(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記置換工程において、前記反応炉内の圧力を20Pa以下に真空引きする工程と、前記反応炉内にアンモニアガスを導入する工程とを繰り返す、請求項1または2に記載の窒化珪素パッシベーション膜の成膜方法。
前記窒化珪素パッシベーション膜を成膜する工程では、アンモニアの供給量とジクロロシランの供給量とを互いに等しくする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化珪素パッシベーション膜の成膜方法。
前記反応炉内の圧力を前記第1の圧力とした後、前記第2の温度への昇温の前に、前記反応炉のリーク検査を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化珪素パッシベーション膜の成膜方法。
前記窒化珪素パッシベーション膜を成膜する工程の後、ジクロロシランの供給を遮断して前記反応炉内の雰囲気をアンモニア雰囲気とし、前記第2の温度で前記反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気に置換する工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成膜方法。
前記窒化珪素パッシベーション膜を成膜する工程の後、ジクロロシランの供給を遮断して前記反応炉内の雰囲気をアンモニア雰囲気とし、前記反応炉内の温度を前記第2の温度より低い温度に降温した後、前記反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気に置換する工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、例えばGaN系半導体などの窒化物半導体を用いた半導体装置が開発されている。半導体装置では、半導体の最表面を保護(パッシベーション)するために絶縁性のシリコン化合物膜が設けられるが、窒化物半導体を用いた半導体装置の場合、同じ窒化物である窒化珪素(SiN)膜が用いられることが多い。窒化物半導体上にSiN膜を成膜する場合には、比較的低温で成膜する為に、プラズマを用いた成膜方法(プラズマCVD、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)スパッタ等)が用いられる。従って、窒化物半導体の表面には、プラズマによるダメージが形成される。
【0007】
一方、シリコン半導体上にSiN膜を成膜する場合には、減圧(Low Pressure;LP)CVD法を用いる。減圧CVD法は、成膜圧力を下げる代わりに成膜温度を高くすることにより、良質の膜を形成する方法である。シリコン半導体は高温時の耐性が高いため、このような減圧CVD法による成膜が適している。本発明者は、窒化物半導体上のSiN膜にも減圧CVD法を用いることができれば、プラズマによるダメージを窒化物半導体の表面に与えることなく、SiN膜を好適に形成することができると考えた。
【0008】
しかしながら、減圧CVD法によりSiN膜を成膜すると、高温且つ低圧の環境下、窒素原子が母体半導体材料から抜けてしまい、窒化物半導体の表面の結晶状態が荒れるという問題が知られている(非特許文献1を参照)。更に、減圧CVD法によりSiN膜を成膜する際には、珪素(Si)の原料ガスとして、面内均一性を高めるためモノシランではなくジクロロシラン(SiH
2Cl
2)を用いることがある。ジクロロシランには、窒化物半導体に対してエッチングガスとして作用する塩素原子が含まれている。従って、塩素のエッチング作用により、窒化物半導体の表面の結晶状態が更に荒れてしまう。表面の結晶状態が荒れると、半導体装置の動作特性が劣化してしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、減圧CVD法を用いて窒化物半導体上にSiNパッシベーション膜を成膜する際に、窒化物半導体の表面の結晶状態の荒れを低減できるSiNパッシベーション膜の成膜方法及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る窒化珪素パッシベーション膜の成膜方法は、窒化物半導体に接する窒化珪素パッシベーション膜を成膜する方法であって、窒化物半導体を500℃以下の第1の温度に設定された反応炉内に導入する工程と、反応炉内を窒素(N
