(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記強化学習は、凝縮温度、蒸発温度、膨張弁の開度、圧縮機の回転速度、室内機のファンの回転速度、及び室外機のファンの回転速度の少なくとも一つを変更することを行動の選択肢として実行される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
前記状況を示す情報と、当該状況に応じてユーザに提案された前記空気調和装置の運転設定と、当該ユーザによる前記空気調和装置の運転設定を変更する操作の情報とを取得し、
前記空気調和装置の運転設定がユーザに提案されてから所定時間以内に、提案された内容に応じた設定変更操作が当該ユーザにより行われた場合、前記許容度を第1の値とし、当該所定時間以内に、提案された内容に応じた設定変更操作が当該ユーザにより行われなかった場合、前記許容度を第1の値よりも低い第2の値とする、
請求項5または6に記載の情報処理方法。
提案された前記空気調和装置の運転設定を当該ユーザに通知した端末の種別に基づいて、設定変更操作がユーザにより行われた場合の前記許容度の値、または設定変更操作がユーザにより行われなかった場合の前記許容度の値を調整する、
請求項5から9のいずれか一項に記載の情報処理方法。
ユーザにより最後に設定された運転設定と異なる運転設定で前記空気調和装置が運転された場合の当該ユーザによる前記空気調和装置への操作入力に基づいて前記快適性を示す情報を生成する、
請求項5から10のいずれか一項に記載の情報処理方法。
複数の空気調和装置からそれぞれ取得されたデータセットに基づいて、線形回帰、または非線形回帰を用いた機械学習を行い、当該機械学習の結果を用いて、前記空気調和装置が運転される際の状況を入力とし、ユーザに許容される度合いが閾値以上である前記空気調和装置の運転設定をユーザに通知する、
請求項5から11のいずれか一項に記載の情報処理方法。
空気調和装置が運転される際の周囲に存在するユーザの属性と、空気調和装置が運転される際の状況とに応じた、ユーザに許容される度合いが閾値以上である空気調和装置の運転設定をユーザに通知する、
請求項5から12のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0029】
[第1実施形態]
<空気調和システムのシステム構成>
はじめに、空気調和システム1のシステム構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る空気調和システム1のシステム構成の一例を示す図である。
図1に示すように、空気調和システム1は、情報処理装置10、及び空気調和装置20を有する。情報処理装置10、及び空気調和装置20の数は、
図1の例に限定されない。なお、情報処理装置10は、「情報処理装置」の一例である。
【0030】
情報処理装置10と空気調和装置20とは、例えば、LAN、信号線、無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の携帯電話網、及びインターネット等のネットワークNWを介して通信できるように接続されてもよい。
【0031】
空気調和装置20は、例えば、住宅、オフィス、及び公共施設等に設置されてもよい。情報処理装置10は、例えば、複数の空気調和装置20が設置される建物に設置されたエッジサーバでもよい。また、情報処理装置10は、例えば、クラウド上のサーバでもよい。また、情報処理装置10は、例えば、空気調和装置20に含まれる各設備の筐体内(例えば、室内機筐体)に収容されてもよい。
【0032】
情報処理装置10は、空気調和装置20が運転された際の環境を示す情報と、空気調和装置20が運転された際の空気調和装置20の運転設定(運転状況、動作状況)を示す情報と、空気調和装置20が運転された際の消費電力に関する情報の組み合わせを含むデータセットに基づいて機械学習を行う。この機械学習において、情報処理装置10は、空気調和装置20が運転される際の環境を示す情報から、ユーザの快適性が所定の条件を満たし、かつ消費電力に関する情報が所定の条件を満たす空気調和装置20の運転設定を推論(推定、決定)するための学習済みモデルを生成する。
【0033】
また、情報処理装置10は、空気調和装置20が運転される際の環境を示す情報から、ユーザの快適性が所定の条件を満たし、かつ消費電力に関する情報が所定の条件を満たす空気調和装置20の運転設定を決定し、決定した運転設定での動作を空気調和装置20に指示する。
【0034】
空気調和装置20の制御装置40は、情報処理装置10から受信した指示に応じた運転設定で、空気調和装置20の運転を行う。
【0035】
空気調和装置20は、冷媒回路200を構成する各種の機器と、各種のセンサと、制御装置40を備えている。冷媒回路200を構成する各機器は、制御装置40により制御される。冷媒回路200は、例えば、フロンガス等の冷媒が充填された閉回路である。冷媒回路200は、例えば、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うように構成されてもよい。
【0036】
冷媒回路200には、圧縮機(コンプレッサ)201と、四路切換弁(四方弁、切換え弁)202と、室外熱交換器203と、膨張弁(減圧弁)204と、室内熱交換器207とが接続されている。圧縮機201は、吐出側が四路切換弁202の第1ポート2021に接続され、吸入側が四路切換弁202の第2ポート2022に接続されている。また、冷媒回路200には、四路切換弁202の第3ポート2023を通過した冷媒が、室外熱交換器203、膨張弁204、及び室内熱交換器207を順に通過して四路切換弁202の第4ポート2024へ向かうように、室外熱交換器203、膨張弁204、及び室内熱交換器207が配置されている。
【0037】
圧縮機201は、例えば、全密閉型の可変容量型でもよい。圧縮機201は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。例えば、圧縮機201のモータ(図示省略)に供給する交流の周波数を変更してモータの回転速度(圧縮機201の回転速度)を変化させることにより、圧縮機201の容量を変化させることができる。なお、回転速度は、例えば、単位時間当たりの回転数等でもよい。
【0038】
室外熱交換器203では、室外ファン208によって取り込まれた室外空気と冷媒が熱交換する。室内機に設けられる室内熱交換器207では、室内ファン209によって取り込まれた室内空気と冷媒が熱交換する。室内ファン209は、例えば、回転方向に前傾した羽根車を回転させることにより、吸い込み口から空気を吸い込み、吐き出し口から空気を吐き出す、円柱状のファン(クロスフローファン)でもよい。室内ファン209の回転により、室内空気が室内機に取り込まれ、温度等が調整された空気が室内に吐き出される。
【0039】
膨張弁204は、例えば、弁体(図示省略)がパルスモータ(図示省略)で駆動されることにより開度(穴の大きさ)が調整される電子膨張弁でもよい。
【0040】
四路切換弁202は、第1ポート2021と第3ポート2023とが連通するとともに第2ポート2022と第4ポート2024とが連通する第1状態(
図1に実線で示す状態)と、第1ポート2021と第4ポート2024とが連通するとともに第2ポート2022と第3ポート2023とが連通する第2状態(
図1に破線で示す状態)とを切り換え可能な弁である。制御装置40は、四路切換弁202を制御して第1状態と第2状態とを切り換えることにより、室内機が設置された室内を冷房する冷房運転と、室内を暖房する暖房運転とを切り換える。
【0041】
圧縮機201、四路切換弁202、室外熱交換器203、及び室外ファン208は、室外機(図示省略)の筐体内に収容されてもよい。また、制御装置40、膨張弁204、室内熱交換器207、及び室内ファン209は、室内機(図示省略)の筐体内に収容されてもよい。なお、膨張弁204は、室外機の筐体内に収容されてもよい。
【0042】
冷房運転時には、四路切換弁202が第1状態に設定される。この状態で圧縮機201を運転すると、室外熱交換器203が凝縮器(放熱器)となり、室内熱交換器207が蒸発器となって冷凍サイクルが行われる。この場合、圧縮機201から吐出された冷媒は、室外熱交換器203に流れて室外空気へ放熱する。そして、放熱した冷媒は、膨張弁204を通過する際に膨張して(減圧されて)室内熱交換器207へ流れる。室内熱交換器207では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、冷却された室内空気が室内へ供給される。蒸発した冷媒は、圧縮機201へ吸入されて圧縮される。
【0043】
暖房運転時には、四路切換弁202が第2状態に設定される。この状態で圧縮機201を運転すると、室内熱交換器207が凝縮器(放熱器)となり、室外熱交換器203が蒸発器となって冷凍サイクルが行われる。この場合、圧縮機201から吐出された冷媒は、室内熱交換器207に流れて室内空気へ放熱する。これにより、加熱された室内空気が室内へ供給される。放熱した冷媒は、膨張弁204を通過する際に膨張する(減圧される)。膨張弁204で膨張した冷媒は、室外熱交換器203に流れて室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機201へ吸入されて圧縮される。
【0044】
<情報処理装置10及び制御装置40のハードウェア構成>
次に、実施形態に係る空気調和システム1の情報処理装置10及び制御装置40のハードウェア構成について説明する。なお、情報処理装置10と制御装置40は同様のハードウェア構成を有するため、ここでは、情報処理装置10のハードウェア構成についてのみ説明する。
【0045】
図2は、実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103を有する。CPU101、ROM102、RAM103は、いわゆるコンピュータを形成する。また、情報処理装置10は、補助記憶装置104、表示装置105、操作装置106、I/F(Interface)装置107、ドライブ装置108を有する。情報処理装置10の各ハードウェアは、バス109を介して相互に接続される。
【0046】
