(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正規リムに正規内圧で装着され、かつ、前記トレッド部がキャンバー角0°で平面に接地するように正規荷重が負荷された前記トレッド部の接地面において、タイヤ軸方向の最大の接地幅W1と、タイヤ赤道上でのタイヤ周方向の接地長さL1との比W1/L1が1.10〜1.80である請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の冬用の空気入りタイヤとして好適に使用される。本発明の他の態様では、タイヤ1は、例えば、重荷重用の空気入りタイヤとして用いることができる。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0020】
本実施形態のタイヤ1は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間のトレッド部2を有している。トレッド部2は、タイヤ赤道Cと第1トレッド端Te1との間の第1トレッド部2Aと、タイヤ赤道Cと第2トレッド端Te2との間の第2トレッド部2Bとを含んでいる。
【0021】
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0025】
トレッド部2には、各トレッド部2A、2Bでタイヤ周方向に連続して延びる主溝11と、複数の傾斜溝10とが設けられている。上記主溝11は、優れた排水性を発揮し、ハイドロプレーニング現象を効果的に抑制することができる。
【0026】
傾斜溝10は、例えば、第1トレッド部2Aに設けられた第1傾斜溝10Aと、第2トレッド部2Bに設けられた第2傾斜溝10Bとを含む。第1傾斜溝10Aは、第1トレッド端Te1からタイヤ赤道C側に向かって斜めに延びている。第2傾斜溝10Bは、第2トレッド端Te2からタイヤ赤道C側に向かって斜めに延びている。第2傾斜溝10Bは、第1傾斜溝10Aと実質的に同様の構成を有している。このため、特に断りの無い限り、第1傾斜溝10Aの構成は、第2傾斜溝10Bに適用することができる。各傾斜溝10は、雪上走行時、タイヤ軸方向に対して斜めに延びる長い雪柱を形成しかつこれをせん断することにより、大きな雪上トラクションを得ることができる。
【0027】
望ましい態様では、各傾斜溝10A、10Bは、トレッド端Te1、Te2から、タイヤ赤道C側に向かって、回転方向Rの先着側に傾斜している。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0028】
図2には、第1トレッド部2Aの拡大図が示されている。
図2に示されるように、傾斜溝10は、例えば、タイヤ軸方向に対する角度θ1がタイヤ赤道C側に向かって漸増するように湾曲しているのが望ましい。前記角度θ1は、例えば、25〜80°であるのが望ましい。このような傾斜溝10は、雪上走行時、タイヤ軸方向にも雪柱せん断力を発揮することができる。
【0029】
傾斜溝10は、主溝11をタイヤ赤道
C側に越えた位置で終端している。傾斜溝10は、例えば、タイヤ赤道
Cを横切ることなく途切れている。傾斜溝10の内端(溝中心線のタイヤ軸方向内側の端を意味し、以下、同様である。)からタイヤ赤道
Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TW(
図1に示され、以下、同様である。)の2.0%〜5.0%であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0030】
傾斜溝10は、例えば、第1トレッド端Te1側に向かって溝幅が漸増しているのが望ましい。傾斜溝10は、例えば、主溝11よりも大きい溝幅を少なくとも一部に有しているのが望ましい。傾斜溝10の最大の溝幅W2は、例えば、トレッド幅TWの5.0%〜9.0%であるのが望ましい。傾斜溝10の深さは、乗用車用の冬用タイヤの場合、例えば、7.0〜11.0mmであるのが望ましい。
【0031】
図1に示されるように、主溝11は、例えば、第1トレッド部2Aに設けられた第1主溝11Aと、第2トレッド部2Bに設けられた第2主溝11Bとを含む。本実施形態では、各トレッド部2A、2Bにそれぞれ1本ずつ主溝11が設けられている。第2主溝11Bは、第1主溝11Aと実質的に同様の構成を有している。このため、特に断りの無い限り、第1主溝11Aの構成は、第2主溝11Bに適用することができる。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態の主溝11は、例えば、タイヤ周方向に隣り合う傾斜溝10の間をつなぐ溝部11aがタイヤ周方向に複数並べられることにより、隣り合う溝部11aが連続する様に構成されている。より具体的には、溝部11aは、少なくとも、タイヤ周方向に仮想延長されたとき、タイヤ周方向で隣り合う溝部11aと交わる。望ましい態様では、溝部11aが仮想延長されたとき、タイヤ周方向で隣り合う溝部11aとその溝幅の半分以上が重複する。より望ましい態様として、本実施形態では、各溝部11aの両側の溝縁が、同一直線上に設けられている。これにより、本実施形態の主溝11は、タイヤ周方向に沿って直線状に連続する様に延びている。
