特許第6885175号(P6885175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885175
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20210531BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20210531BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20210531BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20210531BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H01L23/36 M
   H01L25/04 C
   H01L23/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-80813(P2017-80813)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-182105(P2018-182105A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩平
(72)【発明者】
【氏名】郷原 広道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 遼一
(72)【発明者】
【氏名】池田 良成
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克己
【審査官】 庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−123014(JP,A)
【文献】 特開2003−031765(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/111059(WO,A1)
【文献】 特開2005−057102(JP,A)
【文献】 特開2008−103623(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0332950(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103988298(CN,A)
【文献】 特開2008−124430(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0224303(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0030717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H01L 23/28
H01L 23/373
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなり、互いに対向する第1主面及び第2主面並びに互いに対向する2つの側面を有する冷却器と、
前記第1主面に接合された複数の導電性パターン層と、
前記導電性パターン層の少なくとも一部を介して前記第1主面に搭載された半導体素子と、
樹脂及びフィラーからなり、前記半導体素子及び前記導電性パターン層を封止する封止部材と
前記第2主面に接合され、前記セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなるバッファ膜と
を備え、
前記封止部材は、少なくとも前記第1主面及び前記2つの側面を覆い、
前記バッファ膜は、前記冷却器の表面を露出する開口部を有するように、前記第2主面の周辺部を覆い、
前記封止部材は、前記バッファ膜及び前記冷却器の表面を露出する開口部を有するように、前記2つの側面から前記第2主面の周辺部を覆い、
前記第2主面における前記封止部材の端部が、前記バッファ膜の表面に位置すること
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記冷却器は、前記第1主面と前記第2主面との間に冷媒となる流体を流す流路を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バッファ膜は、少なくとも前記第2主面と反対側の面に配置されたスリットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
セラミックスからなり、対向する第1主面及び第2主面並びに互いに対向する2つの第1側面を有する第1冷却器と、
前記セラミックスからなり、前記第1主面に平行で且つ互いに対向する第3及び第4主面並びに互いに対向する2つの第2側面を有する第2冷却器と、
前記第1主面に接合された複数の第1導電性パターン層と、
前記第3主面に接合された複数の第2導電性パターン層と、
前記第1導電性パターン層の少なくとも一部及び前記第2導電性パターン層の少なくとも一部を介して前記第1主面及び前記第3主面のそれぞれに搭載された両主面を有する半導体素子と、
樹脂及びフィラーからなり、前記半導体素子並びに前記第1及び第2導電性パターン層を封止する封止部材と
前記第2主面に接合され、前記セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなる第1バッファ膜と、
前記第4主面に接合され、前記セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなる第2バッファ膜と
を備え、
前記封止部材は、少なくとも前記第1主面及び前記2つの第1側面並びに前記第3主面及び前記2つの第2側面を覆い、
前記第1バッファ膜は、前記第1冷却器の表面を露出する開口部を有するように前記第2主面の周辺部を覆い、前記封止部材は、前記第1バッファ膜及び前記第1冷却器の表面を露出する開口部を有するように、前記2つの第1側面から前記第2主面の周辺部を覆い、
前記第2バッファ膜は、前記第2冷却器の表面を露出する開口部を有するように前記第4主面の周辺部を覆い、前記封止部材は、前記第2バッファ膜及び前記第2冷却器の表面を露出する開口部を有するように、前記2つの第2側面から前記第4主面の周辺部を覆い、
前記第2主面における前記封止部材の端部が前記第1バッファ膜の表面に位置し、前記第4主面における前記封止部材の端部が前記第2バッファ膜の表面に位置すること
を特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1冷却器は、前記第1主面と前記第2主面との間に冷媒となる流体を流す第1流路を有し、
前記第2冷却器は、前記第3主面と前記第4主面との間に冷媒となる流体を流す前記第1流路に平行な第2流路を有することを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1バッファ膜は、少なくとも前記第2主面と反対側の面に配置された第1スリットを有し、前記第2バッファ膜は、少なくとも前記第4主面と反対側の面に配置された第2スリットを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールは、1つまたは複数のパワー半導体素子を内蔵して変換接続の一部または全体を構成する半導体装置である。パワー半導体モジュール内のパワー半導体素子とモジュール外の制御回路との間を主端子や制御端子により電気的に接続する。一方、主端子や制御端子を除いては、電気的に絶縁された構造を持つことが漏電などの観点から好ましい。また、パワー半導体装置は、パワー半導体モジュールと、パワー半導体素子の熱を放熱するための冷却器とを有する。パワー半導体装置は、産業用途としてエレベータなどのモータ駆動制御インバータなどに使われている。さらに近年では、車載用モータ駆動制御インバータやDC-DCコンバータ等に広く用いられるようになっている。小型・高出力、長期信頼性が求められている。
【0003】
パワー半導体装置において、小型化及び高出力化が進むに連れて半導体素子の熱を効率よく放散することが重要となる。特許文献1は、裏面に冷媒が接触するセラミックス基板と、セラミックス基板のおもて面に形成された回路パターンとを備える回路基板を開示する。特許文献1の回路基板によれば、回路パターンの表面に半導体素子が接合されることにより、セラミックス基板が直接的に冷媒と接触することができ、セラミックス基板が冷却器の役割をなす。
【0004】
特許文献2は、半導体素子を挟む一対のリードフレームと、リードフレームの各外側表面を露出した状態で半導体素子及びリードフレームを封止する樹脂と、リードフレームの各外側表面に接合されるセラミックチューブとを備える半導体装置を開示する。特許文献2の半導体装置は、セラミックチューブのリードフレーム側の厚さが反対側より薄いことにより放熱経路の熱抵抗を小さくして冷却効率を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−26469号公報
