【実施例1】
【0010】
図2は、実施例1の身体温冷装置10を示す斜視図である。身体温冷装置10は、温調部11と熱交換部12とホース部14とを備えている。ホース部14は、曲げることができるホースから形成され、一端が温調部11に接合され、他端が熱交換部12に接合されている。ホース部14は、第1パイプ15と第2パイプ16と電力線17とをホースの内部に収容している。第1パイプ15は、温調部11から熱交換部12に冷却水を流す流路を形成している。第2パイプ16は、熱交換部12から温調部11に冷却水を流す流路を形成している。電力線17は、熱交換部12から温調部11に電力を供給する電路を形成している。
【0011】
図3は、実施例1の身体温冷装置10の温調部11を示す斜視図である。温調部11は、帯状部材20を備えている。帯状部材20は、屈曲した帯状に形成されている。帯状部材20は、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2と連結部23とを備えている。右側固定部材22−1は、帯状部材20の一端を形成している。左側固定部材22−2は、帯状部材20の他端を形成している。右側固定部材22−1と左側固定部材22−2とは、右側固定部材22−1に形成される右側内側面21−1と左側固定部材22−2に形成される左側内側面21−2とが互いに概ね対向するように、配置されている。
【0012】
連結部23は、曲げることができる材料から形成され、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2とを繋いでいる。連結部23は、板バネ(図示されていない)を備えている。板バネは、連結部23の内部に配置されている。板バネは、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2とが離されたときに、弾性変形し、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2とが接近するように、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2とに弾性力を与える。
【0013】
温調部11は、右耳掛け部材24−1と左耳掛け部材24−2とをさらに備えている。右耳掛け部材24−1は、右耳に引っ掛かるように、屈曲した棒状に形成されている。右耳掛け部材24−1は、右側固定部材22−1に固定されている。左耳掛け部材24−2は、左耳に引っ掛かるように、屈曲した棒状に形成されている。左耳掛け部材24−2は、左側固定部材22−2に固定されている。
【0014】
温調部11は、複数の温調部材25−1〜25−3を備えている。複数の温調部材25−1〜25−3のうちの右側温調部材25−1は、右側接触面26−1が形成されている。右側温調部材25−1は、右側接触面26−1が右側内側面21−1から露出するように、右側固定部材22−1の内部に配置され、右側固定部材22−1に固定されている。複数の温調部材25−1〜25−3のうちの左側温調部材25−2は、左側接触面26−2が形成されている。左側温調部材25−2は、左側接触面26−2が左側内側面21−2から露出するように、左側固定部材22−2の内部に配置され、左側固定部材22−2に固定されている。複数の温調部材25−1〜25−3のうちの後側温調部材25−3は、後側接触面26−3が形成されている。後側温調部材25−3は、連結部23の後側内側面21−3から後側接触面26−3が露出するように、連結部23の内部に配置され、連結部23に固定されている。
【0015】
このとき、右耳掛け部材24−1と右側温調部材25−1とが右側固定部材22−1に固定されることにより、右側温調部材25−1と右耳掛け部材24−1とが固定されている。左耳掛け部材24−2と左側温調部材25−2とが左側固定部材22−2に固定されることにより、左側温調部材25−2と左耳掛け部材24−2とが固定されている。
【0016】
温調部11は、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2と後側温調部材25−3とに対応する3つのペルティエ素子27−1〜27−3を備えている。3つのペルティエ素子27−1〜27−3の各々は、板状に形成され、ホース部14の電力線17を介して電流が供給されることにより、一方の面が吸熱し、他方の面が発熱する。3つのペルティエ素子27−1〜27−3の各々は、その供給される電流の極性が逆転すると、その一方の面が発熱し、他方の面が吸熱する。3つのペルティエ素子27−1〜27−3のうちの右側温調部材25−1に対応する右側ペルティエ素子27−1は、右側温調部材25−1の内部に配置されている。3つのペルティエ素子27−1〜27−3のうちの左側温調部材25−2に対応する左側ペルティエ素子27−2は、左側温調部材25−2の内部に配置されている。3つのペルティエ素子27−1〜27−3のうちの後側温調部材25−3に対応する後側ペルティエ素子27−3は、後側温調部材25−3の内部に配置されている。
【0017】
