(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る体組成変化予測ユニット10の構成図である。
図1に示すように、体組成変化予測ユニット10は、体組成変化予測装置としての体組成変化予測装置12及びセンサ装置14を備える。体組成変化予測装置12は、コントローラ16、表示部18、操作部20、計時部22、及び通信部24を備えている。センサ装置14は、半導体式ガスセンサ26及び圧力センサ28を備える。
【0020】
コントローラ16は、CPU(Central Processing Unit)16A、ROM(Read Only Memory)12B、RAM(Random Access Memory)16C、不揮発性メモリ16D、及び入出力インターフェース(I/O)16Eがバス16Fを介して各々接続された構成となっている。この場合、後述する体組成変化予測処理をコントローラ16のCPU16Aに実行させる体組成変化予測プログラムを、例えば不揮発性メモリ16Dに書き込んでおき、これをCPU16Aが読み込んで実行する。なお、体組成変化予測プログラムは、CD−ROM、メモリーカード等の記録媒体により提供するようにしてもよく、図示しないサーバからダウンロードするようにしてもよい。
【0021】
I/O16Eには、表示部18、操作部20、計時部22、通信部24、半導体式ガスセンサ26、及び圧力センサ28が接続されている。
【0022】
表示部18は、例えば液晶パネル等で構成される。表示部18には、例えば各種設定画面、検知結果等の各種結果表示画面が表示される。
【0023】
操作部20は、各種操作を行うための操作部である。
【0024】
なお、表示部18及び操作部20をタッチパネルを用いて一体に構成し、このタッチパネルに直接タッチすることで操作が可能な構成としてもよい。
【0025】
計時部22は、現在時刻を取得する機能及び時間を計時する計時機能を有する。
【0026】
通信部24は、体組成計29等の外部装置と無線通信又は有線通信により情報の送受信を行う機能を有する。
【0027】
体組成変化予測装置12は、例えば専用の装置としてもよいし、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、及びタブレット端末等の汎用の情報処理装置としてもよい。
【0028】
半導体式ガスセンサ26は、ユーザーにより吹きかけられた呼気等の生体ガスに感度を有するガスセンサである。半導体式ガスセンサ26は、生体ガスを検知し、検知した生体ガスの濃度を電圧値で出力する。呼気中の生体ガスには、例えばケトン体、エタノール、アセトアルデヒド、水素、水蒸気、メタン、口臭等の様々な種類のガスが含まれる。ここで、ケトン体とは、アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸(β−ヒドロキシ酪酸)、アセトンの総称であり、これらのうちの少なくとも一つを表す。
【0029】
具体的には、半導体式ガスセンサ26は、S
nO
2等の金属酸化物半導体とヒータ及び電極を備えている。金属酸化物半導体は、干渉ガスあるいは妨害ガスが吸着すると、抵抗値が変化する。半導体式ガスセンサ26はガスに対する定量性及び選択性が不足するが、微量のアセトン等に高感度である。本実施形態では、生体ガスを検知するセンサとして半導体式ガスセンサを用いた場合について説明するが、ガスクロマトグラフィー等の他の装置を用いて生体ガスを検知してもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、測定する生体ガスがアセトンである場合について説明する。アセトンは、脂質代謝の副産物であり、アセトンの濃度は脂肪の燃焼量に相当する。体内に糖質エネルギーが余っている場合には脂肪が燃焼されないためアセトンの濃度は低くなり、体内に糖質エネルギーが足りなくなった場合には脂肪が燃焼されるためアセトンの濃度は高くなる。従って、アセトンの濃度により脂肪の燃焼量を知ることができる。
【0031】
圧力センサ28は、ユーザーから吹きかけられた呼気の圧力を検知する。圧力センサ28は、検知した圧力の大きさを電圧値で出力する。
【0032】
図2には、センサ装置14の外観図を示した。
