(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下段系の配合原料造粒物は、下段系の配合原料を高速撹拌ミキサーおよび/または皿型造粒機で造粒することで作製されることを特徴とする、請求項1記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように、二段装入二段点火法では、上段原料充填層の焼成に使用された空気、つまり上段の排ガスが下段原料充填層の焼成に使用される。したがって、下段原料充填層の焼成は、低酸素分圧下での焼成となる。
【0005】
ここで、焼結プロセスは、原料充填層に供給されるガス中の酸素で固体炭素を燃焼させるプロセスのため、ガス中の酸素濃度が大きく焼結反応に影響を及ぼす。そして、酸素分圧が低いガスを用いた焼成、すなわち低酸素分圧下での焼成では、特に鉄の酸化度の低下(Fe
3+⇒Fe
2+)が促進される。したがって、焼成中の下段原料充填層では、Fe
3+/Fe
2+(Fe
3+とFe
2+の濃度比)が低下する。ここで、Fe
3+/Fe
2+が低下すると、FeO−CaO−SiO
2系(オリビン系)の難還元性鉱物が生成されやすくなる。したがって、下段原料充填層の焼成中に多くの難還元性鉱物が生成される。この結果、下段焼結鉱(下段原料充填層の焼成により生成される焼結鉱)の被還元性が低下するという問題があった。
【0006】
特許文献2に開示された技術では、下段原料充填層を焼成する際の酸素濃度低下を抑制するために、上段原料充填層への炭材の配合比を低くする。これにより、上段原料充填層での酸素消費量が低下するので、下段原料充填層に供給されるガス中の酸素濃度を高めることができる。しかし、この技術では、上段原料充填層に供給される熱量が不足するため、上段焼結鉱(上段原料充填層の焼成により生成される焼結鉱)の冷間強度が低下する可能性があった。このため、下段焼結鉱の被還元性が低下するという問題を根本的に解消することができなかった。
【0007】
一方、特許文献3には、二段装入一段点火法を用いた焼結鉱の製造方法が開示されている。この方法では、原料充填層を二段で焼結機内に装入するが、点火は上段原料充填層に対してのみ行う。特許文献3に開示された技術では、下段原料充填層内のCaO濃度を6質量%以下とする。そして、原料充填層全体のCaO濃度を均一化するという観点から、上段原料充填層内のCaO濃度を上昇させる。これにより、上段焼結鉱の品質(被還元性、還元粉化性、強度)の向上を図っている。
【0008】
特許文献3は、下段焼結鉱の品質に言及していない。そこで、本発明者は、この技術によって作製される下段焼結鉱の被還元性について検討したところ、下段焼結鉱の被還元性は十分に改善されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、下段焼結鉱の被還元性をより向上させることが可能な、新規かつ改良された焼結鉱の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、焼結機内に下段系の配合原料造粒物を装入することで、下段原料充填層を形成する工程と、下段原料充填層上に上段系の配合原料造粒物を装入することで、上段原料充填層を形成する工程と、下段原料充填層の表面および上段原料充填層の表面をそれぞれ点火するとともに、下段原料充填層および上段原料充填層中の空気を下方に吸引する工程と、を含み、下段原料充填層に含まれるCaOの質量%は、下段原料充填層の総質量に対して4質量%以下であることを特徴とする、焼結鉱の製造方法が提供される。
【0011】
ここで、下段系の配合原料造粒物は、下段系の配合原料を高速撹拌ミキサーおよび/または皿型造粒機で造粒することで作製されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、下段原料充填層に含まれるCaOの質量%は、下段原料充填層の総質量に対して4質量%以下となっている。このため、下段原料充填層の焼成中にオリビン系の難還元性鉱物が生成しにくくなる。さらに、焼結鉱の気孔を増大させる(すなわち、表面積を低下させる)原因の一つであるカルシウムフェライトも生成しにくくなる。このため、被還元性がより向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.第1の実施形態>
(1−1.焼結鉱製造システムの全体構成)
まず、
図1に基づいて、第1の実施形態に係る焼結鉱製造システム1aの概略構成について説明する。
