(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
電離放射線障害防止規則(電離則)では、操作者の身体の一部又は全部に対するX線の誤照射を防止するために、X線検査装置に対してインターロック機構を搭載することを義務付けている(電離則第三章第十七条)。例えば、インターロック機構を備えるX線検査装置として、検査対象物OBを搬入/搬出を行う開閉扉の開閉を検知するスイッチと、このスイッチの検知結果に応じて開閉扉を電気的にロックするロック機構とを備え、開閉扉が完全に閉じている場合に限ってX線の照射を許容するものが知られている。
【0013】
しかしながら、このようなX線検査装置においては、開閉扉の開閉を検知するスイッチや、このスイッチの検知結果に応じて開閉扉を電気的にロックするロック機構などの構成が必要となり、装置の構成が複雑化してしまう。また、スイッチの検知結果に応じてX線照射が開始された後に、誤動作等により開閉扉が開いてしまった場合には、操作者の身体の一部が被曝する事態を適切に回避することが困難である。
【0014】
本発明者らは、電気的に開閉扉をロックすると共に、そのロック状況に応じてX線の照射を許容する方式では、構造の簡素化に限界があり、しかも、ロック機構の誤動作時には更にX線の照射の停止制御が必要になる点に着目した。そして、電気的なロック機構を適用するのではなく、開閉扉が開いた場合にX線の照射を強制的に規制する機構を適用することが、複雑な構成を必要とすることなく、操作者の身体の一部に対するX線の照射の防止に寄与することを見出し、本発明に想到した。
【0015】
すなわち、本発明の骨子は、X線照射装置及びX線受像装置を検査対象物OBを挟んで対向するように筐体に支持するX線検査装置において、筐体に形成された開口部を開閉する開閉機構を具備し、開口部の開放動作に伴ってX線照射装置のX線照射口に対向配置される遮蔽部を開閉機構に設けることである。
【0016】
本発明によれば、開口部の開放動作に伴ってX線照射装置のX線照射口に遮蔽部が対向配置されることから、開口部が開放された状態ではX線照射領域に対するX線の照射が確実に規制される。また、X線照射装置のX線照射口に対向配置することでX線の照射が規制されることから、開閉機構を電気的にロックするような機構を備える必要がない。この結果、複雑な構成を必要とすることなく、操作者の身体の一部に対するX線の照射を確実に防止することができる。
【0017】
以下、本実施の形態に係るX線検査装置の構成について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、本実施の形態に係るX線検査装置の外観を示す斜視図である。
図3及び
図4は、本実施の形態に係るX線検査装置の内部構成を説明するための斜視図である。
図1及び
図3においては、後述する開閉機構3のシャッター部材32を閉じた状態を示し、
図2及び
図4においては、シャッター部材32を開いた状態を示している。以下においては、
図1〜
図4に示す前後方向、左右方向及び上下方向をX線検査装置1の前後方向、左右方向及び上下方向として説明する。また、
図3及び
図4においては、後述するX線照射装置4によるX線の照射領域について、一点鎖線で示している。
図5以降の図においても同様である。
【0018】
図1〜
図4に示すように、X線検査装置1は、筐体2、開閉機構3、X線照射装置(以下、「照射装置」という)4及びX線受像装置(以下、「受像装置」という)5を含んで構成される。筐体2は、本体部21と、本体部21の上方に配置される照射装置収納部22と、本体部21の下方に配置される受像装置収納部23とを有している。例えば、本体部21、照射装置収納部22及び受像装置収納部23は、それぞれ独立して構成され、これらを組み合わせることで筐体2が構成される。なお、筐体2の構成については、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0019】
筐体2の内部には、空間Sが形成されている(
図3及び
図4参照)。空間Sは、本体部21及び照射装置収納部22の内壁面及び受像装置収納部23の上面により規定される。空間Sには、開閉機構3が収容されている。また、空間Sには、X線検査の対象物(検査対象物)OBが配置される(
図5B、
図6B参照)。検査対象物OBは、開閉機構3の下方側に配置される。空間Sを規定する本体部21及び照射装置収納部22の内壁面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0020】
