(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。まず、本開示の実施形態と比較するため、一比較形態におけるサーボシステムの構成について説明する。
【0013】
図1は、一比較形態におけるサーボシステムの構成を例示する図である。
図1に示すサーボシステム100は、不図示の可動部を動かすためのモータ9を制御するモータシステムである。サーボシステム100は、速度制御部1、加算器2、トルク制御部3、速度検出部4、負荷トルク推定部5、制御フィルタ8、モータ9及び位置検出器10を備える。
【0014】
トルク制御部3は、トルク指令Trに基づいて、モータ9のトルクを制御する。位置検出器10は、モータ9の位置(回転位置θ)を検出する。位置検出器は、PGとも称される。速度検出部4は、位置検出器10により検出された回転位置θの時間的な変化に基づいて、モータ9の速度(角速度ω)を検出する。速度制御部1は、速度検出部4により検出された角速度ωを、不図示の前段の制御ブロックから供給される速度指令ωrに追従させるフィードバックトルク指令Tbを生成する。
【0015】
また、サーボシステム100は、モータ9が受ける負荷トルクTLを推定するため、負荷トルク推定部5を備える。負荷トルク推定部5は、トルク指令Trと、速度検出部4により検出された角速度ωとに基づいて、負荷トルクTLを推定する。
【0016】
モータ9の発生トルクをT、モータ9の慣性モーメント(慣性値)をJ、モータ9の角加速度をdω/dtとするとき、負荷トルクTLに、モータ9により移動する可動部に働く重力によって生ずるトルク(重力トルク)を含めた場合、
TL=T−J×dω/dt ・・・式1
という関係式が成立する。したがって、負荷トルク推定部5は、トルク指令Trから、トルク算出部6により算出されたトルク(J×dω/dt)を減算器7により減算することによって、負荷トルクTLを推定する。
【0017】
制御フィルタ8は、負荷トルク推定部5により推定された負荷トルクTL(推定負荷トルクTLe)にフィルタ処理を施すことによって、補償負荷トルクTLcを生成する。加算器2は、速度制御部1により生成されたフィードバックトルク指令Tbと制御フィルタ8により生成された補償負荷トルクTLcとを加算することによって、トルク指令Trを生成する。
【0018】
しかしながら、
図1に示すサーボシステム100では、負荷トルク推定部5により推定された負荷トルクTLは、外乱を抑制する目的でモータ制御に使用されるものの、推定負荷トルクTLeに関する情報を外部から監視することはできない。
【0019】
そこで、本開示の実施形態におけるサーボアンプ及びサーボシステムは、推定された負荷トルクに関する情報を外部から監視可能な構成を備える。次に、本開示の実施形態におけるサーボアンプ及びサーボシステムの当該構成について説明する。
【0020】
図2は、第1の実施形態におけるサーボシステムの構成を例示する図である。
図2に示すサーボシステム120は、鉛直方向成分を有する移動方向に可動部40をアーム41によって移動させるモータ19を駆動及び制御するモータ駆動制御システムである。サーボシステム120は、例えば、モータ19を駆動及び制御して可動部40の位置を所望の位置に制御する。サーボシステム120は、サーボアンプ111と、外部機器122とを備える。
【0021】
外部機器122は、サーボアンプ121の外部に設けられる装置であり、負荷トルクTLの監視機能を備える。外部機器122は、アナログ電圧、又は有線通信もしくは無線通信によって、サーボアンプ121と接続される。外部機器122は、例えば、プログラマブルロジックコントローラなどの制御装置である。
【0022】
サーボアンプ111は、鉛直方向成分を有する移動方向に可動部40をアーム41によって移動させるモータ19を駆動するモータ駆動装置であり、例えば、モータ19を駆動して可動部40の位置を所望の位置に制御する。サーボアンプ111は、例えば、主な構成として、速度制御部11、加算器12、トルク制御部13、速度検出部14、負荷トルク推定部15、制御フィルタ18及び出力部23を備える。