【0016】
焼結鉱製造システム1aは、所謂二段装入二段点火法により焼結鉱を作製するシステムである。焼結鉱製造システム1aは、ドラムミキサー10、20と、焼結機30とを備える。ドラムミキサー10、20は1段であっても、多段であっても良い。
【0017】
ドラムミキサー10は、下段系の配合原料を造粒することで、下段系の配合原料造粒物(以下、「下段系造粒物」とも称する)Aを作製する。ここで、配合原料は、焼結用原料を所定の配合比で配合したものである。焼結用原料は、主原料である鉄含有原料、焼結反応及び成分調整のために必要な副原料、熱源である炭材(固体燃料)、及び返鉱等で構成される。ここで、鉄含有原料は、例えば粒度約10mm以下の鉄鉱石(粉鉱石)および製鉄ダスト(製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等)等である。副原料は、生石灰(CaO)、石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石および橄欖岩等である。炭材は、例えばコークス粉および無煙炭等である。そして、下段系の配合原料は、生石灰を下段系の配合原料の総質量(ただし、造粒用の水分および炭材の質量分を除く)に対して4質量%以下の濃度で含む。下段系造粒物Aは、焼結機30の下段系ホッパ31aに供給される。
【0018】
ドラムミキサー20は、上段系の配合原料を造粒することで、上段系の配合原料造粒物(以下、「上段系造粒物」とも称する)Bを作製する。ここで、配合原料の定義は上述した通りである。上段系の配合原料の組成(すなわち、焼結用原料の配合比)は特に制限されない。例えば、焼結鉱全体の塩基度(CaO/SiO
2質量比)を一定水準以上にする必要がある場合には、上段系の配合原料に含まれるCaO濃度は、下段系の配合原料に含まれるCaO濃度よりも高くなる。また、焼結鉱全体の塩基度が不足する場合、高炉内で塩基度を調整すれば良い(例えば、塩基度の高い焼結鉱を本実施形態の焼結鉱とともに使用する等)。上段系造粒物Bは、焼結機30の上段系ホッパ32aに供給される。このように、第1の実施形態では、造粒を二系統に分けて行う。つまり、二系統造粒を行う。
【0019】
焼結機30は、下段系焼結ユニット31および上段系焼結ユニット32と、ストランド33と、図示しないブロワとを備える。下段系焼結ユニット31は、下段系ホッパ31aと、下段系ドラムフィーダ31bと、下段系シュート31cと、下段系点火炉31dとを備える。下段系ホッパ31aは、下段系造粒物Aを下段系ドラムフィーダ31bに供給する。下段系ドラムフィーダ31bは、下段系ホッパ31aから供給された下段系造粒物Aを切り出して下段系シュート31cに供給する。下段系造粒物Aは、下段系シュート31c上で滑り落ち、焼結機30内のストランド(パレット)33上に積層される。すなわち、下段系造粒物Aが焼結機30内に装入される。これにより、下段原料充填層A1がストランド33上に形成される。ストランド33は、下段原料充填層A1を矢印C方向に搬送する。図示しないブロワは、ストランド33の下方に配置されており、下段原料充填層A1および後述する上段原料充填層B1内の空気を下方に吸引する。
【0020】
下段系点火炉31dは、下段原料充填層A1の表面に向けて火炎31eを噴出することで、下段原料充填層A1の表面を点火する。これにより、下段原料充填層A1の表面が溶融帯(焼結反応が行われる部分)A2となる。その一方で、上述したように、ブロワは下段原料充填層A1内の空気を下方に吸引する。これにより、溶融帯A2は、下段原料充填層A1の搬送に伴って下方に移動する。つまり、下段原料充填層A1の焼成が進行する。また、焼結反応に必要な空気は、下段原料充填層A1内に順次導入される。ここで、上段原料充填層B1の焼成が開始された後には、上段原料充填層B1の焼成に使用された空気が下段原料充填層A1内に導入される。つまり、酸素濃度が低い空気が下段原料充填層A1内に導入される。一方、上段原料充填層B1の焼成が開始される前は、酸素濃度の高い空気が下段原料充填層A1内に導入される。以上の工程により、下段原料充填層A1が焼成される。焼成後の下段原料充填層A1は下段焼結ケーキA3となる。
【0021】