温調部11の帯状部材20は、ホース部14の第2パイプ16を介して温調部11に供給される冷却水と、右側温調部材25−1のうちの右側接触面26−1の反対側の右側放熱面とを熱的に接触させている。帯状部材20は、さらに、第2パイプ16を介して温調部11に供給される冷却水と左側温調部材25−2のうちの左側接触面26−2の反対側の左側放熱面とを熱的に接触させている。帯状部材20は、さらに、第2パイプ16を介して温調部11に供給される冷却水と後側温調部材25−3のうちの後側接触面26−3の反対側の後側放熱面とを熱的に接触させている。帯状部材20は、右側放熱面と左側放熱面と後側放熱面とに接触した後の冷却水を、ホース部14の第1パイプ15を介して熱交換部12に送出する。
【0018】
図4は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12を示す斜視図である。熱交換部12は、筐体31とクリップ32とを備えている。筐体31は、底面が長方形である四角柱状に形成されている。
図5は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12を示す平面図である。筐体31は、背面部33と前面部34と右側面部35と左側面部36と上面部37とを備えている。背面部33は、概ね長方形状に形成され、四角柱のうちの一方の底辺に沿うように配置されている。前面部34は、概ね長方形状に形成され、四角柱のうちの他方の底辺に沿うように配置されている。右側面部35は、概ね長方形状に形成され、四角柱のうちの1つの側面となっている。左側面部36は、概ね長方形状に形成され、四角柱のうちの右側面部35の反対側の側面となっている。上面部37は、概ね長方形状に形成され、右側面部35、左側面部36、背面部33および前面部34を四角柱の側面とした場合の一方の底面となるように配置されている。
【0019】
クリップ32は、背面部33に支持されている。クリップ32は、背面部33が衣服の一部に対向するように、筐体31を衣服の一部に保持する。衣服の一部としては、胸ポケット、ベルトが例示される。
【0020】
上面部37は、上側吸込み口41と上側吹き出し口42と接続口43とが形成されている。上側吸込み口41は、上面部37のうちの背面部33に隣接する領域に形成されている。上側吹き出し口42は、上面部37のうちの前面部34に隣接する領域に形成されている。すなわち、上側吸込み口41は、上側吹き出し口42より背面部33に近い側に配置されている。接続口43は、上側吸込み口41と上側吹き出し口42との間に形成されている。接続口43は、ホース部14の端が接合され、ホース部14の第1パイプ15と第2パイプ16と電力線17とが貫通する。
【0021】
図6は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12を示す右側面図である。右側面部35は、右側面吸込み口44と右側面吹き出し口45とが形成されている。右側面吸込み口44は、右側面部35のうちの背面部33に隣接する領域に形成されている。右側面吹き出し口45は、右側面部35のうちの前面部34に隣接する領域に形成されている。すなわち、右側面吸込み口44は、右側面吹き出し口45より背面部33に近い側に配置されている。
【0022】
図7は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12を示す左側面図である。左側面部36は、左側面吸込み口46と左側面吹き出し口47とが形成されている。左側面吸込み口46は、左側面部36のうちの背面部33に隣接する領域に形成されている。左側面吹き出し口47は、左側面部36のうちの前面部34に隣接する領域に形成されている。すなわち、左側面吸込み口46は、左側面吹き出し口47より背面部33に近い側に配置されている。
【0023】
図8は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12を示す正面図である。熱交換部12は、入力装置48と出力装置49とをさらに備えている。入力装置48は、複数のボタンスイッチから形成され、前面部34に形成された複数の貫通孔から一部が露出するように、筐体31の内部に配置されている。出力装置49は、複数のLEDランプから形成され、前面部34に形成された複数の貫通孔から一部が露出するように、筐体31の内部に配置されている。
【0024】
熱交換部12は、
図9に示されているように、バッテリ51と送風機52とポンプ53と熱交換器54とをさらに備えている。
図9は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12の筐体31の内部を示す斜視図である。バッテリ51は、筐体31の内部のうちの上面部37から遠い側の下部領域に配置されている。バッテリ51は、直流の電流を供給する。
【0025】
送風機52は、筐体31の内部のうちの上面部37に近い側の上部領域に配置されている。送風機52は、ファン55とモータ56とを備えている。ファン55は、背面部33に沿う平面に垂直である回転軸を中心に回転可能に支持されている。モータ56は、バッテリ51から供給される電力を用いてファン55を回転させる。送風機52は、ファン55が回転することにより、筐体31の内部に空気の流れを生成する。送風機52は、筐体31の内部に空気の流れを生成することにより、上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とから筐体31の外部の空気を筐体31の内部に吸い込む。送風機52は、筐体31の内部に空気の流れを生成することにより、さらに、その吸い込まれた空気を上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とから筐体31の外部に吹き出す。