【特許文献2】特開2008−103623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、主端子や制御端子の構成、および、半導体素子や回路を電気的に絶縁する構成に関し、何ら記載されていない。我々が検討を進めた結果、セラミックス基板のおもて面に形成された回路基板と回路基板に接合された半導体素子の部分を、モールド成形された樹脂で封止する場合、樹脂とセラミックスとの間の熱膨張係数の差により樹脂が剥離することが明らかとなった。樹脂の剥離は、クラック等の破損、反り、絶縁不良、導通不良等の不具合を生じ得る。
【0007】
特許文献2の半導体装置は、リードフレームとセラミックチューブ間に電気的に絶縁が取れていない部分があり、周辺部材への漏電の危険性がある。また、セラミックチューブがリードフレームのみによって接合されるため、剥離やクラック等による破損や故障の可能性がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、冷却性能が高く、破損や故障に対する信頼性を向上することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(a)セラミックスからなり、互いに対向する第1及び第2主面並びに互いに対向する2つの側面を有する冷却器と、(b)第1主面に接合された複数の導電性パターン層と、(c)導電性パターン層の少なくとも一部介して第1主面に搭載された半導体素子と、(d)樹脂及びフィラーからなり、前記半導体素子及び導電性パターン層を封止する封止部材と、(e)第2主面に接合され、セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなるバッファ膜とを備える半導体装置であることを要旨とする。第1の態様に係る半導体装置において、封止部材は、少なくとも第1主面及び2つの側面を覆い、バッファ膜は、冷却器の表面を露出する開口部を有するように、第2主面の周辺部を覆い、封止部材は、バッファ膜及び冷却器の表面を露出する開口部を有するように、2つの側面から第2主面の周辺部を覆い、第2主面における封止部材の端部が、バッファ膜の表面に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、(a)セラミックスからなり、互いに対向する第1及び第2主面並びに互いに対向する2つの第1側面を有する第1冷却器と、(b)セラミックスからなり第1主面に平行で且つ互いに対向する第3及び第4主面並びに互いに対向する2つの第2側面を有する第2冷却器と、(c)第1主面に接合された複数の第1導電性パターン層と(d)第3主面に接合された複数の第2導電性パターン層と、(e)第1導電性パターン層の少なくとも一部及び第2導電性パターン層の少なくとも一部を介して第1主面及び第3主面のそれぞれに搭載された両主面を有する半導体素子と、(f)樹脂及びフィラーからなり、半導体素子並びに第1及び第2導電性パターン層を封止する封止部材と、(g)第2主面に接合され、セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなる第1バッファ膜と、(h)第4主面に接合され、セラミックスより大きい値となる熱膨張係数を有する金属からなる第2バッファ膜とを備える半導体装置であることを要旨とする。第2の態様に係る半導体装置において、封止部材は、少なくとも第1主面及び2つの第1側面並びに第3主面及び2つの第2側面を覆い、第1バッファ膜は、第1冷却器の表面を露出する開口部を有するように第2主面の周辺部を覆い、封止部材は、第1バッファ膜及び第1冷却器の表面を露出する開口部を有するように、2つの第1側面から第2主面の周辺部を覆い、第2バッファ膜は、第2冷却器の表面を露出する開口部を有するように第4主面の周辺部を覆い、封止部材は、第2バッファ膜及び第2冷却器の表面を露出する開口部を有するように、2つの第2側面から第4主面の周辺部を覆い、第2主面における封止部材の端部が第1バッファ膜の表面に位置し、第4主面における封止部材の端部が第2バッファ膜の表面に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却性能が高く、破損や故障に対する信頼性を向上することができる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の基本的な構成を説明する斜視図である。
図2図1のII−II方向から見た断面図である。
図3】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図4】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図5】窒化ケイ素及び銅の、樹脂に対するせん断強度を示す図である。
図6】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置のバッファ膜を説明する斜視図である。
図7】平坦な銅板及びスリットを有する銅板の、封止部材に対するせん断強度を示す図である。
図8】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置のバッファ膜を説明する斜視図である。
図9】第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図10】第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図12】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図13】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造工程を説明する斜視図である。
図14】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造工程を説明する斜視図である。
図15】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造工程を説明する斜視図である。
図16】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造工程を説明する斜視図である。
図17】第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図18】第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図19】第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図20】第2実施形態の第4変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図21】第2実施形態の第5変形例に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
図22】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の基本的な構成を説明する上面図である。
図23図22のA−A方向から見た断面図である。
図24】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の基本的な構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1及び第2の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る半導体装置は、図1及び図2に示すように、セラミックスからなる冷却器10、冷却器10に接合された素子パターン層41、素子パターン層41に接合された半導体素子20、半導体素子20を封止する封止部材30を備える。冷却器10は、図1に示すように第1主面11及び第1主面11に平行に対向する第2主面12を有する。半導体素子20は、冷却器10の第1主面11に素子パターン層41の一部を介して接合されている。封止部材30は、冷却器10の第1主面11の少なくとも一部を含むように半導体素子20を封止しているが、封止部材30は更に第1主面11から第2主面12に到達するように配置される。
【0016】
冷却器10には、一定の厚みを有する矩形平板状又はブロック状の形状等が採用可能である。冷却器10は、第1主面11及び第2主面12の間に冷媒となる流体を流す複数の流路13を有する。複数の流路13は、冷却器10の1辺に平行にそれぞれ延伸し、延伸方向(長手方向)における冷却器10の両端面においてそれぞれ開口する。冷却器10は、複数の流路13の配列方向(図1の左右方向)における両端面に、互いに対向する2つの側面14を有する。複数の流路13は、第1主面11に平行な方向に1列に配列される。複数の流路13の各開口は、第1主面11又は第2主面12に位置するようにしてもよい。
【0017】