上段系焼結ユニット32は、下段系焼結ユニット31に対して矢印C方向(すなわち、原料充填層の搬送方向)奥側に配置される。上段系焼結ユニット32は、上段系ホッパ32aと、上段系ドラムフィーダ32bと、上段系シュート32cと、上段系点火炉32dとを備える。上段系ホッパ32aは、上段系造粒物を上段系ドラムフィーダ32bに供給する。上段系ドラムフィーダ32bは、上段系ホッパ32aから供給された上段系造粒物Bを切り出して上段系シュート32cに供給する。上段系造粒物Bは、上段系シュート32c上で滑り落ち、下段原料充填層A1上に積層される。すなわち、上段系造粒物Bが焼結機30内に装入される。これにより、下段原料充填層A1上に上段原料充填層B1が形成される。上段原料充填層B1は、下段原料充填層A1とともに矢印C方向に搬送される。また、上段原料充填層B1および下段原料充填層A1内の空気は、図示しないブロワによって下方に吸引される。
【0022】
上段系点火炉32dは、上段原料充填層B1の表面に向けて火炎32eを噴出することで、上段原料充填層B1の表面を点火する。これにより、上段原料充填層B1の表面が溶融帯(焼結反応が行われる部分)B2となる。その一方で、上述したように、ブロワは上段原料充填層B1内の空気を下方に吸引する。これにより、溶融帯B2は、上段原料充填層B1の搬送に伴って下方に移動する。つまり、上段原料充填層B1の焼成が進行する。また、焼結反応に必要な空気は、下段原料充填層A1内に順次導入される。これにより、上段原料充填層B1が焼成される。焼成後の上段原料充填層B1は上段焼結ケーキB3となる。また、上段原料充填層B1の焼成に使用された空気は、下段原料充填層A1の焼成に使用される。
【0023】
その後、下段焼結ケーキA3および上段焼結ケーキB3は、解砕、整粒される。これにより、焼結鉱が作製される。以下、下段焼結ケーキA3の解砕、整流により作製された焼結鉱を下段焼結鉱とも称する。また、上段焼結ケーキB3の解砕、整流により作製された焼結鉱を上段焼結鉱とも称する。また、これらを総称して、単に「焼結鉱」とも称する。
【0024】
このように、第1の実施形態では、いわゆる二段装入二段点火法により焼結鉱を作成する。したがって、上段原料充填層B1の焼成に使用されたガス(空気)が下段原料充填層A1の焼成に使用される。したがって、下段原料充填層A1の焼成は、低酸素分圧下での焼成となる。このため、従来の二段装入二段点火法では、オリビン系の難還元性鉱物が生成されやすいという問題があった。
【0025】
これに対し、第1の実施形態では、下段系の配合原料中のCaO濃度は、下段系の配合原料の総質量に対して4質量%以下となっている。つまり、下段原料充填層A1中のCaO濃度は、下段原料充填層A1の総質量に対して4質量%以下となっている。ここで、CaO成分は、オリビン系の難還元性鉱物の構成成分の1種である。したがって、下段原料充填層A1の焼成時にオリビン系の難還元性鉱物の生成が抑制され、その代わりに、比較的被還元性の良好な酸化鉄(ヘマタイト、マグネタイト)を主体とする鉱物が多く生成される。
【0026】
さらに、溶融帯中で液相、すなわちカルシウムフェライト(CaO−Fe
2O
3)の生成が抑制される。ここで、液相は、溶融帯中の気孔同士を結合させることで、気孔径を大きくさせる。焼結鉱の気孔径が大きいと、還元反応の界面の面積(つまり、表面積)が小さくなるので、被還元性が低下する。この点、第1の実施形態では、液相の生成が抑制されるので、気孔同士の結合が抑制され、ひいては、表面積の大きな(つまり、被還元性の高い)下段焼結鉱が作製される。
【0027】
このように、第1の実施形態では、下段原料充填層A1中のCaO濃度を低くすることで、直接的には、オリビン系の難還元性鉱物の生成を抑制することができる。また、間接的には、カルシウムフェライトの生成を抑制し、ひいては、表面積の大きな下段焼結鉱を作製する。これらの効果により、被還元性の高い下段焼結鉱が作製される。
【0028】
ここで、上記の効果は、下段原料充填層A1および上段原料充填層B1の焼成中に各原料充填層中のCaO濃度が維持される場合に、より大きくなる。この点、第1の実施形態では、二段点火法により各原料充填層を焼成するので、上段原料充填層B1の焼成中に生石灰が下段原料充填層A1に流入しにくいと言える。したがって、各原料充填層中のCaO濃度が維持されやすいので、上記の効果がより大きくなる。
【0029】
