(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動手段は、前記照射位置において前記透過部材と共に記録媒体を挟み、前記照射位置に対して記録媒体の移動方向における上流側又は下流側に移動されることにより、前記照射位置に対する下流側で記録媒体が前記透過部材に接触する範囲を変更する変更部材を有する請求項1に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。
【0022】
〔全体構成〕
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、一例として、搬送部12と、画像形成部14と、操作パネル16と、制御部18と、定着装置20とを有する。搬送部12は、メディアMを定着装置20に向けて搬送する。画像形成部14は、搬送部12によって搬送されるメディアM上にトナーTを用いてトナー像Gを形成する。定着装置20は、詳細は後述するが、画像形成部14で形成されたトナー像GをメディアMに定着する。制御部18は、詳細は後述するが、画像形成装置10の各部の動作を制御する。
【0023】
メディアMは、記録媒体の一例であり、用紙やフィルムを含む。なお、第1実施形態におけるメディアMは、一例として、連続帳票(連帳)とされており、少なくとも搬送部12の送出ロール13Aから巻取ロール13Bまでの長さを有する。トナーTは、現像剤の一例である。トナー像Gは、現像剤像の一例である。画像形成部14は、形成手段の一例である。制御部18は、制御手段の一例である。また、画像形成部14は、帯電、露光、現像、転写、清掃の各工程を行うように構成されている。
【0024】
なお、以下の説明では、
図1に矢印Yで示す方向を画像形成装置10の高さ方向、
図1に矢印Xで示す方向を幅方向とする。また、高さ方向及び幅方向のそれぞれに直交する方向(Zで示す)を奥行き方向とする。そして、画像形成装置10を図示しないユーザが立つ側から見て(正面視して)、幅方向、高さ方向、奥行き方向をX方向、Y方向、Z方向と記載する。さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側をY側、下側を−Y側、右側をX側、左側を−X側、奥側(後側)をZ側、前側を−Z側と記載する。
【0025】
(操作パネル)
操作パネル16は、情報設定手段の一例として、タッチパネルで構成されている。操作パネル16では、画像形成装置10に関する各種情報やユーザが選択する選択ボタンなどが表示されるように構成されている。また、操作パネル16では、画像形成装置10によって形成されるトナー像G(画像)の光沢度、メディアMの種類、画像形成のプロセススピード(単位時間当りの画像形成枚数に相当)が設定可能とされている。光沢度とは、JIS規格のZ8741に記載される定義に準ずる。また、光沢度は、一例として、鏡面光沢計Model503(エリクセン社製)を用いて、光を60度入射、60度受光の条件で測定して求められる。
【0026】
操作パネル16では、一例として、高光沢度、低光沢度の2種類をユーザが選択可能とされている。また、操作パネル16では、一例として、メディアMの種類(材質)について、用紙とフィルムの2種類をユーザが選択可能とされている。さらに、操作パネル16では、一例として、画像形成のプロセススピードについて、低速、高速の2種類をユーザが選択可能とされている。操作パネル16で選択(設定)された各種情報は、後述する制御部18に送られる。
【0027】
〔要部構成〕
次に、定着装置20及び制御部18について説明する。
【0028】
図2に示すように、定着装置20は、一例として、筐体22と、透明ベルト24と、光源26と、集光レンズ28と、透明ロール32と、加圧ロール34と、移動部36とを有する。筐体22は、装置本体の一例である。透明ベルト24は、透過部材の一例である。透明ロール32は、接触部材の一例である。加圧ロール34は、加圧部材の一例である。移動部36は、移動手段の一例である。
【0029】
<筐体>
筐体22は、耐熱性の樹脂材料で構成されており、Z方向を長手方向とする直方体状に形成されている。筐体22には、筐体22内にメディアMを進入させるための進入口22Aと、メディアMを筐体22から排出させるための排出口22Bとが形成されている。一例として、進入口22Aと排出口22Bとは、X方向に並んでいる。
【0030】
<透明ベルト>
透明ベルト24は、無端状とされている。また、透明ベルト24は、一例として、Z方向を軸方向とする3本のガイドロール25及び透明ロール32に巻き掛けられている。そして、透明ベルト24は、ガイドロール25が図示しないギヤ及びモータにより回転駆動されることで回転(周回移動)するようになっている。透明ベルト24では、加圧ロール34により加圧される後述するニップ部Nを、後述する光源26からのレーザ光Bmが透過するようになっている。
【0031】
さらに、透明ベルト24は、ニップ部Nにおいて、メディアM上のトナー像Gと接触するようになっている。トナー像Gは、ニップ部Nにおいてレーザ光Bmにより加熱されると共に加圧され、メディアMに定着される。このように、透明ベルト24は、回転しながらメディアM上のトナー像Gと接触し、光源26からのレーザ光Bmをトナー像Gに向けて透過するように構成されている。
【0032】
また、透明ベルト24は、一例として、弾性層と、該弾性層に積層された基材層と、該基材層に積層された中間層と、該中間層に積層された離型層とを有する4層構造とされている。なお、弾性層、基材層、中間層、離型層の間には、接着性を高めるためのプライマー層が形成されている。
【0033】
弾性層は、透明ベルト24の最も透明ロール32側(内側)に配置された最内層であり、露出されている。また、弾性層は、一例として、基材層よりも厚いシリコーンゴムで構成されており、レーザ光Bmを透過する。なお、本実施形態における「弾性層」とは、ニップ部Nにおいて加圧されたときに基材層よりも厚さ方向に大きく弾性変形する層である。なお、シリコーンゴム以外の材料としては、例えば、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、二トリルゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴムなどがある。
【0034】
基材層は、透明ベルト24としての必要な強度を維持するための層である。また、基材層は、一例として、ポリイミドで構成されており、レーザ光Bmを透過する。なお、ポリイミド以外に使用可能な材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。また、ポリイミド以外に使用可能な材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)が挙げられる。さらに、ポリイミド以外に使用可能な材料としては、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。なお、基材層は、上記の材料の組合せにより構成してもよい。
