化した後に負極420でデンドライト状に析出することによる内部短絡が発生する恐れがある。このため、負極420の周縁部に非露出部420bを配置することにより、負極基材層421の切り粉の発生を抑制できるので、負極420におけるデンドライト状の析出による内部短絡の発生を抑制できる。
【0101】
(実施の形態1の変形例1)
次に、本発明の実施の形態1の変形例1について説明する。上記実施の形態1では、非露出部420bは、被覆材425により負極活物質層422及び423が覆われた部分であるとした。これに対し、本変形例では、非露出部は、負極活物質層422及び423が形成されていない部分により構成されている。
【0102】
図8は、本発明の実施の形態1の変形例1に係る非露出部420Abの構成を示す断面斜視図である。具体的には、同図は、図4のB−B’線に相当する線で本変形例に係る負極420Aを切断した場合の断面斜視図である。
【0103】
同図に示すように、本変形例の負極420Aの周縁部には、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420Abとして、当該負極活物質層422及び423が形成されていない部分が設けられている。なお、非露出部420Abでは、負極基材層421に負極活物質層422及び423が形成されていないだけでなく、他の部材も設けられていなくてもよい。つまり、非露出部420Abにおいて、負極基材層421は負極420の厚み方向に露出していてもよい。
【0104】
具体的には、非露出部420Abは、負極420Aの巻回方向の巻き終わりの端部に沿って、負極活物質層422及び423が形成されずに、X軸方向に負極基材層421が露出されている部分である。つまり、負極活物質層422及び423は、負極基材層421上に全部が露出した状態で形成されている。
【0105】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。つまり、実施の形態1で説明したように、負極420Aの製造工程において負極基材層421と負極活物質層422及び423とが共に裁断される場合、裁断部分において負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりが生じる虞がある。これらは、上記コンタミを引き起こす要因となり得る。そこで、本変形例では、負極420Aの周縁部に負極活物質層422及び423が配置されていない非露出部420Abを配置することにより、負極活物質層422及び423が形成されていない部分を裁断して負極420Aを製造することができる。よって、上記コンタミの発生を抑制できる。
【0106】
このような本変形例に係る負極420は、具体的には、長手方向において、負極活物質層422及び423が間欠状に形成された負極母材(間欠塗工された負極母材)を用いて、負極活物質層422及び423が形成されていない部分を裁断することで製造される。
【0107】
ただし、負極活物質層422及び423が間欠塗工された負極母材と、正極活物質層412及び413が間欠塗工された正極母材とを巻回することにより電極体を形成する場合、多量の電極体を巻回すると、次のような問題が生じる虞がある。具体的には、活物質層の塗工精度、巻回精度、及び、電極の厚みバラつき等の影響により、巻回方向端部における活物質層の非形成部が負極420Aと正極との間でずれる虞がある。
【0108】
このため、巻回型の電極体の製造工程では、長手方向において一様に負極活物質層422及び423が形成された負極母材を裁断して、各負極を製造することが好ましい。つまり、巻回型の電極体では、負極の巻回方向端部は、被覆材により負極活物質層422及び423が覆われた部分により構成されていることが好ましい。これにより、巻回型の電極体において、巻回方向における正極410と負極420との位置ずれによる不具合を低減することができる。
【0109】
(実施の形態1の変形例2)
次に、本発明の実施の形態1の変形例2について説明する。上記実施の形態1では、非露出部420bは、負極420の巻回方向の巻き終わりの端部に配置されるとした。これに対し、本変形例では、非露出部が、負極の巻回方向の巻き始めの端部に配置される。また、上記実施の形態1では、非露出部420bは、被覆材425により負極活物質層422及び423が覆われた部分である被覆部により構成されているとした。これに対し、本変形例では、非露出部は、巻き芯及び当該巻き芯の突起部により負極活物質層422及び423が覆われた部分により構成されている。
【0110】
図9は、本発明の実施の形態1の変形例2に係る電極体400Bの構成を示す斜視図及び当該斜視図の一部拡大図である。具体的には、同図の(a)は、当該電極体400Bの斜視図であり、同図の(b)は、同図の(a)の一部を拡大して示す拡大図である。
【0111】
同図に示す電極体400Bは、セパレータ430と負極420Bと正極410とが、巻き芯500に巻きつけられて形成されている。
【0112】
ここで、負極420Bは、巻回方向の巻き始めの端部に、巻き芯500及び当該巻き芯500から外方に突出して配置された突起部500aによって覆われた非露出部420Bbが設けられている。
【0113】
突起部500aは、巻き芯500と一体に形成され、負極420Bの長手方向の端部を被覆して挟み込むように、当該端部の外周面(Z軸方向プラス側の面)及び当該端部の端面(Y軸方向マイナス側の面)に配置されている。つまり、突起部500aは、負極420Bの巻き始めの端部を圧迫することにより、負極基材層421の端面(Y軸方向マイナス側の面)に取り付けられている。
