特許第6885504号(P6885504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6885504
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】不活化装置および不活化方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20210603BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61L2/10
   A61L9/20
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-207284(P2020-207284)
(22)【出願日】2020年12月15日
【審査請求日】2020年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 広行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信二
(72)【発明者】
【氏名】大和田 樹志
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/186880(WO,A1)
【文献】 特開2011−098156(JP,A)
【文献】 特表2019−536492(JP,A)
【文献】 特表2017−530777(JP,A)
【文献】 特開2017−029293(JP,A)
【文献】 特開平10−248759(JP,A)
【文献】 特開2018−130535(JP,A)
【文献】 特許第6497427(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10、9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定人が入れ替わり利用する空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する200nm〜240nmの波長範囲の光を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化装置であって、
前記微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光を放射する光源を備える光照射ユニットと、
前記光源による前記光の照射を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記不特定人が前記空間から退出する行為を示す信号を受信したタイミングで、前記光源を制御して、前記不特定人が前記空間内に存在する有人期間中に前記光の照射を開始し、少なくとも前記不特定人が前記空間内に存在しない無人期間の一部の期間に亘って前記光を照射することを特徴とする不活化装置。
【請求項2】
前記不特定人が前記空間から退出する行為を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づいて前記光源を制御して、前記光の照射を開始することを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
【請求項3】
前記有人期間には、前記不特定人が前記空間へ進入中である第1期間と、前記不特定人が前記空間に滞在している期間である第2期間と、前記不特定人が前記空間から退出中である第3期間とが存在し、
前記制御部は、前記光源を制御して、前記第3期間において前記光の照射を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の不活化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記光源を制御して、前記第2期間において前記光の照射を停止することを特徴とする請求項3に記載の不活化装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光源を制御して、前記第1期間において前記光の照射を停止することを特徴とする請求項3に記載の不活化装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光源を制御して、前記無人期間において前記光の照射を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項7】
前記不特定人は、所定の基準時点から現時点までの期間に照射された前記光の照射量の累積値を管理できない人物であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項8】
前記光照射ユニットは、前記光源を内部に収容し、前記光源から発せられる光の少なくとも一部を出射する光出射窓を有する筐体を備え、
前記光出射窓には、波長237nmよりも長波長側のUV−C波の透過を阻止する光学フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項9】
前記光源は、エキシマランプおよびLEDのいずれか一方であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項10】
前記光源は、中心波長222nmの紫外線を放射することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項11】
前記光源はLEDであって、
前記LEDは、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LEDおよび酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LEDのいずれかであることを特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項12】
前記光源はLEDであって、
前記光照射ユニットは、前記LEDを冷却する冷却部材を有することを特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項13】
前記光源はエキシマランプであって、
前記光照射ユニットは、前記エキシマランプを収容し、導電性の金属からなる筐体を有することを特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載の不活化装置。
【請求項14】
光照射量を管理できない不特定人が入れ替わり利用する空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する200nm〜240nmの波長範囲の光を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化方法であって、
前記不特定人が前記空間内に存在する有人期間中に、前記不特定人が前記空間から退出する行為を示す信号を受信するステップと、
前記信号を受信したタイミングで、前記光を放射する光源を制御して、前記有人期間中に前記光の照射を開始し、前記不特定人が前記空間内に存在しない無人期間の少なくとも一部の期間に亘って前記光を照射するステップと、を含むことを特徴とする不活化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な微生物やウイルスを不活化する不活化装置および不活化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設、学校、役所、劇場、ホテル、飲食店等、頻繁に人が集まったり人が出入りしたりする施設は、バクテリアやカビ等の微生物が繁殖しやすく、またウイルスが蔓延しやすい環境にある。特に、上記施設における狭い空間(病室、トイレ、エレベータ内などの閉鎖空間)や人が密集するような空間では、このような傾向が顕著となる。
例えば、有害で感染性の高い微生物やウイルスは、当該ウイルス等に感染した人が施設内の所定の空間を出入りすることにより、当該空間における床や壁等の表面上で増殖したり、当該空間内を浮遊したりする。そのため、その空間に入った次の人にウイルス等が感染し、場合によっては感染症が施設内で蔓延することもある。
【0003】
以上のような状況を改善するために、人(場合によっては動物)が集まったり出入りしたりする施設においては、上記したような有害な微生物(例えば、感染性微生物)を消毒したり、ウイルスを不活化したりする措置が求められる。
