(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項15〜17のいずれか1項に記載の製品の製造方法であって、製品原料、又は中間製品に請求項1〜14のいずれか1項に記載の覚醒感付与香料を添加する工程を含む製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のコーヒーに代表されるように、覚醒作用を有する製品は常に消費者に求められている。
本発明は、覚醒感付与香料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述のように、通常、コーヒーの芳香は、消費者にリラックス感を与える。
通常、リラックス効果は、覚醒効果とは逆の効果として理解される。
しかし、本発明者らは、覚醒感を与える香料化合物を探索する中で、驚くべきことに、コーヒーの芳香中に、覚醒感を与える複数の香料化合物が存在することを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の態様を含む。
【0007】
項1.
化合物群Aより選択される1種以上の化合物を含有する覚醒感付与香料。
<化合物群A>
2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−アセチル−3−メチルピラジン、マルトール、フラネオール、アセトイン、2−アセチルピロール、グアヤコール、4−ビニルグアヤコール、2−メチルブタナール、カフェオフラン、4−エチルグアヤコール、フェニル酢酸、及びアセトール。
項2.
更にイソ吉草酸を含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、イソ吉草酸の100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項3.
更にバニリンを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、バニリンの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項4.
更にヘキサノールを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、ヘキサノールの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項5.
更にリナロールを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、リナロールの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項6.
更にエチルアセテートを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、エチルアセテートの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項7.
更にアセトアルデヒドを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、アセトアルデヒドの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項8.
更にベンジルアルコールを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、ベンジルアルコールの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項9.
更にフルフラールを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、フルフラールの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項10.
更にオクタナールを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、オクタナールの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項11.
更にδ−デカラクトンを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、δ−デカラクトンの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項12.
更にリモネンを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、リモネンの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項13.
更にエチルブチレートを含有する覚醒感付与香料であって、
化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量が、エチルブチレートの100質量部に対して、0.001〜10000質量部の範囲内である項1に記載の覚醒感付与香料。
項14.
覚醒感付与剤である項1〜13のいずれか1項に記載の覚醒感付与香料。
項15.
項1〜14のいずれか1項に記載の覚醒感付与香料を含有する製品。
項16.
覚醒感付与製品である項15に記載の製品。
項17.
食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、及び飼料、或いはそれらの原料又は中間製品である、項16に記載の製品。
項18.
項15〜17のいずれか1項に記載の製品の製造方法であって、製品原料、又は中間製品に項1〜14のいずれか1項に記載の覚醒感付与香料を添加する工程を含む製造方法。
項19.
製品に覚醒感を付与する方法であって、製品に項1〜14のいずれか1項に記載の覚醒感付与香料を添加する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、覚醒感付与香料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味する。
【0010】
確認的に記載するに過ぎないが、本発明において、化合物群Aの化合物を包含する化合物は、その名称で表される狭義の形態に限られず、それらがとり得る、フリー体、塩、溶媒和物(例:水和物)、及びイオン等の任意の形態を有していてもよい。
【0011】
本明細書中、「覚醒感付与香料」とは、当該香料の使用者(又は消費者)に覚醒感を与える(又は、感じさせる)香料を意味する。
【0012】
本発明の覚醒感付与香料は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に基づき、これを含有する製品に、覚醒感を付与ができる。
本明細書中、覚醒感付与香料とは、これが添加された製品に、当該製品の使用者(又は消費者)に覚醒感を感じさせる作用を付与する香料を意味することができる。
【0013】