【0035】
中間層は、一例として、シリコーンゴムで構成されており、レーザ光Bmを透過する。なお、本実施形態では、一例として、弾性層と中間層が同様の材料(シリコーンゴム)で構成されている。
【0036】
離型層は、一例として、四フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)で構成されており、レーザ光Bmを透過する。また、離型層は、離型層が無い構成に比べて、透明ベルト24へのトナー像Gの付着を抑制する。離型層を構成する他の材料としては、例えば、四フッ化エチレン重合体(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などがある。なお、離型層は、中間層と協働して定着後のトナー像Gに好ましい光沢を与える機能も有する。
【0037】
<光源>
光源26は、透明ベルト24の内側に配置され、図示しないブラケットにより筐体22に固定されている。また、光源26は、一例として、Z方向に並び−Y側に向けてレーザ光Bmを出射する図示しない複数のレーザアレイと、該レーザアレイから出射されたレーザ光Bmを平行光とする図示しないコリメートレンズとを有する。レーザ光Bmは、光の一例である。そして、光源26は、レーザ光Bmを後述する集光レンズ28に入射させるようになっている。集光レンズ28によって集光されたレーザ光Bmは、後述する透明ロール32及び透明ベルト24を通して、トナー像Gに照射されるようになっている。
【0038】
なお、本実施形態では、一例として、光源26の長手方向がZ方向、レーザ光Bmがトナー像Gに照射される方向がY方向、Z方向及びY方向と直交しメディアMが搬送される方向がX方向とされている。メディアMは、一例として、X側から−X側へ搬送される。
【0039】
<集光レンズ>
集光レンズ28は、レーザ光Bmの光軸上で光源26と後述する透明ロール32との間に配置されている。また、集光レンズ28は、光源26から照射されたレーザ光Bmを後述するニップ部Nに集光させる平凸レンズで構成されている。
【0040】
<透明ロール>
透明ロール32は、透明ベルト24の内側でかつメディアMが搬送される搬送経路AのY側に、Z方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、透明ロール32は、透明ベルト24のレーザ光Bmの照射位置の内周面と接触している。さらに、透明ロール32は、光源26からのレーザ光Bmを透過すると共に後述するニップ部Nに向けて集光する光学部材であり、一例として、円柱状(中実)のロッドレンズであるガラスロールで構成されている。レーザ光Bmの光軸は、透明ロール32をZ方向に見たときの透明ロール32の中心を通っている。
【0041】
透明ロール32の外周面におけるレーザ光Bmが入射する部位を入射部32Aと称する。入射部32Aは、透明ロール32をZ方向に見て、透明ロール32のY方向における頂部を含む範囲(部位)である。一方、透明ロール32の外周面における入射部32Aとは180度ずれた部位を加圧部32Bと称する。加圧部32Bは、透明ロール32の外周面と透明ベルト24の内周面とが接触する部位である。
【0042】
なお、本実施形態における透明ベルト24及び透明ロール32の「透明」とは、レーザ光Bmの波長域において透過率が十分に高いことを意味する。即ち、透明ベルト24及び透明ロール32は、レーザ光Bmを透過するものであればよく、光利用効率の観点からすれば、透過率が高ければ高いほどよい。透過率は、一例として、90%以上、望ましくは95%以上がよい。
【0043】
<加圧ロール>
加圧ロール34は、一例として、ステンレス鋼製で円柱状に形成された本体部34Aと、本体部34Aの両端部から軸方向の外側へ突出され本体部34Aよりも小径とされた円柱状の軸部34Bとを有する。また、加圧ロール34は、メディアMが搬送される搬送経路Aの−Y側に、Z方向を軸方向として回転可能に設けられている。さらに、加圧ロール34は、透明ベルト24との間に予め決められた加圧力が作用するように配置されている。言い換えると、加圧ロール34は、トナー像Gが形成されたメディアMを、後述する照射位置B(
図3(A)参照)において透明ベルト24と共に挟んで加圧し、−X側に搬送するようになっている。
【0044】
ここで、透明ロール32と加圧ロール34とで透明ベルト24及びメディアMが挟まれ、トナー像Gが加圧される部位(領域)をニップ部Nと称する。つまり、加圧ロール34は、メディアM上のトナー像G及び透明ベルト24を透明ロール32に向けて加圧して、ニップ部Nを形成している。また、ニップ部Nは、レーザ光BmによりメディアM上のトナー像Gが加熱される部位でもある。
【0045】
<移動部>
図3(A)に示す移動部36は、メディアM(搬送経路A)に対する透明ベルト24側とは反対側に配置されている。また、移動部36は、移動部材の一例としての押当ロール38と、押当ロール38を回転可能に支持する支持部44と、支持部44をY方向に案内する案内部42と、支持部44をY方向に移動させる駆動部46とを有する。そして、移動部36は、後述する基準状態において透明ベルト24に対して押当ロール38を移動させることで、後述する照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲を増すようになっている。
【0046】
(押当ロール)
押当ロール38は、一例として、ステンレス鋼製で円柱状に形成された本体部38Aと、本体部38Aの両端部から軸方向の外側へ突出され本体部38Aよりも小径とされた円柱状の軸部38Bとを有する。また、押当ロール38は、後述する基準状態において、搬送経路Aの−Y側でかつメディアMの移動方向(搬送方向)における加圧ロール34よりも下流側に、Z方向を軸方向として回転(従動回転)可能に設けられている。
【0047】
具体的には、押当ロール38は、移動部36によって回転可能に支持されると共に、透明ベルト24に対して、Y方向に沿って相対移動可能とされている。このように構成された押当ロール38は、メディアMが透明ベルト24に接触する範囲を増すときにメディアMのトナー像G側の面とは反対側の面と接触し、透明ベルト24と共にメディアMを挟んで回転するようになっている。言い換えると、押当ロール38は、後述する移動状態において、透明ロール32と共に透明ベルト24を挟む。
【0048】
軸部38Bが搬送経路Aの−Y側に配置され、本体部38AがメディアMの−Y側の面と接触するときの位置を、押当ロール38の第1位置と称する。また、押当ロール38が第1位置に配置された状態を基準状態と称する。ここで、ニップ部NをZ方向から見た場合に、ニップ部N内でメディアM上のトナー像Gにレーザ光Bm(
