【文献】
Jeong Soo Lee, et al,Texture and cross-sectional microstructure of MgO films grown on silicon dioxide by electron-beam evaporation,Thin Solid Films,1999年,354,pp.82-86
【文献】
Heteroepitaxial Growth of MgO Thin Films on Al2O3(0001) by Metalorganic Chemical Vapor Deposition,Japanese Journal of Applied Physics,2002年,41,pp.6919-6921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットに代表される移動体通信機器の更なる高速大容量通信化に対応するために複数の周波数帯域を同時に用いるMIMO技術(Multi−Input Multi−Output)の実用化が始まっている。通信に使用する周波数帯域が増えると、周波数帯域毎にそれぞれ高周波部品が必要となるが、機器サイズを維持したまま部品点数を増やすには、各部品の更なる小型化、高機能化が求められる。
【0003】
このような高周波対応の電子部品として、例えばダイプレクサやバンドパスフィルタ等がある。これらはいずれもキャパシタを担う誘電体とインダクタを担う磁性体の組み合わせによって構成されているが、良好な高周波特性を得るためには、高周波領域でのそれぞれの損失を抑制することが求められる。
【0004】
誘電体に着目すると、(1)小型化の要求への対応として、キャパシタ部の面積を小さくするために、比誘電率(εr)が高いこと、(2)周波数の選択性を良好にするために、誘電損失が小さい、すなわちQ値が高いこと、(3)絶縁破壊電圧が高いこと、などが要求される。
【0005】
例えば一般にアモルファスSiNx膜は、高周波(2GHz)でのQ値が500程度と高く、絶縁破壊電圧も500V/μm〜700V/μm程度と高いため高周波対応の電子部品に広く使用されているが、比誘電率が7程度と低いことから、目的の機能を持たせるためには大きな電極面積が必要になり、小型化の要求に応えていくことが困難であった。また、近年の通信技術の進歩に伴い、高周波部品のさらなる特性向上が望まれており、すなわち、さらなる高いQ値及び高い絶縁破壊電圧を有する誘電体が求められている。このような要求に応えるため、MgOやCaO等に代表されるNaCl型のアルカリ土類金属を主成分とした誘電体膜が近年検討され始めている。この理由としては、1μm以上の厚膜において、前記アモルファスSiNx膜の特性を上回る特性、つまり、高い比誘電率(>7)と高いQ値(>500)及び絶縁破壊電圧(>700V/μm)を有するためである。
【0006】
非特許文献1には、NaCl型結晶構造を有するMgO厚膜を1μm未満の薄膜にした技術が開示されている。作製されたMgO薄膜は厚さ260nmであり、測定周波数1KHzにおいてεr=7、Q=20を示し、絶縁破壊電圧(Vbd)は80V/μmあると報告されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、場合により図面を参照して説明する。
【0016】
<薄膜コンデンサ10>
図1は、本発明の一実施形態に係る誘電体膜を用いた電子部品の一例である薄膜コンデンサ10の断面図である。薄膜コンデンサ10は、支持基板1の表面に積層された下部電極3と上部電極4及び下部電極3と上部電極4の間に設けられた誘電体膜5とを備えている。支持基板1と下部電極3の間に、支持基板1と下部電極3との密着性を向上させるために下地層2を備える。支持基板1は、薄膜コンデンサ10全体の機械的強度を確保する機能を有する。
【0017】
薄膜コンデンサの形状に特に制限はないが、通常、直方体形状とされる。またその寸法にも特に制限はなく、厚みや長さは用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0018】
<支持基板1>
図1に示す支持基板1を形成するための材料はとくに限定されるものではなく、単結晶としてはSi単結晶、SiGe単結晶、GaAs単結晶、InP単結晶、SrTiO
3単結晶、MgO単結晶、LaAlO
3単結晶、ZrO
2単結晶、MgAl
2O
4単結晶、NdGaO
3単結晶や、セラミック多結晶基板としてはAl
2O
3多結晶、ZnO多結晶、SiO