床や壁等の上記空間を取り囲む表面については、例えば、作業員によってアルコール等の消毒剤を散布する、消毒剤を染み込ませた布等で拭き取る、あるいは殺菌紫外線を照射する等の除染作業が行われる。また、空間内を浮遊する微生物やウイルス等については、例えば、紫外線照射による殺菌・不活化が行われる。
特許文献1には、密閉室を除染する除染装置として、使用者がいないときに除染対象空間に紫外線(UVC光)を照射し、当該空間を殺菌する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017−528258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、人間が除染対象空間から退出した後に、当該空間を取り囲む表面や、空間内の環境表面を除染している。つまり、紫外線照射による殺菌中は、当該空間に人を入れることができない。
そのため、例えば上記の対象空間が、人が入れ替わり利用する施設(例えば、映画館など)や乗物(例えば、タクシーなど)である場合、除染処理が完了するまで対象空間に次の人を入れることができず、効率的に当該対象空間を利用することができない。
対象空間を効率的に利用するためには、対象空間から人が退出してから、当該対象空間に新たに人が進入するまでの期間を短くする必要があるが、その場合、除染処理時間が短くなり、対象空間の除染処理を十分に行えないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、人から人への有害な微生物やウイルスの感染のリスクを低減しつつ、人が入れ替わり利用する空間の利用効率を向上することができる不活化装置および不活化方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る不活化装置の一態様は、不特定人が入れ替わり利用する空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する200nm〜240nmの波長範囲の光を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化装置であって、前記微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光を放射する光源を備える光照射ユニットと、前記光源による前記光の照射を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記不特定人が前記空間から退出する行為を示す信号を受信したタイミングで、前記光源を制御して、前記不特定人が前記空間内に存在する有人期間中に前記光の照射を開始し、少なくとも前記不特定人が前記空間内に存在しない無人期間の一部の期間に亘って前記光を照射する。
【0008】
このように、有人期間のうちから光照射を開始し、当該有人期間とそれに続く無人期間とにおいて光を照射する。有人期間から無人期間へ切り替わるタイミングの前から光照射を開始するので、無人期間を短くしても適切に殺菌不活化効果が得られる。つまり、無人期間を短くして対象空間の利用効率を上げることができる。
また、有人期間においては、対象空間から退出する予定の人に光を照射するので、人への照射は短期間で済む。そのため、当該光が人体に多からず悪影響を及ぼす光を含んでいる場合であっても、人に対する光照射量を低く抑えることができ、光照射による人への悪影響を抑制することができる。さらに、無人期間においても光照射を行うので、人によって影になっていた部分にも光を照射することができ、適切に殺菌不活化処理を行うことができる。
【0009】
また、上記の不活化装置は、前記不特定人が前記空間から退出する行為を検知する検知部をさらに備え、前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づいて前記光源を制御して、前記光の照射を開始してもよい。
この場合、人が対象空間から退出する行為が始まったことを検知して光照射を開始することができる。したがって、適切なタイミングで光照射を開始することができる。
【0010】
さらに、上記の不活化装置において、前記有人期間には、前記不特定人が前記空間へ進入中である第1期間と、前記不特定人が前記空間に滞在している期間である第2期間と、前記不特定人が前記空間から退出中である第3期間とが存在し、前記制御部は、前記光源を制御して、前記第3期間において前記光の照射を開始してもよい。
この場合、対象空間から人がいなくなる少し前から光照射を開始することができる。したがって、対象空間に存在する人への光照射量を適切に抑えることができる。
【0011】
また、上記の不活化装置において、前記制御部は、前記光源を制御して、前記第2期間において前記光の照射を停止してもよい。
この場合、無人期間をより短くすることができ、対象空間の利用効率をより上げることができる。また、対象空間に対する殺菌不活化処理を確実に行うことができる。
【0012】
さらに、上記の不活化装置において、前記制御部は、前記光源を制御して、前記第1期間において前記光の照射を停止してもよい。
この場合、無人期間をより短くすることができ、対象空間の利用効率をより上げることができる。また、対象空間に進入した人への光照射は短期間で済むため、当該人に対する光照射量を低く抑えることができる。
【0013】
また、上記の不活化装置において、前記制御部は、前記光源を制御して、前記無人期間において前記光の照射を停止してもよい。
例えば、対象空間への人の入れ替え周期が定まっていない場合で、無人期間が長時間続いている場合には、当該無人期間の一部の期間において光照射を停止することができ、不活化に十分な光照射量を超える過剰な照射を防ぐことができる。その結果、光源の使用寿命(光源の交換が必要となるまでの時間)を長くすることができる。
【0014】
さらにまた、上記の不活化装置において、前記不特定人は、所定の基準時点から現時点までの期間に照射された前記光の照射量の累積値を管理できない人物とすることができる。
この場合、個々人の光照射量を管理できない不特定人が入れ替わり利用する空間において、当該空間に存在する不特定人への光照射量を抑制しつつ、当該空間の殺菌、不活化を適切に行うことができる。
【0016】
また、上記の不活化装置において、前記光照射ユニットは、前記光源を内部に収容し、前記光源から発せられる光の少なくとも一部を出射する光出射窓を有する筐体を備え、前記光出射窓には、波長237nmよりも長波長側のUV−C波の透過を阻止する光学フィルタが設けられていてもよい。
この場合、人体や動物への悪影響の少ない波長域の光のみを照射することができる。
【0017】
さらに、上記の不活化装置において、前記光源は、エキシマランプおよびLEDのいずれか一方であってもよい。
エキシマランプおよびLEDは、従来の不活化装置の紫外線光源として利用されてきた低圧水銀ランプと比較して、振動や気圧変化、温度変化の影響を受けにくい。すなわち、振動や気圧変化、温度変化を受けても、放出される光の照度が不安定になりにくい。そのため、エキシマランプやLEDを光源として用いることで、光照射装置が振動や気圧変化、温度変化を受ける環境で使用される場合であっても、安定して光を放出することができ、殺菌、不活化を適切に行うことができる。
【0018】
また、上記の不活化装置において、前記光源は、中心波長222nmの紫外線を放射してもよい。
この場合、紫外線照射による人体への悪影響を適切に抑制しつつ、微生物やウイルスを効果的に不活化することができる。
【0019】
さらにまた、上記の不活化装置において、前記光源はLEDであって、前記LEDは、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LEDおよび酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LEDのいずれかであってもよい。
この場合、振動や気圧変化、温度変化の影響を受けにくいLEDを用いて、例えば人体に悪影響の少ない200nm〜240nmの波長範囲にある紫外線を放射し、適切に微生物やウイルスを不活化することができる。
【0020】
また、上記の不活化装置において、前記光源はLEDであって、前記光照射ユニットは、前記LEDを冷却する冷却部材を有していてもよい。
この場合、LEDの熱上昇を適切に抑制することができ、LEDから安定した光を放出させることができる。
【0021】
さらに、上記の不活化装置において、前記光源はエキシマランプであって、前記光照射ユニットは、前記エキシマランプを収容し、導電性の金属からなる筐体を有していてもよい。