【0033】
タイヤ赤道Cから主溝11の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L3は、トレッド幅TWの0.10〜0.20倍であるのが望ましい。このような主溝11は、タイヤ赤道C付近の排水性を効果的に高めることができる。
【0034】
主溝11の溝中心線と傾斜溝10の溝中心線との間の交差角度θ2は、好ましくは30°以上、より好ましくは35°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは45°以下である。傾斜溝10が上述の向きに傾斜し、かつ、交差角度θ2が上記範囲とされることにより、ウェット走行時、主溝11内の水の一部は、傾斜溝10を通ってタイヤ軸方向外側に排水され易くなる。このため、比較的小さい溝幅及び溝深さの主溝11でも所望の排水性が得られる。従って、ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めることができる。
【0035】
ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるために、主溝11は、例えば、トレッド幅TWの2.5%〜3.5%の溝幅W3を有しているのが望ましい。主溝11は、例えば、溝部11aにおいて、傾斜溝10よりも小さい溝深さを有しているのが望ましい。前記溝深さは、冬用の乗用車用タイヤの場合、例えば、5.0〜10.0mmであるのが望ましい。
【0036】
本実施形態のトレッド部2には、例えば、中央横溝12が設けられているのが望ましい。中央横溝12は、例えば、傾斜溝10から分岐してタイヤ軸方向に延びかつタイヤ赤道
Cを横切っている。より具体的には、中央横溝12は、第1中央横溝12Aと第2中央横溝12Bとを含んでいる。第1中央横溝12Aは、第1傾斜溝10Aと同じ向きに傾斜している。第1中央横溝12Aは、第1傾斜溝10Aから分岐してタイヤ軸方向に延び、第2傾斜溝10Bに連なっている。第2中央横溝12Bは、第2傾斜溝10Bと同じ向きに傾斜している。第2中央横溝12Bは、第2傾斜溝10Bから分岐してタイヤ軸方向に延び、第1傾斜溝10Aに連なっている。第1中央横溝12Aと第2中央横溝12Bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0037】
中央横溝12は、例えば、タイヤ軸方向に対して15〜30°の角度θ3で配されているのが望ましい。
【0038】
トレッド部2には、傾斜陸部13が設けられている。傾斜陸部13は、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝10の間に区分されている。本実施形態の傾斜陸部13は、例えば、第1中央横溝12Aと第2中央横溝12Bとの間に区分された領域を含んでいる。
【0039】
図1に示されるように、傾斜陸部13は、例えば、複数の第1傾斜溝10Aの間に区分された第1傾斜陸部13Aと、複数の第2傾斜溝10Bの間に区分された第2傾斜陸部13Bとを含む。第2傾斜陸部13Bは、第1傾斜陸部13Aと実質的に同様の構成を有している。このため、特に断りの無い限り、第1傾斜陸部13Aの構成は、第2傾斜陸部13Bに適用することができる。
【0040】
図2に示されるように、傾斜陸部13の少なくとも1つには、ラグ溝15が主溝11に隣接して設けられている。ラグ溝15は、一端15aが傾斜溝10に連なりかつ他端15bが傾斜陸部13内で途切れている。このようなラグ溝15は、傾斜陸部13の剛性低下を抑制してドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、ウェット性能及び雪上性能を高めることができる。また、主溝11に隣接しているラグ溝15は、傾斜陸部13を適度に変形させ、雪上走行時の主溝11及び傾斜溝10の雪の詰まりを抑制し、優れた雪上性能を連続して発揮することができる。
【0041】
本実施形態のラグ溝15は、主溝11の第1トレッド端Te1側に設けられているのが望ましい。また、ラグ溝15は、傾斜溝10の回転方向Rの先着側に連なっているのが望ましい。
【0042】
ラグ溝15は、一端15aから他端15bに向かって主溝11から離れる向きに傾斜しているのが望ましい。本実施形態のラグ溝15は、例えば、タイヤ周方向に対して45〜65°の角度θ4で傾斜している。このようなラグ溝15は、傾斜陸部13をタイヤ軸方向及びタイヤ周方向に変形させるのに役立ち、雪の詰まりをさらに抑制することができる。
【0043】