【0114】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。つまり、負極420Bの巻き始めの端部が、巻き芯500及び当該巻き芯500の突起部500aで被覆されるため、当該端部における負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりを抑制できる。よって、上記実施の形態1と同様に、コンタミの発生を抑制することができる。
【0115】
なお、本変形例では、負極420Bの巻き始めの端部に設けられた非露出部420Bbは、巻き芯500及び突起部500aで被覆される被覆部分としたが、実施の形態1と同様、被覆材425で被覆される被覆部分であってもよい。
【0116】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上記実施の形態1では、非露出部420bは、負極420の短辺に配置されるとした。これに対し、本実施の形態では、非露出部は負極420の長辺に配置される。また、上記実施の形態1では、非露出部420bは被覆部分であるとした。これに対し、本実施の形態では、上記実施の形態1の変形例1と同様に、非露出部は負極活物質層422及び423が形成されていない部分により構成される。
【0117】
図10は、本発明の実施の形態2に係る電極体400Cの巻回状態を一部展開して示す斜視図である。
【0118】
また、図11は、本発明の実施の形態2に係る電極体400Cの構成を示す断面図である。具体的には、同図は、図10のC−C’断面で切断した場合の断面を示す図である。なお、図11では、巻回されることにより繰り返し積層された、複数組の正極410、負極420C及びセパレータ430のうち1組のみを図示し、他の組についての図示は省略している。
【0119】
図10及び図11に示すように、負極420Cの周縁部は、負極集電体130に接続される辺(第1の辺)に配置され、負極活物質層422及び423が形成されていない非形成部420aと、負極集電体130に接続される辺と異なる辺(第2の辺)に配置され、負極活物質層422及び423が露出していない非露出部420Cbとを有する。
【0120】
ここで、本実施の形態において、非露出部420Cbは、負極420の長辺に配置されている。また、非露出部420Cbは、負極活物質層422及び423が形成されていない部分により構成され、非形成部420a及び非露出部420Cbは、負極420Cの両長辺に配置されている。言い換えれば、非形成部420aは、負極420の両長辺のうちの一方の長辺に配置され、非露出部420Cbは、当該両長辺のうちの他方の長辺に配置されている。つまり、本実施の形態における負極420Cは、電極体400の巻回軸方向両側(X軸方向両側)に、負極活物質層422及び423が形成されていない部分を有する。
【0121】
以上のように構成された本実施の形態に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。つまり、上記実施の形態1では、裁断工程において負極の短辺が裁断される例を挙げて、コンタミが発生する理由について説明した。しかし、負極は、製造工程において、長辺が裁断される場合がある。よって、負極の製造工程において、当該負極の長辺で、負極基材層421と負極活物質層422及び423とがともに裁断される場合、裁断部分(負極の長辺端面)で負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりが生じる虞がある。これらは、上記コンタミを引き起こす要因となり得る。
【0122】
そこで、本実施の形態では、負極420Cの長辺に負極活物質層422及び423が配置されていない非露出部420Cbを配置することにより、負極活物質層422及び423が形成されていない部分を裁断して負極420Cを製造することができる。よって、上記コンタミの発生を抑制できる。
【0123】
また、負極420Cの短辺と長辺とで、単位長さ当たりに発生する負極基材層421の切り粉及び負極活物質層422及び423の脱落の量が同等の場合には、長辺における当該切り粉及び当該脱落が、コンタミの要因となりやすい。このため、負極420Cの長辺に非露出部420Cbを配置することで、コンタミの要因が生じやすい箇所において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0124】
また、負極420Cの長辺に配置された非露出部420Cbが、例えば、被覆材により負極活物質層422及び423が覆われた部分により構成されている場合、負極420Cの両長辺の厚みが互いに異なり得る。このため、巻回型の電極体では、巻回時に負極420Cが蛇行することにより、巻回の精度が低下して歩留まりが悪化する虞がある。また、巻回型の電極体に限らず、負極420Cの両長辺の厚みが互いに異なることにより電極体の寸法管理が困難になるため、蓄電素子10の容器100内への電極体の収容が困難になる。そこで、本実施の形態では、負極420Cの長辺に、負極活物質層422及び423が形成されていない非露出部420Cbを配置することで、電極体400Cの寸法管理を容易にし、歩留まりを維持しつつ、コンタミの発生を抑制できる。