冷却器10の材料となるセラミックスは、例えば、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)等の絶縁性で熱伝導度の高い材料が採用可能である。これらのセラミックスの熱膨張係数は、例えば、概ね2×10-6〜12×10-6(/K)である。なお、セラミックスの熱膨張係数は、20℃〜250℃におけるJISR1618に基づいて測定した値である。
【0018】
半導体素子20は、例えば矩形平板状である。半導体素子20は、シリコン(Si)、SiC、窒化ガリウム(GaN)等の材料からなる。半導体素子20は、例えば、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)等のトランジスタ、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)等を含む半導体スイッチング素子から任意に選択可能である。半導体素子20は、複数の半導体素子から構成されてもよく、ショットキーバリアダイオード等のダイオードを含むようなモノリシックなパワー集積回路(IC)でも良く、ハイブリッド構造のICやモジュール等でもよい。
【0019】
半導体素子20がBJTである場合において、第1主電極はエミッタ又はコレクタのいずれか一方の電極を意味し、第2主電極は他方の電極を意味し、制御電極はベースを意味する。FET等において、第1主電極はソース又はドレインのいずれか一方の電極を意味し、第2主電極は他方の電極を意味し、制御電極はゲートを意味する。SIサイリスタ等において、第1主電極はアノード又はカソードのいずれか一方の電極を意味し、第2主電極は他方の電極を意味し、制御電極はゲートを意味する。半導体素子20は、例えば、第1主電極及び第2主電極が互いに対向する両主面に配置される縦型構造を有する。
【0020】
第1実施形態に係る半導体装置は、第1端子パターン層42、第2端子パターン層43、リードフレーム51、第1主端子52、制御端子53、ボンディングワイヤ54、接合材21,22等を更に備えることができる。
【0021】
素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43のそれぞれは、配線回路を構成する導電性パターン層である。素子パターン層41は、半導体素子20に対応するように冷却器10の第1主面11に配置される。素子パターン層41は、第1主面11と半導体素子20との間に介在する導電性パターン層である。第1端子パターン層42は、第1主端子52に対応するように第1主面11に配置される。第1端子パターン層42は、第1主面と第1主端子52との間に介在する導電性パターン層である。第2端子パターン層43は、制御端子53に対応するように第1主面11に配置される。第2端子パターン層43は、第1主面11と制御端子53との間に介在する導電性パターン層である。導電性パターン層の厚さは、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、より好ましくは、0.2mm以上、2.5mm以下である。
【0022】
導電性パターン層は、例えば銅(Cu)からなり、共晶接合による直接銅接合(DCB)法、活性金属ろう付け(AMB)法等により、冷却器10の第1主面11に接合される。導電性パターン層は、導電性の金属であればよく、Cuの他に、銅合金、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金から構成されてもよい。また、表面にニッケル(Ni)や金(Au)等のめっきが施されてもよい。
【0023】
半導体素子20は、接合材21により素子パターン層41の上面に接合される。これにより、例えば、半導体素子20の下面に位置する第2主電極が、素子パターン層41に電気的に接続される。また、半導体素子20の上面に位置する第1主電極は、接合材22によりリードフレーム51の一端に接合される。接合材21,22は、例えば、はんだ、導電性接着剤、銀(Ag)ナノ粒子等の金属焼結体等が採用できる。
【0024】
リードフレーム51の他端は、接合材(不図示)により第1端子パターン層42の上面に接合される。第1端子パターン層42の上面には、リードフレーム51の他端の他に第1主端子52の底面が接合材(不図示)により接合される。これにより、第1主端子52は、冷却器10の第1主面11に対して垂直に配置され、半導体素子20の上面に位置する第1主電極に電気的に接続される。第1主端子52と同様に、制御端子53は、接合材(不図示)により第2端子パターン層43の上面に底面が接合される。制御端子53は第1主面11に対して垂直に配置されて第2端子パターン層43に接合され、ボンディングワイヤ54を介して半導体素子20の上面に位置する制御電極と電気的に接続される。ボンディングワイヤ54は、例えば、Al等の金属からなる。
【0025】
第1主端子52及び制御端子53は、それぞれ、例えば円柱状の導電性ピンである。第1主端子52及び制御端子53は、それぞれ上部を除いて封止部材30の内部に封止される。第1主端子52及び制御端子53の各上部は、封止部材30の上面から上方に突出する。第1主端子52及び制御端子53は、例えば、Cuや銅合金等の金属からなる。第1主端子52及び制御端子53は、円柱状に限るものでなく、多角柱状であってもよい。また、第1主端子52及び制御端子53は、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。
【0026】
なお、半導体素子20の下面に位置する第2主電極は、素子パターン層41を介して、図示を省略した第2主端子に電気的に接続される。第2主端子は、例えば、第1主端子52及び制御端子53と同様に、第1主面11に対して垂直に配置されて、素子パターン層41から延伸した導電性パターン層の上面に接合される。
【0027】
図1のように、封止部材30は、半導体素子20及び導電性パターン層を封止する。更に、図2のように、封止部材30は、複数の流路13の長手方向に直交する断面において、第1主面11と、2つの側面14それぞれの少なくとも一部との、冷却器10の表面の連続する領域を覆う。封止部材30は、複数の流路13に平行な冷却器10の2つの側面14にそれぞれ平行な外側面を有する。また、図1に示したように、複数の流路13に冷媒となる流体を流すためのマニホールドが冷却器10に接続されるため、マニホールドが接続される側の冷却器10の両側面を除く範囲に封止部材30が設けられる。
【0028】
封止部材30は、熱硬化型の樹脂と充填材(フィラー)とからなる。熱硬化型の樹脂は、例えば、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂を主成分とする樹脂からなる。フィラーは、例えば、シリカ等の絶縁性の無機材料粉末からなる。封止部材30は、例えば、樹脂に対するフィラーの添加量を調整すれば熱膨張係数の調整が可能である。フィラーの添加量を多くすることで、熱膨張係数を小さくすることができる。しかし、フィラーの添加量が多すぎると、絶縁性が低下したり、機械的に脆くなるため好ましくない。このため、封止部材30の熱膨張係数は、例えば、13×10-6〜30×10-6(/K)等に調整できる。しかしながら、これらの値はセラミックスの熱膨張係数より大きい。なお、封止部材の熱膨張係数は、20℃〜200℃におけるJISK7197に基づいて測定した値である。
【0029】
上述のように、封止部材30は、冷却器10の、第1主面11と2つの側面14とを含む連続する領域を覆う。このため、封止部材30は、第1主面11のみを覆う場合に生じ得る、セラミックスとの熱膨張係数の差によるモジュール全体の反り変形、及び反り応力による剥離やクラックの発生が抑制される。また、2つの側面14は、半導体素子20から離れた箇所に位置するため半導体素子20の発熱による影響を受けにくく、温度変化が少ない。そのため、剥離やクラックの起点となり得る封止部材30の端部を、2つの側面14に配置することで、熱膨張係数の差によって生じ得る剥離やクラックが抑制される。
【0030】
−第1変形例−
本発明の第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置は、図3に示すように、封止部材30aが冷却器10の周囲を覆うように配置される点で上述の第1実施形態と異なる。なお、以下の変形例において説明しない構成、作用及び効果は、上述の第1実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0031】
封止部材30aは、複数の流路13の長手方向に直交する断面において、第1主面11と、2つの側面14と、第2主面12とを覆う。即ち、封止部材30aは、第1主面11から、流路13の配列方向(図3の左右方向)における両端側の2つの側面14を経由して、第2主面12にまで到達する。封止部材30aは、複数の流路13に平行な冷却器10の2つの側面14にそれぞれ平行な外側面を有する。図1に示した例と同様に、複数の流路13に冷媒となる流体を流すためのマニホールドが冷却器10に接続されるため、マニホールドが接続される側の冷却器10の両側面を除く範囲に封止部材30aが設けられる。
