(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体又は請求項4若しくは5に記載の変性共役ジエン系重合体と、無機フィラーと、架橋剤とを含有する重合体組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の変性共役ジエン系重合体は、重合開始剤の存在下で、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と共役ジエン化合物とを含む単量体群Xを重合して、活性末端を有する重合体を得る工程(以下、「重合工程」ともいう。)と、活性末端を有する重合体と(C)ポリオルガノシロキサンとを反応させる工程(以下、「変性工程」ともいう。)と、を含む方法による製造される。以下、詳細に説明する。
【0012】
[重合工程]
<単量体群X>
(A)ビニルシラン化合物
(A)ビニルシラン化合物は、基「−SiR
1R
2R
3」を有するビニルシラン化合物であり、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(式(1)中、R
1は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基、又はヒドロカルビル基である。L
1はヒドロカルビ
レン基であり、nは0又は1である。)
【0013】
R
1は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有する。これらのヘテロ原子は活性水素に結合しておらず、保護基で保護されていてもよい。なお、ここでいう「活性水素」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくはポリメチレンの炭素−水素結合よりも結合エネルギーが低いものを指す。「保護基」とは、R
1を不活性な官能基に変換しておく官能基であり、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等が挙げられる。
【0014】
R
1の具体例としては、例えば1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、−R
33−NR
31R
32(R
31及びR
32は、それぞれ独立にヒドロカルビル基であり、R
31とR
32とが結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。R
33は、単結合又はヒドロカルビレン基である。)、イミノ基、ヒドロキシ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる酸素含有基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、及び、チオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基等が挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性が良好である観点から、窒素原子及び酸素原子の少なくとも一方を有する基であることが好ましく、窒素原子を有する基であることがより好ましい。
【0015】
R
1が基「−R
33−NR
31R
32」(以下、基「−NR
31R
32」を「置換アミノ基」ともいう。)である場合、R
31、R
32のヒドロカルビル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。R
31及びR
32は、互いに結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。この場合の環構造(環状アミノ基)としては、例えば1−ピロリジニル基、1−ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基、1−オクタメチレンイミノ基、ピリジル基、1−イミダゾリル基等が挙げられる。
R
33のヒドロカルビレン基は、炭素数1〜20のアルカンジイル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0016】
R
2、R
3が、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有し、かつ活性水素を有さない1価の基である場合の説明は、上記R
1の説明が適用される。R
2、R
3のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。フィラーとの親和性の観点から、R
1〜R
3のうちの少なくとも2個が、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種の原子を有しかつ活性水素を有さない1価の基であることが好ましい。
L
1としては、炭素数1〜20のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。nは、好ましくは0である。
【0017】
(A)ビニルシラン化合物としては、置換アミノ基含有ビニルシラン化合物及びヒドロカルビルオキシ基含有ビニルシラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。これらの具体例としては、置換アミノ基含有ビニルシラン化合物として、例えば、(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン、[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]ジアルキルビニルシラン、(ジアルキルアミノ)ジ(アルコキシアルキル)ビニルシラン、環状アミノジアルキルビニルシラン化合物、(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルフェニルシラン、ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン、ビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシラン、ビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルビニルシラン、ビス(環状アミノ)アルキルビニルシラン、ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルフェニルシラン、トリス(ジアルキルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジアルキルアミノ)ビニルフェニルシラン等を;