この場合、エキシマランプから発生する高周波ノイズが筐体外部へ発信されることを抑制することができる。これにより、筐体外部に設けられた制御システムへの制御指令がエキシマランプからの高周波ノイズの影響を受けることを抑制することができ、当該制御指令の不具合を抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係る不活化方法の一態様は、光照射量を管理できない不特定人が入れ替わり利用する空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する200nm〜240nmの波長範囲の光を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する不活化方法であって、前記不特定人が前記空間内に存在する有人期間中に、前記不特定人が前記空間から退出する行為を示す信号を受信するステップと、前記信号を受信したタイミングで、前記光を放射する光源を制御して、前記有人期間中に前記光の照射を開始し、前記不特定人が前記空間内に存在しない無人期間の少なくとも一部の期間に亘って前記光を照射するステップと、を含む。
【0023】
このように、有人期間のうちから光照射を開始し、当該有人期間とそれに続く無人期間とにおいて光を照射する。有人期間から無人期間へ切り替わるタイミングの前から光照射を開始するので、無人期間を短くしても適切に殺菌不活化効果が得られる。つまり、無人期間を短くして対象空間の利用効率を上げることができる。
また、有人期間においては、対象空間から退出する予定の人に光を照射するので、人への照射は短期間で済む。そのため、当該光が人体に多からず悪影響を及ぼす光を含んでいる場合であっても、人に対する光照射量を低く抑えることができ、光照射による人への悪影響を抑制することができる。さらに、無人期間においても光照射を行うので、人によって影になっていた部分にも光を照射することができ、適切に殺菌不活化処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、人から人への有害な微生物やウイルスの感染のリスクを低減しつつ、人が入れ替わり利用する空間の利用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。
図2】本実施形態における不活化システムの概略構成を示す図である。
図3】不活化装置の動作を示すフローチャートである。
図4】不活化装置の動作を示すタイムチャートである。
図5】対象空間における有人期間と無人期間とを説明する図である。
図6】対象空間がタクシーである場合の動作を示すタイムチャートである。
図7】対象空間が映画館である場合の動作を示すタイムチャートである。
図8】紫外線照射ユニットの構成例を示す模式図である。
図9】エキシマランプの構成例を示す模式図である。
図10】エキシマランプの別の例を示す模式図である。
図11】エキシマランプの別の例を示す模式図である。
図12】紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、人が存在する空間(対象空間)内において紫外線照射を行い、当該空間内に存在する微生物やウイルスを不活化する不活化装置(紫外線照射装置)について説明する。
なお、本実施形態における「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。また、「人が存在する空間」は、実際に人が居る空間に限定されず、人が出入りする空間であって人が居ない空間を含む。
【0027】
ここで、上記対象空間は、不特定人が入れ替わり利用する施設や乗物内の空間である。上記不特定人とは、個々人の紫外線照射量(所定の基準時点から現時点までの期間に照射された光の照射量の累積値(累積照射量))を管理できない人物である。
上記施設としては、例えば興業場(映画館、演劇場、寄席、音楽堂など)、カラオケボックス、漫画喫茶の個室、遊園地のアトラクション(観覧車など)、レンタルオフィス、ホテル、飲食店内の個室や半個室、個室トイレ、学校の教室、講習会場、病院や人間ドックなどの診察室や検査室などがある。また、上記乗物としては、タクシー、観光バス、シャトルバス、飛行機、新幹線、遊覧船などがある。なお、対象空間は、閉鎖された空間であってもよいし、閉鎖されていない空間であってもよい。
【0028】
本実施形態における不活化装置は、人や動物の細胞への悪影響が少ない波長200〜240nmの紫外線を、人が存在する領域に対しても照射して、当該領域内の物体表面や空間に存在する有害な微生物やウイルスを不活化するものである。ここで、上記物体は、人体、動物、物を含む。
実用上、除染(殺菌)用途に使用される紫外線の波長域は、200〜320nmとされており、特に、微生物やウイルスが保有する核酸(DNA、RNA)の吸収が大きい260nm付近の紫外線を用いることが一般的となっている。しかしながら、このような260nm付近の波長域の紫外線は、人や動物に悪影響を及ぼす。例えば、紅斑や皮膚のDNA損傷による癌の誘発や、目の障害(眼痛・充血・角膜の炎症など)を引き起こす。
【0029】
そのため、上記のように260nm付近の紫外線を用いて除染(殺菌)する従来の紫外線照射システムでは、人や動物の安全性を考慮し、人や動物が存在しないときに紫外線の照射を行い、照射領域に人が存在する場合は紫外線の放出を停止するように構成している。
ところが、上記のような人が入れ替わり利用する施設や乗物内の空間を除染対象とした場合、当該空間において十分に微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うためには、人が入れ替わる際の無人期間(人が存在しない期間)を十分長くする必要がある。そして、その無人期間における殺菌不活化処理が完了するまで、当該空間に次の人を入れることができない。そのため、当該空間の利用効率が低下してしまう。
人が入れ替わり利用する空間においては、当該空間の殺菌不活化処理は十分に行いたい一方、無人期間は短くして利用効率を向上したいという要望がある。
【0030】
本発明者らは、鋭意研究の結果、波長200〜240nmの波長範囲の光は人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うことが可能であることを見出した。
【0031】
図1は、たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。
この図1に示すように、たんぱく質は、波長200nmに吸光ピークを有し、波長240nm以上では紫外線が吸収されにくいことがわかる。つまり、波長240nm以上の紫外線は、人の皮膚を透過しやすく、皮膚内部まで浸透する。そのため、人の皮膚内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長200nm付近の紫外線は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透しない。そのため、皮膚に対して安全である。
一方で、波長200nm未満の紫外線は、オゾン(O)を発生し得る。これは、波長200nm未満の紫外線が酸素を含む雰囲気中に照射されると、酸素分子が光分解されて酸素原子を生成し、酸素分子と酸素原子との結合反応によってオゾンが生成されるためである。
【0032】
したがって、波長200〜240nmの波長範囲は、人や動物に安全な波長範囲であるといえる。なお、人や動物に安全な波長範囲は、好ましくは波長200〜237nm、より好ましくは波長200〜235nm、さらに好ましくは200〜230nmである。
【0033】
本実施形態における不活化装置は、人や動物に安全な波長範囲である波長200〜240nmの紫外線を用い、従来のように、紫外線が人に照射されないように構成するのではなく、人が存在する空間に対しても紫外線を照射するものである。つまり、不特定人が入れ替わり利用する空間において、不特定人が存在しない無人期間だけでなく、不特定人が存在する有人期間についても紫外線を照射する。
これにより、当該空間への紫外線照射量を稼ぐことができ、無人空間を可及的に短くすることが可能となる。その結果、当該空間の利用効率を向上させることができる。
【0034】
なお、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によれば、人体への1日(8時間)あたりの紫外線照射量には波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められている。
したがって、上述した人に安全とされる波長域の紫外線であっても、1日の紫外線照射量(積算光量)が上記の許容限界値以下となるように紫外線の照度および照射時間を設定することが好ましい。
【0035】