【0032】
図3の例では、封止部材30aは、流路13の長手方向に直交する断面において、冷却器10の周囲を取り囲むように覆う。よって、冷却器10の周囲で封止部材30aが途切れる場所がない。このため、冷却器10の周囲において剥離の起点となり得る封止部材30aの端部が存在しないため、熱膨張係数の差による冷却器10からの封止部材30aの剥離やクラックが抑制される。
【0033】
更に、封止部材30aは、流路13の長手方向に直交する断面において、冷却器10の周囲を覆うように配置される。このため、封止部材30aと冷却器10との界面において剥離が生じた場合であっても、封止部材30aは、冷却器10に対する相対的な位置が維持され、破損、反りによる絶縁不良、導通不良等の不具合を低減することができる。更に、半導体装置の取り扱い時において接触や衝突し易い冷却器10の角部や裏面は、封止部材30aにより覆われて保護されているため、冷却器10の破損を抑制可能である。
【0034】
−第2変形例−
本発明の第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置は、図4に示すように、冷却器10の第2主面12に接合されたシート状のバッファ膜(密着層)61を備える。なお、第2変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態の第1変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0035】
図4に示す例において、バッファ膜61は、第2主面12の、流路13の配列方向における一端側から他端側までの範囲において配置され、冷却器10の第2主面12と封止部材30aとの間を接合する。なお、図4に示す例においては、バッファ膜61は、1つであるが、複数に分割されていてもよい。また、バッファ膜61の厚さは、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、より好ましくは、0.2mm以上、2.5mm以下である。
【0036】
バッファ膜61は、冷却器10の材料であるセラミックスより大きい熱膨張係数を有する金属からなることが好ましい。より好ましくは、バッファ膜61の熱膨張係数は、13×10-6〜25×10-6(/K)である。なお、金属の熱膨張係数は、20℃〜250℃におけるJIS Z2285に基づいて測定した値である。
【0037】
バッファ膜61の熱膨張係数の影響は、以下のように考えられる。封止部材30aの熱膨張係数は、13×10-6〜30×10-6(/K)であり、セラミックスからなる冷却器10の熱膨張係数2×10-6〜12×10-6(/K)より大きい。そのため、ヒートサイクルにより、封止部材30aと冷却器10の界面において熱応力が発生し、封止部材30aの剥離が生じやすい。一方、冷却器10の表面に、冷却器10のセラミックスより大きい熱膨張係数を有するバッファ膜61を形成した場合には、封止部材30aとの接合面における熱膨張は大きくなる。そのため、封止部材30aの接合界面における熱応力が抑えられ、封止部材30aの剥離が生じ難くなる。
【0038】
バッファ膜61の熱膨張係数は、冷却器10の材料であるセラミックスより大きいほど、封止部材30aとの接着面の熱膨張を大きくでき、封止部材30aの剥離を抑制することができる。しかしながら、バッファ膜61の熱膨張係数が大きくしすぎると、冷却器10とバッファ膜61との界面での熱応力が大きくなる。そのため、バッファ膜61の熱膨張係数を25×10-6(/K)より大きくすることは、冷却器10とバッファ膜61との間で剥離やクラックなどが生じやすくなるため、好ましくない。
【0039】
バッファ膜61は、例えば、Cuや銅合金からなり、共晶接合によるDCB法、AMB法等により、冷却器10の第2主面12に接合される。バッファ膜61は、素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43と同一の材料から形成可能である。バッファ膜61は、Cuや銅合金の他、AlやAl合金、NiやNi合金、ステンレス鋼等であってもよい。また、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。
【0040】
図5は、プリンカップ試験により測定された、冷却器10の第2主面12、及び冷却器10の第2主面12に接合されたバッファ膜61のそれぞれから封止部材30aが剥離するときのせん断強度の例を示す図である。なお、プリンカップ試験とは、任意の部材の表面にプリンカップ形状の樹脂を硬化形成し、せん断強度の試験を行う方法である。なお、図5の例では、冷却器10は、Si34からなる熱膨張係数3.4×10-6(/K)のセラミックスである。バッファ膜61は、膜厚1mmのCuからなる熱膨張係数17×10-6(/K)の金属である。封止部材30aは、シリカフィラーを添加したエポキシ樹脂であり、熱膨張係数18×10-6(/K)である。図5に示すように、Cuバッファ膜61は、Si34冷却器10よりせん断強度が大きい。これは、封止部材30aに対する密着性が高いことを意味する。熱膨張係数の小さいセラミックスからなる冷却器10の表面に、それより熱膨張係数の大きい金属からなるバッファ膜61を形成することで、フィラー入り樹脂からなる封止部材30aとの密着性を高くすることができる。
【0041】
第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、バッファ膜61と封止部材30aの樹脂との密着性が、冷却器10のセラミックスと封止部材30aの樹脂との密着性より高い。このため、封止部材30aは、バッファ膜61を介して、より強固に冷却器10の第2主面12に接合されることができる。
【0042】
更に、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、冷却器10より大きい熱膨張係数を有するバッファ膜61が冷却器10の第2主面12に接合される。このため、バッファ膜61は、冷却器10の第2主面12及び封止部材30aの界面に作用する、冷却器10と封止部材30aとの熱膨張率の差による熱応力を低減することができる。
【0043】
−第3変形例−
本発明の第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置は、図6に示すように、複数のスリットをそれぞれ有するバッファ膜61aを有する点で第1実施形態に係る第2変形例と異なる。第3変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態の第2変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。なお、図6ではバッファ膜61の表面に形成されたスリットを説明するために封止部材30aの図示を省略しているが、実際には半導体装置は封止部材30a(図4参照)を備える。
【0044】
バッファ膜61aは、それぞれ封止部材30aに密着する表面において、流路13の長手方向に平行に形成された複数のスリットを有する。スリットは、バッファ膜61aの表面から内部まで彫り込まれた溝であってもよく、おもて面から裏面に貫通する溝であってもよい。バッファ膜61aは、複数のスリットによるアンカー効果により、封止部材30aとの密着性が向上する。
【0045】
図7は、プリンカップ試験により測定された、冷却器10bの第2主面12bに接合された平坦なバッファ膜61板及びスリットを有するバッファ膜61aのそれぞれから、封止部材30cが剥離するときのせん断強度の例を示す図である。なお、図7の例では、バッファ膜61aは、厚さ1.0mmのCuである。スリットは、おもて面から裏面に貫通し、幅0.5mm、ピッチ1.0mmで平行なパターンの溝である。スリットを有するバッファ膜61aは、平坦なバッファ膜61よりせん断強度が大きいため、樹脂に対する密着性が高い。
【0046】
第3実施形態の第3変形例に係る半導体装置によれば、バッファ膜61aと封止部材30aとの密着性が、平坦なバッファ膜61と封止部材30aとの密着性より高い。このため、封止部材30aは、バッファ膜61aを介して、より強固に冷却器10に接合されることができる。
【0047】
なお、バッファ膜61aのスリットのパターンは、流路13な平行なパターンに限るものでない。例えば、図8のバッファ膜61bのように、周縁の4辺からなる矩形に相似である複数の矩形状のスリットが中央に向かって繰り返されるように配置されたスリットのパターンであってもよい。
【0048】
−第4変形例−
本発明の第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置は、図9に示すように、封止部材30bがバッファ膜61の一部を露出する開口部31を有する点で第1実施形態の第2変形例と異なる。第2変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態の第2変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0049】