ヒドロカルビルオキシ基含有ビニルシラン化合物として、例えば、トリヒドロカルビルオキシビニルシラン、ジアルコキシアルキルビニルシラン、ジアルコキシアリールビニルシラン、モノアルコキシジアルキルビニルシラン、モノアルコキシジアリールビニルシラン、モノアルコキシアルキルアリールビニルシラン等を、それぞれ挙げることができる。
【0018】
置換アミノ基含有ビニルシラン化合物としては、上記の中でも、上記式(1)のR
1〜R
3のうちの1個又は2個が置換アミノ基を有し、nが0の化合物を好ましく使用することができる。これらの具体例としては、(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシランとして、例えば(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン等を;
ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシランとして、例えばビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン等を;
ビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシランとして、例えばビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン等を;
ビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルビニルシランとして、例えばビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)(2−メトキシエチル)ビニルシラン等を;
環状アミノジアルキルビニルシランとして、例えば1−ピロリジニルジメチルビニルシラン、1−ピペリジニルジメチルビニルシラン、1−ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリルジメチルビニルシラン等を;
ビス(環状アミノ)アルキルビニルシランとして、例えばビス(1−ピロリジニル)メチルビニルシラン、ビス(1−ピペリジニル)メチルビニルシラン等を、それぞれ挙げることができる。
【0019】
ヒドロカルビルオキシ基含有ビニルシラン化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシラン、メチルジメトキシビニルシラン、ジ(tert−ブトキシ)フェニルビニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、tert−ブトキシジフェニルビニルシラン、tert−ブトキシメチルフェニルビニルシラン、tert−ブトキシエチルフェニルビニルシラン等が挙げられる。なお、(A)ビニルシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(B)芳香族ビニル化合物
(B)芳香族ビニル化合物において、窒素原子、リン原子及び硫黄原子は、いずれも活性水素に結合しておらず、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等で保護されていてもよい。(B)芳香族ビニル化合物は、フィラーの分散性の観点から、窒素含有芳香族ビニル化合物であることが特に好ましい。
【0021】
窒素含有芳香族ビニル化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式(8−1)で表される化合物、及び下記式(8−2)で表される化合物が挙げられる。(B)芳香族ビニル化合物は、下記式(8−1)及び式(8−2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【化3】
(式(8−1)中、X
2は、活性水素を有さない窒素含有基であり、R
61は置換基であり、R
62は、水素原子、メチル基又はフェニル基である。rは1〜5の整数であり、sは0〜4の整数であり、r+s≦5を満たす。式(8−2)中、X
3は、窒素含有芳香族複素環基であり、環部分に置換基を有していてもよい。R
63は、水素原子又はメチル基である。)
【0022】
上記式(8−1)において、X
2は鎖状でも環状でもよく、例えば、上記式(1)で説明した基「−R
33−NR
31R
32」等が挙げられる。R
61の置換基としては、例えば炭素数1〜10のヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基等が挙げられる。rは1又は2が好ましく、1が好ましい。sは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
上記式(8−2)において、X
3は、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環等の環部分から水素原子を1個取り除いた基などが挙げられる。当該環部分が有していてもよい置換基としては、R
61の説明が適用される。
【0023】
窒素含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、上記式(8−1)で表される化合物として、例えば、3−ジメチルアミノスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のジヒドロカルビルスチレン;4−(ジエチルアミノメチル)スチレン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]スチレン等のジヒドロカルビルアミノアルキルスチレン;3−(1−ピロリジニル)スチレン、4−(1−ピロリジニル)スチレン、4−ピペリジノスチレン、3−(1−ピロリジニル)メチルスチレン、3−(1−ピロリジニル)エチルスチレン、4−(1−ピロリジニル)メチルスチレン、4−(1−ピロリジニル)エチルスチレン等の環状アミノ基含有スチレン;1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン等の3級アミノ基含有ジフェニルエチレン、等を;
上記式(8−2)で表される化合物として、例えば、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジンなどを、それぞれ挙げることができる。なお、(B)芳香族ビニル化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(共役ジエン化合物)
