(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
前記攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンのみを前記封止体のみに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させるか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
前記攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンのみを前記封止体に接触させるとともに、前記ジャケット本体の前記段差側面にもわずかに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させるか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
前記攪拌ピンは、先細りとなるように傾斜する外周面を備えるとともに平坦な先端面を備え、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンの先端を前記段差底面よりも深く挿入するとともに、前記攪拌ピンの前記外周面と前記段差側面とを離間させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させるか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
前記攪拌ピンは、先細りとなるように傾斜する外周面を備えるとともに平坦な先端面を備え、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンの先端を前記段差底面よりも深く挿入するとともに、前記攪拌ピンの前記外周面を前記段差側面にわずかに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させるか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
前記封止体はアルミニウム合金展伸材で形成し、前記ジャケット本体はアルミニウム合金鋳造材で形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
前記本接合工程では、前記回転ツールの移動軌跡に形成される塑性化領域のうち、前記ジャケット本体側がシアー側となり、前記封止体側がフロー側となるように前記回転ツールの回転方向及び進行方向を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ジャケット本体101は複雑な形状となりやすく、例えば、4000系アルミニウム合金の鋳造材で形成し、封止体102のように比較的単純な形状のものは、1000系アルミニウム合金の展伸材で形成するというような場合がある。このように、アルミニウム合金の材種の異なる部材同士を接合して、液冷ジャケットを製造する場合がある。このような場合は、ジャケット本体101の方が封止体102よりも硬度が高くなることが一般的であるため、
図12のように摩擦攪拌接合を行うと、攪拌ピンF2が封止体102側から受ける材料抵抗に比べて、ジャケット本体101側から受ける材料抵抗が大きくなる。そのため、回転ツールFの攪拌ピンによって異なる材種をバランスよく攪拌することが困難となり、接合後の塑性化領域に空洞欠陥が発生し接合強度が低下するという問題がある。また、回転ツールFの攪拌ピンの外周面には傾斜角度が付いており、回転ツールFの回転中心軸Cを突合せ部J10に対してまっすぐに入れると、ジャケット本体101の段差側面101cに沿って均一な接合を行うことが難しいという問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために第一の発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、前記攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンのみを前記封止体のみに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させ
るか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【0007】
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の側面とを接合することができる。また、攪拌ピンのみを封止体のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールの回転中心軸を鉛直面に対してジャケット本体の中央部側または外周側に傾斜角度γだけ傾斜させているため、攪拌ピンとジャケット本体との接触を容易に回避することができる。また、回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンの外周面の回転中心軸に対する傾斜角度αから段差側面の鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンの外周面と段差側面とを平行にして、攪拌ピンの外周面と段差側面との接触を避けつつ、攪拌ピンの外周面と段差側面とを高さ方向に亘って極力近接させることができる。
【0008】
また、第二の発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、前記攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンのみを前記封止体に接触させるとともに、前記ジャケット本体の前記段差側面にもわずかに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させ
るか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【0009】
かかる製造方法によれば、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、攪拌ピンがジャケット本体から受ける材料抵抗を極力小さくすることができる。また、回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンの外周面の回転中心軸に対する傾斜角度αから段差側面の鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンの外周面と段差側面とを平行にして、攪拌ピンの外周面と段差側面との接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。
【0010】
また、第三の発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、前記攪拌ピンは、先細りとなるように傾斜する外周面を備えるとともに平坦な先端面を備え、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンの先端を前記段差底面よりも深く挿入するとともに、前記攪拌ピンの前記外周面と前記段差側面とを離間させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させ
るか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【0011】
