(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態の概要>
図1を参照しながら、車両Vに搭載された車両用情報処理装置による運転支援の概要を説明する。
図1は、車両用情報処理装置の動作の概要を説明するための図である。
図1においては、車両Vが高速道路を走行中であることを想定している。車両用情報処理装置は、車両Vを運転するドライバの操舵を補助するための装置である。車両用情報処理装置は、走行中の車線を維持して車両Vが走行するように、車両Vのステアリング機構を動作させる。
【0013】
車両用情報処理装置は、車両Vが走行中の車線を逸脱しそうになると、走行中の車線を維持するようにステアリング機構を動作させる。
図1においては、車両Vが実線矢印で示すように、操舵角φで走行中の車線の左側に向かって移動していることを想定している。車両用情報処理装置は、破線矢印で示すように車両Vの進行方向右側、すなわち
図1においては道路の中央に向かうようにステアリング機構を動作させる。
【0014】
例えば、車両用情報処理装置は、車両Vの操舵角が、現在の操舵角φから、車線を維持するために必要な必要操舵角θになるように、ステアリング機構を動作させる。具体的には、車両用情報処理装置は、車両Vの操舵角が操舵角θになるように車両Vのステアリングシャフトに取り付けられたモーターを回転させる。このようにすることで、車両用情報処理装置は、走行中の車線を維持するように車両Vを移動させることができる。
【0015】
図2を参照しながら、運転支援装置がステアリング機構を動作させたときの、車線を維持するために必要な必要操舵角θと、実際に検出された現操舵角φ’との関係を説明する。
図2は、車線維持に必要な必要操舵角θと、検出された現操舵角φ’との関係を説明するための図である。
【0016】
図2(a)は、ドライバが正常な状態で運転をしていることを想定した模式図である。
図2(a)において、ドライバはステアリングホイールを握り正面を向いて、車両Vを運転している。
図2(b)は、ドライバが正常な状態で運転しているときに、車線維持に必要な必要操舵角と、検出された現操舵角との関係を模式的に示す図である。
図2(b)において、横軸は時刻tを示し、縦軸は操舵角を示す。操舵角は、車両Vが直進しているときを0度とし、回頭している方向を正、回頭している方向とは逆を負とする。例えば、操舵角は、車両Vが右に回頭している場合、右周りの角度を正、左回りの角度を負とする。逆に、操舵角は、車両Vが左に回頭している場合、左周りの角度を正、右回りの角度を負とする。
【0017】
図2(b)において、実線d1は車線維持に必要な必要操舵角θをプロットしたグラフ、破線d2は、実際に検出された現操舵角φ’をプロットしたグラフである。ドライバが正常な状態で運転をしている場合、実線d1と破線d2とは、おおむね一致するように推移する。
【0018】
図2(c)は、ドライバが車両Vを運転することが困難な異常状態であることを想定した模式図である。
図2(c)において、ドライバはステアリングホイールから手を離し、ステアリングホイールに覆いかぶさるように倒れ、運転が困難な状態である。
図2(d)は、ドライバが異常状態であるときに、車線維持に必要な必要操舵角θと、検出された現操舵角φ’との関係を模式的に示す図である。
【0019】
図2(d)において、実線d1は車線維持に必要な必要操舵角θをプロットしたグラフ、破線d3は、実際に検出された現操舵角φ’をプロットしたグラフである。ドライバが異常状態である場合、実線d1と破線d3とは一致しない。ドライバがステアリングホイールに覆いかぶさるように倒れていると、車両用情報処理装置はステアリング機構を動作させることができないので、実際に検出された現操舵角φ’は、車線維持に必要な必要操舵角θが変化しても変化せず、概ね一定の値をとる。
【0020】
車両用情報処理装置は、車線維持に必要な必要操舵角θと、実際に検出された現操舵角φ’との差の絶対値が所定の変位閾値より大きい場合、車両Vの操舵角を車線維持に必要な必要操舵角θにすることができない異常状態であると判定する。所定の変位閾値は、車両Vの製造者が、異常状態であることを誤認しないために必要な余地、又は測定誤差等を用いて実験によって定めればよい。
【0021】
車両用情報処理装置は、異常状態であると判定すると、異常状態であることを示す状態情報をドライバに通知する。車両用情報処理装置は、異常状態と判定してから所定時間経過後に、状態情報をドライバに通知してもよい。
【0022】
