特許第6885234号(P6885234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885234
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】全館空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20210531BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 11/50 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20210531BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20210531BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20210531BHJP
   F24F 110/40 20180101ALN20210531BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20210531BHJP
【FI】
   F24F11/46
   F24F11/49
   F24F11/50
   F24F11/63
   F24F11/72
   F24F11/88
   F24F11/89
   F24F110:10
   F24F110:20
   F24F110:40
   F24F140:00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-133651(P2017-133651)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-15460(P2019-15460A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 卓
【審査官】 町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−042440(JP,A)
【文献】 特開2017−075727(JP,A)
【文献】 特開2000−111064(JP,A)
【文献】 特開2007−085673(JP,A)
【文献】 特開平09−229458(JP,A)
【文献】 米国特許第05602758(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/46
F24F 11/49
F24F 11/50
F24F 11/63
F24F 11/72
F24F 11/88
F24F 11/89
F24F 110/10
F24F 110/20
F24F 110/40
F24F 140/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区域に対して個別に空調可能な空調ユニットと、
前記空調ユニットに対して各前記区域の空調に関する制御内容を指示する親機と、
前記親機と通信可能であって各前記区域に設置されユーザから入力された制御内容を前記親機に送信する複数の子機と、を備え、
前記子機は、当該子機が設置された前記区域の環境情報を取得する環境情報取得部を有し、
前記親機は、各前記子機と各前記子機が設置された各区域とを紐付けする初期設定として、各前記子機と協働して、
前記空調ユニットを動作させて各前記区域のうち一の区域について空調を行い前記一の区域の環境を変化させる環境変化処理と、
各前記子機のうち前記環境情報取得部で取得した環境情報が変化した子機を特定する子機特定処理と、
前記環境変化処理で空調を行なった前記一の区域を前記子機特定処理で特定された子機の設置区域に割り付ける区域割付処理と、
を実行するとともに、
前記親機は、前記子機特定処理において2以上の子機を特定した場合又は所定期間を経過しても1つの子機も特定されない場合には、前記区域割付処理を行うことなく、前記環境変化処理において環境を変化させた区域について前記初期設定を再度行う、
全館空調システム。
【請求項2】
前記子機は、前記環境情報取得部として、温度センサ、気圧センサ、又は湿度センサの少なくともいずれか1つを有している、
請求項1に記載の全館空調システム。
【請求項3】
前記親機は、各前記子機から受信した前記環境情報の変化がすべて所定範囲内で安定したことを条件として前記環境変化処理を実行する、