筐体2の本体部21の前面には、開口部21aが形成されている。開口部21aは、本体部21の下方側の大部分であって、幅方向(左右方向)の略全域に亘って形成されている。開口部21aは、筐体2内の空間Sに連通しており、開閉機構3の一部又は検査対象物OBを露出可能に構成されている。X線検査装置1の操作者は、開口部21aを介して開閉機構3を開閉可能に構成されている。開閉機構3を開いた状態において、開口部21aを介して空間S内に検査対象物OBが収容される一方、検査終了後の検査対象物OBが空間Sから取り出される。
【0021】
照射装置収納部22は、本体部21の上面部から上方側に突出して構成される。照射装置収納部22は、本体部21の前後方向の中央より僅かに後方側の位置において、左右方向に延在して設けられている(
図5B参照)。照射装置収納部22の内部には、照射装置4の一部を収納可能な空間(内部空間)22aが形成されている。照射装置収納部22の右側面には、内部空間22aに連通する開口部22bが形成されている。照射装置収納部22は、この開口部22bから内部空間22a内に照射装置4の一部を収納可能に構成されている。筐体2の内部において、照射装置収納部22は、下方側に開口しており、上述した内部空間22aが本体部21内の空間Sに接続されている。
【0022】
受像装置収納部23は、本体部21の下端部に連続して構成される。受像装置収納部23は、扁平な箱形状を有している。受像装置収納部23の内部には、受像装置5を収納可能な空間(内部空間)23aが形成されている(
図5及び
図6参照)。受像装置収納部23の前面には、内部空間23aに連通する開口部23bが形成されている。受像装置収納部23は、この開口部23bから内部空間23a内に受像装置5を収納可能に構成されている。受像装置収納部23の上面には、放射線遮蔽用鉛ガラス(以下、単に「鉛ガラス」という)23cが嵌め込まれている(
図3及び
図4参照)。鉛ガラス23cは、内部空間23aに収納された受像装置5のX線受像パネル51に対向して配置される。鉛ガラス23cは、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0023】
図3及び
図4に示すように、開閉機構3は、一対のレール部材31及びシャッター部材32を含んで構成されている。一対のレール部材31は、前方レール部311、上方レール部312及び後方レール部313を有し、側面視にて、下方側に開口した構成を有している。これらのレール部材31は、例えば、本体部21の左右の側面の内壁面に固定される。それぞれのレール部材31は、本体部21の中心側(言い換えると、他のレール部材31側)に開口した形状を有し、シャッター部材32の左右の側縁部を収容可能に構成される。
【0024】
レール部材31の前方レール部311は、筐体2(本体部21)の前面近傍に配置される。前方レール部311は、本体部21の前面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する。後方レール部313は、本体部21の後面近傍に配置される。後方レール部313は、本体部21の後面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する。上方レール部312は、本体部21の上端部近傍に配置される。上方レール部312は、本体部21の上端部近傍でシャッター部材32を前後方向に案内する。
【0025】
シャッター部材32は、左右方向に延在する複数の板状部材を、その内側部分(開閉機構3の内側に配置される空間S側)で接続して構成されている。シャッター部材32は、X線検査装置1の前後方向又は上下方向に板状部材を並べた構成を有している。シャッター部材32の左右の側縁部は、レール部材31に収容される。シャッター部材32は、レール部材31の形状に沿って前後方向及び上下方向にスライド移動可能に構成されている。なお、シャッター部材32のスライド移動は、X線検査装置1の操作者(検査者)によって行われる。シャッター部材32の内側面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。なお、シャッター部材32は、蛇腹部材と呼ぶこともできる。
【0026】
以下の説明においては、説明の便宜上、レール部材31の前方レール部311側に配置されたシャッター部材32の端部を前端部32aと呼び、後方レール部313側に配置されたシャッター部材32の端部を後端部32bと呼ぶものとする。シャッター部材32の前端部32aを前方レール部311の下端部まで移動させることで、開閉機構3が閉じた状態となる(閉鎖状態:
図1及び
図3参照)。一方、シャッター部材32の後端部32bを後方レール部313の下端部まで移動させることで、開閉機構3が開いた状態となる(完全開放状態:
図2及び
図4参照)。
【0027】