図2参照)が照射される位置を照射位置Bと称する。また、メディアMが透明ベルト24から離れる位置を離脱位置Cと称する。そして、透明ベルト24の外周面における照射位置Bから離脱位置Cまでの長さを経路長Lと称する。なお、経路長Lは、メディアMの搬送方向における照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲に相当する。そして、経路長Lが基準状態の経路長Lよりも延びることは、照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲が増すことを意味する。
【0049】
本実施形態における照射位置Bは、ニップ部NをZ方向から見た場合に、ニップ部NのX方向のほぼ中央となる位置に設定されている。基準状態では、押当ロール38が搬送経路Aよりも−Y側に位置しているので、離脱位置Cは、ニップ部NにおけるメディアMが排出される位置となる。基準状態における経路長Lを経路長L1と称する。
【0050】
一方、
図3(B)に示すように、軸部38Bが搬送経路AのY側に配置され本体部38Aの外周面と透明ベルト24とでメディアMを挟む位置を、押当ロール38の第2位置と称する。また、押当ロール38が第2位置に配置された状態を移動状態と称する。移動状態では、押当ロール38が搬送経路AよりもY側に位置している。このため、移動状態における離脱位置Cは、透明ベルト24の移動方向におけるニップ部Nよりも下流側の位置で、かつ透明ベルト24と押当ロール38とで挟まれたメディアMが透明ベルト24の外周面から離れる位置となる。移動状態における経路長Lを経路長L2と称する。経路長L2は、経路長L1(
図3(A)参照)よりも長い。なお、図示を省略するが、移動状態でかつメディアMを搬送しているときの離脱位置Cでは、透明ベルト24が透明ロール32によって支持されるようになっている。
【0051】
(案内部)
案内部42は、一例として、側板52と、一対のレール54とを有する。側板52は、透明ベルト24、透明ロール32、加圧ロール34及び押当ロール38に対するZ方向の両外側において、筐体22(
図2参照)の底部からY側へX−Y面に沿って直立されている。側板52には、透明ロール32及び加圧ロール34を回転可能に支持する図示しないベアリングが設けられている。
【0052】
また、側板52には、側板52をZ方向に貫通すると共にY方向に延びる案内孔57が形成されている。案内孔57には、押当ロール38の軸部38Bが挿入されている。これにより、軸部38Bと案内孔57の孔壁とが接触することで、軸部38BがY方向に案内されるようになっている。一対のレール54は、側板52のZ方向の両外側の側面における案内孔57に対するX側と−X側とに設けられている。また、一対のレール54は、Y方向に沿って延びている。一対のレール54の間には、後述する被案内板56が配置されている。
【0053】
(支持部)
支持部44は、一例として、被案内板56と、支持板58と、ベアリング62とを有する。被案内板56は、矩形状に形成されており、Y方向を厚さ方向、X方向を長手方向として一対のレール54の間に配置されている。また、被案内板56のX方向の両端部は、一対のレール54の内側面と接触している。これにより、被案内板56が一対のレール54に沿ってY方向に案内されるようになっている。
【0054】
支持板58は、被案内板56のY側の上面にX−Y面に沿って直立している。また、支持板58は、側板52よりもZ方向の両外側に配置され、側板52とZ方向に対向配置されている。さらに、支持板58には、Z方向に貫通した貫通孔59が形成されている。貫通孔59には、Z方向を開口方向(軸方向)として、ベアリング62が嵌め込まれている。
【0055】
ベアリング62には、軸部38Bが自軸回りに回転可能に挿入されている。ここで、被案内板56、支持板58及びベアリング62が一体でY方向に移動される(案内される)ことにより、押当ロール38が回転可能に支持された状態でY方向に移動されるようになっている。言い換えると、支持部44は、押当ロール38を回転可能に支持した状態で、第1位置と第2位置とに移動させるようになっている。
【0056】
(駆動部)
駆動部46は、一例として、カム部材64と、モータ66とを有する。カム部材64は、Z方向を厚さ方向とする楕円板状のカム本体64Aと、カム本体64AからZ方向に突出された軸部64Bとを有する。軸部64Bは、側板52に設けられた図示しないベアリングによって、Z方向を軸方向として回転可能に支持されている。カム部材64の外周面64Cの一部は、被案内板56の−Y側の面と接触している。これにより、カム部材64の長軸方向がX方向に沿った配置状態では、押当ロール38が第1位置に配置され、カム部材64の長軸方向がY方向に沿った配置状態では、押当ロール38が第2位置に配置されるようになっている。軸部64Bには、図示しないギヤを介してモータ66が接続されている。
【0057】
モータ66は、制御部18により駆動制御される。具体的には、モータ66は、押当ロール38を第1位置から第2位置へ移動させるときに、カム部材64を長軸方向がY方向に沿うように回転させる。また、モータ66は、押当ロール38を第2位置から第1位置へ移動させるときに、カム部材64を長軸方向がX方向に沿うように回転させる。なお、カム部材64の回転位置は、図示しないセンサを用いて検知されている。そして、カム部材64の回転位置の検知情報は、制御部18に送られるようになっている。
【0058】
〔制御部〕
図1に示す制御部18は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶部、通信回線I/F(Interface)部及びバスを含んで構成されている。
【0059】
CPUは、コンピュータの一例であり、画像形成装置10の各部の全体的な動作及び定着装置20の動作を司る。ROMには、各種プログラムや各種パラメータが予め記憶されている。各種プログラムの中には、駆動部46(
図3(A)参照)の動作プログラムが含まれる。RAMは、CPUによる各種プログラムの実行時のワークエリアとして用いられる。記憶部は、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶部とされている。通信回線I/F部は、外部装置との通信データの送信及び受信を行う。バスは、制御部18を構成する各部を電気的に接続する。
【0060】
また、制御部18は、操作パネル16から、ユーザが希望するトナー像G(画像)の光沢度(画像光沢度)の情報、メディアMの種類の情報及びプロセススピードの情報を取得するようになっている。さらに、制御部18は、定着後のトナー像Gの光沢度を低くする場合又はメディアMの移動速度が遅くなる場合よりも、照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲が広くなるように、移動部36(押当ロール38)の移動を制御する。