重合に使用する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが好ましく、加工性とヒステリシスロス低減とをバランス良く改善する効果が高い点で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。なお、共役ジエン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記重合に際しては、ゴムの強度を高める観点から、単量体群Xは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子をいずれも有さない芳香族ビニル化合物(以下、「他の芳香族ビニル化合物」ともいう。)をさらに含んでいることが好ましい。当該他の芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、t−ブトキシスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。他の芳香族ビニル化合物としては、これらの中でもスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0026】
本開示の変性共役ジエン系重合体は、アニオン重合におけるリビング性が高い点において、中でも、1,3−ブタジエンとスチレンとを単量体群Xに含む共重合体であることが好ましい。上記共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物((B)芳香族ビニル化合物及び他の芳香族ビニル化合物を含む。)とのランダム共重合部分を有することが好ましい。上記共重合体は、共役ジエン化合物又は他の芳香族ビニル化合物からなるブロック部分をさらに有していてもよい。
【0027】
単量体群Xにおける芳香族ビニル化合物の使用割合(ただし、(B)芳香族ビニル化合物と他の芳香族ビニル化合物との合計量)は、得られる架橋重合体の低ヒステリシスロス特性とウェットスキッド抵抗性とのバランスを良好にする観点から、重合に使用する単量体群Xの合計量に対して、3〜55質量%とすることが好ましく、5〜50質量%とすることがより好ましい。なお、重合体中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は
1H−NMRによって測定した値である。
【0028】
(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物の合計の使用割合は、加硫ゴムの引張強度及び低発熱性の改善効果を十分に得る観点から、単量体群Xを構成する化合物の合計量に対して、0.001mmol/g以上とすることが好ましく、0.002mmol/g以上とすることがより好ましく、0.003mmol/g以上とすることがさらに好ましい。また、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物の合計の使用割合の上限は、反応性を十分に高くする観点から、単量体群Xを構成する化合物の全体量に対して、130mmol/g以下とすることが好ましく、100mmol/g以下とすることがより好ましく、70mmol/g以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
なお、単量体群Xは、モノマーとして、共役ジエン化合物、(A)ビニルシラン化合物及び芳香族ビニル化合物以外の化合物(以下、「他のモノマー」ともいう。)を更に含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。他のモノマーの使用割合は、重合に使用するモノマーの全体量に対して、5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。
【0030】
単量体群Xの重合に際して使用する重合法としては、溶液重合法、気相重合法及びバルク重合法のいずれを用いてもよいが、溶液重合法が特に好ましい。重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、単量体群Xを、重合開始剤、及び必要に応じて用いられるランダマイザーの存在下で重合する方法が挙げられる。
【0031】
単量体群Xの重合に使用する重合開始剤としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。これらの具体例としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタン、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ナフチルリチウム、1,3−ビス(1−リチオ−1,3−ジメチルペンチル)ベンゼン、1,3−フェニレンビス(3−メチル−1−フェニルペンチリデン)ジリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でもリチウム化合物が好ましい。重合開始剤の合計の使用量は、重合に使用するモノマー100gに対して、0.2〜20mmolとすることが好ましい。
【0032】
重合反応は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(以下「開始変性剤」ともいう。)との混合物を用いて行ってもよい。なお、本明細書において「シリカと相互作用する官能基」とは、窒素、硫黄、リン、酸素、ケイ素などのシリカと相互作用する元素を有する基を意味する。「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン−双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。
【0033】
開始変性剤としては、中でも、第2級アミン化合物などの窒素含有化合物が好ましい。当該窒素含有化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ドデカメチレンイミン、N,N’−ジメチル−N’−トリメチルシリル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、モルホリン、N−(トリメチルシリル)ピペラジン、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン、1,3−ジトリメチルシリル−1,3,5−トリアジナン等が挙げられる。開始変性剤は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