【0125】
また、正極410及び負極420Cが積層された電極体400Cでは、電極体400Cが容器100の内壁によって圧迫されることにより、正極410及び負極420Cの互いに対向する部分同士が圧迫される。よって、対向する部分では、圧迫によって負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりを抑制できる。ただし、負極420Cは短辺の長さ(X軸方向の大きさ)が正極410よりも大きいため、負極420Cの短手方向両端部(X軸方向両端部)が正極410に対向せずに圧迫されにくい。よって、負極420Cの短手方向両端部で負極基材層421の切り粉や負極活物質層422及び423の浮き上がりが生じやすくなり、コンタミが発生する虞がある。このため、負極420Cの長辺に非露出部420Cbを配置することにより、コンタミの要因が生じやすい箇所において、当該コンタミの要因を抑制できる。
【0126】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明
は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
【0127】
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0128】
例えば、実施の形態1の構成に実施の形態1の変形例2の構成を組み合わせてもかまわない。つまり、負極基材層421に取り付けられた被覆材によって負極活物質層422及び423が覆われた部分により構成される非露出部が、負極の両短辺に配置されていてもかまわない。この構成により、ストライプ状に負極活物質層422及び423が形成された負極母材を裁断することにより負極を製造する場合であっても、コンタミの発生を一層抑制できる。すなわち、負極母材の長手方向において負極活物質層422及び423を間欠的に形成する、いわゆる間欠塗工は、製造上難しい場合がある。このため、負極の短辺には、負極活物質層422及び423が形成されていない部分を設けにくい。そこで、負極の両短辺に配置される非露出部を被覆材により負極基材層421が覆われた構成とすることにより、両短辺のいずれにおいてもコンタミの要因を抑制できる。例えば、一方の短辺の被覆材としては実施の形態1の被覆材425を用い、他方の短辺の被覆材としては実施の形態1の変形例2の巻き芯500と突起部500aとを用いてもよい。
【0129】
なお、両短辺に配置された非露出部420bのうち、一方が被覆材425により覆われた部分(被覆部分)により構成され、他方が負極活物質層422及び423が形成されていない部分(非形成部分)により構成されていてもかまわない。これによっても、上記説明と同様に、コンタミの発生を抑制することができる。
【0130】
また、実施の形態1の構成に実施の形態2の構成を組み合わせてもかまわない。つまり、負極420の両長辺のうちの一方の長辺に非形成部を配置し、他方の長辺に非露出部を配置し、かつ、負極420の両短辺に非露出部を配置することにしてもよい。この場合、負極420の両長辺を、負極活物質層422及び423が形成されていない部分により構成し、かつ、負極420の両短辺を、実施の形態1、変形例1及び2のいずれかの構成にすることが考えられる。例えば、負極420の両長辺及び両短辺の全てを、負極活物質層422及び423が形成されていない部分により構成した場合には、被覆材425等を配置することなく、負極420の周縁部全周での活物質の脱落を抑制し、それによる容量低下や抵抗上昇、内部短絡発生等を抑制することができる。ただし、この場合でもスリット刃(カッター)の摩耗等により、スリット後の基材層の端部にダレや切り子が発生することがある。このため、このような場合には、負極420の両短辺の少なくとも一辺を被覆材425(または巻き芯500の突起部500a)で覆うことで、金属片の脱離や内部抵抗の発生を抑制することができる。
【0131】
また、上記説明では、非露出部は、被覆部分及び非形成部分の一方により構成されているとした。しかし、非露出部の構成はこれに限らず、当該非露出部420bの一部が被覆部分により構成され、他部が非形成部分により構成されていてもかまわない。また、非露出部は、負極集電体130が接続される辺と異なる辺に配置され、負極活物質層422及び423が露出していない構成であればよく、被覆部分及び非形成部分以外により構成されていてもかまわない。これによっても、上記説明と同様に、コンタミの発生を抑制することができる。
【0132】
ここで、被覆部分は、負極基材層421に取り付けられた被覆材425により負極活物質層422及び423が覆われた部分に限らず、負極基材層421に取り付けられた被覆材により当該負極基材層421が覆われた部分であってもかまわない。
【0133】
図12は、そのような非露出部420Dbの構成を示す断面斜視図である。具体的には、同図は、図4のB−B’線に相当する線で本実施の形態に係る負極420Dを切断した場合の断面斜視図である。
【0134】
同図に示すように、非露出部420Dbは、実施の形態1の非露出部420bに比べて、負極活物質層422及び423が形成されておらず、被覆材425Dにより覆われている。被覆材425Dは、被覆材425と同様に、負極420の長手方向の端部を被覆するように、当該端部の両面(Z軸方向両側の面)及び当該端部の端面(Y軸方向プラス側の面)に配置されている。また、被覆材425Dは、負極基材層421の端面(Y軸方向プラス側の面)に取り付けられている。つまり、被覆材425Dは、負極基材層421に取り付けられ、かつ、当該負極基材層421を覆うように配置されている。