請求項1又は2に記載の全館空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、1つの空調ユニットで家屋の複数の区域を空調する全館空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全館空調システムにおいて、空調ユニットの制御内容を操作するためのリモコンとして、1つの区域に親機を設置し、他の区域にそれぞれ子機を設置するものがある。親機は、全区域についての空調を指示可能な装置である。また、子機は、設置された区域の空調を担当区域とし、その担当区域についての空調を指示可能な装置である。この場合、子機は、ユーザによって入力された設定内容を、親機へ送信する。そして、親機は、子機から受信した設定内容に従って、空調ユニットを制御する。これにより、ユーザは、子機を操作することで、親機を操作することなく、その子機が設置されている区域の空調を制御することができる。
【0003】
このような構成では、各子機の操作によって空調制御が行われる区域と実際にその子機が設置されている区域との対応関係を、初期設定として予め正しく設定する必要がある。この初期設定が正しく行われていないと、例えばユーザがある区域の空調を制御しようとして、その区域に設置されている子機を操作した場合に、誤って他の区域の空調が制御されてしまう、という事態が生じるからである。
【0004】
そのため、従来構成では、初期設定をする際に、ユーザはまず、空調ユニットによって制御される制御区域が、実際にどの区域に割り当てられているか、すなわち、空調ユニットの空調ダクトが実際にどの部屋に繋がっているかを把握する。この制御区域の把握は、例えば親機を操作する者と、各区域において空調の動作を確認する者とを個別に配置し、親機を操作して実際に空調ユニットを動作させることで行なっていた。そして、ユーザは、親機及び子機を操作し、親機に各子機と各区域とを紐付けして記憶させることで、各子機について設置予定の区域つまり担当区域を設定し、その後、その設定した担当区域に従って各子機を設置する、という作業を行っていた。
【0005】
しかしながら、このような従来構成では、各子機は、担当区域の設定後に実際にその担当区域に設置される。このため、ユーザが、子機を誤って異なる区域に設置してしまうことがあった。更には、空調ユニットの制御区域の把握には、上述したように少なくとも2人の作業者が必要であり、また、その作業者がいちいち親機を操作して空調の動作を確認しなければならないため、空調ユニットの制御区域の把握に手間も要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−143275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、初期設定において、作業の手間を省くとともに、各子機によって空調制御が行われる区域と実際にその子機が設置されている区域との対応関係の間違いを低減することができる全館空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1)
請求項1の全館空調システムは、複数の区域に対して個別に空調可能な空調ユニットと、前記空調ユニットに対して各前記区域の空調に関する制御内容を指示する親機と、前記親機と通信可能であって各前記区域に設置されユーザから入力された制御内容を前記親機に送信する複数の子機と、を備える。前記子機は、当該子機が設置された前記区域の環境情報を取得する環境情報取得部を有している。前記親機は、各前記子機と各前記子機が設置された各区域とを紐付けする初期設定として、各前記子機と協働して、前記空調ユニットを動作させて各前記区域のうち一の区域について空調を行い前記一の区域の環境を変化させる環境変化処理と、各前記子機のうち前記環境情報取得部で取得した環境情報が変化した子機を特定する子機特定処理と、前記環境変化処理で空調を行なった前記一の区域を前記子機特定処理で特定された子機の設置区域に割り付ける区域割付処理と、を実行する。
【0009】
すなわち、従来構成では、ユーザは、各子機とその子機の設置予定となる区域とを紐付した後に、その紐付された各区域に各子機を設置していた。つまり、従来構成では、ユーザが子機を各区域に持って行く場合には、既に子機と区域との紐付がされた状態である。そのため、ユーザが子機を誤って異なる区域に設置してしまう事態が生じ得た。一方、本構成では、各子機が各区域に設置された後に、各子機とその子機が実際に設置されている区域との紐付が行われる。したがって、各子機によって空調制御が行われる区域と実際にその子機が設置されている区域との対応関係の間違いが生じることを抑制できる。
【0010】