上記のように、本実施形態における不活化装置が紫外線照射を行う対象空間は、紫外線照射量を管理できない不特定人が入れ替わり利用する施設や乗物内の空間である。
対象空間に存在する人が当該対象空間に進入する前までに曝露した累積照射量が不明であるため、当該対象空間における有人期間に紫外線を長時間照射してしまうと、当該対象空間に存在する人の累積照射量が許容限界値に達してしまうおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態では、対象空間に存在する人の当該対象空間からの退出動作に連動して、紫外線の照射を開始する。つまり、対象空間に存在する人が当該対象空間から退出する少し前から紫外線の照射を開始する。例えば、本実施形態における不活化装置は、不特定人が対象空間から退出する行為を検知する検知部を備え、検知部による検知結果に基づいて紫外線光源を制御して、紫外線の照射を開始することができる。
これにより、対象空間に存在する人は、累積照射量が許容限界値に達する前に当該対象空間を退出することができる。人や動物に安全な波長範囲である波長200〜240nmの紫外線、特に波長222nmの紫外線は許容限界値が比較的大きいので、十分退出時間を確保することができる。
【0037】
このように、対象空間から人が退出するタイミングの少し前から紫外線照射を開始し、無人期間に亘って紫外線照射を継続することで、対象空間に存在する人に対する紫外線照射量は低く抑えつつ、当該対象空間の殺菌不活化処理を十分に行うことができるとともに、無人期間を可及的に短くし、当該対象空間の利用効率を上げることができる。
【0038】
図2は、本実施形態における不活化装置100を備える不活化システム1000の構成例である。
不活化装置100は、対象空間200内に設置されており、当該対象空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光を照射する。
なお、図2では、対象空間200が扉201および扉202を備え、所定の不特定人300が扉201から入室し、対象空間200内に滞在してから扉202から退出し、その後、別の不特定人(図示せず)が扉201などから入室する例について示しているが、対象空間200は、図2に示すような扉を有する閉鎖空間に限定されない。また、対象空間200に一度に出入りする不特定人300は複数人に限定されるものではなく、1人であってもよい。
【0039】
不活化装置100は、微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光(ここでは、200nm〜240nmの波長範囲にある紫外線)を放射する紫外線光源を備える紫外線照射部110と、紫外線照射部110による光の照射を制御する制御部120と、を備える。紫外線光源が、例えば中心波長222nmの紫外線を放射する。
制御部120は、対象空間200に不特定人300が存在する有人期間から対象空間200に不特定人300が存在しない無人期間への切り替わりのタイミングを認識し、そのタイミングの前に紫外線照射部110による光の照射を開始し、少なくとも無人期間の一部の期間に亘って光を照射する。本実施形態では、制御部120は、対象空間200に不特定人300が存在しない無人期間から対象空間200に不特定人300が存在する有人期間への切り替わりのタイミングを認識し、そのタイミングの後で紫外線照射部110による光の照射を停止する場合について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態における不活化装置100の基本動作を示すフローチャートである。この図3に示す処理は、紫外線照射が行われていない有人期間において実行開始される。
まずステップS1において、制御部120は、有人期間から無人期間への切り替わりを認識したか否かを判定する。ここで、制御部120は、各種センサからの信号やタイマーカウント、人が手動で操作したスイッチに連動した信号等に基づいて、有人期間から無人期間への切り替わりを認識することができる。ここで言う「有人期間から無人期間への切り替わりを認識」とは、まだ対象空間200に不特定人300が居る状態ではあるが、間もなく退出が始まるか、または既に退出が始まっており、やがて対象空間200が無人になることを認識した状態を指す。即ち、この時点では対象空間200は無人ではない。
【0041】
そして、制御部120は、有人期間から無人期間への切り替わりを認識していない場合は、紫外線照射を行わないまま待機し、有人期間から無人期間への切り替わりを認識するとステップS2に移行する。
ステップS2では、制御部120は、有人期間から無人期間へ切り替わりが完了して対象空間200が無人になるタイミングよりも前に紫外線の照射を開始する。
【0042】
ステップS3では、制御部120は、無人期間から有人期間への切り替わりを認識したか否かを判定する。ここで、制御部120は、各種センサからの信号やタイマーカウント、人が手動で操作したスイッチに連動した信号等に基づいて、無人期間から有人期間への切り替わりを認識することができる。
【0043】
そして、制御部120は、無人期間から有人期間への切り替わりを認識していない場合は、そのまま紫外線照射を継続し、無人期間から有人期間への切り替わりを認識するとステップS4に移行する。
ステップS4では、制御部120は、無人期間から有人期間へ切り替わり再び対象空間200が有人になったタイミングの後で紫外線の照射を停止する。
【0044】
つまり、本実施形態における不活化装置100は、図4に示すように、対象空間200から不特定人300がいなくなる時刻t2よりも前の時刻t1において紫外線照射を開始し、無人期間に亘って紫外線照射を継続する。そして、時刻t3において対象空間200に不特定人300が進入すると、不活化装置100は、例えば、その時刻t3よりも後の時刻t4において紫外線照射を停止する。
なお、紫外線照射を停止するタイミングは、上記に限定されるものではない。紫外線照射は、有人期間から無人期間への切り替わりのタイミング(時刻t2)の前に開始され、少なくとも無人期間(時刻t2から時刻t3までの期間)の一部の期間に亘って継続されていればよい。
【0045】
紫外線照射を停止するタイミングは、有人期間において紫外線照射を開始してからの紫外線照射量(照度や照射時間)に応じて適宜決定することができる。例えば、無人期間の途中(時刻t2から時刻t3までの間)で紫外線照射を停止してもよいし、無人期間から有人期間への切り替わりのタイミング(時刻t3)で紫外線照射を停止してもよい。
【0046】
図5は、対象空間200における有人期間と無人期間とを具体的に説明する図である。
この図5に示すように、有人期間には、不特定人300が対象空間200へ進入中である第1期間と、不特定人300が対象空間200に滞在中である第2期間と、不特定人300が対象空間200から退出中である第3期間と、が存在する。
例えばタクシーの場合、対象空間200はタクシーの後部空間(後部座席や、運転手と後部座席との間の賃金受け渡し皿を含む空間)であり、当該対象空間200を利用する不特定人300は乗客である。タクシーの運転手は不特定人300には含まれない。この場合、第1期間は、乗客がタクシーに乗車して後部座席の空間で座る位置を調整している期間(乗客が空間内で少し動いている期間)であり、第2期間は、タクシーが発進し、乗客が座った位置から動かず座ったままの状態である期間であり、第3期間は、目的地にて乗客が支払い手続きを行いタクシーから降りるまでの期間である。
【0047】
また、例えば映画館の場合、対象空間200は劇場内の客席空間であり、当該対象空間200を利用する不特定人300は観客である。館内のスタッフ(清掃員など)は不特定人300には含まれない。この場合、第1期間は、観客の入場が開始されてから映画の本編が始まるまでの期間(観客が空間内で移動している期間、映画の予告が流れている期間)であり、第2期間は、本編の上映中の期間であり、第3期間は、上映が終了して観客が退場するまでの期間である。
【0048】
上述したように、不活化装置100は、有人期間から無人期間へ切り替わるタイミングを認識し、その切り替わりのタイミングの前である有人期間から紫外線照射を開始する。
具体的には、不活化装置100は、図5に示す第3期間において紫外線を照射することができる。このとき、第3期間の開始のタイミングを検知して紫外線照射を開始してもよいし、無人期間の開始のタイミングを認識している場合には、当該タイミングから逆算して第3期間の開始のタイミングを認識し、紫外線照射を開始してもよい。また、第3期間の途中で紫外線照射を開始してもよい。
【0049】