2)雰囲気とし、反応炉内の圧力を30kPa以上の第1の圧力に維持しつつ、反応炉内の温度を750℃以上の第2の温度に変更する工程と、反応炉内の温度を第2の温度に維持しつつ、反応炉内の窒素雰囲気からアンモニア(NH
3)雰囲気への置換を20分以内で行うとともに、圧力を100Pa以下の第2の圧力に減圧する置換工程と、反応炉内にジクロロシラン(SiH
2Cl
2)を供給して窒化珪素パッシベーション膜を成膜する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明による窒化珪素パッシベーション膜の成膜方法及び半導体装置の製造方法によれば、減圧CVD法を用いて窒化物半導体上に窒化珪素パッシベーション膜を成膜する際に、窒化物半導体の表面の結晶状態の荒れを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る窒化珪素(SiN)パッシベーション膜の成膜方法及び半導体装置の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る成膜方法によって形成されるSiNパッシベーション膜を示す側面図である。このSiNパッシベーション膜3は、窒化物半導体層5の表面と接しており、窒化物半導体層5の表面上に減圧CVD法によって成膜されたものである。窒化物半導体層5は、例えば炭化シリコン(SiC)などの基板7上に成長した層であって、例えばGaN層である。窒化物半導体層5及び基板7は、エピタキシャルウェハ9を構成する。
【0015】
図2は、本実施形態によるSiNパッシベーション膜3の成膜方法を示すフローチャートである。まず、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて、窒化物半導体層5を基板7上に成長し、エピタキシャルウェハ9を作製する(工程S1)。次に、減圧CVD法を用いて、SiNパッシベーション膜3を窒化物半導体層5上に成長する(工程S2)。この工程S2の詳細について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図3は、SiNパッシベーション膜3を成長する際の反応炉内の温度(以下、炉内温度という)および供給ガスの手順を示す図である。
【0016】
まず、炉内温度を、500℃以下の第1の温度に設定する(工程S21)。この第1の温度は、400℃以下であってもよく、或いは300℃以下であってもよい。また、この第1の温度は、室温(25℃)以上であってもよい。一実施例では、第1の温度は500℃である。炉内温度が第1の温度で安定した後、窒化物半導体層5を含むエピタキシャルウェハ9を大気雰囲気にて減圧CVD装置の反応炉内にセットする(工程S22)。次に、反応炉内の真空引きと窒素(N
2)の導入とを繰り返し行うことにより(サイクルパージ)、反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気に置換する(工程S23)。
【0017】
上記のサイクルパージが終了した後、反応炉内の圧力(以下、炉内圧力という)を、3kPa以上の第1の圧力に変更する(工程S24)。この第1の圧力は、30kPa以上であってもよい。また、この第1の圧力は、大気圧(100kPa)以下であってもよい。一実施例では、第1の圧力は30kPaである。そして、反応炉のリーク検査を行う。リーク検査は、反応炉を真空引きした後、反応炉につながる配管を全て閉じ、反応炉を封止した状態で、炉内圧力の変化を確認する作業である。その後、炉内圧力を第1の圧力に維持しつつ、炉内温度を750℃以上の第2の温度に変更する(工程S25)。この時の昇温速度(レート)は10℃/分程度が好ましい。一例では、500℃から800℃まで30分を要して昇温する。この第2の温度は、800℃以上であってもよく、また900℃以下であってもよい。一実施例では、第2の温度は800℃である。
【0018】
続いて、炉内を減圧するとともに、反応炉内の雰囲気を窒素からアンモニア(NH