なお、上述したように、上段系の配合原料、すなわち上段原料充填層B1の組成は特に制限されない。このため、焼結鉱全体の塩基度を調整するために、上段原料充填層B1中のCaO濃度が高くなる場合も想定される。この場合、上段原料充填層B1の焼成時にカルシウムフェライトが多く生成される可能性がある。しかし、上段原料充填層B1の焼成時には、室温の(すなわち、低温の)空気が上段原料充填層B1に流入される。したがって、焼成時の温度が低くなる傾向がある(例えば1350℃以下)ので、上段原料充填層B1の焼成によって生成されるカルシウムフェライトの主成分は比較的被還元性の高い針状カルシウムフェライトとなる。そして、被還元性の低い柱状カルシウムフェライトの濃度は低くなる。このため、上段焼結鉱の被還元性の低下が抑制される。
【0030】
さらに、下段原料充填層A1と上段原料充填層B1との層厚比は特に制限されないが、例えば1:1程度であってもよい。第1の実施形態では、下段原料充填層A1および上段原料充填層B1をそれぞれ独立して点火するので、下段原料充填層A1の層厚を高めても下段焼結鉱の強度を確保することができる。
【0031】
(1−2.焼結鉱の製造方法)
次に、上述した焼結鉱製造システム1aを用いた焼結鉱の製造方法について説明する。まず、下段系の配合原料をドラムミキサー10に装入する。ついで、ドラムミキサー10により、下段系の配合原料を造粒することで、下段系造粒物Aを作製する。ついで、下段系造粒物Aを下段系ホッパ31a内に供給する。一方、上段系の配合原料をドラムミキサー20に装入する。ついで、ドラムミキサー20により、上段系の配合原料を造粒することで、上段系造粒物Bを作製する。ついで、上段系造粒物Bを上段系ホッパ32a内に供給する。
【0032】
ついで、下段系ドラムフィーダ31bにより下段系造粒物Aを焼結機30内に装入する。具体的には、下段系造粒物Aをストランド33上に積層する。これにより、下段原料充填層A1がストランド33上に形成される。ついで、下段原料充填層A1を矢印C方向に搬送し、下段系点火炉31dから火炎31eを下段原料充填層A1の表面に噴射する。これにより、下段原料充填層A1の表面を点火する。これにより、下段原料充填層A1の表面が溶融帯A2となる。その一方で、ブロワが下段原料充填層A1内の空気を下方に吸引する。これにより、溶融帯A2は、下段原料充填層A1の搬送に伴って下方に移動する。つまり、下段原料充填層A1の焼成が進行する。焼成後の下段原料充填層A1は下段焼結ケーキA3となる。
【0033】
一方、上段系ドラムフィーダ32bにより上段系造粒物Bを焼結機30内に装入する。具体的には、上段系造粒物Bを下段原料充填層A1上に積層する。これにより、上段原料充填層B1が下段原料充填層A1上に形成される。ついで、上段原料充填層B1を下段原料充填層A1とともに矢印C方向に搬送し、上段系点火炉32dから火炎32eを上段原料充填層B1の表面に噴射する。これにより、上段原料充填層B1の表面を点火する。これにより、上段原料充填層B1の表面が溶融帯B2となる。その一方で、上述したように、ブロワは下段原料充填層A1および上段原料充填層B1内の空気を下方に吸引する。これにより、溶融帯B2は、上段原料充填層B1の搬送に伴って下方に移動する。つまり、上段原料充填層B1の焼成が進行する。焼成後の上段原料充填層B1は上段焼結ケーキB3となる。上段原料充填層B1の焼成に使用された空気は下段原料充填層A1の焼成に使用される。以上の工程により、下段焼結ケーキA3および上段焼結ケーキB3が作製される。下段焼結ケーキA3および上段焼結ケーキB3は、解砕、整粒される。これにより、焼結鉱が作製される。
【0034】
以上により、本実施の形態によれば、下段原料充填層A1中のCaO濃度を4質量%以下とするので、下段原料充填層A1の焼成中にオリビン系の難還元性鉱物の生成およびカルシウムフェライトの生成を抑えることができ、ひいては、下段焼結鉱の被還元性を向上させることができる。さらに、二段装入二段点火法によって上段原料充填層B1の焼成と下段原料充填層A1の焼成が同時に進行するので、生産性の向上という効果も得ることができる。
【0035】
さらに、本実施の形態によれば、下段原料充填層A1の層厚を高めることができ、例えば下段原料充填層A1と上段原料充填層B1との層厚を1:1とすることができる。この点、特許文献3に記載の一段点火法では、下段原料充填層の層厚を高めることができない。例えば、特許文献3の実施例では、下段原料充填層の層厚比は下段原料充填層に含まれる鉄鉱石の質量%にほぼ対応する。したがって、実施例表1および表4より、鉄鉱石の質量%が最も高い発明例3においても下段原料充填層の層厚比は30%程度と計算される。特許文献3では、特に下段原料充填層の層厚について言及していないが、実施例より、下段原料充填層の層厚を高められないと解釈できる。このように、一段点火法では、下段原料充填層の層厚を高めることができない。