通常、理解される通り、覚醒感付与香料の使用は、製品(当該製品は、通常、当該香料以外の製品であることができる。)への当該香料の添加を包含する。
また、通常、理解される通り、覚醒感付与香料を添加された製品の使用は、同時に覚醒感付与香料の使用でもあることができる。
【0014】
本明細書中、用語「使用者」は、覚醒感を得ることを意図する使用者のみならず、覚醒感を得ることを意図しない使用者もまた包含できる。
【0015】
覚醒感付与香料
本発明の覚醒感付与香料は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物を含有する。
化合物群Aは、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−アセチル−3−メチルピラジン、マルトール、フラネオール、アセトイン、2−アセチルピロール、グアヤコール、4−ビニルグアヤコール、2−メチルブタナール、カフェオフラン、4−エチルグアヤコール、フェニル酢酸、及びアセトールからなる。
【0016】
本発明の覚醒感付与香料は、当該化合物群Aより選択される1種以上の化合物を含有する組成物であってもよく、或いは当該化合物群Aより選択される1種以上の化合物からなることもできる。
【0017】
本発明の覚醒感付与香料が、当該化合物群Aより選択される1種以上の化合物を含有する組成物である場合、その含有量(総量)は、例えば、0.000001〜99.9質量%、好ましくは、0.00001〜50質量%、更により好ましくは、0.0001〜10質量%の範囲内であることができる。
【0018】
本発明の覚醒感付与香料が、当該化合物群Aより選択される1種以上の化合物を含有する組成物である場合、その個別の含有量は、例えば、0.0000001〜99.9質量%、好ましくは、0.000001〜50質量%、更により好ましくは0.00001〜10質量%の範囲内であることができる。
【0019】
本発明の覚醒感付与香料は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、化合物群Aより選択される1種以上の化合物以外の香料物質(単に、他の香料物質と称する場合がある。)を含有してもよい。
当該他の香料物質としては、例えば、「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料(平成12年1月14日発行)」に記載された、天然香料、及び合成香料などを挙げることができる。
当該香料物質であることができる香料化合物の具体例としては、例えば、
1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、3−カレン、p−サイメン、α−テルピネン、α−ビサボレン、α−ピネン、β−ピネン、α−フェランドレン、α−フムレン、β−カリオフィレン、β−ビサボレン、β−ファルネッセン、γ−テルピネン、カンフェン、サビネン、cis−オシメン、テルピノーレン、バレンセン、ミルセン、及びリモネンなどの炭化水素類;
1−オクテン−3−オール、1−ペンテン−3−オール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、cis−3−trans−6−ノナジエノール、cis−3−ノネノール、cis−3−ペンテノール、カルベオール、クミンアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、ジヒドロシンナミックアルコール、テルピネン−4−オール、メントール、リナロール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、ヘキサノール、2,4−ヘキサジオン−1−オール、及び2,4−ノナジエン−1−オールなどのアルコール類;
オイゲノール、チモール、バニリン、フェノール、p−クレゾール、4−アリル−2,6−ジメトキシフェノール、4−エチル−2,6−ジメトキシフェノール、フェノール、及び4−エチルフェノールなどのフェノール類;
(E,Z)−2,4−ヘプタジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ノナジエナール、3,6−ノナジエナール、アセトアルデヒド、イソブタナール、オクタナール、cis−3−ノネナール、cis−3−ヘキセナール、デカナール、ドデカナール、trans−2−ヘキセナール、オクタナール、ブタナール、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ペリラアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−メチル−2−ピロールカルボクスアルデヒド、3−メチルブタナール、ピロール−2−カルボクスアルデヒド、及びフェニルアセトアルデヒドなどのアルデヒド類;
1−オクテン−3−オン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、イソマルトール、イオノン、ダマスコン、ダマセノン、プレゴン、カルボン、カンファー、trans−ジヒドロカルボン、ピペリトン、メントン、アセトフェノン、イソホロン、ヌートカトン、シクロテン、コロノール、2,3−ヘキサンジオン、及びジアセチルなどのケトン類;
カリオフィレンオキサイド、trans−リナロールオキサイド、ローズオキサイド、1,4−シネオール、1,8−シネオール、trans−リモネンオキサイド、アネトール、エチルバニリン、及びシトラールDEAなどのエーテル類;
エチル3−メチルブタノエート、エチル2−メチルブタノエート、エチルブチレート、エチルイソバレレート、エチルカプロエート、cis−3−ヘキセニルアセテート、オイゲニルアセテート、カルビルアセテート、ゲラニルアセテート、シトロネリルアセテート、テルピニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、シンナミルアセテート、メチルサリシレート、メチルシンナメート、フルフリルプロピオネート、及びエチルアセテートなどのエステル類;
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、及びデカン酸などの脂肪酸類;
3−ブチルフタリド、7−ハイドロキシクマリン、γ−ブチロラクトン、γ−デカラクトン、スクラレオライド、及びδ−デカラクトンなどのラクトン類;
フルフリルアルコール、5−(ハイドロキシメチル)フルフラール、5−メチル−2−フルフラール、フルフラール、2−アセチルフラン、及びフルフリルアセテートなどのフラン化合物;
2(3H)−フラノン、2(5H)−フラノン、ソトロン、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オンなどのフラノン類;
