(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合について説明する。
【0025】
本実施の形態にかかる水晶振動子101では、
図1に示すように、水晶振動板2(本発明でいう圧電振動板)と、水晶振動板2の第1励振電極221(
図4参照)を覆い、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221を気密封止する第1封止部材3と、この水晶振動板2の他主面212に、水晶振動板2の第2励振電極222(
図5参照)を覆い、第1励振電極221と対になって形成された第2励振電極222を気密封止する第2封止部材4が設けられている。この水晶振動子101では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されてサンドイッチ構造のパッケージ12が構成される。
【0026】
そして、水晶振動板2を介して第1封止部材3と第2封止部材4とが接合されることで、パッケージ12の内部空間13が形成され、このパッケージ12の内部空間13に、水晶振動板2の両主面211,212に形成された第1励振電極221及び第2励振電極222を含む振動部22が気密封止されている。本実施の形態にかかる水晶振動子101は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージ12では、キャスタレーションを形成せずに、貫通孔(第1〜第3貫通孔)を用いて電極の導通を図っている。
【0027】
次に、上記した水晶振動子101の各構成について、
図1〜7を用いて説明する。なお、ここでは、水晶振動板2と第1封止部材3と第2封止部材4が接合されていない夫々単体として構成されている各部材について説明を行う。
【0028】
水晶振動板2は、
図4,5に示すように、圧電材料である水晶からなり、その両主面(一主面211,他主面212)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施の形態では、水晶振動板2として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。
図4,5に示す水晶振動板2では、水晶振動板2の両主面211,212が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板2の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板2の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、及び光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸及びZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸及びZ軸からそれぞれ35°15′傾いた軸に一致する。Y´軸方向及びZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0029】
水晶振動板2の両主面211,212に一対の励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)が形成されている。水晶振動板2は、略矩形に形成された振動部22と、この振動部22の外周を取り囲む外枠部23と、振動部22と外枠部23とを連結する連結部(保持部)24とを有しており、振動部22と連結部24と外枠部23とが一体的に設けられた構成となっている。本実施の形態では、連結部24は、振動部22と外枠部23との間の1箇所のみに設けられており、連結部24が設けられていない箇所は空間(隙間)になっている。また、図示していないが、振動部22及び連結部24は、外枠部23よりも薄く形成されている。このような外枠部23と連結部24との厚みの違いにより、外枠部23と連結部24の圧電振動の固有振動数が異なることになり、連結部24の圧電振動に外枠部23が共鳴しにくくなる。
【0030】
連結部24は、振動部22の+X方向かつ−Z´方向に位置する1つの角部22aのみから、−Z´方向に向けて外枠部23まで延びている(突出している)。このように、振動部22の外周端部のうち、圧電振動の変位が比較的小さい角部22aに連結部24が設けられているので、連結部24を角部22a以外の部分(辺の中央部)に設けた場合に比べて、連結部24を介して圧電振動が外枠部23に漏れることを抑制することができ、より効率的に振動部22を圧電振動させることができる。また、連結部24を2つ以上設けた場合に比べて、振動部22に作用する応力を低減することができ、そのような応力に起因する圧電振動の周波数シフトを低減して圧電振動の安定性を向上させることができる。
【0031】
振動部22の一主面側に第1励振電極221が設けられ、振動部22の他主面側に第2励振電極222が設けられている。第1励振電極221,第2励振電極222には、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)に接続するための引出電極(第1引出電極223,第2引出電極224)が接続されている。第1引出電極223は、第1励振電極221から引き出され、連結部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン27に繋がっている。第2引出電極224は、第2励振電極222から引き出され、連結部24を経由して、外枠部23に形成された接続用接合パターン28に繋がっている。このように、連結部24の一主面側に第1引出電極223が形成され、連結部24の他主面側に第2引出電極224が形成されている。第1励振電極221及び第1引出電極223は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。第2励振電極222及び第2引出電極224は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、この下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0032】