【0023】
トルク制御部13は、トルク指令Trに基づいて、モータ19のトルクを制御する。位置検出器20は、モータ19の位置(回転位置θ)を検出する。速度検出部14は、位置検出器20により検出された位置の時間的な変化に基づいて、モータ19の速度(角速度ω)を検出する。速度制御部11は、速度検出部14により検出された角速度ωを、不図示の前段の制御ブロックから供給される速度指令ωrに追従させるフィードバックトルク指令Tbを生成する。例えば、速度制御部11は、速度検出部14により検出された角速度ωと不図示の前段の制御ブロックから供給される速度指令ωrとの偏差が零になるようにPI制御(比例制御と積分制御)を行うことによって、フィードバックトルク指令Tbを生成する。
【0024】
負荷トルク推定部15は、トルク指令Tr又はトルク検出値Tdeと、速度検出部14により検出された角速度ωとに基づいて、モータ9が受ける負荷トルクTL(モータ9に加わる負荷トルクTL)を推定する。負荷トルク推定部5は、例えば、負荷トルクTLを推定する負荷トルクオブザーバである。負荷トルクTLの推定に用いられるトルク検出値Tdeは、トルク検出部21により検出されたモータ19のトルク値を表す。つまり、負荷トルクTLの推定に、トルク指令Trを用いてもよいしトルク検出値Tdeを用いてもよい。例えば、トルク検出部21がサーボアンプ111に備えられていない場合、トルク指令Trが負荷トルクTLの推定に用いられる。以下、負荷トルク推定部15によって推定された負荷トルクTLを、"推定負荷トルクTLe"とも称する。
【0025】
図1に示す一比較形態では、負荷トルクTLに重力トルクを含めて、負荷トルクTLが推定されている。
図2に示す第1の実施形態は、負荷トルクTLに重力トルクを含めずに、負荷トルクTLを推定する場合を示す。
【0026】
重力トルクとは、鉛直方向成分を有する移動方向にアーム41により移動する可動部40に働く重力分をキャンセルするために要するトルクを表す。モータ19は、モータ19の回転出力軸にギア等を介して接続されたアーム41を、鉛直方向成分を有する方向(例えば、上下方向)に移動させることによって、アーム41に結合された可動部40を鉛直方向成分を有する移動方向に移動させる。可動部40は、例えば、載置台上に固定されたワークWを上方からプレスするプレス動作部である。アーム41は、例えばボールねじを用いて、鉛直方向成分を有する移動方向に可動部40を移動させる。なお、可動部40は、プレス動作、ドリル動作、又は、せん断動作などの工作動作をするものでもよい。
【0027】
例えば、アーム41がその延伸方向に可動部40を移動させるボールねじの場合を考える。可動部40の重心位置に働く重力をFg、重力Fgのうちアーム41の延伸方向(可動部40の移動方向)の重力成分をFg'、重力トルクをTg、鉛直方向とアーム41の延伸方向との角度をα、ボールねじのピッチ(リード)をBPとする。角度αが零の場合は、可動部40が鉛直方向のみに移動することを表す。このとき、重力成分Fg'と重力トルクTgは、それぞれ、
Fg'=Fg×cosα ・・・式2
Tg=(BP/2π)×Fg' ・・・式3
という関係式が成立する。
【0028】
また、モータ19の発生トルクをT、モータ19及びモータ19に直接又は間接的に接続される負荷機械可動部の慣性モーメント(慣性値)をJ、モータ19の角加速度をdω/dt、モータ19が受ける外乱トルクをTd、外乱トルクTdに含まれる重力トルクをTgとする。このとき、負荷トルクTLに重力トルクTgを含めない場合、
TL=Td−Tg=T−J×dω/dt−Tg ・・・式4
という関係式が成立する。推定対象の負荷トルクTLから重力トルクTgを除くことによって、負荷トルクTLの推定精度が向上する。