所定時間は、車両用情報処理装置がドライバの状態を誤判定しないために必要な時間である。必要な時間は、車両Vの製造者が実験によって求めればよいが、車両用情報処理装置が、車両Vの操舵角と、速度と、走行中の車線の幅とに基づいて決定してもよい。例えば、車両用情報処理装置は、車両Vの側面と、車両Vが走行する車線の車道外側線との距離、及び車両Vの操舵角を用いて直角三角形を構成し、速度vで走行したときに車線を逸脱してしまうまでに係る時間を所定時間として特定する。所定時間の具体的な値は、例えば車幅2mの車両Vが、幅3.5mの高速道路の走行車線を走行中であって、車両Vの左前輪から車道外側線までの距離が1mである場合、時速72kmで、左に角度1度で回頭するように走行しているときに、およそ3秒である。
【0023】
また、必要な時間は、車両用情報処理装置が、車両Vに搭載されたカメラが撮像した撮像画像を解析することにより特定した車両Vの車線に対する傾き角を用いて決定してもよい。具体的には、車両用情報処理装置は、車両Vの車線に対する傾き角、及び車両Vの側面と車両Vが走行する車線の車道外側線との距離を用いて直角三角形を構成し、速度vで走行したときに車線を逸脱してしまうまでに係る時間を所定時間として特定してもよい。
【0024】
なお、車両用情報処理装置は、車両Vが異常状態であると判定したときに、車両Vが走行中の車線を逸脱してしまった場合、所定時間経過後でなくても状態情報をドライバに通知してもよい。車両用情報処理装置は、例えばスピーカーから音声を出力する、又は表示画面に表示画像を表示することにより、ドライバに状態情報を通知する。
【0025】
車両用情報処理装置は、状態情報を通知してから所定の待機時間が経過しても異常状態が継続する場合、車両Vのドライバが車両Vを運転することが困難な状態であるとみなして、状態情報を車両Vの各種装置に通知してもよい。例えば、車両用情報処理装置は、車両Vの速度を制御する速度制御装置に状態情報を通知する。速度制御装置は、状態情報の通知を受けると、車両Vの速度を減速する。このようにすることで、車両Vの安全性を高めることができる。
【0026】
このように、車両用情報処理装置は、車線維持に必要な操舵角より実際に検出された操舵角が小さい場合に異常状態であると判定する。このようにすることで、車両用情報処理装置は、ドライバが運転困難な状態と、足元に落ちた物を取っている状態又はシートの位置を調整している状態等とを混同することを低減できる。
【0027】
<実施の形態に係る車両用情報処理装置5の機能構成>
以下、
図3を参照しながら実施の形態に係る車両Vの概略、及び車両Vに搭載される車両用情報処理装置5の機能構成について説明する。
図3は、実施の形態に係る車両用情報処理装置5の機能構成を示す図である。実施の形態に係る車両用情報処理装置5は、バスやトラック等の大型の車両Vに好適に用いられるが、これに限定されるものではない。本実施の形態においては、車両Vがバスやトラック等の大型の車両Vであるものとして説明する。車両Vは、カメラ1と、車速センサ2と、ステアリング機構3と、操舵輪4と、車両用情報処理装置5とを備える。
【0028】
カメラ1は、車両Vの前方を撮像することにより撮像画像を生成し、撮像画像を車両用情報処理装置5に送信する。車速センサ2は、車両Vの速度を検出し、車両用情報処理装置5に送信する。
【0029】
ステアリング機構3は、ステアリングホイール30と、モーター31と、角度センサ32と、トルクセンサ33と、ステアリングシャフト34と、スタブシャフト35と、パワーシリンダ部36とを備える。ステアリングホイール30は、ドライバが車両Vの操舵角を操作するためのステアリングホイールである。モーター31は、ステアリングシャフト34に取り付けられ、回転駆動することにより、ステアリングシャフト34にアシストトルク(操舵補助力)を付与して運転者の操舵操作を補助する。
【0030】
角度センサ32は、ステアリングシャフト34に設けられており、ステアリングシャフト34の回転量を検出し、当該回転量に基づいて操舵角θを検出する。角度センサ32は、検出した操舵角θを車両用情報処理装置5に送信する。トルクセンサ33は、ステアリングシャフト34に取り付けられており、ステアリングシャフト34にかかる操舵トルクを検出する。トルクセンサ33は、検出した操舵トルクを車両用情報処理装置5に送信する。
【0031】