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の側面とを接合することができる。また、第一突合せ部においては、攪拌ピンのみを封止体のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールの回転中心軸を鉛直面に対してジャケット本体の中央部側または外周側に傾斜角度γだけ傾斜させているため、攪拌ピンとジャケット本体との接触を容易に回避することができる。また、回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンの外周面の回転中心軸に対する傾斜角度αから段差側面の鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンの外周面と段差側面とを平行にして、攪拌ピンの外周面と段差側面との接触を避けつつ、攪拌ピンの外周面と段差側面とを高さ方向に亘って極力近接させることができる。また、攪拌ピンの先端面を段差底面に挿入することにより、第二突合せ部をより確実に摩擦攪拌することができる。
【0012】
また、第四の発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を備えるジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体と、を攪拌ピンを備える回転ツールを用いて接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金によって形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金によって形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、前記攪拌ピンは、先細りとなるように傾斜する外周面を備えるとともに平坦な先端面を備え、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する段差部を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記段差側面と前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記攪拌ピンの先端を前記段差底面よりも深く挿入するとともに、前記攪拌ピンの前記外周面を前記段差側面にわずかに接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って回転ツールを一周させて摩擦攪拌接合を行う本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を前記ジャケット本体の中央部側又は外周側に傾斜させ
るか、前記回転ツールの回転中心軸を傾斜させずに鉛直面と平行にして、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記段差側面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記攪拌ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとすると、γ=α−βにした状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【0013】
かかる製造方法によれば、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、攪拌ピンがジャケット本体から受ける材料抵抗を極力小さくすることができる。また、回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンの外周面の回転中心軸に対する傾斜角度αから段差側面の鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンの外周面と段差側面とを平行にして、攪拌ピンの外周面と段差側面との接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。また、攪拌ピンの先端面を段差底面に挿入することにより、第二突合せ部をより確実に摩擦攪拌することができる。
【0014】
また、前記封止体の板厚を前記段差側面の高さよりも大きくすることが好ましい。これにより、接合部の金属不足を容易に補うことができる。
【0015】
また、前記封止体の側面に傾斜面を形成し、前記載置工程では、前記段差側面と前記傾斜面とを面接触させることが好ましい。これにより、接合部の金属不足を容易に補うことができる。
【0016】
また、前記封止体はアルミニウム合金展伸材で形成し、前記ジャケット本体はアルミニウム合金鋳造材で形成することが好ましい。
【0017】
また、前記回転ツールの外周面に基端から先端に向うにつれて左回りの螺旋溝を刻設した場合、前記回転ツールを右回転させ、前記回転ツールの外周面に基端から先端に向うにつれて右回りの螺旋溝を刻設した場合、前記回転ツールを左回転させることが好ましい。これにより、螺旋溝によって塑性流動化した金属が攪拌ピンの先端側に導かれるため、バリの発生を少なくすることができる。
【0018】
また、前記本接合工程では、前記回転ツールの移動軌跡に形成される塑性化領域のうち、前記ジャケット本体側がシアー側となり、前記封止体側がフロー側となるように前記回転ツールの回転方向及び進行方向を設定することが好ましい。これにより、前記ジャケット本体側がシアー側となり、第一突合せ部の周囲における攪拌ピンによる攪拌作用が高まり、第一突合せ部における温度上昇が期待でき、第一突合せ部において段差側面と封止体の側面とをより確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
本発明の実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る液冷ジャケット1の製造方法は、ジャケット本体2と、封止体3とを摩擦攪拌接合して液冷ジャケット1を製造するものである。液冷ジャケット1は、封止体3の上に発熱体(図示省略)を設置するとともに、内部に流体を流して発熱体と熱交換を行う部材である。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0022】
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。準備工程は、ジャケット本体2と封止体3とを準備する工程である。ジャケット本体2は、底部10と、周壁部11とで主に構成されている。ジャケット本体2は、第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
【0023】
図1に示すように、底部10は、平面視矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。周壁部11の内周縁には段差部12が形成されている。段差部12は、段差底面12aと、段差底面12aから立ち上がる段差側面12bとで構成されている。
図2に示すように、段差側面12bは、段差底面12aから開口部に向かって外側に広がるように傾斜している。段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βは適宜設定すればよいが、例えば、鉛直面に対して3°〜30°になっている。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。ここで鉛直面とは、回転ツールFの進行方向ベクトルと鉛直方向ベクトルで構成される平面と定義する。
【0024】
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する板状部材である。封止体3は、段差部12に載置される大きさになっている。封止体3の板厚は、段差側面12bの高さと略同等になっている。封止体3は、第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。
【0025】
載置工程は、
図2に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程では、段差底面12aに封止体3の裏面3bを載置する。段差側面12bと封止体3の側面3cとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、段差側面12bと封止体3の側面3cとが面接触する場合と、本実施形態のように断面略V字状の隙間をあけて突き合わされる場合の両方を含み得る。また、段差底面12aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第二突合せ部J2が形成される。本実施形態では、封止体3を載置すると、周壁部11の端面11aと、封止体3の表面3aとは面一になる。