CPU101は、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラム(例えば、機械学習プログラム等)を実行する演算デバイスである。ROM102は、不揮発性メモリである。ROM102は、主記憶デバイスとして機能し、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラムをCPU101が実行するために必要な各種プログラムやデータ等を格納する。具体的には、ROM102はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する。
【0047】
RAM103は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM103は、主記憶デバイスとして機能し、補助記憶装置104にインストールされている各種プログラムがCPU101によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0048】
補助記憶装置104は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する。
【0049】
表示装置105は、各種の情報を表示する表示デバイスである。操作装置106は、各種操作を受け付けるための操作デバイスである。I/F装置107は、外部の機器と通信する通信デバイスである。
【0050】
ドライブ装置108は記録媒体110をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体110には、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体110には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0051】
なお、補助記憶装置104にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体110がドライブ装置108にセットされ、該記録媒体110に記録された各種プログラムがドライブ装置108により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置104にインストールされる各種プログラムは、不図示のネットワークよりダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0052】
<機能構成>
次に、
図3を参照し、第1実施形態に係る空気調和システム1の機能構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係る空気調和システムの機能ブロックの一例を示す図である。
【0053】
≪情報処理装置10≫
情報処理装置10は、取得部11、学習部13、推論部14、及び送受信部15を有する。これら各部は、例えば、情報処理装置10にインストールされた1以上のプログラムが、情報処理装置10のCPU101に実行させる処理により実現されてもよい。
【0054】
取得部11は、機械学習に用いるデータである学習用データセット111を取得する。取得部11は、例えば、空気調和装置20から取得した情報に基づいて、学習用データセット111を生成してもよい。
【0055】
学習部13は、取得部11により取得された学習用データセット111に基づいて、機械学習を行う。学習部13は、例えば、空気調和装置20が運転された際の、状況を示す情報と、ユーザの快適性に関する情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含む学習用データセット111に基づいて、機械学習を行う。そして、学習部13は、例えば、空気調和装置20が運転される際の状況に応じた、空気調和装置20が運転される際の快適性、及び空気調和装置20が運転される際の消費電力に関する条件に応じた運転設定を決定するための学習済モデルを生成する。
【0056】
推論部14は、空気調和装置20から取得した情報と、学習部13により生成された学習済モデルとに基づいて、空気調和装置20が運転される際の状況に応じた、空気調和装置20が運転される際の快適性、及び空気調和装置20が運転される際の消費電力に関する条件に応じた最適な運転設定を推論(決定)する。
【0057】
送受信部15は、空気調和装置20とのデータの送受信を行う。
【0058】
<処理>
≪学習時の処理≫
次に、
図4、及び
図5を参照し、第1実施形態に係る空気調和システム1の学習時の処理の一例について説明する。
図4は、第1実施形態に係る空気調和システム1の学習時の処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、第1実施形態に係る学習用データセット111の一例を示す図である。
【0059】
ステップS101において、情報処理装置10の取得部11は、機械学習に用いるデータを取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、空気調和装置20が運転された際の環境、及び運転設定等の状況を示す情報と、消費電力に関する情報との組み合わせを含む学習用データセット111を取得する。
【0060】
(学習用データセット111)
図5の例では、学習用データセット111には、空気調和装置IDと日時に対応付けられた、環境を示す情報、運転設定を示す情報、及び消費電力に関する情報が含まれる。なお、環境を示す情報、及び運転設定を示す情報は、「状況を示す情報」の一例である。また、環境を示す情報に含まれる少なくとも一つの情報は、「ユーザの快適性に関する情報」の一例である。空気調和装置IDは、空気調和装置20の識別情報である。日時は、各データが測定された日時である。
【0061】
((環境を示す情報))
環境を示す情報は、空気調和装置20が運転された際の環境を示す情報である。環境を示す情報には、快適性に影響を与える状況の情報、各状況に応じた運転設定に対するユーザの許容度、及び空調負荷に影響を与える状況の情報が含まれてもよい。なお、「許容度」の例については、第3実施形態で説明する。
【0062】
(((快適性に影響を与える状況の情報)))
快適性に影響を与える状況の情報(「ユーザの快適性に関する情報」の一例。)は、空気調和装置20が運転された際の、ユーザの快適性に影響を与える状況の情報である。快適性に影響を与える状況の情報には、例えば、室内温度、室内湿度、室内気流、室内輻射温度、ユーザの被服量、ユーザの活動量、及びユーザの情報の少なくとも一つが含まれてもよい。室内温度は、空気調和装置20の室内機の温度センサにより測定された、空気調和装置20が設置されている部屋の中(室内)の気温である。室内湿度は、室内の湿度である。室内気流は、室内の気流(風速)である。室内気流は、例えば、空気調和装置20の設定風量、及び設定風向の情報でもよい。または、室内気流は、例えば、空気調和装置20または室内に設けられた気流センサにより測定されてもよい。室内輻射温度は、室内の輻射温度である。室内輻射温度は、例えば、空気調和装置20または室内に設けられた輻射温度センサにより測定されてもよい。
【0063】
ユーザの被服量は、室内に存在しているユーザの被服量(着衣量)である。ユーザの被服量は、例えば、情報処理装置10の取得部11により、空気調和装置20の室内機のカメラで撮影された画像に基づいて、ディープニューラルネットワーク(Deep Neural Network:DNN)を用いた機械学習であるディープラーニング等により推定されてもよい。なお、ユーザの被服量の単位として、例えば、クロー値(clo値)が用いられてもよい。
【0064】
ユーザの活動量は、室内に存在しているユーザの活動量(作業量、代謝量)である。ユーザの活動量は、例えば、情報処理装置10の取得部11により、空気調和装置20の室内機のカメラで撮影された画像の時系列データに基づいて、ディープニューラルネットワーク(Deep Neural Network:DNN)を用いた機械学習であるディープラーニング等により推定されてもよい。なお、ユーザの活動量の単位として、例えば、MET(Metabolic Equivalent)が用いられてもよい。
【0065】
ユーザの情報は、室内に存在しているユーザの情報である。ユーザの情報には、例えば、ユーザの性別、及び年代等の属性の情報が含まれてもよい。また、ユーザの情報には、各ユーザを識別する情報が含まれてもよい。ユーザの情報は、例えば、空気調和装置20の室内機のカメラで撮影された画像に基づいて、AI(Artificial Intelligence)により推定されてもよい。
【0066】
また、快適性に影響を与える状況の情報には、例えば、室内照明、室内の香り、室内の音、及び室内の空気清浄度の少なくとも一つが含まれてもよい。
【0067】
室内照明は、室内の照明の情報である。室内照明には、例えば、照明の明るさ(光度、輝度、照度)、及び色が含まれてもよい。室内照明は、例えば、空気調和装置20の室内機のカメラで撮影された画像に基づいて、AIにより推定されてもよい。または、室内照明は、例えば、空気調和装置20の室内機の照明センサにより測定されてもよい。
【0068】
室内照明の情報に基づいて機械学習することにより、例えば、室内照明の色が電球色等の暖色(オレンジ)であり、明るさが比較的明るい場合、ユーザは暖かいと錯覚するため、ユーザにより許容される暖房の設定温度を、一定時間は低めに推論できると考えられる。また、昼白色等の寒色(青白)であり、明るさが比較的暗い場合、ユーザは寒いと錯覚するため、ユーザにより許容される冷房の設定温度を、一定時間は高めに推論できると考えられる。
【0069】
室内の香りは、例えば、空気調和装置20の室内機の匂いセンサにより測定されてもよい。または、室内の香りは、例えば、空気調和装置20の室内機の香り放出装置にて放出された香りの種別、及び量(強度)の情報でもよい。室内の香りに基づいて機械学習することにより、例えば、室内の香りがバニラの香りである場合、ユーザは暖かいと錯覚するため、ユーザにより許容される暖房の設定温度を、一定時間は低めに推論できると考えられる。また、室内の香りがペパーミントや南アルプス等を連想させる草等の香りである場合、ユーザは寒いと錯覚するため、ユーザにより許容される冷房の設定温度を、一定時間は高めに推論できると考えられる。
【0070】
室内の音は、例えば、空気調和装置20の室内機のマイクにより測定されてもよい。室内の音には、音の種別、及び音量の情報が含まれてもよい。室内の音に基づいて機械学習することにより、例えば、室内が静か等のためユーザが業務に集中し易い場合、ユーザにより許容される暖房の設定温度を、低めに推論できると考えられる。また、ユーザにより許容される冷房の設定温度を、高めに推論できると考えられる。
