特許第6885313号(P6885313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885313
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20210531BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210531BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210531BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J11/06
   C09J7/38
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-230347(P2017-230347)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99646(P2019-99646A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝行
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−084632(JP,A)
【文献】 特開2010−180378(JP,A)
【文献】 特開2008−174738(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/137559(WO,A1)
【文献】 特開2009−155514(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0093533(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2017−0101774(KR,A)
【文献】 特開2016−193612(JP,A)
【文献】 特開2016−215629(JP,A)
【文献】 特開2017−132862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリマー、帯電防止剤および硬化剤を含んでなる粘着剤であって、
アクリルポリマーは、炭素数4のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)、炭素数8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(C)およびアルキレンオキシド基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(D)を含み、かつカルボキシル基含有モノマーを含まない、モノマー混合物の共重合物であり、
前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との合計100質量%に対して、前記モノマー(C)4〜20質量%および前記モノマー(D)10〜40質量%を含み、
前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との質量比((A)/(B))が、55/45〜95/5である粘着剤。
【請求項2】
前記帯電防止剤が、イミダゾリウム塩および/またはホスホニウム塩である、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記アクリルポリマーの重量平均分子量が20〜80万である、請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記帯電防止剤を、前記アクリルポリマー100質量部に対して0.01〜1.5質量部含む、請求項1〜3いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記硬化剤を、前記アクリルポリマー100質量部に対して0.01〜20質量部含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項6】
基材、および請求項1〜5いずれか1項に記載の粘着剤から形成してなる粘着剤層を備えた粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワープロ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイや、または偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品、電子基板等の表面には、通常、表面保護及び機能性付与の目的で、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の透明な表面保護フィルム(基材フィルム)が粘着剤を介して積層される。
【0003】
これら表面保護粘着フィルムが、偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品に貼り合わされた場合、表面保護粘着フィルムを剥離する際に生じた剥離帯電圧が高いと、液晶や電子回路が破壊される恐れがある為、安定して高い剥離帯電防止性が求められている。
また、表面保護粘着フィルムは偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品に貼り合わせた状態のまま、光学部品の色相やコントラストなどの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護粘着フィルム自体が透明であることはもとより、貼り合せた際に気泡を抱き込んでしまうことから、迅速に貼り合せられる性能、即ち濡れ性が求められる。
【0004】
表面保護粘着フィルムとして、例えば、特許文献1では、ベースポリマーと25℃で液状を呈する溶融塩であるイオン性液体からなる粘着剤が開示されている。しかし、貼り付け後に時間経過と共にイオン性液体がブリードアウトし、被着体を汚染するという問題があった。また、特許文献2では、カルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物、帯電防止剤および、ポリエーテル変性シロキサン化合物とを含む粘着剤が開示されている。しかし、高温環境化や高温高湿環境下において、浮きや剥がれが発生するという問題があった。また、特許文献3では、カルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物および帯電防止剤とを含む粘着剤が開示されている。しかし、十分な再剥離性、汚染性を得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−070400号公報
【特許文献2】特開2015−105299号公報
【特許文献3】特開2015−98560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、各種ディスプレイ、偏光板等の光学部材の表面保護粘着フィルム用の粘着剤として好適に使用できる、再剥離性、耐汚染性、耐熱性、耐湿熱性、濡れ性、帯電防止性に優れた粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す粘着剤により、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の実施態様は、アクリルポリマー、帯電防止剤および硬化剤を含んでなる粘着剤であって、アクリルポリマーは、炭素数4のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)、炭素数8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(C)およびアルキレンオキシド基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(D)を含み、かつカルボキシル基含有モノマーを含まない、モノマー混合物の共重合物であり、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との合計100質量%に対して、前記モノマー(C)4〜20質量%および前記モノマー(D)10〜40質量%を含み、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との質量比((A)/(B))が、55/45〜95/5である粘着剤である。
