(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
銅ポルフィリン錯体系色素:0.0005質量%以上0.05質量%以下、ナフタルイミド系色素:0.1質量%以上2質量%以下、およびメロシアニン系色素:0.01質量%以上1.0質量%以下、の少なくとも1種を含有する光学フィルム用接着層であって、
380nmにおける紫外線透過率が10%以下であり、
400nmにおける可視光線透過率が5%以上30%以下であり、
420nmにおける可視光線透過率が35%以上65%以下であり、
全光線透過率が95%以上であり、
ヘイズが3.0%以下であることを特徴とする光学フィルム用接着層。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
ガラス飛散防止フィルムは、ガラス板(例えば、建築物、交通車輛、船舶等の窓ガラスや、携帯端末やディスプレイのガラス基板など)の表面に貼着される光学フィルムである。そして、地震時や物体の衝突時や落下時などに破損したガラス片が飛散することを防止する。また、ガラス飛散防止フィルムが特定波長の可視光線を低減させる機能や紫外線を遮断する機能や赤外線を遮断する機能を有しているときは、当該光学的な機能をガラス板に付与することが可能である。
なお、以下の実施形態では、窓ガラスに貼着されるガラス飛散防止フィルムを例示する。
【0024】
[ガラス飛散防止フィルムの構成]
本実施形態のガラス飛散防止フィルムは、基材フィルムの片面に、活性エネルギー線硬化性樹脂からなるハードコート層を有している。ガラス板に対して、屋外側にガラス飛散防止フィルムを貼る場合と、ガラス板に対して、屋内側にガラス飛散防止フィルムを貼る場合の2つの実施形態が存在する。これらの実施形態の構成について図を用いて説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態のガラス飛散防止フィルム4の層構成を示す模式的断面図である。第1実施形態のガラス飛散防止フィルム4は、基材フィルム1の一方の面にハードコート層2を有し、他方の面に接着層3を有している。そして、ガラス飛散防止フィルム4は、接着層3によってガラス板5に貼着されている。
図1においては、ガラス板5の左側が屋外である。第1実施形態では、ガラス板5の屋外側にガラス飛散防止フィルム4が貼着されているため、太陽光は、まずハードコート層2に照射され、その後、基材フィルム1、接着層3、ガラス板5を透過して屋内に照射される。
【0026】
図2は、第2実施形態のガラス飛散防止フィルム4の層構成を示す模式的断面図である。第2実施形態のガラス飛散防止フィルム4は、第1実施形態のガラス飛散防止フィルム4と同様に、基材フィルム1の一方の面にハードコート層2を有し、他方の面に接着層3を有している。そして、ガラス飛散防止フィルム4は、接着層3によってガラス板5に貼着されている。
図2においても、ガラス板5の左側が屋外である。第2実施形態では、ガラス板5の屋内側にガラス飛散防止フィルム4が貼着されているため、太陽光は、まずガラス板5に照射され、その後、接着層3、基材フィルム1、ハードコート層2を透過して屋内に照射される。
【0027】
第1実施形態と第2実施形態とは、ガラス板5に対するガラス飛散防止フィルム4の貼着の位置が異なるだけであって、ガラス飛散防止フィルム4自体の層構成は同等である。そのため、第1実施形態と第2実施形態とにおいて共通する内容については、第1実施形態と第2実施形態とを区別せず、本実施形態と称して以下、説明を進めていく。
【0028】
(基材フィルム)
本実施形態の基材フィルム1は、ガラス飛散防止フィルム4としての形態を維持するための基材であり、ハードコート層2や接着層3を保持する機能を有している。そのため、基材フィルム1は、機械的強度、可視光線透過率、加工性等に優れていることが好ましい。また、基材フィルム1は、可視光線を透過させるように透明樹脂から構成されている。
【0029】
基材フィルム1に使用される透明樹脂としては、例えば、アクリル系、ポリカーボネート系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、水添環状樹脂、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系の樹脂を使用することができる。樹脂の種類は、ガラス板の用途や目的に応じて、使い分けることができる。これらの透明樹脂の中では、引張強度があり、伸びすぎず、耐候性に優れる点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系が好ましい。
【0030】
基材フィルム1の厚さは、透明樹脂の機械的物性等にもよるが、8〜800μmであることが好ましく、12〜400μmであることがより好ましい。
【0031】
基材フィルム1の引張強さは、200N/25mm以上であることが好ましい。基材フィルム1の引張強さが200N/25mm以上であると、ガラス飛散防止フィルム4としての引張強さを100N/25mm以上とすることが可能となり、ガラスの飛散防止性能や耐候性が向上する。基材フィルム1の引張強さは、230N/25mm以上がより好ましく、300N/25mm以上が更に好ましい。
【0032】