【0029】
式4を使って負荷トルクTLを推定する場合、負荷トルク推定部15は、例えば、外乱トルク推定部28及び減算器30を有する。
【0030】
外乱トルク推定部28は、トルク指令Tr又はトルク検出値Tdeと、速度検出部14により検出された角速度ωとに基づいて、モータ19が受ける外乱トルクTd(モータ19に加わる外乱トルクTd)を推定する。外乱トルク推定部28は、例えば、外乱トルクTdを推定する外乱トルクオブザーバである。以下、外乱トルク推定部28によって推定された外乱トルクTdを、"推定外乱トルクTdie"とも称する。
【0031】
外乱トルク推定部28は、例えば、
図1に示す負荷トルク推定部5と同じ構成を有する。この場合、外乱トルク推定部28は、上述と同様に、トルク指令Tr又はトルク検出値Tdeから、トルク算出部6により算出されたトルク(J×dω/dt)を減算器7により減算することによって、外乱トルクTdを推定する。なお、外乱トルク推定部28は、この構成に限られず、任意の公知の構成でもよい。
【0032】
式4に示されるように、負荷トルクTLは、外乱トルクTdから重力トルクTgを減算することによって推定可能である。したがって、負荷トルク推定部15は、外乱トルク推定部28により推定された外乱トルクTd(推定外乱トルクTdie)から、重力トルクTgを減算器30により減算することによって、負荷トルクTLを推定する。つまり、重力トルクTgの補償によって、高精度な推定負荷トルクTLeが得られる。
【0033】
例えば、負荷トルク推定部15は、外乱トルク推定部28により推定された外乱トルクTd(推定外乱トルクTdie)から、一定の重力トルクTgを減ずることによって、負荷トルクTLを推定する。角度αが固定されて可動部40が鉛直方向に一直線上に移動する場合、重力トルクTgは、式3により、一定値になる。よって、一定の重力トルクTgは、サーボアンプ111内部に予め設定(記憶)しておくことができる。
【0034】
あるいは、負荷トルク推定部15は、外乱トルク推定部28により推定された外乱トルクTd(推定外乱トルクTdie)から、サーボアンプ外部から供給される重力トルクTgを減ずることによって、負荷トルクTLを推定してもよい。動作状態や段取りの変化によって可動部40の質量が変わったり、角度αが変わったりする場合がある。このような可変情報を外部機器122が有する場合、時々刻々の重力トルクTgの値が外部機器122により演算され、時々刻々の重力トルクTgの演算値が、外部機器122から、通信によって、サーボアンプ111の負荷トルク推定部15に供給される。このように、重力トルクTgが変化しても、サーボアンプ111は、外部機器122から重力トルクTgを入手して、負荷トルクTLの推定に利用できる。
【0035】
制御フィルタ18は、推定負荷トルクTLeにフィルタ処理を施すことによって、補償負荷トルクTLcを生成する。加算器12は、速度制御部11により生成されたフィードバックトルク指令Tbと制御フィルタ18により生成された補償負荷トルクTLcとを加算することによって、トルク指令Trを生成する。
【0036】
サーボアンプ111は、推定負荷トルクTLeに関する情報(監視情報)をサーボアンプ111の外部に出力する出力部23を備える。これにより、推定負荷トルクTLeに関する情報がサーボアンプ111の外部(例えば、外部機器122)に出力可能となる。よって、外乱を抑制する目的で推定負荷トルクTLeをトルク指令Trの算出に反映してモータ19のサーボ制御に使用できるだけでなく、推定負荷トルクTLeに関する情報をサーボアンプ111の外部(例えば、外部機器122)から監視できる。
【0037】
例えば、モータ19によって位置等が制御される可動部40又はモータ19自体に、異常(例えば、経年劣化や異物の接触など)が発生すると、推定負荷トルクTLeが変化する。したがって、出力部23から出力される推定負荷トルクTLeに関する情報をサーボアンプ111の外部でモニタすることによって、可動部40又はモータ19に発生した異常をサーボアンプ111の外部で検知することが可能となる。