【0071】
室内の空気清浄度は、例えば、空気調和装置20の室内機のセンサにより測定されてもよい。室内の空気清浄度には、例えば、二酸化炭素濃度の情報等が含まれてもよい。室内の空気清浄度に基づいて機械学習することにより、例えば、二酸化炭素濃度が比較的高いためユーザが眠くなり易い場合、室内温度を下げて眠気を低減させるために、ユーザにより許容される暖房の設定温度を、低めに推論できると考えられる。
【0072】
(((空調負荷に影響を与える状況の情報)))
空調負荷に影響を与える状況の情報は、空気調和装置20が運転された際の、空調負荷に影響を与える状況の情報である。空調負荷に影響を与える状況の情報には、例えば、室外温度、室外湿度、日射量、及び室内人数の少なくとも一つが含まれてもよい。室外温度は、空気調和装置20が設置されている建物の外(室外)の気温である。室外湿度は、室外の湿度である。日射量は、室外の日射量である。日射量は、例えば、空気調和装置20の室外機に設けられた日射量センサにより検出されてもよい。室内人数は、室内に存在しているユーザの人数である。室内人数は、例えば、空気調和装置20の室内機のカメラで撮影された画像に基づいて、AIにより推定されてもよい。または、室内人数は、例えば、オフィスの人退室管理システム等から取得されてもよい。
【0073】
((運転設定を示す情報))
運転設定を示す情報は、空気調和装置20が運転された際の、空気調和装置20の運転設定を示す情報である。運転設定を示す情報には、例えば、凝縮温度、蒸発温度、膨張弁204の開度、圧縮機201の回転速度、室内ファン209の回転速度、及び室外ファン208の回転速度の少なくとも一つが含まれてもよい。
【0074】
凝縮温度は、凝縮器での冷媒の圧力における飽和温度である。凝縮温度は、冷房運転時には、室外熱交換器203の吸入口に設けられた圧力センサにより測定された、室外熱交換器203に吸入される冷媒の圧力に基づいて算出されてもよい。また、暖房運転時には、室内熱交換器207の吸入口に設けられた圧力センサにより測定された、室内熱交換器207に吸入される冷媒の圧力に基づいて算出されてもよい。
【0075】
蒸発温度は、蒸発器での冷媒の圧力における飽和温度である。蒸発温度は、冷房運転時には、室内熱交換器207に吸入される冷媒の圧力に基づいて算出されてもよい。また、暖房運転時には、室外熱交換器203に吸入される冷媒の圧力に基づいて算出されてもよい。
【0076】
膨張弁204の開度は、例えば、膨張弁204のパルスモータへ供給された信号のパルス数に基づいて算出された値でもよい。圧縮機201の回転速度は、圧縮機201のモータの回転速度であり、例えば、制御装置40により圧縮機201のモータへ供給されている交流の周波数の情報に基づいて算出されてもよい。室内ファン209の回転速度は、室内ファン209のモータの回転速度であり、例えば、制御装置40により室内ファン209のモータへ供給されている交流の周波数の情報に基づいて算出されてもよい。室外ファン208の回転速度は、室外ファン208のモータの回転速度であり、例えば、制御装置40により室外ファン208のモータへ供給されている交流の周波数の情報に基づいて算出されてもよい。
【0077】
((消費電力に関する情報))
消費電力に関する情報は、空気調和装置20が運転された際の、空気調和装置20の消費電力に関する情報である。消費電力に関する情報には、例えば、消費電力量積算値、消費電力ピーク値、電流値、高圧圧力、低圧圧力、圧縮機回転速度、及び圧縮機の運転効率を示す情報の少なくとも一つが含まれてもよい。
【0078】
消費電力量積算値は、例えば、所定時間(例えば、直近の10分)内の空気調和装置20の消費電力量の積算値である。消費電力ピーク値は、例えば、所定時間内の空気調和装置20の消費電力のピーク値である。電流値は、例えば、所定時間内の空気調和装置20の電流の平均値である。
【0079】
高圧圧力は、所定時間内の空気調和装置20の高圧圧力の平均値である。なお、高圧圧力は、空気調和装置20の冷凍サイクルにおける高圧圧力(以下で、適宜、単に「高圧」とも称する。)であり、例えば、圧縮機201により圧縮されて吐出される冷媒の圧力(圧縮機201の吐出圧力)でもよいし、凝縮器における冷媒の圧力でもよい。
【0080】
低圧圧力は、所定時間内の空気調和装置20の低圧圧力の平均値である。なお、低圧圧力は、空気調和装置20の冷凍サイクルにおける低圧圧力(以下で、適宜、単に「低圧」とも称する。)であり、例えば、圧縮機201に吸入される冷媒の圧力(圧縮機201に圧縮される前の冷媒の圧力。)でもよい。
【0081】
圧縮機201の運転効率は、例えば、所定の消費電力で冷媒を圧縮する効率である。圧縮機201の運転効率は、例えば、圧縮機201の回転速度が所定の値の場合に最も高くなる。例えば、室内温度と設定温度との差が小さいため空調負荷が過度に低い場合に、圧縮機201の回転速度を過度に低くして冷房運転又は暖房運転をする場合、圧縮機201の運転効率は過度に低下する。また、例えば、室内温度と設定温度との差が大きいため空調負荷が過度に高い等の場合に、圧縮機201の回転速度を過度に高くして冷房運転又は暖房運転をする場合も、圧縮機201の運転効率は過度に低下する。
【0082】
圧縮機201の回転速度を、圧縮機201の運転効率が高くなる所定の値とし、室外ファン208、及び室内ファン209の回転速度を調整することにより、ユーザの快適性の低下を低減しながら、省エネを図ることができる。
【0083】
この場合、例えば、空調負荷が過度に低い場合は、室外ファン208、及び室内ファン209の回転速度を比較的低下させた状態で、圧縮機201の回転速度を当該所定の値とし、冷房運転の場合は室内温度が設定温度よりも閾値以上低下した場合に、圧縮機201の運転を一旦停止させてもよい。また、暖房運転の場合は、同様に、室内温度が設定温度よりも閾値以上上昇した場合に、圧縮機201の運転を一旦停止させてもよい。
【0084】
また、例えば、空調負荷が過度に高い場合は、室外ファン208、及び室内ファン209の回転速度を比較的上昇させた状態で、圧縮機201の回転速度を当該所定の値としてもよい。
【0085】
続いて、情報処理装置10の学習部13は、空気調和装置20が運転された際の環境を示す情報と、空気調和装置20が運転された際の空気調和装置20の運転設定を示す情報と、空気調和装置20が運転された際の消費電力に関する情報の組み合わせを含むデータセットに基づいて機械学習を行う(ステップS102)。
【0086】
ここで、情報処理装置10の学習部13は、例えば、教師有り学習により、入力に基づいて消費電力に関する情報を推論する回帰問題を機械学習してもよい。なお、回帰問題とは、例えば、連続値を予測する問題である。これにより、空気調和装置20が運転される際の環境に対し、各運転設定での消費電力に関する情報を推論することができる。
【0087】
この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、線形回帰(linear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、消費電力に関する情報を目的変数(応答変数、従属変数)とし、空気調和装置20が運転された際の環境を示す情報、及び空気調和装置20が運転された際の空気調和装置20の運転設定を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報を説明変数(入力変数、独立変数)とし、最小二乗法等を用いて、機械学習を行ってもよい。
【0088】
また、情報処理装置10の学習部13は、例えば、非線形回帰(nonlinear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、回帰型(再帰型)ニューラルネットワーク(Recurrent neural network, RNN)、一般回帰ニューラルネットワーク(General Regression Neural Network)、ランダムフォレスト(Random Forest)、またはサポートベクターマシン(support vector machine, SVM)等を用いた機械学習を行ってもよい。
【0089】
また、情報処理装置10の学習部13は、例えば、強化学習により、入力に基づいて、ユーザの快適性、及び消費電力に関する情報が所定の条件を満たす運転設定を機械学習してもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、ユーザの快適性が高い程高い第1指標、及び消費電力が低い程高い第2指標に基づいて決定される値を報酬として、DQN(deep Q-network)等による強化学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、ユーザから指定された情報に基づいて、第1係数、及び第2係数を決定し、第1指標の値に第1係数を乗算した値と、第2指標の値に第2係数を乗算した値とに基づいて決定される値を報酬として、強化学習を行ってもよい。情報処理装置10の学習部13は、例えば、「快適性を優先」することをユーザからリモコン入力等により指定された場合、第1係数の値を「1.1」、第2係数の値を「0.9」としてもよい。また、「省エネを優先」することをユーザから指定された場合、第1係数の値を「0.9」、第2係数の値を「1.1」としてもよい。
【0090】
また、この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、空気調和装置20の目標温度、目標湿度、設定風量、及び設定風向の少なくとも一つを変更することを行動の選択肢として強化学習を実行してもよい。また、この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、空気調和装置20の凝縮温度、蒸発温度、膨張弁の開度、圧縮機の回転速度、室内機のファンの回転速度、及び室外機のファンの回転速度の少なくとも一つを変更することを行動の選択肢として強化学習を実行してもよい。
【0091】
≪推論時の処理≫
次に、
図6を参照し、第1実施形態に係る空気調和システム1の推論時の処理の一例について説明する。
図6は、第1実施形態に係る空気調和システム1の推論時の処理の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、例えば、空気調和装置20が運転されている間に、定期的に実行されてもよい。
【0092】