ラグ溝15の一端15a側において、ラグ溝15の溝中心線の延長線と傾斜溝10の溝中心線との交点が、第1交点16とされる。タイヤ赤道Cから第1交点16までのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、タイヤ赤道Cから主溝11の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L3の1.30〜1.50倍であるのが望ましい。このようなラグ溝15は、傾斜陸部13の剛性を適度に維持しつつ、雪上走行時の主溝11の雪の詰まりを抑制することができる。
【0044】
ラグ溝15は、例えば、主溝11の溝幅W3よりも小さい溝幅W4を有しているのが望ましい。ラグ溝15の溝幅W4は、例えば、主溝11の溝幅W3の0.50〜0.70倍であるのが望ましい。このようなラグ溝15は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0045】
ラグ溝15は、例えば、傾斜溝10よりも小さい深さを有しているのが望ましい。より望ましい態様では、ラグ溝15は、主溝11よりも小さい深さを有している。これにより、傾斜陸部13の剛性が高められ、ドライ路面での操縦安定性が高められる。
【0046】
傾斜陸部13には、さらに、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝10の間をつなぐ継ぎ溝18が設けられているのが望ましい。本実施形態の継ぎ溝18は、例えば、ラグ溝15と第1トレッド端Te1との間に設けられている。
【0047】
継ぎ溝18は、例えば、タイヤ周方向に対してラグ溝15と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。本実施形態の継ぎ溝18は、例えば、タイヤ周方向に対してラグ溝15よりも小さい角度θ5で傾斜している。継ぎ溝18の角度θ5は、例えば、15〜30°であるのが望ましい。このような継ぎ溝18は、ラグ溝15とともに傾斜陸部13の変形をさらに促し、ひいては傾斜溝10及び主溝11の雪の詰まりをさらに抑制することができる。
【0048】
継ぎ溝18は、例えば、傾斜溝10よりも小さい深さを有しているのが望ましい。より望ましい態様では、継ぎ溝18は、主溝11よりも小さい深さを有している。これにより、傾斜陸部13の剛性が高められ、ドライ路面での操縦安定性が高められる。
【0049】
ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるために、継ぎ溝18は、例えば、主溝11よりも小さい溝幅W5を有しているのが望ましい。継ぎ溝18の溝幅W5は、例えば、主溝11の溝幅W3の0.50〜0.70倍であるのが望ましい。
【0050】
図3には、傾斜陸部13の拡大図が示されている。
図3に示されるように、傾斜陸部13は、例えば、上述の溝により、クラウンブロック21と、ミドルブロック22と、ショルダーブロック23とを含んで区分されている。
【0051】
クラウンブロック21は、例えば、主溝11のタイヤ軸方向内側に区分されている。クラウンブロック21は、例えば、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝10の間に区分された領域と、第1中央横溝12Aと第2中央横溝12Bとの間に区分された領域とを含んでいる。
【0052】
図4(a)には、クラウンブロック21の拡大図が示されている。
図4(a)に示されるように、クラウンブロック21は、例えば、タイヤ周方向に沿って延びるクラウン縦エッジ25を有しているのが望ましい。クラウン縦エッジ25のタイヤ周方向の長さL5は、例えば、クラウンブロック21のタイヤ周方向の最大の幅W6の0.50〜0.70倍であるのが望ましい。このようなクラウンブロック21は、適度な変形を伴ってクラウン縦エッジ25にタイヤ軸方向の摩擦力を発揮させる。従って、クラウンブロック21は、例えば、雪が押し固められた圧雪路面を走行するとき、主溝11への雪の詰まりを抑制しつつ、タイヤ軸方向の摩擦力を発揮することができる。
【0053】
クラウンブロック21のタイヤ赤道Cからクラウン縦エッジ25までの本体幅W7は、例えば、トレッド幅TWの0.10〜0.20倍であるのが望ましい。これにより、クラウン縦エッジ25とタイヤ赤道Cとの間に十分なゴムボリュームが確保される。また、クラウン縦エッジ25がタイヤ赤道Cと比較的近く、クラウン縦エッジ25に大きな接地圧が作用する。このため、例えば圧雪路面において、クラウン縦エッジ25が大きな摩擦力を提供することができる。
【0054】
クラウンブロック21には、例えば、複数のクラウンサイプ26が設けられているのが望ましい。本実施形態のクラウンサイプ26は、例えば、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びている。このようなクラウンサイプ26は、雪上走行時、クラウンブロック21を適度に変形させ、傾斜溝10及び主溝11の雪の詰まりをさらに抑制することができる。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が2.0mm未満の切れ込みを意味する。