また、基材フィルム1の引張伸びは、100〜240%であることが好ましい。下限の理由については後記するが、基材フィルム1の引張伸びが100%以上であることにより、ガラス飛散防止フィルム4としての引張伸びを60%以上とすることが容易となる。一方、基材フィルム1の引張伸びが240%を超えると、引張強さが低下する傾向があるため好ましくない。基材フィルム1の引張伸びは、120〜240%であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態においては、後記するようにハードコート層2に紫外線吸収剤を含有させている。この場合でも、基材フィルム1に紫外線吸収剤を含有させて、基材フィルム1の380nm紫外線透過率を10%以下とすることが好ましい。紫外線吸収剤の具体的な種類は後記するハードコート層2に含有させるものと同様である。また、基材フィルム1中の紫外線吸収剤の種類や含有量は、公知の知見に基づいて適宜設定することができる。
【0034】
なお、第1実施形態(
図1)では、基材フィルム1の屋外側にはハードコート層2のみであるため、基材フィルム1の紫外線による劣化を低減させるためにも、基材フィルム1に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。一方、第2実施形態(
図2)では、基材フィルム1の屋外側には接着層3が存在し、接着層3に紫外線吸収剤を含有させることによって、基材フィルム1に紫外線吸収剤を含有させないようにすることもできる。
【0035】
(ハードコート層)
本実施形態のハードコート層2は、ガラス飛散防止フィルム4の表面に硬度と耐擦傷性を付与するものであり、基材フィルム1の片面に形成される。ハードコート層2の厚さは、0.5〜20μmであることが好ましい。
【0036】
ハードコート層2に使用される材料としては、高硬度の被膜を比較的容易に形成できることから、活性エネルギー線硬化性樹脂が使用される。活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、可視光線、γ線等のことをいう。これらの中では、安全性や加工性の面から、紫外線または電子線が好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂等が挙げられるが、取扱いや加工のし易さから、アクリル系樹脂が好ましい。
【0038】
活性エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂は、アクリル系の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーからなる硬化性組成物の重合体である。アクリル系の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーとしては、単官能のものと多官能のものがある。
【0039】
アクリル系の重合性不飽和基を有する単官能のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、アクリル系の重合性不飽和基を有する単官能のオリゴマーの具体例としては、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
【0041】
アクリル系の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーからなる組成物が硬化性となるためには、アクリル系の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーとして、多官能(メタ)アクリル酸エステルを含有していることが好ましい。多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、ハードコート層2としての硬度を確保するためには、4官能以上の(メタ)アクリル酸エステルを使用することが好ましい。
【0042】
また、アクリル系の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーとして、水素の一部をフッ素で置換したフッ素含有アクリル系樹脂を用いると、耐擦傷性や防汚性がさらに向上するため好ましい。
【0043】
活性エネルギー線硬化性のウレタン系硬化性樹脂とは、ウレタンアクリレートモノマーまたはオリゴマーの重合体である。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基を有するものである。
【0044】
活性エネルギー線硬化性樹脂とするためには、上記の重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーに、必要に応じて重合開始剤を加えて、活性エネルギー線硬化性の組成物とすることが必要である。
【0045】
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の各種重合開始剤を使用することができる。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、プロピオフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどを挙げることができる。これら活性エネルギー線重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。活性エネルギー線重合開始剤の添加量は、重合性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーに対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0046】
