(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触筒が被検知体に押圧されて、前記膨らみが前記窪みに嵌った状態で、前記蛍光体が前記窪みの内部に位置している請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光式光ファイバー温度計。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の蛍光式光ファイバー温度計の実施形態について、図面を参照して説明する。本明細書において、先端とは、図中の下端で、被検知体側の端部を示しており、末端とは、図中の上端で、被検知体側の反対側の端部を示している。
【0010】
図1〜4に例示するように、第一実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、光ファイバー管11の先端に蛍光体12を有している。蛍光式光ファイバー温度計10においては、図示しない光源から投光された励起光が、光ファイバー管11を経由して蛍光体12に受光されて、その励起光を受光した蛍光体12から発生された蛍光の輝度の減衰する時間に基づいて被検知体13の温度が測定されている。
【0011】
蛍光式光ファイバー温度計10は、光ファイバー管11の先端及び蛍光体12が、筒体14により覆われていると共に、光ファイバー管11の先端を除く部位が、被覆材15により覆われている。
【0012】
光ファイバー管11は、透明な石英、ガラス、又はプラスチックを材料として、中心部のコアの外周にコアよりも屈折率を低くしたクラッドを配置してなる素線で構成される。この光ファイバー管11に入射した励起光及び蛍光は、クラッドにより全反射や屈折を繰り返してコアの中を伝播していく。
【0013】
蛍光体12は、例えば、マグネシウム系蛍光材料、イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光材料、及びセシウム系蛍光材料などの蛍光粉末と、セラミック系接着剤などのセラミック粉末を含有した無機系接着剤との混合物を加熱硬化して形成される。セラミック系接着剤は、アルミナ、シリカ、ジルコニアのいずれか又はいくつかの組み合わせたセラミック粉末と無機ポリマーなどの硬化液とを主成分とし、有色のペースト状で、その粘度が標準温度において40Pas以上の高粘度の接着剤である。なお、セラミック系接着剤は、セラミック粉末と硬化液とを主成分とした無機系接着剤であれば、上記以外の材質でもよい。また、一液加熱硬化型のもの以外でもよく、セラミック粉末と硬化液とを別々に混合してもよい。
【0014】
筒体14は、先端が底16により閉口し、末端が開口している有底筒状であり、ガラス又は熱硬化性樹脂などの透明材料により構成されている。
【0015】
被覆材15は、セラミックチューブで構成されている。セラミックチューブはセラミックを焼結させたチューブであり、両端が開口している。この他に、被覆材15としては、芳香族ポリエーテルケトンやステンレス鋼からなるチューブが例示できる。このように、光ファイバー管11の外表面を被覆材15で覆うことにより、耐久性の向上には有利にな
る。
【0016】
光ファイバー管11が筒体14の末端の付近に、蛍光体12が筒体14の底16に、それぞれ固定されることで、光ファイバー管11、蛍光体12、及び筒体14は一体化している。
【0017】
具体的に、蛍光粉末とセラミック系接着剤とを混合した混合物が筒体14の底16に充填される。次いで、その混合物が70度以上、200度以下の温度で加熱硬化されて、蛍光体12が形成されると共にその蛍光体12が底16に固着する。次いで、光ファイバー管11の先端が筒体14に挿入されて、蛍光体12に当接する。
【0018】
図1〜
図4に例示するように、蛍光式光ファイバー温度計10は、光ファイバー管11の先端及び蛍光体12が、有底筒状の傾動筒30に覆われていると共に、その傾動筒30の先端が有底筒状の接触筒20に覆われている。つまり、蛍光式光ファイバー温度計10は、筒体14が、傾動筒30及び接触筒20の二つの有底筒状の部材に覆われている。
【0019】
接触筒20及び傾動筒30は、アルミニウムで構成されている。接触筒20及び傾動筒30は、熱伝導率が100W/mk以上の金属材料で構成されていればよい。このような金属材料としては、アルミニウムの他に、例えば、アルミニウム合金が例示される。また、接触筒20及び傾動筒30がそれぞれ異なる金属材料で構成されてもよい。