【0038】
推定負荷トルクTLeに関する情報として、例えば、推定負荷トルクTLeの値、サーボアンプ111内部で推定負荷トルクTLeに基づき異常判定を行った結果などが挙げられる。
【0039】
出力部23は、推定負荷トルクTLeに関する情報を、アナログ出力で外部出力してもよいし、有線通信又は無線通信で外部出力してもよい。
【0040】
例えば、出力部23は、推定負荷トルクTLeの値をアナログの電圧値に変換して外部出力する。これにより、サーボアンプ111の外部機器122は、出力部23から出力されるアナログの電圧値に応じて、推定負荷トルクTLeの値を検知できる。出力部23が推定負荷トルクTLeの値を所定の搬送波で通信出力する場合も同様に、サーボアンプ111の外部機器122は、出力部23から出力される搬送波を受信することによって、推定負荷トルクTLeの値を検知できる。例えば、出力部23は、負荷トルクの推定値をピークホールドし、その推定値のピークホールド値をサーボアンプ外部へ送信する。
【0041】
同様に、出力部23は、サーボアンプ111内部で推定負荷トルクTLeに基づき異常判定を行った結果(正常又は異常)を表す情報を、アナログの電圧値に変換して外部出力してもよいし、所定の搬送波で通信出力してもよい。これにより、サーボアンプ111の外部機器122は、出力部23から出力されるアナログ電圧又は搬送波を検知することによって、サーボアンプ111が異常判定した結果を取得できる。
【0042】
ところで、負荷トルクTLの推定には、上述の通り、モータ19及びモータ19に接続される負荷機械可動部の慣性モーメント(慣性値J)が使われる。負荷トルクTLの推定に使用する慣性値が、サーボ制御パラメータ(例えば、速度制御部11で行われる比例制御の制御ゲインA)の決定に使用する慣性値と兼用されている場合、負荷トルクTLの推定に使用する慣性値は、必ずしも正しく設定されるとは限らない。サーボ制御の制御性の向上に適した慣性値が、必ずしも負荷トルクTLの推定精度の向上に適しているとは限らないからである。また、サーボ制御パラメータの決定に使用される慣性モーメント比は、多少の誤差があってもサーボ制御上の不具合が生じなければよいため、1、5、10倍などの概略値に設定し、オートチューニングゲインで細かく調整する場合がある。このような場合、負荷トルクTLを精度よく推定することが難しい。
【0043】
この点、
図2に示すサーボアンプ111は、モータ19の制御用に第1の慣性値Jcを設定する第1の慣性値設定部24と、負荷トルクTLの推定用に第2の慣性値Jeを設定する第2の慣性値設定部26とを備える。つまり、負荷トルクTLの推定用とモータ19の制御用とで独立に慣性値を設定可能な機能が設けられている。このように独立に慣性値を設定可能な機能を設けることで、負荷トルクTLの推定のために、より適切な慣性値を設定可能になり、負荷トルクTLの推定精度が向上する。また、負荷トルクTLの推定用とモータ19の制御用とでそれぞれに適切な慣性値を設定することが可能になるので、サーボ制御の制御精度の向上と負荷トルクTLの推定精度の向上とを両立させることが可能となる。
【0044】
例えば、第1の慣性値設定部24は、入力された第1の慣性値Jcに基づいて制御ゲインAをオートチューニングし、速度制御部11で行われる比例制御の制御ゲインに、オートチューニング後の制御ゲインAを設定する。一方、第2の慣性値設定部26は、負荷トルク推定部15内で負荷トルクTLの推定に使用する慣性値J(例えば、上述の(J×dω/dt)の算出に使用する慣性値J)に、入力された第2の慣性値Jeを設定する。
【0045】