なお、上記混合物の存在下で重合を行う場合、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと開始変性剤とを予め混合しておき、その混合物を重合系中に添加して重合を行ってもよい。あるいは、重合系中に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと開始変性剤とを添加し、重合系中で両者を混合して重合を行ってもよい。
【0035】
ランダマイザーは、重合体中におけるビニル結合の含有率を表すビニル結合含量の調整等を目的として用いることができる。ランダマイザーの例としては、例えばジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
重合に使用する有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などを用いることができる。中でも、炭素数3〜8の炭化水素が好ましく、その具体例としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。なお、有機溶媒としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
溶液重合とする場合、反応溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。重合反応の温度は、−20℃〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましい。また、重合反応は、単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0038】
こうした重合反応により、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる。得られる共役ジエン系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10
4〜2.0×10
6である。Mwが1.0×10
4よりも小さいと、得られる架橋重合体において引張強度、低燃費性能及び耐摩耗性が低下しやすい傾向にあり、2.0×10
6よりも大きいと、重合体組成物の加工性が低下しやすい傾向にある。より好ましくは、1.2×10
4〜1.5×10
6であり、さらに好ましくは、1.5×10
4〜1.0×10
6である。
【0039】
活性末端を有する共役ジエン系重合体につき、ブタジエン単位におけるビニル結合含量は、30〜70質量%であることが好ましく、33〜68質量%であることがより好ましく、35〜65質量%であることがさらに好ましい。ビニル結合含量が30質量%未満であると、グリップ特性が低くなる傾向があり、70質量%を超えると、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が低下する傾向にある。なお、本明細書において「ビニル結合含量」は、共役ジエン系重合体中において、ブタジエンの全構造単位に対する、1,2−結合を有する構造単位の含有割合を示す値であり、
1H−NMRによって測定した値である。
【0040】
[変性工程]
本工程では、エポキシ基、アルコキシ基、カルボニル基、2−ピロリドニル基、ビニル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種である特定官能基を合計2個以上有するポリオルガノシロキサン(以下、「特定ポリオルガノシロキサン」ともいう。)と、上記で得られた共役ジエン系重合体が有する活性末端とを反応させる。
【0041】
特定ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を有する直鎖状、環状又は分岐状の化合物である。特定ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
(式(6)中、R
21〜R
28は、それぞれ独立にヒドロカルビル基であり、A
11は、特定官能基を有する基であり、A
12及びA
13は、それぞれ独立に、特定官能基を有する基又はヒドロカルビル基であり、B
21は、ポリエーテル構造を有する基である。aは3〜200の整数であり、bは0〜200の整数であり、cは0〜200の整数である。R
21〜R
28,A
11,B
21は、構造単位間で互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0042】
上記式(6)のR
21〜R
28,A
12,A
13のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。これらのうち、アルキル基又はフェニル基が好ましい。
A
11〜A
13の特定官能基を有する基としては、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基、2−ピロリドニル基を有する炭素数4〜20の基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、スチリル基、エステル基等が挙げられる。好ましくは、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基、2−ピロリドニル基を有する炭素数4〜20の基又は炭素数1〜5のアルコキシ基である。
【0043】
B
21のポリエーテル構造としては、例えば炭素数2〜20のアルキレングリコール単位を繰返し構造が挙げられ、具体例としては、例えばポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造などが挙げられる。
aは、重合体組成物の加工性の改善効果を十分に確保するとともに、特定ポリオルガノシロキサンの粘度が高くなりすぎるのを抑制する観点から、好ましくは20〜150の整数であり、より好ましくは30〜120の整数である。bは、0〜150が好ましく、0〜120がより好ましい。cは、0〜180が好ましく、10〜150がより好ましい。
a,b及びcの合計数は、特定ポリオルガノシロキサンの取り扱い容易性の観点から、400以下が好ましく、300以下がより好ましい。なお、特定ポリオルガノシロキサンは、公知の合成方法により得ることができる。また、市販品を入手して使用することもできる。
【0044】