2多結晶や、Ni、Cu、Ti、W、Mo、Al、Ptなどの金属や、それらの合金の基板などによって支持基板1を形成することができるが特に限定されるものではない。これらの中では、低コスト、加工性から、Si単結晶を支持基板1として使用されることが一般的である。支持基板1は、基板の材質によってその比抵抗が異なる。比抵抗が低い材料を支持基板1として使用する場合、そのまま使用すると支持基板1側への電流のリークが薄膜コンデンサ10の電気特性に影響を及ぼすことがある。そのため、支持基板1の表面に絶縁処理を施し、使用時の電流が支持基板1へ流れないようにする場合もある。例えば、Si単結晶を支持基板1として使用する場合においては、支持基板1表面を酸化させてSiO
2絶縁層の形成を行うことや、支持基板1表面にAl
2O3、SiO
2、SiNxなどの絶縁層を形成してもよく、支持基板1への絶縁が保てればその絶縁層の材料や膜厚は限定されないが、0.01μm以上が好ましい。0.01μm未満では絶縁性が保てないため、絶縁層の厚みとして好ましくない。支持基板1の厚さは、薄膜コンデンサ全体の機械的強度を確保することができれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、10μm〜5000μmに設定される。10μm未満の場合は機械的強度が確保できなく、5000μmを超えると電子部品の小型化に寄与できないといった問題が生じる場合がある。
【0019】
<下地層2>
本実施形態において、絶縁処理を施した支持基板1表面に、下地層2を備えることが好ましい。下地層2は、支持基板1と下部電極3との密着性向上を目的として挿入される。一例として、下部電極3にCuを使用する場合には下地層2はCrを、下部電極3にPtを使用する場合にはTiを下地層2として挿入することが一般的である。
【0020】
前記下地層2は、支持基板1と下部電極3との密着性向上を目的としていることから、前記一例として挙げた材料に限定されるものではない。また、支持基板1と下部電極3との密着性を保つことが出来れば、下地層2は省略しても良い。
【0021】
<下部電極3>
下部電極3を形成するための材料は、導電性を有していれば良く、例えば、Pt、Ru、Rh、Pd、Ir、Au、Ag、Cu、Niなどの金属や、それらの合金、又は導電性酸化物などによって形成することができる。そのため、コストや誘電体膜5を熱処理するときの雰囲気に対応した材料を選択すればよい。誘電体膜5は大気中の他、不活性ガスであるN
2やAr、またO
2、不活性ガスと還元性ガスであるH
2の混合ガスで熱処理を行うことが出来る。下部電極3の膜厚は電極として機能すれば良く、10nm以上が好ましい。10nm未満の場合、導電性が悪くなることから好ましくない。また、支持基板1に電極として使用可能なCuやNi、Pt等や酸化物導電性材料などを使用した基板を使用する場合は、前述した下地層2と下部電極3は省略することができる。
【0022】
下部電極3の形成後に熱処理を行い、下地層2と下部電極3の密着性向上と、下部電極3の安定性向上を図っても良い。熱処理を行う場合、昇温速度は好ましくは10℃/分〜2000℃/分、より好ましくは100℃/分〜1000℃/分である。熱処理時の保持温度は、好ましくは100℃〜800℃、その保持時間は、好ましくは0.1時間〜4.0時間である。上記の範囲を超えると、密着不良や、下部電極3表面に凹凸が発生し易くなり、誘電体膜5の誘電特性が低下し易い。
【0023】
<誘電体膜5>
誘電体膜5は、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、面直方向に(111)配向した柱状構造を有し、誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°であることを特徴とする。
【0024】
上記の特徴を有する誘電体膜は、膜厚を1μm以下にした場合でも、高い比誘電率と高いQ値、および高い絶縁破壊電圧を有することが可能となる。
【0025】
本発明者らは、このような効果が得られる要因を次のように考えている。まず、高い比誘電率と高いQ値が実現できた要因について説明する。一般的に、結晶の対称性が良く、原子や分子が規則的に並んでいる状態、すなわち結晶性が良い場合、高い比誘電率とQ値を持つことが知られている。結晶性の良い誘電体を薄膜にする際、従来の結晶構造が崩れ易く、結晶の対称性が乱れ、原子や分子の配列が維持されなくなり、すなわち結晶性が低下するため、比誘電率とQ値が低下し易い傾向となる。