ステアリングシャフト34は、一端がステアリングホイール30に接続されているとともに、他端がスタブシャフト35に接続されている。スタブシャフト35は、一端がステアリングシャフト34に接続されているとともに、他端がパワーシリンダ部36の入力軸に接続されている。ステアリングシャフト34及びスタブシャフト35は、ステアリングホイール30に付与された操舵トルクをパワーシリンダ部36に伝達する。パワーシリンダ部36は、油圧ポンプが吐出する作動油を利用して操舵アシスト力を加えて、ステアリングホイール30に付与された操舵トルクを操舵輪4に伝達する。
【0032】
車両用情報処理装置5は、記憶部51と、制御部52と、音声出力部53と、表示部54とを備える。記憶部51は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)である。記憶部51は、制御部52を機能させるための各種のプログラムを格納する。
【0033】
制御部52は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部52は、記憶部51に記憶されているプログラムを実行することによって、検出部521、操舵補助部522、及び通知部523の機能を実現する。
【0034】
検出部521は、車両Vの各種情報を検出する。例えば、検出部521は、ステアリング機構3が動作するときに、ステアリング機構3を構成する部品の変化に伴って変化する物理量を検出する。物理量は、例えば部品の変位である。具体的には、検出部521は、ステアリング機構3を構成する部品の変位を検出する。例えば、検出部521は、角度センサ32が検出した操舵角θを取得することによりステアリングシャフト34の角度の変位を検出する。例えば、検出部521は、図示しないリレーロッドの移動量を検出する。
【0035】
物理量は、部品にかかる力であってもよい。具体的には、検出部521は、ステアリング機構を構成する部品にかかる力を検出する。例えば、検出部521は、トルクセンサ33が検出したステアリングシャフト34にかかる操舵トルクを取得することにより、ステアリングシャフト34にかかる力を検出する。検出部521は、パワーシリンダ部36にかかる力を検出してもよい。
【0036】
検出部521は、車両Vの外部環境を検出してもよい。例えば、検出部521は、車両Vが走行中の車線を検出する。具体的には、検出部521は、カメラ1が撮像した撮像画像に車道外側線のモデルを当てはめることにより車道外側線を検出し、検出した車道外側線を用いて走行中の車線を検出する。検出部521は、これに限らず、既知の画像解析技術を用いて車両Vが走行中の車線を検出してもよい。検出部521は、車両Vの各種情報と、車両Vの外部環境とを操舵補助部522に通知する。具体的には、検出部521は、部品の変位と、部品にかかる力と、走行中の車線とを操舵補助部522に通知する。
【0037】
操舵補助部522は、車両Vを運転するドライバの操舵を補助するために、車両Vが走行中の車線を維持するようにステアリング機構3を動作させる。具体的には、操舵補助部522は、検出部521が検出した車両Vが走行中の車線及び操舵角θを用いて、車両Vが車線を逸脱する可能性があるか否かを判定する。操舵補助部522は、車両Vが車線を逸脱する可能性があると判定すると、車両Vが車線を逸脱する可能性があることを示す警報情報を通知部523に通知する。操舵補助部522は、警報情報を通知した後、ドライバからステアリングホイール30の操作などの入力がないと判定すると、車線を維持するためにステアリング機構3を動作させる動作指示を生成する。操舵補助部522は、動作指示に基づいて動作するようにステアリング機構3を制御する。
【0038】
動作指示は、例えば車線を維持するために必要なステアリング機構3の変位である目標変位を含む。目標変位は、例えば現在の操舵角θから、車線を維持するための目標操舵角にするために必要なステアリングシャフト34の回転角である。目標変位は、例えば現在の操舵角θから、車線を維持するための目標操舵角にするために必要なリレーロッドの移動量である。また、必要なステアリング機構3の変位は、車両Vが乗用車でありラック&ピニオン式のステアリングシステムであれば、ピニオンギアの回転角、又はラックの移動量であってもよい。
【0039】
動作指示は、例えば車線を維持するためにステアリング機構3が動作したときに部品にかかることが想定される力の大きさを含んでもよい。部品にかかることが想定される力の大きさは、車両Vの製造者が予め実験によって定めればよい。なお、部品にかかる力の大きさは、例えば、ステアリングシャフト34にかかる操舵トルクの絶対値、パワーシリンダ部36にかかる力である。
【0040】