また、上述したように、不活化装置100は、有人期間から無人期間へ切り替わるタイミングの前に紫外線照射を開始した後、無人期間においても引き続き紫外線を照射し、無人期間から有人期間に切り替わった後で紫外線照射を停止する。
具体的には、不活化装置100は、図5に示す第1期間や第2期間において紫外線の照射を停止することができる。ここで、紫外線照射の停止のタイミングは、第1期間の途中であってもよいし、第1期間から第2期間への切り替わりのタイミングであってもよいし、第2期間の途中であってもよい。なお、紫外線照射の停止のタイミングは、上述したように、無人期間の途中であってもよいし、無人期間の終了のタイミングであってもよい。
【0050】
以下、具体的な適用場面での動作について説明する。ここでは、不活化装置100が、第3期間の開始のタイミングで紫外線の照射を開始し、次の第2期間において紫外線の照射を停止する場合について説明する。
まず、対象空間200がタクシーである場合について、図6を参照しながら説明する。
不活化装置100の紫外線光源は、例えば車内天井に配置される。なお、紫外線光源の配置位置は天井に限定されるものではなく、紫外線照射の対象空間である後部空間に紫外線を照射可能な位置であればよい。
後部空間に紫外線を照射していない状態で、タクシーが客を乗せて走行しており、時刻t11でタクシーが目的地に到着すると、運転手はタクシーメータの支払いスイッチをオンして課金を終了する。このとき、タクシーの表示器(スーパーサイン)は実車状態を示す「賃走」から「支払」に切り替わる。そして、乗客は賃金の支払いを始める。つまり、この時刻t11において、第2期間から第3期間に切り替わる。
【0051】
この場合、不活化装置100の制御部120は、例えばタクシーメータの状態をもとに、第2期間から第3期間へ切り替わったことを検知する。つまり、乗客が後部空間から退出する行為を検知する。そして、その時刻t11において紫外線光源を制御して、タクシーの後部空間に対する紫外線の照射を開始する。なお、制御部120は、例えばタクシーの表示器の状態をもとに、第2期間から第3期間へ切り替わったことを検知してもよい。
【0052】
紫外線の照射が開始された時刻t11では、タクシーの後部空間にはまだ客が存在するため、当該客に紫外線が照射される。しかしながら、この客は、しばらくすると、タクシーの後部空間から退出するため、短時間の曝露で済み、紫外線を許容限界値以上浴びることはない。また、紫外線光源から放射される光は、人体に対して比較的安全な波長222nmの紫外線であるため、客が後部空間に存在していても、当該客に悪影響を及ぼすことなく、後部空間における紫外線照射による殺菌不活化処理を行うことができる。
【0053】
その後、客による賃金の支払いが終了すると、タクシーの後部ドアが開かれて客がタクシーから降りる。すると、時刻t12においてタクシーの後部ドアが閉められ、運転手はタクシーメータの空車スイッチをオンする。このとき、タクシーの表示器は「支払」から「空車」に切り替わる。つまり、この時刻t12において、第3期間から無人期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、例えば後部ドアの開閉を検知するドアセンサの信号をもとに、第3期間から無人期間へ切り替わったことを検知することができる。なお、制御部120は、タクシーの表示器の状態をもとに、第3期間から無人期間へ切り替わったことを検知することもできる。
そして、制御部120は、客がタクシーから降りて後部空間に人がいなくなった無人期間においても、引き続き紫外線光源を点灯し、紫外線を照射する。
【0054】
その後、時刻t13において、タクシーに次の客が乗車する。このとき、時刻t13においてタクシーの後部ドアが開き、客がタクシーに乗り、運転手に目的地を伝える。つまり、この時刻t13において、無人期間から第1期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、例えば後部ドアの開閉を検知するドアセンサの信号をもとに、タクシーの後部空間が無人期間から第1期間へ切り替わったことを検知することができる。制御部120は、この第1期間においても、引き続き紫外線光源を点灯し、紫外線を照射する。
【0055】
この第1期間は、客が後部ドアからタクシーに乗車して後部空間で座る位置を調整している期間であり、タクシーは停車中である。
その後、時刻t14において、運転手はタクシーメータの実車スイッチをオンして課金を開始し、タクシーを発進させる。このとき、タクシーの表示器は「空車」から「賃走」に切り替わる。つまり、この時刻t14において、第1期間から第2期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、例えばタクシーメータの状態をもとに、第1期間から第2期間へ切り替わったことを検知することができる。なお、制御部120は、例えばタクシーの表示器の状態をもとに第1期間から第2期間へ切り替わったことを検知することもできる。
そして、制御部120は、第2期間への切り替わりを検知してから一定時間経過後の時刻t15において、紫外線光源を消灯させて紫外線照射を停止する。
【0056】
このように、タクシーの乗客には、乗車したタイミング(時刻t13)から紫外線が照射される。しかしながら、紫外線照射は所定時間後に停止されるため、短時間の曝露で済み、当該客は、紫外線を許容限界値以上浴びることはない。また、紫外線光源から放射される光は、人体に対して比較的安全な波長222nmの紫外線であるため、客が後部空間に存在していても、当該客に悪影響を及ぼすことなく、後部空間における紫外線照射による殺菌不活化処理を行うことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態の不活化装置100は、乗客がタクシーから降りる前から無人期間に亘って後部空間に紫外線を照射し、後部空間および当該後部空間内の環境表面の殺菌不活化処理を開始することができる。不活化処理を開始するタイミングを無人期間の開始のタイミングよりも早めることができるので、例えば客を降ろした後、次の客を乗せるまでの無人期間が短くても、後部空間の殺菌不活化処理を適切に行うことができ、安心して次の客を乗せることができる。
また、無人期間に切り替わった後も、紫外線照射を継続させることにより、乗客によって影となって紫外線が照射されなかった部分(例えば、乗客が座っていた座席部分)に対して、適切に紫外線を照射することができ、確実に殺菌不活化処理を実施することができる。さらに、紫外線照射による殺菌不活化処理中であっても、次の客をタクシーに乗せることができるので、タクシーを効率良く稼働させることができる。
【0058】
なお、図6に示す例では、第2期間において紫外線照射を停止しているが、なかなか次の客がつかまらず無人期間が長い場合には、例えば十分に殺菌、不活化されたとされる期間が経過していれば、無人期間の途中で紫外線照射を停止してもよい。この場合、紫外線光源の使用寿命(光源の交換が必要となるまでの時間)を長くすることができる。
【0059】
次に、対象空間200が映画館である場合について、図7を参照しながら説明する。
不活化装置100の紫外線光源は、例えば劇場(シアター)内の天井に配置される。なお、紫外線光源の配置位置は天井に限定されるものではなく、紫外線照射の対象空間である客席空間に紫外線を照射可能な位置であればよい。
客席空間に紫外線を照射していない状態で、映画(本編)を上映中であり、本編終了直前でスクリーン上にエンドロールが流れ始めると、観客の中には退出準備を始める人が出てくる。その後、時刻t21で上映終了となり、劇場内の誘導灯が点灯すると、観客は退場を始める。つまり、この時刻t21において、第2期間から第3期間に切り替わる。
【0060】
この場合、不活化装置100の制御部120は、照度センサからの信号や点灯スイッチの信号等をもとに誘導灯の点灯状態を検知することで、第2期間から第3期間に切り替わったことを検知する。つまり、観客が客席空間から退出する行為を検知する。そして、その時刻t21において紫外線光源を制御して、劇場の客席空間に対する紫外線の照射を開始する。
なお、制御部120は、例えば上映スケジュールをもとに、タイマーカウント等により第2期間から第3期間に切り替わったことを検知してもよい。また、ここでは上映終了のタイミングを第2期間の終了(第3期間の開始)のタイミングとしているが、例えばエンドロールが流れ始めたタイミングを第2期間の終了(第3期間の開始)のタイミングとしてもよい。
【0061】