N,N−ジメチルエチルアミン、インドール、ピリジン、3−エチルピリジン、2−アセチルピリジン、2−エチル−3,5(6)−ジメチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−アセチルピラジン、1−フルフリルピロール、3−メルカプト−3−メチルブタノール、1−メチル−1H−ピロール、及びピロールなどの含窒素化合物類;
ジメチルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルスルフィド、チオゲラニオール、p−メンチル−8−チオール、2,4,5−トリメチルチアゾール、2−アセチルチアゾール、3−メチルチオプロパノール、2−アセチルチアゾリン、4−メチル−5−(2−ヒドロキシエチル)チアゾリジン、フルフリルチオール、及びフルフリルメチルスルフィドなどの含硫化合物類;などを挙げることができる。
【0020】
本発明の覚醒感付与香料は、更にイソ吉草酸を含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、イソ吉草酸の100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0021】
本発明の覚醒感付与香料は、更にバニリンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、バニリンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0022】
本発明の覚醒感付与香料は、更にヘキサノールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、ヘキサノールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0023】
本発明の覚醒感付与香料は、更にリナロールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、リナロールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0024】
本発明の覚醒感付与香料は、更にエチルアセテートを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、エチルアセテートの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0025】
本発明の覚醒感付与香料は、更にアセトアルデヒドを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、アセトアルデヒドの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0026】
本発明の覚醒感付与香料は、更にベンジルアルコールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、ベンジルアルコールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0027】
本発明の覚醒感付与香料は、更にフルフラールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、フルフラールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0028】
本発明の覚醒感付与香料は、更にオクタナールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、オクタナールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0029】
本発明の覚醒感付与香料は、更にδ−デカラクトンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、δ−デカラクトンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0030】
本発明の覚醒感付与香料は、更にリモネンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、リモネンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0031】
本発明の覚醒感付与香料は、更にエチルブチレートを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、エチルブチレートの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0032】
本発明の覚醒感付与香料は、また、抗疲労作用、眠気防止作用、精神機能向上作用、認知機能向上作用、及び交感神経興奮様作用からなる群から選択される1種以上の作用を与えることができる。
これらの作用は、相互に、関連すること、又は共通することができる。
すなわち、広義の覚醒感付与作用(覚醒作用)は、これらを包含することができる。
また、狭義の覚醒感付与作用(覚醒作用)は、これらと並列の関係にあることができる。
本明細書中、「覚醒感」は、文脈に応じて、広義、又は狭義に解釈され得るが、特に限定されない場合、広義に解釈され得る。
本明細書中、「覚醒感」は、主観的、又は客観的に、「体の活性化」、「活力が出ること」、「元気になること」、「疲労感が減ること」、「シャキッとすること(feeling refreshed)」、「力がみなぎること」、又は「頭が冴えること」、或いはこれらの組合せとして、認識され得る。
【0033】
覚醒感付与作用は、官能評価によって評価できる。具体的には、覚醒感付与作用は、本願明細書の実施例に記載する官能評価方法に従って評価できる。
更に、覚醒感付与作用は、公知の方法(例えば、臨床脳波、vol. 44, No. 2, 2002)により、客観的に評価できる。
具体的には、被験者の頭蓋外から近赤外線(NIRS)を照射する光トポグラフィー法により、左脳脳血流の増加に比較して、右脳における脳血流の増加が多い場合、被験者が覚醒感を感じたと判断される。より具体的には、本願明細書の実施例における「光トポグラフィー法による覚醒感付与作用の評価」に記載した評価方法に従って評価できる。
【0034】
化合物群Aの各化合物は、このような作用を与える有効成分であることができる。
【0035】
本発明の覚醒感付与香料は、所望により、化合物群Aから選択される1種以上の化合物に加えて、その他の成分を含有してもよい。
当該その他の成分の例は、(1)その他の香料物質(例:その他の香料物質として前記した香料物質)、及び(2)香料物質以外の成分(例:香料に通常使用され得る溶媒又は分散媒、乳化香料に通常使用される乳化剤又は分散剤及び油脂、また、粉末香料に通常使用される賦形剤など)が例示される。