【0026】
ポンプ53は、筐体31の内部のうちの下部領域と上部領域との間の中間領域に配置されている。ポンプ53は、バッテリ51から供給される電力を用いて、冷却水を温調部11と熱交換部12との間で循環させる。すなわち、ポンプ53は、バッテリ51から供給される電力を用いて、ホース部14の第1パイプ15を介して冷却水を温調部11から熱交換部12に吸引し、ホース部14の第2パイプ16を介して冷却水を熱交換部12から温調部11に送出する。
【0027】
熱交換器54は、送風機52により筐体31の内部を流れる空気が熱交換器54を通過するように、筐体31の内部の上部領域のうちの送風機52と背面部33との間に配置されている。熱交換器54は、水管と複数のフィンとを備えている。水管は、一端がホース部14の第1パイプ15に接合され、他端がホース部14の第2パイプ16に接合されている。複数のフィンは、送風機52により熱交換器54を通過する空気と、ポンプ53により循環される冷却水が流れる水管とに熱的に接触している。熱交換器54は、送風機52により熱交換器54を通過する空気と、ポンプ53により熱交換器54を通過する冷却水との間の熱交換を行う。
【0028】
身体温冷装置10は、
図10に示されているように、制御装置61をさらに備えている。
図10は、実施例1の身体温冷装置10を示すブロック図である。制御装置61は、コンピュータであり、CPU62(Central Processing Unit)と記憶装置63と入出力インタフェース64とを備えている。CPU62は、制御装置61にインストールされたコンピュータプログラムを実行することにより、記憶装置63と入出力インタフェース64とを制御する。記憶装置63は、制御装置61にインストールされるコンピュータプログラムを記録し、CPU62により利用される情報を記録する。入出力インタフェース64は、身体温冷装置10に設けられる複数のデバイスに接続されている。複数のデバイスは、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2と後側温調部材25−3と送風機52とポンプ53とを含んでいる。CPU62は、入出力インタフェース64を介して、複数のデバイスを制御する。
【0029】
[身体温冷装置10の動作]
温調部11は、身体温冷装置10を用いて利用者68の体温を調節するときに、
図11に示されているように、利用者68の身体に取り付けられる。
図11は、実施例1の身体温冷装置10の温調部11が利用者68に取り付けられた状態を示す側面図である。帯状部材20は、右側固定部材22−1と左側固定部材22−2との間の距離が利用者68の首の幅より大きくなるように連結部23が変形した状態で、首の周囲を囲むように、配置される。帯状部材20は、さらに、利用者68の首の後に後側温調部材25−3の後側接触面26−3が接触するように、配置される。帯状部材20は、さらに、利用者68の首の皮膚のうちの右頸動脈を覆う右頸動脈部分に右側温調部材25−1の右側接触面26−1が接触し、皮膚のうちの左頸動脈を覆う左頸動脈部分に左側温調部材25−2の左側接触面26−2が接触するように、配置される。このとき、連結部23の板バネは、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とが首を挟むように、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とに弾性力を与える。帯状部材20は、連結部23の板バネの弾性力により、右側温調部材25−1の右側接触面26−1を右頸動脈部分に適切に接触させ、左側温調部材25−2の左側接触面26−2を左頸動脈部分に適切に接触させることができる。
【0030】
温調部11は、さらに、右耳掛け部材24−1が利用者68の右耳69に引っ掛けられ、左耳掛け部材24−2が利用者68の図示しない左耳に引っ掛けられることにより、利用者68の身体に取り付けられる。温調部11は、右耳掛け部材24−1が右耳69に引っ掛けられることにより、右側温調部材25−1が下向にずれ落ちることが防止され、右側温調部材25−1の右側接触面26−1を右頸動脈部分に適切に接触させることができる。温調部11は、左耳掛け部材24−2が左耳に引っ掛けられることにより、左側温調部材25−2が下向にずれ落ちることが防止され、左側温調部材25−2の左側接触面26−2を左頸動脈部分に適切に接触させることができる。
【0031】
熱交換部12は、身体温冷装置10を用いて利用者68の体温を調節するときに、
図12に示されているように、利用者68が着用する衣服71に保持される。
図12は、実施例1の身体温冷装置10の熱交換部12が衣服71に取り付けられた状態を示す側面図である。熱交換部12は、筐体31の背面部33が衣服71に対向するように、配置される。衣服71は、衣服71を利用者68の身体に固定させたり衣服71のずれを防いだりするベルト72を備えている。筐体31は、背面部33が衣服71に対向している状態で、クリップ32がベルト72を挟むことにより衣服71に支持される。