封止部材30bの開口部31は、図9の断面図では第2主面12を外部に露出せず、バッファ膜61の表面のみを外部に露出するように形成される。開口部31は、バッファ膜61の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成され得る。バッファ膜61の、流路13の配列方向における両端側の側壁面は、封止部材30aにより封止される。開口部31の端部311は、バッファ膜61の表面に位置する。このように、封止部材30は、第1主面11から第2主面に到達し、第2主面12の周辺部を覆う。
【0050】
このように、図9の断面図において、剥離の起点となり得る封止部材30bの端部311は、半導体素子20の発熱の影響を受けにくい第2主面12の周辺部に位置し、更にバッファ膜61の表面に位置する。そのため、熱膨張係数の差による封止部材30bの冷却器10からの剥離が抑制される。更に、封止部材30bは、バッファ膜61の半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出する開口部31を有することで、第2主面12側において半導体素子20の発熱の影響を受けにくい。よって、封止部材30bの第2主面12側における温度変化が低減されるため、熱膨張係数の差によって生じる熱応力が低減される。
【0051】
更に、第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置によれば、封止部材30bが、バッファ膜61の表面を露出する開口部31を有する。このため、開口部31から露出するバッファ膜61の表面は、冷却が必要な他の回路部品や素子を接合可能である。バッファ膜61は、冷媒となる流体を流す冷却器10に直接的に接合されている。このため、バッファ膜61の表面に、第2変形例に係る半導体装置の駆動により発熱し得る他の部品を接合することにより、系全体の冷却性能を更に向上することができる。
【0052】
−第5変形例−
本発明の第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置は、図10に示すように、バッファ膜61cが冷却器10の第2主面12の一部を露出する開口部63を更に有する点で第1実施形態の第4変形例と異なる。第1実施形態の第5変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第1実施形態の第4変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0053】
バッファ膜61cの開口部63は、平面パターンとして封止部材30bの開口部31に内包されるように形成される。即ち、開口部63は、バッファ膜61cの、開口部31により露出された領域の一部に形成される。開口部63は、第2主面12の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成される。即ち、バッファ膜61cは、第2主面12の中央部を除く周辺部に選択的に形成され得る。
【0054】
バッファ膜61cの、流路13の配列方向における両端側の側壁面は、封止部材30bにより覆われる。開口部31の端部311は、バッファ膜61cの表面に位置する。このように、封止部材30bは、第1主面11から2つの側面14を介して第2主面12に到達し、第2主面12の中央部を除く周辺部を覆う。
【0055】
第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置によれば、バッファ膜61cは、第2主面12の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出する開口部63を有する。このため、第1実施形態の第4変形例に比べて、第2主面12側においてバッファ膜61cは半導体素子20の発熱の影響を受けにくい。バッファ膜61cは、温度変化が低減されるため、熱膨張係数の差によって生じる熱応力が抑制され、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0056】
更に、バッファ膜61cの開口部63により露出された冷却器10の第2主面12には、冷却が必要な他の回路部品や素子を直接接合可能である。このことにより、系全体の冷却性能を更に向上することができる。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る半導体装置は、図11に示すように、半導体素子20の両主面にそれぞれ接合される第1冷却器10a及び第2冷却器10bを備える点で第1実施形態とは異なる。第2実施形態に係る半導体装置が半導体素子20と半導体素子20を封止する封止部材30cを備える点では、第1実施形態と共通である。ただし、後述するが図11に示すように、封止部材30cが半導体素子20を封止する態様は、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において説明しない他の構成、作用及び効果は、上述の第1実施形態と同様であり、重複するため省略する。
【0058】
第1冷却器10aは、セラミックスからなり、第1主面11a及び第1主面11aに対向する第2主面12aを有する。第1冷却器10aは、例えば矩形平板状である。第1冷却器10aは、第1主面11a及び第2主面12aの間に位置する複数の第1流路13aを有する。複数の第1流路13aは、図11の紙面に垂直方向にそれぞれ延伸し、延伸方向に沿った両端面においてそれぞれ開口する。第1冷却器10aは、複数の第1流路13aの配列方向(図11の左右方向)における両端面に、互いに対向する2つの側面14aを有する。複数の第1流路13aは、第1主面11に平行な方向に1列に配列される。
【0059】
第2冷却器10bは、セラミックスからなり、第1主面11aに平行に対向する第3主面11b及び第3主面11bに対向する第4主面12bを有する。第2冷却器10bは、例えば矩形平板状である。第2冷却器10bは、第3主面11b及び第4主面12bの間に位置する複数の第2流路13bを有する。複数の第2流路13bは、図11の紙面に垂直方向にそれぞれ延伸し、延伸方向に沿った両端面においてそれぞれ開口する。第2冷却器10bは、複数の第2流路13bの配列方向(図11の左右方向)における両端面に、互いに対向する2つの側面14bを有する。複数の第2流路13bは、第1流路13aの配列方向に1列に配列される。
【0060】
第1冷却器10a及び第2冷却器10bの材料となるセラミックスは、SiC、Si34、AlN、Al23、TiO2、ZrO2等から任意に選択可能である。
【0061】
第2実施形態に係る半導体装置において、素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43のそれぞれは、第1主面に接合された配線回路を構成する第1導電性パターン層である。第1端子パターン層42の上面には、接合材24により、第1主端子55の一端側が接合されている。第1主端子55の他端側は、封止部材30cから外部に露出している。第2端子パターン層43の上面には、接合材25により、第2主端子56の一端側が接合されている。第2主端子の他端側は、封止部材30cから外部に露出している。第1主端子55及び第2主端子56は、それぞれ、例えばCuや銅合金等の金属からなる導体板又は導体棒である。また、第1主端子55及び第2主端子56は、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。接合材24,25は、例えば、はんだ、導電性接着剤、Agナノ粒子等の金属焼結体が採用可能である。
【0062】
図11に示す例では、第2冷却器10bの第3主面11bには、複数の第2導電性パターン層45,46が接合される。第2導電性パターン層45,46は、素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43と同様に、例えばCuからなり、共晶接合によるDCB法、AMB法等により、第2冷却器10bに接合される。第2導電性パターン層45,46は、導電性の金属であればよく、Cuの他に、銅合金であってもよく、Alやアルミニウム合金から構成されてもよい。また、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。
【0063】
例えば、第2導電性パターン層45の一端側は、接合材23により半導体素子20の制御電極に接合され、第2導電性パターン層45の他端側は、図示を省略した制御端子に接合される。第2導電性パターン層46の一端側は、接合材22により半導体素子20の第1主電極に接続され、第2導電性パターン層46の他端側は、第1主端子55に電気的に接続される。
【0064】
このように、半導体素子20の上面は、接合材22,23及び第2導電性パターン層45,46を介して第2冷却器10bの第3主面11bに接合されている。又、半導体素子20の下面は、接合材21及び素子パターン層41を介して第1冷却器10aの第1主面11aに接合される。第3実施形態に係る半導体装置は、半導体素子20から発生した熱が両主面側に配置された第1冷却器10a及び第2冷却器10bをそれぞれ流れる冷媒により放熱されるため冷却性能が高い。