閉鎖状態において、レール部材31の前方レール部311に配置されたシャッター部材32は、本体部21の開口部21aの僅かに内側で本体部21の前面と略平行に配置された状態となり、開口部21aを閉じた状態となる。一方、閉鎖状態から完全開放状態に移行する過程において、シャッター部材32は、開口部21aを開いていく。開閉機構3は、筐体2(本体部21)に形成された開口部21aを開閉する開閉機構として機能する。
【0028】
シャッター部材32の前端部32aの近傍の中央には、把持部32cが設けられている。把持部32cは、シャッター部材32をスライド移動させる際に操作者により把持される部分である。開閉機構3を閉じる際は、把持部32cを持ってシャッター部材32が引き下ろされる。一方、開閉機構3を開く際は、把持部32cを持ってシャッター部材32が引き上げられる。
【0029】
シャッター部材32の後端部32b寄りの中央には、開口部32dが形成されている。開口部32dは、X線透過部の一例を構成する。開口部32dは、シャッター部材32の厚み方向に貫通して形成されている。例えば、開口部32dは、平面視にて、矩形状に形成される(
図5C参照)。詳細について後述するように、開口部32dは、開閉機構3が閉じられた状態(閉鎖状態)において、上方レール部312に対応する位置に配置される。このとき、開口部32dは、後述する照射装置4のX線照射口47に対応する位置に配置される(
図3参照)。一方、開口部32dは、開閉機構3が完全に開いた状態(完全開放状態)において、後方レール部313に対応する位置に配置される(
図4参照)。
【0030】
照射装置4及び受像装置5は、筐体2に着脱可能に構成される。照射装置4は、筐体2の照射装置収納部22に着脱可能に構成される。受像装置5は、筐体2の受像装置収納部23に着脱可能に構成される。照射装置4及び受像装置5は、空間Sに収容された検査対象物OBを挟んで対向するように、筐体2に支持される(
図5B、
図6B参照)。照射装置4が検査対象物OBに対してX線を照射し、受像装置5が検査対象物OBを透過したX線を受像する。
【0031】
ここで、照射装置4及び受像装置5の構成について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5及び
図6は、本実施の形態に係るX線検査装置の正面図(各
図A)、側面図(各
図B)及び平面図(各
図C)である。なお、
図5においては、開閉機構3を閉じた状態(閉鎖状態)を示し、
図6においては、開閉機構3を開いた状態(完全開放状態)を示している。また、
図5B及び
図6Bにおいては、X線検査装置1を右方側から見た側面を示し、説明の便宜上、シャッター部材32を示している。さらに、
図5C及び
図6Cにおいては、説明の便宜上、筐体2の一部(照射装置収納部22)を省略し、レール部材31及びシャッター部材32を示している。
【0032】
図5及び
図6に示すように、照射装置4は、概して円柱形状を有する長尺体で構成されている。照射装置4は、その長手方向が左右方向に沿って延在するように筐体2(照射装置収納部22)に支持される。照射装置4は、照射装置収納部22の内部空間22a内にその一部が挿入される。照射装置4は、その右方側に配置される一端部4aがX線検査装置1の右方側に突出する一方、その左方側に配置される他端部4cが照射装置収納部22の中央付近に配置されている。
【0033】
図5Bに示すように、照射装置4の一端部4aの端面には、電源スイッチ41、電源ソケット42及び通信ソケット43が設けられている。電源スイッチ41は、一端部4aの端面の中央に配置される。電源スイッチ41は、照射装置4のオン/オフ状態を切り換えるためのスイッチである。電源ソケット42及び通信ソケット43は、電源スイッチ41を挟んで対向する位置に配置されている。電源ソケット42は、照射装置4を充電するために電源プラグが挿抜されるソケットである。通信ソケット43は、照射装置4を有線で操作する場合の通信プラグが挿抜されるソケットである。なお、これらの電源プラグや通信プラグが接続されていない状態において、電源ソケット42及び通信ソケット43には、保護キャップが装着されている(
図5B及び
図6Bでは、保護キャップが装着された状態を示している)。
【0034】
照射装置4の一端部4a寄りの周面部には、くびれ部4bが設けられている(
図5A及び
図5C参照)。くびれ部4bは、照射装置4の運搬時や装着時等に操作者が把持する把持部として利用される。くびれ部4bを構成する傾斜面の一部には、指紋リーダ44が設けられている(
図5A参照)。指紋リーダ44は、照射装置4の操作者の指紋情報を取得するために利用される。操作者の指紋情報を取得することで、事前に指紋情報を登録されていない操作者のX線照射指示を制限している。指紋リーダ44は、照射装置4が筐体2(照射装置収納部22)に支持された状態で前方側に向く位置に配置されている。
【0035】