ハードコート層2は、ガラス飛散防止フィルム4に耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤の含有量は、1〜15質量%であり、通常の樹脂フィルムに使用される含有量に比べて多い。紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは2〜12質量%である。紫外線吸収剤の種類としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、トリアジン系などが挙げられる。
【0047】
本発明者は、ガラス飛散防止フィルム4において、透明性、表面硬度、耐擦傷性、引張伸びおよび耐候性を両立させることが可能なガラス飛散防止フィルム4の構成について検討を加えた。上記のとおり、基材フィルム1の片面にハードコート層2を設けることによって、表面硬度、耐擦傷性を付与することができる。また、ハードコート層2等に紫外線吸収剤を含有させることによって、耐候性を付与することができる。ところが、基材フィルム1の片面に硬質なハードコート層2を設けると、一般に、ガラス飛散防止フィルム4の引張伸びが低下する。そうなると、ガラスが破損した際にガラスの破片に追随することが困難となり、ガラス飛散防止フィルム4としての性能を十分に発揮することができなくなる。
【0048】
本発明者は、ガラス飛散防止フィルム4のハードコート層2にさらに高いレベルの硬度や耐擦傷性を付与するために、種々の無機微粒子を添加することを検討した。その結果、アルミナ微粒子を所定量添加したハードコート層2を有する基材フィルム1を延伸すると、ハードコート層2全体に微細なクラックが発生し、基材フィルム1自体が引張伸びを回復して、60%以上の引張伸びを発現することを見出した。なお、JIS A5759によれば、ガラス飛散防止フィルムがガラス飛散防止性を発揮するためには、その引張伸びが60%以上であることが必要とされている。
【0049】
ガラス飛散防止フィルム4としての引張伸びを増大させる現象は、アルミナ微粒子以外に、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子を用いたときにも起こる現象である。しかし、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子を用いたときは、耐擦傷性が低下する傾向にあり、ガラス飛散防止フィルムとして満足できるものを得ることができなかった。
【0050】
このように、ガラス飛散防止フィルムとして有効に機能し得るためには、ハードコート層2は、活性エネルギー線硬化性樹脂からなり、かつアルミナ微粒子を含有することが必要である。ハードコート層2中のアルミナ微粒子の含有量は、5〜55質量%である。アルミナ微粒子の含有量がこの範囲内にあるとき、引張伸びが60%以上となり、ガラス飛散防止フィルムとして有用なものとなる。ハードコート層2中のアルミナ微粒子の含有量が5質量%未満であると、引張伸びを60%以上とすることが困難となる。また、アルミナ微粒子の含有量が55質量%を超えると、ハードコート層2の表面からアルミナ微粒子の一部が浮き出てきて、耐擦傷性やヘイズが低下する。ハードコート層2中のアルミナ微粒子の含有量は好ましくは、30〜50質量%である。
【0051】
この現象のメカニズムは次のように考えられる。
(1)ガラス板5が破損する際に、ガラス板5に貼着したガラス飛散防止フィルム4は、外力によって引っ張られて、延伸される。
(2)このとき、基材フィルム1上のハードコート層2も延伸されるが、ハードコート層2内にアルミナ微粒子が存在していると、アルミナ微粒子を起点にハードコート層2に微細なクラックが発生する。
(3)その結果、基材フィルム1自体が伸び易くなって、ガラス飛散防止フィルム4としての引張伸びが増大する。
【0052】
なお、ガラス飛散防止フィルム4に無数の微細なクラックが発生すると、白化してヘイズが増大し、光の透過性能が大きく損なわれるが、これはガラス飛散防止性能を発揮した結果であるので、商品としての価値に影響を与えるものではない。
【0053】
図3と
図4は、本実施形態のガラス飛散防止フィルム4を一軸延伸した時の微細なクラックの発生状況を示した拡大写真である。この拡大写真は、光学顕微鏡を用いてハードコート層2の反射画像として撮影したものである。ガラス飛散防止フィルム4として、ハードコート層2に平均粒子径が15nmのアルミナ微粒子を40質量%含有するものを用いた。
図3は、このガラス飛散防止フィルム4を矢印方向に数%延伸したときのクラックの発生状況を示したものである。
図4は、このガラス飛散防止フィルム4を矢印方向に100%延伸したときのクラックの発生状況を示したものである。延伸によって、微細なクラックがハードコート層2の全面に発生することを確認することができた。
【0054】
アルミナ微粒子の平均粒子径は、30nm以下である。平均粒子径が30nm以下であることによって、ガラス飛散防止フィルム4の透明性や耐擦傷性が増大する。また、アルミナ微粒子の数が大きく増加することとなり、上記の微細なクラックがハードコート層2全面において無数に発生することとなる。アルミナ微粒子の平均粒子径は、10〜30nmであることが好ましい。アルミナ微粒子の平均粒子径が10nm以上となることにより耐擦傷性が向上する傾向にある。粒子分布は狭いものほどよい。なお、アルミナ微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡法、動的光散乱法等の公知の方法によって測定することができる。
【0055】