操舵補助部522がステアリング機構3を動作させる具体的な方法について説明する。例えば、操舵補助部522は、検出部521が検出した部品の変位に基づいて、モーター31を回転させることによりステアリング機構3を動作させる。具体的には、操舵補助部522は、必要な回転角を得られるようにモーター31を回転させる。より具体的には、操舵補助部522は、モーター31に入力する電圧と、電圧を入力する時間とを制御する。
【0041】
なお、本実施の形態においては、操舵補助部522は、ステアリングシャフト34に取り付けられたモーター31を回転させることにより、ステアリング機構3を動作させたが、操舵補助部522が制御する対象はこれに限らない。例えば、操舵補助部522は、パワーシリンダ部36に作動油を供給する油圧ポンプを制御してもよい。例えば、車両Vが乗用車でありラック&ピニオン式のステアリングシステムであれば、操舵補助部522は、ステアリングコラム、ピニオンギア、又はラックに取り付けられたモーターを回転させることによりステアリング機構3を動作させてもよい。
【0042】
操舵補助部522は、検出部521が検出した変位と、操舵補助部522が検出した力の大きさと、目標変位を通知部523に通知する。
【0043】
通知部523は、ドライバが車両Vの運転が困難な異常状態であることを示す状態情報を通知する。例えば、通知部523は、操舵補助部522が車線を維持するための動作指示に基づいてステアリング機構3を動作させたときに、検出部521が検出した物理量が、動作指示により定まる基準領域外である場合に状態情報を通知する。具体的には、通知部523は、検出部521が検出した変位と、車線を維持するために必要な変位である目標変位との差の絶対値が、所定の変位閾値より大きい場合に状態情報を通知する。より具体的には、通知部523は、車線を維持するために必要な必要操舵角θと、検出部521が検出した現在の操舵角である現操舵角φ’との差の絶対値が、所定の変位閾値より大きい場合に、ステアリング機構3を動作させることができない異常状態であることを示す状態情報を通知する。
【0044】
所定の変位閾値は、ステアリング機構3を動作させることができない異常状態であることを誤判定しないために必要な余地を考慮して車両Vの製造者が定めればよい。また、所定の変位閾値の具体的な値は、変位を検出するセンサの測定精度等に応じて決めてもよい。例えば、本実施の形態において使用したステアリングシャフト34の角度を測定するための角度センサ32の測定精度は0.1度である。
【0045】
また、通知部523は、検出部521が検出した部品にかかる力が、動作指示により定まる基準領域外である場合に状態情報を通知してもよい。例えば、通知部523は、検出部521が検出した操舵トルクが、動作指示により定まる基準領域外である場合に状態情報を通知する。
図4を参照しながら、操舵角とトルクとの関係を説明する。
図4は、操舵角とトルクとの関係を説明するための図である。
【0046】
図4(a)においては、
図2(a)と同様、ドライバが正常な状態で運転をしていることを想定している。
図4(a)において、横軸は時刻tを示し、左側の第1縦軸は角度を示し、右側の第2縦軸は操舵トルクを示す。
図4(a)において、実線d1は車線維持に必要な操舵角をプロットしたグラフ、破線t1は検出された操舵トルクをプロットしたグラフである。ドライバが正常な状態で運転をしている場合、必要な操舵角が変化しても、検出される操舵トルクは大きく変化せず、所定の閾値s未満で概ね一定の値をとる。なお、所定の閾値s未満の領域は、動作指示である必要な操舵角により定まる基準領域である。
【0047】
図4(b)においては、
図2(c)と同様、ドライバが車両Vを運転することが困難な異常状態であることを想定している。
図4(b)において、実線d1は車線維持に必要な操舵角をプロットしたグラフ、破線t2は検出された操舵トルクをプロットしたグラフである。ドライバが異常状態である場合、操舵トルクは、必要な操舵角に追従するように推移する。これは、操舵補助部522がステアリング機構3を動作させようとしても、ドライバが抵抗となってステアリング機構3を動かすことができないためである。このとき、検出される操舵トルクは、所定の閾値s以上になる。
【0048】
このように、ドライバが異常状態であるとき、検出部521は、ステアリング機構3の動作に対する抵抗力を検出することができる。なお、本実施の形態において、検出部521はトルクセンサ33を用いて操舵トルクを検出したが、パワーシリンダ部36にかかる力を検出してもよい。
【0049】