指紋リーダ44の近傍には、一対のLEDランプ45、46が設けられている。LEDランプ45は、電源オン状態と充電状態を示すために色を変えて発光する。例えば、LEDランプ45は、電源オン状態又は充電完了状態では緑色に発光し、充電途中状態ではオレンジ色に発光する。LEDランプ46は、指紋リーダ44による認証結果を示すために色を変えて発光する。例えば、LEDランプ46は、認証結果がNG状態の場合に赤色に発光し、認証結果がOK状態の場合に緑色に発光する。
【0036】
照射装置4の他端部4c寄りの周面部には、概して円形状を有するX線照射口(以下、「照射口」という)47が設けられている(
図5C参照)。照射口47は、照射装置4が筐体2(照射装置収納部22)に支持された状態で下方側(受像装置5側)に向く位置に配置されている。照射口47は、上面視にて、筐体2の中央付近に配置される。開閉機構3が閉じている状態において、照射口47は、シャッター部材32に形成された開口部32dに対応する位置に配置される(
図5C参照)。一方、開閉機構3が開いている状態において、照射口47は、シャッター部材32の一部に対向する位置に配置される(
図6C参照)。この場合、照射口47に対向配置されるシャッター部材32の一部は、X線の照射を規制する遮蔽部を構成する。
【0037】
本実施の形態において、照射口47からのX線の照射角度は、下方側(受像装置5側)に向けて40〜50度に設定されている。このように照射口47からの照射角度を設定することで、X線照射領域が拡大され過ぎず、受像装置5の受像パネル51のX線検出領域にX線を照射することができる。なお、照射口47からのX線の照射角度については、受像装置5までの距離や検査対象物OBの大きさ等に応じて適宜変更が可能である。
【0038】
照射装置4は、X線検査装置1と無線通信可能な外部端末との間で無線通信を行う無線通信部を有している。例えば、照射装置4は、この無線通信部により外部端末からX線の照射指示(X線検査指示)を受信する。外部端末からX線の照射指示を受信すると、照射装置4は、照射口47からX線を照射する。
【0039】
受像装置5は、
図5A及び
図5Bに示すように、筐体2(受像装置収納部23)の前後方向及び左右方向に延在する板状部材で構成される。受像装置5は、その上面(検査対象物OBを挟んで照射装置4と対向する面)にX線受像パネル(以下、「受像パネル」という)51を有している。受像装置5は、照射装置4が照射したX線であって、検査対象物OBを透過したX線を受像パネル51で受像する。
【0040】
受像装置5は、X線検査装置1と無線通信可能な外部端末との間で通信を行うための構成や装置自体を充電するための構成を備えている。図示は省略するが、例えば、受像装置5には、X線画像情報を外部端末との間で有線通信を行う際にPCケーブルを差し込むためのケーブル差込部や、電源プラグを差し込むための電源ソケット等が設けられる。また、受像装置5は、外部端末からX線の受像指示(X線検査指示)を受信し、或いは、受像したX線画像情報を外部端末に送信する無線通信部を有する。受像装置5から無線通信されたX線画像情報は、外部端末が有するモニタ等に表示される。
【0041】
このような構成を有し、X線検査装置1では、X線検査装置1と無線通信可能な外部端末からのX線検査指示に応じてX線の照射及び受像を行う一方、受像したX線画像情報を外部端末に送信する。外部端末でこのX線画像情報を表示(或いは、画像解析して表示)することにより、検査対象物OBが危険物や不審物であるかを判定することができる。なお、X線検査装置1と無線通信を行う外部端末としては、例えば、ノートPCやタブレットを採用することができるが、これに限定されない。X線検査装置1と無線通信を行うことを前提として、スマートフォン等の携帯端末を含む任意の装置を採用することができる。
【0042】
以下、本実施の形態に係るX線検査装置1において、検査対象物OBに対してX線検査を行う場合の態様について、
図3〜
図6を参照して説明する。X線検査装置1を用いてX線検査を行う場合、
図1及び
図3に示す閉鎖状態からシャッター部材32が引き上げられ、
図4及び
図6に示すように、開閉機構3が開放状態(完全開放状態)とされる。開閉機構3が開放状態とされることで、筐体2(本体部21)の開口部21aを介して空間Sが露出する。これにより、空間S内のX線照射領域内に検査対象物OBを収容することができる。検査対象物OBは、受像装置収納部23の上面に配置された鉛ガラス23c上に配置することで、X線照射領域内に配置される。
【0043】
開閉機構3が閉鎖状態である場合には、上述したように、照射装置4の照射口47の下方には、シャッター部材32に形成された開口部32dが配置されている。閉鎖状態からシャッター部材32が引き上げられると、照射装置4の照射口47の下方には、シャッター部材32の一部が対向して配置された状態となる。開口部32dは、