【0020】
接触筒20は、接触頭部21及び蓋部22の二つの部材から構成されていて、先端側に向いた外底23が被検知体13に押し付け可能に構成され、末端側に向いた内底24の中央に窪み25を有している。傾動筒30は、傾動頭部31と筒部32とから構成されていて、先端側に向いた外底33の中央に膨らみ35を有し、末端側に向いた内底34に蛍光体12を覆う筒体14の底16が配置されている。
【0021】
接触筒20と傾動筒30とは、接触筒20の接触頭部21の内部に、傾動筒30の傾動頭部31を配置した後に、接触頭部21に蓋部22を嵌め込むことで、連結可能に構成されている。
【0022】
接触頭部21は、先端が底により閉口し、末端が開口している有底筒状の部材であり、外底23及び内底24を有している。蓋部22は、環状の部材であり、被係合部26、及び傾動止部27を有している。
【0023】
外底23は、被検知体13に対して面接触するように構成されていて、その形状は、円形に形成されている。外底23の形状は、矩形や多角形に形成されてもよい。外底23の面積S1は、光ファイバー管11の横断面積S2に対して、7倍以上、15倍以下の値に設定されている。
【0024】
内底24は、外底23に対して接触頭部21の末端側に底上げされている。内底24は、中央部に先端側に向かって深くなる窪み25を有している。窪み25は、略半球形の凹部であり、その形状は、後述する傾動筒30の膨らみ35と球面接触可能な形状に形成されている。具体的に、窪み25の形状は、末端側から先端側に向かって窪んでいる凹球面形状であり、その球面における直径が膨らみ35の球面における直径と略同一である。
【0025】
被係合部26は、接触頭部21の末端の開口を窄めるように、蓋部22の下端が、接触筒20の内筒面から径方向内側に張り出すことで形成されている。被係合部26は、後述する傾動筒30の係合部36と係合可能な部位であり、例えば、末端の近傍の内筒面から径方向内側に突出した複数の突起で構成してもよい。
【0026】
傾動止部27は、蓋部22の末端の開口を窄めるように、蓋部22の上端が、内周縁から径方向内側に張り出すことで形成されている。傾動止部27は、光ファイバー管11及び傾動筒30が傾動したときに、傾動筒30の被傾動止部37と当接する部位であり、例えば、末端の内周縁から径方向内側に突出した複数の突起で構成してもよい。
【0027】
傾動筒30は、先端側に傘が配置されたキノコ状を呈するように、傾動頭部31が筒部32から径方向外側に張り出して形成されていて、先端が底により閉口し、末端が開口している有底筒状の部材である。傾動頭部31は、先端側に向いた外底33、及び末端側に向いた内底34を有すると共に、係合部36を有している。筒部32は、外筒面に被傾動止部37が形成されている。
【0028】
外底33は、先端側に向かって高くなる膨らみ35を有している。膨らみ35は、略半球形の凸部であり、その形状は、前述した接触筒20の窪み25と球面接触可能な形状に形成されている。具体的に、膨らみ35の形状は、末端側から先端側に向かって膨らんでいる凸球面形状であり、その球面における直径が窪み25の球面における直径と略同一である。
【0029】
内底34は、膨らみ35の内部に配置されている。内底34は、筒体14の底16と接触していて、内底34と蛍光体12との間に筒体14の底16が介在している。内底34が膨らみ35の内部に配置されることで、接触筒20を被検知体13に押圧したとき、膨らみ35が窪み25に嵌った状態で、蛍光体12が窪み25の内部に位置することになる。内底34は、筒体14の底16に接着剤で固定するとよい。
【0030】
係合部36は、傾動頭部31の上端が、傾動頭部31の外周縁から径方向外側に張り出すことで形成されている。係合部36は、蓋部22が接触頭部21の末端に嵌め込まれたときに、接触筒20の内底24と被係合部26との間で、被係合部26に対向配置されている。
【0031】
筒部32の末端は接触筒20の蓋部22よりも上方に配置されている。筒部32は、外筒面に被傾動止部37が形成されていて、被傾動止部37の先端から末端までの長さは、傾動止部27の先端から末端までの長さよりも長い。
【0032】
また、蛍光式光ファイバー温度計10は、接触筒20の窪み25に傾動筒30の膨らみ35が嵌ったときに、窪み25及び膨らみ35の間に介在する中間部材40を備えていると共に、接触筒20の外表面が、外側部材41で覆われている。