ガラス飛散防止フィルム4の引張伸びが60%以上となるためには、基材フィルム1自体の引張伸びが100%以上であることが好ましい。基材フィルム1の引張伸びが100%以上であると、ガラス飛散防止フィルム4の引張伸びを60%以上とすることが容易となる。
【0056】
また、ハードコート層2は、必要に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を含有しても良い。ハードコート層2に添加可能な成分としては、例えば、分散剤、柔軟性成分、抗菌剤、フッ素系防汚剤、フッ素系滑剤、シリコーン系滑剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0057】
(接着層)
接着層3の厚さは、5〜150μmであることが好ましい。また、接着層3は、ガラス飛散防止フィルム等の光学フィルムの透明性を確保するために、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。同様に、接着層3は、接着層単体としてのヘイズが3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
【0058】
接着層3に用いられる材料としては、一般にガラス貼着用等に使用されている接着剤や粘着剤を使用することができる。接着層3に用いられる材料としては、例えば、アクリル系、ゴム系(天然ゴム系、ポリブタジエン系等)、シリコーン系、ウレタン系、ポリビニルブチラール系、ポリビニルアセタール系、エチレン−酢酸ビニル系等の各種樹脂が挙げられる。これらの中では、耐久性の観点から、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0059】
接着層3には、取扱性向上のために、必要に応じて、離型シートが貼付される。ガラス飛散防止フィルム4をガラス板5に設置するときには、この離型シートを剥がしてから接着層3をガラス板5に貼着させる。
【0060】
接着層3には、耐候性のさらなる向上のために、紫外線吸収剤を含有させてもよい。前記したように本実施形態においては、ハードコート層2に紫外線吸収剤を含有させているが、さらに接着層3に紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤の種類としては、前記したハードコート層2に含有させるものと同様に、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、トリアジン系が挙げられる。接着層3への溶解性の観点から、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、接着層3を形成する粘着剤組成物の固形分を100質量%として、0.1質量%以上2質量%以下が好ましい。
【0061】
なお、第1実施形態(
図1)では、接着層3の屋外側にハードコート層2と基材フィルム1とが存在し、これら2層で紫外線が十分に遮蔽されるとき、接着層3に紫外線吸収剤を含有させないようにすることができる。一方、第2実施形態(
図2)では、接着層3の屋外側にはガラス板5のみが存在するため、接着層3に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0062】
接着層3には、必要に応じてさらに、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、接着調整剤、粘着付与剤等を適宜添加配合してもよい。
【0063】
太陽光等が有する種々の波長の光の中には、使用環境によっては、皮膚に対して健康障害を引き起こしたり、目の疲れを引き起こすという作用を有する光が含まれており、こうした有害な作用を抑制することが可能な光学フィルムに対する要望が存在していた。そのため、皮膚への障害を低減させたり、目の疲れを低減させることが可能な光学フィルム用接着層と当該接着層を有する光学フィルムおよびガラス飛散防止フィルムを提供するという課題が存在していた。
【0064】
本発明者らは、特定の波長の可視光線の透過性能を制御することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、接着層3は、400nmにおける可視光線透過率が1%以上50%以下であり、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。また、接着層3は、420nmにおける可視光線透過率が30%以上80%以下であり、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。また、接着層3は、400nmにおける可視光線透過率が1%以上50%以下であり、420nmにおける可視光線透過率が30%以上80%以下であり、全光線透過率が95%以上であることが好ましい。
【0065】
皮膚への障害を低減する目的においては、380nm〜400nmの分光透過率を調整することが有効であり、特に400nmにおける可視光線透過率を1%以上50%以下とすることが好ましく、5%以上30%以下とすることがより好ましい。目の疲れを低減する目的においては、380nm〜450nmの分光透過率を調整することが有効であり、特に420nmにおける可視光線透過率を30%以上80%以下とすることが好ましく、35%以上65%以下とすることがより好ましい。
【0066】
このように接着層3の特定波長における可視光線透過率を適切に調整すると、ヘイズや色調などの外観や粘着特性を損なうことなく、皮膚への障害や目の疲れを低減させるという効果をガラス飛散防止フィルム等の光学フィルム用接着層に付与することができる。
【0067】