図3及び
図5に示すように、照射装置4から照射されたX線が透過する最小限の範囲に形成されている。このため、シャッター部材32が引き上げられると、その直後に照射口47の下方にシャッター部材32の一部が対向配置される。上述したように、シャッター部材32の内側面には、シールドシート部材が貼付されている。このため、外部端末に対する誤操作や照射装置4の誤動作に起因してX線が照射されたとしても、シールドシート部材で規制されるので、空間S内にX線が照射されることはない。したがって、検査対象物OBを空間Sに収容する過程で操作者の一部にX線が照射される事態を確実に防止することができる。
【0044】
空間S内に検査対象物OBが収容された後、シャッター部材32が引き下ろされ、
図3及び
図5に示すように、開閉機構3が閉鎖状態とされる。開閉機構3が閉鎖状態とされることで、照射装置4の照射口47の下方には、シャッター部材32に形成された開口部32dが配置される。このため、外部端末からの照射指示に応じてX線が照射されると、X線は、開口部32dを通過(透過)して検査対象物OBに照射される。受像装置5は、検査対象物OBを透過したX線を受像する。受像装置5で受像したX線画像情報を外部端末で表示することにより、検査対象物OBが危険物や不審物であるかが判定される。
【0045】
X線検査を終了した後、検査対象物OBを取り出す際には、閉鎖状態からシャッター部材32が引き上げられ、開閉機構3が開放状態とされる。この場合にも、照射装置4の照射口47の下方には、シャッター部材32の一部が対向して配置された状態となる。このため、検査対象物OBを取り出す際においても、外部端末に対する誤操作や照射装置4の誤動作に起因してX線が照射されたとしても、シールドシート部材で規制されるので、空間S内にX線が照射されることはない。
【0046】
このように本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、筐体2(本体部21)の開口部21aの開放動作に伴って照射口47にシャッター部材32の一部が対向配置されることから、開口部21aが開放された状態ではX線照射領域に対するX線の照射が確実に規制される。また、X線照射口47に対向配置することでX線の照射が規制されることから、開閉機構3を電気的にロックするような機構を備える必要がない。この結果、複雑な構成を必要とすることなく、操作者の身体の一部に対するX線の照射を確実に防止することができる。
【0047】
特に、開閉機構3は、シャッター部材32と、シャッター部材32をスライド移動させるレール部材31とを有し、シャッター部材32の一部で空間S内に対するX線の照射を規制する遮蔽部を構成している。このように開閉機構3を構成するシャッター部材32の一部でX線の照射が規制されることから、照射装置4からのX線の照射を規制するための特別な構成を必要とすることなく、開口部21aの開放動作に伴って簡単にX線の照射を規制することができる。
【0048】
また、シャッター部材32には、筐体2の開口部21aが閉鎖された場合に照射口47に対応する位置に配置される開口部32d(X線透過部)が形成されている。このため、開口部21aが閉鎖状態とされると、照射装置4からのX線の照射が許容される。このため、複雑な構成を必要とすることなく、筐体2内の検査対象物OBにX線を照射することができる。なお、本実施の形態では、X線透過部の一例として開口部32dを示しているが、これに限定されない。照射装置4から照射されるX線を透過することを条件として任意の構成を適用することができる。
【0049】
さらに、X線検査装置1においては、検査対象物OBを挟んで照射装置4が上方側に配置される一方、受像装置5が下方側に配置されている。レール部材31は、筐体2の前面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する前方レール部311と、筐体2の後面近傍でシャッター部材32を上下方向に案内する後方レール部313と、前方レール部311と後方レール部313とを連結し、筐体2の上端部近傍でシャッター部材32を前後方向に案内する上方レール部312とを有している。そして、開口部21aが閉鎖状態とされた場合に、上方レール部312に対応する位置で開口部32dが照射口47に対応する位置に配置されている。このため、照射装置4の近傍にてX線を検査対象物OB側に透過させることができるので、開口部32dの開口面積(透過面積)を縮小することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態においては、開閉機構3として、一対のレール部材31及びシャッター部材32を備え、レール部材31に沿ってシャッター部材32をスライド移動させる場合について説明している。しかしながら、開閉機構の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、筐体2の一部に開閉機構を組み込んだ構成としてもよい。