【0061】
具体的には、制御部18には、既述の経路長L(
図3(A)参照)が基準状態の場合の長さよりも長くなるように、押当ロール38の位置を第2位置に変更させる制御を行うプログラムが設定されている。加えて、制御部18には、既述の経路長Lが移動状態の場合の長さよりも短くなるように、押当ロール38の位置を変更させる制御を行うプログラムが設定されている。
【0062】
制御部18は、一例として、トナー像Gを高光沢度とする情報、メディアMがフィルムである情報、及びメディアMの移動速度(プロセススピード)が高速の情報のうち、少なくとも1つの情報を取得した場合に、押当ロール38を第2位置に変更させる制御を行う。また、制御部18は、一例として、トナー像Gを低光沢度とする情報、メディアMが用紙である情報、及びプロセススピードが低速の情報全てを取得した場合に、押当ロール38を第1位置に変更させる制御を行う。なお、押当ロール38の位置が既に変更側の位置となっている場合には、変更の動作は行わない。
【0063】
<剥離温度と光沢度の関係>
図4(A)に示すように、横軸を時間(トナーTを加熱した後の経過時間)、縦軸を温度(トナーTの温度)としてグラフを描くと、時間の経過に伴ってトナーTの温度が低下することが分かる。また、
図4(B)に示すように、横軸を透明ベルト24(
図2参照)からメディアMを剥離したときのトナー像Gの剥離温度、縦軸をトナー像Gの光沢度としてグラフを描くと、剥離温度の低下に伴って光沢度が高くなることが分かる。つまり、
図2に示す定着装置20におけるメディアMへのトナー像Gの定着では、既述の経路長L(
図3(B)参照)を長くすることで冷却時間が長くなるほど、得られたトナー像G(画像)の光沢度が高くなる。
【0064】
<比較例>
光源26(
図2参照)の位置を変更することで照射位置Bを変更して、照射位置Bから離脱位置C(
図3(A)参照)までの経路長Lを変更する構成を定着装置20(
図2参照)に対する比較例の定着装置とする。なお、比較例の定着装置の図示は省略する。この比較例の定着装置では、光源26の位置を変更することにより、透明ベルト24へのレーザ光Bmの入射角が変わるために、光源26の位置を変更しない場合に比べて、トナー像Gに照射される光エネルギーが低下する可能性がある。このため、トナー像Gの溶融が不足して、定着後のトナー像G(画像)の光沢度が低くなる可能性がある。
【0065】
〔作用〕
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0066】
図1に示す画像形成装置10では、
図5に示す経路長変更処理プログラムが実行される。なお、画像形成装置10を構成する各部材、部位の説明については、
図1、
図2、
図3(A)、(B)を参照する。
【0067】
図5に示すステップS10において、制御部18は、カム部材64の位置情報を図示しないセンサから取得することにより、押当ロール38の位置(第1位置又は第2位置)情報を取得する。ここでは、一例として、
図2に示すように、押当ロール38が第1位置にあることの位置情報が制御部18により取得される。そして、
図5に示すステップS12に移行する。
【0068】
ステップS12において、制御部18は、操作パネル16から光沢度情報を取得する。ここでは一例として、目標の光沢度情報が基準の光沢度よりも高光沢度であったとする。そして、ステップS14に移行する。
【0069】
ステップS14において、制御部18は、操作パネル16からメディア情報を取得する。ここでは一例として、メディア情報が用紙(普通紙)であったとする。そして、ステップS16に移行する。
【0070】
ステップS16において、制御部18は、操作パネル16からプロセススピード情報を取得する。ここでは一例として、プロセススピード情報が高速であったとする。そして、ステップS18に移行する。
【0071】
ステップS18において、制御部18は、光沢度情報、メディア情報及びプロセススピード情報に基づいて、押当ロール38の位置を決定する。ここでは、一例として、光沢度情報に基づいて押当ロール38を第2位置に配置することを決定する。そして、ステップS20に移行する。
【0072】
ステップS20において、制御部18は、ステップS10で取得された押当ロール38の位置情報と、ステップS18で決定された押当ロール38の位置情報とを比較する。そして、これらの位置情報が一致しなかった場合は、ステップS22に移行する。これらの位置情報が一致した場合は、ステップS24に移行する。
【0073】
ステップS22において、制御部18は、駆動部46を駆動して、押当ロール38をステップS18で決定された位置に移動させる(押当ロール38の位置を変更する)。ここでは一例として、押当ロール38の位置を第1位置から第2位置へ変更する。そして、ステップS24に移行する。
【0074】
ステップS24において、制御部18は、透明ベルト24を周回移動させてトナー像Gをニップ部Nに進入させると共に、光源26からトナー像Gに向けてレーザ光Bmを出射させる。これにより、ニップ部Nでは、トナー像Gが加熱(溶融)されると共に加圧されて、メディアMに定着される。そして、ステップS26に移行する。
【0075】
ここで、
図6(B)に示すように、押当ロール38が第2位置に配置されていることで、照射位置Bから離脱位置Cまでの経路長L2は、経路長L1(
図6(A)参照)に比べて長くなっている。このため、照射位置Bにおいてトナー像Gが加熱されてから離脱位置Cに到達するまでの間に、透明ベルト24と接触するトナー像Gの温度が、トナーTのガラス転移点程度まで低下する(トナー像Gが硬化する)。これにより、透明ベルト24からメディアM及びトナー像Gが離脱(剥離)されたときに、トナー像Gの表面が荒れ難くなるので、既述の比較例を用いた場合に比べて高光沢度の画像が得られる。
【0076】
図5に示すステップS26において、制御部18は、操作パネル16で設定されたメディアMの画像形成枚数と、ステップS24で実施された定着枚数との差を求める。そして、求められた枚数の差が0枚の場合にプログラムを終了する。一方、求められた枚数の差が1枚以上の場合は、ステップS10に移行して、枚数の差が0枚となるまで上記の各ステップを繰り返す。
【0077】
一方、ステップS18において、制御部18が押当ロール38を第1位置に配置することを決定したとする。この場合には、
図6(A)に示す経路長L1が経路長L2(
図6(B)参照)に比べて短いため、透明ベルト24からメディアM及びトナー像Gが離脱(剥離)されたときに、トナー像Gの表面が荒れ易くなり、低光沢度の画像が得られる。
【0078】
以上、説明したように、