更に、本構成によれば、従来構成と異なり、ユーザが子機を各区域に持って行く場合には、未だ子機と区域との紐付がされていない状態である。そのため、ユーザは、各子機と区域との対応関係を意識することなく、各子機をそれぞれ任意の区域に設置することができる。また、本構成によれば、親機によって自動で、各区域に設置されている子機が特定される。したがって、ユーザは、従来構成のように、初期設定をする際に、空調ユニットの制御区域を把握する必要がない。この結果、各子機の設置時つまり初期設定時の作業性の向上が図られて、ユーザの初期設定に要する手間を省くことができる。以上より、本構成によれば、初期設定において、ユーザの作業の手間を省くことができるとともに、各子機によって空調制御が行われる区域と実際にその子機が設置されている区域との対応関係の間違いを低減することができる。
【0011】
(請求項2)
請求項2の全館空調システムにおいて、前記子機は、前記環境情報取得部として、温度センサ、気圧センサ、又は湿度センサの少なくともいずれか1つを有している。温度、気圧、及び湿度は、空調によって変化し易い環境情報である。このため、子機が、温度、気圧、又は湿度の少なくともいずれか1つを検出することで、子機は、環境変化処理によって生じた周囲の環境の変化をより正確に検出することができ、その結果、より正確な初期設定を行うことができる。
【0012】
ちなみに、湿度に比べて、温度及び気圧の方が、空調による影響を受け易い。したがって、子機は、環境情報取得部として、温度センサ又は気圧センサの少なくともいずれか一方を有していることが好ましい。これによれば、子機が湿度センサのみを有している場合に比べて、更に正確な初期設定を行うことができる。
【0013】
(請求項
ここで、各子機は、各区域に1台ずつ設置されることが前提であり、かつ、環境変化処理では、一の区域についてのみ空調を行う。それにも関わらず、子機特定処理において2台以上の子機が特定されるということは、その特定された複数の子機が、空調を行った同一の区域に設置されているか、または、空調を行っていない他の区域において、例えば扉や窓の開閉等が行われたことにより、空調以外の要因によって環境が変化したと考えられる。
【0014】
更に、環境変化処理で一の区域について空調を行っているにも関わらず、子機特定処理において所定期間を経過しても1台の子機も特定されないということは、空調を行った区域に子機が設置されていないか、又は、空調を行っている区域において、例えば扉や窓が開いていることにより空調による空気が外部へ流出している等、空調による影響が出難くなっている状況であると考えられる。いずれにしろ、これらの場合には、各子機と各区域との1対1の対応関係は特定できないため、当該区域に対する子機の割付は失敗となる。
【0015】
そこで、請求項の全館空調システムにおいて、前記親機は、前記子機特定処理において2以上の子機を特定した場合又は所定期間を経過しても1つの子機も特定されない場合には、前記区域割付処理を行うことなく、前記環境変化処理において環境を変化させた区域について前記初期設定を再度行う。これによれば、何らかの要因によって、子機が設置された区域とその子機との紐付を特定できなかった場合には、親機は、再度自動で、その区域について初期設定を行う。これにより、初期設定が失敗した場合であっても、ユーザ自身が子機と区域との紐付を行う必要がなく、その結果、ユーザの手間を省くことができる。
【0016】
(請求項
前記親機は、各前記子機から受信した前記環境情報の変化がすべて所定範囲内で安定したことを条件として前記初期環境記憶処理以降の処理を実行する。これによれば、空調ユニットによる空調以外の影響を極力排除した状態で、初期設定を行うことができる。したがって、より正確な初期設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態による全館空調システムの構成の一例を概略的に示す図
図2】一実施形態による全館空調システムについて、各構成の相互関係を概略的に示す図
図3】一実施形態による全館空調システムにおいて、子機の電気的構成を概略的に示すブロック図
図4】一実施形態による全館空調システムにおいて、親機の電気的構成を概略的に示すブロック図
図5】一実施形態による全館空調システムにおいて、初期設定の制御内容を示すフローチャート
図6】一実施形態による全館空調システムにおいて、各区域の環境が安定している状態の一例を示す図
図7】一実施形態による全館空調システムにおいて、環境変化処理を実行した場合の一例を示す図
図8】一実施形態による全館空調システムにおいて、各子機が取得した環境情報が安定した状態の一例を示す図
図9】一実施形態による全館空調システムにおいて、子機特定処理で2台の子機が特定される場合における環境情報の変化率の一例を示す図
図10】一実施形態による全館空調システムにおいて、子機特定処理で子機が特定されない場合における環境情報の変化率の一例を示す図
図11】一実施形態による全館空調システムにおいて、子機と区域との割り付け状態の一例を示す図
図12】一実施形態による全館空調システムにおいて、各子機から親機へ送信される信号を概念的に示す図