紫外線の照射が開始された時刻t21では、客席空間にはまだ観客が存在するため、当該観客に紫外線が照射される。しかしながら、この観客は、しばらくすると、客席空間から退出するため、短時間の曝露で済み、紫外線を許容限界値以上浴びることはない。また、紫外線光源から放射される光は、人体に対して比較的安全な波長222nmの紫外線であるため、観客が客席空間に存在していても、観客に悪影響を及ぼすことなく、客席空間における紫外線照射による殺菌不活化処理を行うことができる。
【0062】
その後、観客が全員退場すると、時刻t22において劇場の出入口が閉鎖される。つまり、この時刻t22において、第3期間から無人期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、上映スケジュールをもとに、タイマーカウント等により第3期間から無人期間へ切り替わったことを検知することができる。
制御部120は、観客が退場して劇場の客席空間に観客がいなくなった無人期間においても、引き続き紫外線光源を点灯し、紫外線を照射する。
【0063】
なお、観客が退場した後の客席空間は、清掃員による清掃作業が行われる。つまり、客席空間には人が存在することになる。しかしながら、当該清掃員は、劇場内での作業時間、即ち紫外線照射量を管理可能な特定人であり、紫外線照射量が許容限界値を超えないように制御することが可能である。そのため、当該清掃員が存在する期間は、紫外線照射量を管理できない不特定人が存在しない無人期間となる。
【0064】
その後、次の上映開始時刻が近づくと、時刻t23において劇場の出入口が開放され、観客が入場を始める。この時刻t23において、無人期間から第1期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、上映スケジュールをもとに、タイマー等により劇場の客席空間が無人期間から第1期間へ切り替わったことを検知することができる。制御部120は、この第1期間においても、引き続き紫外線光源を点灯し、紫外線を照射する。
【0065】
この第1期間は、観客が客席空間で座席を探したり、飲み物を購入しに席を立ったりしている期間であり、劇場内の誘導灯は点灯中である。
その後、上映開始時刻となると、誘導灯が一段階暗くなり、予告編が始まる。そして、その後の時刻t24において、誘導灯が消灯し、本編が始まる。つまり、この時刻t24において、第1期間から第2期間に切り替わる。
不活化装置100の制御部120は、例えば誘導灯の点灯状態を検知することで、第1期間から第2期間へ切り替わったことを検知することができる。なお、制御部120は、例えば上映スケジュールをもとに、タイマーカウント等により第1期間から第2期間へ切り替わったことを検知することもできる。
【0066】
そして、制御部120は、この第2期間への切り替わりを検知した時刻t24において、紫外線光源を消灯させて紫外線照射を停止する。
本編が始まる第2期間においては、劇場内が消灯しており、僅かな光でも上映の妨げになるおそれがある。不活化装置100の紫外線光源からの放射光に可視光が僅かにでも含まれる場合、この第2期間への切り替わりのタイミングで紫外線照射を停止することが好ましい。
【0067】
このように、映画館の観客には、劇場に進入したタイミング(時刻t23)から紫外線が照射される。しかしながら、紫外線照射は所定時間後に停止されるため、短時間の曝露で済み、当該観客は、紫外線を許容限界値以上浴びることはない。また、紫外線光源から放射される光は、人体に対して比較的安全な波長222nmの紫外線であるため、観客が客席空間に存在していても、観客に悪影響を及ぼすことなく、客席空間における紫外線照射による殺菌不活化処理を行うことができる。
【0068】
以上のように、本実施形態の不活化装置100は、観客が劇場から退出する前から無人期間に亘って客席空間に紫外線を照射し、客席空間および当該客席空間内の環境表面の殺菌不活化処理を開始することができる。不活化処理を開始するタイミングを無人期間の開始のタイミングよりも早めることができるので、例えば観客を退場させた後、次の観客を入場させるまでの無人期間が短くても、客席空間の殺菌不活化処理を適切に行うことができ、安心して次の観客を入れることができる。
また、無人期間に切り替わった後も、紫外線照射を継続させることにより、観客によって影となって紫外線が照射されなかった部分(例えば、観客が座っていた座席部分)に対して、適切に紫外線を照射することができ、確実に殺菌不活化処理を実施することができる。さらに、紫外線照射による殺菌不活化処理中であっても、次の観客を入場させることができるので、上映時間の間隔を詰めることができ、時間的に効率良く映画を上映することができる。
【0069】
従来の不活化装置のように紫外線が人に照射されないように構成した場合、タクシーでは、客が降車した後で紫外線ランプを点灯し、後部空間や後部座席に対して殺菌不活化処理を行うことになるが、この場合、殺菌不活化処理が完了するまで次の客を乗せることができず、タクシーを効率良く稼働させることができなかった。
また、映画館では、映画の上映が終了した後、観客が全員退場した後に紫外線ランプを点灯し、劇場内の空間や座席に対して殺菌不活化処理を行うことになるが、この場合、殺菌不活化処理が完了するまで次の上映のための観客を劇場に入れることができないために、上映時間の間隔が長くなり、時間的に効率良く映画を上映することができなかった。
【0070】
これに対して本実施形態では、上述したように、タクシーでは乗客が降りる前、映画館では観客が退場する前に紫外線の照射を開始し、無人期間に亘って紫外線を照射し続ける。このように、有人期間から紫外線を照射して紫外線照射量を稼ぐので、無人期間を短くすることができ、対象空間の利用効率(タクシーの稼働効率、映画館の上映効率)を上げることができる。
また、適切に殺菌不活化処理を行ってから対象空間に次の人を入れることができるので、入れ替わりの前に対象空間にいた人から、入れ替わりの後に新たに対象空間に進入した人への有害な微生物やウイルスの感染のリスクを低減することができる。
【0071】
さらに、無人期間から有人期間に切り替わった後、一定時間経過後に紫外線の照射を停止するようにすることで、さらに無人期間を短くすることができる。また、新たに対象空間に進入した人から同空間に存在する別の人への有害な微生物やウイルスの感染のリスクを低減することもできる。
また、有人期間において紫外線を照射する期間は、対象空間から人が退出するまでの短期間や、対象空間に人が進入してからの短期間とすることができるので、人への紫外線照射量を抑えつつ、対象空間内における殺菌不活化処理を適切に行うことができる。
【0072】
なお、ここでは対象空間がタクシーの後部空間や映画館の客席空間である場合について具体的に説明したが、不特定人が入れ替わり利用する空間では、同様の効果が得られる。
ここで、対象空間は、上記のタクシーの後部空間や映画館の客席空間の他に、例えば、他の興業場(演劇場、寄席、音楽堂など)、カラオケボックス、漫画喫茶の個室、遊園地のアトラクション(観覧車など)、レンタルオフィス、ホテル、飲食店内の個室や半個室、個室トイレ、学校の教室、講習会場、病院や人間ドックなどの診察室や検査室、観光バス、シャトルバス、飛行機、新幹線、遊覧船などの空間がある。
つまり、対象空間は、不特定人が入れ替わり利用する空間であって、当該空間内に不特定人が存在する有人期間から当該空間内に不特定人が存在しない無人期間に切り替わるタイミングを事前に認識可能な空間であればよい。
【0073】
例えば、カラオケボックスや漫画喫茶の個室の場合、個室利用の終了を告知(表示)する機能と連動したり、個室利用の終了を知らせる電話の呼びだしと連動したりすることで、紫外線の照射を開始することができる。
また、観覧車など、遊園地のアトラクションの場合、運行スケジュールと連動したり、乗り物の最終地点でのドアが開く物理的な行為やドアロックを解除する信号、乗り物の最終地点での停止信号と連動したりすることで、紫外線の照射を開始することができる。
【0074】
さらに、飲食店内の個室や半個室の場合、テーブル近傍に設けられた会計ボタンの操作に連動して、紫外線の照射を開始することができる。
また、個室トイレの場合、使用者が水を流す行為や、便座に設けた圧力センサからの信号と連動することで、紫外線の照射を開始することができる。
また、学校の教室や講習会場の場合、予め設定された授業時間や講演時間などから逆算したタイマー制御によって、紫外線の照射を開始することができる。
また、病院や人間ドックなどの診察室や検査室の場合、患者や被験者の呼び出し放送のタイミングや呼び出し番号の表示灯の点灯操作、医師や検査技師の次患者誘導の合図や診察室または検査室のドア施錠の信号、診察室または検査室のなどの使用中表示灯の点灯消灯信号などによって、紫外線の照射を開始することができる。