【0052】
図7及び
図8は、本実施の形態の変形例に係るX線検査装置10の正面図(各
図A)、側面図(各
図B)及び平面図(各
図C)である。なお、
図7においては、開閉機構を閉じた状態(閉鎖状態)を示し、
図8においては、開閉機構を開いた状態(完全開放状態)を示している。また、
図7B及び
図8Bにおいては、X線検査装置10を右方側から見た側面を示し、説明の便宜上、開閉機構6のリンク機構62及び遮蔽板63を示している。さらに、
図7C及び
図8Cにおいては、説明の便宜上、筐体2の一部(照射装置収納部22)を省略し、開閉機構6の遮蔽板63を示している。なお、
図7及び
図8において、上記実施の形態と共通の構成については、同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0053】
図7及び
図8に示すように、変形例に係るX線検査装置10は、筐体2の本体部21の前面に扉部を有する開閉機構6を備えている。開閉機構6は、一対の扉部61と、リンク機構62と、遮蔽部材の一例である遮蔽板63とを含んで構成されている。X線検査装置10において、操作者が扉部61を開閉することにより、その開閉動作にリンク機構62が連動し、遮蔽板63が前後方向にスライド移動するように構成されている。
【0054】
扉部61は、本体部21の前面の一部に設けられている。扉部61は、上側扉部61a及び下側扉部61bを有している。上側扉部61aは、その上端部で本体部21の前面の一部に回動可能に固定されている。上側扉部61aは、本体部21に固定された部分を支点として、その下端部が前方側に回動可能に構成される。下側扉部61bは、その下端部で本体部21の前面の一部に回動可能に固定されている。下側扉部61bは、本体部21に固定された部分を支点として、その上端部が前方側に回動可能に構成される。すなわち、上側扉部61aは上方側に開き、下側扉部61bは下方側に開く。これにより、筐体2(本体部21)の前面に形成された開口部21aが開口する。なお、扉部61の内壁面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0055】
下側扉部61bの前面であって、上端部近傍には、把持部61cが設けられている。把持部61cは、操作者が扉部61(下側扉部61b)を開閉する際に利用される。また、上側扉部61aの先端部(開閉機構6が閉じた状態における下端部)には、係合片61dが設けられている(
図8B参照)。係合片61dは、上側扉部61aと同様の幅寸法を有している。係合片61dは、開閉機構6が閉じた状態において、下側扉部61bの内側面側に配置される。係合片61dは、下側扉部61bの内側面に係合し、上側扉部61aのみが独立して開くのを規制する。また、係合片61dは、上側扉部61aと下側扉部61bとの隙間からX線が漏洩するのを防止する。
【0056】
リンク機構62は、メインリンク62a、上側リンク62b、下側リンク62c及びアーム62dを有している。これらのメインリンク62a、上側リンク62b、下側リンク62c及びアーム62dは、本体部21の左右の内壁面近傍にそれぞれ一対ずつ配置されている。これらのメインリンク62a、上側リンク62b、下側リンク62c及びアーム62dは、正面視にて筐体2の中央を垂直に通過する仮想平面で対称に配置されている。
【0057】
メインリンク62aは、本体部21内で概して上下方向に延在して配置されている。メインリンク62aの上端部は、本体部21の上端部近傍に配置され、その下端部は、本体部21の中央部近傍に配置される。メインリンク62aは、上下方向の中央近傍にて、本体部21の内壁面に支持されている。メインリンク62aは、本体部21の内壁面に固定されたT字状の固定部材62eを介して本体部21の内壁面に支持される。メインリンク62aは、固定部材62eによる支持点を支点として僅かに回動可能に支持される。
【0058】
上側リンク62bは、上側扉部61aの背面(内側面)とメインリンク62aの下端部とを連結する。下側リンク62cは、下側扉部61bの背面(内側面)とメインリンク62aの下端部とを連結する。アーム62dは、本体部21内で前後方向に延在して配置される。アーム62dの後端部は、メインリンク62aの下端部に連結され、アーム62dの前端部は、自由端を構成し、下側扉部61bの背面に接触可能に配置されている。アーム62dの前端部は、下側扉部61bの左右の側端部近傍でその背面に接触する。
【0059】
遮蔽板63は、平面視にて、矩形状の板状部材で構成される(