なお、第1の慣性値Jc又は第2の慣性値Jeは、サーボアンプ111が備える慣性値推定演算機能によって得られる推定値でもよいし、ユーザ又はサーボアンプ111の外部機器122から入力される情報に基づいて決定される値でもよい。
【0046】
また、
図2に示すサーボアンプ111は、モータ19の制御用に第1のフィルタ値Kcを設定する第1のフィルタ値設定部25と、推定負荷トルクTLeに関する監視情報の出力用に第2のフィルタ値Koを設定する第2のフィルタ値設定部27とを備える。つまり、監視情報の出力用とモータ19の制御用とで独立にフィルタ値を設定可能な機能が設けられている。このように独立にフィルタ値を設定可能な機能を設けることで、モータ19のサーボ制御に適したフィルタ値を設定できるだけでなく、サーボアンプ111の外部機器122が監視情報を監視するのに適したフィルタ値を設定できる。
【0047】
サーボアンプ111は、例えば、モータ19の制御用の制御フィルタ18と、監視情報の出力用の出力フィルタ22とを備える。第1のフィルタ値設定部25は、制御フィルタ18に、入力された第1のフィルタ値Kcを設定し、第2のフィルタ値設定部27は、出力フィルタ22に、入力された第2のフィルタ値Koを設定する。例えば、第1のフィルタ値Kcは、制御フィルタ18の応答時定数であり、第2のフィルタ値Koは、出力フィルタ22の応答時定数であるが、これに限られず、各フィルタで行われるフィルタ処理に適した値に設定される。制御フィルタ18は、推定負荷トルクTLeに、第1のフィルタ値Kcを用いたフィルタ処理を施すことによって、補償負荷トルクTLcを生成する。出力フィルタ22は、推定負荷トルクTLeに、第2のフィルタ値Koを用いたフィルタ処理を施すことによって、外部監視に適した推定負荷トルクTLeを生成する。
【0048】
なお、出力フィルタ22は、ローパスフィルタでもバンドパスフィルタでもハイパスフィルタでもよい。外部監視に適したフィルタ特性が設定される。
【0049】
図3は、第2の実施形態におけるサーボシステムの構成を例示する図である。
図3に示すサーボシステム140は、サーボアンプ121と、外部機器122とを備える。上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0050】
第2の実施形態は、負荷トルク推定部15の構成が第1の実施形態と異なる。第2の実施形態では、負荷トルク推定部15は、外乱トルク推定部28により推定された外乱トルクTd(推定外乱トルクTdie)から重力トルクTgを高域通過フィルタ32により減ずることによって、負荷トルクTLを推定する。高域通過フィルタ32は、外乱トルクTdが入力され、入力された外乱トルクTdに含まれる重力トルクTgを減衰することによって、重力トルクTgの成分が減衰した推定負荷トルクTLeを出力する。重力トルクTgの周波数成分が直流成分の場合(例えば、上述のように、重力トルクTgが一定値の場合)、外乱トルクTdに高域通過フィルタ32によるフィルタ処理を施すことで、重力トルクTgに相当する直流成分が減衰した推定負荷トルクTLeが得られる。
【0051】
図4は、推定負荷トルクに重力トルクを含めた場合での各波形を例示する図であり、一比較形態における負荷トルク推定部5が負荷トルクTLを推定する場合を示す。
図5は、推定負荷トルクに重力トルクを含めない場合での各波形を例示する図であり、第1又は第2の実施形態における負荷トルク推定部15が負荷トルクTLを推定する場合を示す。
図4,5において、「速度」は、可動部40が金属のワークWをプレスするときのプレス速度(又は、角速度ω)を表し、「負荷トルク」は、サーボアンプ内部で演算された推定負荷トルクTLeを表す。
【0052】
図4の場合、下降動作にて金属をプレスするため、下支点付近で負荷トルクが加わっているが、重力トルクTgが推定負荷トルクTLeに20%程度含まれているため、負荷トルク(この場合、プレストルク)を精度良く監視できない。一方、