活性末端を有する共役ジエン系重合体と、特定ポリオルガノシロキサンとの反応は、例えば溶液反応として行うことができる。特定ポリオルガノシロキサンの使用割合(二種以上使用する場合にはその合計量)は、重合体組成物の加工性と、該組成物を用いて得られる架橋重合体の破壊特性及び粘弾性とを両立させる観点から、重合開始剤が有する重合に関与する金属原子1モルに対して、特定官能基の含有量が0.01モル以上となるような量とすることが好ましく、0.05モル以上となるような量とすることがより好ましい。また、当該使用割合の上限値は、重合開始剤が有する重合に関与する金属原子1モルに対して、特定官能基の含有量が1.0モル未満とすることが好ましく、0.7モル未満とすることがより好ましい。
【0045】
変性反応の温度は、通常、重合反応と同じであり、−20℃〜150℃とすることが好ましく、0〜120℃とすることがより好ましい。反応温度が低いと、変性後の重合体の粘度が上昇する傾向があり、反応温度が高いと重合活性末端が失活しやすくなる。反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0046】
活性末端を有する共役ジエン系重合体と特定ポリオルガノシロキサンとの反応に際しては、特定ポリオルガノシロキサンと共にその他の変性剤を用いてもよい。その他の変性剤は、シリカと相互作用する官能基を有し、かつ重合体の活性末端と反応し得る化合物であれば特に限定されず、変性剤として公知の化合物を用いることができる。なお、その他の変性剤は、活性末端と反応し得る基を2個以上有する化合物(カップリング剤)であってもよい。その他の変性剤を使用する場合、その使用割合は、活性末端を有する共役ジエン系重合体と特定ポリオルガノシロキサンとの反応を十分に進行させる観点から、特定ポリオルガノシロキサンとその他の変性剤との合計量に対して、10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0047】
なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体と特定ポリオルガノシロキサンとを反応させる前に、特定ポリオルガノシロキサンと反応する共役ジエン系重合体の量を調整することを目的として、アルコール等の重合停止剤や上記その他の変性剤を重合系内に添加することにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体の一部を不活性化してもよい。
【0048】
活性末端を有する共役ジエン系重合体と特定ポリオルガノシロキサンとの反応により得られる変性共役ジエン系重合体は、特定ポリオルガノシロキサンに複数個の共役ジエン系重合体鎖が結合したものであることが好ましい。特定ポリオルガノシロキサンを介して複数個の共役ジエン系重合体鎖が結合された構造を有する変性共役ジエン系重合体をシリカと共に重合体組成物に配合することにより、引張強度及び低発熱性に優れた架橋重合体が得られる点で好ましい。変性共役ジエン系重合体が有する共役ジエン系重合体鎖の個数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
【0049】
本開示の変性共役ジエン系重合体は、特定ポリオルガノシロキサンとして上記式(6)で表される化合物を用いて得られる重合体であることが好ましい。当該変性共役ジエン系重合体は下記式(10)で表される。
【化5】
(式(10)中、R
21〜R
28は、それぞれ独立にヒドロカルビル基であり、P
11は、エポキシ基、アルコキシ基、カルボニル基、2−ピロリドニル基、ビニル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも一種である特定官能基を有する基、又は、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する単量体単位と共役ジエン化合物に由来する単量体単位とを有する共役ジエン系重合体鎖であり、P
12及びP
13は、それぞれ独立に、上記特定官能基を有する基、上記共役ジエン系重合体鎖、又はヒドロカルビル基であり、B
21は、ポリエーテル構造を有する基である。aは3〜200の整数であり、bは0〜200の整数であり、cは0〜200の整数である。R
21〜R
28,P
11,B
21は、構造単位間で互いに同じでも異なっていてもよい。ただし、分子内に上記共役ジエン系重合体鎖を2個以上有する。)
なお、反応溶液に含まれる共役ジエン系重合体を単離するには、例えばスチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法及び熱処理等の乾燥の操作によって行うことができる。
【0050】
本開示の変性共役ジエン系重合体のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1.0×10
5〜3.0×10
6であり、より好ましくは1.2×10
5〜2.0×10
6であり、さらに好ましくは1.5×10
5〜1.2×10
6である。
【0051】
<重合体組成物>
本開示の重合体組成物は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分、無機フィラー及び架橋剤を含有する。重合体組成物中における上記の変性共役ジエン系重合体の含有割合は、重合体組成物に含まれるゴム成分のうちの20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。ここで、無機フィラーとしては、シリカ及びカーボンブラックの少なくとも一方を好ましく使用できる。本開示の変性共役ジエン系重合体と組み合わせた場合において、タイヤ特性の改善効果が高い点で、好ましくはシリカである。
【0052】
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、破壊特性の改良効果や、ウェットグリップ性と低転がり抵抗性との両立効果の観点から、湿式シリカが特に好ましい。また、高分散型(High Dispersible Type)のシリカを使用することも、重合体組成物中における分散性を良好にできるとともに物性及び加工性を向上できる観点から好ましい。なお、シリカは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。無機フィラーとしてカーボンブラックを使用することで良好な補強効果が得られる。
【0054】
重合体組成物には、フィラーとして、シリカやカーボンブラックの他に、クレー、炭酸カルシウムなどの各種の補強性充填剤が配合されていてもよい。重合体組成物中におけるシリカ及びカーボンブラックの合計量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜110質量部である。