ステップS201において、情報処理装置10の取得部11は、空気調和装置20の現在の状況を示す情報を取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、例えば、所定時間(例えば、10分)間隔で、空気調和装置20の現在の状況を示す情報を空気調和装置20から取得してもよい。
【0093】
なお、情報処理装置10は、強化学習を用いて学習している場合、取得した空気調和装置20の現在の状況を示す情報に基づいて、運転設定を推論し、後述するステップS205の処理に進む。
【0094】
以下では、情報処理装置10の学習部13が教師有り学習を用いて機械学習している場合の例について説明する。
【0095】
続いて、情報処理装置10の推論部14は、空気調和装置20の現在の環境を示す情報から、ユーザの快適性が所定の条件を満たす運転設定を複数推定する(ステップS202)。ここで、情報処理装置10の推論部14は、例えば、ステップS201で取得した室内輻射温度、ユーザの被服量、及びユーザの活動量に基づき、PMV(Predicted Mean Vote,予測温冷感申告)の値が−0.5から0.5の範囲となる温度、湿度、及び気流の組み合わせを含む運転設定を複数個決定してもよい。なお、PMVの値は、人間が寒いと感じるか暖かいと感じるかを、−3から3までの数値で表す。
【0096】
なお、ユーザの快適性に対する所定の条件は、空気調和装置20のユーザにより指定されてもよい。この場合、情報処理装置10の推論部14は、例えば、ユーザにより「快適性重視」モードを空気調和装置20のリモコン等を用いて指定された場合、PMVの値が−0.2から0.2の範囲となる温度、湿度、及び気流の組み合わせを含む運転設定を複数個決定してもよい。また、情報処理装置10の推論部14は、例えば、ユーザにより「省エネ重視」モードを指定された場合、PMVの値が−0.8から0.8の範囲となる温度、湿度、及び気流の組み合わせを含む運転設定を複数個決定してもよい。
【0097】
また、情報処理装置10の推論部14は、例えば、SET*(Standard new Effective Temperature,標準新有効温度)の値が所定の範囲となる温度、湿度、及び気流の組み合わせを含む運転設定を複数個決定してもよい。
【0098】
また、情報処理装置10の推論部14は、AIを用いて、ユーザの快適性が所定の条件を満たす運転設定を複数推定してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部14は、例えば、快適性に関する申告をユーザからリモコン等を用いて入力された場合、申告内容と、その際の空気調和装置20の環境を示す情報、及び空気調和装置20の運転設定とを取得する。そして、情報処理装置10の推論部14は、空気調和装置20の環境を示す情報、及び空気調和装置20の運転設定に基づいてユーザの快適性を推論する回帰問題を機械学習してもよい。
【0099】
この場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、線形回帰(linear regression)、または非線形回帰(nonlinear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。非線形回帰を用いる場合、情報処理装置10の学習部13は、例えば、回帰型(再帰型)ニューラルネットワーク(Recurrent neural network, RNN)、一般回帰ニューラルネットワーク(General Regression Neural Network)、ランダムフォレスト(Random Forest)、またはサポートベクターマシン(support vector machine, SVM)等を用いた機械学習を行ってもよい。
【0100】
ユーザから入力される快適性に関する申告には、例えば、ユーザにより入力された不快を示す情報でもよい。この場合、ユーザにより入力された快適性を示す情報には、例えば、「暑い」、「寒い」、「湿度が高い」、「湿度が低い」、「風が強い」、及び「風が弱い」等の不快であることの申告が含まれてもよい。
【0101】
また、ユーザから入力される快適性に関する申告には、各状況に応じた運転設定に対するユーザの許容度が含まれてもよい。なお、「許容度」の例については、第3実施形態で説明する。
【0102】
そして、情報処理装置10の推論部14は、例えば、各運転設定に対して、ユーザにより不快であると申告される確率を推論し、当該確率が所定の閾値以下となる温度、湿度、及び気流の組み合わせを含む運転設定を複数個決定してもよい。
【0103】
続いて、情報処理装置10の推論部14は、取得した空気調和装置20の現在の状況を示す情報と、
図4のステップS102の処理による学習結果とに基づいて、ステップS202で推定した各運転設定で、現在の状況において空気調和装置20を運転させた場合の消費電力に関する情報をそれぞれ推論する(ステップS203)。ここで、情報処理装置10の推論部14は、例えば、ステップS202で推定した各運転設定での温度、湿度、及び気流の組み合わせを目標温度(設定温度)、目標湿度(設定湿度)、目標気流(設定風量、及び設定風向)とし、空気調和装置20の現在の環境において空気調和装置20を運転させた場合の消費電力に関する情報をそれぞれ推論してもよい。
【0104】
続いて、情報処理装置10の推論部14は、ステップS202で推定した各運転設定のうち、ステップS203で推論した消費電力に関する情報が最も条件に合致する運転設定を決定する(ステップS204)。
【0105】
続いて、情報処理装置10の送受信部15は、決定した運転設定での運転を実行させる制御コマンドを空気調和装置20に送信する(ステップS205)。ここで、情報処理装置10の送受信部15は、例えば、決定した運転設定での温度、湿度、及び気流を、それぞれ、目標温度、目標湿度、及び目標気流とする制御コマンドを空気調和装置20に送信してもよい。
【0106】
<変形例>
情報処理装置10の各機能部は、例えば1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。また、上述した情報処理装置10の各機能部の処理の少なくとも一部は、空気調和装置20の制御装置40にて実行されてもよい。また、情報処理装置10と制御装置40とを一体の装置として構成してもよい。
【0107】
また、一の情報処理装置10が、複数の空気調和装置20からそれぞれ取得した情報に基づいて一の学習済みモデルを生成し、生成した一の学習済みモデルを各空気調和装置20に配信するようにしてもよい。
【0108】
[第2実施形態]
<システム構成>
第2実施形態に係る情報処理システム1000のシステム構成について説明する。
図7は、第2実施形態に係る情報処理システム1000のシステム構成の一例を示す図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る情報処理システム1000は、情報処理装置10、機器20A(「第1機器」の一例。)、機器20B、機器20C(以下で、それぞれを区別する必要がない場合は、単に「機器20」と称する。)、及び端末30A、端末30B、端末30C(以下で、それぞれを区別する必要がない場合は、単に「端末30」と称する。)を有する。情報処理装置10、機器20、及び端末30の数は、
図7の例に限定されない。
【0109】
情報処理装置10と機器20、及び情報処理装置10と端末30は、それぞれ、例えば、インターネット、無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の携帯電話網、LAN、及び信号線等のネットワークNWを介して通信できるように接続されてもよい。機器20は、例えば、住宅、オフィス、及び公共施設等に設置されてもよい。情報処理装置10は、例えば、クラウド上のサーバでもよい。また、情報処理装置10は、例えば、機器20(例えば、空気調和装置の室内機筐体)に収容されてもよい。
【0110】
情報処理装置10は、複数の機器20からそれぞれ取得されたデータセットであって、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報と、当該機器20が運転された際の消費電力の情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、機器20A等が運転される際の周囲の環境に応じた機器の運転設定が省エネルギーの運転設定であるか否かを判定する基準となる消費電力(基準消費電力)を推論する。
【0111】
また、情報処理装置10は、複数の機器20からそれぞれ取得されたデータセットであって、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報と、推論した基準消費電力と、機器20が運転された際の運転設定との組み合わせを含むデータセットに基づいて、省エネルギーとなる機器20A等の運転設定を推論する。また、情報処理装置10は、推論した運転設定を、機器20A等のユーザに通知する。
【0112】
機器20は、例えば、空気調和装置(エアコン)、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の各種の機器であり、測定した各種の情報を情報処理装置10に送信するIoT(Internet of Things)デバイスを有してもよい。
【0113】
端末30は、例えば、機器20のユーザが利用する、スマートフォン、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等の端末である。
【0114】
なお、各機器20のユーザは、予め、自身が利用する機器20及び端末30のID、及び通信アドレス等を、情報処理装置10に登録しており、情報処理装置10は、各機器20に対する推奨の運転設定等の情報を各機器20のユーザの各端末30に通知できるものとする。
【0115】
[第2実施形態]
第2実施形態では、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報と、機器20が運転された際の消費電力の情報との組み合わせを含むデータセットに基づいて、機器20Aが運転される際の周囲の環境に応じた運転設定が省エネルギーの運転設定であるか否かを判定する基準となる消費電力である基準消費電力等を推論する例について説明する。第2実施形態によれば、機器の適切な運転設定を決定することができる。
【0116】
<機能構成>
次に、