図5の場合、重力トルクTgを推定負荷トルクTLeに含まれないため、推定負荷トルクTLeを零基準に変化する量として表すことができ、プレストルクを精度良く且つ直感的に監視することができる。
【0053】
図6は、第3の実施形態におけるサーボシステムの構成を例示する図である。
図6に示すサーボシステム160は、サーボアンプ131と、外部機器122とを備える。上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0054】
第3の実施形態は、負荷トルク推定部15が、モータ19の速度指令ωrに基づいて負荷トルクTLを推定する点で、モータ19の速度検出値(速度検出部14により検出される角速度ω)に基づいて負荷トルクTLを推定する上述の実施形態と異なる。負荷トルク推定部15は、外乱トルク推定部28が速度指令ωrに基づいて外乱トルクTdを推定することによって、負荷トルクTLを推定する。
【0055】
例えば
図1に示す負荷トルクTLの演算では、位置検出器20により検出された回転位置θを速度検出部14が微分することによって得られる角速度ωが使用される。しかしながら、位置検出器20により検出された回転位置θにはノイズ成分が含まれるため、これを微分すると、大きなノイズ成分が角速度ωに現れる傾向がある。とくに、慣性値が大きいと、監視に適さない程のノイズ成分となる場合がある。速度検出部14により得られた角速度ωを更に微分して角加速度dω/dtを得ると、更にノイズ成分が増大する場合がある。
【0056】
これに対し、
図6に示す負荷トルク推定部15は、速度指令ωrで指令される速度(指令速度)を微分して得られる角加速度dω/dtを使用して負荷トルクTLを演算する。速度指令ωrで指令される速度(指令速度)は、サーボアンプ131の内部値であるので、ノイズ成分が比較的少ない。よって、速度指令ωrで指令される速度(指令速度)を使用することで、ノイズの少ない高精度な監視が可能となる場合がある。
【0057】
なお、
図6に示す負荷トルク推定部15は、
図3に示すように、高域通過フィルタ32を使用して、負荷トルクTLを推定してもよい。
【0058】
図7は、負荷トルクの推定に帰還速度(速度検出部14により検出される角速度ω)を使用する場合の各波形を例示する図である。
図8は、負荷トルクの推定に指令速度(速度指令ωrで指令される速度)を使用する場合の各波形を例示する図である。
【0059】
図7の場合、帰還速度の微分を使用しているため、実負荷による負荷トルクTLの印加時の角速度ωの変化に伴って、瞬時に推定負荷トルクTLeを算出できる。一方、
図8のように、指令速度の微分を使用した場合、実負荷による負荷トルクTLの印加時の角速度ωの変化が負荷トルクTLの推定に反映されない。そのため、速度制御の結果としてトルク指令Trが立ち上がるのに伴って、推定負荷トルクTLeが立ち上がる。つまり、推定負荷トルクTLeの応答の速さは、速度制御の応答の速さで決まる。しかしながら、速度制御の応答は、通常30〜100Hzぐらいであり(時定数換算すると、5〜1ms程度)、十分に速いため、実用上は支障がない。
【0060】
ところで、
図5に例示する推定負荷トルクTLeの波形では、出力部23から出力される推定負荷トルクTLeから、そのピーク値を外部機器122で検出するには、1ms程度のサンプリングが要求される。このピーク検出をバス通信で行う場合、バス通信を1ms程度で行うことが要求されるので、外部機器122側のピーク検出に高い精度が要求され、高精度なピーク検出が容易ではない。
【0061】
そこで、各実施形態における出力部23は、例えば