図13】他の実施形態による全館空調システムにおいて、各子機から親機へ送信される信号を概念的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す全館空調システム10は、家屋100に設けられている。家屋100は、複数の区域を有している。この区域は、リビングや寝室等の居室に限られず、浴室や便所、玄関や吹き抜け等を含めていても良い。本実施形態では、説明の簡単化のため、4つの区域1〜4を有する家屋100を例に説明するが、区域の数やその構成つまり部屋数やその構成はこの家屋100のものに限定されない。
【0019】
全館空調システム10は、家屋100内の複数の区域、この場合4つの区域1〜4を1つの空調ユニット20によって空調するものである。本実施形態において、全館空調システム10は、空調ユニット20、空調ダクト111〜114、リモコン親機30(以下、親機30と称する)、及びリモコン子機40(以下、子機40と称する)を備えている。
【0020】
空調ユニット20は、例えば図1に示す室内機21と図示しない室外機とを有するヒートポンプなどの周知の熱交換器によって構成されている。空調ユニット20は、各区域1〜4を空調の制御区域としている。各空調ダクト111〜114は、各区域1〜4に対応して設けられており、それぞれ空調ユニット20の室内機21と各区域1〜4とを接続している。空調ユニット20は、複数、この場合4つの開閉弁221〜224を有している。各開閉弁221〜224は、各区域1〜4に対応しており、各空調ダクト111〜114の途中または端部にそれぞれ設けられており、各空調ダクト111〜114を開閉する。
【0021】
空調ユニット20は、例えば次のようにして、各区域1〜4の空気調和を行う。すなわち、空調ユニット20は、各区域1〜4内の空気つまり内気を取り込み、その内気を室内機21により熱交換するとともに、図示しないフィルタを通して家屋100の外部から外気を取り込む。そして、空調ユニット20は、熱交換された内気と外気とを混合し、これにより湿度及び温度を調整して空気調和が行われた空気を生成する。そして、空調ユニット20は、各開閉弁221〜224を開閉制御することで、各区域1〜4に対して空気調和が行われた空気を選択的に供給する。このようにして、空調ユニット20は、各区域1〜4に対して、空気調和を行う。
【0022】
また、空調ユニット20は、各区域1〜4について、それぞれ空調目標温度を設定可能である。この場合、空調ユニット20は、各区域1〜4の室内温度と空調目標温度との差に応じて開閉弁221〜224の開閉及び開度をそれぞれ調整し、各区域1〜4へ供給する空気量を調整する。これにより、空調ユニット20は、各区域1〜4の室内温度を、設定された空調目標温度に保持する。このように、空調ユニット20は、各区域1〜4に対して個別に空調が可能に構成されている。
【0023】
本実施形態において、空調ユニット20は、図2に示すように、1台の親機30と、各区域1〜4の数に対応した4台の子機40とを備えている。なお、以下の説明において、各子機40を区別する場合には、子機40(A)、子機40(B)、子機40(C)、子機40(D)と示す。各子機40(A)〜(D)は、それぞれ重複しないように設定された特有の識別IDを有している。
【0024】
本実施形態の場合、4台の子機40のうち1台は、親機30内に組み込まれている。すなわち、4台の子機40のうち子機40(A)は、親機30と兼用している。各子機40は、親機30と無線又は有線によって通信可能に構成されている。親機30は、各区域1〜4のうち任意の区域に設置される。親機30に内臓された子機40(A)以外の子機(B)〜(D)は、親機30及び子機40(A)が設置されていない区域に1台ずつ設置される。各子機40は、ユーザから空調目標温度等の設定内容が入力され、その入力された設定内容を親機30に送信する。
【0025】
親機30は、空調ユニット20と通信可能に構成されており、各子機40から受信した空調目標温度等の設定内容を、空調ユニット20に対して送信する。これにより、親機30は、空調ユニット20に対して、各区域1〜4の空調に関する制御内容を指示する。そして、空調ユニット20は、親機30から受信した制御内容に従って、各区域1〜4に対する空調を行う。
【0026】
子機40は、図3に示すように、温度センサ41、気圧センサ42、湿度センサ43、操作部44、表示部45、通信部46、及び制御部47を有している。温度センサ41は、子機40の周囲の温度、すなわち子機40が設置された区域の温度を検出する。気圧センサ42は、子機40の周囲の気圧、すなわち子機40が設置された区域の気圧を検出する。湿度センサ43は、子機40の周囲の湿度、すなわち子機40が設置された区域の湿度を検出する。これら温度センサ41、気圧センサ42、及び湿度センサ43は、子機40の周囲の環境情報、つまり子機40が設置された区域の環境情報としてその区域の温度や気圧及び湿度等を取得する環境情報取得部として機能する。