【0026】
NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜においても、上記に示したような高い結晶性を有しているため、薄膜化した際に従来の技術では、結晶性が低下し、高い比誘電率や高いQ値が得られなかったものと考えている。このため、薄膜化した際に従来の高い結晶性を維持する必要があり、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜においては、誘電体膜の面直方向に(111)に配向した柱状構造を誘電体膜内に備えることで、結晶構造の乱れ、つまり結晶性の低下を抑制することが可能となり、その結果、薄膜化しても、高い比誘電率と高いQ値を得ることが出来たものと考えている。一方、(111)に配向した柱状構造を備えない場合、薄膜化した際に結晶性が低下してしまい、高い比誘電率及び高いQ値を得ることが困難となる。
【0027】
上記に示した本発明の特徴の一つである柱状構造について説明する。
本発明の柱状構造とは、
図2に示すように、誘電体膜の垂直方向の断面で観察した場合、誘電体膜の厚み方向に長い結晶子6を備えている構造のことを意味している。本発明の柱状構造は、誘電体膜全体に支持基板表面の法線方向または±5°に沿って延び、
図2中に記載されているHとLの比、つまり、アスペクト比が(H/L)≧2を満足する結晶子からなる構造となっている。
【0028】
次に、高い絶縁破壊電圧が実現できた要因について説明する。一般的に配向した柱状構造を有する誘電体膜は、粒界が膜厚方向に多数存在する構造のため、絶縁破壊電圧が低いと言われている。このため、多くの場合、誘電体膜を構成している結晶粒子の形状を球状化し、膜厚方向以外にも多数の粒界を形成することで伝導パスを複雑化し、絶縁破壊電圧を改善している。しかし、この方法では、膜厚方向以外に多くの粒界が形成されるため、Q値が低下し易いという課題があった。そこで、本発明では、球状の結晶粒子を形成するのではなく、本発明の特徴である柱状構造を構成する結晶子のアスペクト比は維持したまま結晶子のサイズを微細化することで、Q値を低下させず、高い絶縁破壊電圧を実現した。
【0029】
上記のように、柱状構造を構成する結晶子のサイズを小さくした場合、前記結晶子の存在は、CuKα線を用いて測定した場合、
図3に示すようなX線回折チャートで得られる回折ピークの半値幅で確認でき、本発明でいうと(111)の回折ピークの半値幅で、結晶子のサイズを確認できる。前記半値幅が小さいほど、結晶子のサイズは大きく、半値幅の値が大きいほど、結晶子のサイズが小さいことを意味している。
【0030】
本発明の実施形態に係る誘電体膜5は、誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°であることで、柱状構造が小さな結晶子から構成されることになるため、高い比誘電率と高いQ値を維持しつつ、より高い絶縁破壊電圧を得ることが出来る。前記半値幅が0.3°未満の場合、柱状構造を構成する結晶子のサイズが大きくなりすぎてしまい、高い絶縁破壊電圧が得られ難い傾向となってしまう。一方、半値幅が2.0°を超えると結晶子のサイズが小さくなりすぎてしまい、結晶性が低下しまい、高い比誘電率及び高いQ値を得ることが困難となってしまう。
【0031】
以上のように、高い結晶性を有するNaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜が、面直方向に(111)配向した柱状構造を備え、かつCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅を0.3°〜2.0°にすることで、高い比誘電率と高いQ値、および高い絶縁破壊電圧を得ることが可能となる。
【0032】
また、本発明の望ましい態様としては、誘電体膜5が、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分の他に、副成分としてTa、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Znのうち少なくとも一種類の元素を含むことが好ましい。
【0033】
副成分としてTa、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Znのうち少なくとも一種類の元素を含むことで、柱状構造を構成する結晶子のサイズを制御し易くなると共に、柱状構造自体の絶縁抵抗を高める効果がより強くなる。その結果、副成分が含まれない場合と比較し、副成分を含むことで、より高い絶縁破壊電圧を得ることが可能となる。