【0009】
また、本発明の実施態様は、前記帯電防止剤が、イミダゾリウム塩および/またはホスホニウム塩である前記粘着剤である。
【0010】
また、本発明の実施態様は、前記アクリルポリマーの重量平均分子量が20〜80万である前記粘着剤である。
【0011】
また、本発明の実施態様は、前記帯電防止剤を、前記アクリルポリマー100質量部に対して0.01〜1.5質量部含む前記粘着剤である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、前記硬化剤を、前記アクリルポリマー100質量部に対して0.01〜20質量部含む前記粘着剤である。
【0013】
また、本発明の実施態様は、基材、および前記粘着剤から形成してなる粘着剤層を備えた粘着シートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、再剥離性、耐汚染性、耐熱性、耐湿熱性、濡れ性、帯電防止性が良好な表面保護フィルムを作製できる粘着剤および粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する用語を定義する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基含有単量体である。被着体といは、粘着シートを貼り付ける相手を指す。シート、フィルムおよびテープは同義語として扱う。
【0016】
粘着剤は、塗工により粘着剤層を形成し、基材を備えた粘着シートとして使用することが好ましい。粘着シートは、様々な被着体の保護ができるところディスプレイの保護に使用することが好ましい。
【0017】
<アクリルポリマー>
本明細書におけるアクリルポリマーは、炭素数4のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)、炭素数8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(C)およびアルキレンオキシド含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(D)を含むモノマー混合物の共重合物である。
【0018】
また、本明細書におけるアクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマーを含まないことを特徴とする。これらモノマーを含まないことにより、再剥離性および、被着体への汚染を抑制することができる。
【0019】
粘着剤は、アクリルポリマーの原料として炭素数4のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)(以下、モノマー(A)と略記することがある)を使用することで、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、耐汚染性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下での浮きおよび剥がれを抑制できる。
【0020】
炭素数4のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらの中でも粘着性能がより向上する面でアクリル酸ブチルが好ましい。
【0021】
粘着剤は、アクリルポリマーの原料として炭素数8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)(以下、モノマー(B)と略記することがある)を使用することで、粘着剤の緩和性が向上し、柔軟な粘着剤層が得られ、基材密着性に優れ、ぬれ性および高温環境下や高温高湿環境下での浮きおよび剥がれを抑制できる。
【0022】
炭素数8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル等が挙げられる。これらの中でも粘着性能がより向上する面でアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0023】
前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との質量比((A)/(B))は、55/45〜95/5であることが好ましく、60/40〜90/10であることがより好ましい。前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との質量比が、55/45〜95/5であることで粘着剤の凝集力と緩和性とを高い水準で両立し易い。
【0024】
粘着剤は、アクリルポリマーの原料として水酸基含有モノマー(C)(以下、モノマー(C)と略記することがある)を使用することで、粘着剤層に架橋によるポリマーネットワークが形成できる。この粘着剤層は、凝集力を有する上、耐汚染性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下での浮きおよび剥がれを抑制できる。
【0025】
水酸基含有モノマー(C)は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの中でも耐汚染性の向上、ならびに前記浮きおよび剥がれをより抑制できる面でアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0026】
水酸基含有モノマー(C)は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との合計100質量%に対して、4〜20質量%を含み、4〜15質量%含むことが好ましい。含有量率が4質量%以上になると凝集力が得易い。また、含有量率が20質量%以下になると凝集力と密着性を高い水準で両立し易い。
【0027】
粘着剤は、アクリルポリマーの原料としてアルキレンオキシド含有モノマー(D)(以下、モノマー(D)と略記することがある)を使用することで、基材との密着性が向上することに加え、濡れ性の良好な粘着剤層を形成できる。また、粘着シートは、貼付後に高温環境下や高温高湿環境下に曝された後、光学特性の低下を抑制する耐久性が得られる。
【0028】
アルキレンオキシド含有モノマー(D)は、下記一般式(1)、または一般式(2)で示すモノマーである。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
(一般式(1)および一般式(2)中、R1およびR2は、水素原子またはメチル基を表す。nおよびmは、繰り返し単位を表す整数であり、2≦n≦25、2≦m≦25であり、2≦n≦13、2≦m≦5であることが好ましい。)
【0031】
一般式(1)で示すモノマーは、例えば、メトキシジエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=2)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=3)、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=23)、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=2)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=3)、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=4)、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=23)が挙げられる。
【0032】
一般式(2)で示すモノマーは、例えば、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rが水素原子、m=3)、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rがメチル基、m=3)
これらの中でも被着体への濡れ性が向上する面で、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール#600メタクリレートが好ましい。
【0033】