図2に示すように、センサ装置14は、ユーザーが呼気を吹き込むための吹き込み口30を備えている。ユーザーが吹き込み口30に呼気を吹き込むと、生体ガスが半導体式ガスセンサ26によって検知される。なお、
図2に示したセンサ装置14は、有線により体組成変化予測装置12と接続されるが、これに限らず、無線で体組成変化予測装置12と接続されてもよい。また、センサ装置14と体組成変化予測装置12とが一体に形成されていてもよい。
【0033】
コントローラ16のCPU16Aは、機能的には
図3に示すように、アセトン濃度取得部40と、体組成情報取得部42と、予測値算出部44と、燃焼スタイル判定部46と、重み付け計算部48と、出力部50と、を備える。
【0034】
ケトン体濃度取得部としてのアセトン濃度取得部40は、ユーザーから排出されるアセトンを測定したアセトン濃度を取得する。
【0035】
体組成情報取得部42は、ユーザーの現在の体組成情報及び過去の体組成情報を取得する。
【0036】
予測値算出部44は、ユーザーの体組成に関する情報に基づいて、任意の将来の時点の体組成情報を予測した予測値を算出する。なお、任意の将来の時点とは、例えば今後の体組成変化を予測したい日までの日数である予測先日数が経過した後(例えば100日後)、将来の日付(例えば2017年7月1日)等である。本実施形態では、任意の将来の時点が、予測先日数が経過した後である場合について説明する。
【0037】
具体的には、予測値算出部44は、過去の体組成情報を取得した期間が予め定めた期間以上である場合、過去の体組成情報及び予測先日数に基づいて、変化傾向を近似する任意の手法を用いて予測値を算出する。ここで、変化傾向を近似する任意の手法としては、最小二乗法、移動平均法等が挙げられるが、これに限られるものではない。本実施形態では、最小二乗法等を用いて予測値を算出する場合について説明する。
【0038】
燃焼スタイル判定部46は、アセトン濃度及び現在の体組成情報に基づいて、ユーザーの脂肪の燃焼スタイルを判定する。なお、燃焼スタイルとは、体脂肪率と筋肉度指数とから分類された各体型に対して、アセトン濃度から判定される脂質代謝を用いてさらに分類した指標である。
【0039】
重み付け計算部48は、燃焼スタイルに応じて設定されると共に、アセトン濃度が高くなるに従って大きくなる重みに基づいて予測値を重み付け計算する。ここで、重みとは、体組成が良好な方向に変化する影響の大きさの指標である。体組成が良好な方向に変化するとは、例えば、体重が減少すること、体脂肪率が減少すること、及び筋肉量が増加すること、の少なくとも1つの変化をすることをいう。本実施形態では、重みが大きくなるに従って、体組成が良好な方向に変化する影響が大きくなるものとして説明する。
【0040】
また、重み付け計算とは、重みを用いて予測値(例えば最小二乗法等を用いて算出された予測値)を補正することである。
【0041】
出力部50は、重み付け計算された予測値に応じた情報を出力する。
【0042】
なお、アセトン濃度取得部40、体組成情報取得部42、予測値算出部44、燃焼スタイル判定部46、重み付け計算部48、及び出力部50の少なくとも1つが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって個別のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の作用として、コントローラ16のCPU16Aにおいて実行される体組成変化予測プログラムによる処理について、
図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図4に示す処理は、ユーザーが体組成変化予測装置12の操作部20を操作して、体組成変化予測プログラムの実行を指示した場合に実行される。なお、ユーザーによる吹きかけを検知することによって
図4に示す処理が実行されてもよい。
【0044】
ステップS100では、アセトン濃度取得部40が、呼気を吹き込み口30に吹きかけるようユーザーに促すメッセージを表示部18に表示し、吹き込み口30に呼気を吹きかけさせる。そして、半導体式ガスセンサ26の出力値、すなわちアセトン濃度αを取得する。なお、吹き掛け開始直後の呼気には、大気中のガス成分が多く含まれている。そのため、脂肪の燃焼量に関連するアセトンの濃度を算出するときには、大気中のガス成分を排出し切った終末呼気を利用することが好ましい。すなわち、終末呼気が得られるタイミングの半導体式ガスセンサ26の出力値を取得することが好ましい。従って、呼気の吹き掛けが検出された時点で計時部22による計時を開始させ、予め定めた時間(例えば4秒)経過した時点の半導体式ガスセンサ26の出力値を取得することが好ましい。