【0055】
架橋剤としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂等が挙げられ、通常、硫黄が使用される。硫黄の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0056】
本開示の重合体組成物には、上記で得られた本開示の変性共役ジエン系重合体に加えて、当該変性共役ジエン系重合体とは異なる他のゴム成分が配合されていてもよい。かかる他のゴム成分の種類は特に限定されないが、ブタジエンゴム(BR、例えばシス−1,4結合90%以上のハイシスBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)含有BRなど)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体ゴム等が挙げられる。その他のゴム成分の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは5〜60質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0057】
重合体組成物には、上記した成分の他に、例えば老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤、相溶化剤、加硫助剤、プロセスオイル、加工助剤、スコーチ防止剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各種成分に応じて適宜選択することができる。
【0058】
本開示の重合体組成物は、重合体成分、無機フィラー及び架橋剤の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練され、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として各種ゴム製品に適用可能である。具体的には、例えばタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;パッキン、ガスケット、ウェザーストリップ、O−リング等のシール材;自動車、船舶、航空機、鉄道等の各種車両用の内外装表皮材;建築材料;産業機械用や設備用などの防振ゴム類;ダイヤフラム、ロール、ラジエータホース、エアーホース等の各種ホース及びホースカバー類;動力伝達用ベルトなどのベルト類;ライニング;ダストブーツ;医療用機器材料;防舷材;電線用絶縁材料;その他の工業品等の用途に適用できる。
【0059】
本開示の製造方法によれば、低燃費性能、引張強度及びウェットグリップ性に優れた加硫ゴムが得られる変性共役ジエン系重合体を製造することができる。したがって、本開示の変性共役ジエン系重合体を含む重合体組成物は、特にタイヤのトレッド及びサイドウォール用の材料として好適に使用できる。
【0060】
タイヤの製造は常法に従い行うことができる。例えば、重合体組成物を混練機で混合し、シート状にしたものを、常法に従い所定位置に配して加硫成形することによりトレッドゴム又はサイドウォールゴムとして形成され、空気入りタイヤが得られる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0062】
[重合体の特性評価]
・ビニル結合含量(%):400MHzの
1H−NMRによって測定した。
・結合スチレン含量(%):400MHzの
1H−NMR測定によって測定した。
・変性前の重量平均分子量(変性反応前ピーク分子量):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。GPCの具体的な測定条件は以下の通りである。
(GPC測定条件)
測定器:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した
検出器:示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
・ムーニー粘度(ML
1+4,100℃):JIS K6300に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で求めた。
【0063】
[実施例1−1:変性共役ジエン系ゴムIの合成]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラヒドロフラン0.083mmol、1,3−ブタジエン306.6g、及びスチレン113.4gを投入した。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.5mmol及びn−ブチルリチウム14.1mmolを、それぞれ、シクロヘキサン溶液及びn−ヘキサン溶液として投入し、40℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3−ブタジエン167.4g、及びスチレン12.6gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、次いで、下記式(6−1)で表されるポリオルガノシロキサンAを、エポキシ基の含有量が1.42mmol(使用したn−ブチルリチウムの0.33倍モルに相当)となるように、20質量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムIを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムIを得た。変性共役ジエン系ゴムIの重合処方を下記表1に、得られた変性共役ジエン系ゴムIの性質を下記表2に示す。
【化6】
【0064】
[実施例1−2]
実施例1−1で、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランを1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン(11.5mmol)に代えた以外は、実施例1−1と同様の方法で変性共役ジエン系ゴムIIを得た。得られた変性共役ジエン系ゴムIIの性質を下記表2に示す。
【0065】
[比較例1−1]
実施例1−1でポリオルガノシロキサンAを加えず、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加した以外は、実施例1−1と同様の方法で変性共役ジエン系ゴムiを得た。
[比較例1−2]