図2に示す定着装置20では、光源26が筐体22に固定されている。このため、光源26の位置を変更する既述の比較例に比べて、照射位置Bが変動し難いので、トナー像Gを定着する際の光エネルギーの供給量が不足することが抑制される。さらに、定着装置20では、移動部36において、照射位置Bから離脱位置Cまでの経路長Lが変更可能とされている。このため、高光沢度の画像を得る場合には経路長Lを長くし、低光沢度の画像を得る場合には経路長Lを短くすることで、必要な光沢度が得られる。言い換えると、定着装置20では、比較例に比べて定着後の光沢度が高まる。
【0079】
また、定着装置20では、加圧ロール34と押当ロール38とが別々に設けられているので、押当ロール38と加圧ロール34とが共通の構成に比べて、照射位置Bから離脱位置Cまでの経路長Lを長く設定することが可能となる。言い換えると、メディアMが透明ベルト24に接触する範囲が広くなる。これにより、トナー像Gの冷却時間が長くなる。
【0080】
さらに、定着装置20では、透明ベルト24の内側に透明ロール32が接触している。このため、トナー像Gの加熱においてトナー像Gから透明ベルト24に伝達された熱が、透明ロール32に伝達される。これにより、透明ロール32が無い構成に比べて、透明ベルト24から熱が奪われ易くなるので、トナー像Gを冷却し易くなる。
【0081】
図1に示す画像形成装置10では、既述の比較例の定着装置を有する構成に比べて、高光沢度の画像が得られる。言い換えると、定着後の画像不良(光沢度低下)が抑制される。
【0082】
図7には、各種のメディアM(
図1参照)の光沢度(メディア光沢度)とメディアMに定着されたトナー像Gの光沢度(画像光沢度)との関係が示されている。いずれも定着条件は、プロセススピード660mm/s、レーザ光Bmの照射エネルギー1.7J/cm
2、メディアMの搬送方向におけるニップ部Nの幅4mmとした。また、画像は、黒単色(K100%)の画像、多次色(C100%、C200%、C240%、C340%、ここでC100%は単位面積当たりのトナー量で3.7g/m
2に相当する)の画像を用いた。なお、
図7では、押当ロール38(
図2参照)が第2位置にあるときの結果を符号A、第1位置にあるときの結果を符号Bとして区別している。また、押当ロール38が第1位置にあり、メディアMにJ紙を用いた場合の結果が符号C1、メディアMにレザック紙を用いた場合の結果が符号C2で区別されている。
【0083】
さらに、符号A、Bそれぞれについて、メディアMに富士ゼロックス製OSC紙を用いた場合を符号1、PET(Polyethylene Terephthalate)厚さ12μmを用いた場合を符号2、PET厚さ50μmを用いた場合を符号3で区別している。加えて、メディアMにOPP(Oriented PolyPropylene)厚さ25μmを用いた場合を符号4で区別している。例えば、符号A1であれば、押当ロール38が第2位置にあり、メディアMが富士ゼロックス製OSC紙を用いた組合せを意味している。
【0084】
図7の結果から、符号B、Cに比べて符号Aの方がメディア光沢度が高くなることが分かる。つまり、経路長L(
図3(A)参照)を長くすると、光沢度(画像光沢度)が高くなることが分かる。なお、富士ゼロックス製OSC紙を用いた場合(符号A1)に比べると、PET厚さ12μm、PET厚さ50μm、OPP厚さ25μm(符号A2、A3、A4)を用いた場合の方が、メディア光沢度と画像光沢度との差が小さいことが分かる。
【0085】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0086】
図8には、第2実施形態の定着装置70が示されている。定着装置70は、画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置20(
図1参照)に換えて設けられている。また、定着装置70は、一例として、筐体72と、透明ベルト24と、光源74と、コリメートレンズ76と、レンズパッド78と、加圧ロール79と、移動部82とを有する。筐体72は、装置本体の一例である。レンズパッド78は、接触部材の一例である。加圧ロール79は、変更部材の一例である。移動部82は、移動手段の一例である。
【0087】
<筐体及び透明ベルト>
筐体72は、耐熱性の樹脂材料で構成されており、Z方向を長手方向とする直方体状に形成されている。筐体72には、筐体72内にメディアMを進入させるための進入口72Aと、メディアMを筐体72から排出させるための排出口72Bとが形成されている。一例として、進入口72Aと排出口72Bとは、X方向に並んでいる。透明ベルト24は、一例として、Z方向を軸方向とする4本の支持ロール73と、後述するレンズパッド78とに巻き掛けられている。
【0088】
<光源及びコリメートレンズ>
光源74及びコリメートレンズ76は、透明ベルト24の内側に配置され、図示しないブラケットにより筐体72に固定されている。また、光源74は、一例として、Z方向に並び−Y側に向けてレーザ光Bmを出射する図示しない複数のレーザアレイを有する。そして、光源74は、レーザ光Bmをコリメートレンズ76に入射させるようになっている。コリメートレンズ76によって平行光とされたレーザ光Bmは、後述するレンズパッド78及び透明ベルト24を通して、トナー像Gに照射されるようになっている。
【0089】
なお、本実施形態では、一例として、光源74の長手方向がZ方向、レーザ光Bmがトナー像Gに照射される方向がY方向、Z方向及びY方向と直交しメディアMが搬送される方向がX方向とされている。メディアMは、一例として、X側から−X側へ搬送される。
【0090】
<レンズパッド>
レンズパッド78は、透明ベルト24の内側でかつメディアMが搬送される搬送経路AのY側に、Z方向を長手方向として配置され、図示しないブラケットを用いて筐体72に固定されている。また、レンズパッド78は、Y側に入射面78Aが形成され、−Y側に出射面78Bが形成された透明な部材で構成されている。入射面78Aは、Z方向から見た場合にY側に凸となる曲面で構成されており、レーザ光Bmが入射される。出射面78Bは、Z方向から見た場合に−Y側に凸となる曲面で構成されている。また、出射面78Bは、透明ベルト24の内周面と接触しており、レーザ光Bmが出射される。
【0091】
さらに、レンズパッド78は、コリメートレンズ76を通して入射されたレーザ光Bmを透過すると共に後述するニップ部Nの照射位置Bに向けて集光する光学部材である。なお、レンズパッド78の「透明」とは、透明ベルト24の「透明」と同様の意味であるため、説明を省略する。
【0092】
<移動部>
図9に示す移動部82は、メディアM(搬送経路A)に対する透明ベルト24側とは反対側に配置されている。また、移動部82は、変更部材の一例としての加圧ロール79と、側板84と、加圧ロール79を支持すると共に側板84に対して円弧状に移動可能とされた支持部86と、支持部86を移動させる駆動部88とを有する。そして、移動部82は、基準状態において透明ベルト24に対して加圧ロール79を移動させることで、照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲を変更するようになっている。