【0026】
本接合工程は、
図3及び
図4に示すように、回転ツールFを用いてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌接合する工程である。回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置(図示省略)の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。回転ツールFが連結される摩擦攪拌装置は、例えば先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームであり、回転ツールFの回転中心軸Cを自在に傾斜させることができる。
【0027】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。
図4に示すように、攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸Cに対して垂直であり、かつ、平坦な先端面F3が形成されている。つまり、攪拌ピンF2の外面は、先細りとなる外周面と、先端に形成された先端面F3とで構成されている。側面視した場合において、回転中心軸Cと攪拌ピンF2の外周面とのなす傾斜角度αは、例えば5°〜30°の範囲で適宜設定すればよい。
【0028】
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
【0029】
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(ジャケット本体2及び封止体3)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0030】
図3に示すように、回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う際には、封止体3に右回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、封止体3と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌を行う。回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W1が形成される。本実施形態では、封止体3に設定した開始位置Spに攪拌ピンF2を挿入し、封止体3に対して右廻りに回転ツールFを相対移動させる。
【0031】
図4に示すように、本接合工程では、回転ツールFの回転中心軸Cを鉛直面に対してジャケット本体2の中央部側(または外周側)に傾斜角度γだけ傾斜させることで、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させた状態で第一突合せ部J1に沿って一周させる。ここでの回転ツールFの回転中心軸Cを鉛直面に対して傾斜させる傾斜角度γは、回転中心軸Cと攪拌ピンF2の外周面とのなす傾斜角度αから段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値と同じになっており、段差側面12bと段差側面12bに臨む攪拌ピンF2の外周面とは平行である。つまり、回転ツールFの回転中心軸Cを傾ける方向は傾斜角度α,βの関係によって決定される。例えば、「α>β」の場合に傾斜角度γは正の値となり、ジャケット本体2の中央部側に回転ツールFの回転中心軸Cを傾ける。また、「α<β」の場合に傾斜角度γは負の値となり、ジャケット本体2の外周側に回転ツールFの回転中心軸Cを傾ける。また、「α=β」の場合に傾斜角度γは「0(ゼロ)」となり、回転ツールFの回転中心軸Cを傾けずに鉛直面と平行にする。本実施形態では、攪拌ピンF2の先端面F3もジャケット本体2に接触しないように挿入深さを設定している。「攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させた状態」とは、摩擦攪拌を行っている際に、攪拌ピンF2の外面がジャケット本体2に接触していない状態を言い、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとの距離がゼロである場合、又は攪拌ピンF2の先端面F3と段差底面12aとの距離がゼロである場合も含み得る。
【0032】
段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面までの距離が遠すぎると第一突合せ部J1の接合強度が低下する。段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面までの離間距離Lはジャケット本体2及び封止体3の材料によって適宜設定すればよいが、本実施形態のように攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bに接触させず、かつ、先端面F3を段差底面12aに接触させない場合は、例えば、0≦L≦0.5mmに設定し、好ましくは0≦L≦0.3mmに設定することが好ましい。
【0033】
回転ツールFを封止体3の廻りに一周させたら、塑性化領域W1の始端と終端とを重複させる。回転ツールFは、封止体3の表面3aにおいて、徐々に上昇させて引き抜くようにしてもよい。
図5は、本実施形態に係る本接合工程後の接合部の断面図である。塑性化領域W1は、第二突合せ部J2を超えてジャケット本体2に達するように形成されている。
【0034】
以上説明した本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、回転ツールFの攪拌ピンF2と段差側面12bとは接触させていないが、封止体3と攪拌ピンF2との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の側面3cとを接合することができる。また、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
【0035】
また、回転ツールFの回転中心軸Cを鉛直面に対してジャケット本体2の中央部側(または外周側)に傾斜角度γだけ傾斜させているため、第一突合せ部J1においては、攪拌ピンF2とジャケット本体2との接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、回転ツールFの回転中心軸Cの鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンF2の外周面の回転中心軸Cに対する傾斜角度αから段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを平行にして、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとの接触を避けつつ、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを高さ方向に亘って極力近接させることができる。例えば、傾斜角度αは、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)の技術分野による回転ツールの設計思想により決定され、また、傾斜角度βは、鋳造分野(例えばダイカスト)による金型の設計思想により決定される。つまり、傾斜角度α,βは共に設計思想によって最適な値があるので、「α=β」にすることは難しい場合がある。しかし、本実施形態によれば、傾斜角度α,βを自由に選択することが可能であるので、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができる。
【0036】