3)に置換する(工程S26、置換工程)。まず、反応炉内を真空引きしてその圧力を第1の圧力よりも低い第2の圧力にする。第2の圧力は、100Pa以下でもよく、あるいは20Pa以下でもよい。また、第2の圧力は、10Pa以上でもよい。次いで、反応炉内にアンモニアを導入する。一例では、炉内圧力が20Paとなるまで真空引きした後、アンモニアを導入する。上記の真空引き及びアンモニアの導入を数回繰り返す。
【0019】
最後の真空引きの後、反応炉内にジクロロシラン(SiH
2Cl
2)及びアンモニアを供給して、SiNパッシベーション膜3を成膜する(工程S27)。この工程S27では、アンモニア流量及びジクロロシラン流量を互いに略等しくしてもよい。アンモニア流量及びジクロロシラン流量は、例えば共に100sccmである。1sccmは、1atm、0℃における1cm
3/分を表す。また、反応炉内を窒素雰囲気からアンモニア雰囲気に置換する際の反応炉内の真空引きにおいて、窒化物半導体層5の表面を減圧雰囲気(例えば100Pa以下)に晒す時間の合計は、20分以下が望ましい。一例では、この時間を10分以下に設定する。
【0020】
SiNパッシベーション膜3の成膜が完了した後、ジクロロシランの供給を遮断して反応炉内の雰囲気をアンモニア雰囲気とする。次いで、炉内温度を第2の温度より低い所定の温度(例えば700℃)まで降温する。そして、反応炉内を窒素雰囲気に置換するため、窒素ガスによるサイクルパージを行い、ジクロロシランが分解して生成された塩素ガスを検出限界まで希釈する(工程S28)。その後、反応炉からエピタキシャルウェハ9を取り出す(工程S29)。以上の工程により、窒化物半導体層5上にSiNパッシベーション膜3が成膜される。なお、この例では成膜後、反応炉内を降温させた後に窒素雰囲気への置換を行っているが、成膜後、炉内温度を成膜温度(第2の温度)に維持した状態で、反応炉内を窒素雰囲気に置換してもよい。この場合、反応炉内を窒素雰囲気に維持した状態で、炉内温度を初期温度(例えば500℃)まで低下させる。
【0021】
以上に説明した、本実施形態によるSiNパッシベーション膜の成膜方法によって得られる効果について説明する。
図2に示された本実施形態の工程S24では、昇温時の炉内圧力を、30kPa以上といった極めて高い値に設定している。
図4は、昇温時の炉内圧力と、窒化物半導体層5の表面粗さを表すRMS(Root Mean Square)値との関係を示すグラフである。また、下の表1は、
図4に示されたグラフの基の数値である。
【表1】
【0022】
窒化物半導体層5の表面のRMS値は、窒化物半導体層5上に成膜されたSiNパッシベーション膜3をフッ酸(HF)により除去した後、窒化物半導体層5の表面を原子間力顕微鏡(AFM)により測定して得られた数値である(以降のグラフも同様)。なお、この関係を取得するに際して、反応炉内にエピタキシャルウェハ9を導入する際の温度を400℃とし、その後の工程は上記説明のとおりとした。昇温時の炉内圧力のみをパラメータとした。
【0023】
図4及び表1を参照すると、昇温時の炉内圧力が高くなるに従って、窒化物半導体層5の表面のRMS値が次第に低下している。そして、炉内圧力が3kPa以上になると、RMS値が0.43nmにまで低下し、炉内圧力が30kPa以上になると、RMS値が0.32nmにまで低下している。更に、炉内圧力が100kPa以上になると、RMS値が0.27nmにまで更に低下している。
【0024】
また、
図2に示された本実施形態の工程S21では、エピタキシャルウェハ9導入時の炉内温度を500℃以下といった低い温度に設定している。
図5は、ウェハ導入時の炉内温度と、窒化物半導体層5の表面粗さを表すRMS値との関係を示すグラフである。また、下の表2は、
図5に示されたグラフの基の数値である。
【表2】
なお、この関係を取得するに際して、昇温時の炉内圧力を100kPa(大気圧)とした。また、ジクロロシランを供給して成膜を開始するまでの間、窒化物半導体層5の表面を減圧下(第2の圧力)に晒す時間の合計を5分とした。
【0025】
図5を参照すると、ウェハ導入時の炉内温度が低くなるに従って、窒化物半導体層5の表面のRMS値が次第に低下していることがわかる。そして、炉内温度が500℃以下になると、RMS値が0.28nmにまで低下している。更に、炉内温度が400℃以下になると、RMS値が0.27nmにまで低下している。
【0026】