水晶振動板2の両主面211,212には、水晶振動板2を第1封止部材3及び第2封止部材4に接合するための振動側封止部25が夫々設けられている。水晶振動板2の一主面211の振動側封止部25に、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成されている。また、水晶振動板2の他主面212の振動側封止部25に、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成されている。振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252は、上述した外枠部23に設けられており、平面視で環状に形成されている。振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252は、水晶振動板2の両主面211,212の外周縁に近接するように設けられている。水晶振動板2の一対の第1励振電極221,第2励振電極222は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252とは電気的に接続されていない。
【0033】
振動側第1接合パターン251は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2511と、下地PVD膜2511上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2512とからなる。振動側第2接合パターン252は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2521と、下地PVD膜2521上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2522とからなる。つまり、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とは、同一構成からなり、複数の層が両主面211,212の振動側封止部25上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。このように、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とでは、下地PVD膜2511,2521が単一の材料(Ti(もしくはCr))からなり、電極PVD膜2512,2522が単一の材料(Au)からなり、下地PVD膜2511,2521よりも電極PVD膜2512,2522の方が厚い。また、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221と振動側第1接合パターン251とは同一厚みを有し、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との表面が同一金属からなり、水晶振動板2の他主面212に形成された第2励振電極222と振動側第2接合パターン252とは同一厚みを有し、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との表面が同一金属からなる。また、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252は、非Snパターンである。
【0034】
ここで、第1励振電極221、第1引出電極223及び振動側第1接合パターン251を同一の構成とすることができ、この場合、同一のプロセスで第1励振電極221、第1引出電極223及び振動側第1接合パターン251を一括して形成することができる。同様に、第2励振電極222、第2引出電極224及び振動側第2接合パターン252を同一の構成とすることができ、この場合、同一のプロセスで第2励振電極222、第2引出電極224及び振動側第2接合パターン252を一括して形成することができる。詳細には、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜や電極PVD膜を形成することで、一括して膜形成を行い、製造工数を減らすことができ、コスト低減に寄与することができる。
【0035】
また、水晶振動板2には、
図4,5に示すように、一主面211と他主面212との間を貫通する1つの貫通孔(第1貫通孔26)が形成されている。第1貫通孔26は、水晶振動板2の外枠部23に設けられている。第1貫通孔26は、第2封止部材4の接続用接合パターン453に繋がるものである。
【0036】
第1貫通孔26には、
図1,4,5に示すように、一主面211と他主面212とに形成された電極の導通を図るための貫通電極261が、第1貫通孔26の内壁面に沿って形成されている。そして、第1貫通孔26の中央部分は、一主面211と他主面212との間を貫通した中空状態の貫通部分262となる。第1貫通孔26の外周囲には、接続用接合パターン264,265が形成されている。接続用接合パターン264,265は、水晶振動板2の両主面211,212に設けられている。
【0037】
水晶振動板2の一主面211に形成された第1貫通孔26の接続用接合パターン264は、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。また、水晶振動板2の一主面211には、第1引出電極223に繋がる接続用接合パターン27が形成されており、この接続用接合パターン27も、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。接続用接合パターン27は、振動部22(第1励振電極221)を挟んで、接続用接合パターン264とはZ´軸方向の反対側に設けられている。つまり、振動部22のZ´軸方向の両側に、接続用接合パターン27,264が設けられている。