なお、動作指示により定まる基準範囲は、検出部521が検出する物理量に応じて決めてもよい。例えば、検出部521が物理量としてステアリング機構3の部品の変位を検出した場合、基準範囲は、必要な操舵角に対する目標変位と、ステアリング機構3を動作させることができない異常状態であることを誤判定しないための余地及び測定誤差とにより定まる範囲である。
【0050】
例えば、検出部521が物理量としてステアリング機構3の部品にかかる力の大きさを検出した場合、基準範囲は、ステアリング機構3が動作したときにかかることが想定される力の大きさを基準値とする閾値以上の範囲である。ステアリング機構3が動作したときにかかることが想定される力の大きさの基準値は、予め実験によって定めてもよく、車両Vの速度に応じて決めてもよい。具体的には、力の大きさの基準値は、操舵トルクの絶対値であれば、車両Vの速さが速いほど小さくなるように決定する。
【0051】
通知部523は、物理量が基準領域外である状態となってから所定時間経過した後に状態情報を通知してもよい。所定時間は、すでに説明したように、ドライバの状態を誤判定しないために必要な時間である。このようにすることで、通知部523は、ドライバの状態が正常であるのに異常状態として通知することを低減することができる。
【0052】
通知部523は、所定時間の間に蓄積された物理量に基づいて状態情報を通知してもよい。例えば、通知部523は、動作指示により定まる目標値と、当該動作指示に対してステアリング機構3が動作した後に検出部521が検出した物理量との差の所定時間の間における総和が、所定の積分閾値より大きいと判定した場合、状態情報を通知する。動作指示により定まる目標値は、例えば目標変位である。所定の積分閾値は、通知部523がドライバの状態を誤判定しないために必要な基準値である。基準値は、車両Vの製造者が実験によって定めればよい。
【0053】
車両Vが走行中の車線を逸脱してしまった場合、ドライバが車両Vを運転することが困難な異常状態であると推定される。そのため、通知部523は、車両が走行中の車線を逸脱したと判定すると、状態情報を通知する。なお、通知部523は、車両が走行中の車線を逸脱したと判定した場合、所定時間経過していなくとも、状態情報を通知してもよい。
【0054】
通知部523は、状態情報を車両用情報処理装置5の各部へ通知する。例えば、通知部523は、状態情報を音声データとして音声出力部53に通知する。音声出力部53は、音声データとして通知された状態情報を、音声として出力する、例えばスピーカーである。具体的には、音声出力部53は、「車線を逸脱します。車線の中央に車両を寄せてください」という音声を出力する。
【0055】
また、通知部523は、状態情報を画像又はテキストデータとして表示部54に通知する。表示部54は、画像又はテキストデータとして通知された状態情報を表示画面に表示する、例えばメーターパネルに設けられたディスプレイである。表示部54は、「車線を逸脱します。車線の中央に車両を寄せてください」というテキストとともに、車線を逸脱することを示すアイコン又は画像を表示する。このようにすることで、車両Vを運転するドライバは、状態情報の通知を受けることができる。
【0056】
通知部523は、タッチパネル又はスイッチを備えていてもよい。例えば、通知部523は、タッチパネル又はスイッチを介して、状態情報の通知を解除する指示又はドライバが正常な状態であることを示す情報の入力を受ける。このようにすることで、ドライバは、自身の状態が正常であることを通知部523に入力することができる。
【0057】
車両Vは、車両Vを停車させる緊急停車装置、又は外部装置と通信可能な通信装置を備えていてもよい。例えば、通知部523は、異常状態を示す状態情報を緊急停車装置に送信する。緊急停車装置は、異常状態を示す状態情報の通知を受けると、車両Vを停車させるように車両Vを制御する。具体的には、緊急停車装置は、ハザードランプを点滅させ、減速しながら路肩に移動して停車するように車両Vを制御する。
【0058】
通知部523は、異常状態を示す状態情報を通信装置に通知してもよい。通信装置は、異常状態を示す状態情報の通知を受けると、予め定められた外部装置に異常状態を示す状態情報を送信する。予め定められた外部装置は、例えば警察及びその関係機関、病院などの医療機関、高速道路を管理運営する団体、又はドライバが設定した通信端末である。
【0059】
以下、
図5を参照しながら、車両用情報処理装置5が状態情報を通知する処理について説明する。
図5は、状態情報を通知する処理のフローチャートである。
図5のフローチャートにおいては、検出部521が、車両Vが走行する車線を検出しているものとして説明する。
【0060】