【0027】
操作部44は、ユーザからの入力操作を受け付けるもので、例えば機械的なスイッチや、電気的なタッチスイッチ等によって構成されている。表示部45は、例えば液晶パネル等であって、ユーザからの入力内容や現在の設定内容、センサ41〜43によって検出された子機40の周囲の環境情報等、各種情報を表示する。通信部46は、親機30に対して無線又は有線通信を行う機能を有しており、親機30に対して、各センサ41〜43の検出結果や、操作部44によって入力された設定情報等を送信する。
【0028】
制御部47は、例えばCPU471や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域472を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、子機40の全体の制御を司っている。すなわち、制御部47は、温度センサ41、気圧センサ42、湿度センサ43、操作部44、表示部45、及び通信部46の動作を制御する。
【0029】
親機30は、図4に示すように、子機40の機能として、温度センサ41、気圧センサ42、湿度センサ43、操作部44、及び表示部45を有している。また、親機30は、制御部31を有している。制御部31は、例えばCPU311や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域312を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、親機30及び空調ユニット20の全体の制御を司っている。この場合、親機30は、例えば通信線によって、空調ユニット20に通信可能に接続されている。なお、親機30は、無線通信によって空調ユニット20と通信可能に接続されていても良い。
【0030】
記憶領域312は、空調ユニット20を制御するための各種制御プログラムや、初期設定を行うための初期設定プログラムを記憶している。初期設定プログラムは、各子機40(A)〜(D)の操作によって空調制御が行われる区域と、実際にその子機40(A)〜(D)が設置されている区域1〜4との対応関係を設定するためのプログラムである。親機30は、初期設定を行うことにより、各子機40と、各子機40が実際に設置されている各区域1〜4とを紐付けして記憶する。
【0031】
すなわち、制御部31は、CPU311において初期設定プログラムを実行することにより、初期環境記憶処理部32、環境変化処理部33、子機特定処理部34、及び区域割付処理部35等を、ソフトウェア的に実現する。なお、これら初期環境記憶処理部32、環境変化処理部33、子機特定処理部34、及び区域割付処理部35等は、例えば制御部31と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。これら初期環境記憶処理部32、環境変化処理部33、子機特定処理部34、及び区域割付処理部35は、親機30としての機能を構成する。
【0032】
初期環境記憶処理部32は、初期環境記憶処理を実行する。初期環境記憶処理は、各子機40から取得した現在の環境情報を初期環境情報として記憶する、又は各子機40に記憶させる処理である。環境変化処理部33は、環境変化処理を実行する。環境変化処理は、初期環境記憶処理の後に実行されるもので、空調ユニット20を動作させて各区域1〜4のうち一の区域について空調を行いその一の区域の環境つまり温度、気圧、又は湿度の少なくともいずれか1つを変化させる処理である。
【0033】
子機特定処理部34は、子機特定処理を実行する。子機特定処理は、環境変化処理の後に実行されるもので、各子機40のうち、環境情報取得部で取得した環境情報つまり温度センサ41で検出された気温、気圧センサ42で検出された気圧、又は湿度センサ43で検出された湿度のいずれかが変化した子機を特定する。そして、区域割付処理部35は、区域割付処理を実行する。区域割付処理は、子機特定処理の後に実行されるもので、環境変化処理で空調を行なった一の区域を、子機特定処理で特定された子機の設置区域に割り付ける処理である。
【0034】
具体的には、親機30は、初期設定の際に図5に示す制御内容を実行する。この初期設定は、例えばユーザが親機30の操作部44に対して所定の操作を行うことで開始される。なお、初期設定が実行される際には、各子機40は、図1に示すように、既に各区域1〜4に設置されているものとする。また、初期設定が実行される際には、空調ユニット20は動作していないものとする。
【0035】
親機30は、初期設定が開始されると、まず、図5に示すステップS11において、区域数Nを設定する。区域数Nの設定は、例えばユーザが、親機30の操作部44を操作して、全館空調システム10の対象とする家屋100の区域1〜4の数、この場合「4」を入力することで行う。