アルキレンオキシド含有モノマー(D)は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との合計100質量%に対して、10〜40質量%含み、10〜30質量%含むことが好ましい。含有量率が10質量%以上になると凝集力が得易い。また、含有量率が40質量%以下になる凝集力および基材への密着性を高度に両立できる。
【0034】
アクリルポリマーは、モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)およびモノマー(D)以外にその他モノマーを使用できる。その他モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ビニルモノマーが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0036】
アミド結合含有モノマーは、アミド結合またはアミド基を有するモノマーであり、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有する化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。
【0037】
エポキシ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0038】
アミノ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0039】
ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルな等が挙げられる。
その他モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0040】
その他モノマーは、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との合計100質量%に対して、1〜10質量%を含むことが好ましく、2〜5%質量%含むことがより好ましい。含有率が1質量%以上になると密着性がより向上する。また、含有率が10質量%以下になると凝集力と密着性を両立し易い。
【0041】
アクリルポリマーの重量平均分子量は、20万〜80万が好ましく、40万〜80万がより好ましい。20万〜80万の範囲にあることで凝集力がより向上するため、高温環境下や高温高湿環境下における浮きおよび剥がれがより抑制できる上、耐汚染性もより向上する。なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0042】
アクリルポリマーは、モノマー混合物を重合することで合成できる。重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60〜120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5〜12時間程度が好ましい。
【0043】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
【0044】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0045】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01〜10質量部を使用することが好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0046】
<帯電防止剤>
本明細書における帯電防止剤は、剥離帯電圧の低い粘着剤層を形成するために使用される。帯電防止剤をアルキレンオキシド含有モノマー(D)を含有するアクリルポリマーと共に用いることで、粘着剤組成物中の帯電防止剤の含有量を低減しても十分な帯電防止性を付与することができる。
【0047】
本発明で使用する帯電防止剤は、イオン性化合物であることが好ましく、有機カチオンとその対イオンであるアニオンとから成る。有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、イミダゾリウムカチオン、ホスホニウムカチオンが好ましい。
【0048】
有機カチオンの対イオンとなるアニオンは、特に限定されるものではなく、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。アニオンの例としては、クロライドアニオン[Cl-]、ブロマイドアニオン[Br-]、ヨーダイドアニオン[I-]、テトラクロロアルミネートアニオン[AlCl4-]、ヘプタクロロジアルミネートアニオン[Al2Cl7-]、テトラフルオロボレートアニオン[BF4-]、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[PF6-]、パークロレートアニオン[ClO4-]、ナイトレートアニオン[NO3-]、アセテートアニオン[CH3COO-]、トリフルオロアセテートアニオン[CF3COO-]、メタンスルホネートアニオン[CH3SO3-]、トリフルオロメタンスルホネートアニオン[CF3SO3-]、p−トルエンスルホネートアニオン[p−CH364SO3-]、ビス[トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO22-]、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン[(CF3SO23C−]、ヘキサフルオロアーセネートアニオン[AsF6-]、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン[SbF6-]、ヘキサフルオロニオベートアニオン[NbF6-]、ヘキサフルオロタンタレートアニオン[TaF6-]、ジメチルホスフィネートアニオン[(CH32POO-]、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン[F(HF)n-](nは1〜3) 、ジシアナミドアニオン[(CN)2-]、チオシアンアニオン[SCN-]、パーフルオロブタンスルホネートアニオン[C49SO3-]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル) ミドアニオン[(C25SO22N−]、パーフルオロブタノエートアニオン[C37COO-]、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル) イミドアニオン[(CF3SO2)(CF3CO)N-]などが挙げられる。上記の中でも、特に、帯電防止性能に優れるイオン性固体を与える点で、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンが好ましく、更にはヘキサフルオロホスフェートアニオン[PF6-]が好ましい。
【0049】
帯電防止剤として使用されるイオン性化合物の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩などが好適である。
【0050】
帯電防止剤として使用されるイオン性化合物の具体例を以下に列挙する。
ピリジニウム塩の例としては、N−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点:45℃)、N−オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N −ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点:48℃)、N −ブチル−ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点:75℃)、1−ブチル− 3−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロマイド( 融点:137℃)、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド(融点:158℃ )、1−ブチルピリジニウムブロマイド(融点:104℃)、1−ブチルピリジニウムクロライド(融点:132℃)、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート( 融点:75℃)、1−エチルピリジニウムブロマイド(融点:120℃)等が挙げられる。
【0051】