【0032】
身体温冷装置10は、入力装置48が操作されることにより起動する。制御装置61は、身体温冷装置10が起動された後に、入力装置48が操作されることにより、設定温度を設定し、その設定温度を記憶装置63に記録する。制御装置61は、入力装置48が操作されることにより、利用者68の体温の調節を開始する。制御装置61は、利用者68の体温の調節が開始されると、送風機52を制御することにより、筐体31の内部に空気の流れを生成する。熱交換部12は、筐体31の内部に空気の流れが生成されることにより、上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とを介して、筐体31の外部の空気を筐体31の内部に吸い込む。熱交換部12は、筐体31の内部に空気の流れが生成されることにより、さらに、上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とを介して、筐体31の内部の空気を筐体31の外部に吹き出す。制御装置61は、利用者68の体温の調節が開始されると、さらに、ポンプ53を制御することにより、ホース部14を介して温調部11と熱交換部12との間で冷却水を循環させる。ペルティエ素子の接触面の温度は、供給する電流の大きさから推定するようにしても良いし、ペルティエ素子の接触面に設けられた温度センサによって検出されてもよい。
【0033】
制御装置61は、送風機52とポンプ53とが運転しているときに、入出力インタフェース64を介して、右側温調部材25−1の右側接触面26−1の温度が所定の設定温度に等しくなるように、右側ペルティエ素子27−1に所定の電流を供給する。制御装置61は、右側温調部材25−1と同様に、入出力インタフェース64を介して、左側温調部材25−2の左側接触面26−2の温度が設定温度に等しくなるように、左側ペルティエ素子27−2に所定の電流を供給する。制御装置61は、右側温調部材25−1と同様に、入出力インタフェース64を介して、後側温調部材25−3の後側接触面26−3の温度が設定温度に等しくなるように、後側ペルティエ素子27−3に所定の電流を供給する。
【0034】
たとえば、制御装置61は、右側温調部材25−1の右側接触面26−1の温度が設定温度より高いときに、右側ペルティエ素子27−1のうちの右側接触面26−1に近い側の面が吸熱するように、右側ペルティエ素子27−1に電流を適切に供給する。右側温調部材25−1の右側接触面26−1は、右側ペルティエ素子27−1のうちの右側接触面26−1に近い側の面が吸熱することにより、冷却される。制御装置61は、左側接触面26−2の温度と後側接触面26−3の温度とが設定温度より高いときに、左側ペルティエ素子27−2と後側ペルティエ素子27−3とに電流を適切に供給することにより、左側接触面26−2と後側接触面26−3とを冷却する。身体温冷装置10は、右側接触面26−1と左側接触面26−2とが冷却されることにより、利用者68の頸動脈を設定温度に応じて冷却することができる。利用者68は、頸動脈が冷却されることにより、頸動脈を流れる血液が適切に冷却され、体温が低下する。
【0035】
右側ペルティエ素子27−1は、右側接触面26−1に近い側の面が吸熱するときに、右側接触面26−1から遠い側の面が発熱する。右側温調部材25−1のうちの右側接触面26−1の反対側の右側放熱面は、右側ペルティエ素子37−1のうちの右側接触面26−1から遠い側の面が発熱することにより、身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度より高い温度に加熱されればよい。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度は、温調部11あるいは熱交換部12に外気温センサを設けることで検出するようにすればよい。右側温調部材25−1の右側放熱面は、ホース部14を介して熱交換部12から温調部11に供給された冷却水に熱的に接触していることにより、冷却水により冷却される。右側ペルティエ素子37−1は、一方の面が吸熱しているときに、他方の面の放熱が十分行われないと、一方の面を冷却する効率が低下する。右側ペルティエ素子37−1は、右側温調部材25−1の右側放熱面が冷却されることによりペルティエ素子の他方の面の放熱が促進されて、冷却効率の低下を防止することができる。
【0036】
熱交換部12から温調部11に供給された冷却水は、右側接触面26−1の右側放熱面により、身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度より高い温度に加熱される。その加熱された高温の冷却水は、ホース部14を介して熱交換部12に供給される。温調部11から熱交換部12に供給された高温の冷却水は、上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とから筐体31の内部に吸い込まれた空気により、冷却される。その冷却された冷却水は、ホース部14を介して温調部11に供給される。筐体31の内部に吸い込また空気は、温調部11から熱交換部12に供給された高温の冷却水により、加熱される。その加熱された空気は、上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とから筐体31の外部に吹き出される。