【0093】
(加圧ロール)
加圧ロール79は、一例として、加圧ロール34(
図2参照)と同様の構成とされており、本体部34Aと軸部34Bとを有する。また、加圧ロール79は、照射位置Bにおいて透明ベルト24と共にメディアMを挟み、照射位置Bに対してメディアMの移動方向における上流側又は下流側に移動されることにより、照射位置Bに対する下流側でメディアMが透明ベルト24に接触する範囲を変更するようになっている。
【0094】
(側板)
側板84は、透明ベルト24、レンズパッド78及び加圧ロール79よりもZ方向の両外側において、筐体72(
図8参照)の底部からY側へX−Y面に沿って直立されている。側板84のレンズパッド78とZ方向に並ぶ部位には、Z方向から見た場合に円形とされ側板84をZ方向に貫通する図示しない取付孔が形成されている。この取付孔には、Z方向を軸方向とする図示しないベアリングが嵌め込まれている。
【0095】
また、側板84の加圧ロール79とZ方向に並ぶ部位には、側板84をZ方向に貫通する案内孔87が形成されている。案内孔87の大きさは、加圧ロール79の軸部34Bが挿入される大きさとされている。また、案内孔87は、Z方向から見た場合に円弧状の長孔として形成されている。そして、案内孔87は、孔壁に軸部34Bの外周面が接触することにより、軸部34Bが後述する円弧状の移動軌跡Kを描くように、軸部34Bを案内するようになっている。
【0096】
(支持部)
支持部86は、一例として、軸部材92と、支持板94と、ベアリング96とを有する。軸部材92は、Z方向を軸方向とする円柱状に形成されている。また、軸部材92の一端部は、側板84に取付けられた図示しないベアリングに挿入され、回転可能に支持されている。さらに、軸部材92には、図示しないギアが取付けられている。
【0097】
支持板94は、側板84よりもZ方向の両外側にZ方向を厚さ方向として対向配置されている。また、支持板94には、支持板94をZ方向に貫通したY側の貫通孔97及び−Y側の貫通孔98が形成されている。貫通孔97には、軸部材92の他端部が嵌め込まれて固定されている。貫通孔98には、Z方向を開口方向(軸方向)としてベアリング96が嵌め込まれている。
【0098】
ベアリング96には、軸部34Bが自軸回りに回転可能に挿入されている。ここで、支持板94及びベアリング96が、軸部材92の回転中心Qを中心として円弧状に移動することで、加圧ロール79が円弧状に移動するようになっている。なお、支持板94及びベアリング96が円弧状に移動した場合に、軸部34Bが描く円弧状の軌跡を移動軌跡Kと称する。移動軌跡Kは、軸部34Bの回転中心と軸部材92の回転中心Qとを結ぶ線分を半径として、回転中心Qを中心として描かれる仮想円の一部である。
【0099】
(駆動部)
駆動部88は、一例として、モータ89を有する。モータ89は、制御部18により駆動制御されており、制御部18からの指示によって、軸部材92の図示しないギアを回転させるように構成されている。つまり、モータ89が軸部材92を回転させることにより、加圧ロール79が移動軌跡Kに沿って移動するようになっている。
【0100】
<加圧ロールの配置>
図10に示すように、ニップ部NをZ方向から見た場合に、照射位置Bを基準として加圧ロール79のX側の幅が−X側の幅よりも広い状態のときの加圧ロール79の位置を、第1位置と称する。また、照射位置Bを基準として加圧ロールのX側の幅と−X側の幅とがほぼ等しい状態のときの加圧ロール79の位置を、第2位置と称する。さらに、照射位置Bを基準として加圧ロールの−X側の幅がX側の幅よりも広い状態のときの加圧ロール79の位置を、第3位置と称する。
【0101】
加圧ロール79が、第1位置に配置されたときのメディアMの離脱位置をC1、第2位置に配置されたときのメディアMの離脱位置をC2、第3位置に配置されたときのメディアMの離脱位置をC3と称する。ここで、照射位置Bから離脱位置C1までの経路長をL3、照射位置Bから離脱位置C2までの経路長をL4、照射位置Bから離脱位置C3までの経路長をL5とすると、L3<L4<L5となる。なお、
図10では、経路長L3、L4、L5を簡略化して、X方向の長さで示している。
【0102】
離脱位置C1、C2、C3では、いずれも透明ベルト24がレンズパッド78に巻き掛けられた状態となっている。言い換えると、メディアMを搬送しているときの離脱位置C1、C2、C3では、透明ベルト24がレンズパッド78によって内側から支持されるようになっている。このように、定着装置70では、加圧ロール79が照射位置Bにおいて透明ベルト24と共にメディアMを挟む。そして、加圧ロール79が照射位置Bに対してメディアMの移動方向における上流側又は下流側に移動されることにより、経路長がL3、L4、L5に変更される。
【0103】
<制御部>
第2実施形態における制御部18(
図9参照)では、一例として、加圧ロール79の第2位置が標準位置として設定されている。また、制御部18では、メディアMの種類及びメディアMの移動速度が変更されても、加圧ロール79を標準位置のままとするように設定されている。さらに、制御部18では、トナー像Gを高光沢度とする情報を取得した場合に、加圧ロール79の位置を第2位置から第3位置に変更させる制御を行う設定とされている。加えて、制御部18では、トナー像Gを低光沢度とする情報を取得した場合に、加圧ロール79の位置を第2位置から第1位置に変更させる制御を行う設定とされている。
【0104】
[作用]
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0105】
図8に示す定着装置70では、光源74が筐体72に固定されている。このため、既述の比較例に比べて、照射位置Bが変動し難いので、トナー像Gを定着する際の光エネルギーの供給量が不足することが抑制される。さらに、定着装置70では、移動部82において、経路長がL3、L4、L5(
図10参照)というように変更可能とされている。このため、高光沢度の画像を得る場合には経路長を長くし、低光沢度の画像を得る場合には経路長を短くすることで、必要な光沢度が得られる。言い換えると、定着装置70では、比較例に比べて定着後の光沢度が高まる。
【0106】