【0038】
同様に、水晶振動板2の他主面212に形成された第1貫通孔26の接続用接合パターン265は、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。また、水晶振動板2の他主面212には、第2引出電極224に繋がる接続用接合パターン28が形成されており、この接続用接合パターン28も、外枠部23において、X軸方向に沿って延びている。接続用接合パターン28は、振動部22(第2励振電極222)を挟んで、接続用接合パターン265とはZ´方向の反対側に設けられている。つまり、振動部22のZ´方向の両側に、接続用接合パターン28,265が設けられている。
【0039】
接続用接合パターン27,28,264,265は、振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252と同様の構成であり、振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン27,28,264,265は、水晶振動板2の両主面211,212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0040】
水晶振動子101では、第1貫通孔26及び接続用接合パターン27,28,264,265は、平面視で内部空間13の内方(接合材11の内周面の内側)に形成される。内部空間13は、平面視で振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252の内方(内側)に形成される。内部空間13の内方とは、後述する接合材11上を含まずに厳密に接合材11の内周面の内側のことをいう。第1貫通孔26及び接続用接合パターン27,28,264,265は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252とは電気的に接続されていない。
【0041】
第1封止部材3には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm
2]以下の材料が用いられている。具体的には、第1封止部材3は、
図2,3に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第1封止部材3の他主面312(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0042】
この第1封止部材3の他主面312には、水晶振動板2に接合するための封止側第1封止部32が設けられている。封止側第1封止部32には、水晶振動板2に接合するための封止側第1接合パターン321が形成されている。封止側第1接合パターン321は、平面視で環状に形成されている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の他主面312の外周縁に近接するように設けられている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の封止側第1封止部32上の全ての位置において同一幅とされる。
【0043】
この封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜3211と、下地PVD膜3211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜3212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜3211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜3212にはAuが用いられている。また、封止側第1接合パターン321は、非Snパターンである。具体的には、封止側第1接合パターン321は、複数の層が他主面312の封止側第1封止部32上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。
【0044】
第1封止部材3の他主面312、つまり、水晶振動板2との対向面には、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27と接合される接続用接合パターン35,36が形成されている。接続用接合パターン35,36は、第1封止部材3の短辺方向(
図3のA1方向)に方向に沿って延びている。接続用接合パターン35,36は、第1封止部材3の長辺方向(
図3のA2方向)に所定の間隔を隔てて設けられており、接続用接合パターン35,36のA2方向の間隔は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27のZ´軸方向の間隔(
図4参照)と略同じになっている。接続用接合パターン35,36は、配線パターン33を介して互いに接続されている。配線パターン33は、接続用接合パターン35,36の間に設けられている。配線パターン33は、A2方向に沿って延びている。配線パターン33は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27とは接合されないようになっている。
【0045】
接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、封止側第1接合パターン321と同様の構成であり、封止側第1接合パターン321と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、第1封止部材3の他主面312上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0046】