溶媒又は分散媒としては、水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の単独又は混合物が例示される。乳化剤又は分散剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、キラヤサポニン、アラビアガム、ガティガムなどが例示される。油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが例示される。また、賦形剤としては、デキストリンなどが例示される。
【0036】
覚醒感付与香料の製造方法
本発明の覚醒感付与香料は、通常の香料の製造方法により製造できる。
例えば、化合物群Aから選択される1種以上の化合物、及びその他の1種又は2種以上の成分を、慣用の混合手段により混合することにより製造できる。
化合物群Aの化合物は、公知の化合物である。化合物群Aの化合物は、公知の製造方法で製造できるか、或いは商業的に入手可能である。
【0037】
例えば、化合物群Aの化合物(又はその2種以上の組合せ)は、焙煎したコーヒー豆、又はその抽出液(すなわち、コーヒー)から、慣用の方法で抽出、又は精製することによって製造できる。
これから理解される通り、本発明の香料は、焙煎したコーヒー豆、又はその抽出液(すなわち、コーヒー)から、慣用の方法(例:水蒸気蒸留法)で抽出、又は精製することによって製造できる。
【0038】
覚醒感付与香料を含有する製品
本発明はまた、本発明の覚醒感付与香料を含有する製品を提供する。
当該製品は、本発明の覚醒感付与香料の作用によって、使用者(又は消費者)に覚醒感を与えることができる。ここで、用語「使用者」は、当該製品を意図的に使用する者のみならず、意図せずに使用する者も包含する。
すなわち、当該本発明の製品は、覚醒感付与製品であることができる。確認的に記載するに過ぎないが、当該本発明の覚醒感付与製品は、覚醒感付与以外の機能を有する製品であることができる。ここで、覚醒感付与は、当該製品の主要な一機能であることもでき、又は主要ではない一機能であることもできる。
当該製品の種類は、特に限定されず、使用者(又は消費者)が当該製品により覚醒感を感じることが好ましい、任意の製品であることができる。
このような製品として、好ましくは、使用者(又は消費者)が、その香り又は匂いを嗅ぐ機会がある製品である。
【0039】
別の観点では、このような製品として、好ましくは、経口摂取される製品である。
本発明の覚醒感付与香料を含有する製品としては、例えば、食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、及び飼料、並びにそれらの原料又は中間製品が例示される。
なかでも、食品が好ましい。
【0040】
本明細書中、「食品」とは、人の消費を意図して、加工され、準加工され、又はそのままの、あらゆる物質を意味する。
本明細書中、「食品」は、狭義に理解され得る食品に加えて、飲料、チュウインガム、及び食品の製造、調製、又は処理に用いられた全ての物質を包含する。
本明細書中、「食品」は、健康食品、機能性表示食品、及び特定保健用食品を包含する。
【0041】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にイソ吉草酸を含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、イソ吉草酸の100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0042】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にバニリンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、バニリンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0043】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にヘキサノールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、ヘキサノールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0044】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にリナロールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、リナロールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0045】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にエチルアセテートを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、エチルアセテートの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0046】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にアセトアルデヒドを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、アセトアルデヒドの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0047】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にベンジルアルコールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、ベンジルアルコールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0048】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にフルフラールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、フルフラールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0049】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にオクタナールを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、オクタナールの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0050】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にδ−デカラクトンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、δ−デカラクトンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0051】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にリモネンを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、リモネンの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0052】