【0065】
封止部材30aは、半導体素子20、第1導電性パターン層及び第2導電性パターン層45,46を封止する。更に、図11のように、封止部材30cは、第1流路13a及び第2流路13bの長手方向に直交する断面において、第1主面11aと、2つの側面14aそれぞれの少なくとも一部との、第1冷却器10aの表面の連続する領域を覆う。同様に、封止部材30cは、第3主面11bと、2つの側面14bそれぞれの少なくとも一部との、第2冷却器10bの表面の連続する領域を覆う。
【0066】
封止部材30cは、図11の紙面に垂直方向となる側に位置する側面を除く範囲に設けられる。図11の紙面に垂直方向において、第1流路13a及び第2流路13bに冷媒となる流体を流すためのマニホールドが、第1冷却器10a及び第2冷却器10bに接続される。
【0067】
封止部材30cは、熱硬化型の樹脂と充填剤(フィラー)とからなる。熱硬化型の樹脂は、例えば、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂を主成分とする樹脂からなる。フィラーは、例えば、シリカ等の絶縁性の無機材料粉末からなる。封止部材30cは、例えば、樹脂に対するフィラーの添加量が調整されることにより、熱膨張係数が調整される。フィラーの添加量を多くすることで、熱膨張係数を小さくすることができる。しかし、フィラーの添加量が多すぎると、絶縁性が低下したり、機械的に脆くなるため好ましくない。封止部材30cの熱膨張係数は、例えば、13×10-6〜30×10-6(/K)に調整できる。しかしながら、これらの値はセラミックスの熱膨張係数より大きい。なお、封止部材の熱膨張係数は、20℃〜200℃におけるJISK7197に基づいて測定した値である。
【0068】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、封止部材30cが、第1冷却器10aの第1主面11aと2つの側面14aの少なくとも各一部を覆い、第2冷却器10bの第3主面11bと2つの側面14bの少なくとも各一部を覆う。これにより、封止部材30cは、第1主面11a及び第3主面11bのみを覆う場合に生じ得る、セラミックスとの熱膨張係数の差によるモジュール全体の反り変形、及び反り応力による剥離やクラックが抑制される。また、2つの側面14a及び2つの側面14bのそれぞれは、半導体素子20から離れた箇所に位置するため半導体素子20の発熱による影響を受けにくく、温度変化が少ない。そのため、剥離やクラックの起点となり得る封止部材30cの各端部を、2つの側面14a及び2つの側面14bに配置することで、熱膨張係数の差によって生じ得る剥離やクラックが抑制される。
【0069】
−第1変形例−
本発明の第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置は、図12に示すように、封止部材30dが第2主面12a及び第4主面12bに到達するように配置される点で上述の第2実施形態と異なる。以下の変形例において説明しない構成、作用及び効果は、上述の第1及び第2実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0070】
図12において、封止部材30dは、第1冷却器10aの第1主面11a、2つの側面14a及び第2主面12aを覆う。同様に、封止部材30dは、第2冷却器10bの第3主面11b、2つの側面14b及び第3主面12bを覆う。即ち、封止部材30dは、第1流路13a及び第2流路13bの長手方向に直交する断面において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの外周面を取り囲むように配置される。封止部材30dは、第1冷却器10aの第2主面12a及び第2冷却器10bの第4主面12bそれぞれに対向する2側面を有する直方体状に形成される。
【0071】
第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、封止部材30dは、流路13の長手方向に直交する断面において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bを取り囲むように覆う。よって、封止部材30dは、流路13の長手方向に直交する断面において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの周囲で途切れる場所がなく、剥離の起点となり得る端部が存在しない。このため第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、熱膨張係数の差による第1冷却器10a及び第2冷却器10bからの剥離やクラックが抑制される。
【0072】
更に、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、封止部材30dは第1流路13a、第2流路13bの長手方向に直交する断面において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの周囲を取り囲むように覆う。このため、封止部材30dは、第1冷却器10a及び第2冷却器10bから一部剥離した場合であっても、第1冷却器10a及び第2冷却器10bに対する相対的な位置が維持される。したがって第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、破損、反りによる絶縁不良、導通不良等の不具合を低減することができる。
【0073】
以下、図13図16を参照して、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0074】
先ず、図12に示したのと同様に、第1冷却器10aの第1主面11aに素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43等の回路パターンを構成する第1導電性パターン層を形成する。又、第2冷却器10bの第3主面11bに第2導電性パターン層45,46等の回路パターンを構成する導電性パターン層を形成する。
【0075】
次に、図13に示すように、第1冷却器10aの素子パターン層41上に半導体素子20を搭載し、接合材21(不図示)により第2主電極が位置する半導体素子20の下面を接合する。更に、半導体素子20の上面に接合材22(不図示)及び接合材23(不図示)を配置する。また、図12に示したのと同様に、第1端子パターン層42の上面に、接合材24(不図示)により第1主端子55を接合し、第2端子パターン層43の上面に接合材25(不図示)により第2主端子56を接合する。なお、図13では、素子パターン層41及び第1端子パターン層42が連結される様子が示されるが、例示であり、各回路パターンを構成する導電性パターン層は、素子や回路の種類に応じて適宜設計され得る。
【0076】
次に、図14に示すように、第1主面11a上の第1導電性パターン層及び第3主面11b上の第2導電性パターン層が互いに対応するように、第1冷却器10a及び第2冷却器10bを正対させて重ね合わせる。この結果、半導体素子20(不図示)は、両主面を第1冷却器10aの第1主面11aと第2冷却器10bの第3主面11bの間に挟まれる。そして、半導体素子20(不図示)の上面に位置する電極は、接合材22(不図示)及び接合材23(不図示)を介して、第2導電性パターン層46(不図示)及び第2導電性パターン層45(不図示)にそれぞれ接合される。第1主端子55及び第2主端子56等の端子は、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの、第1流路13a及び第2流路13bの配列方向に沿った両端から、外側方向に突出するように配置される。
【0077】
次に、図15に示すように、互いに接合された第1冷却器10a及び第2冷却器10bを金型に配置する。そして、この金型に硬化前の封止部材30dを成形することにより、各第1流路13a及び第2流路13bの両端側を除いて、第1冷却器10a及び第2冷却器10bを覆う封止部材30dを形成する。封止部材30dの形成により、第1流路13a、第2流路13b、第1主端子55及び第2主端子56等の端子の先端部が、封止部材30dの表面から突出して外部に露出される。
【0078】
このように製造された半導体装置は、図16に示すように、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの各第1流路13a(不図示)及び第2流路13b(不図示)の両端側に、マニホールド71,72がそれぞれ接続される。これにより、それぞれ複数の第1流路13a及び第2流路13bの各両端の開口は、外部の循環系に接続され、複数の第1流路13a及び第2流路13bの内部において同一方向に冷媒となる流体が流される。
【0079】
−第2変形例−