【0036】
その理由は、一段点火法では、下段焼結鉱の強度を確保するために、上段原料充填層からの高CaO融液を下段原料充填層に十分に浸透させる必要があるからである。すなわち、下段原料充填層の層厚が小さければ、上段原料充填層からの高CaO融液が下段原料充填層の下端まで到達しやすくなる。これに対し、下段原料充填層の層厚が高いと、上段原料充填層からの高CaO融液が下段原料充填層の下端まで到達できなくなり、ひいては、下段焼結鉱の強度が不足してしまう。また、下段原料充填層の強度を確保するために、下段原料充填層のCaO濃度を結果的に高めざるを得ず、ひいては、下段焼結鉱の被還元性が低下する。
【0037】
これに対し、本実施の形態では、下段原料充填層A1を上段原料充填層B1とは独立して点火するので、下段原料充填層A1には点火による高い熱量が供給される。そして、このような熱量増加によって下段焼結鉱の強度が確保される。したがって、下段原料充填層A1の層厚を高めても下段焼結鉱の強度は確保される。したがって、本実施の形態によれば下段原料充填層A1中のCaO濃度を低くしつつ、下段原料充填層A1の層厚(言い換えれば、上段原料充填層B1に対する下段原料充填層A1の質量比)を高くすることができる。
【0038】
<2.第2の実施形態>
(2−1.焼結鉱製造システムの全体構成)
まず、
図2に基づいて、第2の実施形態に係る焼結鉱製造システム1bの概略構成について説明する。
【0039】
焼結鉱製造システム1bは、焼結鉱製造システム1aのドラムミキサー10を皿型造粒機40に変更したものである。つまり、第2の実施形態では、下段系の配合原料を皿型造粒機40により造粒する。これにより、下段系造粒物の粒度を高めることができるので、下段原料充填層A1の通気性を高めることができる。このため、焼結鉱全体の生産性がさらに向上する。
【0040】
ここで、皿型造粒機の代わりに高速撹拌ミキサー(例えばアイリッヒミキサー)を使用しても良い。この場合にも、焼結鉱全体の生産性が向上する。さらに、皿型造粒機と高速撹拌ミキサー(例えばアイリッヒミキサー)とを併用して下段系の配合原料を造粒してもよい。この場合、まず高速撹拌ミキサーで下段系の配合原料を造粒する。その後、高速撹拌ミキサーによって生成された造粒物を皿型造粒機でさらに造粒する。これにより、下段系造粒物を作製する。これにより、下段系造粒物の粒度がさらに高まるので、焼結鉱全体の生産性がさらに向上する。
【0041】
(2−2.焼結鉱の製造方法)
焼結鉱製造システム1bを用いた焼結鉱の製造方法は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【実施例】
【0042】
<1.配合原料の準備>
上述した第1および第2の実施形態による効果を検証するために、以下に説明する実施例を行った。まず、表1に、本実施例で使用した配合原料の組成(配合条件)を示す。表1中の数値は質量%を示す。赤鉄鉱A〜石灰石の質量%は、赤鉄鉱A〜石灰石の総質量(上段下段を合わせた総質量)に対する質量%を示す。「小計」は、各段における赤鉄鉱A〜石灰石の質量%の合計であり、「総計」は、上段下段の赤鉄鉱A〜石灰石の質量%の合計である。粉コークスの質量%は外数であり、赤鉄鉱A〜石灰石の総質量(上段下段を合わせた総質量)に対する質量%を示す。「粉コークス総計」は上段下段の粉コークスの質量%の合計である。目標水分は外数であり、各段における赤鉄鉱A〜石灰石の総質量に対する質量%を示す。また、配合原料中のCaO濃度(焼結鉱換算)は、各段における赤鉄鉱A〜石灰石の総質量に対する質量%(焼結鉱換算値。つまり、配合原料から揮発分を除去した後の質量%)を示す。表1から明らかな通り、区分1では下段系の配合原料に含まれるCaOの濃度が4質量%を超えるが、区分2ではCaOの濃度が4質量%以下となっている。すなわち、区分2は上述した第1および第2の実施形態の条件を満たす。
【0043】
【表1】
【0044】
(1−1.実施例1)
実施例1では、区分2の配合原料を用いて二系統造粒を行い、二段装入二段点火法による焼成を行った。具体的には、下段系の配合原料をドラムミキサー10に装入し、4分間混合した。ここで、ドラムミキサー10は、直径600mm、回転速度25rpmのドラムミキサーを使用した。ついで、ドラムミキサー10に水分をさらに添加し、配合原料をさらに4分間混合した。これにより、下段系造粒物Aを作成した。水分量は、下段系の配合原料の総質量に対して7.8質量%とした。さらに、上段系の配合原料をドラムミキサー20に装入し、4分間混合した。ここで、ドラムミキサー20は、ドラムミキサー10と同様のものを使用し、駆動条件もドラムミキサー10と同様とした。ついで、ドラムミキサー20に水分をさらに添加し、配合原料をさらに混合した。これにより、上段系造粒物Bを作成した。水分量は、上段系の配合原料の総質量に対して7.0質量%とした。