イミダゾリウム塩の例としては、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点:80℃)、1−ブチル−1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点:120〜121℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点:61℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点:136℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(融点:77℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート(融点:75〜80℃)、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート(融点:113℃)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点:125℃)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点:99℃)、1−ブチル− 3−メチルイミダゾリウムブロマイド(融点:78℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点:65℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド(融点:74℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点:80〜84℃ )、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(融点:79℃)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点:181℃)、1−メチルイミダゾリウムクロライド(融点:75℃)、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点:55℃)、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(融点: 70℃)等が挙げられる。
【0052】
アルキルアンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(融点:75℃)、テトラブチルアンモニウムブロマイド( 融点:119℃)、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点:62℃) 、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(融点:94 〜96℃)。テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(融点:161 〜163℃)、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(融点:64〜67℃)、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート(融点:78〜80℃)、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート(融点:50〜53℃)、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点:246℃)、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート(融点:74〜76℃)、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート(融点:90〜92℃)、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド(融点: 97℃)、テトラヘキシルアンモニウムヨージド(融点:99℃)、テトラオクチルアンモニウムクロライド(融点:50〜54℃)、テトラオクチルアンモニウムブロマイド( 融点:95〜98℃)、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド(融点:89〜91℃) 、テトラペンチルアンモニウムブロマイド(融点:99℃)、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点:185℃)、2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムジメチルホスフィネート等が挙げられる。」
【0053】
アルキルピロリジニウム塩の例としては、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロマイド(融点:160℃以上)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロライド(融点:114℃ 以上)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(融点:152 ℃)等が挙げられる。
【0054】
アルキルホスホニウム塩の例としては、テトラブチルホスホニウムブロマイド( 融点:104℃)、テトラブチルホスホニウムクロライド(融点:62〜66℃)、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(融点:96〜99℃)、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート(融点:59〜62℃)、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホネート(融点:54〜57℃)、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド(融点:57〜62℃)等が挙げられる。
上記イオン性化合物の中でも、イミダゾリウム塩またはホスホニウム塩が好ましい。
【0055】
また、イオン性化合物の融点は、30〜100℃であることが好ましい。室温に近い温度域では固体状態を保ち、かつカチオン部が親水性の低い有機カチオンであることで、粘着剤組成物に含ませた場合の溶出が生じにくい。
【0056】
帯電防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
粘着剤中における帯電防止剤の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、0.01〜1.5質量部含むことが好ましい。帯電防止剤の含有量が0.01質量部以上である場合、より優れた帯電防止性を示すことができる。含有量が1.5質量部以下であることで、被着体に対する汚染をより効果的に抑制することができる。
【0058】
<硬化剤>
硬化剤は、アクリルポリマーの水酸基と反応し、粘着剤層の凝集力が向上することに加え、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下における浮きおよび剥がれを抑制し、透明性がより向上する。
【0059】
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、酸無水物基含有化合物、金属キレート等が挙げられる。
【0060】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0061】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0065】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0066】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0067】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0068】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体がより好ましい。