本発明の第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置は、図17に示すように、第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62を備える点で図12等に示した第2実施形態の第1変形例と異なる。第1バッファ膜61は第1冷却器10aの第2主面12aに接合され、第2バッファ膜62は第2冷却器10bの第4主面12bに接合されている。なお、以下の変形例において説明しない構成、作用及び効果は、上述の第1〜第3実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0080】
第1バッファ膜61は、第1流路13aの配列方向における一端側から他端側までの範囲において第2主面12aに配置され、第2主面12aと封止部材30dとの間を接合する。第2バッファ膜62は、第2流路13bの配列方向における一端側から他端側までの範囲において第4主面12bに配置され、第4主面12bと封止部材30dとの間を接合する。
【0081】
図17に示す例においては、第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62は、それぞれ1つであるが、それぞれ複数に分割されていてもよい。また、第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62の厚さは、好ましくは、0.1mm以上、5.0mm以下、より好ましくは、0.2mm以上、2.5mm以下である。
【0082】
第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62は、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの材料であるセラミックスより大きい熱膨張係数を有する金属からなる。より好ましくは、第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62の熱膨張係数は、13×10-6〜25×10-6(/K)である。第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62は、例えば、Cuや銅合金からなり、共晶接合によるDCB法、AMB法等により、第2主面12a及び第4主面12bに接合される。第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62は、素子パターン層41、第1端子パターン層42及び第2端子パターン層43、及び第2導電性パターン層45,46と同一の材料から形成可能である。第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62は、Cuや銅合金の他、AlやAl合金、NiやNi合金、ステンレス鋼等であってもよい。また、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。
【0083】
第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置によれば、第1バッファ膜61と封止部材30dの樹脂との密着性が、第1冷却器10aのセラミックスと封止部材30dの樹脂との密着性より高い。同様に、第2バッファ膜62と封止部材30dの樹脂との密着性が、第2冷却器10bのセラミックスと封止部材30dの樹脂との密着性より高い。このため、封止部材30dは、第1バッファ膜61及び第2バッファ膜を介して、より強固に第1冷却器10a及び第2冷却器10bに接合されることができる。
【0084】
更に、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置によれば、第1冷却器10aより大きい熱膨張係数を有する第1バッファ膜61が第1冷却器10aの第2主面12aに配置される。このため、第1バッファ膜61は、第1冷却器10aの第2主面12a及び封止部材30dの界面に作用する、第1冷却器10aと封止部材30dとの熱膨張率の差による熱応力を低減することができる。
【0085】
同様に第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置によれば、第2冷却器10bより大きい熱膨張係数を有する第2バッファ膜62が第2冷却器10bの第4主面12bに配置される。このため第2バッファ膜62は、第2冷却器10bの第4主面12b及び封止部材30dの界面に作用する、第2冷却器10bと封止部材30dとの熱膨張率の差による熱応力を低減することができる。
【0086】
−第3変形例−
本発明の第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置は、図18に示すように、複数のスリットをそれぞれ有する第1バッファ膜(図示省略)及び第2バッファ膜62aを備える点で第2実施形態の第2変形例と異なる。第2バッファ膜62aは第2冷却器10bの第4主面12bに配置されているので図示されているが、第1バッファ膜は第1冷却器10aの第2主面12aに配置されているので図18では見えない。第2実施形態の第3変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第2実施形態の第2変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0087】
図18では、第2バッファ膜62aの表面に形成されたスリットを説明するために、封止部材30dの表示を省略しているが、実際には半導体装置は封止部材30d(図17参照)を備える。また、図18において、第1バッファ膜が図示されていないが、第1バッファ膜の構造は、第2バッファ膜62aと同様であるため、図示を省略する。
【0088】
第1バッファ膜及び第2バッファ膜62aは、それぞれ封止部材30dに密着する表面において、第1流路13a及び第2流路13bの長手方向に平行に形成された複数のスリットを有する。スリットは、第1バッファ膜、第2バッファ膜62aの表面から内部まで彫り込まれた溝であってもよく、おもて面から裏面に貫通する溝であってもよい。第1バッファ膜及び第2バッファ膜62のそれぞれは、複数のスリットによるアンカー効果により、封止部材30dとの密着性が向上する。
【0089】
第3実施形態の第2変形例に係る半導体装置によれば、第1バッファ膜及び第2バッファ膜62aと封止部材30dとの密着性が、平坦なバッファ膜と封止部材30dとの密着性より高い。このため、封止部材30dは、第1バッファ膜及び第2バッファ膜62aを介して、より強固に第1冷却器10a及び第2冷却器10bに接合されることができる。
【0090】
なお、第1バッファ膜及び第2バッファ膜62aのスリットのパターンは、第1流路13a及び第2流路13bな平行なパターンに限るものでない。例えば、図19の第2バッファ膜62bのように、周縁の4辺からなる矩形に相似である複数の矩形状のスリットが中央に向かって繰り返されるように配置されたスリットのパターンであってもよい。
【0091】
−第4変形例−
本発明の第2実施形態の第4変形例に係る半導体装置は、図20に示すように、封止部材30eが下面において第1バッファ膜61を露出する第1開口部31aを有する点で図17の第2変形例と異なる。又、封止部材30eは上面で第2バッファ膜62を露出するように形成された第2開口部31bを有する点でも第2変形例と異なる。第4変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第2実施形態の第2変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0092】
第1開口部31aは、第2主面12aを外部に露出せず、第1バッファ膜61の表面のみを外部に露出するように配置される。第1開口部31aは、第1バッファ膜61の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成され得る。第1バッファ膜61の、第1流路13aの配列方向に沿った両端側は、封止部材30dにより封止される。第1開口部31aの端部311aは、第1バッファ膜61の表面に位置する。このように、封止部材30eは、第1主面11aから第2主面12aに到達し、第2主面12aの周辺部を覆う。
【0093】
同様に、第2開口部31bは、第4主面12bを外部に露出せず、第2バッファ膜62の表面のみを外部に露出するように配置される。第2開口部31bは、第2バッファ膜62の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成され得る。第2バッファ膜62の、第2流路13bの配列方向に沿った両端は、封止部材30dにより封止される。第2開口部31bの端部311bは、第2バッファ膜62の表面に位置する。このように、封止部材30eは、第3主面11bから第4主面12bに到達し、第4主面12bの周辺部を覆う。
【0094】