実施例1−2でポリオルガノシロキサンAを加えず、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加した以外は、実施例1−2と同様の方法で変性共役ジエン系ゴムiiを得た。
[比較例1−3]
実施例1−1でビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランを加えない以外は、実施例1−1と同様の方法で変性共役ジエン系ゴムiiiを得た。
[比較例1−4]
実施例1−1でビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン及びポリオルガノシロキサンAを加えず、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加した以外は、実施例1−1と同様の方法で未変性の共役ジエン系ゴムivを得た。
得られた変性共役ジエン系ゴムi〜ivの性質を下記表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1中、化合物の略称は以下のとおりである。
X−1:ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン
X−2:1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン
ポリオルガノシロキサンA:上記式(6−1)で表される化合物
【0068】
【表2】
【0069】
[実施例2−1:ゴム組成物の調製及び物性評価]
上記で得られた変性共役ジエン系ゴムIを用いて、下記表3に示す配合処方により調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。ゴム組成物の混練方法及び評価方法は以下の通りである。
【0070】
【表3】
【0071】
表3中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。
*1;日本ゼオン社製 Nipol BR1220
*2;ローディア社製 Zeosil 1165MP
*3;デグッサ社製 Si69
*4;新日本石油社製 フッコール エラミック30
*5;旭電化工業社製 SA−300
*6;大内新興化学工業社製 ノクラック6C
*7;大内新興化学工業社製 ノクセラーNS
*8;大内新興化学工業社製 ノクセラーD
【0072】
・ゴム組成物の混練り方法及び評価方法
容積250mlのバンバリーミキサーを用いて、実施例1−1で得た変性共役ジエン系ゴムI 70部、及びブタジエンゴム(商品名「Nipol BR1220」、日本ゼオン社製)30部を素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):163m
2/g)50部、シランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)6.0部、およびプロセスオイル(商品名「フッコール エラミック30」、新日本石油社製)25部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製)25部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)2.5部、ステアリン酸(商品名「SA−300」、旭電化工業社製)2部、及び老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。このゴム組成物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られたゴム組成物と、硫黄1.5部及び架橋促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS」、大内新興化学工業社製)1.7部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)2.0部との混合物)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。
【0073】
このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して各試験片を作製し、この各試験片について、以下のようにして引張強度、ウェットグリップ性及び低発熱性の評価を行った。下記表4にその結果を示す。
(i)引張強度:加硫ゴムを測定用試料とし、JIS K6251に従って、ダンベル状3号形試験片を用いて引張試験を行い、破断強度を測定した。数値が大きいほど、加硫ゴムの引張強度に優れる。
(ii)ウェットグリップ性:加硫ゴムを測定用試料とし、JIS K6255に従って、直径29.0mm、厚み12.5mmの試験片を用いて反発弾性試験を行い、0℃における反発弾性を測定した。比較例2−1を基準サンプルとし、比較例2−1の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど、加硫ゴムをタイヤに用いた際のウェットグリップ性に優れる。
(iii)低発熱性:加硫ゴムを測定用試料とし、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。比較例2−1を基準サンプルとし、比較例2−1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいほど、加硫ゴムをタイヤに用いた際の低発熱性に優れる。
物性評価の結果を下記表4に示す。
【0074】
[実施例2−2、比較例2−1〜2−4]
使用するゴム成分の種類及び量を下記表4に記載の通り変更した点以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、調製したゴム組成物を加硫して物性評価を行った。物性評価の結果を下記表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
以上の結果から分かるように、各実施例で得られた変性共役ジエン系ゴムI,IIは、比較例で得られた変性又は未変性の共役ジエン系ゴムに比べて、加硫ゴムの引張強度及び低発熱性に優れていた。また、ウェットグリップ性についても、比較例のものと同等の結果が得られた。
以上のことから、(A)ビニルシラン化合物及び(B)芳香族ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体単位を有し、末端が特定ポリオルガノシロキサンで変性された変性共役ジエン系重合体によれば、引張強度、ウェットグリップ性及び低発熱性をバランス良く有する加硫ゴムを得ることができることが確認された。