また、本実施形態では、ウェハ導入時の温度(第1の温度)にて炉内雰囲気の置換及びリーク検査を実施するので、昇温後の成膜温度(第2の温度)下で減圧後の炉内圧力(第2の圧力)に窒化物半導体層5の表面を晒す時間、すなわち、減圧してから成膜を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0027】
図6は、成膜温度下にて窒素雰囲気からアンモニア雰囲気への置換を開始してから、ジクロロシランを供給して成膜を開始する迄の時間と、窒化物半導体層5の表面粗さを表すRMS値との関係を示すグラフである。また、下の表3は、
図6に示されたグラフの基の数値である。この時間はすなわち、成膜温度下にて窒化物半導体層5の表面を減圧環境下に晒す時間に相当する。実際には、反応炉内の減圧と、反応炉内へのアンモニアの導入とを数回繰り返すので、窒化物半導体層5の表面が減圧環境下に晒される時間はこれよりも短い。
【表3】
【0028】
図6を参照すると、成膜前の減圧環境に晒される時間が短くなるに従って、窒化物半導体層5の表面のRMS値が次第に低下している。そして、減圧環境に晒される時間が20分以下になると、RMS値が0.32nmにまで低下している。更に、この時間が10分以下になるとRMS値が0.28nmにまで低下し、この時間が5分以下になるとRMS値が0.27nmにまで低下している。一つの指標としてRMS値を0.35程度とすると、成膜前に減圧環境に晒される時間は20分以内であることが好ましい。
【0029】
ここで、
図7〜
図9は、AFMにより得られた窒化物半導体層5の表面画像(撮像範囲1μm×1μm)である。
図7は窒化物半導体層5の表面が殆ど荒れていない状態(表面荒さのRMS値が0.35nm未満)を示し、
図8は窒化物半導体層5の表面がやや荒れている状態(表面荒さが0.35以上0.50未満)を示し、
図9は窒化物半導体層5の表面が荒れている状態(表面荒さが0.50以上)を示す。
図7は、窒化物半導体層5の成長後、SiNパッシベーション膜3を成膜する前の状態であり、原子層ステップを明瞭に視認でき、十数個の転移と呼ばれる欠陥が見える。そして、RMS値が0.35nmを超えると、
図8に示されるように、窒素抜けとみられる微小なピットが観測され始める。更に、RMS値が0.50nmを超えると、
図9に示されるように、窒化物半導体層5の表面の原子層ステップを観測できなくなる程度に表面荒れが生じる。この荒れは、
図8の表面に生じている色の濃い点が原因であり、AFMのラインスキャンによって観測すると、幅5〜20nm程度、深さ0.5〜2nm程度の微小なピットが見える。
図9の表面ではこの微小ピットが増え、且つ大きくなり互いに重なることによって、更に荒れたと考えられる。
【0030】
上述したように、昇温時の炉内圧力が30kPa以上になると、RMS値が0.32nmにまで低下する。従って、
図2の工程S24において昇温時の炉内圧力を30kPa以上に設定することにより、
図7に示されるような殆ど荒れていない窒化物半導体層5の表面を得ることができる。
【0031】
また、上述したように、エピタキシャルウェハ9を導入する時の炉内温度が500℃以下になると、RMS値が0.32nmにまで低下する。従って、
図2の工程S21においてウェハ導入時の炉内温度(第1の温度)を500℃以下に設定することにより、
図8に示されるような殆ど荒れていない窒化物半導体層5の表面を得ることができる。
【0032】
また、上述したように、炉内温度が成膜温度(第2の温度)に達した後、実際に成膜を始めるまでの待機時間の少なくとも一部において、窒化物半導体層5の表面は減圧環境(第2の圧力)下に晒される。この待機時間を20分以内とすることにより、
図8に示されるような殆ど荒れていない窒化物半導体層5の表面を得ることができる。
【0033】
また、上述したように、第2の温度が900℃以下であってもよい。これにより、第2の温度による窒化物半導体層5の表面の結晶状態の荒れを更に抑制することができる。
【0034】