【0045】
なお、呼気が吹き掛けられたか否かの判定は、例えば圧力センサ28の出力値を取得し、取得した圧力センサ28の出力値が予め定めた閾値以上であるか否かを判定すればよい。
【0046】
ステップS102では、体組成情報取得部42が、ユーザーに体組成情報を測定するよう促すメッセージを表示部18に表示して体組成情報を測定させ、測定された体組成情報を体組成計29から取得する。本実施形態では、一例として体重、体脂肪率、及び筋肉量を体組成情報として測定する。なお、他の装置、例えばスマートフォンのアプリ等を用いて入力又は取得された体組成情報を無線通信又は有線通信により取得してもよい。
【0047】
ステップS104では、燃焼スタイル判定部46が、ステップS100で取得したアセトン濃度αと、ステップS102で取得した体組成情報と、に基づいて、ユーザーの脂肪の燃焼スタイルを判定する。
【0048】
具体的には、ステップS102で取得した体組成情報のうち筋肉量Mとユーザーの身長Hとに基づいて筋肉量指数IDXを次式により算出する。ユーザーの身長は、体組成計29から取得してもよいし、ユーザーに入力させてもよい。なお、筋肉量指数とは、身長を基準とした筋肉量の多さを指標化したものである。
【0050】
なお、上記(1)式ではHを二乗しているが、二乗に限られるものではない。また、筋肉量指数IDXは、例えば
図5に示すような分布となる。
【0051】
そして、ステップS102で取得した体組成情報のうち体脂肪率%FATと、筋肉量Mと、に基づいて、分類された複数の体型のなかから対応する1つの体型を判定する。具体的には、
図6に示すようなマトリクスを用いて、ユーザーの体脂肪率%FAT及び筋肉量Mに対応する体型が体型1〜9の中のどの体型に対応するかを判定する。
【0052】
図7には、体型1〜9のイメージを示した。
図6、7に示すように、体型1はかくれ肥満型、体型2は肥満型、体型3はかた太り型、体型4は運動不足型、体型5は標準型、体型6は筋肉質(1)型、体型7は痩せ型、体型8は細身筋肉質型、体型9は筋肉質(2)型である。なお、
図6の例では、体型が9種類の場合について示したが、体型の数はこれに限られるものではない。
【0053】
次に、ステップS100で取得したアセトン濃度αと、上記のように判定した体型と、に基づいて燃焼スタイルを判定する。具体的には、
図8に示すような燃焼スタイル判定表を用いて燃焼スタイルを判定する。
図8に示す燃焼スタイル判定表は、体型、アセトン濃度α、燃焼スタイル及びアドバイス、及び重み(体脂肪率、筋肉量)の対応関係を表すテーブルデータである。
【0054】
アセトン濃度は一例として高い(高)、標準(標)、低い(低)の3段階に分けられ、体型とアセトン濃度αとの組み合わせに応じて燃焼スタイルが判定される。例えば体型1(かくれ肥満型)でアセトン濃度が「高」の場合、燃焼スタイルは「これまでダラダラ生活気味でも今日は燃えている!」と判定される。
【0055】
ステップS106では、出力部50が、ステップS104で判定した燃焼スタイルに基づくアドバイス情報を表示部18に表示する。例えば
図8に示すように、燃焼スタイルが「これまでダラダラ生活気味でも今日は燃えている!」と判定された場合は、「太っていないけど筋肉少なめな「隠れ肥満」・・・でも、このところ、食事には気を使っているようですね。脂肪は今とても燃えていて、代謝が高まっています。スリムになるチャンス到来です!あとはたんぱく質を摂ってもうひと押し筋肉を鍛えましょう!」というメッセージをアドバイス情報として表示部18に表示する。
【0056】
ステップS108では、予測値算出部44が、今後の体組成変化を予測するか否かを判定する。例えば今後の体組成変化を予測するか否かを選択するための選択画面を表示部18に表示し、ユーザに今後の体組成変化を予測するか否かを選択させる。そして、今後の体組成変化を予測することが選択された場合はステップS109へ移行し、予測しないことが選択された場合は本ルーチンを終了する。
【0057】