さらに、定着装置70では、加圧ロール79を照射位置Bに対してメディアMの移動方向における下流側に移動させることにより、トナー像Gを冷却するための経路長が延ばされる。ここで、加圧ロール79は、円弧状の移動軌跡Kに沿って移動する。このため、メディアMの移動方向におけるニップ部Nの幅は、加圧ロール79が第1位置、第2位置、第3位置のいずれに配置されていても、ほとんど差がなくなる。つまり、経路長が延ばされた場合でも、メディアMが加圧される区間の長さはほとんど変わらない。これにより、加圧ロール79とは別体の回転体の位置を変更して経路長を変更する構成に比べて、メディアMのカールが抑制される。なお、カールとは、メディアMの曲がり癖を意味している。メディアMが連帳の場合は、メディアMを裁断した後でメディアMが曲がるものを、カール状態にあるものとする。
【0107】
定着装置70を有する画像形成装置10(
図1参照)では、既述の比較例の定着装置を有する構成に比べて、高光沢度の画像が得られる。言い換えると、定着後の画像不良(光沢度低下)が抑制される。
【0108】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1、第2実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1、第2実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0109】
図11には、第3実施形態の定着装置100が示されている。定着装置100は、画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置20(
図1参照)に換えて設けられている。また、定着装置100は、一例として、筐体102と、ガラスロール104と、光源26と、集光レンズ28と、加圧パッド106と、加圧ベルト108と、支持ロール112と、付勢ロール114と、移動部116とを有する。筐体102は、装置本体の一例である。ガラスロール104は、透過部材の一例であり、透明な円柱状の部材の一例である。加圧パッド106は、加圧部材の一例である。加圧ベルト108は、ベルトの一例である。移動部116は、移動手段の一例である。なお、定着装置100では、一例として、メディアMが枚葉の用紙とされている。
【0110】
<筐体>
筐体102は、耐熱性の樹脂材料で構成されており、Z方向を長手方向とする直方体状に形成されている。筐体102には、筐体102内にメディアMを進入させるための進入口102Aと、メディアMを筐体102から排出させるための排出口102Bとが形成されている。一例として、進入口102Aと排出口102Bとは、X方向に並んでいる。また、筐体102内には、光源26及び集光レンズ28が固定されている。なお、本実施形態では、一例として、光源26の長手方向がZ方向、レーザ光Bmがトナー像Gに照射される方向がY方向、Z方向及びY方向と直交しメディアMが搬送される方向がX方向とされている。メディアMは、一例として、X側から−X側へ搬送される。
【0111】
<ガラスロール>
ガラスロール104は、メディアMが搬送される搬送経路AのY側でかつ集光レンズ28の−Y側に、Z方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、ガラスロール104は、図示しないモータにより回転駆動される。さらに、ガラスロール104は、光源26から出射され集光レンズ28により集光されたレーザ光Bmを透過すると共に、後述するニップ部Nに向けて集光する光学部材とされている。ガラスロール104の外周面には、一例として、弾性層及び離型層を含みレーザ光Bmを透過する被覆層105が形成されている。なお、以後の説明では、被覆層105もガラスロール104に含めて説明する。
【0112】
ガラスロール104の外周面におけるレーザ光Bmが入射する部位を入射部104Aと称する。また、ガラスロール104の外周面における入射部104Aとは180度ずれた部位をニップ部Nと称する。ニップ部Nは、ガラスロール104の外周面と後述する加圧ベルト108とでメディアMを挟んで加圧する部位である。
【0113】
<加圧パッド>
加圧パッド106は、搬送経路Aに対する−Y側でガラスロール104とY方向に並んで配置されている。また、加圧パッド106は、Z方向を長手方向とする部材であり、図示しないバネを用いてガラスロール104側に向けて付勢されている。なお、メディアMの移動方向における加圧パッド106に対する−X側には、押当ロール38がZ方向を軸方向として回転可能に配置されている。
【0114】
<加圧ベルト>
加圧ベルト108は、一例として、ポリイミド性で無端状に形成されている。また、加圧ベルト108は、加圧パッド106、押当ロール38、後述する支持ロール112及び付勢ロール114に巻き掛けられている。そして、加圧ベルト108は、加圧パッド106によってガラスロール104に向けて付勢(加圧)されることにより、ガラスロール104と共にメディアMを加圧するニップ部Nを形成している。なお、加圧ベルト108は、ガラスロール104の回転に従動して周回移動するようになっている。
【0115】
<支持ロール及び付勢ロール>
支持ロール112は、加圧パッド106に対する−Y側にZ方向を軸方向として回転可能に設けられている。付勢ロール114は、押当ロール38に対する−Y側でかつ支持ロール112に対する−X側にZ方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、付勢ロール114は、図示しないバネにより加圧ベルト108を外側に向けて付勢することで、加圧ベルト108に張力を付与している。なお、付勢ロール114は、一例として、押当ロール38が移動するのに伴って、Y方向に位置が変更されるようになっている。
【0116】
<移動部>
移動部116は、メディアM(搬送経路A)に対するガラスロール104側とは反対側に配置されている。また、移動部116は、一例として、押当ロール38と、側板122と、ストッパ124とを有する構成とされている。そして、移動部116は、基準状態において、押当ロール38がガラスロール104に対して移動されることで、照射位置Bに対する下流側でメディアMがガラスロール104に接触する範囲を増すようになっている。
【0117】
(側板)
側板122は、ガラスロール104、加圧パッド106及び加圧ベルト108よりもZ方向の両外側において、筐体102の底部からY側へX−Y面に沿って直立されている。なお、
図11では、側板122の一部を示している。側板122の押当ロール38とZ方向に並ぶ部位には、側板122をZ方向に貫通する案内孔126が形成されている。
【0118】
案内孔126の大きさは、押当ロール38の軸部38Bが挿入される大きさとされている。また、案内孔126は、Z方向から見た場合に、Y側端部が−Y側端部よりも−X側に位置するように斜め方向に延びる長孔として形成されている。そして、案内孔126は、孔壁に軸部38Bの外周面が接触することにより、軸部38Bを案内するようになっている。
【0119】