水晶振動子101では、接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、平面視で内部空間13の内方(接合材11の内周面の内側)に形成される。接続用接合パターン35,36及び配線パターン33は、封止側第1接合パターン321とは電気的に接続されていない。尚、水晶振動子101では、
図3のA1方向は、
図4のX軸方向に一致し、
図3のA2方向は、
図4のZ´軸方向に一致する。
【0047】
第2封止部材4には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm
2]以下の材料が用いられている。具体的には、第2封止部材4は、
図6,7に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第2封止部材4の一主面411(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。
【0048】
この第2封止部材4の一主面411には、水晶振動板2に接合するための封止側第2封止部42が設けられている。封止側第2封止部42には、水晶振動板2に接合するための封止側第2接合パターン421が形成されている。封止側第2接合パターン421は、平面視で環状に形成されている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の一主面411の外周縁に近接するように設けられている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の封止側第2封止部42上の全ての位置において同一幅とされる。
【0049】
この封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4211と、下地PVD膜4211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜4211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜4212にはAuが用いられている。また、封止側第2接合パターン421は、非Snパターンである。具体的には、封止側第2接合パターン421は、複数の層が他主面412の封止側第2封止部42上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。
【0050】
また、第2封止部材4の他主面412(水晶振動板2に面しない外方の主面)には、外部に電気的に接続する一対の外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)が設けられている。一外部電極端子431,他外部電極端子432は、
図1,7に示すように第2封止部材4の他主面412の平面視長手方向両端に夫々位置する。これら一対の外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)は、他主面412上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4311,4321と、下地PVD膜4311,4321上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4312,4322とからなる。一外部電極端子431及び他外部電極端子432は、第2封止部材4の他主面412のうち1/3以上の領域を夫々占めている。
【0051】
第2封止部材4には、
図1,6,7に示すように、一主面411と他主面412との間を貫通する2つの貫通孔(第2貫通孔45,第3貫通孔46)が形成されている。第2貫通孔45は、一外部電極端子431及び水晶振動板2の接続用接合パターン265に繋がるものである。第3貫通孔46は、他外部電極端子432及び水晶振動板2の接続用接合パターン28に繋がるものである。
【0052】
第2貫通孔45,第3貫通孔46には、
図1,6,7に示すように、一主面411と他主面412とに形成された電極の導通を図るための貫通電極451,461が、第2貫通孔45,第3貫通孔46の内壁面夫々に沿って形成されている。そして、第2貫通孔45,第3貫通孔46の中央部分は、一主面411と他主面412との間を貫通した中空状態の貫通部分452,462となる。第2貫通孔45,第3貫通孔46夫々の外周囲には、接続用接合パターン453,463が形成されている。
【0053】
接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の一主面411に設けられており、水晶振動板2の接続用接合パターン265,28と接合される。接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の短辺方向(
図6のB1方向)に方向に沿って延びている。接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の長辺方向(
図6のB2方向)に所定の間隔を隔てて設けられており、接続用接合パターン453,463のB2方向の間隔は、水晶振動板2の接続用接合パターン265,28のZ´軸方向の間隔(
図5参照)と略同じになっている。
【0054】
接続用接合パターン453,463は、封止側第2接合パターン421と同様の構成であり、封止側第2接合パターン421と同一のプロセスで形成することができる。具体的には、接続用接合パターン453,463は、第2封止部材4の一主面411上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、当該下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなる。