ステップS109では、予測値算出部44が、今後の体組成変化を予測したい日までの日数である予測先日数を設定する。具体的には、予測先日数を設定する画面を表示部18に表示し、ユーザーに予測先日数を入力させる。例えば1週間後の体組成情報を予測したい場合は、予測先日数は7日となる。
【0058】
ステップS110では、予測値算出部44が、今回が初めての測定か否かを判定する。例えば過去の体組成情報(体重、体脂肪率、筋肉量)の測定結果が不揮発性メモリ16Dに一つも記憶されていない場合は今回が初めての測定と判定し、ステップS118へ移行する。一方、過去の体組成情報の測定結果が不揮発性メモリ16Dに記憶されている場合は今回が初めての測定ではないと判定し、ステップS112へ移行する。なお、他の装置、例えばスマートフォンのアプリ等を用いて入力又は取得された過去の体組成情報を無線通信又は有線通信により取得できない場合を初めての測定と判定し、過去の体組成情報を無線通信又は有線通信により取得できる場合を初めての測定ではないと判定するようにしてもよい。
【0059】
ステップS112では、予測値算出部44が、不揮発性メモリ16Dに過去の体組成情報の測定結果が予め定めた期間以上記憶されているか否かを判定する。例えば、過去の予め定めた期間以上(例えば1週間分以上)の体組成情報が不揮発性メモリ16Dに記憶されているか否かを判定する。そして、不揮発性メモリ16Dに過去の予め定めた期間以上の体組成情報が記憶されている場合はステップS114へ移行し、不揮発性メモリ16Dに過去の予め定めた期間以上の体組成情報が記憶されていない場合、すなわち予め定めた期間未満の体組成情報しか記憶されていない場合はステップS116へ移行する。なお、不揮発性メモリ16Dに過去の体組成情報の測定結果が予め定めた期間以上で且つ予め定めたデータ数以上記憶されているか否かを判定することが好ましい。
【0060】
ステップS114では、
図9に示す第1の予測処理が実行される。
【0061】
ステップS200では、予測値算出部44が、最少二乗法を用いて、過去の体組成情報及び予測先日数に基づいて、ステップS109で設定された予測先日数の体組成情報(体重、体脂肪率、筋肉量)の予測値を算出する。
【0062】
予測先日数後の体組成情報の予測値をy’、予測先日数をdとすると、予測値y’は次式で表される。
【0064】
ここで、切片a
0、傾きa
1は、次の連立方程式を解くことで得られる。
【0065】
【数1】
・・・(3)
・・・(4)
【0066】
x
iは起点日からi日目の日数を表す。y
iは起点日からi日目の体組成情報を表す。nは、体組成情報の測定回数が1日当たり1回の場合は、過去に体組成情報を測定した日の数を表す。起点日は、過去の体組成情報のうち最も古い日に体組成情報を測定した日である。
【0067】
上記(3)、(4)式を切片a
0、傾きa
1の式で表すと次式のようになる。
【0068】
【数2】
・・・(5)
・・・(6)
【0069】
従って、例えば過去30日分の体組成情報を用いて30日後の体組成情報の予測値yを得たい場合は、30日前から現在までの日数x
1〜x
30、30日前から現在までの体組成情報y
1〜y
30を上記(5)、(6)式に代入して切片a
0、傾きa
1を算出し、上記(2)式によりd日後の予測値y’を算出する。
【0070】
ステップS202では、重み付け計算部48が、ステップS200で求めた予測値に対して、
図4のステップS104で判定した燃焼スタイルに対応する重みを用いて重み付けする。例えば体型が「かくれ肥満型」でアセトン濃度が「高」の燃焼スタイルだった場合、
図8に示すように、体脂肪率についての重みはa1、筋肉量についての重みはb1に設定される。体脂肪率の予測値に対しては重みa1を乗算する。また、筋肉量の予測値に対しては重みb1を乗算する。
【0071】
なお、
図10に示すように、体脂肪率についての重みa1〜a27及び筋肉量についての重みb1〜b27は、同じ体型内においては、アセトン濃度が高い燃焼スタイルになるに従って大きくなる。その理由としては、同じ体型であっても、アセトン濃度が高くなるに従って脂質代謝量が大きくなるため、これを考慮するためである。また、
図10に示すように、体脂肪率についての重みa1〜a27及び筋肉量についての重みb1〜b27は、重み付けの変化幅が一例として「大」、「中」、「小」の3段階に分類されている。