接着層3の特定波長における可視光線透過率を適切に調整して、皮膚への障害を低減させたり、目の疲れを低減させるために、特定の吸収波長を有する着色剤を添加することができる。
【0068】
接着層3の可視光線透過率を調整する着色剤としては、例えば、銅ポルフィリン錯体系色素、ナフタルイミド系色素、メロシアニン系色素が挙げられる。これらの色素は、単独で使用してもよいし、複数の色素を併用してもよい。すなわち、接着層3には、銅ポルフィリン錯体系色素、ナフタルイミド系色素およびメロシアニン系色素の少なくとも1種を含有させることができる。
【0069】
銅ポルフィリン錯体系色素は、例えば、最大吸収波長が420nm程度のものである。銅ポルフィリン錯体系色素としては、例えば、山田化学工業製FDB−001などを挙げることができる。なお、銅ポルフィリン錯体系色素には、テトラアザポルフィリン系色素は含まれない。銅ポルフィリン錯体系色素の含有量は、接着層3を形成する塗料組成物の固形分を100質量%として、0.0005質量%以上0.05質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.025質量%以下がより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば分光透過率調整効果が十分であり、上記上限値以下であれば接着層3からの着色剤のブリードアウトによる接着力低下が生じにくい。
【0070】
ナフタルイミド系色素は、例えば、最大吸収波長が380nm程度のものである。ナフタルイミド系色素としては、例えば、BASF製Lumogen F Violet 570などを挙げることができる。ナフタルイミド系色素の含有量は、接着層3を形成する塗料組成物の固形分を100質量%として、0.05質量%以上2質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば分光透過率調整効果が十分であり、上記上限値以下であれば接着層3からの着色剤のブリードアウトによる接着力低下が生じにくい。
【0071】
メロシアニン系色素は、例えば、最大吸収波長が400nm程度のものである。メロシアニン系色素としては、例えば、環状メロシアニン誘導体などが挙げられ、また、山田化学工業製FDB−009などを挙げることができる。メロシアニン系色素の含有量は、接着層3を形成する塗料組成物の固形分を100質量%として、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば分光透過率調整効果が十分であり、上記上限値以下であれば接着層3からの着色剤のブリードアウトによる接着力低下が生じにくい。
【0072】
(ガラス飛散防止フィルム4)
本実施形態のガラス飛散防止フィルム4は、引張伸びが60%以上である。引張伸びが60%以上であると、ガラス飛散防止フィルム4は優れたガラスの飛散防止性能を有したものとなる。
【0073】
ガラス飛散防止フィルム4は、引張強さが100N/25mm以上であることが好ましい。引張強さが100N/25mm以上であると、JIS A5759によれば、ガラス飛散防止フィルム4はより優れたガラスの飛散防止性能を有したものとなる。
【0074】
ガラス飛散防止フィルム4の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、ガラス飛散防止フィルム4のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0075】
ガラス飛散防止フィルム4のハードコート層2側から測定したときの表面硬度は、鉛筆硬度で、2H以上であることが好ましく、3H以上がより好ましい。
【0076】
ガラス飛散防止フィルム4の380nm紫外線透過率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0077】
[ガラス飛散防止フィルムの製造方法]
次に、本実施形態のガラス飛散防止フィルム4の製造方法について説明する。
本実施形態のガラス飛散防止フィルム4は、基材フィルム1上にハードコート層2と接着層3を順次形成することによって、製造することができる。
ハードコート層2を形成する方法について説明する。活性エネルギー線硬化性樹脂を溶剤に適当量混合し、適切な粘度の溶液を調製する。その溶液を基材フィルム1上にコーティングする。乾燥させた後、活性エネルギー線を用いて硬化反応をさせることによって、ハードコート層2を形成することができる。
【0078】
接着層3を形成する方法について説明する。接着層3を形成する第1の方法は、次のとおりである。まず、接着剤に溶剤を適当量混合して、適切な粘度の塗料組成物の溶液を調製する。次に得られた溶液を基材フィルム1上にコーティングする。その後、溶液を乾燥させると、接着層3を形成することができる。
【0079】
また、接着層3を形成する第2の方法は、次のとおりである。まず、第1のセパレータフィルム上に塗料組成物の溶液をコーティングする。前記溶液を乾燥させて第1のセパレータフィルム上に接着層を形成する。その後、当該接着層の上に第2のセパレータフィルムを貼り合わせて、2枚のセパレータフィルムで接着層がサンドイッチされた構成の3層の積層体を作製する。次に、前記積層体の一方のセパレータフィルムを剥がして、基材フィルム1のハードコート層2を形成していない面に、接着層を貼り合わせると、接着層3を基材フィルム1上に形成することができる。他方のセパレータフィルムは、前記した離型シートとして使用することができる。
【実施例】
【0080】
本実施形態を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。