【0055】
図3に示されるように、ミドルブロック22は、例えば、主溝11と継ぎ溝18との間に区分されている。ミドルブロック22には、上述したラグ溝15が設けられている。ミドルブロック22のタイヤ軸方向の最大の幅W8は、例えば、クラウンブロック21の本体幅W7の1.20〜1.40倍であるのが望ましい。
【0056】
図4(b)には、ミドルブロック22の拡大図が示されている。
図4(b)に示されるように、ミドルブロック22は、例えば、タイヤ周方向に沿って延びるミドル縦エッジ27を有しているのが望ましい。ミドル縦エッジ27のタイヤ周方向の長さL6は、例えば、ミドルブロック22のタイヤ周方向の最大の幅W9の0.55〜0.70倍であるのが望ましい。このようなミドルブロック22は、適度な変形を伴ってミドル縦エッジ27にタイヤ軸方向の摩擦力を発揮させる。従って、ミドルブロック22は、例えば、圧雪路面を走行するとき、傾斜溝10及び主溝11への雪の詰まりを抑制しつつ、タイヤ軸方向の摩擦力を発揮することができる。
【0057】
ミドルブロック22には、例えば、複数のミドルサイプ28が設けられているのが望ましい。ミドルサイプ28は、例えば、タイヤ周方向に対してラグ溝15と同じ向きに傾斜してジグザグ状に延びているのが望ましい。このようなミドルサイプ28は、ラグ溝15とともに、ミドルブロック22の変形を促し、ひいては傾斜溝10及び主溝11への雪の詰まりをさらに抑制することができる。
【0058】
図3に示されるように、ショルダーブロック23は、例えば、継ぎ溝18と第1トレッド端Te1との間に区分されている。
【0059】
図4(c)には、ショルダーブロック23の拡大図が示されている。
図4(c)に示されるように、ショルダーブロック23のタイヤ軸方向の最大の幅W10は、例えば、クラウンブロック21の本体幅W7の1.45〜1.65倍であるのが望ましい。
【0060】
望ましい態様では、ショルダーブロック23のタイヤ軸方向の最大の幅W10と、タイヤ周方向の最大の幅W11との比W10/W11は、例えば、0.90〜1.10である。このようなショルダーブロック23は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向の剛性をバランス良く維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を高めることができる。
【0061】
ショルダーブロック23には、例えば、複数のショルダーサイプ29が設けられているのが望ましい。ショルダーサイプ29は、例えば、タイヤ周方向に対して継ぎ溝18と逆向きに傾斜してジグザグ状に延びているのが望ましい。
【0062】
図5には、トレッド部2の接地面2sを現す平面図が示されている。
図5において、接地面2sは、着色されている。
図5の接地面2sは、タイヤ1が正規リムに正規内圧で装着され、かつ、トレッド部2がキャンバー角0°で平面に接地するように正規荷重が負荷されたときのものである。
図5に示されるように、上記接地面2sにおいて、タイヤ軸方向の最大の接地幅W1と、タイヤ赤道C上でのタイヤ周方向の接地長さL1との比W1/L1は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.35以上であり、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.65以下である。より具体的には、前記最大の接地幅W1は、例えば、200〜250mmであるのが望ましい。本発明は、このような接地幅W1が比較的大きいタイヤにおいて、ドライ路面での操縦安定性及び雪上性能を維持しつつ、ハイドロプレーニング現象を抑制することができる。
【0063】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2のランド比Lrは、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下である。これにより、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く高められる。本明細書において、「ランド比」とは、各溝及びサイプを全て埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の合計接地面積Sbの比Sb/Saである。
【0064】
同様の観点から、トレッド部2を形成するトレッドゴムのゴム硬度Htは、好ましくは45°以上、より好ましくは55°以上であり、好ましくは70°以下、より好ましくは65°以下である。本明細書において、前記「ゴム硬度」は、JIS−K6253に準拠し、23℃の環境下におけるデュロメータータイプAによる硬さである。
【0065】
図6及び