図8を参照し、第2実施形態に係る情報処理装置10の機能構成について説明する。
図8は、第2実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロックの一例を示す図である。
【0117】
第2実施形態に係る情報処理装置10は、運転状況DB(データベース)111Aを有する。
【0118】
第2実施形態に係る取得部11は、複数の機器20のそれぞれの運転状況に関する情報を取得し、運転状況DB111に記録する。なお、運転状況に関する情報は、「状況を示す情報」の一例である。
【0119】
第2実施形態に係る学習部13は、訓練データ生成部131、学習部132、訓練データ生成部133、及び学習部134を有する。また、第2実施形態に係る推論部14は、推論部141、推論部142を有する。
【0120】
訓練データ生成部131は、取得部11により取得された情報に基づき、機器20が運転される際の周囲の環境に応じた基準消費電力を学習(機械学習)するための訓練データを生成する。学習部132は、訓練データ生成部131により生成された訓練データに基づき、機器20が運転される際の周囲の環境に応じた基準消費電力を学習する。
【0121】
訓練データ生成部133は、取得部11により取得された情報に基づき、機器20が運転される際の周囲の環境と、基準消費電力とに応じた運転設定を学習するための訓練データを生成する。学習部134、訓練データ生成部133により生成された訓練データに基づき、機器20が運転される際の周囲の環境と、基準消費電力とに応じた運転設定を学習する。
【0122】
推論部141は、取得部11により取得された機器20Aの現在の運転状況に関する情報と、学習部132による学習結果とに基づき、機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力を推論する。
【0123】
推論部142は、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報と、学習部134による運転設定の学習結果と、推論部141により推論された機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力とに基づいて、当該環境において省エネとなる機器20Aの運転設定を推論する。
【0124】
第2実施形態に係る送受信部15は、推論部142により推論された機器20Aの運転設定を、機器20Aのユーザに通知する。
【0125】
<処理>
以下では、機器20が空気調和装置(エアコン)である場合を例として説明するが、開示の技術は、例えば、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の各種の機器20に対して適用できる。
【0126】
≪学習時の処理≫
図9及び
図10を参照し、第2実施形態に係る情報処理装置10の学習時の処理の一例について説明する。
図9は、第2実施形態に係る情報処理装置10の学習時の処理の一例を示すフローチャートである。
図10は、実施形態に係る運転状況DB111に記憶される運転状況の履歴の一例を示す図である。
【0127】
(訓練データの取得)
ステップS1101において、情報処理装置10の取得部11は、複数の機器20のそれぞれの運転状況に関する情報を取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、例えば、所定時間(例えば、1時間)間隔で、各機器20の現在の運転状況に関する情報を各機器20から取得してもよい。または、所定時間間隔(例えば、1日1回)で、各機器20の運転状況に関する情報の履歴を各機器20から取得してもよい。情報処理装置10の取得部11は、例えば、外部サーバに蓄積されている、各機器20の運転状況に関する情報の履歴を取得してもよい。
【0128】
ここで、運転状況に関する情報には、例えば、機器20のIDである機器ID、機器20が運転された日時、機器20が運転された際(例えば、当該日時)の周囲の環境を示す情報、当該機器が運転された際の消費電力、及び当該機器が運転された際の運転設定の情報が含まれてもよい。
【0129】
続いて、情報処理装置10の取得部11は、取得した運転状況に関する情報を、運転状況DB111に記録する(ステップS1102)。
【0130】
図10の例では、運転状況DB111には、機器ID及び日時に対応付けて、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報、消費電力、及び運転設定の情報の組(レコード)が記憶されている。また、機器IDに対応付けて、機器種別が記憶されている。
【0131】
機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報には、例えば、外気温、室内の人数、室内の照度、外気湿度、日射量、天気の種別、室内温度、室内湿度、熱負荷、室内の床面積、及び室内の用途の種別等が含まれてもよい。
【0132】
外気温は、機器20が設置されている建物の外の気温である。外気温は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた温度センサにより測定されてもよい。
【0133】
室内の人数は、機器20が設置されている室内の人数である。室内の人数は、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた輻射温度センサ、またはカメラ等で検出された情報に基づいて機器20により測定されてもよい。
【0134】
室内の照度は、機器20が設置されている室内の照度である。室内の照度は、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた照度センサにより測定されてもよい。
【0135】
外気湿度は、機器20が設置されている建物の外の湿度である。外気湿度は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた湿度センサにより測定されてもよい。
【0136】
日射量は、機器20が設置されている建物の外の日射量である。日射量は、例えば、機器20のエアコン室外機に設けられた日射量センサ(日射計)により測定されてもよい。
【0137】
天気の種別は、機器20が設置されている地域の天気の種別である。天気の種別には、例えば、晴れ、曇り、雨、雪等の種別が含まれてもよい。天気の種別は、例えば、機器20に予め設定されている、機器20が設置されている地域の情報と、気象庁等のサーバから取得した各日時における各地域の天気の種別の情報とに基づいて判定されてもよい。
【0138】
室内温度及び室内湿度は、それぞれ、機器20が設置されている室内の温度及び湿度である。室内温度及び室内湿度は、それぞれ、例えば、機器20のエアコン室内機に設けられた温度センサ及び湿度センサにより測定されてもよい。
【0139】
熱負荷は、例えば、機器20が設置されている室(部屋)に出入りする熱量、及び当該部屋内で発生する熱量である。なお、例えば、機器20が設置されている部屋が、外気の出入りや換気扇により空気の入れ替えが多い場合、天井が高い場合、及び、木造建築の建物など断熱性が低い建物等の場合、熱負荷は大きくなる。熱負荷は、機器20の運転状況に関する情報の履歴に基づいて、機器20等により推定された値でもよい。または、機器20の空調能力(馬力)の値を熱負荷として用いてもよい。
【0140】
室内の床面積は、機器20が設置されている室内の床面積である。室内の床面積は、例えば、各ユーザの設定操作により予め機器20に記憶されていてもよい。
【0141】
室内の用途の種別は、機器20が設置されている室内の用途の種別(業種)である。室内の用途の種別には、例えば、家庭用、オフィス用(一般事務所用)、理美容院用、飲食店用、及びサーバルーム用等の種別が含まれてもよい。室内の用途の種別は、例えば、各ユーザの設定操作により予め機器20に記憶されていてもよい。
【0142】
消費電力は、機器20が運転された際の消費電力である。消費電力は、各日時における、所定時間あたりに消費された電力の合計値(累積値)である。消費電力は、所定時間あたりに実際に消費された電力に基づいて機器20により算出されてもよい。
【0143】
運転設定は、機器20が運転された際の運転設定である。運転設定には、例えば、機器20のリモコン等の操作でユーザにより設定された、機器20の運転に関する設定が含まれてもよい。運転設定には、例えば、運転モード、設定温度、及び設定風量等が含まれてもよい。運転モードには、例えば、自動運転、冷房運転、暖房運転、除湿運転、及び送風運転等が含まれてもよい。
【0144】
機器種別は、機器20の種別であり、例えば、空気調和装置、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の種別が含まれてもよい。機器種別の項目は、機器20毎に予め設定されていてもよい。
【0145】
(基準消費電力の学習)
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部131は、運転状況DB111に記録されているデータセットに基づいて、機器20が運転される際の周囲の環境に応じた基準消費電力を学習するための訓練データを生成する(ステップS1103)。
【0146】
ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部131は、例えば、運転状況DB111に記録されている、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目(第1項目)の情報と、消費電力との組み合わせを含むデータセットを、基準消費電力の学習用の訓練データとしてもよい。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部131は、例えば、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報を入力とし、消費電力を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、基準消費電力の学習用の訓練データとしてもよい。
【0147】
続いて、情報処理装置10の学習部132は、生成した当該訓練データに基づいて、機器20が運転される際の周囲の環境に応じた機器20の運転設定が省エネルギーの運転設定であるか否かを判定するための基準消費電力を機械学習する(ステップS1104)。
【0148】