基材フィルムとして、下記の3種類のPETフィルムP1、P2、P3を用いた。なお、各PETフィルムの片面には易接着処理がなされており、ハードコート層は、この易接着処理がなされた面に形成した。
(1)PETフィルムP1:厚さ50μm、紫外線吸収剤を含有する。
(2)PETフィルムP2:厚さ50μm、紫外線吸収剤を含有しない。
(3)PETフィルムP3:厚さ50μm、紫外線吸収剤を含有しない。
【0081】
まず、表1に記載の配合組成のハードコート層用の塗料組成物C1〜C15を調製した。溶剤にMEK(メチルエチルケトン)を用いて、塗料組成物全体の質量を15gに揃えた。なお、C3とC15は同一のものである。
【0082】
表1に記載の塗料組成物C1〜C15をそれぞれ、後記する表5に記載のPETフィルムの易接着面にバーコーターを用いて塗工し、100℃の熱風オーブン中で1分間乾燥させた。その後、塗工面に高圧水銀灯にて紫外線(積算光量500mJ/cm
2)を2分間照射することで硬化させ、4μm厚さのハードコート層を形成した。
【0083】
塗料組成物C1〜C15をそれぞれ塗工して得られたハードコート層の固形分組成H1〜H15を表2に示した。なお、H3とH15は同一のものである。なお、表1の最下欄には、塗料組成物C1〜C15における固形分濃度(質量%)を示した。また、バーコータを用いて塗工するときに用いたワイヤーバーの番手を表5に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
次に、シリコーンで処理されたセパレータフィルム(三菱樹脂社製、PETフィルムセパレータ、MRF、25μm厚さ)上に表3に記載の配合組成の接着層用の塗料組成物D1、D2をアプリケータを用いて塗工した。その後100℃の熱風オーブン中で2分間乾燥させて、20μm厚さの接着層を形成した。得られたそれぞれの接着層の固形分組成AD1、AD2を表4に示した。なお、表3の最下欄には、塗料組成物D1、D2における固形分濃度(質量%)を示した。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
次に、上記のセパレータフィルム上に形成された接着層と、上記PETフィルムのハードコート層が形成された側とは反対側の面とをラミネートした。ハードコート層とPETフィルムと接着層の種類を変えて、種々の組み合わせで、表5に記載の試験番号A1〜A15のガラス飛散防止フィルムを得た。A16〜A18は、比較例のPETフィルムのみのものである。
【0090】
【表5】
【0091】
得られたガラス飛散防止フィルムを用いて、各種性能の評価を行った。引張特性はセパレータフィルムを剥がした状態で評価を行い、それ以外はガラス板に貼り付けた状態にて、評価を行った。
【0092】
<性能評価方法>
実施例、比較例の各サンプルについて、耐候性試験前後における引張強さ、引張伸び、耐擦傷性、鉛筆硬度、クロスカット密着性、ヘイズ、全光線透過率、紫外線透過率について、以下に記載の条件にて性能の評価を行った。
【0093】
(耐候性試験)
耐候性試験は、スガ試験機社製、キセノンウェザオメータXL75を用いて実施した。
キセノン光照射試験条件:放射照度390W/m
2、ブラックパネル温度63℃、槽内
温度45℃、槽内湿度40%RH、40日間。
耐候性試験を行う際、第1実施形態と第2実施形態とを想定して、キセノン光を照射する照射面をハードコート層側とする場合と、ガラス板側とする場合の2種類の条件で行った。
【0094】
(引張試験)
引張試験は、JIS A5759(1998)に準拠して島津製作所社製、引張試験機AGS−500NGを用いて測定した。引張速度300mm/min、サンプルサイズ幅25mm、長さ100mm、MD方向で測定した。引張強さが100N/25mm以上、引張伸びが60%以上であるとき合格と判断した。
【0095】
(耐擦傷性)
耐擦傷性は、新東科学社製、表面性試験機HEIDON14DRを用いて測定した。#0000スチールウール使用し、速度6000mm/min、評価長さ60mm、荷重200g/cm
2、摩耗回数1000回または10回で評価した。摩耗回数1000回のときを評価条件1とし、摩耗回数10回のときを評価条件2とした。全面に傷が入った時:×、一部に少し傷が入った時:△、全面に傷が入らなかった時:○と判定した。耐擦傷性が○または△のとき合格と判断した。
【0096】
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度は、JIS A5600−5−4(1999)に準拠して、新東科学社製、表面性試験機HEIDON14DRを用いて測定した。速度30mm/min、評価長さ7mm、荷重750gで、ハードコート層が破壊されない状態の鉛筆硬度を判定した。鉛筆硬度が2H以上のとき合格と判断した。
【0097】
(クロスカット密着性)
クロスカット密着性は、ハードコート層の密着性を評価するものであり、JIS A5400(1999)に準拠して測定した。カッターを用いてハードコート層表面を1mmの碁盤目になるように100個分切り、セロハンテープを貼り付け、剥がしたときのハードコート層の剥離状態を観察した。1個でも剥離したとき×、1個も剥離しないとき○と判定した。クロスカット密着性が○のとき合格と判断した。
【0098】
(ヘイズ)
ヘイズは、JIS K7136(2000)に準拠して、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いて測定した。ヘイズが3%以下であるとき合格と判断した。