【0055】
水晶振動子101では、第2貫通孔45,第3貫通孔46及び接続用接合パターン453,463は、平面視で内部空間13の内方に形成されている。第2貫通孔45,第3貫通孔46及び接続用接合パターン453,463は、封止側第2接合パターン421とは電気的に接続されていない。また、一外部電極端子431,他外部電極端子432も、封止側第2接合パターン421とは電気的に接続されていない。尚、水晶振動子101では、
図6のB1方向は、
図5のX軸方向に一致し、
図6のB2方向は、
図5のZ´軸方向に一致する。
【0056】
上記の構成からなる水晶振動子101では、従来の技術のように別途接着剤等の接合専用材を用いずに、水晶振動板2と第1封止部材3とが振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421を重ね合わせた状態で拡散接合されて、
図1に示すサンドイッチ構造のパッケージ12が製造される。これにより、パッケージ12の内部空間13、つまり、振動部22の収容空間が気密封止される。なお、振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321自身が拡散接合後に生成される接合材11となり、振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421自身が拡散接合後に生成される接合材11となる。接合材11は、平面視で環状に形成される。本実施の形態では、水晶振動板2の第1、第2励振電極221,222から一外部電極端子431,他外部電極端子432までの配線がいずれも、平面視で接合材11の内方に設けられている。接合材11は、平面視で、パッケージ12の外周縁に近接するように形成されている。これにより、水晶振動板2の振動部22のサイズを大きくすることが可能になっている。
【0057】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。具体的には、水晶振動板2の接続用接合パターン264及び第1封止部材3の接続用接合パターン35が拡散接合される。水晶振動板2の接続用接合パターン27及び第1封止部材3の接続用接合パターン36が拡散接合される。また、水晶振動板2の接続用接合パターン265及び第2封止部材4の接続用接合パターン453が拡散接合される。水晶振動板2の接続用接合パターン28及び第2封止部材4の接続用接合パターン463が拡散接合される。そして、夫々の接続用接合パターン同士が拡散接合後に生成される接合材14となる。拡散接合によって形成されたこれらの接合材14は、貫通孔の貫通電極と接合材14とを導通させる役割、及び接合箇所を気密封止する役割を果たす。なお、接合材14は、平面視で封止用の接合材11よりも内方に設けられるため、
図1では破線で示している。
【0058】
ここで、第1貫通孔26と第2貫通孔45とが平面視で重畳しないように配置されている。具体的には、
図6に示すように、正面視では(
図6のB1方向から見ると)、第1貫通孔26と第2貫通孔45とは上下に一直線上に並んで配置されている。
図6では、便宜上、第2封止部材4の上方に設けられる水晶振動板2に形成された第1貫通孔26を2点鎖線で示している。一方、側面視では(
図6のB2方向から見ると)、第1貫通孔26と第2貫通孔45とは上下に一直線上に並ばないようにオフセットされて配置されている。より詳細には、接合材14(接続用接合パターン265,453)の長手方向(B1方向)の一端部に第1貫通孔26が接続され、接合材14の長手方向の他端部に第2貫通孔45が接続されている。そして、第1貫通孔26の貫通電極261と第2貫通孔45の貫通電極451とが接合材14を介して電気的に接続されている。このように、第1貫通孔26と第2貫通孔45とを平面視で重畳しないように配置することによって、第1貫通孔26の貫通部分262及び第2貫通孔45の貫通部分452を金属等で埋めなくても、水晶振動板2の振動部22を気密封止した内部空間13の気密性を確保することが可能になる。
【0059】
そして、上述のようにして製造されたパッケージ12では、第1封止部材3と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材4と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材3と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材4と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu−Au接合では0.15μm〜1.00μm)である。なお、比較として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm〜20μmとなる。
【0060】
本実施の形態では、サンドイッチ構造の水晶振動子101において、第1封止部材3の他主面312、つまり、水晶振動板2との対向面に、水晶振動板2の第1励振電極221に接続される配線パターン33が設けられており、この配線パターン33の少なくとも一部が、平面視で、振動部22と外枠部23との間の空間と重畳する位置に設けられている。配線パターン33の具体的な構成について、
図4,8を参照して説明する。
図8は、水晶振動子101における第1封止部材3の配線パターン33と、水晶振動板2の振動部22との平面視での位置関係を示す図であって、
図4の水晶振動板2を実線で示し、第1封止部材3の配線パターン33を2点鎖線で示している。
【0061】
まず、水晶振動板2と第1封止部材3の接合前の状態では、配線パターン33は、第1封止部材3の他主面312の接続用接合パターン35,36の間に設けられている(
図3参照)。配線パターン33の一端部(