ここで、情報処理装置10の学習部132は、例えば、教師有り学習により、入力に基づいて消費電力を推論する回帰問題を機械学習してもよい。なお、回帰問題とは、例えば、連続値を予測する問題である。これにより、各ユーザに利用される各機器20の各周囲環境と各運転設定における平均的な各消費電力を、機器20Aの各周囲環境において省エネルギーとなる運転設定であるか否かを判定する基準消費電力とすることができる。そのため、例えば、ユーザにとって快適性が一定程度以上損なわれるような無理な省エネを要求することが低減される。また、例えば、世間の省エネ意識が高まっている場合には世間の感覚に沿った省エネを要求することができる。
【0149】
この場合、情報処理装置10の学習部132は、例えば、線形回帰(linear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部132は、例えば、消費電力を目的変数(応答変数、従属変数)とし、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報を説明変数(入力変数、独立変数)とし、最小二乗法等を用いて、機械学習を行ってもよい。
【0150】
また、情報処理装置10の学習部132は、例えば、非線形回帰(nonlinear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部132は、例えば、回帰型(再帰型)ニューラルネットワーク(Recurrent neural network, RNN)、一般回帰ニューラルネットワーク(General Regression Neural Network)、ランダムフォレスト(Random Forest)、またはサポートベクターマシン(support vector machine, SVM)等を用いた機械学習を行ってもよい。
【0151】
また、情報処理装置10の学習部132は、例えば、機器20が運転された際の周囲の環境毎に、機器20が運転された際の消費電力の代表値をそれぞれ算出し、算出した各代表値を、機器20が運転された際の周囲の環境毎の基準消費電力であると機械学習してもよい。なお、情報処理装置10の学習部132は、例えば、平均値、中央値、または最繁値等を、当該代表値として算出してもよい。また、情報処理装置10の学習部132は、例えば、平均値、中央値、及び最繁値等の平均値を、当該代表値として算出してもよい。
【0152】
(運転設定の学習)
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、運転状況DB111に記録されているデータセットに基づいて、機器20が運転される際の周囲の環境と、基準消費電力とに応じた運転設定を学習するための訓練データを生成する(ステップS1105)。
【0153】
ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、運転状況DB111に記録されている、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目(第2項目)の情報と、消費電力と、機器20の運転設定との組み合わせを含むデータセットを、運転設定の学習用の訓練データとしてもよい。なお、上述した第1項目と、第2項目とは、同一でもよいし、異なってもよい。
【0154】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報と、消費電力とを入力とし、機器20の運転設定を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、運転設定の学習用の訓練データとしてもよい。
【0155】
続いて、情報処理装置10の学習部134は、生成した当該訓練データに基づいて、機器20が運転される際の周囲の環境と、基準消費電力とに応じた運転設定を機械学習する(ステップS1106)。ここで、情報処理装置10の学習部134は、例えば、教師有り学習により、入力に基づいて運転設定を推論する分類問題を機械学習してもよい。なお、分類問題とは、例えば、離散値を予測する問題である。この場合、情報処理装置10の学習部134は、例えば、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト(Random Forest)、ブースティング(Boosting)、サポートベクターマシン(support vector machine, SVM)、または、ニューラルネットワーク(Neural Network)等を用いた機械学習を行ってもよい。これにより、機器20の周囲の環境と、基準消費電力とに応じて、機器20の最適な運転設定を推論することができる。
【0156】
≪推論時の処理≫
次に、
図11及び
図12を参照し、第2実施形態に係る情報処理装置10の推論時の処理の一例について説明する。
図6は、第2実施形態に係る情報処理装置10の推論時の処理の一例を示すフローチャートである。
図11は、実施形態に係る推奨する運転設定の通知画面の一例について説明する図である。以下では、機器20Aに対する推論を行う例について説明する。
【0157】
ステップS1201において、情報処理装置10の取得部11は、機器20Aの現在の運転状況に関する情報を取得する。ここで、情報処理装置10の取得部11は、例えば、所定時間(例えば、1時間)間隔で、機器20Aの現在の運転状況に関する情報を機器20Aから取得してもよい。
【0158】
続いて、情報処理装置10の推論部141は、取得した機器20Aの現在の運転状況に関する情報と、
図9のステップS1104の処理による基準消費電力の学習結果とに基づいて、機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力を推論する(ステップS1202)。ここで、情報処理装置10の推論部141は、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報に含まれる項目のうち、基準消費電力を学習した際に用いた上記第1項目の情報を入力とし、基準消費電力の学習結果を用いて、機器20Aの現在の基準消費電力を推論する。
【0159】
また、情報処理装置10の推論部141は、例えば、上述した各手法によりそれぞれ学習した各結果に基づいて、機器20Aの現在の基準消費電力を推論してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部141は、例えば、
図9のステップS1104の処理で説明した各手法によりそれぞれ学習した各結果に基づいて、機器20Aの現在の基準消費電力をそれぞれ推論する。そして、情報処理装置10の推論部141は、それぞれ推論した値の平均値等を、機器20Aの現在の基準消費電力として推論してもよい。
【0160】
続いて、情報処理装置10の推論部142は、機器20AのユーザAに省エネとなる運転設定を推奨するか否かを判定する(ステップS1203)。ここで、情報処理装置10の推論部142は、例えば、機器20Aの現在の消費電力と、機器20Aの現在の周囲の環境に対して推論した基準消費電力とに基づいて、省エネとなる運転設定を推奨するか否かを判定してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部142は、例えば、機器20Aの現在の消費電力が、推論した基準消費電力よりも所定の閾値以上大きい場合、省エネとなる運転設定を推奨すると判定し、当該所定の閾値以上大きくない場合、推奨しないと判定してもよい。
【0161】
推奨しないと判定した場合(ステップS1203でNO)、情報処理装置10の推論部142は、処理を終了し、以下の処理を実行しない。
【0162】
推奨すると判定した場合(ステップS1203でYES)、情報処理装置10の推論部142は、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報と、
図9のステップS1106の処理による運転設定の学習結果と、ステップS1202の処理で推論した、機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力とに基づいて、当該環境において省エネとなる運転設定を推論する(ステップS1204)。ここで、情報処理装置10の推論部142は、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報に含まれる項目のうち、運転設定を学習した際に用いた上記第2項目の情報と、当該基準消費電力とを入力とし、運転設定の学習結果を用いて、運転設定を推論する。これにより、機器20Aの現在の周囲の環境における消費電力の値が、当該環境における基準消費電力の値に概ね一致するような運転設定を推論することができる。
【0163】
ステップS1204の処理において、情報処理装置10の推論部142は、ステップS1202の処理で推論した、機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力の値を修正し、修正した値を基準消費電力として用いてもよい。この場合、情報処理装置10の推論部142は、例えば、推論した基準消費電力の値を所定程度(例えば、5%)低下させた値を入力とし、運転設定を推論してもよい。これにより、機器20Aの現在の周囲の環境における消費電力の値が、当該環境における基準消費電力の値よりも所定程度低下するような運転設定を推論することができる。
【0164】
また、情報処理装置10の推論部142は、例えば、機器20Aの現在の消費電力の値と、推論した基準消費電力の値とに基づいて、基準消費電力の値を修正し、修正した値を基準消費電力として用いてもよい。この場合、情報処理装置10の推論部142は、例えば、機器20Aの現在の消費電力の値と、推論した基準消費電力の値との比の値が大きい程、推論した基準消費電力の値を所定程度増加させた値を入力とし、運転設定を推論してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部142は、例えば、機器20Aの現在の消費電力の値が、推論した基準消費電力の値の1.2倍の場合、基準消費電力の値を、両方の値の平均値である1.1倍の値に修正して用いてもよい。これにより、例えば、機器20AのユーザAが、設定温度を比較的低くして冷房を行うことを好む場合や、設定風量を比較的低くして運転を行うことを好む場合等により、比較的省エネとならない運転設定を好む場合でも、当該ユーザAにとって快適感の低下が比較的軽減されるような省エネの運転設定を推論することができる。