まず、操舵補助部522は、車両Vが車線を逸脱するか否かを判定する(ステップS1)。操舵補助部522は車両Vが車線を逸脱しないと判定すると待機してステップS1に戻る。操舵補助部522は、車両Vが車線を逸脱すると判定すると、車両Vの操舵角が車線を維持するために必要な必要操舵角になるようにステアリング機構3を制御する(ステップS2)。検出部521は、ステアリング機構3を制御した後の車両Vの操舵角である現操舵角を検出する(ステップS3)。
【0061】
操舵補助部522は、車線維持に必要な必要操舵角と、検出部521が検出した現操舵角とを通知部523に通知する。通知部523は、現操舵角と必要操舵角との差の絶対値が所定の変位閾値より大きいか否かを判定する(ステップS4)。通知部523が差の絶対値が所定の変位閾値以下と判定した場合(ステップS4でNo)、ステップS3に戻り、検出部521はステアリングシャフト34の角度を検出する。通知部523が差の絶対値が所定の変位閾値より大きいと判定した場合(ステップS4でYes)、通知部523は、差の絶対値が所定の変位閾値より大きいと判定してから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS5)。
【0062】
通知部523が差の絶対値が所定の変位閾値より大きいと判定してから所定時間経過していないと判定すると(ステップS5でNo)、ステップS3に戻り、検出部521はステアリングシャフト34の角度を検出する。通知部523が差の絶対値が所定の変位閾値より大きいと判定してから所定時間経過したと判定すると(ステップS5でYes)、ドライバに状態情報を通知する(ステップS6)。
【0063】
なお、
図5の説明においては、検出部521は操舵角を検出したが、検出部521は操舵トルクを検出してもよい。
図6は、操舵トルクを検出したときに、状態情報を通知する処理のフローチャートである。
図6の処理は、
図5のステップS3の代わりにステップS31を、ステップS4の代わりにステップS41行う処理のフローチャートであり、ステップS31及びステップS41以外の動作は、
図5のフローチャートと同様であるので説明を省略する。
【0064】
検出部521は、ステアリング機構3を制御した後の車両Vの操舵トルクである現操舵トルクを検出する(ステップS31)。操舵補助部522は、車線維持に必要な必要操舵角と、検出部521が検出した現操舵トルクとを通知部523に通知する。通知部523は、操舵トルクが必要操舵角により定まる範囲内か否かを判定する(ステップS4)。通知部523が、操舵トルクが必要操舵角により定まる範囲内であると判定した場合(ステップS41でNo)、ステップS31に戻り、検出部521は操舵トルクを検出する。
【0065】
通知部523が、操舵トルクが必要操舵角により定まる範囲外であると判定した場合(ステップS41でYes)、通知部523は、操舵トルクが必要操舵角により定まる範囲外であると判定してから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS5)。このように、通知部523は、操舵角だけでなく、操舵トルクに基づいて、状態情報を通知するか否かを判定してもよい。また、検出部521は、操舵角又は操舵トルクだけでなく、他の物理量を検出してもよく、通知部523は、検出部521が検出した物理量に基づいて状態情報を通知するか否かを判定してもよい。
【0066】
[実施の形態の効果]
以上説明したように、通知部523は、操舵補助部522が車線を維持するためにステアリング機構3を動作させたときに、検出部521が検出した物理量が基準領域外である場合に、ステアリング機構3を動作させることができない異常状態であると判定する。車両用情報処理装置5は、異常状態であると判定した場合、ドライバが、ハンドルに覆いかぶさるように倒れている等、車両Vを運転することが困難な状態であるとみなすことができる。したがって、車両用情報処理装置5は、ドライバが車両を運転することが困難な異常状態と、足元に落ちた物を取っている状態又はシートの位置を調整している状態とを混同することを低減でき、ドライバの状態を推定する精度を向上することができる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0068】
(変形例1)