【0072】
すなわち、体脂肪率についての重みは、
図6に示される筋肉量指数の分類(AverageよりLow側、Average、及びAverageよりHigh側)毎に、異なる重み付けの変化幅(大、中、及び小)が設定されている。また、各重み付けの変化幅のなかで最も小さい重み同士(変化幅「大」ではa27、変化幅「中」ではa24、変化幅「小」ではa21)は、ほぼ同じ大きさである(a27≒a24≒a21)。しかしながら、各重み付けの変化幅のなかで最も大きい重み同士(変化幅「大」ではa7、変化幅「中」ではa4、変化幅「小」ではa1)は、変化幅が大きくなるに従って重みは大きくなる(a7>a4>a1)。なお、同じ重み付けの変化幅のなかの各重みは、体脂肪率が多くなるに従って大きくなる。その理由としては、体脂肪が多いほど、将来に向かって減少可能な体脂肪の量が多いため、体組成が良好な方向に変化する影響が大きいからである。
【0073】
図10の例では、体脂肪率についての重みa7〜a9、a16〜a18、a25〜a27が「大」、重みa4〜a6、a13〜a15、a22〜a24が「中」、重みa1〜a3、a10〜a12、a19〜a21が「小」に分類されている。すなわち、筋肉量指数が高いほど、重み付けの変化幅が大きくなるように分類されている。その理由としては、筋肉量が多くなるに従って基礎代謝量が大きくなるため、体脂肪が減少し易くなるためである。
【0074】
そして、重み付けの変化幅が「大」の重みは、(a7>a8>a9)>(a16>a17>a18)>(a25>a26>a27)のような関係となっている。また、重み付けの変化幅が「中」の重みは、(a4>a5>a6)>(a13>a14>a15)>(a22>a23>a24)のような関係となっている。さらに、重み付けの変化幅が「小」の重みは、(a1>a2>a3)>(a10>a11>a12)>(a19>a20>a21)のような関係となっている。すなわち、
図6、8、10を参照すれば判るように、筋肉量指数が高い体型ほど重み付けの変化幅が大きくなると共に、同じ体型の中ではアセトン濃度が高くなるほど重みが大きくなる。
【0075】
また、筋肉量についての重みは、
図6に示される脂肪率の分類(HealthyよりUnderfat側、Healthy、及びHealthyよりOverfat側)毎に、異なる重み付けの変化幅(大、中、及び小)が設定されている。また、各重み付けの変化幅のなかで最も小さい重み同士(変化幅「大」ではb21、変化幅「中」ではb12、変化幅「小」ではb3)は、ほぼ同じ大きさである(b21≒b12≒b3)。しかしながら、各重み付けの変化幅のなかで最も大きい重み同士(変化幅「大」ではb25、変化幅「中」ではb16、変化幅「小」ではb7)は、属する重み付けの変化幅が大きくなるに従って大きくなる(b25<b16<b7)。なお、同じ重み付けの変化幅のなかの各重みは、筋肉度指数が高くなるに従って大きくなる。その理由としては、筋肉量が多いほど、基礎代謝量が増加するため、体組成が良好な方向に変化する影響が大きいからである。
【0076】
図10の例では、筋肉量についての重みb7〜b9、b4〜b6、b1〜b3が「小」、重みb16〜b18、b13〜b15、b10〜b12が「中」、重みb25〜b27、b22〜b24、b19〜b21が「大」に分類されている。すなわち、体脂肪率が高いほど、重み付けの変化幅が小さくなるように分類されている。その理由としては、体組成が良好な方向に変化する上記筋肉による影響を、脂肪が阻害するからである。
【0077】
そして、重み付けの変化幅が「小」の重みは、(b7>b8>b9)>(b4>b5>b6)>(b1>b2>b3)のような関係となっている。また、重み付けの変化幅が「中」の重みは、(b16>b17>b18)>(b13>b14>b15)>(b10>b11>b12)のような関係となっている。さらに、重み付けの変化幅が「大」の重みは、(b25>b26>b27)>(b22>b23>b24)>(b19>b20>b21)のような関係となっている。すなわち、
図6、8、10を参照すれば判るように、体脂肪率が高い体型ほど重み付けの変化幅が小さくなると共に、同じ体型の中ではアセトン濃度が高くなるほど重みが大きくなる。
【0078】