【0033】
中間部材40は、150度以上となる高温環境下において、窪み25及び膨らみ35よりも高い硬度を有している部材を含んで構成されている。中間部材40は、その高い硬度の部材により、高温環境下において、窪み25及び膨らみ35が直接接触しないように、窪み25及び膨らみ35の間に介在している。
【0034】
具体的に、この実施形態の中間部材40は、アルミニウムよりも高温環境下で硬度が高いセラミックなどの焼結体を含んでいる薄膜であり、接触筒20の窪み25の全域を覆っている。中間部材40は、セラミック系塗料を窪み25の球面に塗布した後に、乾燥することで形成されている。中間部材40は、傾動筒30の膨らみ35を覆っていてもよく、窪み25及び膨らみ35を覆っていてもよい。
【0035】
外側部材41は、150度以上となる高温環境下において、接触筒20の外表面よりも高い硬度を有している。外側部材41は、高温環境下において、その外表面が被検知体1
3に直接接触しないように、その外表面の全域を覆っている。
【0036】
具体的に、この実施形態の外側部材41は、アルミニウムよりも高温環境下で硬度が高い酸化アルミニウムから構成される膜(アルマイト)であり、接触筒20の接触頭部21の外表面の全域、つまり、接触頭部21の外底23と、外筒面とを覆っている。外側部材41は、陽極酸化処理により、接触頭部21の外表面のアルミニウムを酸化させることで形成されている。
【0037】
次に、蛍光式光ファイバー温度計10の動作について
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1は接触筒20を被検知体13から離間した状態を例示し、
図2は接触筒20を被検知体13に押圧して温度を測定している状態を例示し、
図3は光ファイバー管11及び傾動筒30が接触筒20に対して傾動した状態を例示している。
【0038】
図1に例示するように、蛍光式光ファイバー温度計10は、接触筒20を被検知体13から離間したときに、係合部36が被係合部26に係合することにより、接触筒20及び傾動筒30を連結するように構成される。一方で、蛍光式光ファイバー温度計10は、
図2及び
図3に例示するように、接触筒20を被検知体13に押圧したときに、係合部36が被係合部26から離間するとともに、傾動筒30の膨らみ35が接触筒20の窪み25に摺動可能に嵌まり、光ファイバー管11及び傾動筒30が接触筒20に傾動自在に連結されるように構成される。
【0039】
より具体的に説明すると、
図1に示すように、接触筒20を被検知体13から離間したときには、接触筒20が自重により被検知体13の側へ移動しようとする。このとき、係合部36が被係合部26に当接係合する。これにより、接触筒20の被検知体13の側への移動が拘束される。
【0040】
このように、係合部36及び被係合部26は、接触筒20が被検知体13に押圧されていないときに、接触筒20が傾動筒30から離間しない構成であればよい。例えば、係合部36及び被係合部26の代わりに、接触筒20と傾動筒30とを接合する複数本の紐を用いてもよい。
【0041】
図2に示すように、被検知体13の温度を測定する際に、測定者は末端側の図示しない把手を持ち、接触筒20を被検知体13に押圧する。このとき、被係合部26から係合部36が離間した状態で、膨らみ35が窪み25に遊嵌すると共に球面接触する。これにより、被検知体13から接触筒20及び傾動筒30を介して蛍光体12へ熱が伝達されることで、被検知体13の温度を測定可能になる。
【0042】
また、150度以上となる高温環境下になった場合に、窪み25と膨らみ35との間に介在する中間部材40が、それぞれを非接触にしてそれぞれの表面形状を維持すると共に、融解による固着を抑制するように機能する。具体的に、中間部材40は、塗料に含有された焼結体により、窪み25及び膨らみ35を接触させること無く、非接触の状態にする。
【0043】
同様に、接触筒20の接触頭部21の外表面を覆う外側部材41が、接触頭部21の外表面を非接触にして外表面形状を維持すると共に、融解による固着を抑制するように機能する。
【0044】
図3に示すように、温度の測定中に測定者の姿勢変化が生じた際に、つまり測定者が接触筒20を被検知体13に押圧しながら把手を押圧方向以外に動かした際に、あるいは、接触筒20が被検知体13に対して片当たりの状態で押圧された際に、光ファイバー管1
1及び傾動筒30が、接触筒20に対して傾動する。