【0069】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0070】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0071】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV−03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0072】
酸無水物基含有化合物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物である。酸無水物基含有化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂が挙げられる。なお、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、「酸無水物基含有化合物」に含まれる。
【0073】
テトラカルボン酸二無水物は、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、などが挙げられる。
【0074】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0075】
硬化剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0076】
硬化剤は、アクリルポリマー100質量部に対して0.01質量部〜20質量部含むことが好ましく、1質量部〜15質量部含むことがより好ましい。含有量が0.01質量部以上になると凝集力がより向上する。含有量が20質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなる。
【0077】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、任意成分として、可塑剤、有機シラン化合物、各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を含有できる。
【0078】
本発明の粘着剤は、粘着シートとして好適であるほか、各種プラスチックシート、一般ラベル・シールとしても非常に有用に使用できる。
【0079】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、基材、および粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。粘着シートは、例えば、基材に粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成して作製する。また、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、基材を貼り合わせて作製する。また、粘着剤層の基材と接していない面は、通常、異物の付着防止のため使用する直前まで剥離性シートを貼り合せる。
【0080】
粘着剤を塗工する際、溶媒で粘度を調整できる。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。
【0081】
基材の材質としては、例えば、プラスチック、紙、金属等が挙げられる。基材の形状はシート、フィルム、発泡体等が挙げられる。これらの基材に中でも、前記外観検査用途と考慮すると透明性を有するプラスチックが好ましい。基材は、単独または、複数の基材を積層した構成でもよい。
【0082】
プラスチックは、例えば、ポリビニルアルコールトリアセチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート)、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0083】
塗工は、例えば、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥は、例えば、熱風乾燥、赤外線、減圧法が挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度の熱風加熱である。
【0084】
粘着剤層の厚さは、1〜300μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。1μm以上になると所望の粘着力が得易い。また、300μmを超えても粘着力等の物性は、向上し難い。
【0085】
本発明の粘着シートは、光学部材の粘着シートとして好適に用いることができる。光学部材は、例えば、偏光板、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム等が挙げられる。
【0086】
また、本発明の粘着シートの用途は、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチスクリーンパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム用途にも適応できる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。また、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0088】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
装置名:島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0089】
<合成例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸ブチル(BA)40.0部、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)32.7部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)9.1部、アクリル酸メトキシジエチレングリコール(APEG30)、一般式(1)において、R1が水素原子、n=3)18.2部、酢酸エチル100部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000mPa・sのアクリルポリマー(1)溶液を得た。得られたアクリルポリマー(1)の重量平均分子量は30万であった。
【0090】
<合成例2〜21>
表1の質量比率に従って原料および配合量を変更した以外は、合成例1と同様の方法でアクリルポリマー(1)〜(21)をそれぞれ合成した。得られたアクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)を併せて表1に示す。尚、表中の数値は、特に断りのない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0091】
表1中の略号は以下の通りである。
BA:n−ブチルアクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
IBA:イソブチルアクリレート
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
EHMA: 2−エチルヘキシルメタクリレート
OA:オクチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
APEG30:メトキシトリプロピレングリコールアクリレート
(一般式(2)において、Rが水素原子、nが3であるモノマー)
MPEG90:メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート
(一般式(1)において、R1がメチル基、nが9であるモノマー)
【0092】
(実施例1)
<粘着剤の調製>
得られたアクリルポリマー(1)溶液中のアクリルポリマー(1)100部に対して、帯電防止剤として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート0.5部、イソシアネート硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体10部配合し、不揮発分が20%となる量の酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤を得た。