【0037】
たとえば、制御装置61は、右側温調部材25−1の右側接触面26−1の温度が設定温度より低いときに、右側ペルティエ素子27−1のうちの右側接触面26−1に近い側の面が発熱するように、右側ペルティエ素子27−1に電流を適切に供給する。すなわち、制御装置61は、右側接触面26−1の温度が設定温度より低いときに、右側ペルティエ素子27−1が右側接触面26−1を冷却するときと逆の電流が右側ペルティエ素子27−1に流れるように、右側ペルティエ素子27−1に電流を供給する。右側温調部材25−1の右側接触面26−1は、右側ペルティエ素子27−1のうちの右側接触面26−1に近い側の面が発熱することにより、加熱される。制御装置61は、左側接触面26−2の温度と後側接触面26−3の温度とが設定温度より低いときに、左側ペルティエ素子27−2と後側ペルティエ素子27−3とに電流を適切に供給することにより、左側接触面26−2と後側接触面26−3とを加熱する。身体温冷装置10は、右側接触面26−1と左側接触面26−2とが加熱されることにより、利用者68の頸動脈を設定温度に応じて加熱することができる。利用者68は、頸動脈が加熱されることにより、頸動脈を流れる血液が適切に加熱され、体温が上昇する。
【0038】
右側ペルティエ素子27−1は、右側接触面26−1に近い側の面が発熱するときに、右側接触面26−1から遠い側の面が吸熱する。右側温調部材25−1のうちの右側接触面26−1の反対側の右側放熱面は、右側ペルティエ素子37−1のうちの右側接触面26−1から遠い側の面が吸熱する。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度が右側接触面26−1から遠い側の面より低い場合は、右側温調部材25−1の右側放熱面は、ホース部14を介して熱交換部12から温調部11に供給された冷却水に熱的に接触していることにより、冷却水により加熱される。身体温冷装置10が配置される環境の空気の温度が右側接触面26−1から遠い側の面より高い場合は、冷却水を循環させる必要はない。
【0039】
上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とは、右側面部35と左側面部36と上面部37とに形成されていることにより、衣服71により塞がれ難く、塞がれることを防止することができる。熱交換部12は、上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とが塞がれることが防止されることにより、筐体31の内部に空気の流れを適切に生成することができ、熱交換器54が熱交換を適切に行うことができる。身体温冷装置10は、熱交換器54が熱交換を適切に行うことにより、利用者68の体温を適切に調節することができる。
【0040】
筐体31の内部では、モータ56のモータ音、ファン55の風切り音に例示される騒音が発生している。身体温冷装置10は、前面部34に大きな開口部が形成されていないことにより、その騒音が前面部34の側に漏れることを防止することができ、前面部34が対向する側に向かって拡散する騒音の程度を低減することができる。
【0041】
熱交換部12は、上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とから空気が吹き出されることにより、その吹き出される空気をより広い空間に拡散させることができる。身体温冷装置10は、吹き出される空気が広い空間に拡散されることにより、吹き出される空気の流れが利用者のそばに配置される他の物体に与える力を低減することができる。たとえば、実施形態の身体温冷装置10は、利用者のそばに配置される他の物体が吹き飛ばされることを防止することができ、熱交換部12から吹き出される空気が当たる他人の不快感を低減することができる。
【0042】
上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とは、上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とより背面部33に近い側に配置されている。身体温冷装置10は、熱交換器54により伝熱が行われた空気により背面部33の温度が変化することを防止することができ、利用者68の不快感を低減することができる。
【0043】
身体温冷装置10は、右耳掛け部材24−1と左耳掛け部材24−2とが利用者68の両耳に引っ掛けられることにより、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とが下側にずれ落ちることを防止することができる。身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とが下側にずり落ちることが防止されることにより、利用者68の頸動脈の温度を適切に調節することができ、利用者68の体温を適切に調節することができる。
【0044】
比較例の身体温冷装置は、