【0036】
次に、親機30は、ステップS12において、割付の対象とする区域を区域(N)に設定する。Nは変数であり、区域の数この場合「4」が最大値である。区域(N)は、子機40を1台割り付ける度に変更される。この場合、親機30は、区域4、区域3、区域2、区域1の順に、各子機40の割付を行っていく。
【0037】
親機30は、ステップS13において、各子機40から、各センサ41、42、43の検出結果を受信する。これにより、親機30は、各子機40が設置されている区域1〜4の環境情報、つまり温度、気圧、及び湿度を取得する。この場合、親機30は、各子機40に対して、各センサ41、42、43の検出結果を送信するように要求しても良い。また、各子機40の電源が投入された場合に、各子機40から自動的に各センサ41、42、43の検出結果を親機30に送信するようにしても良い。
【0038】
次に、親機30は、ステップS14において、ステップS13で取得した各区域1〜4の環境情報が、一定範囲内において安定しているか否かを判断する。親機30は、ある区域の環境情報について、例えば図6に示すように所定期間中の環境情報例えば温度の変化率がΔT1未満である場合は、その区域の環境が安定していると判断する。親機30は、各区域1〜4のうち1つでも環境が安定していない区域があれば(図5のステップS14でNO)、全ての区域1〜4の環境が安定するまで待機する。この場合、環境が安定したか否かの判断は、環境情報として温度、気圧、及び湿度の少なくともいずれか1つを用いればよいが、これらを組み合わせて用いても良い。
【0039】
そして、親機30は、各区域1〜4の環境が安定したと判断すると(ステップS14でYES)、ステップS15において、初期環境記憶処理を実行する。これにより、親機30は、各区域1〜4の初期の環境情報つまり空調ユニット20が動作していない状態の初期の環境情報を記憶する。なお、親機30は、各子機40の初期の環境情報を自身が記憶せずに、各子機40に記憶させても良い。
【0040】
次に、親機30は、ステップS16において、環境変化処理を実行する。この場合、例えば割付対象の区域が区域1であれば、親機30は、区域1の空調を行うように空調ユニット20を制御する。すると、空調ユニット20は、図7に示すように、区域1に対応した開閉弁221を開き、区域1に対して空気調和が行われた空気を供給する。これにより、空調が行われた区域1の環境つまり温度、気圧、及び湿度が変化する。
【0041】
次に、親機30は、ステップS17において、子機特定処理を実行する。これにより、周囲の環境が変化した子機40を特定する。この場合、ステップS15の初期環境記憶処理において、初期の環境情報を親機30が記憶する構成であれば、親機30は、次のようにして子機40を特定することができる。
【0042】
すなわち、この場合、親機30は、子機40の特定に用いるための閾値ΔT2を設定しておく。閾値ΔT2は、例えば初期環境情報処理で記憶された初期の環境情報に対する現在の環境情報の変化率の閾値である。親機30は、例えば初期設定の開始後、各子機40から環境情報を随時又は定期的に取得する。そして、親機30は、その取得した現在の環境情報と、初期環境記憶処理で記憶した初期の環境情報とを比較し、図8に示すように、環境情報の変化率が閾値ΔT2を超えた子機40を検出することで、周囲の環境が変化した子機40を特定する。
【0043】
また、ステップS15の初期環境記憶処理において、初期の環境情報を各子機40が記憶する構成であれば、親機30は、次のようにして子機40を特定することができる。すなわち、親機30は、各子機40に対し、各子機40で共通の閾値ΔT2を設定する。子機40は、例えば初期設定の開始後、各センサ41〜43によって環境情報を随時又は定期的に取得する。そして、子機40は、その取得した現在の環境情報と、初期環境記憶処理で記憶した初期の環境情報とを比較し、図8に示すように、環境情報の変化率が閾値ΔT2を超えた場合には、親機30に対してその旨つまり変化率が閾値ΔT2を超えたことを示す信号を送信する。親機30は、子機40から、変化率が閾値ΔT2を超えた旨の信号を受信した場合に、その信号を発信した子機40を特定する。
【0044】
次に、親機30は、図5のステップS18において、ステップS17で特定した子機40が1台であるか否かを判断する。すなわち、親機30は、ステップS17の子機特定処理で2台以上の子機40が特定されていないか、及び所定期間を経過しても子機40が1台も特定できていないか否かを判断する。
【0045】