【0045】
ついで、二段装入二段点火法を鍋試験により再現した。具体的には、直径300mm、層高300mmの試験鍋を2つ用意した。そして、これらの試験鍋に下段系造粒物Aおよび上段系造粒物Bをそれぞれ装入した。ついで、下段系造粒物Aを装入した試験鍋(下段系鍋)をまず試験装置にセットし、表面を1100℃の火炎で1分間点火し、ブロワにより吸引負圧1000mmAqで下段系鍋内の空気を吸引した。点火終了後、上段系造粒物Bを装入した試験鍋(上段系鍋)を直ちに下段系鍋の上に乗せ、1100℃の火炎で1分間点火し、ブロワにより吸引負圧1000mmAqで上段系鍋および下段系鍋内の空気を吸引した。そして、引き続き吸引負圧1000mmAqで上段系鍋および下段系鍋内の空気を吸引しつつ、吸引ガスの温度をモニタした。次いで、下段系鍋の点火開始時点から吸引ガス温度が最大となった時点までの時間を焼結時間(min)とした。以上の工程により、上段系および下段系の焼結ケーキを作成した。
【0046】
ついで、全ての焼結ケーキを2mの高さから5回落下させた後、粒度が5mm以上の焼結鉱を成品として篩分けし、秤量した。すなわち、目開きが5mmの篩を用いて焼結鉱を篩分けし、篩に残った焼結鉱を成品とした。そして、成品の質量および鍋試験の条件に基づいて、生産性(t/d/m
2)を算出した。また、被還元性の評価値として、JIS−RIをJIS M8713に準拠して測定した。結果を表2にまとめて示す。
【0047】
(1−2.実施例2)
実施例2では、アイリッヒミキサーを用いて下段系の配合原料の造粒を行った他は実施例1と同様の処理を行った。具体的には、アイリッヒミキサーに下段系の配合原料を装入した。ついで、アイリッヒミキサーで下段系の配合原料を30秒間混合し、水分を添加してさらに30秒間混合した。水分量は、下段系の配合原料の総質量に対して7.8質量%とした。以上の工程により、下段系造粒物Aを作製した。なお、アイリッヒミキサーは、直径800mmのパンに攪拌羽根が1本内蔵されたものを使用した。パンの回転速度は20rpm、攪拌羽根の回転速度は300rpmとした。結果を表2にまとめて示す。
【0048】
(1−3.実施例3)
実施例3では、アイリッヒミキサーおよび皿型造粒機を用いて下段系の配合原料の造粒を行った他は実施例1と同様の処理を行った。具体的には、アイリッヒミキサーに下段系の配合原料を装入した。ついで、アイリッヒミキサーで下段系の配合原料を30秒間混合し、水分を添加してさらに30秒間混合した。水分量は、下段系の配合原料の総質量に対して7.8質量%とした。これによって作製された造粒物をさらに皿型造粒機に装入し、5分間混合した。以上の工程により、下段系造粒物Aを作製した。なお、アイリッヒミキサーは、実施例2と同様のものを使用し、駆動条件も実施例2と同様とした。皿型造粒機は、直径800mm、深さ150mm、傾斜角45°、回転速度20rpmのものを使用した。結果を表2にまとめて示す。
【0049】
(1−4.比較例1)
比較例1では、区分OAの配合原料を用いて一括造粒を行い、一段装入一段点火法による焼成を行った。具体的には、配合原料をドラムミキサー10に装入し、4分間混合した。ここで、ドラムミキサー10は、実施例1と同様のものを使用し、駆動条件も実施例1と同様とした。ついで、ドラムミキサー10に水分をさらに添加し、配合原料をさらに4分間混合した。これにより、造粒物を作成した。水分量は、配合原料の総質量に対して7.4質量%とした。
【0050】
ついで、一段装入一段点火法を鍋試験により再現した。具体的には、直径300mm、層高600mmの試験鍋を用意した。そして、試験鍋に造粒物を装入した。ついで、試験鍋試験装置にセットし、表面を1100℃の火炎で1分間点火した。試験鍋の点火中は、ブロワにより吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引した。そして、引き続き吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引しつつ、吸引ガスの温度をモニタした。次いで、試験鍋の点火開始時点から吸引ガス温度が最大となった時点までの時間を焼結時間(min)とした。以上の工程により、焼結ケーキを作成した。その後、実施例1と同様に生産性および被還元性を評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0051】