以上の説明においては、車両用情報処理装置5は、車両Vのステアリング機構3を動作させて、車両Vの操舵角を制御した。車両用情報処理装置5は、操舵角の代わりに操舵トルクを制御してもよい。具体的には、操舵補助部522は、操舵トルクが、目標操舵トルクになるように、ステアリング機構3を動作させる。操舵補助部522は、操舵トルクが目標操舵トルクになるようにステアリング機構3を動作させる場合、ドライバの操作を受け付ける余地を設けるため、ドライバの操作によらず操舵角を強制的に変更させるように動作させることはすくない。そのため、動作指示に含まれる操舵トルクの値と、検出部521が検出する操舵トルクの値とは、一致するとは限らない。
【0069】
操舵補助部522は、目標操舵トルクとなるように、例えば、モーター31の回転を制御する。
図7は、目標操舵トルクの値と、実際に検出された操舵トルクの値との関係を説明するための図である。
図7(a)においては、
図2(a)と同様、ドライバが正常な状態で運転をしていることを想定している。
図6(a)において、横軸は時刻tを示し、縦軸は操舵トルクを示す。
図7(a)において、実線t0は車線維持に必要な操舵トルクをプロットしたグラフ、破線t2は検出された操舵トルクをプロットしたグラフである。斜線で覆う領域は、必要な操舵トルクにより定まる基準領域s1である。
【0070】
図7(a)において、目標操舵トルクを示す実線t0に対し、検出された操舵トルクは、全体の傾向(
図7(a)においては時間経過に対して増加する傾向)は同様であるが、上下にばらついている。検出された操舵トルクは、ドライバのハンドル操作による操舵トルクの変化も検出するためである。
【0071】
図7(b)においては、
図2(c)と同様、ドライバが車両Vを運転することが困難な異常状態であることを想定している。
図7(b)において、実線t0は車線維持に必要な操舵トルクをプロットしたグラフ、破線t3は検出された操舵トルクをプロットしたグラフである。ドライバが異常状態である場合、検出された操舵トルクt3は、ドライバによるハンドル操作を検出することがないので、必要な操舵トルクt0に略一致する傾向を示す。
【0072】
このように、操舵補助部522が車線を維持するためにステアリング機構3を動作させたときに、検出部521が検出した操舵トルクが基準領域外である場合に、通知部523は、ドライバが車両Vを運転することが困難な状態であるとみなすことができる。このようにすることで、車両用情報処理装置5は、ドライバがハンドルに覆いかぶさるように倒れていたり、ハンドルから手を離していたりして、運転することが困難な異常状態であると判定することができる。
【0073】
(変形例2)
変形例1においては、検出部521は操舵トルクを検出したが、これに限らず車両Vの操舵角を検出してもよい。例えば、操舵補助部522は、操舵トルクを制御して、車両Vの操舵角が目標操舵角になるように、ステアリング機構3を動作させ、検出部521は、ステアリング機構3が動作するときの操舵角を検出する。
図8は、操舵トルクと操舵角との関係を説明するための図である。
【0074】
図8(a)においては、
図2(a)と同様、ドライバが正常な状態で運転をしていることを想定している。
図8(a)において、横軸は時刻tを示し、左側の第1縦軸は操舵トルクを示し、右側の第2縦軸は操舵角を示す。
図6(a)において、実線t0は車線維持に必要な操舵トルクをプロットしたグラフ、破線d2は検出された操舵角をプロットしたグラフである。ドライバが正常な状態で運転をしている場合、操舵角はドライバの操作によりばらつきを生じるが、操舵トルクに追従する傾向を示す。このとき、操舵角は、動作指示により定まる基準領域(s1)内で推移する。
【0075】
図8(b)においては、
図2(c)と同様、ドライバが車両Vを運転することが困難な異常状態であることを想定している。
図8(b)において、実線t0は車線維持に必要な操舵角をプロットしたグラフ、破線d3は検出された操舵角をプロットしたグラフである。操舵角は、例えば、ドライバがハンドルに覆いかぶさるように倒れた異常状態である場合、操舵トルクの変化に関わらず一定の値を示す。このとき、操舵角は、動作指示により定まる基準領域(s1)外で推移する。
【0076】
このように、ドライバがハンドルに覆いかぶさるように倒れている場合、検出部521は、一定の操舵角を検出する。したがって、通知部523は、目標操舵トルクに対し、操舵角が基準範囲外であるときに、状態情報を通知する。なお、通知部523は、目標操舵トルクに対し、操舵角が一定であるときに、状態情報を通知してもよい。このようにすることで、通知部523は、ドライバがハンドルに覆いかぶさるようにしている場合、又はハンドルから手を離している場合でも、ドライバが車両Vを運転困難な状態だとみなすことができるので、ドライバの状態を判定する精度を向上することができる。