また、上述したように、置換工程S26において、炉内圧力を20Pa以下に真空引きする工程と、反応炉内にアンモニアガスを導入する工程とを繰り返してもよい。一般的には、窒素からアンモニア雰囲気に切り替える際には、窒素雰囲気にて1Pa以下まで真空引きを行い、アンモニアガスを導入して第2の圧力(例えば10Pa〜100Pa)に圧力を制御する。しかし、高温である第2の温度において炉内圧力を1Pa以下の低圧にすることは、窒化物半導体層5の表面の結晶状態の荒れを促進させてしまう。上記のように、炉内圧力を20Pa以下にする工程とアンモニアガスを導入する工程とを繰り返すことによって、炉内圧力を1Pa以下といった低圧にすることなく第2の圧力に制御することができる。従って、窒化物半導体層5の表面の結晶状態の荒れを更に抑制することができる。
【0035】
また、上述したように、SiNパッシベーション膜を成膜する工程S27では、アンモニアの供給量とジクロロシランの供給量とを互いに等しくしてもよい。
【0036】
また、リーク試験は、一般的に第2の温度で実施することが多い。理由は、成膜直前であり、成膜温度でもある第2の温度で実施する方が、リーク試験の確度が高いためである。しかしながら、本実施形態のように、反応炉のリーク検査を、反応炉内の圧力を第1の圧力とした後、第2の温度への昇温の前に行ってもよい。これにより、窒化物半導体層5の表面を減圧環境(第2の圧力)下に晒す時間を短くすることができる。
【0037】
また、上述したように、工程S27の後、ジクロロシランの供給を遮断して反応炉内の雰囲気をアンモニア雰囲気とし、第2の温度で反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気に置換してもよい。
【0038】
或いは、上述したように、工程S27の後、ジクロロシランの供給を遮断して反応炉内の雰囲気をアンモニア雰囲気とし、反応炉内の温度を第2の温度より低い温度に降温した後、反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気に置換してもよい。これにより、降温中の窒化物半導体層5の表面の結晶状態の荒れを抑制する効果が期待できる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態として、上記第1実施形態によるSiNパッシベーション膜3の成膜方法を含む、窒化物半導体を主構成材料とする半導体装置の製造方法を説明する。
図10〜
図12は、本実施形態による製造方法の各工程を示す図である。本実施形態は、半導体装置としてGaN−HEMTを例示する。
【0040】
まず、
図10の(a)に示すように、基板10上に、MOCVD法を用いて、複数の窒化物半導体層を含む積層構造20を成長する。基板10は、例えば(0001)主面を有するSiC基板であり、積層構造20の積層方向は例えば[0001]方向である。積層構造20は、基板10側から順に形成される核形成層12、電子走行層14、電子供給層16、およびキャップ層18を含む。核形成層12は、例えば厚さ数十nmのAlN層である。電子走行層14は、例えば厚さが1000nmのアンドープGaN層である。電子供給層16は、例えば厚さ20nmのn型AlGaN層である。キャップ層18は、例えば厚さ5nmのn型GaN層である。
【0041】
次に、
図10の(b)に示すように、積層構造20の上面に接するSiNパッシベーション膜(SiN膜)26を、減圧CVD法を用いて成膜する。このとき、第1実施形態によるSiNパッシベーション膜3の成膜方法を適用する。成膜温度は、例えば800℃である。また、原料ガスとして、アンモニアガス及びジクロロシラン(SiH
2Cl
2)を用いる。SiN膜26の厚さを、例えば100nmとする。
【0042】
続いて、
図10の(c)に示すように、SiN膜26上に、フォトレジスト50を塗布する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト50に開口50aを形成する。フォトレジスト50をマスクとしてフッ素(F)原子を含む反応性ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)によりSiN膜26及びキャップ層18に開口を形成する。その後、フォトレジスト50を除去する。
【0043】
続いて、