ここで、各子機40は、各区域1〜4に1台ずつ設置されることが前提であり、かつ、ステップS16の環境変化処理では、一の区域についてのみ空調を行っている。それにも関わらず、ステップS17の子機特定処理において2台以上の子機が特定されるということ、すなわち例えば図9に示すように、2台以上の子機40についてその周囲の環境情報の変化率が閾値ΔT2を超えて変化したということは、その特定された複数の子機40が、空調を行った同一の区域に設置されているか、または、空調を行っていない他の区域において、例えば扉や窓が開いていることにより外気が侵入している等、空調以外の要因によって環境が変化していると考えられる。
【0046】
更に、一の区域について空調を行っているにも関わらず、ステップS17の子機特定処理において1台の子機も特定されないということ、すなわち例えば図10に示すように、全ての子機40において、周囲の環境情報の変化率が閾値ΔT2を超えていないということは、空調を行った区域にいずれの子機40も設置されていないか、または、空調を行っている区域において、例えば扉や窓が開いていることにより外気が侵入している等、空調以外の要因によって環境が変化していると考えられる。いずれにしろ、各子機40と各区域1〜4との1対1の対応関係は特定できないため、当該区域に対する子機40の割付は失敗となる。
【0047】
そのため、図5のステップS17において特定された子機40の台数が1台以外の場合(ステップS18でNO)、親機30は、ステップS23において、空調ユニット20を制御して、ステップS16の環境変化処理で行った一の区域に対する個別の空調を停止する。その後、親機30は、ステップS24に示すように、親機30及び子機40の表示部45に、注意表示を行う。この注意表示は、例えば各区域1〜4において、窓や扉が閉じられているか、また、他の冷暖房機器が使用されていないか等、空調ユニット20による空調の影響以外の影響を極力排除するように促すための表示である。
【0048】
その後、親機30は、ステップS13へ処理を戻す。これにより、親機30は、ステップS19の区域割付処理を行うことなく、ステップS16の環境変化処理において環境を変化させた区域つまり子機40の割付の対象となっている区域について、再度、初期設定を行う。
【0049】
一方、ステップS17において特定された子機40が1台である場合(ステップS18でYES)、親機30は、ステップS19において、区域割付処理を実行する。これにより、親機30は、ステップS16の環境変化処理で個別に空調を行なった一の区域を、ステップS17の子機特定処理で特定された子機40の設置区域に割り付ける。次に、親機30は、ステップS20において、空調ユニット20を制御して、ステップS16の環境変化処理で行った一の区域に対する個別の空調を停止する。
【0050】
次に、親機30は、ステップS21において、区域数Nを1減算し、割り付けの対象とする区域を変更する。親機30は、区域数Nが0になるまでステップS12〜S22を繰り返し、図11に示すように、全ての区域1〜4について、対応する子機40(A)〜(D)を割り付ける。そして、区域数Nが0になると(図5のステップS22でYES)、親機30は、全ての区域1〜4について子機40の割り付けが終了したと判断し、一連の処理を終了する(エンド)。
【0051】
ちなみに、本実施形態の場合、各区域1〜4に対する各子機40の割り付け結果は、図12に示すように、親機30の記憶領域312に記憶される。この場合、各子機40は、それぞれ各子機40に特有の識別IDを有している。ユーザが子機40を操作すると、操作を受けた子機40は、入力された操作指令とともに自己の識別IDを親機30へ送信する。そして、親機30は、受信した操作指令に基づき、受信した識別IDに割り付けられた区域1〜4について空調制御を行う。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、親機30は、各子機40と各子機40が設置された各区域1〜4とを紐付けする初期設定として、各子機40と協働して、初期環境記憶処理と、環境変化処理と、子機特定処理と、区域割付処理と、を順次実行する。これによれば、各子機40(A)〜(D)が各区域1〜4に設置された後に、各子機40(A)〜(D)とその子機40(A)〜(D)が実際に設置されている区域1〜4との紐付が行われる。したがって、各子機40(A)〜(D)によって空調制御が行われる区域1〜4と、実際にその子機40(A)〜(D)が設置されている区域1〜4との対応関係の間違いが生じることがない。
【0053】