図7には、本発明の他の実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。
図6及び
図7において、上述の実施形態と共通する要素には、同一の符号が付されており、ここでの説明は省略されている。
【0066】
図6に示される実施形態では、主溝11が、上述した実施形態よりもタイヤ軸方向外側に設けられている。この実施形態では、タイヤ赤道Cから主溝11までのタイヤ軸方向の距離L3が、トレッド幅TWの0.25〜0.35倍である。このような主溝11は、
図1で示される実施形態と比較して、タイヤ赤道C付近の剛性を高め、優れたドライ路面での操縦安定性を発揮することができる。
【0067】
この実施形態では、主溝11とタイヤ赤道Cとの間に、上述のラグ溝15が設けられている。また、ラグ溝15とタイヤ赤道Cとの間に、上述の継ぎ溝18が設けられている。これにより、前記距離L3を大きくしたことによる排水性の低下を防ぎ、ひいてはハイドロプレーニング現象を抑制することができる。
【0068】
図7に示される実施形態では、タイヤ赤道Cと第1トレッド端Te1との間に、複数の主溝11が設けられている。この実施形態のトレッド部2には、例えば、最もタイヤ赤道C側に設けられた内側主溝31と、内側主溝31と第1トレッド端Te1との間に設けられた外側主溝32とが設けられている。このような実施形態は、さらに優れた排水性を発揮することができる。
【0069】
タイヤ赤道Cから内側主溝31の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L3aは、例えば、トレッド幅TWの0.10〜0.20倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから外側主溝
32の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L3bは、例えば、トレッド幅TWの0.25〜0.35倍であるのが望ましい。
【0070】
内側主溝31の溝中心線と傾斜溝10の溝中心線との間の交差角度θ2aは、例えば、35〜45°であるのが望ましい。外側主溝32の溝中心線と傾斜溝10の溝中心線との間の交差角度θ2bは、例えば、40〜50°であるのが望ましい。これにより、各主溝31、32と傾斜溝10とが協働してハイドロプレーニング現象を抑制することができる。
【0071】
この実施形態では、内側主溝31と外側主溝32との間に、これらと隣接するラグ溝15が設けられている。これにより、内側主溝31と外側主溝32との間のミドルブロック22が適度に変形し易くなり、ひいては雪上走行時の内側主溝31及び外側主溝32の雪の詰まりが抑制される。
【0072】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0073】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ255/55R18の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、
図8に示されるように、タイヤ周方向に連続して延びる主溝を有しないタイヤが試作された。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性、ウェット性能、及び、雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
テスト車両:排気量3600cc、4輪駆動車
テストタイヤ装着位置:全輪
リム:18×8.0
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪250kPa
トレッド接地幅:224mm
傾斜溝の溝深さ:8.6mm
接地幅W1/接地長さL1:1.46
ランド比:67%
トレッドゴムのゴム硬度Ht:65
【0074】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面の周回コースを走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
【0075】
<ウェット性能>
インサイドドラム試験機が用いられ、各テストタイヤが下記の条件で水深5.0mmのドラム面上を走行したときのハイドロプレーニング現象の発生速度が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きい程、前記発生速度が高く、ウェット性能が優れていることを示す。
スリップ角:1.0°
縦荷重:4.2kN
【0076】
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0077】
【表1】
【0078】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、ドライ路面での操縦安定性及び雪上性能を維持しつつ、ハイドロプレーニング現象を抑制していることが確認できた。