図8の+Z´方向の端部)33aは、接続用接合パターン35に接続され、配線パターン33の他端部(
図8の−Z´方向の端部)33bは、接続用接合パターン36に接続されている。
【0062】
そして、水晶振動板2と第1封止部材3の接合により、接続用接合パターン264,35が接合材14となり、また、接続用接合パターン27,36が接合材14となる。配線パターン33は、水晶振動板2の接続用接合パターン264,27とは接合されないため、接合材14とはならず、第1封止部材3の他主面312上に配線として残る。配線パターン33の一端部33aは、接合材14(接続用接合パターン264,35)、第1貫通孔26の貫通電極261、接合材14(接続用接合パターン265,453)、第2貫通孔45の貫通電極451を介して、一外部電極端子431に接続されている。配線パターン33の他端部33bは、接合材14(接続用接合パターン27,36)、第1引出電極223を介して、第1励振電極221に接続されている。このように、配線パターン33を介して、第1励振電極221が一外部電極端子431に電気的に接続されるようになっている。
【0063】
配線パターン33は、平面視で、第1励振電極221,第2励振電極222とは重畳しない位置に設けられている。より詳細には、
図8に示すように、配線パターン33は、平面視で、振動部22とは重畳しない位置に設けられている。本実施の形態では、配線パターン33の振動部22に近い側の側端縁(
図8の+X方向の端縁)33cが、平面視で、振動部22と外枠部23との間の空間と重畳する位置に設けられている。つまり、平面視で、配線パターン33の振動部22に近い側の側端縁33cと、振動部22の外周縁との間には所定の間隔が設けられている。また、配線パターン33の振動部22から遠い側の側端縁(
図8の−X方向の端縁)33dは、平面視で、外枠部23と重畳しない位置であって、振動部22と外枠部23との間の空間と重畳する位置に設けられている。つまり、平面視で、配線パターン33の振動部22から遠い側の側端縁33dと、外枠部23の内周縁との間には所定の間隔が設けられている。このように本実施の形態では、配線パターン33のX軸方向の両側端縁33c,33dが、平面視で、振動部22と外枠部23との間の空間に含まれている。なお、配線パターン33の一端部33a及び他端部33b(上記空間よりもZ軸方向の外側へ突出している部分)は、平面視で、外枠部23と重畳している。
【0064】
本実施の形態によれば、第1封止部材3の他主面312に設けられた配線パターン33と、水晶振動板2の振動部22とが、上述したような位置関係にあるので、第1封止部材3の他主面312を配線パターン33の配置領域として有効活用することができ、振動部22のサイズを確保しつつ、水晶振動子101の小型化を図ることができる。つまり、水晶振動板2に配線パターン33の配置領域を別途確保する必要がなくなり、その分だけ振動部22のサイズを大きくすることが可能になる。したがって、水晶振動子101の小型化の要請を満たすために、振動部22のサイズを必要以上に小さくしなくてもよくなる。
【0065】
ここで、本実施の形態では、水晶振動板2が、振動部22と外枠部23とが単一の連結部24によって連結された構成になっている。この場合、振動部22の両主面の第1励振電極221,第2励振電極222から引き出された第1引出電極223,第2引出電極224は、同じ連結部24を経由して、外枠部23まで形成される。つまり、連結部24の一主面に第1励振電極221から引き出された第1引出電極223が形成され、当該連結部24の他主面に第2励振電極222から引き出された第2引出電極224が形成される。
【0066】
このように連結部24が水晶振動板2に1つしかなく、第1引出電極223及び第2引出電極224が、第1励振電極221,第2励振電極222から同じ方向に引き出される構成になっている。一方、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)は、第2封止部材4の他主面412の長手方向両端に位置することから、第1引出電極223及び第2引出電極224のいずれか一方を、振動部22を挟んで反対側の位置まで引き回すための引き回し電極を設ける必要がある。しかし、引き回し電極を水晶振動板2に形成する場合、引き回し電極を水晶振動板2の振動部22の外周囲(つまり、外枠部23)に設ける必要があるため、引き回し電極の配置領域を確保するためには、振動部22のサイズを小さくするか、あるいは、水晶振動子101のパッケージサイズを大きくする必要があった。したがって、振動部22のサイズを小さくせずに水晶振動子101の小型化を図ることは困難であった。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、上述のような引き回し電極としての配線パターン33が、水晶振動板2にではなく、第1封止部材3の他主面312に形成されている。これにより、第1封止部材3の他主面312を配線パターン33の配置領域として有効活用することができ、振動部22のサイズを確保しつつ、水晶振動子101の小型化を図ることができる。配線パターン33の配置領域としては、平面視で、第1励振電極221,第2励振電極222とは重畳しない位置であって、配線パターン33の少なくとも一部が、振動部22と外枠部23との間の空間と重畳する位置に設けられている。これにより、水晶振動板2の振動部22の外周囲(外枠部23)に引き回し電極を設ける構成に比べて、平面視で、振動部22及び配線パターン33の合計の配置領域を小さくすることができる。したがって、振動部22のサイズを小さくしなくても、水晶振動子101の小型化を図ることができる。さらに、水晶振動板2の外枠部23と各封止部材3,4とを接合する領域が小さくならずに済み、より安定した気密封止を実現するための接合領域を確保できる。
【0068】