ステップS203では、重み付け計算部48が、アセトン濃度に基づいて1日当たりの脂肪燃焼量を算出する。なお、算出方法としては、例えば特開2016−75533号公報に記載された方法を用いることができるが、これに限られるものではない。そして、算出した脂肪燃焼量に基づいて、ステップS202で重み付けした予測値を例えば予め定めた補正式又はテーブルデータを用いて補正する。
【0079】
ステップS204では、予測値算出部44が、予測先日数dが予め定めた閾値TH(例えば数十日)以上か否かを判定し、予測先日数dが閾値TH以上であればステップS206へ移行し、予測先日数dが閾値TH未満であればステップS208へ移行する。
【0080】
ステップS206では、予測値算出部44が、予め定めた以下に述べる第1から第5の少なくとも1つの長期補正式を用いて、ステップS203で補正された予測値を補正する。
【0081】
例えば数日先や1週間程度先の短期的な体組成情報の予測であれば直線近似で予測できるが、1か月以上先の長期予測では、直線的な変化がそのまま続くわけではなく、変化が緩やかになり曲線的になる。また、曲線的になる要因には様々な要素が複合的に関係し、変化の仕方も年齢や性別、元の体格などの条件によって異なる。
【0082】
例えば、体重が変化することで、動く際に身体にかかる負荷が変わり、同じ行動をしていても消費エネルギーが異なってくる。そこで、ユーザー情報としての体重をパラメータとして含み、体重変化による消費エネルギー変化が考慮された第1の長期補正式を用いて予測値を補正する。
【0083】
また、体重が変化することで、身体を支えたり姿勢を保つ除脂肪組織への負荷が変化し、除脂肪組織量自体も変化する。そこで、ユーザー情報としての体重をパラメータとして含み、除脂肪組織量変化による基礎代謝量が考慮された第2の長期補正式を用いて予測値を補正する。
【0084】
また、生活習慣の差により太りにくさの傾向も異なり、長期になると行動意識の差が大きく影響する。そこで、例えば図示しない活動量計から消費エネルギー等の測定結果が得られる場合、ユーザー情報としての消費エネルギーをパラメータとして含み、生活習慣の差により太りにくさの傾向が考慮された第3の長期補正式を用いて予測値を補正する。なお、活動量計は、ユーザーの歩数量、運動量等を取得可能な装置である。
【0085】
また、年齢により基礎代謝変化の傾向は異なる。例えば若者と高齢の人では同じ期間であっても基礎代謝の変化が異なる。そこで、ユーザー情報としての年齢をパラメータとして含み、年齢による長期の基準基礎代謝の変化が考慮された第4の長期補正式を用いて予測値を補正する。
【0086】
また、加齢による体重変化の傾向を考慮すべきである。そこで、ユーザー情報としての年齢をパラメータとして含み、国民栄養調査の変化傾向が反映された第5の長期補正式を用いて予測値を補正する。
【0087】
なお、第1〜第5の長期補正式は、統計的手法を用いて導き出された式である。
【0088】
ステップS208では、予測値算出部44が、ステップS206で補正された予測値が予め定めた範囲内となるように予測値を修正する。すなわち、予測値が予め定めた上限値を超えていれば、予測値を上限値に修正し、予測値が予め定めた下限値未満であれば、予測値を下限値に修正する。予測値が予め定めた範囲内の場合は修正しない。これにより、長期補正後の予測値が現実的でない値となってしまうのを防ぐことができる。
【0089】
ステップS210では、出力部50が、予測値に対応したアドバイス情報を表示部18に表示する。例えば、予測値とアドバイス情報との対応関係を表すテーブルデータから予測値に対応するアドバイス情報を取得し、これを表示部18に表示する。
【0090】
図4のステップS116では、
図11に示す第2の予測処理が実行される。
【0091】
ステップS300では、予測値算出部44が、過去の体組成情報に基づいて、1日当たりの体組成情報の変化量を算出する。例えば過去7日分の体組成情報がある場合、1日当たりの体組成情報の変化量ΔBを次式により算出する。
【0093】
ここで、ΔWは、過去の体組成情報のうち最も古い体組成情報から現在の体組成情報までの変化量である。また、nは、前述したように体組成情報の測定回数が1日当たり1回の場合は、過去に体組成情報を測定した日の数を表す。
【0094】
ステップS302では、予測値算出部44が、ステップS300で算出した1日当たりの体組成情報の変化量ΔBに予測先日数dを乗算することにより、予測値を算出する。