【0034】
また、前記副成分の総含有量をxとした場合、前記総含有量xが前記主成分に対して0mol%<x≦20mol%の範囲であることが好ましい。
【0035】
前記副成分の総含有量xを上記の範囲とすることで、柱状構造を構成する結晶子のサイズを制御し易くなる作用と柱状構造自体の絶縁抵抗を高める作用と共に、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜が有している結晶性を高める作用が強くなる。その結果、高い絶縁破壊電圧を維持しつつ、Q値をより高めることが可能となる。
【0036】
誘電体膜5の厚さは、好ましくは10nm〜2000nm、より好ましくは50nm〜1000nmである。10nm未満では絶縁破壊が生じやすく、2000nmを超える場合においては、コンデンサの静電容量を大きくするために電極面積を広くする必要があり、電子部品の設計によっては小型化が困難となる場合がある。誘電体膜厚の計測はFIB(集束イオンビーム)加工装置で掘削し、得られた断面をSIM(走査型イオン顕微鏡)等で観察して測長すれば良い。
【0037】
誘電体膜5は、好ましくは真空蒸着法、スパッタリング法、PLD(パルスレーザー蒸着法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MO−CVD(有機金属化学気相成長法)、MOD(有機金属分解法)やゾル・ゲル法、CSD(化学溶液堆積法)などの各種薄膜形成法を用いて形成したものである。その際に使用する原料(蒸着材料、各種ターゲット材料や有機金属材料等)には微少な不純物や副成分が含まれている場合があるが、絶縁性を大きく低下させる不純物でなければ、特に問題はない。
【0038】
また、本発明に係る誘電体膜5は、本発明の効果である比誘電率やQ値、絶縁破壊電圧を大きく劣化させるものでなければ、微小な不純物や副成分を含んでいてもかまわない。よって、残部である主成分の含有量は特に限定されるものではないが、例えば前記主成分を含有する誘電体膜全体に対し80%以上、100%以下である。
【0039】
また、誘電体膜5は通常、本発明の誘電体膜のみで構成されるが、別の誘電体膜と組み合わせた積層構造であっても構わない。例えば、既存のSi
3N
x、SiO
x、Al
2O
x、ZrO
x、Ta
2O
x等のアモルファス誘電体膜や結晶膜との積層構造とすることで、誘電体膜5のインピーダンスや比誘電率の温度変化を調整することが可能となる。また、前記積層構造とすることで、誘電体膜5の大気暴露を抑制することも可能となる。
【0040】
<上部電極4>
本実施形態の一例において、薄膜コンデンサ10は、誘電体膜5の表面に、薄膜コンデンサ10の他方の電極として機能する上部電極4を備えている。上部電極4を形成するための材料は、導電性を有していれば、とくに限定されるものではなく、下部電極3と同様の材料によって、上部電極4を形成することができる。上部電極4の膜厚は電極として機能すれば良く、10nm以上が好ましい。膜厚が10nm以下の場合、導電性が悪化するため上部電極4として好ましくない。
【0041】
上述した実施形態では、本発明の一実施形態に係る誘電体膜を用いた電子部品の一例としての、薄膜コンデンサを例示したが、本発明に係る誘電体膜を用いた電子部品としては、薄膜コンデンサに限定されず、たとえば、ダイプレクサ、バンドパスフィルタ、バランやカプラ等、誘電体膜を有する電子部品であれば何でも良い。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0043】
<実施例1><比較例1>
まず、350μm厚のSiの表面に6μm厚のSiO
2絶縁層を備えた10mm×10mm角の支持基板の表面上に、下地層であるCr薄膜を20nmの厚さとなるようにスパッタリング法で形成した。
【0044】
次いで、上記で形成したCr薄膜の下地層上に下部電極であるCu薄膜を100nmの厚さとなるようにスパッタリング法で形成した。
【0045】
形成したCr/Cu薄膜に対し、昇温速度を10℃/分、保持温度を15
0℃、温度保持時間を0.5時間、雰囲気を窒素雰囲気とし常圧下で熱処理を行った。
【0046】
誘電体膜の形成にはスパッタリング法を用いた。誘電体膜の形成に必要なターゲットは次のように作製した。
【0047】