また、配線パターン33が平面視で接合材11の内方に配置されるので、配線パターン33の断線等から保護することができる。この場合、配線パターン33が平面視で振動部22とは重畳しない位置に設けられているので、配線パターン33と振動部22との接触を回避することができ、配線パターン33と振動部22との接触に起因する配線パターン33の断線や抵抗値の増加を抑制することができる。しかも、配線パターン33が平面視で第1励振電極221,第2励振電極222とは重畳しない位置に設けられているので、配線パターン33と第1励振電極221,第2励振電極222との重畳に起因する寄生容量(浮遊容量)の発生を抑制することができる。
【0069】
また、第1封止部材3の他主面312が平坦面に形成されているので、第1封止部材3の厚さを抑えることができ、その分、水晶振動子101の低背化に寄与することができる。つまり、第1封止部材3の他主面312に凹部が設けられている場合、凹部の深さに相当する分だけ第1封止部材3の厚さが増加することが懸念される。しかし、第1封止部材3の他主面312を平坦面に形成することによって、第1封止部材3の厚さが増加することを抑制することができ、水晶振動子101の低背化に寄与することができる。この場合、水晶振動板2の振動部22及び連結部24が、外枠部23よりも薄く形成されているので、水晶振動子101の低背化を図りながら、振動部22と第1封止部材3及び第2封止部材4との接触を抑制する点で有効である。
【0070】
ここで、配線パターン33を励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)に対する周波数調整用のイオンビームの照射領域よりも外側に設けることが好ましい。本実施の形態では、水晶振動板2と第1封止部材3とを接合した状態(水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されていない状態)で、水晶振動板2の他主面212側からイオンビームを照射して、第2励振電極222の大きさ(質量)を微調節することにより、周波数調整を行っている。イオンビームは、第2励振電極222の外周縁付近を目標に照射される。この際、イオンビームの照射領域内に配線パターン33が設けられているとすれば、イオンビームによって、配線パターン33が削られ、配線パターン33の断線等が発生することが懸念される。しかし、配線パターン33を励振電極の周波数調整用のイオンビームの照射領域よりも外側に設けることによって、イオンビームによる配線パターン33の断線等を抑制することができる。なお、このような周波数調整を行う場合、第1封止部材3の一主面311に周波数調整用の検査端子が設けられ、検査端子が第1励振電極221,第2励振電極222に接続される。
【0071】
本実施の形態では、配線パターン33の振動部22から遠い側の側端縁33dは、平面視で外枠部23と重畳しない位置に設けられているが、配線パターン33の少なくとも一部が、平面視で、振動部22と外枠部23との間の空間と重畳する位置に設けられていればよく、配線パターン33の一部を、平面視で外枠部23と重畳するように配置してもよい。なお、上述したような理由により、配線パターン33の振動部22に近い側の側端縁33cが、平面視で振動部22とは重複しない位置に設けられることが好ましい。
【0072】
〔実施の形態2〕
本実施の形態2に係る水晶振動子101は、実施の形態1における配線パターン33に関し、実施の形態1とは別観点で線幅や膜厚を最適化したものであり、それ以外の構成は基本的に実施の形態1と同様である。そのため、実施の形態1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0073】
実施の形態1で説明したように、本発明が適用される水晶振動子101では、水晶振動板2において振動部22と外枠部23とを連結する連結部24は1箇所のみに設けられている。すなわち、連結部24は、振動部22に対して水晶振動板2の長辺方向(Z´軸)の一方側(−Z´方向側)にのみ設けられている。このため、振動部22の両主面の第1励振電極221,第2励振電極222から引き出された第1引出電極223,第2引出電極224は、同じ連結部24を経由して、外枠部23まで形成される。
【0074】
このように連結部24が水晶振動板2に1つしかなく、第1引出電極223及び第2引出電極224が、第1励振電極221,第2励振電極222から同じ方向に引き出される構成になっている。一方、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)は、第2封止部材4の他主面412の長手方向両端に位置することから、第1引出電極223及び第2引出電極224のいずれか一方を、振動部22を挟んで反対側の位置まで引き回すための引き回し電極を設ける必要がある。この引き回し電極として形成されているのが配線パターン33であり、配線パターン33は、第1励振電極221を一外部電極端子431に接続する配線の一部として形成されている。
【0075】
このような電極の引き回しにより、第1励振電極221を一外部電極端子431に接続する配線経路が長くなり、その配線抵抗も増加する。そして、配線パターン33によって増加した第1励振電極221側の配線抵抗は、引き回しのための配線パターン33を有しない第2励振電極222側の直列抵抗と比較して無視できなくなる。
【0076】
励振電極を外部電極端子に接続する信号配線の配線抵抗が大きくなると、その水晶振動子を用いた発振回路の信頼性が低下するといった問題がある。このため、水晶振動子101では、配線パターン33の配線抵抗を水晶振動子101を用いた発振回路の信頼性が確保できる程度にまで小さくすることが望ましい。
【0077】
配線パターン33の配線抵抗を小さくするには、配線幅を太くする、あるいは配線の膜厚を大きくすることなどが考えられる。
図9,10は、配線パターン33を、
図3,8に比べて太くした場合の構成を示す図である。