図9に示すように、負荷トルクTLの推定値をピークホールドし、その推定値のピークホールド値をサーボアンプ外部へ送信する毎にリセットし、負荷トルクTLの推定値を再びピークホールドしてもよい。出力部23は、バス通信で送受信する間の期間に推定負荷トルクTLeをピークホールドし、送信タイミングで最新のピークホールド値を外部機器122に送信し、内部のピークホールド値をリセットする。これにより、例えばバス通信が5ms程度の場合であっても、外部機器122は、取りこぼしなくピーク検出できる。よって、データ更新が比較的遅いシステムでも、外部機器122は、推定負荷トルクTLeのピーク値を取りこぼさずに、推定負荷トルクTLeに基づいて、モータ19等の異常判定を比較的高精度に実施できる。
【0062】
外部機器122側でピークトルクを検出することが求められる例として、
・機械の1サイクルの情報が、外部機器122側にしかなく、サーボアンプ側が、どの区間のピークを検出すればよいのか不明な場合
・1サイクル内の複数ピークのうち、どのピークを異常判定に使用するのかを定める条件が、外部機器122側にしかない場合
などがある。
【0063】
あるいは、各実施形態における出力部23は、負荷トルクTLの推定値を時間積分し、その推定値の時間積分値をサーボアンプ外部へ送信してもよい。これにより、推定負荷トルクTLeのピーク値の正常時と異常時との差が比較的小さくても、外部機器122は、出力部23から供給される時間積分値に基づいて、モータ19等の異常判定を比較的高精度に実施できる。
【0064】
図12は、負荷トルクの推定値を時間積分する場合の各波形を例示する図であり、本実施形態におけるサーボシステムをプレス機械に適用した場合において、速度と負荷トルクの波形を正常時と異常時で比較した結果を示す。
図12において、「速度」は、可動部40が金属のリセプタクル端子をプレスするときのプレス速度(又は、角速度ω)を表し、「負荷トルク」は、サーボアンプ内部で演算された推定負荷トルクTLeを表す。
図12おいて、「正常」は、リセプタクル端子60と電線51との圧着が正常な場合を示し(
図10参照)、「異常」は、リセプタクル端子60と電線51との圧着が異常な場合を示す(
図11参照)。
【0065】
図10は、プレス機械の可動部40が、電線51の先端部の被覆52が剥けることで露出した導線53と共にリセプタクル端子60の根元部61をプレスして、導線53と根元部61とが圧着された正常状態を示す。
図11は、プレス機械の可動部40が、電線51の先端部の被覆52が剥けずに導線53を覆った状態で、リセプタクル端子60の根元部61をプレスして、電線51と根元部61とが圧着された異常状態を示す。
【0066】
図12に例示する異常波形では、電線51に被覆52が被った状態で圧着しているため、異物(被覆52)がある分、推定負荷トルクTLeは、正常波形に比べて早く負側に大きくなっている。出力部23は、例えば、角速度ωが所定の速度閾値ωa(例えば、−200rpm)よりも低く、且つ、推定負荷トルクTLeが所定のトルク閾値TLa(例えば、−20%)よりも低い期間で、推定負荷トルクTLeの時間積分する。この条件で時間積分する場合、出力部23は、異常時には、期間t1−t3で時間積分することになり、正常時には、期間t2−t3で時間積分することになる。時間積分値(
図12のハッチング部の面積に相当)は、異常時と正常時とで、明らかに違いを判別できる。このように、推定負荷トルクTLeのピーク値では判別しづらいケースでも、時間積分値で比較することで、モータ19等の異常判定が容易になる。
【0067】
このように、上述の実施形態によれば、推定された負荷トルクTLに関する監視情報が外部出力されるので、推定された負荷トルクに関する情報を外部監視することが可能となる。
【0068】
なお、上述の実施形態において、サーボアンプが備える推定トルク推定部などの各部の機能は、メモリに読み出し可能に記憶されたプログラムによって、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))が動作することにより実現される。
【0069】
以上、サーボアンプ及びサーボシステムを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。