また、側板122には、押当ロール38を後述する第2位置、第3位置に保持するための図示しないガイドレールが設けられている。ガイドレールは、案内孔126に対するX側及び−X側に設けられており、案内孔126とZ方向に並ぶ場所には設けられていない。また、ガイドレールは、X方向に沿って延びている。
【0120】
ストッパ124は、一例として、板材で構成されている。また、ストッパ124は、図示しないガイドレールによって案内されることにより、側板122に取付けられ、押当ロール38の軸部38Bを−Y側から支持するようになっている。つまり、本実施形態では、押当ロール38の位置が手動で設定されるようになっている。
【0121】
<押当ロールの配置>
図12(A)に示すように、押当ロール38が加圧パッド106よりも−Y側に配置されるときの位置を第1位置と称する。また、
図12(B)に示すように、押当ロール38がガラスロール104のY方向の下部とX方向に並ぶ位置を第2位置と称する。さらに、
図12(C)に示すように、押当ロール38がガラスロール104のY方向の中央部とX方向に並ぶ位置を第3位置と称する。ここで、レーザ光Bmの照射位置からメディアMの離脱位置までの経路長は、押当ロール38の位置が第1位置、第2位置、第3位置と変更されるのに従って長くなっている。
【0122】
[作用]
次に、第3実施形態の作用について説明する。
【0123】
図11に示す定着装置100では、光源26が筐体102に固定されている。このため、既述の比較例に比べて、照射位置が変動し難いので、トナー像Gを定着する際の光エネルギーの供給量が不足することが抑制される。さらに、定着装置100では、移動部116において、押当ロール38の位置を第1位置、第2位置、第3位置と手動で変えることで、照射位置から離脱位置までの経路長が変更可能とされている。このため、高光沢度の画像を得る場合には経路長を長くし、低光沢度の画像を得る場合には経路長を短くすることで、必要な光沢度が得られる。言い換えると、定着装置100では、比較例に比べて定着後の光沢度が高まる。
【0124】
また、定着装置100では、加圧パッド106と押当ロール38とが別々に設けられているので、押当ロール38と加圧パッド106とが共通の構成に比べて、照射位置から離脱位置までの経路長を長く設定することが可能となる。言い換えると、メディアMがガラスロール104に接触する範囲が広くなる。これにより、トナー像Gの冷却時間が長くなる。
【0125】
さらに、定着装置100では、ガラスロール104がメディアMと接触するので、レーザ光Bmを透過する部材が透明ベルトの構成に比べて、トナー像Gの熱がガラスロール104によって奪われ易くなる。これにより、トナー像Gを冷却し易くなる。
【0126】
加えて、定着装置100では、照射位置から離脱位置までメディアMが加圧ベルト108により支持される。これにより、加圧パッド106と押当ロール38との間から枚葉のメディアMが脱落することが抑制される。
【0127】
定着装置100を有する画像形成装置10(
図1参照)では、既述の比較例の定着装置を有する構成に比べて、高光沢度の画像が得られる。言い換えると、定着後の画像不良(光沢度低下)が抑制される。
【0128】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0129】
<第1変形例>
図13(A)、(B)、(C)に示すように、第3実施形態の定着装置100(
図12参照)において、支持ロール112及び付勢ロール114(
図12参照)を除き、加圧パッド106(
図12参照)を加圧ロール34に置き換えた定着装置130を用いてもよい。
【0130】
<第2変形例>
図14に示すように、第1実施形態の定着装置20(
図2参照)において、加圧ロール34(
図2参照)を除き、加圧パッド106、加圧ベルト108、支持ロール112及び付勢ロール114を設けた定着装置140を用いてもよい。
【0131】
<第3変形例>
図15に示すように、第2変形例の定着装置140(
図14参照)において、加圧パッド106、押当ロール38、支持ロール112及び付勢ロール114(
図14参照)を除き、加圧パッド132を設けた定着装置150を用いてもよい。加圧パッド132は、一例として、Z方向に長い部材であり、加圧ベルト108の内周面に接触する接触部132Aと、接触部132Aを支持する板状部132Bとを有する。板状部132Bは、図示しないバネによりガラスロール104側に向けて付勢されている。また、板状部132BのZ方向の両端部には、図示しない円柱状の軸部が形成されている。この軸部は、図示しない側板の案内溝によって円弧状に移動可能とされている。このように、加圧ベルト108と加圧パッド132とを用いた構成において、ニップ部Nの幅をほとんど変えずに、照射位置から離脱位置までの経路長を手動で変えてもよい。
【0132】
<他の変形例>
透明ベルト24、加圧ベルト108の内周面にオイルを塗布してもよい。光源26は、透明ベルト24の外側に設けられていてもよい。
【0133】
透明ロール32、ガラスロール104は、ニップ部Nに向けてレーザ光Bmを集光(収束)させられる構成であれば、中実のものに限らず、中空のものであってもよい。また、透明ロール32は、ガラス製に限らず、例えば、アクリル製のように樹脂製であってもよい。さらに、ガラスロール104を樹脂製のロールに置き換えてもよい。
【0134】
加圧ロール34は、ステンレス鋼製だけでなく、アルミニウム製や、他の金属製であってもよい。また、それらの表面に弾性層や離型層を設けたものでもよい。さらに、加圧ロール34は、中実のものに限らず、中空のものであってもよい。
【0135】
押当ロール38は、ステンレス鋼製だけでなく、アルミニウム製や、他の金属製であってもよい。また、それらの表面に弾性層や離型層を設けたものでもよい。さらに、押当ロール38は、中実のものに限らず、中空のものであってもよい。加えて、押当ロール38の本数は、1本に限らず複数本であってもよい。
【0136】
定着装置20において、押当ロール38を手動で移動させてもよい。定着装置70において、加圧ロール34を手動で移動させてもよい。また、定着装置20において、透明ベルト24の内側にレーザ光Bmの光路を避けて複数のロールを設けて、透明ロール32を除いた構成としてもよい。
【0137】
定着装置100において、例えば、ソレノイドを用いて、押当ロール38を自動で移動させてもよい。定着装置130、140、150において、移動部36又は移動部82を設けて、押当ロール38又は加圧パッド132を自動で移動させてもよい。
【0138】
光源26からレーザ光Bmが入射されるガラスロール104に対して、メディアMの移動方向の上流側及び下流側に搬送ロール対が配置された構成において、押当ロール38を移動させて経路長を変更してもよい。
【0139】
各種情報の設定は、操作パネル16による設定に限らず、画像形成装置10の外部のコンピュータなどから制御部18に無線又は有線で送られた情報を制御部18に記憶することで設定してもよい。