【0135】
なお、被覆材425Dの材質については、被覆材425と同様であるため、説明を省略
する。
【0136】
このように構成された負極420Dを有する蓄電素子であっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。具体的には、負極420の周縁部に負極活物質層422及び423が形成されていない場合であっても、負極基材層421の周縁部において金属のダレやバリ等があると、これら金属のダレやバリ等が脱落してコンタミが発生する虞がある。このため、被覆材425Dによって負極基材層421を覆うことにより、コンタミの発生を抑制することができる。
【0137】
また、上記実施の形態2では、非露出部420Cbは、負極活物質層422及び423が形成されていない非形成部分により構成され、非形成部420a及び非露出部420Cbは、負極420Cの両長辺に配置されているとした。しかし、長辺に配置された非露出部420bは、被覆部分により構成されてもかまわない。これによっても、巻回の精度が低下して歩留まりが多少悪化する虞があるものの、コンタミの発生を抑制することができる。
【0138】
また、上記説明では、負極は、短辺の長さが正極410よりも大きいとした。しかし、負極は、短辺の長さが正極410以下であってもかまわない。この場合、負極の短手方向端部が正極410によって圧迫されるために、負極に起因するコンタミは発生しにくくなる。よって、効果は多少小さくなるものの、負極の周縁部に非露出部を配置することにより、コンタミの発生を抑制することができる。
【0139】
また、上記説明では、負極は、両短辺及び両長辺を合わせた周長が正極410よりも大きいとした。しかし、負極は、周長が正極410以下であってもかまわない。この場合、負極に起因するコンタミが発生しにくくなるため、効果は多少小さくなるものの、負極の周縁部に非露出部を配置することにより、コンタミの発生を抑制することができる。
【0140】
また、上記説明では、負極基材層421は、正極410の電位によって溶解する金属を含むとした。しかし、負極基材層421は、当該金属を含まなくてもかまわない。例えば、負極基材層421は、正極410の電位によって溶解しにくい金属を含んでもかまわない。この場合、負極におけるデンドライト状の析出による内部短絡は発生しにくくなるものの、負極基材層421の切り粉が例えばセパレータ430を貫通することによる内部短絡等は発生する虞が残る。よって、この場合であっても、負極の周縁部に非露出部を配置することにより、切り粉の発生を抑制することができるので、切り粉による微小短絡等の内部短絡を抑制することができる。
【0141】
また、上記説明では、負極は、長辺で蓄電素子10の負極集電体130に接続されるとした。しかし、負極は、短辺で負極集電体130に接続されてもよい。つまり、非形成部420aが配置される辺(第1の辺)と非露出部が配置される辺(第2の辺)とは、負極の互いに異なる辺であればよく、負極の短辺及び長辺のいずれの辺であってもかまわない。また、非露出部が配置される辺(第2の辺)は、非形成部420aが配置される辺(第1の辺)以外の辺であればよく、複数の辺であってもかまわない。また、非露出部は第2の辺の全てに配置されていなくてもよく、当該第2の辺の少なくとも一部に配置されていればよい。
【0142】
また、上記説明では、正極及び負極の各々は長尺帯状であるとした。しかし、正極及び負極の各々は矩形形状であればよく、矩形形状をなす4つの辺の長さが同等であってもかまわない。
【0143】
また、上記実施の形態及びその変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明
の範囲内に含まれる。また、上記実施の形態及びその変形例の部分的な構成を、適宜組み合わせてなる構成であってもよい。例えば、上述したように実施の形態1に実施の形態1の変形例2の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわないし、実施の形態1に実施の形態2の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、コンタミの発生を抑制できる蓄電素子を提供できるので、高品質及び高出力化が求められる自動車等に搭載される蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0145】
10 蓄電素子
21、22、23 カッター
100 容器
110 蓋体
111 本体
120 正極集電体
130 負極集電体
200 正極端子
300 負極端子
400、400B、400C 電極体
410 正極
411 正極基材層
412、413 正極活物質層
410a、420a 非形成部
420b、420Ab、420Bb、420Cb、420Db 非露出部
420、420A、420B、420C、420D 負極
421 負極基材層
422、423 負極活物質層
425、425D 被覆材
430 セパレータ
500 巻き芯
500a 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12