まず、表1に示す試料No.1〜試料No.47のMg、Ca、Sr、Ba、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Znの量となるようにMgCO
3、CaCO
3、SrCO
3、BaCO
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5、V
2O
5、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、ZnOの秤量を行い、1Lの広口ポリポットに秤量した原料粉末と無水エタノール、及びφ2mmのZrO
2ビーズを入れて20時間の湿式混合を行った。その後、混合粉末スラリーを100℃で20時間乾燥させ、得られた混合粉末をAl
2O
3坩堝に入れ、大気中1250℃で5時間保持し、仮焼粉末を得た。
【0048】
得られた仮焼粉末を、一軸加圧プレス機を使用して成形体を得た。成形条件は、圧力:2.0×10
8Pa、温度:室温とした。
【0049】
その後、得られた成形体について、昇温速度を200℃/時間、保持温度を1600℃〜1700℃、温度保持時間を12時間とし、雰囲気は常圧の大気中で焼成を行った。
【0050】
得られた焼結体の厚さが4mmとなるように、円筒研磨機で両面を研磨し、誘電体膜を形成するために必要なスパッタリング用ターゲットを得た。
【0051】
こうして得られたスパッタリング用ターゲットを用いて、下部電極上に800nmの厚さとなるように表1に示す成膜条件下でスパッタリング法を用いて誘電体膜を形成した。また、下部電極の一部を露出させるために、メタルマスクを使用して、誘電体膜が一部成膜されない領域を形成した。
【0052】
【表1】
なお、表中の「−」は含まれないことを意味している。
【0053】
誘電体膜厚の計測はFIBで掘削し、得られた断面をSIMで観察して測長した。
【0054】
成膜後の誘電体膜の組成は、すべての試料についてXRF(蛍光X線元素分析)を使用して分析を行い、表1に記載の組成であることを確認した。
【0055】
さらに、得られたすべての誘電体膜について、結晶構造及び結晶性の確認をそれぞれ下記に示す方法により行った。
【0056】
<柱状構造>
柱状構造は、誘電体膜の断面をTEM観察することで確認した。暗視野像にて結晶子のアスペクト比を計測し、そのアスペクト比が2以上の結晶子で構成されているものについて、柱状構造を有する膜と定義した。
<結晶配向及び結晶性>
誘電体膜に対し、X線回折(平行法)による測定を行い、回折パターンを得た。X線源としてCu−Kα線を用い、その測定条件は、電圧45kV、200mA、2θ=20°〜80°の範囲とした。誘電体膜の配向について、得られた回折パターンにおける、(111)のピークと、(200)のピーク強度比を比較し、その比((111)のピーク強度/(200)のピーク強度)が1.5以上を示すものについて、(111)に配向していると定義した。また、結晶性を示す指標として、配向している面の半値幅を測定した。
図3に得られた回折パターンから半値幅を測定した一例を示す。(実施例1試料No.1)
【0057】
次いで、得られた上記誘電体膜上に、蒸着装置を使用して上部電極であるAg薄膜を形成した。上部電極の形状を、メタルマスクを使用して直径100μm、厚さ100nmとなるように形成することで、
図1に示す構造の試料No.1〜試料No.47を得た。
【0058】
得られたすべての薄膜コンデンサ試料について、比誘電率、Q値、絶縁破壊電圧の測定を、それぞれ下記に示す方法により行った。
【0059】
<比誘電率、Q値>
比誘電率、Q値は、薄膜コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ(Agilent社製4991A)にて、周波数2GHz,入力信号レベル(測定電圧)0.5Vrmsの条件下で静電容量、誘電損失(tanδ)を測定し、測定された静電容量と膜厚の測定の結果より比誘電率を、Q値は誘電損失の逆数(1/tanδ)から算出した(単位なし)。アモルファスSiNx膜の比誘電率が7程度であったため、本発明においては、それより高い比誘電率であることを良好とした。また、アモルファスSiNx膜のQ値は約500程度であったが、近年より高周波特性の良い部品が求められているため、Qの値が850以上を良好とした。
【0060】
<絶縁破壊電圧>