また、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌接合を行うため、攪拌ピンF2の回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側で、攪拌ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡をなくすことができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本接合工程では、回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、ジャケット本体2側がシアー側となり、封止体3側がフロー側となるように回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。これにより、第一突合せ部J1の周囲における攪拌ピンF2による攪拌作用が高まり、第一突合せ部J1における温度上昇が期待でき、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の側面3cとをより確実に接合することができる。
【0038】
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
【0039】
また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金は、封止体3の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、液冷ジャケット1の耐久性を高めることができる。また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、封止体3の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl−Si−Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、ジャケット本体2の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、加工性、熱伝導性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態では、攪拌ピンF2の先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入しないが、塑性化領域W1が第二突合せ部J2に達するようにすることで接合強度を高めることができる。
【0041】
[第一変形例]
次に、第一実施形態の第一変形例について説明する。
図6に示す第一変形例のように、封止体3の板厚を、段差側面12bの高さ寸法よりも大きくなるように設定してもよい。第一突合せ部J1は、隙間があるように形成されているため接合部が金属不足になるおそれがあるが、第一変形例のようにすることで金属不足を補うことができる。
【0042】
[第二変形例]
次に、第一実施形態の第二変形例について説明する。
図7に示す第二変形例のように、封止体3の側面3cを傾斜させて傾斜面を設けてもよい。側面3cは、裏面3bから表面3aに向かうにつれて外側に傾斜している。側面3cの傾斜角度δは、段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βと同一になっている。これにより、載置工程では、段差側面12bと、封止体3の側面3cとが面接触する。第二変形例によれば、第一突合せ部J1に隙間が発生しないため、接合部の金属不足を補うことができる。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の準備工程及び載置工程は、第一実施形態と同等であるため、説明を省略する。また、第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0044】
本接合工程は、
図8に示すように、回転ツールFを用いてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bにわずかに接触させ、かつ、先端面F3を段差底面12aに接触させないようにして摩擦攪拌接合を行う。
【0045】
ここで、段差側面12bに対する攪拌ピンF2の外周面の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bに接触させ、かつ、攪拌ピンF2の先端面F3を段差底面12aに接触させない場合は、オフセット量Nを、0<N≦0.5mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.25mmの間で設定する。
【0046】
図12に示す従来の液冷ジャケットの製造方法であると、ジャケット本体101と封止体102とで硬度が異なるため、回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側とで攪拌ピンF2が受ける材料抵抗も大きく異なる。そのため、塑性流動材がバランス良く攪拌されず、接合強度が低下する要因になっていた。しかし、本実施形態によれば、攪拌ピンF2の外周面とジャケット本体2との接触代を極力小さくしているため、攪拌ピンF2がジャケット本体2から受ける材料抵抗を極力小さくすることができる。また、本実施形態では、回転ツールFの回転中心軸Cの鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンF2の外周面の回転中心軸Cに対する傾斜角度αから段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを平行にして、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとの接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。これにより、本実施形態では、塑性流動材がバランス良く攪拌されるため、接合部の強度低下を抑制することができる。
【0047】
なお、第二実施形態でも、第一実施形態の第一変形例及び第二変形例のように、封止体3の板厚を大きくしたり、封止体3の側面3cに傾斜面を設けてもよい。
【0048】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の準備工程及び載置工程は、第一実施形態と同等であるため、説明を省略する。また、第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0049】
本接合工程は、
図9に示すように、回転ツールFを用いてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bに接触させず、かつ、先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入した状態で摩擦攪拌接合を行う。なお、「先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入」とは、摩擦攪拌を行っている際に、攪拌ピンF2の先端面F3の少なくとも一部が段差底面12aよりも低い位置にある状態を言い、先端面F3の一部又は全部がジャケット本体2に接触している場合を含む。
【0050】
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、攪拌ピンF2と段差側面12bは接触させていないが、封止体3と攪拌ピンF2との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の側面3cとを接合することができる。また、第一突合せ部J1においては攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
【0051】