当該本発明の製品は、化合物群Aより選択される1種以上の化合物に加えて、更にエチルブチレートを含有することができる。
この場合、化合物群Aより選択される1種以上の化合物の含有量は、エチルブチレートの100質量部に対して、好ましくは0.001〜10000質量部、より好ましくは0.01〜1000質量部、及び更に好ましくは0.1〜100質量部の範囲内であることができる。
【0053】
本発明の香料を含有する製品は、その種類等に応じて、香料を含有する製品を製造する通常の方法を採用して製造すればよい。
これから理解される通り、本発明の製品の製造方法は、製品原料、又は中間製品に、本発明の香料を添加する工程を含む。
【0054】
製品に覚醒感付与作用を付与する方法
前記の本発明についての説明から理解される通り、本発明は、製品に覚醒感付与作用を付与する方法もまた提供する。当該方法の詳細は、本明細書から理解される。覚醒感付与香料を含有する製品を製造する方法の一側面は、製品に覚醒感を付与する方法であることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
GC/MS:ガスクロマトグラフ質量分析
【0057】
試験例1.コーヒー香料成分の分析
以下の方法で、コーヒー香料成分を分析した。
【0058】
(1)コーヒーの調製
市販焙煎コーヒー豆(ガテマラ)を挽き、コーヒー24gをコーヒードリッパーにセットした。
沸かした湯を420g注ぎ、コーヒーを調製した。
【0059】
(2)コーヒー香気成分の同定
調製したコーヒーの容器ヘッドスペースに固相マイクロ抽出(solid-phase microextraction、SPME)のファイバー部を曝し、香料成分を捕集した。ファイバーの種類は、3種類の素材からなるジビニルベンゼン/カルボキセン/ポリジメチルシロキサンを使用した。
香料成分捕集後、GC/MSで分析し、成分の同定を行った。MSはスキャンモードで測定し、得られたMSスペクトルを標準物質のスペクトルと照らし合わせて同定した。
【0060】
[GC/MS分析条件]
GC: アジレントテクノロジー 7890A GC
MS: アジレントテクノロジー 5975C Inert XL MSD
キャピラリーカラム: アジレントテクノロジー DB−WAX 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
温度プログラム: 50℃、2分間保持−3℃/分−220℃
キャリアガス: ヘリウム
注入口圧: 25psi、定圧モード
【0061】
(3)コーヒー香気成分の定量
調製したコーヒー100gに対し、内部標準として3−ヘプタノールを250μg添加し、ジクロロメタン100mLを加えて攪拌した。
ジクロロメタン層を分液し、濃縮した後、GC/MSで分析して、香料成分の含量を求めた。
分析結果を表1−1及び表1−2(表1−1の続き)に記載した。
【0062】
【表1-1】
【表1-2】
【0063】
試験例2.光トポグラフィー法による覚醒感付与作用の評価(1)
以下の方法により、光トポグラフィー法による覚醒感付与作用の評価を行った。
【0064】
装置:島津製作所 研究用光脳機能イメージング装置 FOIRE3000
パネル:被験者4名にて実施
【0065】
(1)NIRS測定用試料調製
同定したコーヒー香料成分の各々を95%エタノールに溶解した後、前記香料エタノール溶液をイオン交換水に対して0.05質量%添加して、NIRS測定用試料液を調製した。
なお、NIRS測定用試料液中の香料成分の濃度は、試験例1で分析したコーヒー中の濃度と同じになるように調整した。
【0066】
(2)NIRS測定
NIRS測定用光ファイバーを所定の位置にセットした被験者4名に、プラスチックカップにイオン交換水10mLの臭いを10秒間嗅がせ、次いで50秒安静にさせた。
引続き、被験者にプラスチックカップに入れたNIRS測定用試料10mLの臭いを10秒間嗅がせ、次いで50秒間安静にさせた。
試料の嗅臭時および安静時における脳血流中の酸素化ヘモグロビン量を計測し、右脳側および左脳側それぞれにおいて、最も血流量変化の大きかったチャンネルの値を血流変化量とした。
【0067】
(3)香料成分の評価
左脳脳血流の増加に比較して、右脳における脳血流の増加が多い被験者(すなわち、覚醒感を感じたと判断される被験者)が2名以上(すなわち、半数以上)であった香料成分を、覚醒感付与効果を有する成分であると評価した。
効果を有すると評価した香料成分を表2に記載した。
【0068】
【表2】
【0069】
試験例3.光トポグラフィー法による覚醒感付与作用の評価(2)
表3、及び表4の処方にしたがって、それぞれ、香料組成物A1〜A9、及び香料組成物B1〜B5を調製した。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
それぞれ、当該香料組成物A1〜A9、及び香料組成物B1〜B5のうちの1種を、イオン交換水中に0.05質量%添加して、NIRS測定用試料A1〜A9、及びNIRS測定用試料B1〜B5を調製した。
なお、このうち、香料組成物A2、A5、及びA8、並びに香料組成物B1〜B5の香料成分の処方は、NIRS測定用試料中の香料成分濃度が、コーヒー中の濃度と同じになるように決定した。
【0073】
当該NIRS測定用試料の各々を用いて、NIRS測定装置として、日立製作所製 ウェアラブル光トポグラフィ WOT-220を用い、被験者3名にて、試験例2と同様に、NIRS測定、及び評価を行った。
その結果、香料組成物A1〜A9、及び香料組成物B1〜B5はいずれも、覚醒感付与効果を有する組成物であると評価された。
【0074】
試験例4.官能評価
表5の処方にしたがって、香料組成物C1〜C4を調製した。
イオン交換水中に香料組成物C1〜C4を各々0.05%添加して、官能評価用飲料を調製した。
なお、香料組成物C1〜C4の香料処方は、官能評価用飲料中の香料成分濃度が、コーヒー中の濃度と同じになるように決定した。
評価用飲料を評価者(6名)が試飲し、その直後から30分後にかけて体に生じる活性感を次の評価基準に従って評価した。
【0075】
[評価規準]
++:強く変化を感じた
+:変化を感じた
±:少し変化を感じた
−:全く変化を感じなかった
【0076】
評価者(6名)の評価のうち、過半数で一致した評価を、香料組成物の評価と決定した。
評価結果を表6に記載した。
これにより、光トポグラフィー法による覚醒感付与作用の評価が実際に官能評価と一致することが確認された。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】