【0095】
ステップS304〜S312の処理は
図9のステップS202〜S210と同様であるので、説明は省略する。このように、ステップS112の判定結果がNOのときに、第2の予測処理(ステップS116)が実行される。その結果、不揮発性メモリ16Dに記憶されている過去の体組成情報の測定結果が予め定めた期間に満たない場合であっても、予測値算出部44が予測値を算出できる。
【0096】
図4のステップS118では、
図12に示す第3の予測処理が実行される。
【0097】
ステップS400では、予測値算出部44が、日常の食傾向情報及び活動量情報を入力する。例えば、日常の食傾向情報及び活動量情報を入力するための入力画面を表示部18に表示し、ユーザーに日常の食傾向情報及び活動量情報を入力させる。入力画面は、例えば質問形式でユーザーに回答を選択させる。ここで、日常の食傾向情報とは、例えば食事の規則性、食事の回数、食事の内容、食事の嗜好等をいう。また、活動量情報とは、例えば活動量そのもの、活動量が推定可能な情報等をいう。
【0098】
食傾向情報としては、例えば1日の食事の内容及び食事の量、甘いものを食べるか否か等の嗜好情報等を入力させる。また、活動量情報としては、例えば1日の運動の内容及び量等を入力させる。
【0099】
ステップS402では、予測値算出部44が、ステップS400で入力された食傾向情報及び活動量情報に関する質問の回答を点数化し、予測値を算出する。例えば、質問に対する回答と点数との対応関係を表すテーブルデータを予め定めた不揮発性メモリ16Dに記憶しておき、このテーブルデータを用いて、食傾向情報及び活動量情報に関する質問の回答を点数化する。
【0100】
そして、食傾向情報の点数及び活動量情報の点数に基づいて、体組成情報の予測値を算出する。例えば、食傾向情報の点数及び活動量情報の点数と体組成情報との対応関係を表すテーブルデータ又は演算式を不揮発性メモリ16Dに記憶しておき、このテーブルデータ又は演算式を用いて、体組成情報の予測値を求める。
【0101】
ステップS404〜S412の処理は
図9のステップS202〜S210と同様であるので、説明は省略する。このように、ステップS110の判定結果がYESのときに、第3の予測処理(ステップS118)が実行される。その結果、過去の体組成情報の測定結果が不揮発性メモリ16Dに記憶されていない場合、すなわち体組成情報の測定が初回の場合であっても、予測値算出部44が予測値を算出できる。
【0102】
なお、
図9の第1の予測処理において、例えばステップS200の後に
図11のステップS300,S302の処理を実行し、ステップS200で算出した予測値と、
図11のステップS300,S302の処理を実行することにより算出された予測値と、に基づいて最終的な予測値を算出するようにしてもよい。これにより、予測値を精度良く算出することができる。
【0103】
また、
図9の第1の予測処理において、例えばステップS200の後に
図12のステップS400,S402の処理を実行し、ステップS200で算出した予測値と、
図12のステップS400,S402の処理を実行することにより算出された予測値と、に基づいて最終的な予測値を算出するようにしてもよい。これにより、予測値を精度良く算出することができる。
【0104】
また、
図11の第2の予測処理において、例えばステップS302の後に
図12のステップS400,S402の処理を実行し、ステップS302で算出した予測値と、
図12のステップS400,S402の処理を実行することにより算出された予測値と、に基づいて最終的な予測値を算出するようにしてもよい。これにより、予測値を精度良く算出することができる。
【0105】
以下、具体的な計算例について説明する。
【0106】
一例として、身長160cm、体重54kg、年齢24歳の女性ユーザーを対象として半年後(180日後)の体重、体脂肪率、及び筋肉量を予測する場合について説明する。
【0107】
上記の女性ユーザーの現在のアセトン濃度が1000ppb(高め)、体脂肪率が28%(標準)、筋肉量が30kg(少なめ)であり、過去の体組成情報が過去3週間に測定した6回分の過去の体組成情報があったとする。
【0108】
この場合、
図4のステップS104の燃焼スタイル判定では、体型は