【0045】
具体的に、傾動筒30は、窪み25と球面接触した膨らみ35を支点にして、傾動自在の継手、例えば、ボールジョイントのように機能する。これにより、光ファイバー管11及び傾動筒30が、接触筒20に対して膨らみ35及び窪み25の球面接触を支点にして傾動する。このようにして、光ファイバー管11及び傾動筒30は、被傾動止部37と傾動止部27とが接触するまで、接触筒20に対して傾動する。この傾動により、接触筒20の外底23は、被検知体13に片当たりすること無く、面接触する。
【0046】
以上のように、蛍光体12を覆う接触筒20と傾動筒30が、被検知体13に押圧したときに、接触筒20の窪み25に傾動筒30の膨らみ35が嵌って、傾動自在の継手として機能することで、接触筒20の外底23と被検知体13との片当たりを回避できる。これにより、被検知体13に押圧したときの接触筒20の外底23と被検知体13との接触面積を常時一定に維持するには有利になり、繰り返し精度を向上することができる。
【0047】
上記の蛍光式光ファイバー温度計10は、アクチュエータなどにより機械的に被検知体13に押し付けられても、片当たりを回避することができる。これにより、測定の度に、外底23と被検知体13との接触面積が大幅に変化することを抑制するには有利になり、繰り返し精度を向上することができる。
【0048】
また、光ファイバー管11の横断面積S2に比して、外底23の面積S1が広くなることで、接触面積の確保には有利になり、被検知体13から蛍光体12に伝達される熱量を増加することができる。これに伴って、測定時の応答速度を向上することができる。
【0049】
加えて、筒体14を覆う二つの有底筒状の部材のそれぞれを、熱伝導率が100W/mk以上の金属材料で構成することで、被検知体13から蛍光体12に伝達される熱伝達の低下を抑制することができるので、応答速度の向上には有利になる。
【0050】
更に、接触筒20が被検知体13に押圧された状態で、窪み25と膨らみ35とが、互いに球面接触することで、摺動可能な状態を維持しつつ、窪み25と膨らみ35との接触面積を最大にすることができる。これにより、接触筒20から傾動筒30への熱の伝達量の低下の抑制には有利になる。
【0051】
図5に例示するように、中間部材40及び外側部材41を省いたものは、150度を超えると、測定誤差が小さくなる場合がある。これは、150度以上の高温環境下で、窪み25及び膨らみ35が熱変形し、接触面積が大きくなることや、窪み25及び膨らみ35が溶解して固着することにより、接触筒20及び傾動筒30の熱伝導率が高くなることが要因となっている。
【0052】
これに対して、実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、中間部材40により、窪み25及び膨らみ35のそれぞれの表面形状が維持されると共に、融解による固着が抑制される。それ故、温度Taを超える高温環境下での推定誤差を大きくできる。これにより、高温環境下で、温度と誤差との関係における線形を維持するには有利になり、その線形に基づいて補正を行うことで、温度をより高精度に測定することができる。
【0053】
このように、高温環境下など、特殊な環境下で温度を測定する場合は、温度と誤差との関係における線形を保つことができれば、高温環境下で推定誤差が大きくなっても、測定精度を小さくできる。
【0054】
また、中間部材40により、光ファイバー管11及び傾動筒30の接触筒20に対する
傾動も良好に維持されるので、高温環境下における繰り返し精度の向上には有利になる。この中間部材40としては、高温環境下において窪み25及び膨らみ35よりも高い硬度を有している部材を含んで構成されていればよく、例えば、外側部材41と同様にアルマイトで構成されてもよい。
【0055】
同様に、実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、外側部材41により、接触筒20の外底23の歪みや融解による固着が抑制される。これにより、温度を高精度に測定することができると共に、繰り返し精度の向上には有利になる。この外側部材41としては、高温環境下において接触筒20の外表面よりも高い硬度を有していればよく、例えば、中間部材40と同様に焼結体を含んでなる塗料から形成された薄膜で構成されてもよい。
【0056】
図6、
