【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、底部と当該底部の周縁に立設される枠状の周壁部とを有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の凹部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とで形成される中空部に熱輸送流体が流れる液冷ジャケットの製造方法であって、前記周壁部の端面に前記封止体を載置して前記端面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一重合部を形成する重合工程と、前記第一重合部に前記封止体の表面から攪拌ピンを備えた回転ツールの当該攪拌ピンのみを挿入し、前記ジャケット本体及び前記封止体に接触させた状態で前記第一重合部に沿って前記回転ツールを移動させつつ前記凹部周りに一周させて摩擦攪拌により本接合を行う本接合工程とを含み、前記本接合工程では、前記攪拌ピンの先端部に当該攪拌ピンの回転軸に対して垂直な平坦面と当該平坦面から突出する突起部とを備えた前記回転ツールを用い、前記平坦面を前記封止体のみに接触させるとともに、前記突起部の先端を前記第一重合部よりも深く挿入して前記第一重合部を接合することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、突起部に沿って摩擦攪拌されて突起部に巻き上げられた塑性流動材は平坦面で押えられる。これにより、突起部周りをより確実に摩擦攪拌することができるとともに第一重合部の酸化被膜が確実に分断される。よって、第一重合部の接合強度を高めることができる。
【0007】
また、突起部のみを第一重合部よりも深く挿入するように設定することで、平坦面を第一重合部よりも深く挿入する場合に比べて摩擦攪拌による塑性化領域の幅を小さくすることができる。これにより、塑性流動材がジャケット本体の凹部へ流出するのを防ぐことができる。
【0008】
また、ジャケット本体の底部及び前記封止体の裏面のいずれか一方に、いずれか他方に当接する支持部が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、支持部によって液冷ジャケットの強度を増大することができる。
【0009】
さらに、前記ジャケット本体は、前記底部から立ち上がり前記封止体の裏面に当接する支持部を有し、前記本接合工程では、前記第一重合部に対する摩擦攪拌接合に加えて、前記封止体の裏面と前記支持部の端面とが重ね合わされた第二重合部に対しても摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
本発明によれば、第二重合部に対しても摩擦攪拌接合を行うことで、ジャケット本体と封止体との接合強度をより高めることができる。
【0010】
そのうえ、前記本接合工程では、前記平坦面を前記封止体のみに接触させるとともに、前記突起部の先端を前記第二重合部よりも深く挿入して前記第二重合部を接合することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、突起部に沿って摩擦攪拌されて突起部に巻き上げられた塑性流動材は平坦面で押えられる。これにより、突起部周りをより確実に摩擦攪拌することができるとともに第二重合部の酸化被膜が確実に分断される。よって、第二重合部の接合強度を高めることができる。
【0012】
また、突起部のみを第二重合部よりも深く挿入するように設定することで、平坦面を第二重合部よりも深く挿入する場合に比べて摩擦攪拌による塑性化領域の幅を小さくすることができる。これにより、塑性流動材がジャケット本体の凹部へ流出するのを防ぐことができる。
【0013】
また、前記支持部は、前記周壁部から連続して形成されており、前記本接合工程では、前記第一重合部及び前記第二重合部に対する摩擦攪拌接合を連続して行うことが好ましい。
【0014】
本発明によれば、第一重合部及び第二重合部を連続して摩擦攪拌接合を行うことができるため、耐変形性の高い液冷ジャケットを製造することができるとともに、製造サイクルを向上させることができる。
【0015】
さらに、前記支持部は、前記周壁部の壁部の一方から連続するとともに、当該一方の壁部と対向する他方の壁部とは離間して形成されており、前記本接合工程では、前記封止体の表面のうち前記支持部に対応する位置に前記回転ツールを挿入し、前記第一重合部及び前記第二重合部に対して摩擦攪拌接合を連続して行うとともに、前記第一重合部に形成された塑性化領域の外側で前記封止体から前記回転ツールを引き抜くことが好ましい。
【0016】
本発明によれば、第一重合部及び第二重合部を連続して摩擦攪拌接合を行うことができるため、耐変形性の高い液冷ジャケットを製造することができるとともに、製造サイクルを向上させることができる。また、回転ツールを塑性化領域の内側に移動させると、周壁部と封止体とで構成される第一重合部及び第二重合部からの金属材料が流出するおそれがあるが、塑性化領域の外側に回転ツールを移動させて回転ツールを引き抜くことでかかる問題を解消することができる。
【0017】
また、前記ジャケット本体は、前記底部から立ち上がり前記封止体の裏面に当接する支持部を有し、前記支持部の端面に突出部を形成し、前記封止体には、前記突出部が挿入される孔部を設け、前記重合工程では、前記孔部に前記突出部を挿入して、前記孔部の孔壁と前記突出部の側面とが突き合わされた突合部を形成するとともに、前記封止体の裏面と前記支持部の端面とが重ね合わされた第二重合部を形成し、前記本接合工程では、前記第一重合部に対する摩擦攪拌接合に加えて、前記封止体の裏面と前記支持部の端面とが重ね合わされた前記第二重合部、前記封止体の前記孔部の孔壁と前記支持部の前記突出部の側面とが突き合された前記突合部に対しても摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0018】
本発明によれば、重合工程では、封止体の孔部に支持部の端面に形成した突出部を挿入することにより、封止体を支持部に固定し位置決めを容易にすることができる。また、本接合工程では、孔部の孔壁と突出部の側面とが突き合わされた突合部に対しても摩擦攪拌接合を行うことができるので、ジャケット本体と封止体との接合強度をより高めることができる。
【0019】
また、前記本接合工程では、前記突合部の摩擦攪拌接合に関しては、前記平坦面を前記ジャケット本体及び前記封止体の両方に接触させるとともに、前記突起部の先端を前記第二重合部よりも深く挿入して前記第二重合部及び前記突合部を接合することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、突起部に巻き上げられた塑性流動材は平坦面で押えられる。これにより、第二重合部及び突合部の酸化被膜が確実に分断されるため接合強度をより高めることができる。
【0021】
そのうえ、前記封止体の表面に残存する前記回転ツールの引抜き跡に溶接金属を埋めて補修する補修工程を行うことが好ましい。
本発明によれば、回転ツールの引抜跡が無くなり液冷ジャケットの表面を平坦に仕上げることができる。
【0022】
また、前記本接合工程では、前記ジャケット本体の底部に冷却板を設け、前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
本発明によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。
【0023】
さらに、前記冷却板の冷却媒体が流れる冷却流路は、少なくとも前記回転ツールの移動軌跡に沿う平面形状を備えて形成されていることが好ましい。
本発明によれば、摩擦攪拌される部分を集中的に冷却できるため、冷却効率を高めることができる。
【0024】
そのうえ、前記冷却板の冷却媒体が流れる冷却流路は、前記冷却板に埋設された冷却管によって構成されていることが好ましい。
本発明によれば、冷却媒体の管理を容易に行うことができる。
【0025】
また、前記本接合工程では、前記ジャケット本体の内部に冷却媒体を流して前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
本発明によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。また、冷却板等を用いずに、ジャケット本体自体を利用して冷却することができる。
項10のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【0026】
そのうえ、前記ジャケット本体の底部及び前記封止体の裏面の少なくともいずれか一方に、複数のフィンが設けられていることが好ましい。
本発明によれば、冷却効率の高い液冷ジャケットを製造することができる。