【0165】
続いて、情報処理装置10の送受信部15は、推論した運転設定を推奨する情報を、機器20AのユーザAに通知する(ステップS1205)。ここで、情報処理装置10の送受信部15は、例えば、予め登録されているユーザAに対する通知先である端末30Aに、推論した運転設定の情報を送信する。
【0166】
図12の例では、情報処理装置10の送受信部15は、通知内容の表示画面701において、機器20Aの現在の周囲の環境に対して推論した基準消費電力702、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報703、機器20Aの現在の消費電力704を端末30Aに表示させている。また、ステップS1204の処理において修正した基準消費電力705、推論した運転設定の情報706、「AI一括設定」ボタン707、及び「変更しない」ボタン708を端末30Aに表示させている。
【0167】
「AI一括設定」ボタン707が押下されると、端末30Aは、例えば、無線LAN等の無線通信により制御信号(リモコンコマンド)を送信し、推論された運転設定に含まれる各種の設定を機器20Aに反映してもよい。
【0168】
「変更しない」ボタン708が押下されると、端末30Aは、推奨した運転設定がユーザに拒否された旨を示す通知を情報処理装置10に送信する。ここで、当該通知には、例えば、機器20のユーザのユーザID、推奨された運転設定のID、拒否された旨を示す情報等が含まれてもよい。
【0169】
なお、情報処理装置10の送受信部15は、例えば、ユーザAの設定操作により、AI(Artificial Intelligence)による自動運転が許可されている場合、機器20Aの運転設定を、推論した運転設定に変更する制御を行うようにしてもよい。この場合、情報処理装置10の送受信部15は、端末30Aを介して制御信号を機器20Aに送信してもよいし、端末30Aを介さずに制御信号を機器20Aに送信してもよい。
【0170】
<基準消費電力の学習及び推論の変形例>
情報処理装置10は、機器20Aから取得した外気温等の時系列データに基づいて、今後の消費電力の推移を予測し、所定の条件を満たす場合は、予め省エネとなる運転設定をユーザAに推奨するようにしてもよい。これにより、例えば、真夏で昼過ぎ等の時間に電力のひっ迫が予想される場合に、午前中等の時点で、省エネを推奨することができる。
【0171】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部131は、複数の機器20のそれぞれについてのデータセットであって、各機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報の時間推移(各時点の値、時系列データ)と、各機器20が運転された際の消費電力の時間推移の情報との組み合わせを含むデータセットを、基準消費電力の時間推移を学習用の訓練データとしてもよい。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部131は、例えば、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報の時間推移を入力とし、消費電力の時間推移を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせを、基準消費電力の学習用の訓練データとしてもよい。
【0172】
そして、情報処理装置10の学習部132は、当該訓練データに基づいて、基準消費電力の時間推移を機械学習しておく。この場合、情報処理装置10の学習部132は、例えば、回帰型(再帰型)ニューラルネットワーク(Recurrent neural network, RNN)を用いて、機械学習を行ってもよい。
【0173】
そして、
図12のステップS1203の処理で、情報処理装置10の推論部142は、当該機械学習した結果と、機器20Aの現在までの各時点での周囲の環境の時系列データとに基づいて、機器20Aの消費電力の今後(以降)の推移を推論し、推論した推移に基づいて機器20Aの今後の所定時間内(例えば、3時間内)の消費電力の合計値を算出し、算出した値が閾値以上の場合、機器20AのユーザAに省エネとなる運転設定を推奨すると判定する。
【0174】
そして、
図12のステップS1204の処理において、情報処理装置10の推論部142は、ステップS1202の処理で推論した、機器20Aの現在の周囲の環境に対する基準消費電力の値を、算出した今後の所定時間内の消費電力の合計値に基づいて修正し、修正した値を基準消費電力として用いる。この場合、情報処理装置10の推論部142は、当該合計値が大きくなる程、推論した基準消費電力の値の減少量が大きくなるように、基準消費電力の値を修正してもよい。
【0175】
[第3実施形態]
第3実施形態では、機器20の周囲の環境等に応じた省エネ等となる運転設定に対するユーザの許容度に応じて、当該運転設定を推論する例について説明する。第3実施形態によれば、機器の適切な運転設定を決定することができる。
【0176】
なお、第3実施形態は一部を除いて第2実施形態と同様であるため、同様の箇所については適宜説明を省略する。以下では、第2実施形態と共通する部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0177】
<機能構成>
次に、
図13を参照し、第3実施形態に係る情報処理装置10の機能構成について説明する。
図13は、第3実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロックの一例を示す図である。
【0178】
第3実施形態では、第2実施形態の機能ブロック図と比較して、ユーザ操作DB112を有する点等が異なる。なお、ユーザ操作DB112に記録される情報の内容については後述する。
【0179】
<処理>
以下では、機器20が空気調和装置(エアコン)である場合を例として説明するが、開示の技術は、例えば、冷蔵庫、給湯器、及び照明等の各種の機器20に対して適用できる。
【0180】
≪学習時の処理≫
図14から
図15を参照し、第3実施形態に係る情報処理装置10の学習時の処理の一例について説明する。
図14は、第3実施形態に係る情報処理装置10の学習時の処理の一例を示すフローチャートである。
図15は、第2実施形態に係るユーザ操作DBに記憶される、推奨された運転設定に対するユーザの操作の履歴の一例を示す図である。
【0181】
ステップS1301において、情報処理装置10の送受信部15は、機器20に通知する運転設定に関する情報をユーザ操作DB112に記録する。
【0182】
図15の例では、ユーザ操作DB112には、ユーザID毎に、運転設定の推論に用いた各種の情報と、推論した運転設定とに対応付けて、許容度(「快適性を示す情報」の一例。)が記憶される。
【0183】
ユーザIDは、機器20のユーザのID、または機器20のIDである。運転設定の推論に用いた各種の情報は、ユーザIDに係る機器20の運転設定の推論に用いた各種の情報である。運転設定の推論に用いた各種の情報には、機器が運転された際の周囲の環境を示す情報、消費電力、運転設定、及び基準消費電力が含まれる。許容度については後述する。なお、ステップS1301の処理により、ユーザ操作DB112のレコードのうち、許容度以外の項目が記録される。
【0184】
続いて、情報処理装置10の送受信部15は、推論した運転設定を推奨する情報を、機器20のユーザに通知する(ステップS1302)。この処理は、
図11のステップS1205の処理と同様でもよい。
【0185】
(訓練データの取得)
続いて、情報処理装置10の取得部11は、当該機器20のユーザによる機器20の設定操作を取得する(ステップS1303)。ここで、情報処理装置10の取得部11は、例えば、ユーザによる機器20のリモコン等の操作の情報を機器20から取得してもよい。情報処理装置10の取得部11は、例えば、ユーザによる端末30での機器20に対する操作の情報を端末30から取得してもよい。なお、端末30は、例えば、ユーザの操作に応答して、無線LAN等の無線通信により制御信号(リモコンコマンド)を機器20に送信してもよい。
【0186】
(許容度の学習)
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、取得した設定操作に基づき、通知(推奨、提案)した運転設定が当該機器20のユーザに許容された度合いを示す許容度を算出する(ステップS1304)。ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、ユーザに通知した運転設定に対する当該ユーザの操作に応じて、所定の状況において推奨される運転設定に対する許容度を算出してもよい。
【0187】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、所定の状況における機器20の運転設定がユーザに推奨されてから所定時間(例えば、1時間)以内に、ユーザにより機器20の運転設定を変更する操作がされた場合、変更内容が推奨内容に準拠している度合い(準拠の程度)が高い程、許容度の値を高く決定してもよい。
【0188】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、所定の状況における機器20の運転設定がユーザに推奨されてから所定時間以内に、機器20の運転設定を、推奨した運転設定と同一とする操作が行われた場合、許容度を例えば「10」(「第1の値」の一例。)としてもよい。
【0189】
また、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、当該所定時間以内に、機器20の運転設定を、推奨した運転設定に一定程度準拠させる操作が行われた場合、許容度を、準拠している度合いに応じた値としてもよい。
【0190】
例えば、外気温が30℃で機器20の設定温度を25℃として冷房運転をしている状況で、設定温度を28℃とすることがユーザに推奨されたとする。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、設定温度が27℃に変更された場合は、許容度を例えば「7」、設定温度が26℃に変更された場合は許容度を例えば「4」等としてもよい。また、この場合に、設定温度が24℃に変更された場合は、推奨内容に反する設定変更操作がユーザにより行われたため、準拠している度合いをマイナスと判定し、許容度を例えば「−5」(「第3の値」の一例。)等としてもよい。