図7に例示するように、第二実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、第一実施形態に対して、中間部材40の構成が異なると共に、グリス42が充填されている。この実施形態の中間部材40は、アルマイトの膜で構成されていて、傾動筒30の膨らみ35を覆っている。
【0057】
グリス42は、潤滑油としてフッ素油(PFAE)に増ちょう剤としてフッ素樹脂(PTFE)を均一に拡散させたフッ素系グリスで構成されていて、接触筒20の内部に充填されている。グリス42は、中間部材40で覆われている窪み25と膨らみ35との密着度を高める役割を担っていて、窪み25から膨らみ35への熱伝導性を向上している。
【0058】
グリス42は、窪み25に膨らみ35が嵌ったときに、中間部材40で覆われている窪み25及び膨らみ35の間に介在すればよく、接触筒20の内部のうちの少なくとも窪み25に充填されていればよい。但し、グリス42の充填量については、窪み25に膨らみ35が嵌ったときに、接触筒20の内部から外部へ溢れ出ないように調節されている。
【0059】
このように、中間部材40としては、アルマイトの膜で構成しても、高温環境下において、窪み25及び膨らみ35のそれぞれの表面形状を維持すると共に、融解による固着を抑制することができる。
【0060】
また、グリス42を用いることで、第一実施形態に比して接触筒20及び傾動筒30の間の熱伝導率の向上には有利になり、応答速度を向上することができる。
【0061】
グリス42は、上方に配置された被検知体13に対して、接触筒20を下方から上方に向って押し当てる場合に、接触筒20の内部から外部へ流出するおそれがある。そこで、第二実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、シール部材43を備えている。
【0062】
シール部材43は、エラストマーで構成されていて、接触筒20の内部からグリス42が漏れ出さないように、貫通部分である被傾動止部37と傾動止部27との間を密閉するパッキンである。シール部材43は、傾動止部27における先端側に接合されている。なお、シール部材43は、被傾動止部37に接合してもよい。
【0063】
シール部材43を先端側に接合することで、光ファイバー管11及び傾動筒30が接触筒20に対して傾動したときに、シール部材43の弾性変形量を小さくできるので、その傾動を阻害せずにグリス42の漏れを防ぐことができる。
【0064】
既述した実施形態では、蛍光粉末とセラミック粉末を含有した無機系接着剤とを混合した混合物を加熱して硬化する。これにより、無機ポリマーが架橋密度の高い網状高分子に変化することによって硬化する効果と、耐熱性のセラミック粉末により固体分率を高く維持して硬化の際の体積収縮を防止する効果とにより、蛍光粉末を硬化して一体化し蛍光体
12を形成すると共に筒体14の内部に固着させている。それ故、加熱硬化後には、セラミック系接着剤の高耐熱性、且つ高接着性の性質により1000度の高温に耐える蛍光体12を形成可能になる。また、蛍光体12と筒体14との固着した状態を、高温の環境下でも高い接着強度により剥がれずに維持するには有利になる。
【0065】
また、筒体14を透明材料で構成することにより、光ファイバー管11と蛍光体12との固着具合などを確認するには有利になる。また、光ファイバー管11の直径が0.4mm以上、1.0mm以下であることに伴って、蛍光体12が小型化する。それ故、光ファイバー管11と蛍光体12とを直接的に固着することは難しい。そこで、蛍光体12を筒体14の底に固着すると共に、光ファイバー管11を筒体14の開口部付近に固定することで、筒体14を介して光ファイバー管11と蛍光体12とを容易に当接することができる。これにより、歩留まり率を向上することができる。
【0066】
また、光ファイバー管11は、複数本の素線を接着剤で一体化して構成してもよい。光ファイバー管11が一本の素線で構成される場合には、素線の直径が0.4mm以上、1.0mm以下に形成される。一方、光ファイバー管11が複数本の素線を一体化して構成される場合には、素線の面積と本数と乗算した総面積の値が0.1mm
2以上、0.8mm
2以下になるように、素線の直径が0.05mm以上、0.2mm以下に形成され、その本数が、5本以上、10本以下になる。光ファイバー管11が接着剤で一体化した複数本の素線で構成されると、一本の素線で構成された場合と比較して、光ファイバー管11の曲げ半径を小さくできるので、取り回しに有利になる。