絶縁破壊電圧は、薄膜コンデンサ試料に対し、下部電極が露出している領域と上部電極にデジタル超高抵抗/微小電流計(ADVANTEST R8340)に接続し、5V/秒のステップで電圧を印加して計測し、初期抵抗値から2桁低下したときの電圧値を読み取り、その値を試料の破壊電圧値(V)とした。得られた破壊電圧値(V)を誘電体膜厚で除した数値を絶縁破壊電圧(Vbd)(V/μm)とした。表2には、n=5の平均値を記載した。アモルファスSiNxの絶縁破壊電圧が500V/μm〜700V/μm程度であったが、近年よりESD特性の良い部品が求められているため、絶縁破壊電圧が1250V/μm以上を良好とした。
【0061】
【表2】
なお、表中の○は、(111)配向の柱状構造がある場合で、×は前記構造を含まない場合を意味している。
【0062】
試料No.1〜試料No.14
表2より、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜であって、前記誘電体膜は面直方向に(111)配向した柱状構造を有し、前記誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°である試料No.1〜試料No.14は、800nmという薄膜にしても、特性が良好であり、Q値が850以上、絶縁破壊電圧が1250V/μm以上であることを確認できた。
【0063】
試料No.15〜試料No.35
表2より、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜であって、前記誘電体膜は面直方向に(111)配向した柱状構造を有し、前記誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°であり、副成分としてTa、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Znのうち少なくとも一種類の元素を含む試料No.15〜試料No.35は、副成分を含まない試料No.1〜試料No.14よりも、高い絶縁破壊電圧を有していることが確認できる。更に、主成分に対して0mol%<x≦20mol%の範囲で副成分を含む試料No.15〜試料No.29は、特に特性が良好であり、Q値が1050以上、絶縁破壊電圧が1350V/μm以上であることが確認できた。
【0064】
試料No.36〜試料No.47
表2より、比較例である試料No.36〜試料No.39は(111)配向の柱状構造を備えていないため、薄膜化した際に結晶性が低下してしまい、Q値が850以下と低い値となってしまう。比較例である試料No.40及び試料No.41は(111)配向の柱状構造を有しているが、半値幅が0.2°であったため、絶縁破壊電圧に寄与できず、絶縁破壊電圧が1240V/μm以下であった。また、比較例である試料No.42及び試料No.43は(111)配向の柱状構造を有しているが、半値幅が2.1°であり絶縁破壊電圧は良好であったが、結晶子サイズが小さくなり過ぎたため、Q値が850以下となってしまった。また、比較例である試料No.44〜試料No.47は(111)配向の柱状構造を備えておらず、また半値幅が本発明の範囲外あるため、高いQ値と高い絶縁破壊電圧を維持することが出来ないことが確認できた。
【0065】
以上より、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜において、誘電体膜が面直方向に(111)配向した柱状構造を有し、かつ、誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°である場合、高い比誘電率と高いQ値及び高い絶縁破壊電圧を維持することが出来ることが確認できた。
【0066】
次に、本発明の特徴を有する誘電体膜が、種々の膜厚においても有効であることを確認した実施例について説明する。
【0067】
<実施例2>
誘電体膜の厚みを変更した以外は、実施例1の試料No.29と同様の手法で試料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
試料No.48〜試料No.50
表3より誘電体膜の膜厚が異なっても、NaCl型結晶構造を有するアルカリ土類金属酸化物を主成分とする誘電体膜であって、前記誘電体膜は面直方向に(111)配向した柱状構造を有し、前記誘電体膜のCu−KαX線回折チャートにおいて、(111)の回折ピークの半値幅が0.3°〜2.0°である特徴を有する誘電体膜であれば、50nmまで薄膜化してもほぼ同様な特性を示すことが確認できた。つまり、本発明の特徴を有する誘電体膜であれば、薄膜化しても特性の低下がほとんど無く、高い比誘電率と高いQ値及び高い絶縁破壊電圧を有することが確認できた。