【0099】
(全光線透過率)
全光線透過率は、JIS K7136に準拠して、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いて測定した。全光線透過率が80%以上であるとき合格と判断した。
【0100】
(紫外線透過率)
紫外線透過率は、島津製作所社製、分光光度計UV3100PCを用いて、380nmにおける紫外線透過率を測定した。紫外線透過率が10%以下であるとき合格と判断した。
【0101】
試験番号A1〜A18について、評価結果を表6と表7に示した。
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
A1〜A5は、ガラス板の屋外側に貼着する第1実施形態を想定して、耐候性試験におけるキセノン光を照射する照射面をハードコート層側としている(
図1参照)。一方、A6とA7は、ガラス板の屋内側に貼着する第2実施形態を想定して、キセノン光を照射する照射面をガラス板側としている(
図2参照)。
【0105】
A2、A3、A4は、ハードコート層中に平均粒子径が15nmのアルミナ微粒子をそれぞれ30、40、50質量%含有するものであり、耐候性試験前後における引張強さ、引張伸び、耐擦傷性、鉛筆硬度、クロスカット密着性、ヘイズ、全光線透過率、紫外線透過率に優れているものであった。
【0106】
A1は、アルミナ微粒子を含有していないハードコート層を有するガラス飛散防止フィルムであり、引張伸びに劣り、ガラス飛散防止性能に劣るものとなっている。A5は、ハードコート層中に平均粒子径が15nmのアルミナ微粒子を含有するものの、含有量が60質量%であり、耐擦傷性が劣るものであった。また耐候性試験後のクロスカット密着性にも劣っていた。
【0107】
A7は、A3とハードコート層の組成が共通するものであるが、キセノン光を照射する照射面がガラス板側であり、PETフィルムには紫外線吸収剤を含有しないP3を使用しているが、接着層に紫外線吸収剤を含有しているものである。耐候性試験前後における引張強さ、引張伸び、耐擦傷性、鉛筆硬度、クロスカット密着性、ヘイズ、全光線透過率、紫外線透過率に優れているものであった。また、A3との比較において、耐候性試験後の引張伸びにも優れたものとなっていた。
【0108】
A6は、A7と同様に、A3とハードコート層の組成が共通するものであるが、キセノン光を照射する照射面がガラス板側であり、PETフィルムには紫外線吸収剤を含有しないP2を使用したものであるが、耐候性試験後の引張伸びに劣っていた。これは、A17の耐候性試験の結果からも分かるように、基材フィルムであるP2の引張特性が低いものであるため、耐候性試験によって基材フィルムの劣化が進んだ結果であろうと推定される。
【0109】
A9は、ハードコート層中に平均粒子径が20nmのアルミナ微粒子を40質量%含有するものであり、引張強さ、引張伸び、耐擦傷性、鉛筆硬度、クロスカット密着性、ヘイズ、全光線透過率、紫外線透過率に優れているものであった。
【0110】
A8は、ハードコート層中に平均粒子径が15nmの酸化チタン微粒子を40質量%含有するものである。A10は、ハードコート層中に平均粒子径が30nmのシリカ微粒子を40質量%含有するものである。A12は、ハードコート層中に平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を40質量%含有するものである。いずれも耐擦傷性に劣るものであった。また、A12はヘイズにおいても劣るものであった。
【0111】
A11は、ハードコート層中に平均粒子径が39nmのアルミナ微粒子を40質量%含有するものであり、アルミナ微粒子の平均粒子径が大きいため、耐擦傷性が劣るものとなっている。
【0112】
A13〜A15は、フッ素含有アクリル系樹脂やケイ素含有アクリル系樹脂の効果を見るための実験である。ハードコート層を形成する樹脂組成物としてフッ素含有アクリル系樹脂を用いたA15は、ケイ素含有アクリル系樹脂を用いたA14やいずれも使用していないA13に比べて、耐擦傷性に優れている傾向にあった。また、A13は鉛筆硬度にやや劣るものであった。
【0113】
<着色剤含有接着層>
次に、可視光線透過率を調整する着色剤を含有する接着層とそれを有するガラス飛散防止フィルムの具体例について、以下の実験例を用いて説明する。
【0114】
基材フィルムとして、PETフィルムP1を用いた。PETフィルムの片面には易接着処理がなされており、ハードコート層は、この易接着処理がなされた面に形成した。
【0115】
表1に記載の配合組成のハードコート層用の塗料組成物C1およびC2を調製し、溶剤にMEK(メチルエチルケトン)を用いて、塗料組成物全体の質量を15gに揃えた。
【0116】
表1に記載の塗料組成物C1およびC2をPETフィルムP1の易接着面にバーコーターを用いて塗工し、100℃の熱風オーブン中で1分間乾燥させた。その後、塗工面に高圧水銀灯にて紫外線(積算光量500mJ/cm
2)を2分間照射することで硬化させ、4μm厚さのハードコート層を形成した。
【0117】
塗料組成物C1、C2をそれぞれ塗工して得られたハードコート層の固形分組成H1、H2を表2に示した。なお、表1の最下欄には、塗料組成物C1およびC2における固形分濃度(質量%)を示した。また、バーコータを用いて塗工するときに用いたワイヤーバーの番手は♯8であった。
【0118】