図9は、水晶振動子の第1封止部材の概略裏面図である。
図10は、水晶振動子101における第1封止部材3の配線パターン33と、水晶振動板2の振動部22との平面視での位置関係を示す図であって、水晶振動板2を実線で示し、第1封止部材3の配線パターン33を2点鎖線で示している。
【0078】
図9,10に示す構成では、配線パターン33の線幅を太くしたことで、配線パターン33は、振動部22と外枠部23との間の空間のうち、平面視で振動部22の1辺(
図10の例では上片)に沿った前記空間を完全に覆うように設けられている。また、配線パターン33の線幅を太くする場合であっても、実施の形態1と同様、平面視で第1励振電極221,第2励振電極222とは重畳しない位置に設けられることが望ましい。これは、配線パターン33と第1励振電極221,第2励振電極222との重畳に起因する寄生容量(浮遊容量)の発生を抑制するためである。
【0079】
このように、配線パターン33を、第1励振電極221,第2励振電極222と重畳させないことを前提とすれば、配線パターン33の線幅を太くすることには限界がある。すなわち、配線パターン33の線幅を太くすることは、水晶振動子101の小型化を困難にする。尚、配線パターン33の線幅は、例えば1.0×0.8mmのパッケージサイズにおいて、第1励振電極221と封止側第1封止部32,振動側封止部25との間(200μm程度)、および第2励振電極222と封止側第2封止部42,振動側封止部25との間(200μm程度)に収まる線幅であり、かつ、100μm以上とすることが好ましい。
【0080】
一方、配線パターン33の膜厚を大きくすることは、水晶振動子101の大型化を招くことなく、容易に配線パターン33の配線抵抗を小さくすることができる。以下の説明では、配線パターン33における好適な膜厚範囲について考察する。
【0081】
図11は、配線の膜厚と抵抗値との関係を示すグラフである。ここでは、配線の線幅を0.040mm、線長を1mm程度としている。尚、配線パターン33の配線構造は、実施の形態1で説明したようにTi層およびAu層の積層構造であるが、このようなTi−Au積層構造の配線においてTi層のみの電気抵抗はAu層の電気抵抗に比べて十分大きいので無視できる。したがって、
図11は、Au配線の膜厚を変化させた場合の結果を示している。
【0082】
図11から明らかなように、膜厚が0.1μmより小さい範囲では、膜厚が増加するにつれて配線の抵抗値は急激に低下している。そして、膜厚が0.1μm以上の範囲では、膜厚が増加するにつれて配線の抵抗値は低下しているがその変化は緩やかとなっている。
【0083】
また、水晶振動子101の信頼性を確保するには、励振電極を外部電極端子に接続する信号配線の配線抵抗はできる限り小さくすることが好ましい。上述したように、第1励振電極221を一外部電極端子431に接続する配線経路において、配線パターン33の配線抵抗により、励振電極を外部電極端子に接続する信号配線の配線抵抗が大きくなると、その水晶振動子を用いた発振回路の信頼性が低下する。このため、配線パターン33による配線抵抗の増加を抑制するため、ここでは配線パターン33の配線抵抗を10Ω以下とすることを目標としている。
【0084】
図11に示す結果では、膜厚0.05μmにおいて配線抵抗がほぼ10Ωとなっている。したがって、配線パターン33の膜厚は0.05μm以上とすることが好ましい。また、上述したように、膜厚が0.1μmより小さい範囲では、膜厚が増加するにつれて配線の抵抗値は急激に低下している。これより、配線パターン33の膜厚は0.1μm以上とすることがさらに好ましい。尚、
図11のグラフは、配線の線幅を0.040mm、線長を1mm程度とした場合のグラフであるが、水晶振動子101のパッケージサイズを変化させた場合には、線長の増加による抵抗値の増加率と線幅の増加による抵抗値の減少率がある程度打ち消しあう。このため、
図11のグラフは水晶振動子101のパッケージサイズが変わっても、その結果は類似した傾向を示すものとなる。例えば、配線抵抗の変化が、膜厚0.1μmより小さい範囲では急激で、膜厚0.1μm以上の範囲で緩やかとなる傾向は、水晶振動子101のパッケージサイズに関わらず同様の傾向が見られた。
【0085】
配線パターン33の配線抵抗を低下させる観点からは、配線パターン33の膜厚は大きい程よい。しかしながら、配線パターン33(Au層の膜厚)の膜厚を大きくすると、使用するAuの量が増え、コストが増加する。また、上述したように、配線パターン33を封止側第1封止部32と同時に形成し、第1封止部材3と水晶振動板2との接合をAu−Auの拡散接合で行う場合には、Au層の膜厚を大きくするとAu層の表面粗さが大きくなり、上記拡散接合を行いにくくなるといった問題もある。これらの観点より、配線パターン33の膜厚は、0.7μm以下とすることが好ましく、0.3μm以下とすることがより好ましい。
【0086】
また、実施の形態1,2では、第1封止部材3及び第2封止部材4にガラスを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶を用いてもよい。
【0087】
また、実施の形態1,2では、圧電振動板に水晶を用いているが、これに限定されるものではなく、圧電材料であれば他の材料であってもよく、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等であってもよい。
【0088】
また、実施の形態1,2では、第1封止部材3と水晶振動板2との接合、および水晶振動板2と第2封止部材4との接合をAu−Auの拡散接合にて行っているが、これに限定されるものではなく、ろう材を用いた接合であってもよい。
【0089】
上記実施の形態では、圧電振動デバイスを水晶振動子としたが、水晶振動子以外の圧電振動デバイス(例えば水晶発振器)にも本発明を適用することが可能である。