【0093】
<粘着シートの作成>
得られた粘着剤を、基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、「ルミラーT−60」、東レ社製)上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、剥離性シート「E7004」(厚み50μm、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)の片面を貼り合せ、「基材/粘着剤層/剥離性シート」の構成を作製した。次いで、得られた粘着シートを温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0094】
(実施例2〜15、比較例1〜8)
実施例1で使用した材料の替わりに、表2〜4に示した材料および配合量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤をそれぞれ作製した。更に、実施例1と同様にして、粘着シートをそれぞれ作製した。表2〜4中の略号は以下の通りである。
<帯電防止剤>
A−1:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート
A−2:1−ブチル−2,3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート
A−3:テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート
A−4:テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド
<硬化剤>
I−1:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体
I−2:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
I−3:イソホロンジイソシアネートのヌレート体
【0095】
(比較例9〜11)
比較例として下記特許文献の実施例に記載された粘着剤を用い、本明細書の実施例1と同様に粘着シートをそれぞれ作製した。
比較例9:特開2007−070400号公報に記載されている実施例1の粘着剤。
比較例10:特開2015−105299号公報に記載されている実施例4の粘着剤。
比較例11:特開2015−98560号公報に記載されている実施例6の粘着剤。
【0096】
得られた粘着シートを用いて、下記の方法及び基準に従い、再剥離性、耐汚染性、耐熱性、耐湿熱性、濡れ性、帯電防止性をそれぞれ評価した。
<再剥離性>
得られた粘着シートを25mm幅、100mm長のサイズに切削し試料とした。次いで剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)に貼着した後、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。次いで得られた測定試料を25℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した後、JISZ0237に準拠し、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で試料を無アルカリガラスから剥離した。剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:糊残り、曇りが無い。良好。
×:糊残り、曇りが有った。実用不可。
【0097】
<耐汚染性>
得られた粘着シートを100mm幅、100mm長のサイズに切削し試料とした。次いで剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)に貼着した後、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して十分に密着させることで測定試料を得た。次いで得られた測定試料を60℃、相対湿度95%の環境下で24時間放置した。その後、測定試料を25℃、相対湿度50%の環境下で1時間放置した後、無アルカリガラスから試料を剥離し、試料が貼付していた部分の無アルカリガラスの水接触角を測定した。試料を貼付する前の未処理無アルカリガラスの水接触角(ブランク)と比較し、下記の評価基準で判定を行った。なお、測定値には協和界面科学(株)製DM−501を用いて、水滴がガラスに接触してから1000m秒後の水接触角を用いた。
◎:ブランクの水接触角に対し、試験後のガラスの水接触角が±5度未満。優れている。
○:ブランクの水接触角に対し、試験後のガラスの水接触角が±5度以上±10度未満。実用域。
×:ブランクの水接触角に対し、試験後のガラスの水接触角が±10度以上。実用不可。
【0098】
<耐熱性および耐湿熱性>
得られた粘着シートを、幅150mm、縦200mmの大きさに切削し試料とした。次いで剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)に貼着した後、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して十分に密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐久性として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を150℃で500時間放置した後に、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。また、別途、同様に作製した測定試料を、高温高湿雰囲気での耐久性として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃、相対湿度85%で500時間放置した後に浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。
◎:浮き、剥がれが無い。優れている。
○:0.5mm未満の浮き、剥がれがあるが、実用域である。
×:0.5mm以上の浮き、剥がれがあり、実用不可である。
【0099】
<濡れ性>
得られた粘着シートを、幅100mm、縦150mmの大きさに切削し試料とした。次いで剥離性シートを剥がし、試料の両端を手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部を無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)に接触させた後、手を離し、自重で粘着剤層全体が無アルカリガラス板に貼着するまでの時間(秒数)を測定することで濡れ性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、15秒未満。優れている。
○:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、15秒以上〜30秒未満。実用域。
×:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、30秒以上。実用不可。
【0100】
<帯電防止性>
得られた粘着シートを25mm幅、100mm長のサイズに切削し試料とした。次いで剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)に貼着した後、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。次いで得られた測定試料を25℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した後、剥離帯電試験機にて剥離帯電圧(180度ピール、引っ張り速度300mm/秒;45mm幅)を測定した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:剥離耐電圧が0.5kV未満。優れている。
○:0.5kV以上1.0kV未満。実用域。
×:1.0kV以上。実用不可。
【0101】
表5の結果から、実施例の粘着剤は、再剥離性、耐汚染性、耐熱性、耐湿熱性、濡れ性が優れていた。一方、比較例の粘着剤は、前記特性を全て満たすことはできなかった。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】