図8の「かくれ肥満型」と判定され、燃焼スタイルは「これまでダラダラ生活:でも今日は燃えてる!」と判定される。
【0109】
そして、ステップS106では、アドバイス情報として、「太っていないけど筋肉少なめ「隠れ肥満」・・・でも、このところ、食事に気を使っているようですね。脂肪は今とても燃えていて、代謝が高まっています。スリムになるチャンス到来です!あとはたんぱく質を摂ってもうひと押し筋肉を鍛えましょう!」というメッセージが表示部18に表示される。
【0110】
そして、ステップS108で今後の体組成変化を予測すると判定され、ステップS110で初めての測定ではないと判定され、ステップS112で過去の体組成情報は十分と判定されると、ステップS114の第1の予測処理が実行される。
【0111】
第1の予測処理では、
図9のステップS200において、最小二乗法を用いて半年後の体重、体脂肪、筋肉量の予測値が上記(2)式により計算される。
【0112】
そして、ステップS202において、重み付け計算部48が、ステップS104で判定された燃焼スタイルに応じて設定された体脂肪率の重みa1、筋肉量の重みb1を各々の予測値に乗算することで重み付け計算を行う。
【0113】
次に、ステップS203で、重み付け計算部48が、アセトン濃度に基づいて1日当たりの脂肪燃焼量が算出される。ここでは、アセトン濃度1000ppbに対応する1日当たりの脂肪燃焼量が例えば300g/日と算出される。そして、算出された脂肪燃焼量に基づいてステップS202で重み付けされた予測値が補正される。
【0114】
次に、ステップS206で、重み付け計算部48が、第1〜第5の長期補正式を用いて半年後の体重、体脂肪率、及び筋肉量を補正する。
【0115】
この結果、女性ユーザーの半年後の体重は50kg、体脂肪率は20%、筋肉量は33kgと算出され、体型としては筋肉多めに引き締まった標準体型と判定され、表示部18に表示される。
【0116】
また、例えば「※この予測結果は、あなたの体組成と脂質代謝測定結果の値を元に、統計的に割り出した一般的な長期変化傾向を考慮した予測計算を実施しています。」のようなメッセージを表示部18に表示してもよい。
【0117】
このように、本実施形態では、アセトン濃度及び現在の体組成情報に基づいて、ユーザーの脂肪の燃焼スタイルを判定し、燃焼スタイルに応じて設定された重みに基づいて将来の体組成情報の予測値を重み付け計算するので、体組成の変化を精度良く予測することができる。
【0118】
また、予想する任意の将来の時点が所定の時点より後の時点である場合は、長期補正式を用いて予測値を補正するので、長期の体組成変化を精度良く予測することができる。
【0119】
これにより、個人の生活状況に即した精度の高い「将来の体組成変化傾向」を評価することが可能となり、減量目標の調整がしやすくなる。更に、従来のようにケトン体濃度を単独で評価した結果から予測するよりも、より長期的な将来の体組成変化予測が可能となるため、直近の減量目標だけでなく、長期視点に立った取り組みやすい生活改善アドバイス提示やゲーム的に楽しめるアプリケーションへの利用が可能となる。
【0120】
また、アセトン濃度に基づいて算出した脂肪燃焼量に基づいて、重み付け計算された予測値を補正するので、脂肪燃焼量が反映された体組成情報を精度良く予測することができる。
【0121】
また、活動量計から取得したユーザーの消費エネルギーに基づいて、重み付け計算された予測値を、長期補正式を用いて補正するので、長期間経過した後の体組成情報を精度良く予測することができる。
【0122】
また、過去の体組成情報を取得した期間が予め定めた期間以上である場合、過去の体組成情報及び予測先日数に基づいて、変化傾向を近似する任意の手法を用いて予測値を算出するので、体組成情報が非線形に変化するような場合でも精度良く体組成情報を予測することができる。
【0123】
また、過去の体組成情報の1日当たりの変化量の平均値を算出し、算出した1日当たりの変化量の平均値と予測先日数に基づいて予測値を算出するので、過去の体組成情報が十分でない場合でも体組成情報を予測することができる。
【0124】
また、ユーザーの食傾向情報及び活動量情報と予測先日数とに基づいて予測値を算出するので、過去の体組成情報が無い場合でも体組成情報を予測することができる。