図7C参照)。遮蔽板63は、図示しないレール機構により、筐体2の前後方向にスライド移動可能に構成される。遮蔽板63の下面の前端部は、メインリンク62aの上端部に連結されている。遮蔽板63は、メインリンク62aの回動に伴い、筐体2の前後方向にスライド移動可能に構成される。遮蔽板63は、扉部61が開いた状態(開放状態)において、照射装置4の照射口47に対向する位置に配置される(
図8B及び
図8C参照)。一方、遮蔽板63は、扉部61が閉じた状態(閉鎖状態)において、照射口47よりも前方側の位置に配置される(
図7B及び
図7C参照)。遮蔽板63の外側面又は内側面には、鉛又はタングステン合金等で構成されるシールドシート部材が貼付されている。シールドシート部材は、X線検査時におけるX線の漏洩を防止する。
【0060】
以下、変形例に係るX線検査装置10において、検査対象物OBに対してX線検査を行う場合の態様について、
図7及び
図8を参照して説明する。X線検査装置10を用いてX線検査を行う場合、
図7に示す閉鎖状態から扉部61が開放される。この場合、扉部61は、把持部61cを利用して下側扉部61bが開放された後、上側扉部61aが開放される。扉部61が開放状態とされることで、筐体2(本体部21)内の空間Sが露出する。これにより、空間S内のX線照射領域内に検査対象物OBを収容することができる。検査対象物OBは、受像装置収納部23の上面に配置された鉛ガラス23c上に配置することで、X線照射領域内に配置される。
【0061】
閉鎖状態から上側扉部61a、下側扉部61bが開放されると、その開放動作に伴って上側リンク62b及び下側リンク62cが前方側に移動する。これらの上側リンク62b及び下側リンク62cの前方移動に伴ってメインリンク62aの下端部が前方側に引き出される。メインリンク62aの下端部の前方移動に伴い、アーム62dが前方側に移動すると共に、メインリンク62aが固定部材62eの支持点を支点として時計回転方向に回転する。これにより、メインリンク62aの上端部に固定された遮蔽板63が後方側にスライド移動する。このとき、遮蔽板63は、照射装置4の照射口47の下方に移動し、その一部が照射口47に対向して配置された状態となる。
【0062】
上述したように、遮蔽板63の外側面又は内側面には、シールドシート部材が貼付されている。このため、外部端末に対する誤操作や照射装置4の誤動作に起因してX線が照射されたとしても、シールドシート部材で規制されるので、空間S内にX線が照射されることはない。したがって、検査対象物OBを空間Sに収容する過程で操作者の一部にX線が照射される事態を確実に防止することができる。
【0063】
空間S内に検査対象物OBが収容された後、
図7に示すように、扉部61が閉じられ、本体部21が閉鎖状態とされる。開放状態から上側扉部61a、下側扉部61bが閉鎖されると、その閉鎖動作に伴って上側リンク62b及び下側リンク62cが後方側に移動する。これらの上側リンク62b及び下側リンク62cの後方移動に伴ってメインリンク62aの下端部が後方側に押し込まれる。メインリンク62aの下端部の後方移動に伴い、アーム62dが後方側に移動すると共に、メインリンク62aが固定部材62eの支持点を支点として反時計回転方向に回転する。これにより、メインリンク62aの上端部に固定された遮蔽板63が前方側にスライド移動する。このとき、遮蔽板63は、照射装置4の照射口47の下方側から前方側に移動し、照射口47から退避した状態となる。このため、外部端末からの照射指示に応じてX線が照射されると、X線は、検査対象物OBに照射される。受像装置5は、検査対象物OBを透過したX線を受像する。受像装置5で受像したX線画像情報を外部端末で表示することにより、検査対象物OBが危険物や不審物であるかが判定される。
【0064】
X線検査を終了した後、検査対象物OBを取り出す際には、閉鎖状態から扉部61が開放される。この場合にも、照射装置4の照射口47の下方には、遮蔽板63の一部が対向して配置された状態となる。このため、検査対象物OBを取り出す際においても、外部端末に対する誤操作や照射装置4の誤動作に起因してX線が照射されたとしても、シールドシート部材で規制されるので、空間S内にX線が照射されることはない。
【0065】
このように変形例に係るX線検査装置10によれば、扉部61による筐体2(本体部21)の開口部21aの開放動作に伴ってX線照射口47に遮蔽板63の一部が対向配置されることから、開口部21aが開放された状態ではX線照射領域に対するX線の照射が確実に規制される。また、X線照射口47に対向配置することでX線の照射が規制されることから、開閉機構6(扉部61)を電気的にロックするような機構を備える必要がない。この結果、複雑な構成を必要とすることなく、操作者の身体の一部に対するX線の照射を確実に防止することができる。
【0066】