【0075】
また、飛行機の場合、着陸時のベルト装着サインや、ドアの開放行為に連動することで、紫外線の照射を開始することができる。
さらに、新幹線などの折り返し運転する車両の場合、進行方向を切り替えるためのスイッチの操作に連動して、紫外線の照射を開始することができる。
なお、紫外線の照射を開始するトリガーは、不活化装置100が自動で検知してもよいし、不活化装置100に人為的に入力されてもよい。
【0076】
図8は、上述した不活化装置100の構成例を示す模式図である。
この図8では、主として紫外線照射部110および制御部120に関する部分を示している。以下、紫外線照射部110および制御部120に関する部分を総称して、紫外線照射ユニット10と称する。
紫外線照射ユニット10は、導電性の金属からなる筐体11と、筐体11内部に収容された紫外線光源12と、を備える。
紫外線光源12は、例えば、中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源12は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、200nm〜240nmの波長範囲にある紫外線を放射する光源であればよい。
【0077】
また、紫外線照射ユニット10は、エキシマランプ12に給電する給電部16と、エキシマランプ12の照射および非照射や、エキシマランプ12から放出される紫外線の光量等を制御する制御部17と、を備える。なお、制御部17は、上述した制御部120に対応しており、上述した各種機能を有する。
エキシマランプ12は、筐体11内において、支持部18によって支持されている。
筐体11には、光出射窓となる開口部11aが形成されている。この開口部11aには窓部材11bが設けられている。窓部材11bは、例えば石英ガラスからなる紫外線透過部材や、不要な光を遮断する光学フィルタ等を含むことができる。
なお、筐体11内には、複数本のエキシマランプ12を配置することもできる。エキシマランプ12の数は特に限定されない。
【0078】
上記光学フィルタとしては、例えば、波長域200nm〜237nmの光を透過し、それ以外のUV−C波長域の光(238nm〜280nmの光)をカットする波長選択フィルタを用いることができる。
ここで、波長選択フィルタとしては、例えば、HfO層およびSiO層による誘電体多層膜フィルタを用いることができる。
なお、波長選択フィルタとしては、SiO層およびAl層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。
このように、光出射窓に光学フィルタを設けることで、エキシマランプ12から人に有害な光が放射されている場合であっても、当該光が筐体11の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0079】
以下、紫外線照射ユニット10における紫外線光源として使用されるエキシマランプ12の構成例について具体的に説明する。
図9(a)は、エキシマランプ12の管軸方向における断面の模式図であり、図9(b)は、図9(a)のA−A断面図である。
この図9(a)および図9(b)に示すように、エキシマランプ12は、両端が気密に封止された長尺な直円管状の放電容器13を備える。放電容器13は、例えば、合成石英ガラスや溶融石英ガラスなどの紫外線を透過する光透過性を有する誘電体材料より構成されている。放電容器13の内部には放電空間が形成されており、この放電空間には、紫外線を発生するバリア放電用ガス(以下、「放電ガス」ともいう。)として希ガスとハロゲンガスとが封入されている。本実施形態では、希ガスとしてクリプトン(Kr)、ハロゲンガスとして塩素ガス(Cl)を用いる。
なお、放電ガスとしては、クリプトン(Kr)と臭素(Br)との混合ガスを用いることもできる。この場合、エキシマランプ(KrBrエキシマランプ)は、中心波長207nmの紫外線を放出する。
【0080】
また、放電容器13内部の放電空間には、第一電極(内部電極)14が配設されている。内部電極14は、例えばタングステンなどの電気導電性および耐熱性を有する金属よりなる金属素線が、放電容器13の内径よりも小さなコイル径によってコイル状に巻回されて形成されてなるコイル状の電極である。この内部電極14は、放電容器13の中心軸(管軸)に沿って伸び、放電容器13の内周面に接触することのないように配設されている。
また、内部電極14の両端の各々には、内部電極用リード部材14aの一端が電気的に接続されている。内部電極用リード部材14aの他端側部分は、各々、放電容器13の外端面から外方に突出している。
【0081】
放電容器13の外周面には、第二電極(外部電極)15が設けられている。外部電極15は、例えばタングステンなどの電気導電性および耐熱性を有する金属よりなる金属素線から構成される網状の電極である。この外部電極15は、放電容器13の外周面に沿って放電容器13の中心軸方向に伸びるように設けられている。図9(a)および図9(b)に示すエキシマランプ12においては、網状電極である外部電極15は、筒状の外形を有しており、放電容器13の外周面に密接した状態で設けられている。
このような構成により、放電空間内において、内部電極14と外部電極15とが放電容器13の管壁(誘電体材料壁)を介して対向する領域に、放電領域が形成される。
【0082】
さらに、外部電極15の一端および一方の内部電極用リード部材14aの他端には、各々、給電線16bを介して給電部16(図8参照)が備える高周波電源16aが接続されている。高周波電源16aは、内部電極14と外部電極15との間に高周波電圧を印加することのできる電源である。
また、外部電極15の他端には、リード線16cの一端が電気的に接続されており、このリード線16cの他端は、接地されている。すなわち、外部電極15は、リード線16cを介して接地されている。なお、この図9(a)および図9(b)に示すエキシマランプ12においては、一方の内部電極用リード部材14aは給電線16bと一体のものとされている。
【0083】
内部電極14と外部電極15との間に高周波電力を印加すると、放電空間において誘電体バリア放電が生じる。この誘電体バリア放電により、放電空間に封入されている放電ガス(バリア放電用ガス)の原子が励起され、励起二量体(エキシプレックス)が生成される。この励起二量体が元の状態(基底状態)に戻るときに、固有の発光(エキシマ発光)が生じる。すなわち、上記放電ガスはエキシマ発光用ガスである。
【0084】
なお、エキシマランプの構成は、図9(a)および図9(b)に示す構成に限定されるものではない。例えば、図10(a)および図10(b)に示すエキシマランプ12Aのように、二重管構造の放電容器13Aを備える構成であってもよい。
このエキシマランプ12Aが備える放電容器13Aは、円筒状の外側管と、外側管の内側において外側管と同軸上に配置され、当該外側管よりも内径が小さい円筒状の内側管と、を有する。外側管と内側管とは、図10(a)の左右方向の端部において封止されており、両者の間には円環状の内部空間が形成されている。そして、この内部空間内に放電ガスが封入されている。
【0085】
内側管の内壁面13aには膜状の第一電極(内側電極)14Aが設けられ、外側管の外壁面13bには網状またはメッシュ状の第二電極(外側電極)15Aが設けられている。そして、内側電極14Aおよび外側電極15Aは、それぞれ給電線16bを介して高周波電源16aと電気的に接続されている。
【0086】
高周波電源16aによって内側電極14Aと外側電極15Aとの間に高周波の交流電圧が印加されることにより、外側管と内側管の管体を介して放電ガスに対して電圧が印加され、放電ガスが封入されている放電空間内で誘電体バリア放電が生じる。これにより放電ガスの原子が励起されて励起二量体が生成され、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0087】
また、エキシマランプの構成は、例えば、図11(a)および図11(b)に示すエキシマランプ12Bのように、放電容器13Bの一方の側面に一対の電極(第一電極14B、第二電極15B)を配置した構成であってもよい。ここでは、一例として、図11(a)のZ方向に2本の放電容器13Bが並べて配置されているものとする。
図11(a)に示すように、第一電極14Bおよび第二電極15Bは、放電容器13Bにおける光取出し面とは反対側の側面(−X方向の面)に、放電容器13Bの管軸方向(Y方向)に互いに離間して配置されている。