次に、フロロシリコーンで処理されたセパレータフィルム(ニッパ社製 PETフィルムセパレータ PET50×FSB6、50μm厚さ)上に、表8に記載の配合組成の接着層用の塗料組成物S1、S2、S3、S4、S5、S6をアプリケータを用いて塗工した。その後100℃の熱風オーブン中で3分間乾燥させて、50μm厚さのシリコーン系の接着層を形成した。その後、フロロシリコーンで処理されたセパレータフィルム(ニッパ社製 PETフィルムセパレータ PET50×FSC6、50μm厚さ)を貼り合わせた。得られた接着層のそれぞれの固形分組成AS1、AS2、AS3、AS4、AS5、AS6を表9に示した。なお、表8の最下欄には、塗料組成物S1、S2、S3、S4、S5、S6における固形分濃度(質量%)を示した。
【0119】
【表8】
【0120】
【表9】
【0121】
次に、上記の2枚のセパレータフィルムの内の一方のセパレータフィルムを剥離した。もう一方のセパレータフィルム上に形成された接着層と、上記PETフィルムP1のハードコート層が形成された側とは反対側の面とをラミネートした。ハードコート層組成H1と接着層組成AS1〜AS6の組み合わせで、表10に記載の試験番号A19〜A24のガラス飛散防止フィルムを得た。また、ハードコート層組成H2と接着層組成AS6との組み合わせによって試験番号A25のガラス飛散防止フィルムを得た。なお、2枚のセパレータフィルムを共に剥離させ一方の面を松浪硝子製マイクロスライドガラスS9112にラミネートすることによって、接着層組成AS1〜AS6を有する接着層の単体を得た。
【0122】
得られた接着層の単体とガラス飛散防止フィルムについて、ヘイズ、全光線透過率、380nmの紫外線透過率、400nmの可視光線透過率、420nmの可視光線透過率を評価した。ヘイズ、全光線透過率、380nmの紫外線透過率の評価方法は前記と同様である。また、400nmと420nmの可視光線透過率は、紫外線透過率の評価方法と同じ評価装置を用いて、評価する光線の波長を変更することによって測定した。なお、接着層単体の前記光学特性は、予め松浪硝子製マイクロスライドガラスS9112単体の光学特性を測定しておき補償することで得られる。
【0123】
接着層の単体についての各種光学特性の判断基準は以下のとおりである。ヘイズは、3.0%以下であるとき合格と判断した。全光線透過率は、95%以上であるとき合格と判断した。皮膚の障害を低減する目的では、400nmの可視光線透過率は、1%以上50%以下であるとき合格と判断した。目の疲れを低減する目的においては、420nmの可視光線透過率は、30%以上80%以下であるとき合格と判断し、さらに400nmの可視光線透過率が1%以上50%であるときは、より好ましいと判断した。
接着層単体AS1〜AS6とガラス飛散防止フィルム試験番号A19〜A25の光学特性の評価結果を表10に示した。
【0124】
【表10】
【0125】
接着層AS1〜AS6はいずれも、全光線透過率が95%以上であり、ヘイズが3%未満と低く、優れた性能を有していた。
接着層AS1は、可視光線透過率を調整する着色剤を含有していない接着層であり、380nmの紫外線透過率、400nmの可視光線透過率および420nmの可視光線透過率がいずれも98%と高く、使用環境によっては、皮膚の障害や目の疲れを引き起こす懸念を有するものであった。接着層AS2は、銅ポルフィリン錯体系色素を含有するため、420nmの可視光線透過率は80%未満であり、目の疲れの低減が期待できるが、380nmの紫外線透過率と400nmの可視光線透過率の数値が大きかった。接着層AS3は、ナフタルイミド系色素を含有するため、380nmの紫外線透過率と400nmの可視光線透過率が低く、皮膚の障害の低減が期待できるが、420nmの可視光線透過率が80%を超えるものであった。接着層AS4は、メロシアニン系色素を含有するため、400nmの可視光線透過率と420nmの可視光線透過率を低くすることができたが、380nmの紫外線透過率が10%を超えるものであった。接着層AS5は、銅ポルフィリン錯体系色素、ナフタルイミド系色素およびメロシアニン系色素を含有しており、380nmの紫外線透過率が10%以下であり、400nmの可視光線透過率と420nmの可視光線透過率も低いレベルのものであり、皮膚の障害の低減や目の疲れの低減が期待できるものであった。接着層AS6は、銅ポルフィリン錯体系色素、ナフタルイミド系色素およびメロシアニン系色素に加えて紫外線吸収剤を含有しており、接着層AS5よりもさらに380nmの紫外線透過率が低いレベルのものであった。
【0126】
A19〜A25はいずれも、全光線透過率が80%以上であり、ヘイズが3%未満と低く、ハードコート層に紫外線吸収剤を含有しているため、380nmの紫外線透過率は10%以下であり、良好であった。
A19は、400nmの可視光線透過率および420nmの可視光線透過率がいずれも88%と高く、皮膚の障害や目の疲れを引き起こす懸念を有するものであった。A20は、420nmの可視光線透過率が低いため、目の疲れの低減が期待できるが、400nmの可視光線透過率の数値がやや大きいものであった。A21は、400nmの可視光線透過率が低いため、皮膚の障害の低減が期待できるが、420nmの可視光線透過率がやや大きいものであった。A22は、400nmの可視光線透過率および420nmの可視光線透過率がいずれも低いため、皮膚への障害防止と目の疲れの防止にともに効果が期待できる。A23とA24は、A22よりもさらに420nmの可視光線透過率が低いものであり、目の疲れの防止にさらに効果が期待できる。また、A24では、接着層に含有される紫外線吸収剤の効果が有効に機能している。さらにA25では、ハードコート層に微粒子が含有されていても、接着層の可視光線透過率を調整する機能に影響がないことが示されている。