図11の(a)に示すように、SiN膜26上に、別のフォトレジスト51を塗布する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト51の開口51aをSiN膜26の開口上に形成する。フォトレジスト51に形成する開口51aは、先のフォトレジスト50に形成する開口50aよりも広い。開口51a内では、SiNパシベーション膜26に形成した開口内にキャップ層18が露出する。塩素(Cl)を含む反応性ガスを用いたRIEにより、露出しているキャップ層18を除去する。この時、SiN膜26の開口の周囲でレジストの開口51aにより露出したSiN膜26の表面が、塩素プラズマに晒される。
【0044】
次いで、SiN膜26の開口を介して電子供給層16に接触するソース電極22およびドレイン電極24を、蒸着法を用いて形成する。ソース電極22およびドレイン電極24は、共にTi膜およびAl膜を有する。Ti膜の膜厚は例えば30nm、Al膜の膜厚は例えば300nmである。Ti膜はTa膜でもよい。フォトレジスト51上には金属23が堆積する。その後、フォトレジスト51を除去することにより、フォトレジスト51上の金属23を除去する。これにより、電子供給層16に接するソース電極22およびドレイン電極24が形成される。例えば500℃の熱処理によってTi膜(若しくはTa膜)とAl膜とを合金化(アロイ)することにより、電子供給層16に接触するソース電極22およびドレイン電極24を形成する。アロイ温度が550℃以上であれば、コンタクト抵抗の低抵抗化に更に寄与する。
【0045】
続いて、
図11の(b)に示すように、積層構造20上に、更に別のフォトレジスト52を塗布する。フォトリソグラフィにより、フォトレジスト52に開口52aを形成する。フォトレジスト52をマスクとしてRIEによりSiN膜26に開口を形成する。その後、フォトレジスト52を除去する。
【0046】
続いて、積層構造20上に、フォトレジストを塗布する。ゲート電極パターンとなる開口をフォトリソグラフィによりフォトレジストに形成する。蒸着法を用い、
図12の(a)に示すように、キャップ層18に接触するゲート電極28を形成する。ゲート電極28は、積層構造20側からNi膜およびAu膜を有する。Ni膜の膜厚は例えば50nm、Au膜の膜厚は例えば400nmである。蒸着法としては、EB蒸着法、スパッタ蒸着法、抵抗加熱蒸着法など種々の方法を用いることができる。フォトレジスト上に堆積した金属は、フォトレジストとともに除去される。
【0047】
続いて、
図12の(b)に示すように、SiN膜26上に例えばPECVD法により絶縁膜30を形成し、この絶縁膜30によりゲート電極28を覆う。絶縁膜30は、例えば膜厚が500nmのSiN膜である。バッファードフッ酸を用いたエッチングにより絶縁膜30に開口30aを形成し、ソース電極22およびドレイン電極24を露出させる。以上の工程を経て、HEMT1Aが作製される。
【0048】
以上に説明した半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態に記載の方法を用いてSiN膜26を減圧CVD法により成膜することによって、窒化物半導体(キャップ層18)の表面の結晶状態の荒れを低減できる。
図13は、ソースをオープンとし、ゲート−ドレイン間に0〜50Vの逆方向電圧を与えた時のリーク電流値を示すグラフである。図中のグラフG1〜G3は、それぞれ成膜前条件を下記の条件1〜3とした場合を示す。なお、ソース・ドレイン間隔Lsdを7.2μmとし、ソース・ゲート間隔Lsgを1.4μmとし、ゲート・ドレイン間隔Lgdを5.2μmとし、ゲート長Lgを0.6μmとし、ゲート幅Wgを500μmとした。
【表4】
【0049】
表4に示されるように、ウェハ導入時の炉内温度が400℃、昇温時の炉内圧力が100kPa、且つ成膜前の待機時間が5分である条件1では、ウェハ導入時の炉内温度が600℃、昇温時の炉内圧力が3kPa以下、且つ成膜前の待機時間が30分である条件2及び条件3と比較して、積層構造20の表面荒れ(RMS値)が少なくなる。そして、
図13に示すように、積層構造20の表面荒れが少ないほど、ゲートリーク電流が小さくなり、HEMT1Aの動作特性及び長期信頼性が向上する。
【0050】
本発明によるSiNパッシベーション膜の成膜方法及び半導体装置の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、第2実施形態では半導体装置の例としてHEMTを示したが、本発明による半導体装置の製造方法はHEMT以外にも様々な窒化物半導体装置に適用できる。