特に、開閉機構6は、筐体2(本体部21)の一部を構成する扉部61と、扉部61に一端が連結されたリンク機構62と、リンク機構62の他端に連結された遮蔽板63とを有し、遮蔽板63の一部で空間S内に対するX線の照射を規制する遮蔽部を構成している。このようにリンク機構62を介して扉部61に連結された遮蔽板63の一部で遮蔽部が構成されることから、開口部21aの開放動作に伴って簡単にX線の照射を規制することができる。
【0067】
また、上記実施の形態に係るX線検査装置1において、空間S内に収容された検査対象物OBを装置外部から視認可能な構成とすることは、適正なX線検査を実施する上で好ましい。
図9は、本実施の形態の変形例に係るX線検査装置11の正面図(
図9A)及び背面図(
図9B)である。
図9において、
図3と共通の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
図9A及び
図9Bに示すように、変形例に係るX線検査装置11は、筐体2(本体部21)の後面の一部にガラス面部21bが設けられる点で、上記実施の形態に係るX線検査装置1と相違する。
【0068】
ガラス面部21bは、本体部21の後面に形成された開口部に鉛ガラスを嵌め込むことで構成される。ガラス面部21bは、本体部21の後面の下方側の一部に配置されている。より具体的には、ガラス面部21bは、X線検査装置11の後方側から見て、空間S内に収容された検査対象物OBに対応する位置に配置されている。このように本体部21内の検査対象物OBに対応する一部にガラス面部21bを設けたことから、筐体2内に検査対象物OBを収容する作業や、X線検査中の検査対象物OBの様子を視認させることができる。このため、例えば、検査対象物OBの所有者におけるX線検査時の不安を解消することができる。
【0069】
なお、ここでは、ガラス面部21bを本体部21の後面に設ける場合について説明している。しかしながら、ガラス面部21bの配置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。筐体2(本体部21)の外面(例えば、側面)の一部にガラス面部21bを設ける構成としてもよい。
【0070】
さらに、上記実施の形態に係るX線検査装置1において、可搬性(運搬性)の向上に寄与する構成を追加することは、早期のX線検査を実施する上で好ましい。
図10は、本実施の形態の変形例に係るX線検査装置12の側面図である。
図10において、
図3と共通の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
図10A及び
図10Bに示すように、変形例に係るX線検査装置12は、筐体2(本体部21)の後面の下端部に運搬用の車輪21cが設けられる点、並びに、筐体2(本体部21)の後面にハンドル部21dが設けられる点で上記実施の形態に係るX線検査装置1と相違する。
【0071】
車輪21cは、筐体2(受像装置収納部23)の後面の下端部において、左右方向の端部にそれぞれ設けられている。車輪21cの後方側の外周面の一部は、受像装置収納部23の後面よりも外側(後方側)に突出して配置されている。一方、車輪21cの下方側の外周面の一部は、受像装置収納部23の下面よりも内側(上方側)に配置されている。このように車輪21cを配置することにより、筐体2の上方部を後方側に傾けることで、車輪21cを利用して簡単にX線検査装置12を運搬することができる。また、車輪21cの下方側の一部を、筐体2の下面より内側に配置したことから、傾けた状態から筐体2を戻した際に車輪21cがX線検査装置12の設置面に接触することがない。このため、X線検査装置12を安定して設置面に設置することができる。
【0072】
ハンドル部21dは、筐体2(本体部21)の後面の左右方向の中央近傍に設けられている。ハンドル部21dは、
図10A及び
図10Bに示すように、上下方向に伸縮可能に構成されている。ハンドル部21dは、車輪21cを利用したX線検査装置12の運搬時に伸ばして利用される(
図10A)。このようにハンドル部21dを設けることにより、筐体2を簡単に後方側に傾けると共に、車輪21cを利用して簡単にX線検査装置12を運搬することができる。
【0073】
なお、ここでは、筐体2の後面に車輪21c及びハンドル部21dを備える場合について説明している。しかしながら、これらの構成要素の配置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。X線検査装置12の可搬性を高めることを前提として、車輪21c及びハンドル部21dは、筐体2のいずれの方向に配置してもよい。例えば、筐体2(受像装置収納部23)の前面の下端部に車輪21cを設け、筐体2(本体部21)の前面に伸縮可能なハンドル部21dを設ける構成とすることができる。