図13に示されているように、既述の実施例1の身体温冷装置10の温調部11が他の温調部101に置換され、他の部分は既述の実施例1の身体温冷装置10と同じである。
図13は、比較例の身体温冷装置の温調部101が利用者68に取り付けられた状態を示す側面図である。温調部101は、既述の温調部11から右耳掛け部材24−1と左耳掛け部材24−2とが省略されている。温調部101は、右耳掛け部材24−1が省略されていることにより、右側固定部材22−1が下方にずれ落ち、右側温調部材25−1が右頸動脈部分から外れることがある。左側温調部材25−2は、右側温調部材25−1と同様に、左耳掛け部材24−2が省略されていることにより、左頸動脈部分から外れることがある。比較例の身体温冷装置は、右側温調部材25−1が右頸動脈部分から外れることにより、利用者68の体温を適切に調節することができなくなることがある。
【0045】
実施例1の身体温冷装置10は、右耳掛け部材24−1と左耳掛け部材24−2とが設けられていることにより、比較例の身体温冷装置に比較して、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とがずれ落ちることを防止することができる。実施例1の身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とがずれ落ちることが防止されることにより、利用者68の頸動脈の温度を適切に調節することができ、利用者68の体温を適切に調節することができる。
【0046】
[実施例1の身体温冷装置10の効果]
実施例1の身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と右耳掛け部材24−1と右側固定部材22−1とを備えている。右側温調部材25−1は、利用者68の右頸動脈の温度を調節する。右耳掛け部材24−1は、利用者68の右耳69に支持される。右側固定部材22−1は、右頸動脈に対して所定の位置に右側温調部材25−1が保持されるように、右耳掛け部材24−1に右側温調部材25−1を固定する。このような身体温冷装置10は、右側温調部材25−1が右耳69に対して固定されることにより、右側温調部材25−1がずれ落ちにくく、右頸動脈の温度を適切に調節することができる。
【0047】
実施例1の身体温冷装置10は、左側温調部材25−2と左耳掛け部材24−2と左側固定部材22−2とを備えている。左側温調部材25−2は、利用者68の左頸動脈の温度を調節する。左耳掛け部材24−2は、利用者68の左耳に支持される。左側固定部材22−2は、左頸動脈に対して所定の位置に左側温調部材25−2が保持されるように、左耳掛け部材24−2に左側温調部材25−2を固定する。このような身体温冷装置10は、左側温調部材25−2が左耳に対して固定されることにより、左側温調部材25−2がずれ落ちにくく、左頸動脈の温度を適切に調節することができる。実施例1の身体温冷装置10は、右耳掛け部材24−1と左耳掛け部材24−2とが設けられていることにより、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2との両方がずれ落ちにくく、右左頸動脈と左頸動脈との両方の温度を適切に調節することができる。
【0048】
また、実施例1の身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と前記左側温調部材25−2とが首を挟むように前記右側温調部材25−1と前記左側温調部材25−2とに弾性力を与える連結部23をさらに備えている。このような身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とを利用者68の右頸動脈部分と左頸動脈部分とにそれぞれ適切に接触させることができる。身体温冷装置10は、右側温調部材25−1と左側温調部材25−2とが首の皮膚の所定の部分に適切に接触することにより、頸動脈の温度を適切に調節することができる。
【0049】
ところで、実施例1の身体温冷装置10の筐体31は、底面が長方形である四角柱に形成され、背面部33と前面部34とが2つの平行面それぞれ沿うように形成されているが、背面部33と前面部34とが平行でない2つの平面に沿うように形成されてもよい。また底面の形状は方形に限るものではなく、円や楕円等で形成されてもよい。筐体31は、さらに、右側面部35と左側面部36とが2つの平行面それぞれ沿うように形成されているが、右側面部35と左側面部36とが平行でない2つの平面に沿うように形成されてもよい。上側吸込み口41と右側面吸込み口44と左側面吸込み口46とは、筐体31がこのように形成された場合でも、筐体31が取り付けられる利用者68に沿う方向に空気を吸い込むことができる。上側吹き出し口42と右側面吹き出し口45と左側面吹き出し口47とは、筐体31がこのように形成された場合でも、筐体31が取り付けられる利用者68に沿う方向に空気を吹き出すことができる。背面部33と前面部34とは、筐体31がこのように形成された場合でも、開口部の面積を低減することができる。このため、身体温冷装置10は、筐体31がこのように形成された場合でも、既述の実施例1の身体温冷装置10と同様に、筐体31の内部から前面部34の側に漏れる騒音を低減することができる。