このように、剥離の起点となり得る第1開口部31aの端部311aが、第1バッファ膜61の表面上において、半導体素子20の発熱の影響を受けにくい第2主面12aの周辺部に位置する。同様に、第2開口部31bの端部311bが、第2バッファ膜62の表面上において、第4主面12bの周辺部に位置する。このため、封止部材30eは、第1冷却器10a及び第2冷却器10bとの熱膨張係数の差による剥離が抑制される。更に、封止部材30eは、第1開口部31a及び第2開口部31bを有することで、半導体素子20の発熱の影響を受けにくい。よって、封止部材30eは、温度変化が低減されるため、熱膨張係数の差によって生じる熱応力が低減され、剥離が抑制される。
【0095】
また、封止部材30dは、第1バッファ膜61の表面を露出する第1開口部31aと、第2バッファ膜62の表面を露出する第2開口部31bとを有する。このため、露出された第1バッファ膜61及び第2バッファ膜62の表面は、冷却が必要な他の回路部品や素子を接合可能である。したがって第1バッファ膜61は、冷媒となる流体を流す第1冷却器10aに直接的に接合されるため、熱を発する他の部品が接合されることにより、系全体の冷却性能を更に向上することができる。同様に、第2バッファ膜62は、冷媒となる流体を流す第2冷却器10bに直接的に接合されるため、熱を発する他の部品が接合されることにより、系全体の冷却性能を更に向上することができる。
【0096】
−第5変形例−
本発明の第2実施形態の第5変形例に係る半導体装置は、図21に示すように、第1バッファ膜61cが第1冷却器10aの第2主面12aの一部を露出する開口部63を更に有する点で第2実施形態の第4変形例と異なる。また、第2バッファ膜62cが第2冷却器10bの第4主面12bの一部を露出する開口部64を有する点でも第4変形例と異なる。第5変形例において説明しない構成、作用及び効果は、第2実施形態の第4変形例と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0097】
第1バッファ膜61cの開口部63は、平面パターンとして封止部材30eのdai1開口部31aに内包されるように形成される。即ち、開口部63は、第1バッファ膜61cの、第1開口部31aにより露出された領域の一部に形成される。開口部63は、第2主面12の、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成される。即ち、第1バッファ膜61cは、第2主面12の中央部を除く周辺部に選択的に形成され得る。第1バッファ膜61cの、第1流路13aの配列方向における両端側の側壁面は、封止部材30eにより覆われる。第1開口部31aの端部311aは、第1バッファ膜61cの表面に位置する。このように、封止部材30eは、第1主面11aから2つの側面14aを介して第2主面12aに到達し、第2主面12aの中央部を除く周辺部を覆う。
【0098】
同様に、第2バッファ膜62cの開口部64は、平面パターンとして封止部材30eの第2開口部31bに内包されるように形成される。即ち、開口部64は、第2バッファ膜62cの、第2開口部31bにより露出された領域の一部に形成される。開口部64は、第4主面12bの、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出するように形成される。即ち、第2バッファ膜62cは、第4主面12bの中央部を除く周辺部に選択的に形成され得る。第2バッファ膜62cの、第2流路13bの配列方向における両端側の側壁面は、封止部材30eにより覆われる。第2開口部31bの端部311bは、第2バッファ膜62cの表面に位置する。このように、封止部材30eは、第3主面11bから2つの側面14bを介して第4主面12bに到達し、第4主面12bの中央部を除く周辺部を覆う。
【0099】
第2実施形態の第5変形例に係る半導体装置によれば、第1バッファ膜61cは、第2主面12aの、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出する開口部63を有する。また、第2バッファ膜62cは、第4主面12bの、平面パターンとして半導体素子20に対応する領域を少なくとも露出する開口部64を有する。このため、第1バッファ膜61c及び第2バッファ膜62cは、第2実施形態の第4変形例に比べて、半導体素子20の発熱の影響を受けにくい。第1バッファ膜61c及び第2バッファ膜62cは、温度変化が低減されるため、熱膨張係数の差によって生じる熱応力が抑制され、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0100】
更に、第2実施形態の第5変形例に係る半導体装置によれば、開口部63により露出された第2主面12a及び開口部64により露出された第4主面12bには、冷却が必要な他の回路部品や素子を直接接合可能である。このことにより、系全体の冷却性能を更に向上することができる。
【0101】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の第1及び第2の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0102】
例えば、第1及び第2実施形態において、半導体装置は、冷却器の複数の流路にそれぞれ貫通するように埋め込まれた複数の金属管を備えるようにしてもよい。例えば、図22及び図23に示すように、第1冷却器10aの複数の第1流路13aのそれぞれを貫通する複数の第1金属管15を備えるように構成できる。同様に図17及び図18に示すように、第2冷却器10bの複数の第2流路13bをそれぞれ貫通する複数の第2金属管16を備えることができる。
【0103】
第1金属管15及び第2金属管16は、Cu等の金属からなる。複数の第1金属管15は、それぞれ複数の第1流路13aの各両端から突出するように配置される。複数の第1金属管15の各両端側は、第1冷却器10aの各第1流路13aから露出される。複数の第2金属管16は、それぞれ複数の第2流路13bの各両端から突出するように配置される。複数の第2金属管16の各両端側は、第2冷却器10bの各第2流路13bから露出される。
【0104】
複数の第1金属管15は、例えば、一列に配列された状態で金型に配置され、セラミックスの材料を金型に充填されて成形される際に焼成されることにより第1流路13aに埋め込むことができる。第2金属管16も同様に焼成により第2流路13bに埋め込むことができる。第1金属管15及び第2金属管16は、第1流路13a及び第2流路13bの内部において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bと強固に接合される。
【0105】
封止部材30fは、第1流路13a及び第2流路13bの長手方向に直交する断面において、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの外周面を封止するように配置される。更に、封止部材30fは、第1冷却器10a及び第2冷却器10bの、第1流路13a及び第2流路13bの長手方向における両端側に位置する各端面を封止する。封止部材30fは、第1金属管15及び第2金属管16の、第1冷却器10a及び第2冷却器10bから露出された両端側において、各先端側を露出するように各根元側を封止する。
【0106】
このように、セラミックスより密着性の高い金属からなる第1金属管および第2金属管と封止部材30fとを接合させることにより、封止部材30fは、第1冷却器10a及び第2冷却器10bとの界面を完全に封止することができる。よって、熱膨張係数の差による第1冷却器10a及び第2冷却器10bからの剥離を更に抑制することができる。
【0107】
また、第3実施形態において、図24に示すように、第2冷却器10bの第3主面11bから第4主面12bに貫通する、例えば円柱状の導電性ピンである制御端子57を備えるようにしてもよい。制御端子57は、例えば、第3主面11bにおいて第2導電性パターン層45に接合されることにより、半導体素子20の制御電極に電気的に接続される。制御端子57は、封止部材30cの上面から上方に突出する。制御端子57は、例えば、CuやCu合金等の金属からなる。第1主端子52及び制御端子53は、円柱状に限るものでなく、多角柱状であってもよい。制御端子57は、表面にNiやAu等のめっきが施されてもよい。
【0108】
その他、上記の第1〜第4の実施形態において説明される各構成を任意に応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0109】
10,10a,10b 冷却器
11,11a 第1主面
11b 第3主面
12,12a 第2主面
12b 第4主面
13,13a,13b 流路
20 半導体素子
21,22,23,24,25 接合材
30,30a,30b,30c,30d,30e,30f 封止部材
31,31a,31b 開口部
61,62,62a,62b バッファ膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24