そして、放電容器13Bは、これら2つの電極14B、15Bに接触しながら跨るように配置されている。具体的には、2つの電極14B、15BにはそれぞれY方向に延伸する凹溝が形成されており、放電容器13Bは、電極14B、15Bの凹溝に嵌め込まれている。
【0088】
第一電極14Bおよび第二電極15Bは、それぞれ給電線16bを介して高周波電源16aと電気的に接続されている。第一電極14Bと第二電極15Bとの間に高周波の交流電圧が印加されることで、放電容器13Bの内部空間において励起二量体が生成され、エキシマ光がエキシマランプ12Bの光取出し面(+X方向の面)から放射される。
ここで、電極14B、15Bは、エキシマランプ12Bから放射される光に対して反射性を有する金属材料により構成されていてもよい。この場合、放電容器13Bから−X方向に放射された光を反射して+X方向に進行させることができる。電極14B、15Bは、例えばアルミニウム(Al)やステンレスなどから構成することができる。
【0089】
なお、エキシマランプは、上述したように高周波電力が印加されて高周波点灯を行うので、高周波ノイズが発生する。しかしながら、上記のようにエキシマランプを収容する筐体11を導電性の金属によって構成することで、エキシマランプからの高周波ノイズが筐体11外部へ発信されることを抑制することができる。これにより、紫外線照射ユニット10近傍に設置された他の制御システムへの制御指令が、この高周波ノイズによる外乱を受けることを抑制することができ、当該制御指令に不具合が生じないようにすることができる。
【0090】
上記のように、本実施形態における不活化装置100においては、紫外線光源であるエキシマランプとして、波長222nmにピークを有する紫外線を放出するKrClエキシマランプ、または、波長207nmにピークを有する紫外線を放出するKrBrエキシマランプを用いることが好ましい。
KrClエキシマランプから放出される波長222nmの紫外線や、KrBrエキシマランプから放出される波長207nmの紫外線は、いずれも人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うことができる光である。よって、空間内の殺菌・不活化領域に人や動物が存在していても、紫外線照射による殺菌・不活化作業を行うことができる。
【0091】
なお、上記実施形態においては、紫外線光源としてエキシマランプを用いる場合について説明したが、紫外線光源としてLEDを用いることもできる。
図12は、紫外線光源としてLED19を用いた紫外線照射ユニット10の一例である。この図12においては、紫外線照射ユニット10は、複数のLED19を備えている。
【0092】
上記したように、除染(殺菌)用途に使用される紫外線の波長域は、200〜320nmであり、特に効果的な波長は、核酸(DNA、RNA)の吸収が大きい260nm付近である。
よって、紫外線照射ユニット10に搭載される紫外線光源としてのLED19も、波長200〜320nmの紫外線を放出するものが採用される。具体的には、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LED等を採用することができる。AlGaN系LEDは、アルミニウム(Al)の組成を変化させることにより200〜350nmの波長範囲の深紫外域(deepUV:DUV)で発光する。また、AlN系LEDは、ピーク波長210nmの紫外線を放出する。
【0093】
ここで、AlGaN系LEDとしては、中心波長が200〜237nmの範囲内となるようにAlの組成を調整することが好ましい。上記したように、この波長範囲の紫外線であれば、人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を適切に行うことが可能である。例えば、Alの組成を調整することで、放出する紫外線の中心波長が222nmであるAlGaN系LEDとすることも可能である。
【0094】
また、LEDとして酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LEDを採用することもできる。MgZnO系LEDは、マグネシウム(Mg)の組成を変化させることにより190〜380nmの波長範囲の深紫外域(deepUV:DUV)で発光する。
【0095】
ここで、MgZnO系LEDとしては、中心波長が200〜237nmの範囲内となるようにMgの組成を調整することが好ましい。
上記したように、この波長範囲の紫外線であれば、人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を適切に行うことが可能である。例えば、Mgの組成を調整することで、放出する紫外線の中心波長が222nmであるMgZnO系LEDとすることも可能である。
【0096】
ここで、上記のような紫外線(特に深紫外域の紫外線)を放出するLEDは、発光効率が数%以下と低く、発熱が大きい。また、LEDの発熱が大きくなると、当該LEDから放出される光の強度が小さくなり、また放出光の波長シフトも発生する。そのため、LEDの熱上昇を抑制するために、図12に示すように、LED19を冷却部材(例えば、熱を放熱する放熱フィン)20に設置することが好ましい。
このとき、図12に示すように、冷却部材20の一部を紫外線照射ユニット10の筐体11から突出させてもよい。この場合、冷却部材20の一部に外気が当たることになり、冷却部材20の放熱が効率良く進み、結果としてLED19の熱上昇を適切に抑制することができる。
【0097】
なお、上記の中心波長222nmの紫外線を放出するAlGaN系LEDおよびMgZnO系LEDは、中心波長222nmからある程度広がりを有する波長範囲の紫外線を放出し、当該LEDから放出される光には、僅かながら人や動物に安全ではない波長の紫外線も含まれる。そのため、紫外線光源がエキシマランプである場合と同様、波長範囲200〜237nm以外の波長を有するUV−C波長域の光をカットする誘電体多層膜フィルタ(光学フィルタ)を用いることが好ましい。
なお、上記光学フィルタとしては、より好ましくは波長200〜235nm以外の波長を有するUV−C波長域の光をカットするもの、さらに好ましくは200〜230nm以外の波長を有するUV−C波長域の光をカットするものであってもよい。これは光源がエキシマランプの場合でも同様である。
【0098】
ただし、上記の中心波長210nmの紫外線を放出するAlN−LEDは、上記光学フィルタは不要である。
また、紫外線光源がエキシマランプであっても、LEDであっても、当該紫外線光源の光放射面での照度や紫外線光源から紫外線の被照射面までの距離等によっては、被照射面での人や動物に安全ではない波長の紫外線の照度が許容値以下となる場合がある。したがって、このような場合には、上記光学フィルタを設ける必要はない。
【0099】
また、上記実施形態においては、微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光として、200nm〜240nmの波長範囲にある紫外線を用いる場合について説明したが、上記波長範囲外の紫外線を用いてもよい。また、例えば波長405nmの可視光(青色光)を用いることもできる。この場合、上記実施形態における不活化装置(紫外線照射装置)は、中心波長が405nmである光を放出する光源を備える光照射装置となる。
【符号の説明】
【0100】
10…紫外線照射ユニット、11…筐体、12…エキシマランプ、13…放電容器、14…第一電極、15…第二電極、16…給電部、17…制御部、18…支持部、19…LED、20…冷却部材、100…不活化装置、110…紫外線照射部、120…制御部、200…対象空間、300…不特定人、1000…不活化システム
【要約】
【課題】人から人への有害な微生物やウイルスの感染のリスクを低減しつつ、人が入れ替わり利用する空間の利用効率を向上する。
【解決手段】不活化装置は、不特定人が入れ替わり利用する空間内において微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光を放射して、当該空間内に存在する微生物および/またはウイルスを不活化する。この不活化装置は、微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の光を放射する光源を備える光照射ユニットと、光源による光の照射を制御する制御部と、を備える。制御部は、光源を制御して、不特定人が空間内に存在する有人期間から不特定人が空間内に存在しない無人期間に切り替わるタイミングの前に光の照射を開始し、少なくとも無人期間の一部の期間に亘って光を照射する。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12