【0191】
また、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、当該所定時間以内に、機器20の運転設定を変更させる操作が行われなかった場合、許容度を例えば「0」(「第2の値」の一例。)等としてもよい。
【0192】
また、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、当該所定時間以内に、推奨した運転設定を拒否する操作がユーザにより行われた場合、許容度を例えば「−1」(「第4の値」の一例。)等としてもよい。
【0193】
また、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、さらに、例えば、推奨する運転設定を通知した端末30の種別に基づいて、許容度の値を調整してもよい。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、端末30の種別の情報をユーザから予め登録されておいてもよい。そして、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、端末30が例えばスマートフォンである場合は、上述した許容度の値に第1の係数(例えば、「1」)を乗算し、端末30が例えば機器20のリモコンである場合は、上述した許容度の値に第2の係数(例えば、「0.5」)を乗算してもよい。これにより、例えば、端末30がオフィス等における複数のユーザが共用するリモコンの場合は、推奨した内容を無視した操作等がされた場合でも、許容度に反映される程度を低減させることができる。
【0194】
また、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、ユーザにより最後に設定された第1運転設定と異なる第2運転設定で機器20が運転された場合の当該ユーザによる機器20への操作入力に基づいて、快適性を示す情報を生成してもよい。この場合、機器20は、例えば、ユーザが設定変更操作を行ってから、所定期間内に次の設定変更操作がユーザにより行われなかった場合、現在の第1運転設定よりも消費電力が少ない第2運転設定に変更してもよい。そして、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、第2運転設定に変更された後、所定期間以上、ユーザにより設定変更操作がされなかった場合、第2運転設定に対する許容度の値を高く決定してもよい。
【0195】
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、推奨した運転設定に対する許容度を、ユーザ操作DB112に記録する(ステップS1305)。ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、ステップS1301の処理でユーザ操作DB112に記録されたレコードにおける許容度の項目を記録する。
【0196】
続いて、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、ユーザ操作DB112に記録されているデータセットに基づいて、機器20が運転される際の周囲の環境と、運転設定戸に応じたユーザの許容度とを学習するための訓練データを生成する(ステップS1306)。
【0197】
ここで、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、ユーザ操作DB112に記録されている、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目(第3項目)の情報と、消費電力と、運転設定と、基準消費電力と、推奨した運転設定と、許容度との組み合わせを含むデータセットを、許容度の学習用の訓練データとしてもよい。なお、上述した第1項目と、第2項目と、第3項目とは、同一でもよいし、異なってもよい。
【0198】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、例えば、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報、機器20の現在の消費電力、機器20の現在の運転設定、機器20の現在の基準消費電力、及び推奨した運転設定を入力とし、許容度を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、許容度の学習用の訓練データとしてもよい。
【0199】
続いて、情報処理装置10の学習部134は、生成された当該訓練データに基づいて、機器20の周囲の環境等と、推奨する運転設定とに応じた、当該運転設定がユーザAに許容された度合いを示す許容度を学習する(ステップS1307)。
【0200】
ここで、情報処理装置10の学習部134は、例えば、教師有り学習により、入力に基づいて許容度を推論する回帰問題を機械学習してもよい。これにより、機器20の周囲の環境等と、推奨する運転設定とに応じた許容度を学習することができる。
【0201】
この場合、情報処理装置10の学習部134は、例えば、線形回帰(linear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部134は、例えば、許容度を目的変数とし、機器20が運転された際の周囲の環境を示す情報に含まれる少なくとも一の項目の情報、及び推奨する運転設定等を説明変数とし、最小二乗法等を用いて、機械学習を行ってもよい。
【0202】
また、情報処理装置10の学習部134は、例えば、非線形回帰(nonlinear regression)を用いた機械学習を行ってもよい。この場合、情報処理装置10の学習部134は、例えば、回帰型(再帰型)ニューラルネットワーク(Recurrent neural network, RNN)、一般回帰ニューラルネットワーク(General Regression Neural Network)、ランダムフォレスト(Random Forest)、またはサポートベクターマシン(support vector machine, SVM)等を用いた機械学習を行ってもよい。
【0203】
≪推論時の処理≫
次に、
図16を参照し、第3実施形態に係る情報処理装置10の推論時の処理の一例について説明する。
図16は、第3実施形態に係る情報処理装置10の推論時の処理の一例を示すフローチャートである。以下では、機器20Aに対する推論を行う例について説明する。
【0204】
ステップS1401において、情報処理装置10の推論部142は、機器20AのユーザAに対する複数の運転設定を推論する。ここで、情報処理装置10の推論部142は、例えば、上述した第1の実施態様の
図11のステップS1201からステップS1204と同様の処理を行い、運転設定を推論してもよい。この場合、情報処理装置10の推論部142は、例えば、推論の確からしさ(確度)が高い順に、所定数の運転設定を算出してもよい。
【0205】
続いて、情報処理装置10の推論部142は、推論した運転設定と、機器20Aの現在の周囲の環境を示す情報等と、
図13のステップS1304の処理による許容度の学習結果とに基づいて、ステップS1401で推論した各運転設定に対する許容度をそれぞれ推論する(ステップS1402)。
【0206】
続いて、情報処理装置10の推論部142は、推論した各運転設定と、各運転設定に対して推論した許容度とに応じて、当該環境において許容度の条件を満たす運転設定を推論する(ステップS1403)。ここで、情報処理装置10の推論部142は、例えば、許容度が最も高い運転設定を、ユーザAに推奨する運転設定として決定してもよい。
【0207】
または、情報処理装置10の推論部142は、例えば、各運転設定に対する確度を正規化した値と、各運転設定に対する許容度を正規化した値との合計値が最も高い運転設定を、ユーザAに推奨する運転設定として決定してもよい。
【0208】
なお、情報処理装置10の推論部142は、許容度を報酬とし、報酬が最も高くなる運転設定を強化学習により推論してもよい。
【0209】
続いて、情報処理装置10の送受信部15は、当該環境において許容度の条件を満たす運転設定を推奨する情報を、機器20AのユーザAに通知する(ステップS1404)。
【0210】
<許容度に応じた運転設定の推論の変形例>
情報処理装置10は、機器20のユーザ毎の許容度に応じた運転設定を推奨するようにしてもよい。この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、
図14のステップS1306で、例えば、機器20が運転される際に周囲に存在したユーザのユーザIDも入力とし、許容度を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、許容度の学習用の訓練データとしてもよい。そして、情報処理装置10の学習部134は、
図14のステップS1307で、当該訓練データに基づいて、ユーザ毎の許容度を学習してもよい。そして、情報処理装置10の推論部142は、
図16のステップS1402で、機器20Aのユーザに応じた許容度を推論してもよい。
【0211】
なお、機器20が運転される際に周囲に存在したユーザのユーザIDは、例えば、オフィスの入退室管理システム等から取得してもよい。または、ユーザにより情報処理装置10に予め登録されていてもよい。
【0212】
また、情報処理装置10は、機器20のユーザの属性毎の許容度に応じた運転設定を推奨するようにしてもよい。なお、ユーザの属性には、例えば、ユーザの性別、及び年代等が含まれてもよい。ユーザの属性の情報は、例えば、各ユーザにより情報処理装置10に予め登録されていてもよい。
【0213】
この場合、情報処理装置10の訓練データ生成部133は、
図14のステップS1306で、例えば、機器20が運転される際に周囲に存在したユーザの属性も入力とし、許容度を正解データとして、当該入力と当該正解データとの組み合わせ(セット)を、許容度の学習用の訓練データとしてもよい。そして、情報処理装置10の学習部134は、
図14のステップS1307で、当該訓練データに基づいて、ユーザの属性に応じた許容度を学習してもよい。そして、情報処理装置10の推論部142は、
図16のステップS1402で、機器20Aのユーザに応じた許容度を推論してもよい。
【0214】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。