(1−5.比較例2)
比較例2では、区分1の配合原料を用いて二系統造粒を行い、一段装入一段点火法による焼成を行った。具体的には、下段系の配合原料をアイリッヒミキサーに装入した。ついで、アイリッヒミキサーで下段系の配合原料を30秒間混合し、水分を添加してさらに30秒間混合した。水分量は、下段系の配合原料の総質量に対して7.8質量%とした。これによって作製された造粒物をさらに皿型造粒機に装入し、5分間混合した。以上の工程により、下段系造粒物Aを作製した。なお、アイリッヒミキサーは、実施例2と同様のものを使用し、駆動条件も実施例2と同様とした。皿型造粒機は、実施例3と同様のものを使用し、駆動条件も実施例3と同様とした。さらに、上段系の配合原料をドラムミキサー20に装入し、4分間混合した。ついで、ドラムミキサー20に水分をさらに添加し、配合原料をさらに4分間混合した。これにより、上段系造粒物Bを作成した。水分量は、上段系の配合原料の総質量に対して7.0質量%とした。ここで、ドラムミキサー20は、実施例1と同様のものを使用し、駆動条件も実施例1と同様とした。ついで、下段系造粒物Aおよび上段系造粒物Bをドラムミキサーで30秒間混合した。ついで、混合した造粒物を直径300mm、層高600mmの試験鍋に装入した。ついで、試験鍋試験装置にセットし、表面を1100℃の火炎で1分間点火した。試験鍋の点火中は、ブロワにより吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引した。そして、引き続き吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引しつつ、吸引ガスの温度をモニタした。次いで、試験鍋の点火開始時点から吸引ガス温度が最大となった時点までの時間を焼結時間(min)とした。以上の工程により、焼結ケーキを作成した。その後、実施例1と同様に生産性および被還元性を評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0052】
(1−6.比較例3)
比較例3では、区分2の配合原料を用いた他は、比較例2と同様の処理を行った。つまり、比較例3では、配合原料は第1および第2の実施形態の条件を満たすが、焼成方法が一段装入一段点火法となっている。結果を表2にまとめて示す。
【0053】
(1−7.比較例4)
比較例4では、区分1の配合原料を用いた他は、実施例3と同様の処理を行った。つまり、比較例4では、焼成方法が二段装入二段点火法となっているが、配合原料が第1および第2の実施形態の条件を満たさない。結果を表2にまとめて示す。
【0054】
(1−8.比較例5)
比較例5では、区分2の配合原料を用いて二系統造粒を行い、二段装入一段点火法による焼成を行った。具体的には、下段系の配合原料をアイリッヒミキサーに装入した。ついで、アイリッヒミキサーで下段系の配合原料を30秒間混合し、水分を添加してさらに30秒間混合した。水分量は、下段系の配合原料の総質量に対して7.8質量%とした。これによって作製された造粒物をさらに皿型造粒機に装入し、5分間混合した。以上の工程により、下段系造粒物Aを作製した。なお、アイリッヒミキサーは、実施例2と同様のものを使用し、駆動条件も実施例2と同様とした。皿型造粒機は、実施例3と同様のものを使用し、駆動条件も実施例3と同様とした。さらに、上段系の配合原料をドラムミキサー20に装入し、4分間混合した。ついで、ドラムミキサー20に水分をさらに添加し、配合原料をさらに4分間混合した。これにより、上段系造粒物Bを作成した。水分量は、上段系の配合原料の総質量に対して7.0質量%とした。ここで、ドラムミキサー20は、実施例1と同様のものを使用し、駆動条件も実施例1と同様とした。ついで、下段系造粒物Aを直径300mm、層高600mmの試験鍋に層厚300mmで装入した。ついで、上段系造粒物Bを下段系造粒物Aの充填層上に層厚300mmで装入した。ついで、試験鍋を試験鍋試験装置にセットし、表面を1100℃の火炎で1分間点火した。試験鍋の点火中は、ブロワにより吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引した。そして、引き続き吸引負圧1000mmAqで試験鍋内の空気を吸引しつつ、吸引ガスの温度をモニタした。次いで、試験鍋の点火開始時点から吸引ガス温度が最大となった時点までの時間を焼結時間(min)とした。以上の工程により、焼結ケーキを作成した。その後、実施例1と同様に生産性および被還元性を評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0055】