更に、本実施形態によれば、ユーザが子機40(A)〜(D)を各区域1〜4に持って行く場合には、未だ各子機40(A)〜(D)と各区域1〜4との紐付がされていない状態である。そのため、ユーザは、各子機40(A)〜(D)と各区域1〜4との対応関係を意識することなく、各子機40(A)〜(D)をそれぞれ任意の区域1〜4に設置することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、親機30によって自動で、各区域1〜4に設置されている子機40(A)〜(D)が特定される。したがって、ユーザは、初期設定をする際に、空調ユニット20の制御区域を把握する必要がない。この結果、各子機40(A)〜(D)の設置時つまり初期設定時の作業性の向上が図られて、ユーザの初期設定に要する手間を省くことができる。以上より、本実施形態によれば、初期設定において、ユーザの作業の手間を省くことができるとともに、各子機40(A)〜(D)によって空調制御が行われる区域1〜4、と実際にその子機40(A)〜(D)が設置されている区域1〜4との対応関係の間違いを低減することができる。
【0055】
また、全館空調システム10において、子機40(A)〜(D)は、環境情報取得部として、温度センサ41、気圧センサ42、又は湿度センサ43の少なくともいずれか1つを有している。温度、気圧、及び湿度は、空調によって変化し易い環境情報である。このため、子機40(A)〜(D)が、温度、気圧、又は湿度の少なくともいずれか1つを検出することで、子機40(A)〜(D)は、環境変化処理によって生じた周囲の環境の変化をより正確に検出することができ、その結果、より正確な初期設定を行うことができる。
【0056】
ちなみに、湿度に比べて、温度及び気圧の方が、空調による影響を受け易い。したがって、子機40(A)〜(D)は、環境情報取得部として、温度センサ41又は気圧センサ42の少なくともいずれか一方を有していることが好ましい。これによれば、子機40(A)〜(D)が湿度センサ43のみを有している場合に比べて、更に正確な初期設定を行うことができる。
【0057】
また、親機30は、図5のステップS17の示す子機特定処理において2以上の子機を特定した場合又は所定期間を経過しても1つの子機も特定されない場合には、ステップS19の区域割付処理を行うことなく、ステップS16の環境変化処理において環境を変化させた区域(N)について初期設定を再度行う。これによれば、何らかの要因によって、子機40(A)〜(D)が設置された区域1〜4とその子機40(A)〜(D)との紐付を特定できなかった場合には、親機30は、再度自動で、その区域1〜4について初期設定を行う。これにより、初期設定が失敗した場合であっても、ユーザ自身が子機40(A)〜(D)と区域1〜4との紐付を行う必要がなく、その結果、ユーザの手間を省くことができる。
【0058】
また、親機30は、子機40(A)〜(D)から受信した環境情報の変化がすべて所定範囲内で安定したことを条件として、図5のステップS15に示す初期環境記憶処理以降の処理を実行する。これによれば、空調ユニット20による空調以外の影響を極力排除した状態で、初期設定を行うことができる。したがって、より正確な初期設定を行うことができる。
【0059】
なお、本発明の実施形態は、上記し又図面に記載した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や拡張をすることができる。
例えば、上記実施形態において、子機40(A)は、親機30に内蔵されている構成としたが、子機40(A)及び親機30は別体に構成しても良い。
【0060】
また、上記実施形態において、初期設定は、全ての区域1〜4について図5のステップS16に示す環境変化処理を行うように構成されている。しかし、これに限られず、例えば対象区域N=1となった場合、つまり割付が行われていない区域の数が1になった場合に、残りの1つの区域を、残りの1台の子機40に割り付ける構成でも良い。これによれば、環境変化処理を行う区域の数を1つ減らせることができる。したがって、初期設定に要する時間を短縮することができる。
【0061】
また、上記実施形態において、親機30は、各子機40(A)〜(D)と各区域1〜4とを紐付した結果を記憶し、各子機40は、入力された操作指令とともに自己の識別IDを親機30へ送信するように構成されている。しかし、これに限られず、例えば図13のように構成しても良い。すなわち、図13の例において、各子機40は、それぞれ紐付された自己の担当区域1〜4を記憶する。この場合、ユーザによって子機40に操作が入力されると、その入力を受けた子機40は、入力された操作指令とともに自己の担当区域1〜4に関する情報を親機30へ送信する。そして、親機30は、受信した操作指令に基づき、受信した区域1〜4について空調制御を行う。これによっても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0062】
図面中、10は全館空調システム、20は空調ユニット、30は親機、40は子機、41は温度センサ(環境情報取得部)、42は気圧センサ(環境情報取得部)、43は湿度センサ(環境情報取得部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13