【0067】
既述した実施形態で、筒部32の末端を接触筒20の蓋部22よりも上方に配置することで、光ファイバー管11及び傾動筒30が接触筒20に対して最大角度で傾動しても、光ファイバー管11が傾動止部27に接触することを確実に回避することができる。これにより、傾動により光ファイバー管11の破損を防止するには有利になる。
【0068】
また、接触筒20を被検知体13に押圧したとき、膨らみ35が窪み25に嵌った状態で、蛍光体12が窪み25の内部に位置することで、蛍光体12を被検知体13に近づけることができる。これにより、応答速度の向上には有利になる。
【0069】
図8に例示するように、既述した実施形態の蛍光式光ファイバー温度計10は、校正器50を用いて校正される。校正器50は、デュワー瓶51、内箱52、底上台53、均熱ブロック54、ヒータ55、校正用温度計56、及び制御装置57を備えて構成される。
【0070】
デュワー瓶51は、ステンレスで構成されて、内層と外層との間の空間が真空になっている瓶である。内箱52は、ステンレスで構成されて、下端が塞がれた有底筒状に形成されている。デュワー瓶51及び内箱52の間には、冷却液58として液体窒素が充填されている。
【0071】
底上台53は、均熱ブロック54の下端を上方に持ち上げて支持する台であり、均熱ブロック54を直接、内箱52の底及び内筒面に接触させない役割も有している。均熱ブロック54は、銅で構成されている。均熱ブロック54の上端は、デュワー瓶51及び内箱52の上端近傍に配置されており、デュワー瓶51及び内箱52の上端よりも上方に配置してもよい。均熱ブロック54は、上端から下方に向って刳って形成されたヒータ用設置孔54a及び温度計用設置孔54bを有している。均熱ブロック54の上端は、蛍光式光ファイバー温度計10の接触筒20を当接する当接面54cである。
【0072】
ヒータ55は、電熱ヒータで構成されていて、ヒータ用設置孔54aに挿入される。校正用温度計56は、熱電対で構成されていて、温度計用設置孔54bに挿入される。
【0073】
制御装置57は、各種情報処理を行うCPU、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。制御装置57は、蛍光式光ファイバー温度計20、ヒータ55、及び校正用温度計56に一点鎖線で示す信号線を介して電気的に接続されている。
【0074】
蛍光式光ファイバー温度計10を校正する方法について説明する。まず、デュワー瓶51及び内箱52の間に冷却液58を充填して、均熱ブロック54を冷却する。次いで、校正用温度計56により均熱ブロック54の温度T1を取得する。次いで、取得した温度T1に基づいて、ヒータ55により均熱ブロック54を温めて、その温度T1を一定にする。
【0075】
次いで、蛍光式光ファイバー温度計10の接触筒20を当接面54cに当接する。次いで、蛍光式光ファイバー温度計10により温度T2を取得する。次いで、取得した温度T2と温度T1に基づいて算出された温度T3との差分T4に基づいて蛍光式光ファイバー温度計10を校正する。温度T3は予め実験や試験により予め設定された温度であり、例えば、外気温と温度T1との関係に基づいて設定されたマップを用いて算出するとよい。
【0076】
当接面54cがデュワー瓶51及び内箱52の底の方に配置されると、冷却液58の影響により蛍光式光ファイバー温度計10の全体が冷却されることになる。つまり、蛍光式光ファイバー温度計10の接触筒20が当接面54cに密着していない状態や、接触筒20の窪み25及び傾動筒30の膨らみ35が球面接触していない状態でも当接面54cの表面温度に近い値が計測されることになる。
【0077】
これに関して、上記の温度校正器50は、蛍光式光ファイバー温度計10の接触筒20が押圧される当接面54cがデュワー瓶51及び内箱52の上端近傍に配置されている。つまり、当接面54cと外気との間で温度差がある状態で蛍光式光ファイバー温度計10を校正することになる。それ故、蛍光式光ファイバー温度計10が当接面54cの表面温度を正確に計測した場合と計測できない場合とを温度差により判別することができる。これにより、蛍光式光ファイバー温度計10を正しく校正するには有利になり、蛍光式光ファイバー温度計10の測定精度を向上することができる。
【0078】
なお、蛍光式光ファイバー温度計10の接触筒20が当接する部位の周囲を銅で構成された囲い用ブロックで覆うとより高精度に校正することが可能になる。