【表2】
【0056】
<2.評価>
(2−1.被還元性)
表2から明らかな通り、実施例1〜3の被還元性は、比較例1〜5の被還元性よりも向上した。例えば、実施例2の被還元性は、比較例4に対して3%程度増大した。実施例1〜3では、下段系の配合原料中のCaO濃度が4質量%以下となっているので、下段原料充填層A1の焼成中にオリビン系の難還元性鉱物が生成しにくく、その代わりに、比較的被還元性の良好な酸化鉄(ヘマタイト、マグネタイト)を主体とする鉱物が多く生成される。さらに、焼結鉱の表面積を低減させる要因となるカルシウムフェライトも生成しにくい。したがって、実施例1〜3の被還元性が増大したと考えられる。また、二段装入二段点火法により原料充填層を焼成するので、下段原料充填層A1および上段原料充填層B1の焼成中に上段原料充填層B1中の生石灰が下段原料充填層A1に流入しにくい。このため、上記の効果がより大きくなったと考えられる。また、実施例1〜3では、焼結鉱全体のCaO濃度を調整するために、上段系の配合原料中のCaO濃度を高めている。しかし、上段原料充填層B1の焼成時の温度は低いため、針状カルシウムフェライトが多く生成すると考えられる。このため、焼結鉱の被還元性の低下が抑えられたと考えられる。
【0057】
これに対し、比較例1では全配合原料を一括して造粒するため、原料充填層の焼成中にオリビン系の難還元性鉱物およびカルシウムフェライトが多く生成する。このため、被還元性が低下したと考えられる。
【0058】
比較例2、3では、造粒を二系統で行うが、焼成前に上段系造粒物Bおよび下段系造粒物Aを混合しているので、やはり被還元性は低下した。なお、比較例3の被還元性は比較例2の被還元性に比べて若干(1%程度)向上している。比較例3では、原料充填層は、CaO濃度が少ない下段系造粒物とCaO濃度が大きい上段系造粒物との混合物となっている。このため、部分的にCaO濃度が少ない領域が存在し、このような領域でカルシウムフェライトの生成が抑制されたと考えられる。このため、焼結鉱中に部分的に気孔の小さな領域(すなわち、比表面積が大きい)領域が存在し、このような領域によって被還元性が若干向上したと考えられる。しかし、比較例3の被還元性は、実施例1〜3に比べると低かった。
【0059】
比較例4では、二段装入二段点火法により原料充填層を焼成するが、下段原料充填層A1中のCaO濃度は4質量%を超えている。このため、下段原料充填層A1の焼成時にオリビン系の難還元性鉱物およびカルシウムフェライトが多く生成したと考えられる。従って、下段原料充填層A1中のCaO濃度が4質量%以下の実施例1〜3に比べると被還元性が悪化した。なお、比較例4では、下段系の配合原料中のCaO濃度が上段系の配合原料中のCaO濃度よりも低いので、比較例1〜3に比べると被還元性が若干向上した。
【0060】
比較例5では、下段原料充填層A1中のCaO濃度が4質量%以下となるが、二段装入一段点火法により原料充填層を焼成する。このため、上段原料充填層B1の焼成中に上段原料充填層B1中の生石灰が下段原料充填層A1に流入し、下段原料充填層A1中のCaO濃度が高くなってしまったと考えられる。このため、焼結鉱の被還元性が低下したと考えられる。
【0061】
(2−2.生産性)
実施例1〜3は、二段装入二段点火法により焼結鉱を作製するため、生産性が著しく向上した。特に、下段系造粒物の粒度が実施例1よりも大きくなった実施例2では、さらに生産性が向上した。下段系造粒物の粒度がさらに大きくなった実施例3では、さらに生産性が向上した。実施例2、3では、粒度の増大により通気性が大きくなり、結果として生産性が向上したと考えられる。なお、実施例1の生産性は、二系統造粒後に一段装入一段点火法を行った比較例2、3に対して20%程度増大した。また、実施例2の生産性は比較例2、3に対して33%程度増大し、実施例3の生産性は比較例2、3に対して34%程度増大した。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。