また、回転ツールFの回転中心軸Cを鉛直面に対してジャケット本体2の中央部側(または外周側)に傾斜角度γだけ傾斜させているため、第一突合せ部J1においては、攪拌ピンF2と段差側面12bとの接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、回転ツールFの回転中心軸Cの鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンF2の外周面の回転中心軸Cに対する傾斜角度αから段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを平行にして、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとの接触を避けつつ、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを高さ方向に亘って極力近接させることができる。
【0052】
また、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bから離間させて摩擦攪拌接合を行うため、攪拌ピンF2の回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側で、攪拌ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡を小さくすることができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。本実施形態のように、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bに接触させず、かつ、先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入する場合、段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面までの離間距離Lを、例えば、0≦L≦0.5mmに設定し、好ましくは0≦L≦0.3mmに設定することが好ましい。
【0053】
また、攪拌ピンF2の先端面F3を段差底面12aに挿入することにより、接合部の下部をより確実に摩擦攪拌することができる。これにより、接合強度を高めることができる。また、攪拌ピンF2の先端面F3の全面が、封止体3の側面3cよりも封止体3の中央側に位置している。これにより、第二突合せ部J2の接合領域を大きくすることができるため、接合強度を高めることができる。
【0054】
なお、第三実施形態でも、第一実施形態の第一変形例及び第二変形例のように、封止体3の板厚を大きくしたり、封止体3の側面3cに傾斜面を設けてもよい。
【0055】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の準備工程及び載置工程は、第一実施形態と同等であるため、説明を省略する。また、第四実施形態では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0056】
本接合工程は、
図10に示すように、回転ツールFを用いてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bにわずかに接触させ、かつ、先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入して摩擦攪拌接合を行う。なお、「先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入」とは、摩擦攪拌を行っている際に、攪拌ピンF2の先端面F3の少なくとも一部が段差底面12aよりも低い位置にある状態を言い、先端面F3の一部又は全部がジャケット本体2に接触している場合を含む。
【0057】
ここで、段差側面12bに対する攪拌ピンF2の外周面の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、攪拌ピンF2の先端面F3を段差底面12aよりも深く挿入し、かつ、攪拌ピンF2の外周面を段差側面12bに接触させる場合は、オフセット量Nを、0<N≦1.0mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.85mmの間で設定し、より好ましくは0<N≦0.65mmの間で設定する。
【0058】
図12に示す従来の液冷ジャケットの製造方法であると、ジャケット本体101と封止体102とで硬度が異なるため、回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側とで攪拌ピンF2が受ける材料抵抗も大きく異なる。そのため、塑性流動材がバランス良く攪拌されず、接合強度が低下する要因になっていた。しかし、本実施形態によれば、攪拌ピンF2の外周面とジャケット本体2との接触代を極力小さくしているため、攪拌ピンF2がジャケット本体2から受ける材料抵抗を小さくすることができる。また、本実施形態では、回転ツールFの回転中心軸Cの鉛直面に対する傾斜角度γを、攪拌ピンF2の外周面の回転中心軸Cに対する傾斜角度αから段差側面12bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとを平行にして、攪拌ピンF2の外周面と段差側面12bとの接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。これにより、本実施形態では、塑性流動材がバランス良く攪拌されるため、接合部の強度低下を抑制することができる。
【0059】
また、攪拌ピンF2の先端面F3を段差底面12aに挿入することにより、接合部の下部をより確実に摩擦攪拌することができる。これにより、接合強度を高めることができる。つまり、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2の両方を強固に接合することができる。
【0060】
なお、第四実施形態でも、第一実施形態の第一変形例及び第二変形例のように、封止体3の板厚を大きくしたり、封止体3の側面3cに傾斜面を設けてもよい。
【0061】
[第三実施形態の第三変形例]
次に、第三実施形態の第三変形例について説明する。
図11に示すように、当該第三変形例では、回転ツールFAを用いる点で、第三実施形態と相違する。当該変形例では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。なお、第三変形例は、第四実施形態にも適用可能である。
【0062】
本接合工程で用いる回転ツールFAは、連結部F1と、攪拌ピンF2とを備えて構成されている。また、攪拌ピンF2には、先端面F3と突起部F4が形成されている。突起部F4は、先端面F3から下方に突出する部位である。突起部F4の形状は特に制限されないが、本実施形態では、円柱状になっている。突起部F4の側面と、先端面F3とで段差部が形成されている。
【0063】
当該第三変形例の本接合工程では、回転ツールFAの先端を段差底面12aよりも深く挿入する(突起部F4の側面が段差底面12aに位置する)。これにより、突起部F4に沿って摩擦攪拌されて突起部F4に巻き上げられた塑性流動材は先端面F3で押えられる。これにより、突起部F4周りをより確実に摩擦攪拌することができるとともに第二突合せ部J2の酸化被膜が確実に分断される。これにより、第二突合せ部J2の接合強度を高めることができる。また、当該変形例のように、突起部F4のみを第二突合せ部J2よりも深く挿入するように設定することで、先端面F3を第二突合せ部J2よりも深く挿入する場合に比べて塑性化領域W1の幅を小さくすることができる。これにより、塑性流動材が凹部13へ流出するのを防ぐことができるとともに、段差底面12aの幅も小さく設定することができる。
【0064】
なお、
図11に示す第三実施形態の第三変形例では、突起部F4(攪拌ピンF2の先端)が第二突合せ部J2よりも深く挿入するように設定しているが、先端面F3が第二突合せ部J2よりも深く挿入するように設定してもよい。
【0065】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。